インタビュー

現場を苦しめる新型コロナが共に支え合う地域連携を進展させた

トップランナーから現場へのエール

今回より6回シリーズで訪問看護のレジェンドともいえる方々3人にご登場いただきます。
第1回前編は、訪問看護ステーションのみならず多方面でご活躍の秋山正子さんに、コロナ禍での訪問看護ステーションの実情についてうかがいました。

陽性者対応だけでない新型コロナ問題

新型コロナウイルス感染症のまん延は、訪問看護の現場にもさまざまな影響を及ぼしています。一つには、運営のあり方です。自宅待機の新型コロナ陽性者を訪問するなど、最前線で利用者を支えている訪問看護ステーションがある一方で、発熱や咳のある利用者の訪問を極力控えているステーションもあります。

訪問看護ステーションはだいぶ大規模化が進んできましたが、それでもやはり看護師5~6人のステーションが中心です。もし職員に感染者や濃厚接触者が一人でも出れば、たちまち訪問が滞ります。小規模ステーションであれば、運営自体に大きな影響が出ます。そうなれば利用者にも迷惑をかけることになりますから、自分たちの身を守ることも大切です。ここは難しいところですね。

職員の家族の発熱への対応も悩ましい問題です。私が統括所長を務める白十字訪問看護ステーションでも、この春、職員の子どもが通う保育園でクラスターが発生し、職員が出勤できなくなりました。休むことになった職員の訪問を、誰がどうカバーするかなどの対応が必要になりましたが、慌ててもしかたがありません。そういうときは淡々と対処していくしかないですね。

職員のやりくりに苦心する一方で、感染の影響による新規の依頼もあります。クラスターが発生してデイサービスが休業したから、臨時で訪問看護を利用したい。入院した病院の面会制限が厳しいので在宅で看取りたいから訪問看護に来てほしい。そんな依頼です。

陽性者にどう対応するかだけでなく、その周辺も含めたさまざまな影響が今、訪問看護に出ていると思います。

この難局を地域で連携して乗り越える

とはいえ、悪いことばかりではありません。新型コロナへの対応を通して、地域でさまざまな連携や新しい取組が生まれてきています。

例えば、白十字訪問看護ステーションのある東京都新宿区は、一時期、夜の町での感染拡大がセンセーショナルに取り上げられました。これに対応するため、新宿区医師会が動きました。区内の複数の大病院が重症者対応に注力できるよう、開業医の先生方が発熱外来を運用したり、訪問でPCR検査をしたり、後方支援に取り組んだのです。たとえ陽性者数が増加しても、重症者や死者を増やさない。今ではそんな意識がかなり徹底されています。

訪問看護も、事業所同士の連携が進んでいます。感染拡大初期、病院に比べて在宅では、防護服などの感染予防の医療用品が手に入りにくい時期がありました。そこで、連絡会として行政に訴えるなど解決に動いたことをきっかけに、連絡会による横の連携が活発になりました。一つの事業所だけで悩むのではなく、一緒に考えましょうという意識が強まったのです。今では、防護服などの行政からの支援物資は、少し広い事業所がまとめて備蓄し、そこから不足している事業所に出すというしくみがつくられました。

また、医師会の先生方と月1回情報交換するなど、医療職同士の連携も進みました。そのおかげで、PCR検査の実施方法、感染初期の対応など、今ではさまざまな情報共有が速やかに行われるようになっています。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回)でも、事業所同士の連携が進んでいます。訪問看護同様、限られた人数で訪問介護を提供している事業所では、感染者や濃厚接触者が一人出れば、やはり欠員となった職員をどうカバーするかが問題になります。

あるとき、一人暮らしの利用者を支える定期巡回の事業所で、夜間帯を担当していた介護職が濃厚接触者になり、訪問できる介護職がいなくなったことがありました。そのときには、事情を知った他の訪問介護事業所がカバーし、何とか利用者を守り抜いたのです。

新型コロナの感染拡大は、これまでに誰も経験したことのない危機的状況です。だからこそ、地域の中で他の事業所とのチームワークが芽生え、互いに支え合っていこうという意識が強くなったとも言えます。この難局は、そうしたいい面も引き出しているのではないかと思います。

(後編へつづく)

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秋山正子
株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション・白十字ヘルパーステーション統括所長、暮らしの保健室室長/認定NPOマギーズ東京センター長  

取材・文/宮下公美子(介護ライター)

記事編集:株式会社メディカ出版

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