コラム

適切な人材を集めるための「採用デザイン力」を上げる

前回は、適切な人材を継続的に採用していく力をその組織の『採用力』として、その『採用力』は4つの要素からできていることを紹介しました。(①有形採用リソース、②無形採用リソース、③採用デザイン力、④採用オペレーション)
その中で、まず訪問看護ステーションが注力すべきは即効性のある2つ、採用のやり方を工夫する「採用デザイン力」と、応募から入職までの効率性を高める「採用オペレーション」です。第3回では、そのうちの「採用デザイン力」を向上させるノウハウを紹介していきます。

1.求める人物像を見直す

一般企業に毎年行われている人材採用についての調査で「選考時にどんな要素を重視するか」というアンケートがありますが、その1位は16年連続で「コミュニケーション能力(82%)」、2位が10年連続で「主体性(61%)」となっています(※1)。これを見るだけでも採用基準が非常に均質化しているのがわかります。
「採用のやり方(デザイン)」を変えるための第一歩として、まずは求める人物像を再考するところから始めます。求める人物像を明確にすることで、求人広告で謳うメッセージが明確になります。なんの工夫もなく求人広告を出して、大手と同じような人材を求めても、訪問看護ステーションに「良い人材」が応募してくる確率は低いからです。以下の3つのポイントから、求める人物像をもう一度考え直してみてください。

①必要条件を盛り込みすぎない

すべてを兼ね備えた人材など、世の中にはいません。必要な要件を盛り込みすぎると対象者は限定され、採用の自由度を狭めます。引き算で考えて、本当に必要な要件は何かをもう一度考えてみましょう。社内の評価制度を基準の延長線上でよいと思えば、イメージが湧きやすくなるかもしれません。

②後天的要素ではなく、先天的要素で絞る

ある組織心理学の研究者によれば、私たちが持っている能力は「極めて簡単に変わるもの」と、「非常に変わりにくいもの」の2つがあるとのことです(※2)。「簡単に変わるもの」は、仕事や研修などを通じて育成可能な後天的要素ですので採用基準にする必要はありません。「非常に変わりにくい」とされている能力や性格、志向などの人物特性は、入社後の育成が難しい先天的要素ですので、採用基準としてきちんと見ておかなければなりません。

③スキルフィットよりカルチャーフィットを

どうしても訪問看護の経験やスキルを求めてしまいがちです。しかし、スキルは高いけど組織の雰囲気に合わない(カルチャーフィットしない)人は採用しない方が良いでしょう。組織が小さいほどそう思います。経験が少なくても、時間をかけたら習得できることであれば目を瞑って、いまの組織の状況でぎりぎりの採用基準を考えてみましょう。最終的には選考のタイミングであらためて皆で検討すれば良いので、求める人物像は「カルチャーフィット」を中心に考えます。
ちなみに、私が務めている訪問看護ステーションで最も重要視している採用基準は、①スキルや経験はなくても向上心があること、②個人よりもチーム重視で行動できること、この2つだけに絞っています。

2.媒体選定 Push型マーケティングをうまく使う

さて、求める人物像が決まったら、次は求人広告の方法についてです。自組織が求人していることを求職者に知ってもらわなければ始まりません。大手であれば自社サイトに求人広告を出していれば一定の応募者は集まりますが、多くの訪問看護ステーションはその存在も知られていない可能性があるために、応募者が来るのを受け身で待っていても集まりません。費用は多少かかってしまいますが、適切な場所に情報を発信して求職者に知ってもらわなければなりません。
マーケティング(ここでは求人広告)の基本は、「Push」と「Pull」で広告媒体を使い分けることです。採用力が低い組織の場合は、Push型をうまく使う必要があります。

①求人媒体を利用する(ほとんどが有料)

ハローワーク、有料求人広告、チラシのポスティング、紹介会社の利用などは、効果を見ながら積極的に活用しましょう。数ある有料の求人広告の中で何を利用するかは、その地域、その職種で利用されている1位、2位の求人媒体を中心に検討する必要があります。上位の求人媒体が何かわからない場合は、求人広告の営業マンや紹介会社の担当者、実際の応募者との会話から探っていくのが良いでしょう。

②紹介会社(エージェント)を利用する

紹介会社を利用するか否かは色々な意見がありますが、私が務める訪問看護ステーションでは紹介会社を活用しています。多くの紹介会社は成果報酬型なので、採用するまでは費用はかかりません。適切な人材であれば、組織にも貢献し、長く務めてくれる可能性も高くなりますので、紹介手数料以上の効果が得られると考えています。とにかく、一人でも多くの求職者に自組織の求人情報を届けることを優先して考えています。

③ある程度の期間をとって募集する

一般企業と異なり、医療業界の特性やマッチングの問題から、常に潤沢な求職者が存在するわけではありません。ある時期に集中して、複数の有料求人媒体に掲載しても、巡り合わない可能性があるので、期間を長めにとって採用活動するほうが良いと考えています。

④さまざまなチャネルで発信する

連載の第2回で紹介しましたが、求人広告だけに頼るのではなく、考えられる方法はとにかく色々と試してみましょう。
私が事務長を務める訪問看護ステーションでは、在宅医療や訪問看護に興味のある方に1年中同行見学を受け付けています。今は病院に勤務にしているものの訪問看護に興味を持っている看護師さんなども見学に来てくれます。見学から私たちのステーションを気に入っていただき入職にいたった看護師さんも少なくありません。
またあるときは、「訪問看護1日研修」というイベントを連携する病院に案内したこともあります。目的はリクルートではなく純粋に在宅医療の啓発だったのですが、在宅医療や訪問看護を実際に見たことのない多くの病棟看護師さんが研修に来くださり、大変好評でした。その中で、訪問看護や私たちの訪問看護ステーションに興味を持っていただけた方もいらっしゃいました。
よい人材獲得のために常にアンテナを張っておき、知恵を結集してチャレンジングな取り組みをしていくことを考えていきましょう。
今回は、①求める人物像、②媒体選定について紹介してきましたが、その上で重要なのは、自組織の情報と魅力・独自性をしっかりと表現することです。次回は、採用活動のコンセプトブックとなる「求人パンフレット」の作り方と活用方法について紹介していきます。
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  【略歴】
兵庫県出身。甲南大学経営学部卒業。広告代理店での勤務を経て、阪神大震災を機に親族の経営する商社、不動産管理会社などの経営再建と清算業務に従事。2001年からMBOにより飲食店運営会社を設立し副社長を務める。2009年より株式会社メディヴァに参画。「質の高い医療サービスの提供」を目指して在宅医療の分野を中心に医療機関・企業・自治体などの支援を行なっている。医療法人社団プラタナス桜新町アーバンクリニックの事務長を兼務。2015年度政策研究大学院大学医療政策短期特別研修修了。
  【参考】
※1 一般社団法人 日本経済団体連合会 2018年度新卒採用に関するアンケート調査結果
https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf
※2 ブラッド・D・スマート著(2005)『Topgrading』Portfolio社
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