コラム

適切な人材を「選考」して「入職」に繋げる

採用したい人材を取りそこねたり、間違った選考で良くない人材を採用してしまったり…といった経験はないでしょうか。適切な人材を採用する力である『採用力』の構成要素の1つである「採用オペレーション」とは、募集→応募→面接→選考→内諾→入職といった一連のプロセスの効率性を上げていく取り組みです。第5回では、限られた応募者の中から適切な人材を「選考」して「入職」に繋げるまでの具体的な取り組みを紹介します。

優れた選考手法は「ワークサンプル」×「構造化面接」

●サッカー選手を面接で採るクラブはない。サッカー選手であれば、ゲームや練習を通したトライアウトで選ぶもの。
(出典:髙橋潔著『就活イノベーション~脱・母集団形成と面接重視~』オンライン書籍,2016)
選考について、最初に紹介したいのがこの「サッカー選手を面接で採るクラブはない」という視点です。選考の目的は「仕事をやらせてみたら成果を出せる」人材を採るために採用前にそれを見極めることです。もし、サッカー選手を選考するのであれば、ゲームや練習を通したトライアウトで選ぶのであって、面接だけで選考することはありません。サッカーなどのスポーツ選手に限らず、ほかの職種でも面接中心の選考プロセス自体を考え直す必要があることがわかります。
これは実際の研究結果でも証明されているのですが、応募者の採用後の業績予測について最も優れているのは「ワークサンプル」、つまり実際の仕事内容に従事させ、その優秀さを評価するという方法です。その次に優れているのが後述する「構造化面接」という面接手法です。そして、一つの選考手法よりも複数の選抜手法を組み合わせた方が、選考の精度が上がることが研究でわかっています。
      (出典:服部泰宏著『採用学』新潮社,2016)
実際の選考プロセスの中で仕事をしてもらうことは難しいですから、当事業所ではこの視点を取り入れた「面接時の同行見学」を行っています。
応募者には半日以上の訪問看護の同行見学を行い、その後に面接を行うという方法です。拘束時間が長くなることで応募のハードルが上がるというデメリットはありますが、応募者に仕事のイメージを持ってもらうと同時に、訪問時の患者宅での立ち振る舞いがわかり、同行見学で実際に見た患者さんについての感想を聞くことで応募者について理解が進みます。「同行見学」以外にも、応募者と一緒に模擬カンファレンスを行ってもよいかもしれません。応募者の能力やパーソナリティをより知ることができるでしょう。
医療事務職の採用であれば、診療報酬算定の筆記テストを行うこともできます。PCスキルや文書作成能力を確認するのであれば、面接の後でPCを貸与して、その場で志望動機を作成してもらえば、それらの能力についてもよくわかります。

「構造化面接」の一例

2番目に優れた選考方法である「構造化面接」とは、あらかじめ評価基準や質問項目を決めておき、手順通りに実施していく手法で、臨床心理学におけるアセスメントのアプローチとして古くからある面接手法です。面接官による評価のバラつきを抑えて、採用基準となる指標を漏れなくヒヤリングできます。構造化されていない面接(非構造化面接)よりも、将来の業績をより正確に予測することができると言われています。
ここでは私が行っている「構造化面接」の例を紹介します。それぞれの組織の「求める人物像」を見極めるための質問を考え、組織に合った「構造化面接」を設計してみてください。
質問の回答で出たエピソードは、より具体的に深掘りしていきます。私が面接で重要にしているのは「一定期間一緒に働いた応募者の姿」をイメージできるようになることです。もし、一定期間働いた後に選考することができたら、採用するべき人かどうか確信をもって判断できるでしょう。ですから、そのイメージが掴めるまで質問を重ねていきます。
2名以上の面接者で1時間くらい面接します。面接の目的は相互理解なので、応募者と面接官で話す割合は6:4程度を心がけます。必要に応じて2次面接も行います。

面接の意味合いは「見抜く」と「口説く」

面接などの選考ステップ意味合いは、応募者を評価し「見抜く」という側面以外に、惹きつけて「口説く」という側面があります。これは、面接官の大切な役割なのですが、実際にそれをできている面接官は多くありません。応募者からは必ずほかの事業所と比較して見られていると思っていてください。競合に負けないくらいに職場の雰囲気は良く、面接官は魅力的でなければなりません。本当に採用したい応募者であれば、事業所内のエース級人材を面接に同席させるくらいに力を入れましょう。

面接では「雇用条件」の確認も

給与などの条件面の合意は非常に重要ですので、応募者本人のためにも避けずに話をするようにします。具体的には、「前職の月給(額面)」、「賞与は年に何ヶ月分か」、「月あたり残業は何時間か」「コール手当などが付いているか」を聞いて、その場で計算して「年収(額面)は○○万円くらいですか?」と認識に違いがないか確認します。「希望する年収は?」「同水準でも大丈夫か?」など応募者の期待と差異がないかを確認し、例えば「年収は少し低くなるが、評価が良ければ1年以内に同水準になる」など、評価・昇給制度の説明とともに今後の見通しの話もします。
その後、応募者に採否の結果を通知するわけですが、基本的に面接から1週間以内に何らかの回答をします。採用の場合は採用の決め手となったポイントを伝え、応募者が必要な人材であることを具体的に伝えます。そして、入職する日まで油断せずに向き合っていきます。

事業所全体で「採用・定着」に取り組む

「まずはじめに、適切な人をバスに乗せ、不的確な人をバスから降ろし、つぎにどこに向かうべきか決めている。」
(出典:ジェームズ・C・コリンズ著 山岡洋一(翻訳)『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』 日経BP,2001)
連載の1回目に紹介したビジョナリー・カンパニー2に書かれているように、適切な人材の採用は組織が発展していく上での最重要課題の一つです。
適切な人材採用には『採用力』を上げる取り組みが必要で、今回の連載の中で紹介してきたノウハウを実践すれば、これまで以上の人材を採用できるようになるでしょう。ポイントは、事業所全体で「採用・定着」に取り組むことです。
採用と定着を改善することは事業所にとっても、またそこで働く医療従事者、サービスを受ける患者・利用者にとっても素晴らしい成果を生み出すことになります。貴事業所がほかの医療機関に先駆けて、適切な人材を採用し続けることができる組織になれることを願っています。
**
株式会社メディヴァ コンサルティング事業部 シニアマネージャー/医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック 事務長
村上典由
 【略歴】
兵庫県出身。甲南大学経営学部卒業。広告代理店での勤務を経て、阪神大震災を機に親族の経営する商社、不動産管理会社などの経営再建と清算業務に従事。2001年からMBOにより飲食店運営会社を設立し副社長を務める。2009年より株式会社メディヴァに参画。「質の高い医療サービスの提供」を目指して在宅医療の分野を中心に医療機関・企業・自治体などの支援を行なっている。医療法人社団プラタナス桜新町アーバンクリニックの事務長を兼務。2015年度政策研究大学院大学医療政策短期特別研修修了。
  【参考書籍】
服部泰宏著(2016)『採用学』新潮社
髙橋潔著(2016)『就活イノベーション~脱・母集団形成と面接重視~』オンライン書籍
ジェームズ・C・コリンズ著 山岡洋一 翻訳(2001)『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』 日経BP
× 会員登録する(無料) ログインはこちら