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異食

患者さんの言動の背景には何があるのか? 訪問看護師はどうかかわるとよいのか? 認知症を持つ人の行動・心理症状(BPSD)をふまえた対応法を解説します。最終回の第12回は、食べられないものを食べる患者さんの行動の理由を考えます。

事例背景

70歳代女性。食事はあっという間に食べてしまい、食べたことを覚えていない。家族が目を離すとティッシュペーパーをお茶に浸けて食べたり、消しゴムや煮ていない豆類を食べ、嘔吐や下痢をする。

なぜ患者さんは異物を食べるのか?

認知症が重度になると、食物とそうでないものとの区別がつかず、異食が起きることがあります。異食とは、食べられないものを口に入れることや、食べてしまうことです。

味覚がしっかりあれば、異食した場合にも吐き出すことができますが、味覚が障害されていると飲み込んでしまいます。

また、満腹中枢の鈍化も、異食や過食を招くことになります。
心理的に、孤独感や満たされない欲求などの代償として、異食が起こることもあります。

患者さんをどう理解する?

このような認知症患者さんへの対応としては、苦痛や不安な思いに寄り添い、患者さんの苦痛を取り除くと混乱がしずまるといわれています。

異食に遭遇したら

異食をしている場面に遭遇した場合は、患者さんを驚かせないように、落ち着いた対応が大切です。

まずは、異食の患者さんを見かけたら、大きな声を出さないようにしましょう。その声に驚いて患者さんが反射的に飲み込むことがあります。

異食をしたものをすぐに口外に出そうと、患者さんの口の中に無理やり手を入れようとすると、患者さんは驚いて口を開かなかったり、噛んだりすることがあります。

慌てずに、患者さんの名前をゆっくり呼び、体にそっと触れて注意を向けてから、患者さん自身に口を開けてもらうようにお願いし、吐き出せるように促していきます。

異食の例

異食するものには、実にさまざまなものがあります。

異食の例

・新聞
・ティッシュペーパー
・花・草・土
・洗剤・薬品
・化粧品
・電池
・タバコ
・ゴミ
・自分の便
・布類(タオル等)
・紙オムツ
・花瓶の花

命に危険が及ばないものの場合は、他の食品(たとえばお菓子など)を用意して交換する方法もあります。

薬品・電池など命に危険があるものを食べた場合には、各製品に添付されている応急処置(吐かせる・水を飲ませて薄めるなど)をすると同時に、医師による処置を受けます。

異食により命に危険がおよぶものは、見えないところや手の届かないところに片付けて、患者さんの生活する空間の環境整備を行います。ティッシュペーパーや布などのように窒息に結びつくものにも注意を払い、患者さんの安全を守ることが必要です。

こんな対応はDo not!

× 異食を発見したときに、驚いて大きな声を出す
× 異食した物を慌てて口から出そうとする

こんな対応をしてみよう!

異食は食欲の異常ではなく、欲求不満に伴う反射的、衝動的な行為であることが多いので、まずは患者さんの周囲に危険なものを置かないようにしましょう。また、異食をしていないかどうか、患者さんが口を動かしているときなどに声を掛け、見守るようにするとよいでしょう。

栄養素として鉄やカルシウム不足などが異食の原因となることもありますので、認知症の症状と決めつけてしまわず、きちんと検査し原因を明らかにすることも必要です。

執筆
茨城県立つくば看護専門学校
佐藤圭子
 
監修
堀内ふき(ほりうち・ふき)
佐久大学 学長
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【引用・参考】
1)諏訪さゆりほか.「認知症高齢者の看護計画」『医療依存度の高い認知症高齢者の治療と看護計画』諏訪さゆりほか編.愛知,日総研出版,2006,179-85.
2)油野規代ほか.『認知症を伴う大腿骨頚部骨折患者に関わる整形外科看護師の対応困難な場面における臨床判断』金沢大学つるま保健学会誌.34(1),2010,91-9. 
3)長嶋紀一.「認知症の人の医学知識」『認知症介護の基本』長嶋紀一編.東京,中央法規出版,2008,39-40.

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