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多疾患併存の緩和ケアがよく分かる 開始のタイミングと支援ニーズの理解
多疾患併存の緩和ケアがよく分かる 開始のタイミングと支援ニーズの理解
特集
2026年8月18日
2026年8月18日

多疾患併存の緩和ケアがよく分かる 開始のタイミングと支援ニーズの理解

非がん疾患の患者さんに質の高い緩和ケアを届けるための知識・視点を整理。訪問時のケアの実践につながるヒントをお届けします。今回は、「多疾患併存(multimorbidity、マルチモビディティ)」を取り上げます。東京ふれあい医療生活協同組合 ふれあいファミリークリニックの角允博先生に、多疾患併存に対する緩和ケアにおいて必要とされる支援について解説いただきます。 はじめに 多疾患併存とは、一般的に2つ以上の慢性疾患が1人の患者に並存している状態と定義されます1)。またQOLの低下、死亡率、ポリファーマシー、転倒、入院などのリスク増加との関連が示されており、国際的にも喫緊の課題に挙げられています2)。 本稿では、多疾患併存に対する緩和ケアの意義と課題を、「なぜ」「いつ」「どのように」の3つの観点から検討します。 なぜ多疾患併存の緩和ケアが求められるのか WHOの緩和ケアの定義は「緩和ケアは生命を脅かす病に直面する患者と家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に発見・評価し対応することで苦痛を予防・緩和するアプローチ」とされています 3)。 日本ではこれまで緩和ケアはがん中心に発展してきましたが、この定義に照らせば対象はすべての重篤疾患であり、がん以外の慢性疾患にも対応する体制整備が急務とされています。また、これまでは単一疾患に対する緩和ケアが主体でしたが、現在のわが国の超高齢者の多くは認知症や心不全、COPD、脊柱管狭窄症など複数の慢性疾患・障害の連鎖の中で終末期を迎えています。こうした患者群では疾患間の相互作用や医療的介入の複雑化により、身体的・心理社会的苦痛が重層化しています。したがって、疾患単位の管理を超えた緩和ケアが今、求められているのです。 多疾患併存の緩和ケアをいつ提供するのか 多疾患併存の軌跡は一見予測不可能なため、終末期を特定することがしばしば困難です。多疾患併存の中でも、慢性的で治癒不可能な性質を反映している「Advanced multimorbidity」 (高度な多疾患併存)という概念がありますが、近年のレビューでは緩和ケアを必要とする多疾患併存症の患者をどのように認識し、どの時期に緩和ケアを提供することが望ましいかは明らかではありません4)。 「サプライズクエスチョン」による特定方法 終末期を迎え、緩和ケアを必要とする可能性のある患者を特定するための方法の1つに、「サプライズクエスチョン」というシンプルな質問法があります。これは、「患者が12ヵ月以内に亡くなっても驚きませんか?」と医師や看護師が自問し「驚かない」と回答することで緩和ケア対象者を同定する方法です。 サプライズクエスチョンを検討したメタアナリシスでは、「驚かない」と回答した場合のその後の死亡率を感度として0.69、「驚く」と回答した場合のその後の死亡率を特異度として0.69であり、中等度の精度を示しました。ただし、セッティング、追跡期間、回答者により、ばらつきがみられました5)。 「治療負担」という考え方 また、多疾患併存への緩和ケアの開始は、治療負担の概念から考えることもできます。Mayらは、慢性疾患患者や長期医療を受ける人々にとって、病気そのもの(症状、制約、合併症など)から生じる負担(burden of illness)に加えて、医療制度・治療プロセス・自己管理から生じる「治療負担」(burden of treatment)という別の重みがあると論じ、注意喚起をしています6)。 これらの負担に対応する能力はcapabilityと呼ばれ、負担とのバランスが崩れると個々の患者の医療成果が悪化するだけでなく、介護者の負担が増大し、さらに医療サービスの需要とコストが増加する可能性が指摘されています7)。これをふまえ、多疾患併存の各疾患の医療制度・治療プロセス・自己管理が患者や介護者の生活にどのような影響を及ぼしているかを把握し、医療者と生活者である患者の間で調整を行うことが重要です。 この調整は、今まで疾患治癒を目的としていた医療的介入を縮小し、症状緩和や患者家族の生活を配慮したケアにシフトするアプローチです。医療従事者が多疾患併存への治療介入自体が患者にとって生活負担になっていると感じる時こそ、緩和ケアの契機になると考えられます。 多疾患併存に対してどういった緩和ケアを行うか 多疾患併存にどのような緩和ケアを行うかは明らかになっていない点が多いですが、多疾患併存に対する緩和ケアのニーズをまとめた先行文献8)、9)を参考に、どういった緩和ケアが必要かを考察します。 (1)身体的苦痛 多疾患併存の身体的苦痛では、痛みと移動の困難が最も多いといわれています8)。日常臨床でも心不全、腎不全などの内部疾患に伴う疼痛、変形性膝関節症や脊柱管狭窄症などの整形疾患、帯状疱疹後神経痛など多様な痛みを訴える患者に遭遇します。さらに認知機能障害を合併した場合、疼痛の評価は困難となることも多くあります。 症状は疾患間で相互作用を及ぼし、一連の疾患をそれぞれ個別に治療し、他疾患を考慮に入れないことは非効率的で、潜在的に有害であることを考慮する必要があります10)。 移動の困難については、介護保険サービスによるリハビリテーションや福祉用具を活用してサポートしているのが現状ですが、「移動が困難であること」それ自体が患者の「苦痛」であることを認識しておく必要があります。これらの身体的苦痛は、後述する心理社会的・スピリチュアルな苦痛と混在し、その表現型として疼痛を訴える場合もあり、解釈には注意を要します。 (2)心理社会的苦痛 Nicholsonらの研究によると、多疾患併存の患者とその介護者は、身体的なニーズには十分に対応されていると考えていた一方で、心理社会的およびスピリチュアルなニーズへのサポートが不足していると認識していました。 心理面では「不幸」「孤独」「不安」「抑うつ」、社会面では「社会的なつながりの維持」「個性とアイデンティティの維持」「介護者への信頼」「家族のサポート」がテーマとして抽出されました8)。心理面は社会面とも密接に関係し、患者本人だけでなく、対応する家族や介護者への教育的サポートも必要であると示されています。 社会的なつながりの維持については、患者と介護者の双方において指摘されています。患者自身も機能の低下によって社会と断絶されることは容易に想像されますが、介護者もまたフルタイムの介護を提供することで、社会的接触が減少し、友人、隣人、地域社会からの孤立感を訴えます。 実臨床において、介護者が患者に信頼され、家族がサポートできる体制をとれているケースがすべてではありません。その結果、患者家族は施設入所を選びますが、介護施設で問題になるのが多数の入居者の中で個性とアイデンティティを維持することです8)。こういった社会的苦痛に現行の介護保険制度の枠組みだけで対応していくことは困難であり、介護施設を含め、介護を社会にひらいていく上での新たな取り組みも必要であると考えられます。 (3)スピリチュアルペイン さらに、Nicholsonらによる研究では、多疾患併存のスピリチュアルに対するニーズは、「意味と目的」「悲しみと喪失」「宗教性および宗教的嗜好」「現在をよく生きること」の4つのテーマに分類されています8)。がん患者において、時間存在である人間は、過去から将来をつなぐ時間の中で現在を生きていますが、罹患し将来がみえなくなることで現在の生に意味や存在が成立しなくなるといわれています11)。この時間存在の概念は、「意味と目的」や「現在をよく生きること」といったニーズに関連します。 多疾患併存の高齢者は、長期にわたる臨床経過の中で、こうした実存的な課題に直面しているのです。時にそれはスピリチュアルペインほど強くない訴えで、身体的・心理社会的苦痛と混在して表出されるため、これを識別・認識するのがしばしば困難になります。 臨床では、「もう生きていてもしょうがない」「早く迎えが来ないかな」「迷惑ばかりかけている」といった言葉を耳にすることも少なくありません。ここではそれをメッセージとして受け取り、言語化し、それを相手に返していく作業が大切です。元来、スピリチュアルペインの概念はがん領域で問題になることが多くありましたが、訪問看護を含めた在宅医療従事者はこの問題に今後、普遍的に取り組む必要があると考えます。 まとめ 本稿では、多疾患併存に対する緩和ケアの必要性、導入時期、提供方法について検討しました。多疾患併存の緩和ケアは、緩和ケア領域のみならず在宅医療やプライマリケアの現場でも喫緊の課題です。今後、臨床実践と研究の両面から、患者の多層的な苦痛を的確に理解し支える枠組みの構築が期待されます。 本文で使用した略語一覧(本文登場順)QOL:quality of life(生活の質)WHO:world health organization(世界保健機関)COPD:chronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患) 執筆:角 允博東京ふれあい医療生活協同組合 ふれあいファミリークリニック 東京都足立区小台宮城で家庭医・在宅医として外来、在宅を通じプライマリケアに従事。多疾患併存における臨床的複雑性と意思決定にチームで取り組んでいる。 編集:株式会社照林社 【参考文献】 1)Valderas JM,Starfield B,Salisbury C,et al.:Defining comorbidity:implications for understanding health and health services.Ann Fam Med 2009;7(4):357-363.2)Multimorbidity:clinical assessment and management.NICE guideline,2016.https://www.nice.org.uk/guidance/ng562026/8/10閲覧3)日本ホスピス緩和ケア協会:WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義(2002年)https://www.hpcj.org/info/history.html2026/8/10閲覧4)Bowers SP,Black P,McCheyne L,et al.:Descriptions of advanced multimorbidity:A scoping review with content analysis.J Multimorb Comorb 2025;15:26335565251326309.5)Gupta A,Burgess R,Drozd M,et al.:The Surprise Question and clinician-predicted prognosis:systematic review and meta-analysis.BMJ Support Palliat Care 2024;15(1):12-35.6)May CR,Eton DT,Boehmer K,et al.:Rethinking the patient:using Burden of Treatment Theory to understand the changing dynamics of illness.BMC Health Serv Res 2014;14:281.7)May C,Montori VM,Mair FS:We need minimally disruptive medicine.BMJ 2009;339:b2803.8)Nicholson CJ,Combes S,Mold F,et al.:Addressing inequity in palliative care provision for older people living with multimorbidity.Perspectives of community-dwelling older people on their palliative care needs:A scoping review.Palliat Med 2023;37(4):475-497.9)Llop-Medina L,Fu Y,Garcés-Ferrer,et al.:Palliative Care in Older People with Multimorbidities:A Scoping Review on the Palliative Care Needs of Patients,Carers,and Health Professionals.Int J Environ Res Public Health 2022;19(6):3195.10)Hourican C,Peeters G,Melis R,et al.:Understanding multimorbidity requires sign-disease networks and higher-order interactions,a perspective.Front Syst Biol 2023;3:1155599.11)村田久行:終末期がん患者のスピリチュアルペインとそのケア.日ペインクリニック会誌 2011;18(1):1–8.

緩和的鎮静とは?在宅での判断を支える「倫理の四要件」【学会レポート】
緩和的鎮静とは?在宅での判断を支える「倫理の四要件」【学会レポート】
特集
2026年9月1日
2026年9月1日

緩和的鎮静とは?在宅での判断を支える「倫理の四要件」【学会レポート】

終末期の利用者さんから「つらいときは眠らせてほしい」と言われたら——。在宅医療に携わる医療・介護職にとって、いつか向き合う可能性のある「緩和的鎮静」をテーマにしたワークショップが、第8回日本在宅医療連合学会大会(2026年7月4日・5日、札幌)で開催されました。緩和的鎮静とは何か、その判断を支える「倫理の四要件」とは。講義と多職種グループワークで構成された学びの濃い90分を、NsPace編集部がレポートします。 ※本記事は学会ワークショップの内容を編集部がレポートしたものです。実際の鎮静の判断は、関連学会の手引きを確認し、主治医を含む多職種チームで行ってください。 ワークショップ概要〜経験はあるのに、枠組みは知られていない ワークショップ冒頭で行われたリアルタイムアンケートでは、鎮静に携わった経験のある参加者が多数を占めた一方、判断の拠りどころとなる「持続的鎮静における倫理の四要件」については、知らないと答えた方が目立ちました。 多くの医療従事者が経験しているのに、判断の枠組みは十分に知られていない。このギャップこそが、緩和的鎮静の難しさを物語っています。ワークショップは前半が講義、後半が架空症例をもとにした多職種グループワークという構成で進みました。 緩和的鎮静とは〜「眠らせること」が目的ではない 講義ではまず、緩和的鎮静の定義が整理されました。現在の定義は「治療抵抗性の苦痛を緩和することを目的として、鎮静薬を投与すること」。ポイントは、意識を低下させること自体が目的ではない、という点です。 緩和的鎮静は大きく2つに分類されます。 間欠的鎮静:夜間など苦痛の強い時間帯に限って鎮静薬を使い、その後は中止する方法 持続的鎮静:鎮静薬を持続的に投与する方法。さらに次の2つに分かれます。 調節型鎮静:苦痛の強さに応じて少量から調節する方法。意識の低下はあくまで副産物で、「これくらいなら耐えられる」という状態を最小量で目指す 持続的深い鎮静:調節型では緩和が難しい、または難しいと予測される切迫した状況で、深い鎮静状態とする方法 原則として調節型鎮静が優先で、持続的深い鎮静はそれでも緩和できない場合の選択肢である、という整理が示されました。 なぜ倫理が問われるのか 鎮静、特に持続的深い鎮静がデリケートな問題となる理由も明確に示されました。鎮静により意思疎通や自己決定が難しくなること、そして、その行為自体が予後を短縮する可能性が否定しきれないことです。講義では、予後が短い(日の単位)と予測される場合には、持続的深い鎮静が予後を極端に縮めることはないと想定されているものの、厳密な断定は難しいという研究の現状も紹介されました。だからこそ、どんなに苦しそうに見えても、倫理的な論点をチームで議論し、丁寧に意思決定のプロセスを踏むことが欠かせないのです。 判断を支える「倫理の四要件」 講義の核心は、持続的鎮静の倫理性を支える4つの要件でした。 (1)相応性 さまざまな選択肢を検討したうえで、鎮静が「相対的に最善」と判断できること。検討の軸は「苦痛の強さ」「治療抵抗性の確実さ」「予測される予後」の3つです。ここで強調されたのは、苦痛の強さとは「強い苦痛」ではなく「耐え難い苦痛」かどうか、という点。周囲からどれほど苦しそうに見えても、本人が「耐えられる」というなら、それは耐え難い苦痛ではない。主観を尊重する視点が印象的でした。また、治療抵抗性とは「他の手段を尽くしたか」ということ。安易に鎮静に飛びつかない、といういましめでもあります。 (2)医療者の意図 鎮静の意図が「苦痛の緩和」であり、生命予後の短縮ではないことを、関わる医療者が理解していること。 (3)患者・家族の意思 本人に意思決定能力があれば本人の意思を確認し、難しい場合はこれまでの言葉や価値観から推定します。家族と話すときは「ご家族はどうしたいですか」ではなく「ご本人ならどう望まれるでしょうか」と、本人の意思を推定する形で対話すること。そして、決断の責任を家族だけに背負わせず、医療チームも一緒に背負うことが大切だと語られました。 (4)医療チームによる判断 一人で決めないこと。在宅医療では全員が集まることが難しい場面もありますが、実施可能な範囲で複数の視点から意見を求め、意思決定の過程を記録に残すことの重要性が強調されました。 グループワーク〜訪問看護師の「相談」から始まる事例 後半は、終末期の肺がんの利用者さん(架空症例)をもとにしたグループワークでした。「苦しい時間が続くなら眠らせてほしい」という本人のかねてからの言葉。「眠ると話せなくなるのでは」と揺れるご家族。そして、症状緩和を尽くしても苦痛が取りきれない状況で、訪問看護師から医師へ「持続的鎮静はどうでしょうか」と相談が上がる——という設定です。各テーブルでは、医師・看護師・薬剤師・ケアマネジャーなど多職種が「四要件はどの程度満たされているか」「鎮静の前にできることはないか」を議論しました。正解探しではなく、迷いや葛藤も大切な意見として扱うというグラウンドルールのもと、それぞれの職種の視点が交わる時間となりました。 「鎮静の前に、叶えたいことを話し合う」 質疑応答で心に残ったやりとりがあります。症例の利用者さんには「家の近くの海が見たい」という願いがありました。この願いにどう向き合うか、という問いに対して、登壇者からは「なぜ海に行きたいのか、その奥にある思いを掘りさげることが大事」という視点が示されました。海そのものが大切な人もいれば、大切な人との思い出こそが本質という人もいます。願いの背景を理解できれば、たとえ海に行けなくても、その人にとって意味のある関わりができるかもしれません。鎮静を検討する前に、本人の叶えたいことをチームで話し合う意義を、あらためて考えさせられる場面でした。 まとめ〜訪問看護師は利用者の意思決定に伴走する〜 在宅で利用者さんに継続的に寄り添う存在として、訪問看護師は重要な役割を担っています。 グループワークの事例でも、鎮静の検討は訪問看護師の気づきと相談から始まりました。 「眠らせてほしい」という言葉を受け止め、耐え難い苦痛かどうかを見きわめ、本人と家族の揺れる思いをチームにつなぐ。倫理の四要件は医師だけのものではなく、訪問看護師が意思決定のプロセスに参加するための共通言語でもある——そう感じたワークショップでした。 なお、鎮静に関する考え方は、日本緩和医療学会の「がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き(2023年版)」にまとめられており、学会ウェブサイトからどなたでも閲覧できます。ぜひ一度目を通してみてください。 【参考文献】 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「ワークショップ・交流集会・ハンズオンセミナー(事前予約)」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/workshop/ 2026/8/27閲覧 日本緩和医療学会 ガイドライン統括委員会:「がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き(2023年版)」.日本緩和医療学会ウェブサイト.2023年6月20日発行.https://www.jspm.ne.jp/publication/guidelines/individual.html?entry_id=1391 2026/8/27閲覧

耳が痛い原因は?緊急対応が必要なケースと様子を見てもいいケースを解説
耳が痛い原因は?緊急対応が必要なケースと様子を見てもいいケースを解説
特集
2026年9月8日
2026年9月8日

耳が痛い原因は?緊急対応が必要なケースと様子を見てもいいケースを解説

耳の痛みは、子どもから高齢者まで幅広い世代に見られることがあり、その原因もさまざまです。耳そのものに異常がある場合もあれば、顎や鼻、喉の炎症が関係していることもあります。本記事では、耳の痛みを引き起こす病気や、緊急対応が必要なケースについて解説します。利用者さんが耳の痛みを訴えられた際のアセスメントに活用してください。 耳の痛みを引き起こす「耳の病気」 まずは、耳が原因で痛みを引き起こしている場合についてみていきましょう。 中耳炎 中耳炎には大きく分けて「急性中耳炎」「滲出性中耳炎」「慢性中耳炎」「真珠腫性中耳炎」の4種類があり、その中でも急性中耳炎は強い痛みを伴うことが特徴です。急性中耳炎は、風邪や上気道感染症の後に発症することが多く、鼻詰まりや鼻水、喉の痛み、咳などの症状に続いて耳の痛みが現れます。進行すると中耳に膿が溜まり、圧力によって鼓膜が膨張して痛みが増します。 外耳炎 外耳炎は、耳の穴から鼓膜までの通路である外耳道に炎症が起こる疾患です。外耳道の皮膚は非常に薄く、刺激に対して敏感なため、何らかの要因で傷ついたり、過度な刺激を受けたりすると、細菌が繁殖し炎症を引き起こすことがあります。初期症状は、軽いかゆみや違和感です。炎症が進行すると、耳の痛みが生じ、耳を引っ張ったり、口を開閉したりするだけで痛みが増すことがあります。 鼓膜炎 鼓膜炎は、外耳と中耳の間に位置する鼓膜に炎症が生じる疾患で、急性と慢性に分類されます。片側の耳に発症することが多く、両耳に同時に発生することは稀です。 急性鼓膜炎は、鼓膜の表面に黄色い水疱が現れます。激しい痛みが生じることが多く、耳鳴りや耳の閉塞感を伴うこともあります。一方、慢性鼓膜炎は、外耳道の繰り返される炎症や感染が原因となり、長期的に持続する疾患です。鼓膜の表面に肉芽やびらん(ただれ)が形成されますが、痛みはそれほど強くはありません。 耳の痛みを引き起こす「耳以外の病気」 耳の痛みが、耳以外の病気によって引き起こされる場合があります。代表的な疾患は次のとおりです。 顎関節症 顎関節症は、顎の関節やその周囲の筋肉に異常が生じることで、口の開閉時に痛みを感じたり、スムーズに口を開けられなくなったりする疾患です。顎関節症の中でも、II型に分類されるタイプは関節の靭帯に異常が起こります。顎関節は耳のすぐ近くに位置しているため、顎関節痛を耳の痛みと感じる場合があります。 副鼻腔炎 副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔という空洞に炎症が生じる疾患です。鼻は耳管とつながっているため、耳の痛みや違和感など、耳の症状を併発することがあります。 急性副鼻腔炎では、鼻づまりや粘り気のある黄色・緑色の鼻水、頭痛、顔面痛(頬や目の奥、鼻周囲の痛み)・顔面腫脹、発熱などが主な特徴です。慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎が完治せずに慢性化してしまったもので、鼻づまりが長引き、嗅覚の低下が見られることがあります。 歯のトラブル(虫歯・親知らずなど) 虫歯や親知らずの炎症が進行すると、歯茎が腫れ、周囲の組織にまで炎症が広がることで、神経を通じて耳の痛みを感じることがあります。これは、歯やあご、舌の下などとつながる神経が耳にも分布しているためです。 扁桃周囲膿瘍 扁桃炎が悪化すると、扁桃の周囲に膿がたまり、「扁桃周囲膿瘍」を引き起こすことがあります。のどの痛みが非常に強くなり、唾を飲み込む際にも激痛を伴います。そして、耳にまで痛みが広がることもあります。 ラムゼイ・ハント症候群 ラムゼイ・ハント症候群は、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症する疾患です。顔面神経麻痺に加え、耳の周囲や口の中に痛みを伴う発疹が現れることが特徴です。 医療機関を受診した方がよいケース 耳の痛みは、軽い違和感から強い痛みまでさまざまです。痛みの程度や持続時間によっては、すぐに医療機関を受診した方がよいケースも。医療機関を受診した方がよいケースは次のとおりです。 強い痛みがある 強い痛みがある場合は、急性中耳炎の可能性があります。子どもの場合、頻繁に耳を触ったり泣いたりしている場合は強い痛みが起きていることもあり、早めの受診が必要です。 耳の中から出血がある 耳の中から出血がある場合は、外耳炎が悪化している可能性があります。進行すると強い痛みが生じるため、早めの受診が必要です。 顔面麻痺を伴う場合 耳の痛みに顔面麻痺を伴う場合は、ラムゼイ・ハント症候群の可能性があります。放置すると後遺症が残るリスクが高まるため、顔の動きに違和感を覚えたらすぐに診察を受けることが重要です。 高熱が続く場合 急性中耳炎や扁桃周囲膿瘍などの感染症は高熱を伴うことが多く、長引く場合は合併症を防ぐためにも受診が必要です。特に小さな子どもや高齢者は重症化しやすい点に注意が必要です。 耳の痛みで様子を見てもよいケース 耳の痛みが軽度で、短時間で自然におさまる場合は、必ずしも受診する必要はありません。気圧の変化や耳垢の詰まりが原因であれば、数時間以内に症状が軽減することが多いとされています。 ただし、痛みが繰り返し起こる、または徐々に強くなる場合は、慢性的な炎症や病気が隠れている可能性があるため、早めの受診を検討しましょう。 * * * 耳の痛みは、軽度のものから重篤な疾患のサインであるものまでさまざまです。適切な判断を行うために、耳の痛みに関する正しい知識を持つことが重要です。今回、解説した内容を利用者さんのアセスメントにぜひお役立てください。 編集・執筆:加藤 良大監修:瀬尾 達(せお わたる)医療法人瀬尾記念会瀬尾クリニック理事長。耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療の他、京都大学医学部講師や大阪歯科大学講師を兼任。祖父から代々の耳鼻科医の家系。兄は、聖マリアンナ医科大学耳鼻科教授。テレビやマスコミ出演多数。 【参考】〇日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「口腔・咽頭の病気」(2026年9月7日)https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=222026/9/7閲覧

初回訪問から始まる臨死期の意思決定支援 訪問看護師の役割とは
初回訪問から始まる臨死期の意思決定支援 訪問看護師の役割とは
特集
2026年9月15日
2026年9月15日

初回訪問から始まる臨死期の意思決定支援 訪問看護師の役割とは

在宅医療の第一線で活躍されている、すぎもと在宅医療クリニックの杉本由佳先生に解説していただき、臨死期における訪問看護師の役割を深く掘り下げていきます。今回は、信頼関係構築の起点となる初回訪問での状態把握のポイント、そして利用者さん・ご家族の意思決定支援に求められる実践的なかかわりについてお届けします。 「自宅で最期まで」を支えるために すべての人はいつか死を迎えます。その場所は病院、自宅、施設、ホスピスなどさまざまです。近年では、在宅医や訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなど多職種や社会資源を活用することで、自宅で最期を迎えることも可能になってきました。 しかし一方で、在宅療養には課題も多くあります。独居や老々介護、認知症の増加に加え、経済的困窮者の増加により、在宅療養が困難になるケースも少なくありません。 これらの課題を克服し、自宅で利用者さんを最期まで支えるためには、各職種の密な連携が不可欠です。また、それぞれのメンバーに、病態を正しく判断する能力と対応力、そして継続的なスキルアップが求められます。特に訪問看護師には多くの役割が期待されているといえるでしょう。 その役割を具体的に考える上で、まず注目したいのが初回訪問です。訪問看護師の皆さんに意識していただきたい視点とかかわりについて解説していきます。 初回訪問は状態把握と信頼関係構築の起点 病院からの事前情報を基に訪問する場合や、在宅医・利用者さん本人からの直接依頼で訪問する場合などがあります。いずれにおいても、初回訪問時は「初めまして」と挨拶をし、利用者さんとの最初の会話に注意を払いましょう。 この初対面の印象は重要です。「予想より元気そうな様子」「かなり厳しい状況かもしれない」といった直感的な判断材料となります。まずは意識状態、表情、体形、栄養状態、脱水の有無、浮腫・黄疸・貧血の兆候、皮膚の衛生状態、呼吸状態などの確認を行い、利用者さんの状態を大まかに把握しましょう。その後、腹水・胸水・腫瘤の触知、バイタルサインの測定、排尿・排便などの確認を通じて、病状をより詳しく推測していきます。(図1) 図1 初回訪問時に確認すること これらの項目を確認し、利用者さんの状態を慎重に見きわめる。 そして、どのような治療やケアを施しても生命的に厳しい状況なのか、あるいは痛み・呼吸困難・栄養状態などに対応することで改善の可能性があるのかを慎重かつ敏速に判断する必要があります。また、病院からの情報よりも病状が悪化しているのかも見きわめます。 特に病状が急速に悪化していると感じた場合は、初回訪問時に十分な時間をかけて本人やご家族と密にコミュニケーションを取り、信頼関係を速やかに構築し、意思決定支援を行うことが重要です。 意思決定支援をするために 1)本人やご家族の病状認識の確認 特に厳しい状況にある利用者さんの場合、初回訪問時には在宅医と訪問看護師が同席することが望ましいです。病院で病気の進行や予後についてどの程度説明がされているかを確認し、同時に利用者さん本人やご家族がそれをどのように受け止めているかを推測します。 例えば、家族やご本人が以下のようにおっしゃる場面にしばしば遭遇します。「先生は『まだまだ大丈夫』と言っていたけれど、食事量が減ってきていて、元気がなくなってきているので心配だ」「先生は『厳しい状態で、週単位です』と言われたけれど、私はどこも悪くなく健康そのものだと感じている」 医師の診断と利用者さんやご家族の認識にズレがある場合、または病院と在宅の医師の見立てに相違がある場合には、速やかに調整を行わないと、自宅での治療に遅れが生じてしまうことがあります。さらに、理解や心の準備が不完全であった場合には、「なぜこんなに急に亡くなってしまったのか?」と死亡後のご家族の喪失感が深まってしまう可能性もあります。 正確な情報を共有し、利用者さんとご家族の気持ちを尊重しながら、適切な意思決定を支援することが大切です。 2)性格や家庭環境を把握 以下の要素を確認し、現在の状況に応じて安全に行える治療・ケアを選択して提案します。 ・ 独居の有無、ご家族間の関係性(親密度・距離感)・ 本人および介護者(キーパーソン)の認知機能や体力レベル・嗜好や衛生環境(生活環境、介護スペース、ライフラインなど)・食生活、経済状況(医療・介護保険の負担割合など) 利用者さんの理解力が低い場合や病識がない、または否認している場合や認知症の独居などでは在宅療養が困難となることがあります。そのようなケースでは、経済状況や医療依存度に見合った施設の検討も必要です。 3)病状の説明、理解の確認 在宅医の説明を念頭に置きながら、利用者さんの環境や能力、体調を考慮し、理解しやすいように分かりやすく説明をしましょう。落ち着いた雰囲気で、ゆっくりと伝えることが重要です。 例えば、「もともとは〇〇癌ですが、現在は肺への転移が主な症状の悪化要因となっています。さらに、肝臓にも腫瘍がありますが、これによる痛みは今後もほとんどないと思われます」といった説明です。 在宅医の説明が利用者さんやご家族に十分に伝わっていないと判断した場合は、訪問看護師がより分かりやすい言葉で補足説明を行うとよいでしょう。理解の確認は何度か繰り返し行い、不明な点を気軽に質問できる環境を整えることが大切です。 4)予後予測に基づく症状や対応・治療方法の説明 病状の変化を理解した上で、自宅で可能な治療・ケアを提案しましょう。治療方針を決めるのは在宅医になりますが、利用者さん・ご家族の思いや、看護師の意見も重要です。在宅医に対し、看護師の気持ちや意見をしっかり伝え、議論できるような信頼関係を築くことが理想です。 予測される症状に対して、環境に見合った、適切な対応を伝えることで本人やご家族の不安を軽くすることができます。以下に、症状別・利用者さんへの安心につながる説明の例をご紹介します。ただし、「大丈夫です。治ります」といった過度な期待を持たせる表現は避けるべきでしょう。 表1 症状別・利用者さんへの安心につながる説明の例 痛みの管理「痛みが出た場合は、適切な痛み止めを使用するので安心してください。近年は改良された薬が多数開発されており、利用者さんに合ったものを選びやすくなっています」 呼吸困難への対応「呼吸が苦しくなった際は、自宅でも酸素を吸うことができます。必要になった場合、すぐに手配できるので心配ありません」 栄養補助「食事が口から摂れなくなる前に、高カロリーの点滴を行うことで、体の負担を軽減できます。また、口から摂取が可能であれば、今はいろいろな病状に対応した補助食品がたくさんあるので、経口補助食品のサンプルをお持ちします。少量でも栄養価が高く、おいしく摂取できます」 浮腫・腫れの対応「むくみや腫れが出た場合は、ステロイドを使用すると症状が軽減することがあります。例えば、顔にできた赤みの強いニキビがステロイド軟膏で改善されるのと同じような効果が期待できます。先生に相談してみましょう」 5)ご家族の受け入れ、心の準備を促すかかわり 病状が進行すると、治療を行っても近い将来に死を迎えることは避けられません。QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)をできる限り維持することは可能ですが、永遠の命を保証することはできません。 そのため、死が近づいた際の話をする場合には、自宅での生活を意識した伝え方が望ましいでしょう。例を以下に示します。 「せっかく自宅で療養しているのだから、痛みをなくし、やりたいことをできる限り支援します」「多少不自由な点があるかもしれませんが、楽しく快適に過ごせるようお手伝いします」「ギリギリまで自力でトイレに行けるよう福祉用具も駆使しながら支援します」 利用者さんが「今日は一日楽だった」と思える時間を作るために、「私たち医療者が全力で支える」という姿勢が重要です。ていねいな言い回し以上に、気持ちを込めた言葉や態度こそが利用者さんにとって必要なものであるといえます。 しかし、病状の進行や介護の負担により、「家で最期まで過ごす」と決意していた利用者さんやご家族の気持ちが揺れることもあります。病状の変化やご家族の表情に曇りが見えたときには、必ず声をかけ、心の負担を和らげながら治療・ケアの方針を随時見直していくことが大切です。そして、「必ず家で看取らないといけないわけではないですよ。納得できる形を一緒に考えていきましょう」と、柔軟な選択肢があることを伝えることも必要です。 利用者さんとご家族が愛情に満ちた濃密な時間を過ごせるよう支援し、利用者さんとご家族、そして医療者との間に信頼関係を築けるようにすることが何より大切です。どこで誰とどのように生活し、最期を迎えたいのかを何度も話し合い、調整を重ねる過程こそが大切な思い出となるでしょう。 執筆:杉本 由佳すぎもと在宅医療クリニック 院長 1995年名古屋市千種区にすぎもと在宅医療クリニック開業。在宅栄養管理、緩和医療が専門分野。 所属学会日本在宅医療連合学会(専門医・指導医・評議員・特任理事)日本緩和医療学会(認定研修施設 認定医)日本栄養治療学会(認定医) その他、活動実績● 日本在宅医療連合学会「がん疾患の在宅医療人材育成講座」執筆● 原著論文「在宅静脈栄養における脂肪乳剤の使用状況と問題点 」Medical Nutritionist of PEN Leaders Vol.2 No.1 2018 に掲載 編集:株式会社照林社

流行性角結膜炎(はやり目)とは?症状・原因・予防・治療法を解説
流行性角結膜炎(はやり目)とは?症状・原因・予防・治療法を解説
特集
2026年9月29日
2026年9月29日

流行性角結膜炎(はやり目)とは?症状・原因・予防・治療法を解説

流行性角結膜炎(はやり目)は感染力が強い結膜炎で、医療・介護の現場では特に注意が必要な疾患です。訪問看護の現場では、利用者さんやご家族の間で感染が広がることを防ぐため、早期発見と適切な対応が求められます。 本記事では、流行性角結膜炎の症状や原因、予防策、治療法について解説します。利用者さんのアセスメントやケアに役立ててください。 流行性角結膜炎とは 流行性角結膜炎(Epidemic keratoconjunctivitis:EKC)は、感染力の強い結膜炎の一種で、「はやり目」とも呼ばれます。発症までの潜伏期間は8~14日と比較的長く、突然症状が現れることが特徴です。 主な症状は、まぶたの腫れ(眼瞼浮腫)や涙が多く出る(流涙)などで、強い充血を伴います。通常、片目から始まることが多いですが、感染力が非常に強いため、短期間で両目に広がることがよくあります。 特徴的な症状は、耳の前にあるリンパ節(耳前リンパ節)の腫れです。ほかの種類の結膜炎ではあまりみられないため、診断の際の手がかりとなります。また、角膜にも炎症が及び、透明度が低下して混濁が生じることがあります。数年間続くこともあり、視力に影響を与える可能性があるため、早期の対処が重要です。 流行性角結膜炎の原因 流行性角結膜炎の原因は、アデノウイルスの感染です。アデノウイルスは非常に多くの種類があり、51の血清型と52~67型の遺伝的型が確認されています。 その中でも、流行性角結膜炎の発症に関与するのは下記のとおりです。 D種:8型、19型、37型、53型、54型、56型 B群:3型、7型、11型 E群:4型 特にD種の8型、19型、37型、53型、54型および56型が流行性角結膜炎の原因になると考えられています。 流行性角結膜炎の予防方法 流行性角結膜炎は、主に接触感染で、涙や目やに(眼脂)が付着したタオルやティッシュペーパー、洗面器、枕カバーなどを介して感染します。 感染を防ぐには手洗いを徹底することが基本です。特に、目をこすったり、目薬をさしたりした後は、石鹸を使って丁寧に手を洗い、清潔なタオルやペーパータオルで拭きましょう。また、使用したティッシュペーパーや目薬をさした後のゴミは、ウイルスの拡散を防ぐために、密閉できるビニール袋に入れて廃棄します。涙や目やにが付着しやすい枕カバーやタオルはこまめに洗濯しましょう。 ドアノブやパソコンのキーボード、眼鏡、机、椅子など、手が頻繁に触れる場所は、ウイルスが付着しやすいため、塩素系漂白剤でこまめに消毒することが望ましいでしょう。 流行性角結膜炎にかかりやすい年齢 流行性角結膜炎は、幅広い年齢層で発症する感染症ですが、特に1~5歳の小児に多くみられます。小児がかかりやすい理由として、免疫機能が十分に発達していない、日常的に手で目をこすりやすい、集団生活の中で感染しやすい環境にあるなどが挙げられます。 また、流行性角結膜炎は大人にもみられる疾患です。家族内や職場での感染が多く、医療従事者や介護職員、教育関係者など、多くの人と接する機会がある職種の方は、特に注意が必要です。 流行性角結膜炎の治療法 現在(2025年時点)、アデノウイルスに効果がある抗ウイルス薬は存在しません。流行性角結膜炎は、発症から2週間ほどでウイルスに対する抗体が体内で作られ、自然に回復していくため、治療の目的は炎症を抑えながら症状を和らげることです。 炎症を抑えるために、抗炎症成分を含む点眼薬を使用します。また、角膜に炎症や混濁が生じている場合はステロイドの点眼薬を使用します。細菌感染も伴っている可能性がある場合には、抗菌剤の点眼薬を併用することがあります。 流行性角結膜炎で医療機関を受診する目安 流行性角結膜炎は感染力が非常に強いため、症状が現れた際には早めに医療機関を受診しましょう。また、流行性角結膜炎は、感染症法における第3種感染症に分類されており、医師から「感染の恐れがない」と認められるまで登校や出勤を控えなければなりません。 流行性角結膜炎と似た病気 流行性角結膜炎と症状がよく似た病気はいくつか存在し、鑑別が必要です。流行性角結膜炎と混同されやすい代表的な病気として、プール熱と急性出血性結膜炎があります。 プール熱 プール熱は正しくは咽頭結膜熱といい、アデノウイルス(主に3型、そのほか2型,4型、7型など)の感染によって引き起こされる疾患です。 潜伏期間は5~7日程度で、発熱、のどの痛みや腫れ、目の充血や目やにの増加などの症状が現れます。流行性角結膜炎と同じく、リンパ節の腫れがみられる場合があります。そのほか、腹痛や下痢などの消化器症状を伴うこともあるなど、流行性角結膜炎と症状が少し異なります。通常、症状は1~2週間ほどで自然に治まりますが、まれに肺炎を合併し、重症化するケースも報告されています。 >>関連記事プール熱の症状・原因・治療法を解説 大人がかかるとどうなるの? 急性出血性結膜炎 急性出血性結膜炎は、エンテロウイルス70(EV70)やコクサッキーウイルスA24変異株(CA24v)によって引き起こされる結膜炎です。 突然の強い目の痛みや異物感、光がまぶしく感じるなどの症状から始まります。その後、結膜の充血が現れ、特に結膜下出血が顕著にみられます。また、まぶたの腫れや目やに、結膜の濾胞形成、角膜表層のびまん性混濁といった症状も伴うことがあります。 さらに、全身症状として頭痛や発熱、呼吸器症状がみられることがあり、単なる目の病気ではなく、全身に影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。 * * * 流行性角結膜炎は、アデノウイルスによる強い感染力を持つ疾患で、適切な感染対策を講じることが重要です。特に訪問看護の現場では、利用者さんだけでなくそのご家族やスタッフ間での感染拡大を防ぐため、標準予防策の徹底が求められます。利用者さんの状態を的確に見極め、医療機関につなげるとともに、日頃からの衛生管理と適切な対応を心がけましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:内野 美樹ケイシン五反田アイクリニック院長・慶應義塾医学部眼科学特任講師2001 年山梨医科大学卒業、慶應義塾大学医学部眼科学教室入局2012 年慶應医学博士号取得、ハーバード大学医学部スケベンス眼研究所留学2015 年ハーバード大学公衆衛生大学院にて修士号取得2016 年慶應義塾大学医学部特任講師、2020 年ケイシン五反田アイクリニック院長現在は公衆衛生学の視点より予防医学に重点を置いたアイケアグッズを多く監修しており、数多くのメディアで活躍中である。 【参考】〇国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「流行性角結膜炎」(2014年04月01日)https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/epidemic-keratoconjunctivitis/index.html2025/9/14閲覧〇国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「急性出血性結膜炎」(2012年7月)https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ka/ahc/010/ahc-intro.html2025/9/14閲覧

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2026年10月6日
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気づけばこんな距離に!?…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

1日の走行距離にびっくりすることも 緊急訪問や代わりの訪問が重なった日は、いつものルートがバラバラに…。1日の終わりにメーターを見て、びっくりすることがあるにゃ! 訪問看護では、利用者さんのお宅をできるだけ効率よく回れるように訪問ルートを組んでいますよね。ところが、緊急訪問が入ったり、スタッフのお休みで代わりに訪問したりすると、いつものルートはたちまち崩れてしまうもの。訪問看護師さんからは、「緊急訪問や欠員による代行訪問があると、気づいたらすごく長い走行距離になっていることがある」「自転車の場合は、電動自転車のバッテリーが切れて、ただの重い自転車になってしまうことも…」といった声が聞かれました。移動が多くなりそうな日は、車の燃料や自転車の充電をいつも以上にチェックしておきたいですね。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

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