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12 寝たきりの患者さんの体温が38.0℃あった

高齢患者さんの症状や訴えから異常を見逃さないために必要な、フィジカルアセスメントの視点をお伝えする連載です。最終回は、急に高体温となった患者さんです。さて訪問看護師はどのようなアセスメントをしますか?

事例

89歳男性。寝たきりで在宅療養をしている患者さんで、高齢の妻が介護しています。訪問して体温を計測したところ、38.0℃ありました。  

あなたはどう考えますか?


アセスメントの方向性

急に高体温となっており、感染による発熱、またはうつ熱や熱中症の可能性があります。体温を正確に計測して鑑別を行います。感染徴候を確認し、重篤度と原因を推定し、敗血症の徴候がみられたら速やかに医療につなげる必要があります。

ここに注目!

●感染による発熱かどうか?
●寝たきりだと自分で環境調整がしにくく、介護力も強くはないため、うつ熱の可能性もあるのでは?


主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・高体温の経過(気づいた時刻、その後の処置と経過)
・高体温に伴う症状(熱感、悪寒、発汗、頭痛、頭重感、だるさ、関節や皮膚の痛み、ふらつき、転倒)
・うつ熱・熱中症のリスクとなる環境(高温多湿、掛け物の掛けすぎ、湯たんぽや電気毛布の使用、など)
・感染徴候(疼痛、腫脹、発赤、熱感、分泌物の増加、のどの痛み、咳、痰、喘鳴、尿の混濁や浮遊物、血尿、尿の臭気の増加、下痢、不消化便、血便、など)
・生活への影響(食欲と食事摂取量の低下、水分摂取量の減少、活動量の減少、ADLの低下)

客観的情報の収集

体温

体温を測定し、平熱との差を確かめます。

うつ熱では、体温放散を促すと体温が下がります。薄着にするなど、熱が放散されやすいようにしてしばらく様子をみて、体温を計測しなおしてください。すぐに低下すれば、うつ熱と判断してもよいでしょう。

感染による発熱の場合は、冷罨法では体温の低下は起こらず、悪寒を増強する可能性があります。悪寒戦慄と解熱の日内変動がみられることが多く、消炎鎮痛薬の使用で速やかに体温が下がりますが、原因となっている炎症が治まらないかぎり、薬の効果が切れると上昇します。

皮膚温

看護師の手背を使って皮膚の温度を確認しましょう。

手背で皮膚温を触診

うつ熱の場合は熱がこもった状態であるため、皮膚温も高いです。体温は高いのに末梢に冷感がある場合は、発熱前の悪寒と考えられ、感染の疑いが強くなります。

敗血症徴候

感染が全身に及ぶと、重篤な全身症状を引き起こす敗血症になります。発熱に加え、ショック状態(頻呼吸、頻脈、血圧低下、意識レベルの低下やせん妄)となり、播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation;DIC)を併発することがあります。

DICでは、紫斑がみられることがあり、口腔や陰部等の粘膜から出血することもあります。このような徴候がみられれば、速やかに医師に報告して対処が必要です。

感染部位の探索

特に高齢者が感染を起こしやすいのは、

・褥瘡や外傷、医療機器刺入部等、皮膚の破綻がある部位
・呼吸器系
・尿路
・消化器系
・医療機器挿入によるもの

です。これらの部位の皮膚や粘膜に、腫脹・発赤・熱感・疼痛・分泌物増加がないかを確認します。

中心静脈カテーテル等の医療機器が原因となる感染は、原因を取り除かないかぎり治まらず、敗血症になる可能性がありますので、注意深く観察してください。

報告のポイント

・高体温の経過
・炎症の徴候、炎症の原因部位
・敗血症の徴候

執筆 
角濱春美(かどはま・はるみ)
 
青森県立保健大学
健康科学部看護学科
健康科学研究科対人ケアマネジメント領域
教授
 
記事編集:株式会社メディカ出版

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