インタビュー

人と人との繋がりを大切にするステーション運営

医療法人ハートフリーやすらぎ常務理事の大橋さん、訪問看護ステーション所長である田端さんに、引き続き採用や営業、ステーション運営についてお話を伺いました。

協調性を重視した採用試験

―スタッフへのインセンティブをしっかり還元する、こうした魅力的なステーションだと募集が多くて採用が大変そうですが、実際はどのようにされているのですか。
大橋:
うちでは一次試験は書類審査、二次試験は同行訪問、三次試験は面接をしています。
種明かしをすると、面接時よりもリラックスしやすい昼食や休憩時間の様子をよく見ています。例えば昼食のとき、一緒に同行した人から「先に食べていていいよ」と言われたときにどうしているかなどです。訪問看護で大事なのは、相手に合わせられるか、配慮がどこまで行き届くかというところなので、そこを見ています。
あくまで私の考えですが、職場の風土が「相談しやすい関係づくり」を目指しているので、こうした非言語的なコミュニケーションを含めて採用のときには大事にしています。

地域に貢献することで営業なしで黒字経営

―営業に関してはどのようなことを行っていますか。
大橋:
正直、営業といわれるようなことはしていません。例えば、地域の老人会などに参加した際、その集会場のトイレの便座が冷たかったので、温水洗浄便座を購入してくださいと40万円寄付したことがありました。すると、集会に参加した方々が「トイレが温かい」「これはあそこの訪問看護ステーションの方がつけてくれた」ということで、それがゆくゆくは顧客に繋がっています。
そもそも私はギブ&テイクのテイクは基本的に求めていません。こうして地域が潤うために必要なことは何かを考えています。
田端:
ほかには、子ども食堂への寄付や小学生の職業体験を受けることもしています。また、訪問看護先で、利用者さんのご家族が自分も訪問看護を受けたいと言ってくれたりして、家族同士や口コミなどでも繋がっています。
大橋:
ナーシングデイは、あえて団地にこだわりました。ちょうど殺風景になっていた団地があり、私たちが入ることで活性化するのではないかと思ったんです。そのために、1年間草むしりから美化運動をはじめました。最初は住民から怪しまれていましたが、少しずつ挨拶をしてもらえるようになりました。
それから「ピンクの服を着た人たちは看護師だ」という認識となり、ナーシングデイを開くころには、「あんたらやったんか、嬉しいわ~」と言ってくれるまでになりました。ナーシングデイの開設時は、地域住民からの反対なども一切なく、すぐに受け入れてもらえました。

運営に悩む管理者へのアドバイス

―ステーション運営に悩む管理者も多いと思いますが、大橋さんからアドバイスをするとすればどんなことでしょうか。
大橋:
私はトップで決まると思っています。明るくなかったらダメ。能力が高くても考え方がマイナスだと、スタッフにも伝わります。明るいところには明るい人材が来ますから。
できない言い訳を考えるような人が管理者になったらダメです。よく管理者が「誰が責任をとるのか」「責任はとれるのか」という言葉を使うことがありますが、説明責任はあるにしても、人のせいにする人は向いていないと思います。スタッフに対して尊敬して敬意を表しながら、ともにチームで歩むという姿勢がない限りは、スタッフは育ちません。そこの人選をミスしないことが大事だと思います。
また、「どんどん営業に行きなさい」と言われることもありますけど、突然パッと来た営業の人に、「じゃあお願いします」と大事な家族を任せられますか?
地道に一人ひとりに丁寧に接することで、必ず次に繋がると思っています。ケアマネさんにも、郵送で報告書を渡して終わりではなく、たまには「こんにちは~いつもありがとうございます!そういえばね~」と気軽に会話ができるような、そんな機会をなくしてはいけないと思います。
一人ひとりを大事にするというのは、利用者さんやスタッフを大事にするだけではなく、付随する人全員を大事にすることなんです。こうした地道な活動を経て、組織は着実に大きくなっていくと思っています。
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医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者
大橋奈美  
三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表
医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長
田端支普  
総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

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