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筋ジストロフィー

筋ジストロフィーとは、遺伝性の筋疾患です。単一の疾患名ではなく、原因の遺伝子変異による影響が共通する多くの疾患を、まとめて指す呼称です。

病態

筋ジストロフィーは、骨格筋の壊れやすさと再生されにくさを特徴とする、遺伝性の筋疾患の総称です。

筋肉の働きにはタンパク質が欠かせません。筋ジストロフィーでは、遺伝子変異により、タンパク質の生成や機能に異常が生じるために、筋肉細胞の変性・壊死、筋肉の萎縮・線維化をきたします。

その結果、筋力が低下してしまいます。運動機能だけでなく、さまざまな器官・臓器の機能が障害され、全身性疾患の側面もあります。

病型と遺伝形式

病型により原因遺伝子が異なり、発症年齢や症状、遺伝のしかたも異なります。

なお、疾患の原因となる遺伝子変異は、親から引き継がれるだけでなく、突然変異で発生することもあります。

疫学

正確な患者数の統計はありませんが、筋ジストロフィーの有病率は人口10万人あたり17~20人程度と推測されています。
病型別ではジストロフィン異常症が人口10万人あたり4~5人、肢帯型は1.5~2人、先天性が0.4~0.8人、筋硬直性は9~10人程度です。

2019年度末時点での、筋ジストロフィーの受給者証所持者数は約4500人で、40〜50歳代が最多です。

症状・予後

主な症状は、骨格筋の機能障害による運動機能低下ですが、多様な器官・臓器の機能障害、合併症を伴います。

骨格筋での呼吸機能低下や嚥下障害、構音障害、心筋の障害による不整脈や心不全、平滑筋障害による便秘やイレウスなどの消化管障害などに加え、眼瞼下垂や眼球運動の障害などが生じることもあります。

一方、筋力低下と運動機能障害はゆっくりと進行し、関節の拘縮・変形を起こします。小児期に発症する疾患では、脊椎や胸郭の変形が生じることもあり、二次障害への早期対応も求められます。

これらの機能障害などは、病型により発症傾向が異なります。

ジストロフィン異常症、肢帯型ジストロフィー

初期症状として、あひる歩行(腰を上下に揺らして歩く動揺性歩行)、転びやすさなどの歩行障害が現れる

筋強直性ジストロフィー

初期症状として、筋強直現象、筋力低下、筋萎縮などがみられる
合併症が多様。消化管症状やインスリン抵抗性、白内障なども生じることがある

福山型

知的発達障害やけいれん発作がみられる。網膜剥離など眼症状を伴うことがある

予後は病型により異なります。呼吸不全や心不全・不整脈、嚥下障害などの合併症が、生命予後に大きく影響します。

治療・管理など

どの疾患も根本的な治療薬はまだありませんが、ジストロフィン異常症のうちデュシェンヌ型筋ジストロフィーで、遺伝情報の読み取りのメカニズムに作用し病状の進行を遅らせる薬が登場しました。

それ以外は、対症療法が中心になります。
●リハビリテーションによる機能維持
●嚥下障害に対する胃瘻造設
●呼吸不全に対する補助呼吸管理
●心不全に対してペースメーカーの植込み
など

特に、呼吸不全や心不全・不整脈、嚥下障害などは生命予後に影響するため、定期的に機能障害や合併症の有無、程度などを評価し、必要時に介入することが大切です。

リハビリのポイント

筋力トレーニングは、筋肉を痛めるリスクから推奨されません。適切な負荷の運動を行い、機能維持に努めます。
●早い時期から関節可動域訓練を行い、関節の拘縮を防ぐ
●手すり設置、室内の片付けなど、環境整備による転倒予防対策を伝える
●病状の進行に合わせ下肢の装具や車いすなどを導入し、生活範囲の維持に努める
●呼吸リハビリで肺機能維持を図る
●非侵襲的陽圧換気(NPPV)導入後は呼吸管理法を指導する
●嚥下機能低下がみられた場合は、嚥下機能訓練や、食形態の見直しを行う
など

看護の観察ポイント

疾患により臓器の障害、合併症などが異なるため、医師に今後の病状や機能障害・合併症の見通しを確認し、症状を継続的に観察することが必要です。なお、筋肉を疲労させない程度であれば、日常生活の制限は原則ないため、患者のQOLにも配慮します。
●運動機能障害の状態と変化
●心機能や呼吸機能など運動以外の機能障害、合併症徴候の有無と変化
●運動機能障害による日常生活への支障
●環境整備、転倒予防対策の様子
●座位保持のときに息苦しさなどはないか
●感染予防のためのワクチン接種を受けているか
●呼吸器感染の徴候がないか(重篤化しやすいため、早めに医師につなぐ)
●食事や水分は十分に摂取できているか
●むせなど嚥下機能の低下がみられるか
●家族の身体的・精神的負担の程度
など

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監修:あおぞら診療所院長 川越正平
【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。

記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】

〇厚生労働省『難病・小児慢性特定疾病.令和元年度衛生行政報告例』2021-03-01.
〇難病情報センター『病気の解説(一般利用者向け)』『筋ジストロフィー(指定難病113)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/4522
〇難病情報センター『診断・治療指針(医療従事者向け)』『筋ジストロフィー(指定難病113)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/4523
〇「筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン」作成委員会編.『筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020』東京,南江堂,2020,172p.
〇「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン」作成委員会編.『デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014』東京,南江堂,2014,216p.

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