特集

難病患者が利用できる制度

医療費助成(公費)制度がかかわる場合の報酬請求は、訪問看護師からよく質問が寄せられるテーマでもあります。今回から4回にわたり、難病患者への訪問看護提供にあたって請求上も重要な、公費について解説します。
第1回目は、難病患者が利用できる制度の概要を解説します。

医療費負担軽減の制度

介護保険ではなく医療保険による訪問看護が可能な疾病があることは、訪問看護師の皆さんならよくご存知のはず(別表7 厚生労働大臣が定める疾病等)。これらの多くは指定難病でもあり、かかる医療費は公費として国から助成されます。
別表7 厚生労働大臣が定める疾病等
・多発性硬化症(難)
・重症筋無力症(難)
・筋萎縮性側索硬化症(難)
・脊髄小脳変性症(難)
・ハンチントン病(難)
・進行性筋ジストロフィー症(難)
・パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。))(難)
・多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群)(難)
・亜急性硬化性全脳炎(難)
・ライソゾーム病(難)
・副腎白質ジストロフィー(難)
・脊髄性筋萎縮症(難)
・球脊髄性筋萎縮症(難)
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎(難)
・スモン
・プリオン病
・後天性免疫不全症候群
・頸髄損傷
人工呼吸器を装着している状態
・末期の悪性腫瘍
※(難)マークが難病指定されている疾患
これら難病の認定を受けた患者は、訪問看護費の請求も通常とは異なります。

公費54(難病)

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)で、医療費負担軽減の制度が定められており、患者の自己負担が毎月一定額で済みます。法別番号が54のため、「54(ご・よん)」と呼ばれます。

助成対象

指定難病の病名があり、医療受給者証をお持ちの方が助成対象です。指定難病は2021年6月時点で333疾患ありますが(※1)、病名があるだけでは助成対象ではありません。

助成内容

・特定医療
認定された指定難病に対する医療を特定医療といいます。助成は特定医療のみが対象です。医療受給者証をお持ちの方でも、認定された難病に起因しない傷病に対する医療費等は、助成対象にはなりません。
・指定医療機関
特定医療を提供するには、都道府県知事の指定を受けた医療機関・保険薬局・訪問看護事業所でなければなりません。
仮に、指定がないままで訪問看護を受けると、医療受給者証をお持ちの患者でも、医療費助成は使えません。
認定がない事業所で新たに公費54を扱えるようにするには、都道府県に指定医療機関申請を行い、認定を得る手順を踏むことが必要です。
・自己負担
患者の収入などによって、自己負担上限額が決まります。その上限額を超えると、それ以降月末までの自己負担分は、すべて公費から支払われます。また、主保険の負担割合が3割の人は、自己負担上限額までの自己負担が2割に変わります(1割負担の人は1割のまま)。

その他

難病(54)のほかにも、難病の患者が利用することがある助成制度をおさらいします。

更生医療(15)と育成医療(16)(自立支援医療)

更生医療(15)と育成医療(16)は、障害者総合支援法(旧・障害者自立支援法)による医療費助成の制度です。法別番号から、それぞれ「15(いち・ご)」「16(いち・ろく)」と呼ばれます。
更生医療は18歳以上、育成医療は18歳未満で、身体障害者手帳を持つ人のうち、福祉事務所の認定を受けた患者が対象です。
自立支援医療も、都道府県知事の指定を受けた医療機関でなければ、公費負担を適用することはできません。
・自己負担
自己負担のしくみは54と似ています。15・16とも、自己負担が原則1割になり、かつ、月の自己負担が上限額を超えると、それ以降月末までの自己負担分は、公費から支払われます。

小児慢性特定疾病(52)

小児慢性特定疾病に関する医療費助成(公費52。「52(ご・に)」と呼ばれます)は、18歳未満(引き続き治療が必要であると認められる場合は、20歳未満)、定められた慢性疾患があり認定を受けた患者が対象です。
この52も自己負担が2割になり、月の上限額を超えると自己負担がなくなります。

生活保護の医療扶助(12)

生活保護受給中の申請が認められると、医療費の自己負担分は全額公費で支払われます。生活保護は法別番号12なので「12(いち・に)」と呼ばれます。
生活保護受給中は、ほとんどの患者は主保険がない状態です(生活保護世帯は国保の被保険者資格を返却する)。優先順位第一の主保険がないため、生活保護以外の公費がない場合は、公費12に100%請求します(公費単独レセプトを作成)。
公費12のほかにも使える公費がある場合は、他の公費が優先され、生活保護(12)は最後になります。

市町村独自の助成

上にあげた公費はすべて、国の公費です。
このほか都道府県や市区町村で、自治体独自の医療費助成制度を定めているところもあります(〇〇市こども医療制度、〇〇市障がい者医療費助成制度、〇〇市難病助成制度、など)。
受給者証を複数お持ちの方へ訪問看護を提供する際は、公費適用の優先順位をしっかりと把握することが重要です。
優先は、主保険→国の公費→地方自治体の公費→生活保護、の順番です。
上に紹介した公費であれば、まず主保険が優先、次に国の公費です(3割負担の人なら7割を国保などに請求)。国の公費適用後に生じる自己負担(たとえば上限額までの自己負担)は、地方自治体の公費の適用となります。生活保護は国の公費ですが、例外的に、優先順位は最後です。

別表7と指定難病

別表7に該当する疾病をもつ患者には、医療保険による訪問看護、週4日以上の訪問看護、指示があれば複数の訪問看護ステーションからの訪問看護や、1日に複数回の訪問も可能になります。
注意が必要なのは、指定難病でも別表7にない病名も多いことです。難病は、2021年6月時点で333疾患あります。
難病の医療者証をお持ちであっても、医療保険の訪問看護ができるとは限りません。
逆に、別表7の患者で、医療保険で訪問看護可能な方でも、医療費助成はない例は多いです。
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監修:あおぞら診療所院長 川越正平
【略歴】
東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医院。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。
記事編集:株式会社メディカ出版
【参考】
※1 厚生労働省 指定難病病名一覧表[Excel形式:26.4KB]
https://www.mhlw.go.jp/content/000522616.xlsx (2021年6月30日)

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