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【短期記憶障害】認知症患者が同じ話を繰り返す原因&対応を解説

患者さんの言動の背景には何があるのか? 訪問看護師はどうかかわるとよいのか? 認知症を持つ人の行動・心理症状(BPSD)をふまえた対応法を解説します。第5回は、同じ話を繰り返し、説明したことを守ってくれない患者さんの行動の理由を考えます。

事例背景

80歳代、女性。つじつまの合わない言動がみられ、同じ話を何度も繰り返している。レビー小体型認知症があり、下肢の筋力低下もあり、歩行時にふらつきがみられる。
本人はもともと自立心高く活動的である。転倒リスクのため、移動したいときは一人で動かず、介助者を呼ぶように伝えているが、決して人を呼ばない。これまでも転倒を繰り返し、出血斑が多数ある。

なぜ患者さんは、同じ話を何度も繰り返すのか?

認知症の症状の一つに、記憶障害があります。

記憶は、▷覚える(記銘) ▷保存する(保持) ▷必要なときに思い出す(再生) ── の、三段階から成り立っています。
そして記憶障害には、短期記憶障害と長期記憶障害の二種類があります。

短期記憶障害 数分前に起こったことなど、新しい事柄を覚えることができない
長期記憶障害昔からしてきたこと・知っていたことを忘れる
・エピソード記憶
・意味記憶
・手続き記憶

認知症では、数分前に起こったことを思い出せない短期記憶障害と、自分が体験したことなどを忘れてしまうエピソード記憶障害がみられることがあります。

また、多くの情報を一度に処理できません。自分の言いたいことや頭に浮かんだことを繰り返して話をしていると思われます。

なぜ患者さんは説明を無視して一人で動くのか?

短期記憶障害のため、そもそものコミュニケーションがとりにくい状態です。「どこかに行かれる際は、手伝うので、人を呼んでくださいね」と説明していても、そのこと自体を忘れてしまっている状況だと考えましょう。
また、患者さんはもともと自立心が高く、活動的な人です。「一人で動ける」と思っています。

繰り返す言動への対応

患者さんの行動の理由

患者さんは、記憶障害のために、聞いたことや言ったことを忘れてしまい、同じ話を繰り返していると考えられます。
そして、繰り返し聞いてくる内容は、患者さんが気になっている・困っている・不安に思っていることなどの場合もあります。
さらに、一度に多くの情報が処理できないので、自分の言いたいことだけに注意が向いてしまう場合があります。

対応の一つとして、訴えている理由や気持ちをしっかり聞いて、安心できるようにすることや、原因を推測しながら対応を重ねていくことも大切です。

同じことをあまりにも繰り返す場合は、「テレビを見ますか?」などと声を掛けて、別の物や場所へ興味・関心が向くように接してみるのもよいかもしれません。

患者さんを不安にさせない対応

患者さんと話がかみ合わず、看護師もイライラやストレスを感じることがあるかと思います。また、つい感情的になって強い口調で対応してしまったり、いい加減な対応をしてしまうかもしれません。

しかし、そんな対応をとられると、患者さんはプライドを傷つけられ、不安に感じます。看護師には、「患者さんは初めて話しているんだ」と思って対応する態度が求められます。

転倒の危険性

加齢の変化とともに、転倒や転落といった事故に遭遇するリスクは高くなりますが、認知症を患うことで危険の察知や予測、的確な判断を下す能力の低下などにより、そのリスクはさらに高くなります。

レビー小体型認知症の症状

レビー小体型認知症は、認知機能障害だけでなく、パーキンソン病のような運動機能障害があるのが特徴的で、幻視もみられます。初期には記憶量が軽度であることが多いですが、日によって認知機能も変化します。

レビー小体型認知症では、パーキンソン症状による運動機能の低下、認知機能障害、注意障害が原因となって転倒を繰り返すことがあります。さらに、自律神経障害をきたすことがあり、起立性低血圧からも転倒を起こす危険性があります。

患者さんの行動パターンから予測する

生活パターンの把握や排泄行動を観察することで、患者さんの行動を予測しながら支援することも大切です。
患者さんがそわそわしたり、物音がしたり、何らかの身体的サインがみられる場合は、「何か用事はありませんか?」「そろそろ、トイレに一緒に行ってみませんか?」と、排泄パターンに合わせて声を掛けてみるのも効果的です。

一人で行動する背景には何らかの理由があると考え、その理由を、行動や発言から把握することです。

こんな対応はDo not!

× 何度も聞いた話なので無視したり、いい加減な返事をする
× 「この前も説明しましたよ」と指摘し、責める
× 「なぜ一人で歩いたんですか!」「危ないでしょ」と叱る

執筆
浅野均(あさの・ひとし)
つくば国際大学医療保健学部看護学科 教授
 
監修
堀内ふき(ほりうち・ふき)
佐久大学 学長
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【引用・参考】
1)松下正明ほか監.『個別性を重視した認知症患者のケア』改訂版.東京,医学芸術社,2007,166p.
2)鷲見幸彦監著.『一般病棟で役立つ!はじめての認知症看護』東京,エクスナレッジ,2014,213p.
3)川畑信也.『これですっきり!看護・介護スタッフのための認知症ハンドブック』東京,中外医学社,2011,128p.
4)清水裕子編.『コミュニケーションからはじまる認知症ケアブック』第2版.東京,学研メディカル秀潤社,2013,173p.
5)飯干紀代子.『今日から実践認知症の人々とのコミュニケーション』東京,中央法規出版,2011,142p.
6)鈴木みずえ編.『急性期病院で治療を受ける認知症高齢者のケア』東京,日本看護協会出版会,2013,232p.
7)日本認知症ケア学会編.『改訂・認知症ケアの実際Ⅱ:各論』東京,ワールドプランニング,2008,300p.
8)日本神経学会監.『認知症疾患治療ガイドライン2010』東京,医学書院,2011,256p.
9)本間昭監.『認知症のある患者さんのアセスメントとケア』ナツメ社.2018,142-3.

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