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受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ」
受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ」
特集
2023年8月9日
2023年8月9日

受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、櫛野 秀原さん(ウィル訪問看護ステーション江東サテライト/東京都)の審査員特別賞エピソード「担当看護師からパパママ友へ」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「担当看護師からパパママ友へ」前回までのあらすじ鎖肛のお子さん(優太くん)のケアに入っていた訪問看護師の櫛野さん。佐藤さん夫婦と対話を重ね、試行錯誤しながら訪問していました。互いを支え合う佐藤夫婦を尊敬していた櫛野さん。櫛野さん自身もパパになることがわかり、早速佐藤さんに報告しました。 >>前編はこちら受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 担当看護師からパパママ友へ<後編> 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:櫛野 秀原(くしの しゅうげん)さんウィル訪問看護ステーション江東サテライト(東京都)今回の受賞は、佐藤優太くん(仮名です)のお母さまも喜んでくださいました。私のケースのように、看護師としてだけではなく、一人の人として接してもらえるのは、利用者さんとの距離が近い訪問看護師という職種の醍醐味だと思っています。私は、どんどん若い世代の看護師さんたちも在宅医療の世界に飛び込んで来ていただきたいと思っており、そう思えるような訪問看護の魅力が伝えられたら…と考えて応募いたしました。エピソードやこちらの漫画を読んでいただき、少しでもそういった魅力が伝わるとうれしいです。 [no_toc]

在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践
在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践
特集 会員限定
2023年8月8日
2023年8月8日

在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践【セミナーレポート後編】

2023年5月19日、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「ピラティスの基礎知識&実践【在宅ケアに生かせる】」を実施しました。講師を務めてくださったのは、理学療法士として訪問看護の現場でピラティスを実践した経験をもつ、ピラティスインストラクターのTatsuya.Sさんです。後編では、看護師のみなさんにぜひ実践いただきたいピラティスをご紹介します。 >>前編はこちら在宅ケアに生かせる/ピラティスの基礎知識&事例【セミナーレポート前編】 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】Tatsuya.Sさんピラティスインストラクター(zen place pilates武蔵小杉スタジオ 所属)/理学療法士・健康運動指導士・介護支援専門員大学で理学療法を学び、理学療法士として6年間にわたって総合病院に勤務。回復期リハビリテーション、訪問リハビリテーション、デイケアを経験する。その中で予防分野に興味をもつようになり、ピラティスと出会う。訪問看護の現場で理学療法士としてピラティスを実践した後、より学びを深めるため、現在はピラティスインストラクターとして活動している。 ピラティスを実践してみよう ピラティスを指導する上では、自身が実践者であることがとても重要なポイントになります。自分が実際に感じたことでないと、他者に伝えることは難しいからです。 ここからは、看護師のみなさんにぜひ実践いただきたいピラティスをご紹介しますので、ぜひこの記事を読みながらトライしてみてください。マットやバスタオルが手元にある方は床で、ない方は座位の動きではイスを、臥位の動きは壁を使って行ってください。 立位→四つ這いのエクササイズ 【STEP 1】足を軽く開いて立つ足を坐骨の幅(こぶしひとつが入るくらい)に合わせて開いて立ち、背骨が左右の足の中心にくるように意識します。さらにイメージできる方は、「母指球・小指球・かかとの3点×左右の足=6点」の中心に背骨がくるようにしましょう。 【STEP 2】どこまで体重をかけられるのか確認(前後)つま先とかかとそれぞれに、交互に体重をかけていきます。「これ以上傾くと倒れそう」というギリギリまで体重を移動しながら、足裏に意識を集中して、自分がどこまで体重をかけられるのかを確認します。このとき、背骨がどのような状態になっているかも意識できるとベターです。 【STEP 3】どこまで体重をかけられるのか確認(左右)STEP 1の状態に戻ったら、次は左右に揺れます。STEP 2と同じように足裏の感覚に意識を向け、今どこに体重がかかっていて、どこまで重心を移動できるか確認してください。 【STEP 4】ゆっくりと四つ這いの姿勢になる続いて、四つ這いの姿勢に移行します。まずは頭をゆっくりと前に傾け、次に太ももで体を支えながら膝を曲げていきます。頭は5kgもの重量がありますから、その重みにつられて背骨が上から順番に丸まっていきます。 【STEP 5】尾骨から頭まで一直線にキープ体が左右どちらかに傾いていないか注意しながら手を床まで下ろしたら、四つ這いになります。肩の下に手、股関節の下に膝がある体勢です。背中は、頭のほうがやや高い状態で、尾骨から頭まで一直線にキープします。 【STEP 6】「骨盤後傾」の動きまずは尾骨のみを丸め(尾骨は小さいので、外からは動いていないように見えます)、続いて仙骨、腰の背骨を曲げます。「骨盤後傾」という動きです。 【STEP 7】さらに体を丸める手と足で床を押しながら、胸の背骨、首、頭までを順番に丸めていきます。 【STEP 8】つま先を立て、背骨を一直線に次に、足首を返して床につま先を立てましょう。そのまま膝を空中に浮かせて、背骨を一直線にします。 【STEP 9】坐骨を天井に向かって上げるそのまま坐骨を天井に向かって上げます。手と手の間に頭があり、尾骨から頭まで斜め一直線になっている状態が理想的です。 アップストレッチ 【STEP 10】「アップストレッチ」を行う右膝を少し曲げ、左のかかとは下げてストレッチします。続いて左膝を同じように曲げて、右のかかともストレッチしましょう。呼吸を止めないように注意してください。 座位(あぐら)のエクササイズ 【STEP 1】座って背筋を伸ばすマットがある方は、あぐらの状態で床に座ります。イスを使う方は浅く腰かけてください。いずれも、坐骨に座ることを意識しましょう。また、尾骨から頭まで「長い背骨」をつくるイメージで、背筋を伸ばします。 【STEP 2】手を前に伸ばし上下に動かす両手を「前ならえ」の状態にしたら、息を吐きながら上に上げます。続いて、息を吐きながら前ならえの形に戻します。背骨の形はキープします。 【STEP 3】手を伸ばし左右に開閉する次に、前ならえの状態から、息を吸いながら横に手を広げましょう。そして、息を吐きながら手を閉じます。 【STEP 4】頭・首・胸を反らした後、背骨全体を丸める今度は、息を吸いながら手をオープンしたら、尾骨は動かさずに、頭と首、胸を反らせます。そして、息を吐きながら手を戻し、背骨全体を丸めてください。 【STEP 5】側屈の動きSTEP 1の姿勢に戻したら、手を頭の後ろに添え、側屈の動きをしていきます。息を吸いながら背骨を右に曲げ、吐きながら戻す。同じ要領で左にも曲げましょう。 【STEP 6】背骨をひねる動き続いて、背骨をひねる動きです。頭を背骨の上でくるくる回すイメージで、息を吐きながら左右にひねり、吸いながら戻します。イメージできる方は、胸椎7・8番からひねることを意識しましょう。 仰向けのエクササイズ 【STEP 1】基本姿勢をとるマットがある方は床に仰向けに寝て、足を軽く曲げ、お尻をもち上げやすい位置までかかとを引き寄せます。壁を使う方は、背中をつけた状態で膝を曲げ、かかとは壁から一足分離してください。全員、足幅は坐骨幅に開きます。 【STEP 2】「ペルビックカール」を行う尾骨の先端から丸めるように動かし、骨盤を後傾します。続いて、仙骨の上と腰の背骨を浮かせます。そして、尾骨に近いほうの背骨から順番に、胸の背骨の一番上まで床から剥がしてもち上げます。このエクササイズを「ペルビックカール」といいます。 ペルビックカール 【STEP 3】ゆっくりともとの姿勢へ戻すSTEP 2(ペルビックカール)の状態で息を吸い、吐きながら胸から順に戻していきます。 【STEP 4】「シングルレッグリフト」を行う(1)続いて、シングルレッグリフトを行います。右足を膝関節の角度が直角(90度)になるようにもち上げましょう。股関節も90度にし、足首は伸ばします。ピラティスの用語では、このポーズを「テーブルトップポジション」といいます。 テーブルトップポジション 【STEP 5】「シングルレッグリフト」を行う(2)息を吸いながら右足のつま先を床にタッチします。ももの角度は45度です。そして息を吐きながらテーブルトップポジションに戻しましょう。骨盤や背骨をキープすることを意識しながら、左足も同じように行います。これで、シングルレッグリフトは終了です。なお、壁を使う方は足踏みをするような状態になります。 【STEP 6】「チェストリフト」を行うここから、チェストリフトを行います。STEP 1の体勢(かかとは楽な位置で構いません)に戻ったら、頭の後ろで手を組み、肘が視野にギリギリ入るようにします。その状態で息を吸って、吐く息で頭から順に、首、胸、腰、尾骨まですべての背骨を丸めていきます。そして、息を吸いながら戻しましょう。 チェストリフト 【STEP 7】「チェストリフト ウィズ ローテーション」を行う次に、頭から尾骨まで丸めた状態でホールドし、息を吐きながら胸の背骨を左右にひねります。戻すときは息を吸いましょう。両ももの間でひねるようなイメージで行います。これでチェストリフトとチェストリフト ウィズ ローテーションが完了です。 チェストリフト ウィズ ローテーション うつぶせのエクササイズ 【STEP 1】「バックエクステンション」を行う(1)床にうつぶせに寝転がり、手を顔の横にもってきます。壁を使う方は、壁から少し離れている状態でOKです。 【STEP 2】「バックエクステンション」を行う(2)息を吸いながら、頭、首、胸を反らせましょう。息を吐きながら戻します。おへそが少し床から浮いているイメージをもって行ってください。 バックエクステンション 深呼吸のエクササイズ 【STEP 1】「キャットストレッチ」を行う四つ這いの姿勢をとります。肩の下に手、股関節の下に膝がくるようにし、両手両足で背骨を支えます。その状態で、息を吐きながら背骨全体を丸め、吸いながら反らせましょう。少しテンポを上げて繰り返します。 【STEP 2】膝を1cm浮かせたり戻したりする次に、四つ這いの体勢で足首を返して床につま先を立て、息を吸います。そして、息を吐きながら膝を1cm浮かせてください。再び吸いながら戻し、繰り返します。 【STEP 3】お尻をもち上げ、ゆっくりと起き上がる四つ這いからお尻を天井に向けてもち上げたら、両足のかかとを床につき、手を足のほうへ歩かせて体を起こしていきます。背骨全体が丸まって、腕はだらんと脱力した状態です。そのまま、背骨を下から順番に積み重ねる意識で起き上がります。 【STEP 4】「ロールダウン」を行う息を吸ったら、吐きながら上から順番に背骨を丸めます。再び背骨が丸まって、手がだらんと垂れ下がる姿勢になります。そこで息を吸い、再び吐きながら体を起こしてください。 ロールダウン 【STEP 5】腕を大きく動かしながら深呼吸最後に、体を起こしたら手を前からもち上げて「バンザイ」の姿勢をとります。下ろすときは体の横からです。続いて、息を吸いながら横から手をもち上げ、吐きながら、今度は前に下ろしましょう。 ピラティスで最も大事なことは、難しいポーズをとることではなく、体の隅々に意識を向け、その反応を観察しながら行うことです。利用者さんの体の状態を見ながら、ぜひ訪問看護の現場で実践していただき、一人でも多くの方の心身機能がより良い状態になったらうれしいです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ」
受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ」
特集
2023年8月8日
2023年8月8日

受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、櫛野 秀原さん(ウィル訪問看護ステーション江東サテライト/東京都)の審査員特別賞エピソード「担当看護師からパパママ友へ」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!【みんなの訪問看護アワード】 担当看護師からパパママ友へ<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「担当看護師からパパママ友へ<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:櫛野 秀原(くしの しゅうげん)さんウィル訪問看護ステーション江東サテライト(東京都) [no_toc]

自律神経の不調
自律神経の不調
特集
2023年8月8日
2023年8月8日

自律神経の不調の原因とセルフケアについて

自律神経は人体の恒常性(ホメオスタシス)を維持するために重要な役割を担っていますが、この自律神経に不調をきたすと、心身ともにさまざまな影響が出てきます。この記事では自律神経に不調をきたしうる要因を復習しつつ、セルフケアの方法や受診の目安についてもご紹介します。 自律神経に不調をきたす原因は? 自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経からなります。交感神経は血圧や心拍数、体温を上げ、体を興奮状態にするよう作用します。一方で副交感神経には血圧や心拍数、体温を下げ、体をリラックスさせようとする働きがあります。 自律神経は体の状態のバランスを維持するため、ひいては生命を維持するため、常に相互に作用しあっている神経です。自律神経のバランスが崩れると、「だるい、眠れない、疲れがとれない」「頭痛、動悸、めまい、のぼせ、冷え、下痢、便秘」「情緒不安定、イライラ、不安感、抑うつ」など、体にさまざまな不調をきたします。 自律神経のバランスが乱れる4つの原因を見ていきましょう。ご自身にあてはまるものがないかどうか、ぜひチェックしてみてくださいね。 原因1:女性ホルモンの分泌量の変化 月経前症候群(PMS)や更年期での自律神経の不調には、女性ホルモンが関係していると考えられます。PMSの場合は卵巣から分泌されるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が変動することで、更年期の場合はエストロゲンの分泌量が減少していくことで、さまざまな体調不良を引き起こします。生理前や更年期にイライラしてしまい円滑な人間関係に支障が出たり、体調が悪く普段と同じような生活が送れなくなったりすることも。そういった状態にお悩み方は、一度婦人科で相談してみることをおすすめします。 原因2:生活環境の変化やストレス 仕事・人間関係のストレス、過労、生活環境の急激な変化などは、自律神経に不調をきたす原因となりえます。これらは自分の力だけでコントロールするのは難しい側面もありますが、可能な範囲でストレスの原因から距離を置くことが大切です。 原因3:生活習慣 睡眠不足や偏った食事、不規則な生活、喫煙、過度な運動、カフェインやアルコールの摂りすぎも、自律神経に不調をきたす原因となります。夜勤がある看護師の方の場合、夜勤による睡眠サイクルの乱れも不調の原因となりえます。生活習慣を見直す、あるいは勤務を調整することで、症状が改善することもあります。 原因4:基礎疾患の存在 持病として糖尿病や高血圧、甲状腺疾患、パーキンソン病などの神経疾患、うつ病がある方は、自律神経の不調が出やすいと考えられます。すでに診断を受けている方は、セルフケアにもチャレンジしつつ医師の指導のもとで治療をしっかり受けていただくことが大切です。 また、持病がない方も職場や自治体などでの健康診断や人間ドックを定期的に受けて自分の健康状態を把握するようにしましょう。「自律神経の不調と思っていたら、健診でほかに原因が見つかった」というケースも想定されます。疾患を放置すると自律神経の不調だけでなくさまざまな合併症を引き起こす恐れがありますので、日々の勤務に追われて忙しいとは思いますが、自分の健康にも気を配る時間を作りましょう。 自律神経のバランスを整えるセルフケア 原因を確認したところで、改めて自律神経のバランスを整えるためのセルフケアの方法を6つご紹介します。ご自身の生活習慣と見比べてみてください。 【1】規則正しい生活 バランスのとれた食生活、7~8時間程度の適切な睡眠時間の確保、適度な有酸素運動の習慣を身に着けるなど、規則正しい生活をこころがけましょう。 【2】禁煙 喫煙者の方は、禁煙を検討してみましょう。タバコに含まれるニコチンは必要以上に交感神経を刺激し、自律神経のバランスに悪影響を及ぼします。また、タバコはさまざまながんのリスクを上昇させるほか、脳、心臓、呼吸器にも悪影響を及ぼします。 【3】カフェイン・お酒の摂取量減 カフェイン入りの飲み物やお酒が好きな方は、摂取量を少し減らしてみることをおすすめします。カフェインやアルコールは交感神経を刺激して、休むべきときでも体が興奮状態になってしまいがちです。カフェイン摂取量の目安としては、ホットコーヒーであればマグカップで1日3杯程度です。お酒は純アルコール1日20g以下の摂取をこころがけましょう。純アルコール20gとは、ビール中瓶1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、チューハイ1缶(350ml、度数7%)、ワインはグラス2杯(200ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)に含まれる量です。 【4】リラックス 自分がリラックスできる方法を見つけ、普段の生活に取り入れる習慣をつけましょう。ストレッチやマッサージ、軽い運動、アロマテラピー、ぬるめのお風呂でゆっくり過ごす、不安やストレスに効くツボを押すなどがおすすめです。 【5】太陽の光を浴びる 眠れない、途中で覚醒してしまうなど、睡眠に関する不調がある方は、朝起きたら太陽の光を浴びる習慣をつけましょう。また、日中はなるべく昼寝をしないことも夜よく眠るためのコツです。 【6】定期的な健康診断 職場や人間ドックなどで、定期的に健康診断を受けましょう。自分の体の状態を知ることが、その不調の解決の一歩になるかもしれません。 こんな時は病院へ 日常生活に支障が出るほどの不調があるときや、症状が少しずつ悪化するときは、忙しくても病院を受診しましょう。 女性の方で生理前に自律神経の不調が出る方は、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)の可能性があります。また、40~50代の女性の方では更年期障害の可能性があります。いずれも婦人科で治療の方針について選択肢を提示できますので、お気軽にご相談ください。PMSの場合は漢方薬や低用量ピルをはじめとしたホルモン治療など、更年期に関連する症状の場合は漢方薬やホルモン補充療法を、個人の症状に応じて選択し治療に臨むことができます。 自律神経の不調との付き合い方を知ろう 今回は、自律神経の不調と原因、自分でできるケアや病院受診の目安についてご紹介しました。自律神経の不調は健康な方でも一時的に起こることがあり、自律神経の不調すべてが病院で治療しなければならないものではありません。しかし、自律神経の不調に関連する症状を知り、その原因についての考察やセルフケアをできるようになれば、今よりもう少し自分自身と上手に付き合うことができるようになるかもしれません。あなたが元気になることで、患者さんのケアもより一層充実させることができるでしょう。お悩み解決の糸口が見つかれば幸いです。 執筆:島袋 朋乃(しまぶくろ ともの)産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科専門医として総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に幅広く携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会認定専門医、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。 編集:合同会社ヘルメース

排便エコーの活用法
排便エコーの活用法
特集
2023年8月8日
2023年8月8日

便秘・下痢のアセスメントも 訪問看護の排便エコー活用法【画像で解説】

訪問看護でも活用され始めているポータブルエコーは、ニーズの高い排泄ケア分野での取り組みが注目されています。なかでも排便エコーでは、便貯留の状態や便性状の確認ができるため、正確な排便ケアにつなげることが可能です。また、利用者さんの苦痛を最小限にし、尊厳ある排泄行動を目指すことができます。 今回は、東葛クリニック病院の皮膚・排泄ケア特定認定看護師の浦田 克美氏と、同院臨床検査技師の佐野 由美氏に、排便エコーのポイントと実際に改善に至った事例についてお話を伺いました。 正確な便秘評価が可能に 日常生活を援助する上で、排便ケアは欠かすことができません。とくに訪問看護のなかでも便秘に起因する排便トラブルは少なくないでしょう。例えば、数日間排便が見られず自覚症状があったとしても、自然排便が難しい場合、薬剤の使用を検討したり、摘便や浣腸を行ったりする便秘対策が行われます。しかし、利用者さんにとっては不快であり、苦痛を伴う行為です。ときには、不必要に薬剤の増加を検討したり、無理な摘便や浣腸を行うことで直腸壁の損傷や裂孔を生じたりする恐れもあります。 ポータブルエコーを使用すると、今まで見えなかった腸内を直接観察でき、便の位置、便の性状を把握することができます。それにより、便秘のタイプが正しく評価されたり、直腸まで便が下りてきていないことを確認できたりすることで、不必要な便の排出を行うケースが減ります。 排便エコー観察のポイント ポータブルエコーで直腸内の便を観察するアプローチ法には、下腹部にプローブを当てる経腹アプローチ走査法と、経臀裂アプローチ走査法があります(図1)。 図1 「アプローチ法のちがい」(提供:佐野 由美氏) 経腹アプローチ走査法は膀胱を同時に観察することができ、男性の場合は前立腺も描出されるため、直腸と間違えないように注意しましょう。直腸を見る場合、プローブを恥骨結合上縁に当てます。ポイントはやや強めに押し込むように当てることです(図2)。 図2 「経腹アプローチ走査法」(提供:浦田 克美氏) 一方、経臀裂アプローチ⾛査法は、左側臥位になり臀部を出した姿勢で行います。肛門部にプローブを当てて見ることで、膀胱や周囲の臓器に影響されることなく、腸内を描出することが可能です。プローブを当てるとまず肛門があり、直腸下部が見え、直腸前壁と直腸後壁があります(図3)。ポータブルエコーを学び始めたばかりでも、直腸内の便の有無が観察しやすい走査法です。 図3 「直腸の見え方」(提供:佐野 由美氏) 便の見え方についてですが、硬便は直腸下部に白くゴツゴツした岩のような形に見えます(図4)。有形便は、少しふわふわと綿飴が積もっているような形です(図5)。泥状便や水様便では、うっすらとムースみたいに見えます(図6)。泥状便の場合、便が指に引っ掛からないので、「摘便しない」と判断することが可能です。一方、びっしり詰まった硬便だと、浣腸のチューブ先端が便に突き刺さり、浣腸液が浸透しにくかったりします。これらの画像の特徴を先に見ることで、便性状の評価ができ、その後のケアにつなげていくことができるでしょう。 図4 「硬便の見え方」(提供:浦田 克美氏) 図5 「有形便の見え方」(提供:浦田 克美氏) 図6 「泥状便の見え方」(提供:浦田 克美氏) 便秘だけでなく下痢の評価も 排便エコーは便秘の評価だけではなく、下痢の時にも活用できます。例えば、高齢者によく見られる溢流性便失禁は便秘と下痢が同時に起こっている状態です。直腸内に便の塊がびっしりと詰まり、便が排出できない場合があります。その状況下で下剤を服用すると、下剤の効いた緩い便が便塊の隙間から漏れ出てしまい、オムツを開ける度に便が付着しているという事があります。このような場合でもポータブルエコーを使えば、直腸内の便塊を確認することが可能になるので、不必要な肛門診(摘便)を避ける事ができ、適切なケア、薬剤選択につなげる事ができます。 また、排泄ケア後の評価として、残便確認を行います。残便がある場合は、食後の胃結腸反射がある時にトイレ誘導を促したり、便対応のオムツの当て方をしたり、継続的な看護につなげていくことが可能です。 排便のコントロールとトイレ排便を実現 当院は透析患者さんが多く、便秘傾向で悩まれている方も少なくありません。その原因として、カリウム摂取制限による食物繊維の不足や水分制限、便秘しやすい薬剤の使用など、さまざまあります。 以前、浣腸や摘便に強い拒否があり、下剤使用に依存的な患者さんがいました。透析中の便意や便失禁を心配されているため、オムツを使用。安心して透析を受けてもらうためにも、ポータブルエコーで排便パターンを評価していきながら、下剤内服のタイミングを検討しました。試行錯誤を重ねた結果、透析終了後に内服、非透析日に計画的に排便を促すという答えにたどり着きました。 さらに、管理栄養士の介入によって腸内環境を整えると言われているシンバイオティクスを摂取してみたところ、相乗効果で下痢を発生させてしまい、下剤内服を止めて、シンバイオティクスのみで便性状をコントロールすることに成功。また、当初の目標にはありませんでしたが、作業療法士の介入によってオムツ使用からトイレでの排泄を実現することができました。 ポータブルエコーで便秘の評価をすることができたおかげで、チームによる介入の力を発揮し、望外の成果を得ることができました。従来は3日~2週間の排便日誌を分析して排便パターンを予測し、オムツ交換時に便性状を観察してケアプランを立てていきます。しかし、それでは、患者さんが苦痛を訴えた時にタイムリーにケアを提供することはできません。多職種とともに便の状態をエコーで共有できると、全体としての作業効率の向上が期待できるでしょう。 取材協力・監修:浦田 克美氏(皮膚・排泄ケア特定認定看護師)佐野 由美氏(臨床検査技師)編集:メディバンクス株式会社

ピラティスの基礎知識
ピラティスの基礎知識
特集 会員限定
2023年8月1日
2023年8月1日

在宅ケアに生かせる/ピラティスの基礎知識&事例【セミナーレポート前編】

2023年5月19日、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「ピラティスの基礎知識&実践【在宅ケアに生かせる】」を実施しました。講師を務めてくださったのは、理学療法士として訪問看護の現場でピラティスの実践経験をもつ、ピラティスインストラクターのTatsuya.Sさんです。 セミナーでは、ピラティスの定義や目的、訪問看護における活用事例の紹介のほか、受講者のみなさんでピラティスを実践する時間も設けました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、ピラティスの基礎知識と、実際にピラティスを導入した訪問看護の症例をご紹介します。 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】Tatsuya.Sさんピラティスインストラクター(zen place pilates武蔵小杉スタジオ 所属)/理学療法士・健康運動指導士・介護支援専門員大学で理学療法を学び、理学療法士として6年間にわたって総合病院に勤務。回復期リハビリテーション、訪問リハビリテーション、デイケアを経験する。その中で予防分野に興味をもつようになり、ピラティスと出会う。訪問看護の現場で理学療法士としてピラティスを実践した後、より学びを深めるため、現在はピラティスインストラクターとして活動している。 ピラティスとは ピラティスとは、自分の身体に意識を向けながら、繊細に、正確に動かすことで、心身の機能を調整していく方法論のことです。 筋肉や関節の柔軟性を高め、また体の軸を伸ばすことで、バランス力やコントロール力に優れた「安定した強い体」を目指します。また同時に、体の内部に意識を向けて集中することで「瞑想」をしている状態になり、心を落ち着け、頭をクリアにする効果も期待できるでしょう。 心と身体へのアプローチ 筋肉は「表層筋=アウターマッスル(歩行やものを運ぶときなどに使う筋肉)」と「深層筋=インナーマッスル(骨と骨をつなぎ、骨とアウターマッスルを同時に使う際に補助する筋肉)」とに分けられますが、ピラティスでは体の中心にある背骨からアプローチし、後者のインナーマッスルを細かく動かしていきます。 すると、体の軸だけで姿勢を維持できるようになり、ほかの部分の力を緩めることが可能に。具体的には、背骨がすっと上に伸び、肩が落ちて首が長くなり、胸が広がっている姿勢になります。また、心も緊張から解き放たれ、エネルギーに満ちあふれた状態になります。 ピラティスの歴史 ピラティスは、ドイツ人のジョセフ・ヒューベルト・ピラティス氏によって提唱されました。ピラティス氏は、喘息やリウマチ、くる病を患っており、自身の病気を治すために水泳をはじめとしたさまざまなスポーツや治療法を勉強していました。その中で生まれたのが、ピラティスというボディワークメソッドです。古くは、戦争負傷兵のリハビリテーションとしても使われていました。 また、ピラティスというと多くの方がマットを使うことをイメージしますが、実は始まりはマットではなくマシンを使った動きでした。ピラティス氏が病院にあったベッドを改造してバネをつくり、それを活用して始められたといわれています。 ピラティスの目的 ピラティスを行う目的は、「Well Being(ウェルビーイング)な状態」になることです。これは、私が所属するZEN PLACEの企業理念でもあります。 私たちが考えるウェルビーイングとは、簡単にいうと「その人が自身の存在のすべてを認め、前に進んでいると感じている状態」のことです。自分の嫌なところにも目を向けて受け入れる。誰かと比較せずに自分のことをきちんと把握し、好きになる。ピラティスを実践することで、そんなウェルビーイングな状態を目指します。 医療現場におけるピラティスの位置づけ 日本では、ピラティスは「ダイエットやボディメイクなどを目的としたエクササイズの一種」と認識されており、現段階では医療への活用はあまり進んでいません。インストラクターの資格も、国家資格ではなく民間資格となっています。 しかし、海外ではピラティスと医療の融合が進んでおり、理学療法士の多くがピラティスの資格を取得。スタンダードな選択肢として医療現場で実践しています。 訪問看護現場でのピラティスの実践 続いて、私が理学療法士として訪問看護の現場でどのようにピラティスを実践していたかを、実際の症例を挙げてご紹介します。 利用者さんの情報 対象となった利用者さんは、100歳の女性です。大腿骨頸部骨折にて手術を受けてからは、自分ひとりで起き上がれなくなり、座っているときも見守りが必要な状態でした。介助があれば立ち上がれましたが、トイレに行くことが難しく、オムツを着用。また食事もベッド上でとっていたため、基本的に移動することはありませんでした。 実践した動作1(手の上げ下げ) この利用者さんの場合は立ち上がって動くことが難しいので、以下のような座位での動作を実践しました。 【STEP 1】イスに座る坐骨に体重をかけることを意識しながらイスに座ります。 【STEP 2】背筋を伸ばす頭まで貫く「長い背骨」をつくるイメージで、尾骨から頭までまっすぐな線になるように背筋を伸ばします。このとき、骨盤と肋骨の隙間を広げることを意識します。 【STEP 3】両足を開く坐骨と同じくらいの幅になるように両足を開き、足の裏はしっかりと床につけます。 【STEP 4】息を吸いながら手を上げるここまででつくった姿勢を維持した状態で、息を吸いながら両手を上にゆっくりと上げましょう。骨盤と肋骨の距離がだんだんと離れていくイメージです。くれぐれも無理はしないように気をつけながら、横から見たときに手ができるだけまっすぐになるように上げます。 【STEP 5】息を吐きながらゆっくり手を下ろす骨盤と肋骨の距離をキープしたまま、息を吐きながら手を下ろします。手を下ろす動作は早くなりがちですが、ゆっくりと下ろしましょう。 【STEP 6】繰り返す手の上げ下げを繰り返します。※手を動かす中で背中が丸まってきたら、声をかけるようにします。 実践した動作2(手の開閉) 【STEP 1】息を吸いながら、胸の高さで手を左右に開く実践した動作1のSTEP 1~3までを行ったら、手を胸の高さまで上げ、息を吸いながら開きます。※このとき背骨が反ってしまう方が多いので、背骨の形をキープしたままで開ける限界の位置を伝えてください。 【STEP 2】息を吐きながら閉じる息を吐きながら手を閉じます。 【STEP 3】繰り返す手の開閉を繰り返します。 ピラティスを実践した結果 この利用者さんの場合は、リハビリにピラティスを取り入れることで、最終的にピックアップ型の歩行器を使って数メートル移動できるようになりました。これにより、食事をベッドではなくテーブルに移動してとる機会も生まれています。 >>後編はこちら在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

小児感染症 手足口病
小児感染症 手足口病
特集
2023年8月1日
2023年8月1日

手足口病の症状・原因・治療法を解説 大人がかかるとどうなるの?

手や足、口腔内などに発疹が現れた場合、手足口病が疑われます。手足口病は、子どもの病気のイメージが強いものの大人も罹患する場合があります。しかも、子どもと比べて症状が強く現れる傾向があるため、抵抗力が低い高齢者と関わることが多い訪問看護師は特に注意が必要です。本記事では、手足口病の症状や原因、治療法、大人が罹患した場合の症状などについて詳しく解説します。 手足口病とは 手足口病(HFMD:hand, foot and mouth disease)は、口腔粘膜や手足などに水疱性の発疹が現れる感染症です。日本では1967年頃に存在が明らかになりました。必ずしも発熱するとは限らないことから感染に気づかずに周囲の子どもと接触し、感染を拡げてしまうケースもあります。 手足口病の症状 手足口病は、3~5日の潜伏期間を経て口腔粘膜や手のひら、足底、足背といった四肢の末端部分に2~3mm程度の水疱が現れます。ただし、肘や膝、臀部などに現れる場合もあるなど個人差があります。口腔粘膜は時間が経つと小さな潰瘍が形成されることもあるため、必要に応じて観察することが大切です。 発熱は1/3程度に見られますが、38℃以下の軽度であることがほとんどです。症状が改善するまでにかかる期間は3~7日程度で、水疱はかさぶたが形成されません。主症状は重篤なものではないものの、まれに髄膜炎や脳炎、小脳失調症などの合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。また、治療後1~2ヵ月頃に手足の爪が剥がれる爪変形・爪甲脱落症が起きる場合があることが報告されています。 手足口病が流行する時期 例年、4歳頃までの子どもを中心に夏季に流行します。また、半数を2歳以下の子どもが占めますが、学童期の子どもの間で流行することもあります。なお、手足口病は5類感染症定点把握疾患に定められた病気です。 手足口病の原因 手足口病は、主にコクサッキーウイルスA6・A16やエンテロウイルス71による感染で発症しますが、まれにコクサッキーウイルスA10が原因となります。主に咽頭からウイルスが排出され、飛沫感染でうつります。また、水疱内容物による接触感染にも注意が必要です。そのほか、症状が消失してから2~4週間も便にウイルスが排出されるため、子どものトイレやおむつ換えの後は必ず手洗いや消毒を行いましょう。 手足口病を引き起こすウイルスは複数あるため、一度罹患しても再び手足口病に罹患する可能性があります。 手足口病の検査方法・診断 医療機関では、水疱の性状と分布をはじめとする臨床症状のみで診断されることが一般的です。また、季節や流行状況なども診断材料の1つになります。確定診断には、咽頭拭い液や水疱内容物、便などの検体を用いたウイルス分離かウイルス検出が必要です。 手足口病の治療法 手足口病の原因となるウイルスに有効な抗ウイルス薬は存在しません。また、ウイルスには抗生剤の投与も効果がありません。発熱や水疱のほかに治療が必要な症状が現れることは少ないため、対症療法すら不要な場合もあります。まれに発疹にかゆみを伴うため、必要に応じて抗ヒスタミンの外用薬を使用します。なお、通常は炎症を抑えることを目的に副腎皮質ステロイド外用薬を使用することはありません。 口腔粘膜に生じた水疱に対しても、柔らかくて薄味の食べ物が推奨されている程度であり、特別な治療法がなく、基本的には経過観察します。食欲不振がある場合は脱水が懸念されるため、水分を少量ずつ頻回に与える必要があります。 元気がない、吐き気や頭痛、高熱、発熱の2日以上の持続などの症状がある場合は髄膜炎や脳炎への進展が懸念されるため、早急に医療機関を受診することが重要です。 手足口病は大人がかかったらどうなる? 大人が手足口病に罹患した場合、子どもと比べて発疹の痛みが強く現れる傾向があります。足裏にひどく現れた場合は、痛みで歩けなくなることも懸念されます。そのほか、インフルエンザの発症前のような全身倦怠感や関節痛、筋肉痛、悪寒などが現れることもあります。 手足口病の予防法 手足口病は、症状が消失してからも長期間にわたりウイルスが便から排出される場合があります。また、無症状でウイルスを排出するケースもあるため、流行期に患者との接触を避けるだけでは感染を完全に防ぐことは困難です。 一般的な感染対策として、外出先から帰ってきたときの手洗いやうがい、排泄物の適切な処理などを徹底しましょう。 * * * 手足口病は、口腔粘膜や手足などに水疱が現れる病気です。発熱するケースは約1/3と少ないものの、脳炎や髄膜炎に進展する可能性が否定できないため、発熱に伴って頭痛、嘔吐、意識の混濁、ひきつけなどの症状が現れていないか注意深く観察する必要があります。なお、大人が感染すると子どもの場合と比べて重い症状が現れやすいため注意が必要です。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇NIID国立感染症研究所「手足口病とは」(2014年10月17日改訂)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-hfmd.html2023/6/26閲覧〇厚生労働省「手足口病に関するQ&A(2013年8月)」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html2023/6/26閲覧

家族看護 事例
家族看護 事例
特集
2023年8月1日
2023年8月1日

自己流の介護を続ける家族への関わり【家族看護 事例】

この連載では、訪問看護ならではの家族看護について「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を通して考えます。今回は、体調不良を抱えながら認知症の母親を一人で介護する家族のケースです。さまざまなストレスを抱える中で、支援者の提案や要望を受け入れることができず、自己流の介護を続ける家族への関わりを考えてみたいと思います。 事例紹介 Aさん(80代、女性) 5年前にアルツハイマー型認知症と診断。 現在は体調管理をメインに週1回の訪問看護を利用、緊急時の対応も契約しています。最近、食に対する意欲がなくなり、食べないために痩せが目立つようになってきました。水分摂取も忘れがちで、冬場に脱水症状を起こしたことがあります。そのときは、意識がもうろうとなったところを、訪問看護師がオンコール対応を行いました。 家族構成 Aさんの夫は10年前に他界。娘が2人いますが、主に介護を担うのは同居している独身の長女(60代)です。次女は他県へ嫁ぎ、ほとんど介護に関わることはありません。 訪問看護師の悩み(直面している課題) 長女は昔から体が弱く、両親から大事に育てられてきました。家事はあまり得意ではなさそうで、食事は出来合いの総菜を購入し並べるだけです。掃除や洗濯なども滞りがちになっていました。 訪問看護師は、せめてAさんが十分な栄養を摂れるように栄養剤の購入や水分摂取の声かけなどを訪問のたびに長女にお願いしますが、状況はなかなか改善されません。それどころか「母はこれしか食べてくれないから」と、食卓にはあんパンが山のように積まれるだけになってしまいました。 長女はそのうち看護師が訪問する時間になると自室に引きこもるようになってしまいました。声をかけても「体調が悪い」と言って部屋から出てこようとしません。訪問看護師は、このままでは再びAさんが脱水症状を起こしたり、栄養状態の悪化で体調を壊したりするのではないかと困っています。 渡辺式家族アセスメント/支援モデルで考える 検討場面の明確化 「長女が看護師の提案や要望を聞き流し、自己流の介護を続けている場面」を分析してみましょう。登場人物は、訪問看護師、長女、Aさんですが、ここでは訪問看護師と長女のストーリーを考えてみます。 それぞれの文脈(ストーリー) ■訪問看護師訪問看護師は、長女がAさんに適切な食事の準備や介護をしないためにAさんが体調を崩すかもしれないことを心配していました。 訪問看護師には「Aさんを守りたい」という責任感や、「家族は療養者の体調や生活を改善するために協力すべきだ」という思いがあります。また、長女の大変さを理解できるからこそ、「介護や家事の負担軽減方法を提案することも看護師の仕事だ」という役割意識もありました。 これらの背景から訪問看護師は、長女に必要な介護方法や手立てを提案し、取り組むことを要望するという対処をとっていました。 ■長女一方、長女は今まで自分をかばってくれていた母親が、以前の母親でなくなってしまったという喪失感を抱えていたと思われます。他県に居住し、ほとんど介護に関わらない妹に対する不公平感も抱いていたことでしょう。そして何より、母親の介護や家事に関して次々に訪問看護師から提案されたり、求められたりすることに対し困っていたと考えられます。 長女は、「自分も体がつらく、いろいろ言われてもできない」、「どう対応してよいかわからない」と感じていたと想像されます。また、これまで体が弱く、家族から守られてきた存在であった長女は、困った時には、結局誰かが何とかしてくれていたという過去の体験がありました。今回も長女は、自己流の介護を続けたまま引きこもり、提案や要望を聞き流すという対処をとっていたのだと思われます。 それぞれの関係性 次にAさん、長女、訪問看護師の三者全体の関係性を俯瞰してみましょう(図1)。 訪問看護師は、Aさんを「守る」ために長女に対しさまざまな提案や要望を繰り返し、回答を迫っています。それに対し、長女は「聞き流す」ことでわが身を守っています。訪問看護師が迫れば迫るほど、長女は「聞き流す」という対処を強化し、両者は悪循環にあると考えられます。 図1  Aさん、長女、訪問看護師の相互関係 パワーバランスと心理的距離 長女と訪問看護師について検討した内容を図2に示します。 訪問看護師は現状を変えようとパワーをかなり高くして、長女に提案と要望を行っています。また、Aさんを守ろうと境界を超えて長女に迫っているようです。 疲れて体調がよくない長女はパワーも低く、気持ちも訪問看護師には向いていません。これ以上迫られるのを避けようと、壁を立てて何とかしのいでいるようです。 図2 長女と訪問看護師のパワーバランスと心理的距離 両者ともにパワーの適正なライン(点線)に対して大きく高低差が付いてしまっている。 アセスメントをもとに支援の方策を考える ここまでのアセスメントをもとに、次の2つの支援の柱を考えました。 (1)看護師のパワーを下げる 訪問看護師には、長女に「負担軽減方法を提案することも看護師の仕事だ」という意識と、「家族は療養者の体調や生活を改善するために協力すべき」という価値観がありました。高くなっているパワーを下げるために、まずは支援者がこの「役割意識」から一旦離れ、いつの間にか陥りやすい「価値観を手放す」ことが大事になってきます。 そして、Aさん自身へのアプローチ、すなわち認知機能の悪化による気分障害(うつ状態や意欲・自発性の低下)に対し、在宅医との連携でアプローチの方法を再検討します。 (2)長女のパワーを上げる 低くなっている長女のパワーを上げるために、長女が抱える「母親がもはや以前とは同じではなくなってしまった」という深い喪失感に寄り添います。まずは長女が十分に癒され、周囲の支援を実感できるようにすることが不可欠でしょう。一人で介護する長女が、気持ちを吐き出せるようなアプローチを大切にしたいものです。 さらには、体調が悪いと感じている長女が、身体的精神的にも落ち着いた状態でいられるよう、長女自身の体調管理のサポートも重要です。 事例におけるアセスメントと支援のポイント ●支援者(訪問看護師)の中にいつの間にか醸成されている価値観や役割意識が相手を追い詰めていることがある。支援はそれを手放すことから始める●支援者が不十分に感じる介護も、家族にとっては自分なりにできる精一杯の対応の場合もある。不用意に迫ることは避ける●家族はそれまでと違う療養者の姿に深い喪失感を抱えることがある。家族が変化を起こす前に癒しといたわりを必要としていることがある 執筆:茶谷 妙子訪問看護ステーションひなた ●プロフィール訪問看護認定看護師「渡辺式」家族看護認定インストラクター、個別セッションファシリテーターとして活動。現在は訪問看護師向けの相談業務に従事。 編集:株式会社照林社 

災害の対応事例&備え
災害の対応事例&備え
特集
2023年8月1日
2023年8月1日

震災時に医療機関や訪問看護の現場はどうなった?事例から知る必要な備え

地震や津波、火事、台風などの災害が起こると、訪問看護ステーションを含む医療機関に著しい影響が出る可能性があります。阪神・淡路大震災や東日本大震災といった大規模な災害時には、病院や訪問看護ステーションはどのような影響を受けたのでしょうか。 本記事では、震災時に医療現場で起きたこと、必要な備えなどについて実際の事例を踏まえて詳しく解説します。 被災時の医療関連の対応事例 震災時に医療機関が受けた影響や現場の状況については、官公庁が事例を公表しています。事例を参考にご紹介します。 多くの医療機関で医療機能が大きく低下した 1995年に起きた阪神・淡路大震災では、多くの医療機関の建物が被害を受けました。建物の被害を免れても、医療機器が壊れたりライフラインが寸断されたりしたことで医療機能が大きく低下したとのことです。内閣府の防災情報ページの資料から、某病院の事例を紹介します。 入院患者に被害はありませんでしたが、透析に必要な水を確保できない事態に陥りました。49人の透析患者を抱えており、透析には1日5~6トンの水が、日常の診療には30トンもの水が必要です。そこで、20kgポリ容器を持って車で約7km離れた水源地を往復し、その翌日には濃度調節に課題を残しつつも31人への透析を行いました。同日の午後には支援物資の500kg容器による運搬に切り替え、近隣の市区町村や自衛隊などから水の供給を受けました。 この事例では、診療に必要な物資が不足することで病院機能が低下。機材そのものが破損しなくとも、機材や治療に必要な物資の供給が絶たれることで結果的に病院機能が低下する場合があります。 東日本大震災ではすべてのライフラインが停止 東日本大震災(2022年)で被災した回復期リハ病棟がある某病院の事例を紹介します。 建物の3分の2が使用できなくなった上にすべてのライフラインが停止し、入院診療の継続が不可能となりました。その段階で状態が安定している退院が可能な患者は退院しましたが、周辺地域の津波の被害が大きいこともあり、帰宅困難者および重症患者が病院内に多く残りました。リハ医が受け入れ先探しに奔走しましたが、全患者の転院には1週間以上を要しました。転院が完了するまでは、一部の病室や廊下などにマットレスを敷き、雑魚寝を余儀なくされました。リハスタッフは患者の生活支援や身体機能の維持に努め、看護師は全身管理を行うなど、役割分担の上で対応にあたりました。 この事例では、ライフラインが停止したことで医療機関の機能が完全に停止し、全患者が転院を余儀なくされました。このように、部分的ではなく全機能が停止せざるを得なくなるケースもあることを想定しておきましょう。 震災時の訪問看護の事例 訪問看護においては、医療的ケアが必要な利用者への対応に苦慮した事例があります。 痰の吸引には電動の吸引器を使用しますが、電気の供給が停止していたため救急車を呼んで手動式の吸引器を借りて使用しました。経管栄養の利用者は、1日3食のところ2食にしていましたが、経腸栄養剤が不足しないよう1日1缶で何とかつないでいたそうです。薬は2週間ほど多めに持っている方が多かったため、大きな問題は起こりませんでした。震災後の復興が進まないうちは、往診に行くための車とガソリンがないため、場所によってはほかの事業者の車に同乗して対応したとのことです。 このように、電力の停止によって十分な医療的ケアを行えなくなるリスクがあります。また、経管栄養が必要な方や持病がある方は、食事をとれないことによる栄養失調や持病悪化のリスクが高いと言えるでしょう。 震災に備えて用意すべきもの 震災時に、少しでも平常時に近い対応ができるように、次のものを用意しておくことが大切です。 疾患別に用意すべきもの 利用者の持病別に、必要なものをリストアップしましょう。一例を紹介します。 疾患・現在の状態喘息ストーマを使用している   人工呼吸器を使用している胃瘻                必要なもの      ・喘息発作時の薬剤 ・長期管理薬(吸入薬・内服薬を1週間分)・使い捨てマスク・防ダニシート(交換用も)・スペーサー・ピークフローメーター・ぜん息日記・1ヵ月分のストーマ用品の備蓄・カットした面板・水に流せるペーパー・水が不要な洗浄剤・破棄用の不透明なビニール袋・メモ(ストーマ種類や使用している装具・購入先の店名や電話番号など)・人工呼吸器・蘇生バッグ・予備呼吸器回路・予備気管カニューレ・加温加湿器・吸引器・非電源式吸引器・唾液を持続的に吸引するポンプ・電源(発電機やバッテリーも)・衛生材料・嚥下補助食品・経管栄養の注入セット(必要に応じて)・経管栄養剤・イルリガートル・栄養チューブ・接続チューブ・注入器・滅菌精製水 一度に大量のものを持ち出すことができなかったり、保管場所に入らない状況になったりする可能性があるため、市区町村で備蓄できる場合は頼んでおくか、一部を親戚や友人宅に預けておきましょう。 そのほかに用意しておくとよいもの 災害復旧には最低3日はかかります。その間の生活になるべく困らないように備蓄してくことが大切です。災害時に備えて用意しておきたいものを「持ち出すもの」と「備蓄しておくもの」に分けてご紹介します。 持ち出すもの 食料関連医療ケア関連 生活関連・非常用食品・缶詰(缶切りも)・紙コップ・ミネラルウォーター・離乳食・常備薬・風邪薬・包帯・携帯ラジオ・電池・現金・預金通帳・免許証・懐中電灯・衣類・生理用品・ウェットティッシュ・レインコート(カッパ)・ライター・携帯電話の充電器 備蓄しておくもの ・ミネラルウォーター・米・缶詰・レトルト食品・調味料・ドライフーズ・卓上コンロ・ガスボンベ・固形燃料・毛布・シャンプーや石けんなど・バケツ・アウトドア用品 震災時に避難する・しないの判断のポイント 震災の被害状況によっては、訪問看護先に行くのではなく全スタッフの避難が必要です。また、訪問看護先で震災が起きた際にも、避難すべきかどうか判断しなければなりません。震災時に避難すべきかどうかの判断のポイントは次のとおりです。 避難が必要避難は不要・建物が大きく損壊した ・余震で大きく倒壊する恐れがある ・火災や土砂災害などの危険がある ・避難勧告や避難指示が発令された・建物の損壊が少ない ・余震で建物が倒壊する危険がない ・火災や土砂災害などの危険がない ・生活に大きな支障がない 安全に避難するためのポイント 前述した避難する・しないの判断ポイントを確認した結果、避難が必要と判断したときは、入念に準備したうえで適切に避難行動を取りましょう。慌てて避難すると、道中で災害に巻き込まれ大きな被害を受けるリスクが高まります。避難前にガスの元栓を閉めて電気のブレーカーを切り、外出中の家族に向けて避難先情報を記したメモを事前に決めておいた場所に残しましょう。 避難する際は、次のポイントに注意してください。 ・狭い道やブロック塀、自動販売機、川べり、ガラスや看板などの横はなるべく通らない・荷物は最小限にする・軍手か革手袋を使用する・長袖、長ズボンを着用する・なるべく燃えにくい木綿素材の衣類を着用する・ヘルメットや防災頭巾をかぶる・赤ちゃんは抱っこひもで固定する・子どもを歩かせる場合は、子ども用の非常時用品を入れたリュックサックを背負わせる・子どもを抱っこやおんぶで運ぶときも靴をはかせる・底が厚くはき慣れた靴をはく・必要に応じてマスクを着用する(粉じん対策) 9月1日は防災の日です。防災の日はもちろん、それ以外のタイミングでも定期的に避難時に持ち出すものやストックをチェックして、万全の体制を整えておきましょう。 執筆・編集:加藤 良大監修:筋野 恵介(すじの・けいすけ)のぞみクリニック 院長医学博士埼玉医科大学卒業後、同大学病院の感染症・ER科で研鑽を積み、2018年にのぞみクリニック院長に就任。地域住民の乳幼児から100歳近い高齢の方々を日々診療し、「患者さんの負担を最小限に抑え、あらゆる疾患を責任をもって最後まで見守っていく」をモットーに、患者さまに寄り添う診療を心がけている。Tactical Physician 戦術医(米国認定)、日本救急医学会会員、日本感染症学会会員、日本化療学会会員、日本内科学会会員、日本救急医学会認定医、日本医師会認定産業医、エイズ学会認定医、ボトックス治療指定医、JMAT(災害医療チーム)隊員、認知症かかりつけ医。 【参考】〇内閣府「防災情報のページ 阪神・淡路大震災教訓情報資料集【01】 救出・救助」https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/detail/1-4-1.html2023/6/25/閲覧〇東北大学大学院医学系研究科・医学部「災害とリハビリテーション:東日本大震災の教訓」https://www.med.tohoku.ac.jp/wp-content/themes/medtohoku/common/d_report/report/doc2/19-05.pdf2023/6/25/閲覧〇東北大学大学院医学系研究科保険学専攻緩和ケア看護学分野「現場力を上げるために東日本大震災の体験を知る」http://www.pn.med.tohoku.ac.jp/pdf/shinsai_02.pdf2023/6/25/閲覧〇独立行政法人環境再生保全機構「知って安心! いざという時のために 災害対策」https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/55/feature/2023/6/25/閲覧〇宮城県「ストーマ保有者のための災害対策マニュアル(2014年3月11日)」https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/syoufuku/stoma-saigai-manual.html2023/6/25/閲覧〇兵庫県難病相談センター「災害時に医療機器装着患者が自宅避難生活を送るために」https://agmc.hyogo.jp/nanbyo/operation/operation07.html2023/6/25/閲覧〇内閣府「医療的ケアが必要な人と家族のための災害時対応ガイドブック支援者版」https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/18/pdf/shiryo2-2.pdf2023/6/25/閲覧〇船橋市「避難するかしないかの決め手は」https://www.city.funabashi.lg.jp/bousai/003/jijo_kyoujo/p044120_d/fil/06-2.pdf2023/6/25/閲覧

疾患学び直し 喘息
疾患学び直し 喘息
特集
2023年8月1日
2023年8月1日

【在宅医が解説】「喘息」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回は喘息について、訪問看護師に求められる知識や注意点を、在宅医療の視点から解説します。 この記事で学ぶこと 1980年代末ごろから著しく喘息の病態の解明が進み、治療法は近年めざましい発展を遂げています。 気道上皮細胞は単なるバリアではなく、多彩なサイトカインを分泌し、気道炎症を起こすものであることが判明。抗原受容体を持たない2型自然リンパ球も発見され、ステロイド抵抗性に関与1)し、吸入ステロイド薬をはじめとした今までの治療ではコントロールできない人への新しい治療法が確立されてきました。また、喘息の調子がよくても、軽い発作が起こるだけでリモデリング(気道の基底膜に肥厚や線維化が起こり、気道平滑筋層の肥厚、分泌構造の増加、血管新生が生じる)が起こることがわかり、ふだん調子がよくても気道の炎症を指標に、それを抑えるよう、治療を行なっていく必要があります。 喘息の病態が解明されてきた 「気道炎症」と「気管支平滑筋の収縮」が、喘息のマクロな病態です。さらに、上皮の環境因子に応じて上皮サイトカインが分泌され、気道炎症を起こすという、ミクロな病態の解明が進みました。 1980年代までは、アレルゲン(ダニやハウスダストなど)の吸入により起こる1型アレルギーが喘息であると信じられてきました。しかし、上皮の環境因子であるウイルス感染、細菌感染、タバコや大気汚染、寒冷刺激などでも、サイトカインが分泌され、気道炎症は起こります。 このように、(1)気道上皮から分泌されるサイトカイン、受容体を介した刺激などを受け、IgEが関与するアレルギー性好酸球性炎症(2)(非アレルギー性)好酸球性炎症(3)好中球が関与した炎症(4)気道の構造変化による過敏性が、喘息の病態といわれます。 アレルギー素因がなくとも、ウイルス感染後に咳喘息を呈します。また、鼻も気管も同じひとつの道であり、アレルギー性鼻炎の合併は、喘息の増悪に関与します。 基本の治療法とステロイド抵抗性への治療 気道炎症/気管支平滑筋収縮に対する薬 治療は、気道の炎症を抑えることと、収縮した気管支平滑筋を弛緩させることです。前者には、吸入ステロイド薬(ICS)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン製剤が含まれます。後者には、長時間作用型β2刺激薬(LABA)と長時間作用型ムスカリニック受容体拮抗薬(LAMA)、テオフィリン製剤があり、これらがコントローラー(長期管理薬)です。 急性増悪時の治療薬 喘息の急性増悪が起これば、さらに、経口ステロイド薬を使用します。一時的な発作は、短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入で回復することもあります。急性増悪を繰り返し、全身性ステロイド薬の内服が繰り返し必要になる場合には、さらなる治療を検討します。 初診時は、急性増悪を呈して受診されることが多いため、コントローラーに加え、必要な際には最初から経口ステロイド薬を処方し、状態をみながら治療のステップダウンを行ないます。 ステロイド抵抗性の病態も解明されつつある 2型自然リンパ球(ILC2)がステロイド抵抗性に関与します1)。コントローラー+経口ステロイド薬だけでは喘息のコントロールに難渋するケースには、バイオ製剤を使用し、ILC2以降のIL(インターロイキン)や、IgE、さらにもっと上流の上皮サイトカインであるTSLPの抑制を図ります。 現在バイオ製剤には、抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-5受容体抗体、抗IL-4/13 抗体、抗TSLP抗体があります。末梢血好酸球数やIgE RIST、呼気NO濃度などバイオマーカーを測定し、薬剤の選択を行ないます。薬によって、2週間ごと、1ヵ月ごと、2ヵ月ごとに注射を行ないます。 訪問看護でのポイント 治療薬のなかでいちばん重要なのは、吸入薬です。有効な吸入ができるように、かつ、吸入回数を遵守できるように援助してください。 また、急性増悪を早期発見し、早期介入する必要があります。コントローラーを使用中に喘鳴まで聴取するような状態は、早期発見できずに放置され、重症化した状態です。そうなる前に発見し(夜間・朝方の咳で)、介入しなければなりません。 上・下気道感染を生じると、喘息の急性増悪を起こしやすく、注意が必要です。花粉症の時期に喘息の急性増悪を起こすケースも多く、花粉症のコントロールとともに、喘息のコントロールをステップアップする必要があります。 訪問看護師のさらなる役割 ダニやハウスダスト、真菌など、喘息発作を起こすアレルゲンをなるべく減らす環境整備が重要です。 ● 掃除の回数を増やす ● カーペットやぬいぐるみを避ける ● ほこりやダニが発生しやすい布団には、ほこりやダニを通さないシーツをかぶせるなどが有効です。 寒冷刺激や運動により喘息発作が誘発される場合には、その前にSABAの吸入をすること、気道感染に十分注意することも重要です。医師と相談して急性増悪時のアクションプランを立て、あらかじめ処方して手持ち薬として備えておく必要があります。 トピックス 喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など気道が狭くなる肺の疾患があると、呼吸機能低下や血流変化が生じ、心血管系のイベントが起こりやすいといえます。急性増悪が起こると気道が狭くなるため、急性増悪を起こさず、正常な呼吸機能を保って心血管リスクを減らす必要があります。 執筆:武知 由佳子医療法人社団愛友会いきいきクリニック 理事長/院長 編集:株式会社メディカ出版 【引用・参考】1) Kabata,H.et al.「Thymic stromal lymphopoietin induced corticosteroid resistance in natural helper cells during airway inflammation」Nat.Commun.4,2013,2675. doi:10.1038/ncomms3675.

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