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ミトコンドリア病

ミトコンドリア病は、発症年齢も症状もさまざまで、とらえどころのない難病の一つです。細胞内のミトコンドリアの働きの低下が、原因であることがわかっています。

病態

ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの働きの低下により起こる病気の総称です。

ミトコンドリアとは、全身の細胞に存在する器官で、ミトコンドリアによりエネルギーが産生されます。そのエネルギーが細胞の活動の源になるため、ミトコンドリアの働きが低下すると、細胞そのものの活動性も低下します。特に脳や心臓など、多くのエネルギーを必要とする臓器では、影響が大きくなります。

ミトコンドリア病の発症時期は幅広く、乳幼児期から成人までとさまざまです。原因は、先天的な遺伝子変異が主体です。

ミトコンドリア病に関係する遺伝子変異は、今わかっているだけで200種類程度に上り、病型や個人によってもそのパターンは多彩です。それらの遺伝子変異は、細胞の核にあるDNAの変異のほか、ミトコンドリア内にある別のDNA(ミトコンドリアDNA)の変異でもみられます。

核のDNA上の遺伝子変異は、親から子に伝わる可能性があります。一方、ミトコンドリアDNAは母親から子どもに伝わるので(母系遺伝)、ミトコンドリアDNA上の遺伝子に変異などがある場合は、母親から子に伝わる可能性があります。核DNA上での遺伝子変異と、ミトコンドリアDNA上の遺伝子変異は、いずれも突然変異で生じる場合もあります。

疫学

ミトコンドリア病の発症は、乳児から成人まであらゆる年齢の人でみられます。性別による発症差はありません。発症頻度は、イギリスやフィンランドで人口10万人あたり9~16人という報告もありますが、実はもっと多いのではないかともいわれています。

2019年度末時点でのミトコンドリア病での受給者証所持者数は1,500人程度です。10歳未満から75歳以上まで幅広い年齢層におよんでいます。

症状・予後

症状は中枢神経や筋肉、心臓、目や耳などの感覚器、肝臓、腎臓、内分泌系など多様な臓器・組織にみられ、症状も幅広いのが特徴です。
表は、小児期に発症する代表的なミトコンドリア病の病型です。

表 ミトコンドリア病の病型例

病型特徴
CPEO (慢性進行性外眼筋麻痺症候群)・主な症状は、眼瞼下垂、眼球運動障害
・CPEOに、網膜色素変性と心伝導障害を合併するものをカーンズ・セイヤ症候群と呼ぶ
・小児~成人期に発症
MELAS(メラス)  ・脳卒中様症状を伴うミトコンドリア病(けいれん、意識障害、視野狭窄、視力障害、運動麻痺など)
・小児~成人期に発症
MERRF(マーフ)・ミオクローヌスてんかんや小脳症状を特徴とするミトコンドリア病
・小児~成人期に発症
リー脳症・精神運動発達遅滞、筋力低下、けいれんなど、脳と筋肉の症状
・乳幼児~小児期に発症

治療・管理など

対症療法として、各症状への適切な治療・管理をすることが重要です。症状が生じている臓器の専門医と連携した対応が求められます。

ミトコンドリアの働き自体を回復させる原因療法の確立も目指されています。
日本では、MELASによる脳卒中発作の抑制の目的で、2019年にタウリンが保険適用されました。

ミトコンドリア内でエネルギーを産生する過程に使われる各種ビタミンや栄養素を補給する意味で、ふだんからのバランスの良い食事が治療の基本とされています。

リハビリのポイント

症状に応じたリハビリが必要とされます。また、運動麻痺などに対して、装具や福祉用具などが必要になることもあります。

看護の観察ポイント

現れている症状に応じた観察が必要になります。

ミトコンドリア病では介護保険の対象にならない年齢層の患者も多いため、障害者総合支援法による支援などへの橋渡しも求められます。加えて、症状が複数の臓器に及ぶと、複数の診療科、医療機関にかかることもあるため、情報共有を意識してかかわることが大切です。

そのほか、介護する家族にかかる介護負担が大きくなりがちなので、レスパイトケアを提案することも必要です。

監修あおぞら診療所院長 川越正平
【略歴】
東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。

記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
〇難病情報センター.『病気の解説(一般利用者向け)』『ミトコンドリア病(指定難病21)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/194
〇難病情報センター.『診断・治療指針(医療従事者向け)』『ミトコンドリア病(指定難病21)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/335
〇厚生労働省.難病・小児慢性特定疾病.『令和元年度衛生行政報告例』2021-03-01.

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