特集

第6回 ハラスメント、育児・介護と仕事の両立支援編/[その4]「介護離職」を防ぎたい! スタッフの負担軽減のために事業所にできること

高齢化が進み、介護と仕事の両立が必要な人が年々増えてきています。事業所でも育児・介護休業法で定められている両立支援制度を整備し、介護をしながら勤務を継続したいスタッフへのサポートを行う必要があります。 多様な働き方に柔軟に対応するしくみづくりを通じて、さまざまな知見や経験を有する多才なスタッフが働き続けられる、しなやかな強さを持つ職場をつくっていきましょう。


職場に、介護が必要な家族と同居しているスタッフがいます。そのスタッフから、最近業務が忙しくなってきたこともあり、介護と仕事の両立が難しくなってきたと相談されました。彼女はベテランの訪問看護師で、大切な人材です。介護離職をしてしまうと経済的負担なども心配です。何とか彼女をサポートできるしくみを整えたいです。どのような支援を行えばよいでしょうか。

育児と同様、介護と仕事の両立においても、育児・介護休業法でさまざまな支援制度が定められています。両立支援制度を組み合わせて活用し、家族をサポートするスタッフの負担軽減に努めましょう。

介護と仕事の両立支援のための措置・制度

働く人の介護と仕事の両立のために、育児・介護休業法では、さまざまな支援制度を定めています。

育児と仕事の両立支援制度と同様に、事業所に介護と仕事の両立支援制度を規程する就業規則がなくても、介護休業、介護休暇、所定外労働・法定時間外労働・深夜業の制限は、法律に基づいて本人の申し出により利用することができます。

表1に主な両立支援制度をまとめました。

表1 法律で定められた主な介護と育児の両立支援制度

厚生労働省『介護休業制度』特設サイトをもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/

育児・介護休業法では、「要介護状態」および「対象家族」を介護する場合に上記の制度ができます。

ここでいう「要介護状態」とは、要介護認定を受けていなくても、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり「常時介護を必要とする状態」のことをいいますので注意しましょう。

なお、「常時介護を必要とする状態」とは、以下の表2を参照しつつ、判断することとなります。

表2 常時介護を必要とする状態に関する判断基準

(注1)各項目の1の状態中、「自分で可」には、福祉用具を使ったり、自分の手で支えて自分でできる場合も含む。
(注2)各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。
(注3)「①座位保持」の「支えてもらえればできる」には背もたれがあれば一人で座っていることができる場合も含む。
(注4)「④水分・食事摂取」の「見守り等」には動作を見守ることや、摂取する量の過小・過多の判断を支援する声かけを含む。
(注5)⑨3の状態(「物を壊したり衣類を破くことがほとんど毎日ある」)には「自分や他人を傷つけることがときどきある」状態を含む。
(注6)「⑫日常の意思決定」とは毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力をいう。
(注7)慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意等)には、指示や支援を必要とすることをいう。

厚生労働省ホームページ『仕事と介護の両立 よくあるお問い合わせ』
「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」より引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/otoiawase_jigyousya.html#01


事業所には、介護と仕事の両立のためのさまざまな制度を整備し、運用する義務があります。



育児と仕事の両立支援同様、介護についても支援制度の整備に活用できる公的なサポートはあるのでしょうか?

あります。「仕事と家庭の両立プランナー」が育児の場合と同様に、訪問支援を行ってくれます。また、助成金制度の活用も可能です。

「仕事と家庭の両立支援プランナー」を活用しよう

国の事業として、中小企業における介護や仕事と両立支援・経営支援のノウハウを持つ専門家が、無料で訪問支援を行っています。厚生労働省のサイトでは、次のような事業主に申し込みを呼びかけています。該当する場合は、ぜひ利用を検討してみてください。

●介護に直面した従業員がいるが、休業などの制度を利用する予定
●既に仕事と介護を両立しながら働く従業員がいるが、さらにサポートをしたい
●上記のような従業員はいないが、社として備えておきたい

詳しくは以下をご参照ください。

▼厚生労働省ホームページ
「仕事と家庭の両立支援プランナー」の支援を希望する事業主の方へhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080072.html


助成金制度を活用しよう

介護についても、職業生活と家庭生活が両立できる「職場環境づくり」のために、雇用保険の『両立支援等助成金』があります。2021年度における介護と仕事の両立支援推進を目的とした『両立支援等助成金』には、以下の表3に示すコースがあります。

表3 介護離職防止支援コース 

▼厚生労働省ホームページ
2021年度 両立支援等助成金のご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/000811565.pdf
令和3年度 両立支援等助成金 介護離職防止支援コース 
「新型コロナウイルス感染症対応特例」のご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/000806011.pdf

これ以外にも、自治体で準備している助成金・補助金制度などもありますので、情報収集されることをお勧めします。

前回の記事でも述べましたが、助成金・補助金制度については、細かな要件や期限内に提出が必要な書類があります。また、毎年内容が変更されることが少なくありませんので、リーフレットなどをよく確認しましょう。『両立支援等助成金』などの雇用関係助成金に関する相談窓口は、事業所を管轄する労働局ハローワークが窓口になります。

国の支援などを上手に活用して制度整備を行い、職員が介護を理由に離職することなく、継続して働ける支援を行っていきましょう。


介護離職を防ぐ事業所の制度を整備・促進するため、プランナーの派遣や助成金・補助金制度など、国や自治体でさまざまな支援活動が準備されています。それらを積極的に活用しましょう。

**

加藤 明子 
加藤看護師社労士事務所代表
看護師・特定社会保険労務士・医療労務コンサルタント

●プロフィール
看護師として医療機関に在職中に社会保険労務士の資格を取得。社労士法人での勤務や、日本看護協会での勤務を経て、現在は、加藤看護師社労士事務所を設立し、労務管理のサポートや執筆・研修を行っている。
▼加藤看護師社労士事務所
https://www.kato-nsr.com/

記事編集:株式会社照林社

この記事を閲覧した方におすすめ

× 会員登録する(無料) ログインはこちら