コミュニケーションに関する記事

フットケア・爪切りのお悩み解決/基礎知識編
フットケア・爪切りのお悩み解決/基礎知識編
特集 会員限定
2024年4月23日
2024年4月23日

フットケア・爪切りのお悩み解決/基礎知識編【セミナーレポート前編】

2024年1月19日、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「フットケア~爪切りのお悩み解決!~」を開催しました。講師を務めてくださったのは、これまで4,000人を超える方にフットケアを提供してきた、「爪切りパチパチwako」代表の三浦和子さん。訪問看護の経験もある三浦さんに、フットケアの重要性や、在宅の現場でも実践できるテクニックを伺いました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、フットケアの意義や目的、爪切りのやり方をまとめています。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】三浦 和子さん看護師/日本在宅フットケア普及協会 副理事長/爪切りパチパチwako 代表看護師として病院に勤務し、外来と訪問看護の両方を経験。同時にメディカルフットケアについて学び資格を取得。病院在籍中、延べ4,000名を超える患者さんに対し、爪切りを中心としたフットケアを実践。2023年に独立し、「爪切りパチパチwako」を設立。メディカルフットケア技術・ペディグラス巻き爪補正技術を活かし、病院や施設、在宅で足病予防のためのフットケアに取り組んでいる。 フットケアの利点と目的 フットケアは、足病変の改善や予防、転倒予防などに有効な身体ケアのひとつです。 私はこれまでに4,000名を超える方々の足をケアしてきましたが、ケアの後は多くの方が次のようなポジティブな変化を実感しています。 【フットケア後に寄せられた声の一例】・巻き爪が痛まなくなった、化膿しなくなった・靴下を脱いでも安心して眠れるようになった・足が軽くなった・つまずかなくなった・膝や腰が楽になった・外出が楽しくなり、気持ちが前向きになった 足の健康は体の健康であり、フットケアはQOLの向上や健康寿命の延伸、医療費の削減にも貢献できると考えています。フットケアとは、いつまでも歩き続けられるように足をねぎらうことなのです。 フットケアの基本 足の裏の皮膚には、毛根とセットの皮脂腺がなく、乾燥しやすいという特徴があります。さらに、高齢になると皮膚は脆弱になり、爪の乾燥傾向も顕著に。その上、靴や靴下を履くことで高温多湿の環境におかれ、菌も繁殖しやすくなります。また、靴や靴下が長時間密着することによって、足の裏にたくさんの汗をかくこともあるでしょう。その汗を靴下が吸うと、冷えや多湿による皮膚の浸軟にもつながります。 フットケアで最も大切なことは、まず足を毎日見ること。足の皮膚、爪の状態をこまめに確認し、保湿・保清を行い、環境を整える必要があります。 爪切りのポイント 爪は、指の先にかかる負担のバランスをとったり、体重を支えたり、転倒しそうになったときにはストッパーになったりと、いろいろな役割を担っています。そのため、フットケアの中でも爪切りはとくに重要だといえるでしょう。ここからは、爪切りのポイントをいくつかご紹介します。 なお、爪切りのやり方は必ずしもひとつの正解があるわけではなく、流派によってアプローチ方法が異なることも。今回ご紹介する方法はあくまで私が実践している一例として参考にしていただき、利用者さんお一人おひとりの爪に合った方法を検討してもらえたらと思います。 一度に全体を切る&三角切りはNG 爪は湾曲しているため、一度に全体を切ろうとすると負担がかかり、ひびが入ったり縦に割れたりしやすくなります。 それから、両端から中央に向けて斜めに爪切りを入れ、上から見ると爪の先端が「三角」になるように切る(三角切り)のもNGです。爪は3層構造になっており、そのうち表面(背爪)と皮膚に接する層(腹爪)は縦方向に繊維が走っています。さらに、爪は両端が内側に巻く習性もあるため、三角切りを続けていると、どんどん巻き爪になってしまいます。また、先端がとがっていると、体重をかけたときに皮膚が傷つく可能性もあるでしょう。 爪を切る際は、一度に全体を切ったり三角切りをしたりせず、指の湾曲に合わせて切ってください。 爪切り後&爪の状態に応じてヤスリをかける 爪を切った後は、必ずヤスリをかけて断面をなめらかにしてください。ヤスリのかけ方としては、両端から中央に向かい、力を入れずに「一方かけ(往復させずに同じ方向にかける)」をします。 また、爪の端が割れたり欠けたりしている場合、斜めに切って段差をなくそうとすると巻き爪の原因になります。そういうときは無理に切らず、ヤスリをかけてなめらかにし、切れる状態まで爪が伸びるのを待ってください。 事前準備と指の持ち方で痛みや事故を防ぐ 爪切りをする際は、必ず事前に角質を取り除き、爪と皮膚をしっかり分けてから切りましょう。これにより、誤って皮膚を傷つけてしまう事故を防げます。 ただし、注意していただきたいのが指の持ち方です。爪切りをする際、上の図のように指先の肉を下側へ引っ張る方が多く見られます。爪と皮膚を離そうとする気持ちはよくわかりますが、爪床と爪が離れると痛みが生じてしまいます。そこで私たちは、第1関節から指先に向かって皮膚を持ち上げ、指の皮膚を押すようにして持ちます。爪切りの際には、安定性・安全性の面からも利用者さんの指を正しく持つことが大切です。 変形爪の爪切り方法 続いて、変形が見られる爪の切り方をいくつかご紹介します。 肥厚した爪 肥厚した爪はとても硬いものですが、水を吸いやすい性質があり、水分を多く含むと柔らかくなります。そのため、入浴時や靴の中が蒸れている際は、ぐらついたり抜爪したりする可能性が高まるのです。そこに体重をかけると、爪内や爪周囲の皮膚を傷つけて出血する危険性もあります。 肥厚した爪にはまずヤスリをかけ、根本から爪先まで表面を平らにしてください。なお、肥厚した爪の表面をつまんでニッパーや爪切りで切る方もよく見られますが、その切り方だとさらに厚く成長してしまいます。また、肥厚した爪内に皮膚が盛り上がっている可能性があるため出血のリスクも。必ずヤスリで削りましょう。 かぶり爪、鬼爪 上記の写真のような「かぶり爪」や両端が角のように伸びた「鬼爪」のケアでは、まず足浴で爪を柔らかくし、ゾンデで角質を除去するところから始めてください。すると、爪と皮膚の間に少しすき間ができるので、そこから少しずつ時間をかけて切りましょう。無理に爪を持ち上げると痛みが出るため、切る前の準備を丁寧に行うのがポイントです。処置が難しい場合はフットケア外来や専門の医療機関の受診をご検討ください。 >>後編はこちら(※近日公開)フットケア・爪切りのお悩み解決/ケーススタディ編【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

【医師に聞く】地域医療と訪問看護~新宿で一歩先の在宅医療を提供~
【医師に聞く】地域医療と訪問看護~新宿で一歩先の在宅医療を提供~
インタビュー
2024年4月23日
2024年4月23日

【医師に聞く】地域医療と訪問看護~新宿で一歩先の在宅医療を提供~

東京23区を広くカバーする在宅医療を行っているあけぼの診療所院長の下山先生。開業する以前、循環器内科医として働いた経験が、現在に生きているとのこと。在宅医療を提供する上で、都心エリアは特殊な土地。応用と工夫が必要な在宅医療の現場で、訪問看護師に求められる心構えについてもうかがいました。 下山 祐人(しもやま ゆうじん)先生あけぼの診療所院長2004年東京医科大学医学部卒業後、湘南鎌倉総合病院にて初期研修を行い、2006年に東京女子医科大学病院循環器内科学教室入局。仙台循環器病センター循環器内科、立正佼成会付属佼成病院循環器内科、医療法人社団焔 やまと診療所を経て2015年に中央大学ビジネススクールにてMBA取得した上で2017年あけぼの診療所開業。新宿を拠点に、東京23区をほぼカバーする16km圏内を中心に訪問診療を行う。 医師としての成長は在宅医療の中にある ー開業前は循環器内科医としてご活躍だったとのこと。在宅に移行された経緯を教えていただけますでしょうか。 初期研修後に循環器内科に進み、総合病院でカテーテル治療などに従事していました。月5~6回の当直と10回程度のオンコールをこなす毎日です。そんな中、たまたま非常勤で在宅医療にかかわる機会があったんです。病院でも自宅でも、場所の違いを意識することなく、患者さんに対してできることを常に一生懸命考えることで、楽しんで在宅医療を始められました。循環器内科医として患者さんの予後予測をするというスキルの向上に加え、自分だったらその人生の時間をどのように使いたいかを考え、そのための医療を裁量をもって提供したいと考えた結果が自分で診療所を開設することでした。 在宅を学んだ診療所では在宅の患者さんたちを1日半ぐらい任せてもらったり、新規受け入れの電話対応をしたり。そういった仕事を通して、在宅なら患者さんとの距離が近く、安心して医療を受けてくれると感じました。また、工夫すればリソースが限られていても、病院ではなくとも医療は十分成立すると実感したんです。医師としての成長は、在宅医療の中にあるのではないかと感じ、在宅医療へ軸足を移しました。 私たちの医療は「病院診療からの発展形」 ー下山先生が目指す在宅医療についてお聞かせください。 在宅医療から1歩進んで、「医療を持ち運ぶ」「患者さんにとってよりわかりやすくする」ことを目指しています。数ある診療科の中の一つではなく、私たちの医療は病院診療からの発展形であるという認識です。 患者さんの予後を予測すると、そこまでの道のりで必要な医療や医療資材、人的資源などが見えてきます。そこで、ご本人の希望とどうすり合わせられるのか。在宅医療ではそれもケアの対象になります。 具体的にどういうことかというと、長年治療してきて、余命2ヵ月ほどの段階でおうちに帰ってきた患者さんがいらっしゃるとします。毎朝20錠ぐらい薬を飲んでいる場合、薬を一つひとつ見ていきます。10年後の病気発生率を下げるような薬が含まれていれば、「今必要なお薬だけ使えばいいですよ」と説明して減らしていきます。 こういった話を患者さんだけでなく、患者さんとかかわる訪問看護師さんはじめ医療者にも周知して、全員の納得を得てから先に進めています。非常に手間のかかることですが、チームで仕事をする上で重要なことです。 ーどのようなところにやりがいを感じていらっしゃいますか? 在宅医療の場合は最後の最後まで診なければいけません。患者さん・ご家族に信頼いただいて、「先生たちにお願いできてよかった。おかげでお母さん、お父さんをしっかり看取れた」と言っていただけることが私たちのやりがいになっていると思っています。 救急要請と変わらない早さでの医療提供 ー東京の在宅医療事情についてお聞かせください。 まず、細分化された多種多様な事業社さんたちが揃っているというところが特徴ではないでしょうか。 東京以外の訪問診療では直径32kmのエリア内に訪問看護ステーションも訪問ヘルパーステーションもない、ケアマネージャーさんも少なく、老人ホームもないことが珍しくありません。そういう場合、医療機関がワンストップでそれらをすべて揃えて運営していることが多いんです。 反対に東京はすでに全部揃っていますので、私たちは医療機関本体の事業に注力できます。そのぶん他の事業社さんたちとの濃密な連携が非常に重要になるため、私たちも丁寧に接することを心がけています。 ーあけぼの診療所は東京23区のほぼすべてが診療エリアだとうかがっています。都心ならではの事情や課題はありますか? よく患者さんから、「まわるのが大変なのでは?」「緊急のときすぐ来てもらえないのでは?」と言われますが、これらは誤解です。 まず、私たちは診療時に軽自動車などの小さい車両ではなく、ミニバンを使っています。走破性も優れていますし、スタッフも疲れにくい。さらに大量の物資を持っての移動が可能です。車内のバッテリーも充実しているので、輸血用の血液などを冷やしながら運べています。 ミニバンでの往診のようす そして、意外に思うかもしれませんが、緊急のとき医師に会えるまでの時間は、救急車を呼ぶ場合とあまり変わらないんです。今東京都で救急要請をした場合、病院到着までにかかる時間は50分ほど。さらに医師の診察を受けるまでに少し時間が必要なことをふまえると、自宅で救急要請をしてから医師に会えるまでの時間はおおよそ60分前後(東京消防庁『救急活動の現況 令和3年』より)。これは私たちが要請を受けて駆けつけるまでの時間とあまり変わりません。エリア内のどの場所から向かう場合でも同じことがいえます。 ー救急要請と変わりない時間で先生に診てもらえるというのは、在宅医療を選ぶ患者さんにとって大きな安心につながりますね。 そう思っていただけたらうれしいですね。信頼を築くため、往診の要請や「なんか調子が悪い…」といった連絡に対しても、必ず速やかにまめに対応するようにしています。結果として、想定外のタイミングでの往診依頼が減ることにもつながっています。 病院での輸血に比較して何ら劣らない ー先ほど輸血のお話がありました。「在宅医療では輸血が難しい」と思う方も多いと思いますが、あけぼの診療所はどんな方法で輸血をなさっているのですか? 通常の在宅輸血は、患者さんの家に行って点滴をつないで輸血を始め、最初の15~30分は医師がいて、その後、時間を合わせて来てもらった訪問看護師さんと交代。看護師さんが30分おきぐらいにチェックして、2~3時間かけて輸血をします。病院で行う輸血も同様のやり方です。 一方、当院の在宅輸血は、一般的な輸血より速いスピードで滴下しています。血小板なら15分、赤血球なら30分で落とします。というのも、3時間かけて輸血している病院でも、ICUや手術室では15分で落としているからです。当院では滴下の間医師と医療スタッフがずっと横について、何か問題が起きればすぐ対応します。 問題が起きる件数についても、輸血にかかわる合併症が起きる割合は4,000件に1件程度と言われています。当院では2017年の開院以来4,500件(2024年2月現在)の輸血を実施していますが、大きなトラブルは1件のみ。その1件も在宅でステロイドや酸素を使って乗り切っています。 この実績をふまえても、病院での輸血に比較して何ら劣るところはありません。工数や扱う人材など、コストはかかりますが、家だから輸血はできないという思い込みを減らし、一緒に挑戦していける診療所や病院を増やしていきたいものです。 広い視野で考え、患者さんに寄り添う医療を ー最後に、訪問看護師さんに向けて、メッセージをお願いいたします。 在宅医療の現場には、教科書に書いてある知識や病院の常識の外で工夫や応用が必要な場面がたくさんあります。そういうときにどんな工夫ができるか、マインドチェンジをしていくことが患者さんに寄り添うことにつながります。 必要な物品がない、あるいは保険算定上使えない物品があるような場合。今ある持ち物の中で、どうやって工夫してやっていくかの検討が必要になります。それから、患者さんの家の中に入れてもらうと、たくさんの情報を目にするでしょう。気にかかることがあったら、医療者としての立場にこだわり過ぎることなく、「これをすると患者さんは助かるのではないか」という意識をもって自発的に動いて、そのことを報告していただけるとうれしいですね。 そのためにも、私たち診療所も活発にコミュニケーションを取り合えるような関係でいたいと思います。患者さんのことを横でみて、よくわかっているのは他でもない看護師の皆さんです。 私自身いつも看護師さんには大切なことを教えてもらって診療に生かしています。患者さんの重要な局面に、看護師と医師がしっかりとした信頼関係で話ができる、伝えたことが伝わること、こういうことが患者さんにとって大きなメリットになります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 ※本記事は、2024年2月の取材時点の情報をもとに構成しています。 取材・執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

4コマ漫画「小児の卒業」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
4コマ漫画「小児の卒業」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
特集
2024年4月9日
2024年4月9日

漫画「これだけは」ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

「当たり前」の生活を支える 訪問看護では、例えば「子どものお弁当を作りたい」など、利用者さんにとっての当たり前の生活や想いを支えることも大切だにゃ ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート
第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート
特集
2024年4月2日
2024年4月2日

第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月9日開催】

春の足音を感じる2024年3月9日(土)、銀座 伊東屋 「HandShake Lounge」(東京都中央区)で「第2回 みんなの訪問看護アワード」の表彰式を開催しました。訪問看護に携わる皆さまの日々の努力を世の中に認知してもらうことを目的に2023年度から始まった本イベント。表彰式では、全国各地からお越しいただいた受賞者の方々や審査員の先生方、協賛企業の皆さまとともに、表彰、特別トークセッション、懇親会などで盛り上がりました。表彰式当日の様子や、参加者の皆さまの感想をまとめたレポートをお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 受賞者の皆さまへのトロフィー・記念品授与 まずは受賞者の皆さまへの表彰が執り行われました。入賞12名、協賛企業賞5名、審査員特別賞3名、ホープ賞1名、大賞1名の順にお一方ずつ審査員の先生方からトロフィーと記念品が授与されました。 贈呈されたトロフィー 入賞エピソード「笑顔の看取り」の投稿者の服部景子さん 栄えある大賞には、岡川修士さん(大阪府)が投稿されたエピソード「役割を求めて」が選ばれました。 大賞エピソード「役割を求めて」投稿者の岡川修士さん(左)と、特別審査員の高橋洋子さん(右) 岡川さんの受賞コメントを一部ご紹介します。「まずは、『パーキンソン病と闘う患者さんの励みになるなら』と、本名とご自身の病名をエピソードに使ってもいいと承諾してくださった同僚の加東さんにお礼を伝えたいです。私が所属する訪問看護ステーションは6人と小規模で、まだ開設して2年も経っていません。日々一緒に奮闘する仲間たちに受賞を報告すると、みんな私以上に喜んでくれました。当社は『ものがたりケア』をモットーにしています。私たちがケアに当たる利用者さんには、それぞれ今に至るまでの『ものがたり』があり、過去からつながる人生の一部なのだと念頭に置きながら、丁寧に接することを大切にしています。そんな私たちのケアがひとつのエピソードとして受賞したので、弊社代表もとても喜んでくれました。大賞をいただけて素直にうれしい気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」 岡川さんの「役割について」を大賞作品に選出した理由について、特別審査員の高橋洋子さんからのコメントもご紹介します。「パーキンソン病で今までできたことができなくなるという悲嘆の中、利用者さんは自分の存在や役割について悩まれます。そんな利用者さんに対して何かしたいという岡川さんの真摯な姿勢が文章から伝わってきました。利用者さんができる役割を思いつき、それを後押しする社長さんや訪問看護ステーションの風土にも感銘を受けました。体が自由に動かなくなっても自分らしく生きたいと思われる利用者さんを、訪問看護のスタッフが支えていく。それが我々の目指すべき姿であることを教えてくださったエピソードだと思い、選出させていただきました」 「役割を求めて」の漫画を制作いただく広田奈都美さん(右) 会場では、制作中の漫画の下書きも披露されました。大賞の「役割を求めて」の漫画化をしていただく看護師・漫画家の広田奈都美さんからのコメントも一部ご紹介します。「このエピソードを読んだとき、何か哲学を教わっているような感覚になりました。漫画を描くにあたって岡川さんからお話を伺った際、『ものがたり』というキーワードが出てきて『なるほど』と共感しました。この利用者さんのものがたりすべてを描くことはできませんが、ものがたりの中の『一瞬』を精一杯、描かせていただきたいと思います」 エピソード・訪問看護に関するトークセッション 表彰後は、特別審査員の長嶺由衣子さんと受賞者3名(小野寺志乃さん/宮城県、新田光里さん/東京都、白﨑翔平さん/大阪府)による特別トークセッションが行われました。エピソードを投稿したきっかけや訪問看護の世界に身を置いた経緯、訪問看護の魅力を世の中に伝えるアイデアなど、幅広いテーマでのディスカッションが繰り広げられました。登壇者のお話にうなずき、時には驚きながら耳を傾けている受賞者や関係者のみなさんの姿が印象的でした。 例えば作業療法士の白﨑さんは、引きこもりがちな利用者さんの「外出する目的」をつくるため、ご本人が「お花好き」という点に着目。雑木林をひまわり畑にし、「お花の世話をする」という目的をつくり出そうとしたことが、今回の投稿エピソードにつながったと紹介。利用者さんの状態や気持ちに寄り添いながら、「自分たちに何ができるか」と真摯に考え、日々チャレンジし、奮闘されている様子が3人のお話から伝わってきたトークセッションでした。 すぐに打ち解けて話が尽きなかった懇親会 式典が終了した後は、軽食や飲み物を楽しみながら審査員の先生方、受賞者のみなさん、協賛企業のみなさんとの懇親会を開催。リラックスした雰囲気の中、同じ職種だからこそ話せる日々の悩みを相談する姿も。初対面の方々がほとんどの中、すぐに打ち解けて、記念撮影を楽しまれている姿も多く見られました。笑いが絶えずいつまでも話が尽きない中、みなさんお別れが名残惜しそうでした。 審査員の先生方・受賞者の皆さまのご感想 最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や受賞者の皆さまに伺った感想をご紹介します。 高砂 裕子さん(一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長)こうしたイベントを開催することで、訪問看護の現場で頑張っているみなさんの声を世の中に届ける機会になるだけでなく、これから訪問看護師として働く方々にも、現場のイメージができて役立つ内容だと思います。全国各地から集まって意見交換をし、元気になってそれぞれの地域に戻る、という仕組みをつくっていただいたことはとても素晴らしいことだと思います。このイベントが今後も継続できるように、運営企業や協賛企業の皆さまのご支援をいただければ幸いです。 高橋 洋子さん(公益財団法日本訪問看護財団 事業部課長)審査員としてみなさんのエピソードを読ませていただき、利用者さん一人ひとりに素晴らしい人生ドラマがあり、そうした人たちを支えている訪問看護師は本当に素敵な仕事だと感じました。普段は一人で利用者さんのお宅をまわり、孤独でハードな仕事だと思います。でもこうしたイベントがあれば、ほかの訪問看護師さんの話を聞いて共感し、悩んでいるのは自分だけではなく全国に同じように頑張っている仲間がいるんだと思えます。現場に戻って働くための心の糧になるでしょう。そうした意味でも、素晴らしいイベントだと感じました。 山本 則子さん(東京大学大学院医学系研究科 教授)トークセッションが大変興味深く、投稿エピソードの背景にはどのようなお考えがあったのか、本来であれば全員のお話を掘り下げて伺いたいと感じたくらいです。なかなか表に出てこない訪問看護のエピソードが、「みんなの訪問看護アワード」によって日の目を見ることができるのは、とても意味のあることだと思います。利用者さんの背景も価値観も異なるので、十人十色のエピソードがあり、それが在宅ケアの特徴なのだと改めて感じました。 長嶺 由衣子さん(東京医科歯科大学国際健康推進医学 非常勤講師)このイベントは訪問看護の世界で働く人々のネットワークを生むことはもちろん、訪問看護に携わるみなさんの感性を育てる場でもあると改めて思いました。エピソードを書くという場があることで、自身の仕事を振り返り、感じ、気づく機会になります。ぜひこのイベントを継続していただきたいです。今回はリハビリ職が利用者さんのやりがいにアプローチをして受賞したケースも複数あり、訪問看護が地域ではたす機能の可能性について思考する会になりました。ぜひ多職種が連携して訪問看護を盛り上げていただきたいと思います。 大石 佳能子さん(医療法人社団プラタナス/株式会社メディヴァ 代表取締役)訪問看護という忙しい仕事の中で、日々の経験を振り返って文章にすることはなかなかないと思います。こうしたきっかけがあれば言語化して振り返る機会となり、「自分はこんなことを大切にしていたんだ」という気づきを得られるはずです。報告書には書かれていない利用者さんやご家族、そして訪問看護師の心の軌跡のようなエピソードを所属先の仲間に共有すれば、普段から何を大切にして働いているのかといった価値観をみんなが知る機会となり、その訪問看護ステーションの強みになっていくのではないかと思います。 大日向 莉子さん(協賛企業賞受賞者/東京都/写真左)妹に誘われたのがきっかけで今回応募するに至りました。まさか姉妹で受賞できるとは思わず、本当に光栄です。私のエピソードはみなさんのように特別な、素敵なイベントを切り取ったものではなく、お看取りを経験する人なら誰もが抱えるジレンマなのではないかなと思っています。今回賞をいただいたことで、私の抱えるジレンマや感情が肯定されたように感じ、それが一番嬉しかったです。今回みなさんの素晴らしい看護のお話を聞き、多くの学びがありましたしもっと知りたいと思いました。このような場がこれからも増えますように。大日向 麻子さん(入賞者/東京都/写真右)受賞して会場に訪れ、みなさんのお話を伺えたことが何よりもうれしかったです。トークセッションでは、利用者さんやご家族が納得して看護やケアの方法を選択し、前に進めるかどうかを尊重する考え方もあると知り、感銘を受けました。また、私は看護の限界を決める必要はなく、アイデア次第で可能性が広がっていくと思っています。エピソードが入賞したことでそうした訪問看護の魅力を伝えられる機会を与えていただきました。ありがとうございます。 小林 奈美さん(協賛企業賞受賞者/広島県)「みんなの訪問看護アワード」の存在は、SNSで交流をしていた第1回の受賞者の方に教えていただいたんです。その方から「来年もあるから、一緒に受賞して銀座で会いましょう!」と言ってもらい、エピソードを投稿しました。その言葉通り、今日初めて対面でお会いすることができて、とてもうれしかったです。漫画家の広田奈都美先生にもお会いでき、広島から参加した甲斐がありました。 「第2回 みんなの訪問看護アワード」表彰式にご参加いただいた皆さまの集合写真 表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大賞作品の漫画は、2023年4月下旬にNsPace上で公開予定です。審査員特別賞・ホープ賞の漫画化や、表彰式のトークセッションのレポート記事の制作も予定しています。ぜひご覧ください。 取材・執筆:高島三幸編集:NsPace編集部

ニャースペース【訪問看護あるある】
ニャースペース【訪問看護あるある】
特集
2024年3月19日
2024年3月19日

漫画「話しすぎ注意」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

利用者さんについプライベートの話を… 利用者さんとお話しするのが楽しくて、ついつい自分のプライベートのこともお話ししてしまうにゃ。 「ここだけ」のつもりが、いつの間にか同僚に伝わっていることも…! ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

高齢者の頭の体操10選 脳トレ
高齢者の頭の体操10選 脳トレ
特集
2024年3月19日
2024年3月19日

高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説

頭の体操によって脳をトレーニング(脳トレ)することで、認知機能によい影響を与えられる可能性があります。多くの高齢者施設やデイサービス、訪問介護などで行われており、その効果を実感している高齢者の方も少なくありません。 本記事では、高齢者の頭の体操による脳トレの方法や期待できる効果などについて詳しく解説します。利用者さんに脳トレについて質問されたときに答えられるようにしておくことが大切です。また、訪問看護師から利用者さんに向けて、脳トレをおすすめするのもよいでしょう。 脳トレとは 脳トレとは、頭の体操によって脳を活性化させることです。高齢者は若年者ほどアクティブに活動したり考えたりする機会が少ないため、どうしても脳の働きが低下しがちです。脳トレは、体力が衰えている高齢者も心身に大きな負担をかけずに楽しめます。 高齢者に対する脳トレの効果 脳トレでは、複数の思考や動作を同時に行います。これにより認知機能の向上が期待できるため、認知症予防の一環としても行われています。 老化に伴って低下する記憶や注意力、問題解決能力などが改善されることで、高齢者の活動性や生活の質が向上する可能性があります。 高齢者が在宅でできる脳トレ 高齢者が自宅や施設などでできる脳トレの方法を紹介します。 簡単な計算問題を解く 簡単な計算問題を解くことは、頭の体操になります。紙と鉛筆を使うことで指先も刺激されるため、脳と体の両方のトレーニングが可能です。足し算やかけ算、割り算、九九など、いくつかのバリエーションを取り入れましょう。 なぞなぞを解く なぞなぞを解く際は、言葉の意味を考えたり風景をイメージしたりします。同時に複数のことを行うため、脳トレにつながります。 例えば、「辛くて食べられる椅子は?」というなぞなぞの答えは「カレーライス」です。このように、「椅子」と前文の意味を踏まえて柔軟に考える必要があります。 漢字の書き・読み 漢字の書き・読みでは、記憶を思い出す必要があるため、脳トレの1つとして効果が期待できます。簡単なものから難しいもの、四字熟語などさまざまなパターンの問題を出しましょう。 例えば、「秋刀魚(さんま)」「五月雨(さみだれ)」など、漢字自体は小学生で習うものの、少し難解な熟語を問題にするとよいでしょう。 制限付きしりとり 制限付きしりとりは、食べ物や家具などジャンルに制限をつけて行うしりとりです。制限なしのしりとりと比べて熟考が必要なため、脳をより強く活性化できるでしょう。 最初は「食べ物」のように大きなジャンルにし、慣れてきたら「果物」「野菜」など小さなジャンルで制限すると白熱するかもしれません。 間違い探し 2枚の絵を用意して間違い探しをする脳トレです。1枚の絵を見て記憶し、2枚目の絵との違いを見つける必要があるため、脳の活性化につながります。人によってレベルが異なるため、最初は簡単なものから始めましょう。 連想問題 連想問題は、スタートとゴールの言葉を設定し、連想を続けてゴールを目指すゲームです。例えば、スタートを「りんご」、ゴールを「椅子」として、「りんごといえば赤色」「赤色といえばトマト」のように連想してゴールを目指します。なお、スタートとゴールの言葉がかけ離れすぎてしまうと、なかなかゴールに辿り着かなくなってしまうため、注意しましょう。 高齢者が在宅でできるレクリエーション(脳トレ+運動) 脳トレに運動を加えたレクリエーションもご紹介します。在宅で利用者さんと訪問看護師の2人から実施可能ですが、車いすを利用している利用者さんや視覚・聴覚等に障害がある利用者さんに関しては、必要に応じてサポートしながら行いましょう。 数えながら指を曲げる体操 指を単に曲げるのではなく、数えながら曲げることで頭と体の両方を同時に使う脳トレです。体を大きく動かす必要がないため、体力が低下している方も行いやすいでしょう。 親指から小指まで、「1、2、3」と数えながら曲げていき、終わったらもう一方の手も同じように行います。 後出しじゃんけん 後出しじゃんけんは、相手が出した手に対して、勝つか負けるかの指示どおりの手を出すゲームです。例えば、相手に勝つ指示の場合、チョキを出されたらこちらはグーを出します。また、相手が口でチョキといい、こちらは手か足でグーを出すなど、手足や口を組み合わせるのもおすすめです。 足を使ったじゃんけん 足を使ったじゃんけんは、普段は手で行うじゃんけんを足でするゲームです。グーは両足を揃え、チョキは両足を前後に開き、パーは両足の間隔を大きく開けます。脳トレに加えて足の運動にもなります。 リズム体操 リズム体操は、音楽に合わせて体を動かす体操です。ふりつけは独自に考えてもよいですが、さまざまなリズム体操の動画がインターネット上で公開されているため、参考にするとよいでしょう。 マルチタスクトレーニング マルチタスクトレーニングは、合図によって動作を変更することで心身をトレーニングするゲームです。例えば、右手で鼻、左手で右の手首を持ち、合図とともに左手で鼻、右手で左の手首に持ち替える、といった具合に動作を変更します。 * * * 高齢者の脳トレは、認知機能の向上につながります。体を動かすレクリエーションであれば、身体機能の向上も期待できるでしょう。ただし、車いすを利用している、視覚・聴覚等に障害があるなど、利用者さんの状態を踏まえて脳トレやレクリエーションを選び、必要に応じてサポートすることが大切です。脳トレはどれも簡単にできるので、ぜひ参考にしてみてください。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表(入賞)
つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表(入賞)
特集
2024年3月12日
2024年3月12日

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。厳正な審査を経て、受賞作品が決定しました。本記事では、入賞エピソード12件をご紹介します! 大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞はこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞 「最後のお風呂」 投稿者: 小川 綾乃(おがわ あやの) さん ソフィアメディ訪問看護ステーション雪谷(東京都) A君は初対面の私に「背中撫でて、痛いの」と言って小さな背中を向けた。少しでもがんの痛みが和らげばとそっと手を当てる。泣きながら痛みと戦う小さな背中を撫でるだけの3日間。4日目のA君は座ってDVDを見ていた。「一緒に見よう」と笑顔で私を誘うA君は無邪気な5歳の男の子だった。翌朝A君が旅立ったと聞いて駆け付けた。「お風呂に入れてあげたかったな…ずっと入ってなかったから」お母さんがA君の頭を撫でながら呟く。「お風呂入りましょう」と声をかけて準備しご両親にA君をそっとお渡しする。ご両親と入る最後のお風呂。「気持ちいいね…」「ごめんね…」ご両親が涙ながらに声をかける。浴室の外で待つ私も涙が止まらない。お風呂から出て大好きなアンパンマンの洋服を着た穏やかな顔のA君を抱っこしながら「最後に家族みんなでお風呂に入れてよかった。5日間だったけど本当にありがとう」と話すお母さんの顔は泣きながらも笑顔だった。 2024年1月投稿 「スタッフの成長・管理者の涙」 投稿者: 西尾 まり子(にしお まりこ) さん 地域ケアステーション八千代・訪問看護ステーション(大阪府) 訪問看護ステーション管理者3年目に自分に自信をつけたいと思い訪問看護認定看護師養成学校の受講をした。管理者をしながらの週末の受講であった。2月になり感染症が流行し利用者の急変やスタッフの休みが増えシフトが回らない状況になりつつあった。私は悩んだが新幹線に乗った。しかし、スタッフに電話し「やっぱり大阪に帰るわ。これ以上みんなに迷惑かけられへん」と伝えた。するとスタッフから「帰ってこないでください!認定の学校に行きたいと言われた時、これくらい大変になる事くらいみんな予測してました。こんな時のために皆で無視しない助け合う約束をしています。だから頑張って来てください!何とかします!しっかり勉強して色々教えてくださいね」と言われ涙が止まらなかった。管理者となり、自分が一人で必死になりスタッフを支えているつもりでいたのが、本当は自分がみんなに支えてもらって管理者にしてもらっていたのだと深く感じました。 2023年12月投稿 「足の爪切りから始まる看護」 投稿者: 大慈 めぐみ(だいじ めぐみ) さん 訪問看護ステーション ナースであんしん湘南(神奈川県) 96歳男性。膀胱がん末期。「出来ることは自分でやりたい」という思いが強く、他者の介入が難しい状況。転倒を繰り返したり、入浴困難になり、ご家族とケアマネジャーは支援が必要な状態であると判断するが、受け入れず。ある日、足の爪切りだけは自分で出来ないと、訪問看護の依頼があった。まずは足の爪切りで訪問し、信頼関係を築くことに。お話をしながらさりげなくお困り事を聴き…。その結果、週2回の入浴介助、褥瘡処置、内服管理の支援が出来るようになった。1か月半が過ぎた頃、体調が急激に悪化…。最期は、施設スタッフのご協力もあり、住み慣れた場所でご家族に見守られ永眠された。病気による疼痛や倦怠感がある中でも、いつも奥様の体調を気遣う優しい言葉。入浴後は、「ありがとうねぇ」と、穏やかな声で言って下さったこと。髭剃りが難しく、上手に剃れなくても「すっきりしたよぉ」と気遣って下さったこと。関係機関の皆様との連携の大切さを改めて実感したりと、多くの事を学ばせていただきました。A様は、もと学校の先生。引退された後も、こうして私達に素敵な授業をして下さいました。 2024年1月投稿 「最期の友人」 投稿者: 日高 志州(ひだか しず) さん 訪問看護ステーションおはな(埼玉県) 70代の男性、お調子者で独居の大酒飲み。今にも崩れそうなボロ家で好き勝手暮らし、年金は近場のスナックで散財していた。大腸がんがみつかり、残り少ない余命宣告をされたが、家での最期を望み帰ってきた。もちろん生活指導など聴き入れず。何か真面目な話をするとすぐ「あんたがあと30年早く産まれてくれりゃ、結婚考えてやったのになぁ…」などと冗談で返答し、私も負けじと「私と結婚するならスナック通いは禁止です」と応戦した。しかし死期が近くなり、少しずつ体にガタが出始めると、ずいぶん弱気になってきた。トイレが近い、目がくらむ、もう1人で生活するのは心細いと話され、何度も話合った結果、施設への入所が決まった。入所の当日、一緒に荷物をまとめ、お迎えの車へ車椅子で向かった。乗り込む直前、私に握手を求めてきた。「あんたは最期の友人。忘れてもいいけどたまには思い出してよ」と冗談を言って笑顔で乗り込んだ。ずっと忘れない。 2024年1月投稿 「笑顔の看取り」 投稿者: 服部 景子(はっとり けいこ) さん 愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう(北海道) 訪問看護師となり8年が過ぎた頃、最愛の母が余命宣告されました。一人っ子の私にとって、親友や姉妹のような大切な存在だった母の願いは「もうすぐ死ぬなら旅行がしたい」でした。渋る先生を説得し沢山の医療品を持って、札幌から軽井沢、伊勢神宮、沖縄へと3回の家族旅行をする事が出来ました。「私のせいで大好きな仕事をやめる事になってごめんね。でも貴女がいつも側にいてくれて心強いし、毎日娘の顔を見られて本当に幸せ。出来れば最期までこの家に居たい」と母が涙した時、最後の願いを叶えてあげたいと家族で団結し、自宅での看取りを決めました。最期は父と、私の夫の手を握り「あ・り・が・と・う」と言って旅立った母。そこに涙はなく皆の穏やかな笑顔がありました。あれから4年。家族の苦悩を経験し、在宅看取りの素晴らしさを体験し復職した今、母のおかげで前より少し利用者さんとご家族の心にそっと寄り添えている様な気がしています。 2024年1月投稿 「余命を伝えないということ。」 投稿者: 小野寺 志乃(おのでら しの) さん 公益財団法人 宮城厚生協会 ケアステーション郡山(宮城県) 60代肺がん末期の男性の訪問看護が始まりました。往診から余命は3ヶ月と告げられたご家族からは本人には余命は伝えないでほしいと言われていました。しかし利用者本人も「自分の体だから分かる、いつまで生きられるんだ?」家族からは言わないように言われている、嘘もつきたくない、自分に訪問がつくたび何と声をかければ良いのか葛藤しながら訪問に向かいました。痛みや苦しさを家族に当たり散らした日には奥様が泣きながら話されることもありました。そして利用者様は家族親戚に囲まれて息を引き取られました。翌日聞いた話では亡くなる日の朝に「迎えがきた、会いたい人に会わせてくれ」と。ご家族もびっくりされていましたがとにかく連絡をして会いに来てもらっていました。最後に奥様に話される時「ラブラブな時間を奪わないでくれ」と娘様までも追い出したそうです。2人きりになるなり奥様の顔を手で包み「しわしわになったな、俺のせいか。これからも愛してるよ」と言って翌朝に亡くなられたそうです。余命を伝えなくても人生の終わりを迎える日が分かっていたんだと私自身も貴重な経験ができました。家族という存在も生きる原動力になると私は思いました。 2024年1月投稿 「思い出の淡路島」 投稿者: 池田 裕季(いけだ ゆうき) さん 社会医療法人社団正峰会 正峰会訪問看護ステーション(兵庫県) 今でも海を見ると思い出す利用者さんがいます。初回介入時点では交通機関を利用して単独外出が可能でしたが、1か月経過頃から床上生活を余儀なくされました。利用者さんはお洒落をして外出するのが趣味で、ご主人とはよく淡路島へドライブに行っていました。残された時間が少ないことは本人も感じており、涙ながらに「最期に淡路島に行きたい」と伝えてくれましたが、状態が悪く外出許可が下りませんでした。しかしステロイドの内服により活気が蘇り、この機を逃さないよう主治医から外出許可を取りました。家族との絆の深さ、関係各所の協力に支えられ、許可を得た週末に、家族全員での淡路島旅行を決行できました。時間としては移動も含めて2時間程度の旅行でしたが、「楽しかった~!」と笑顔で帰宅。その日は朝から雨が降っていましたが、家族写真には全員の眩しい笑顔と綺麗な青空が収められていました。帰宅から約6時間後、眠るように永眠されました。 2023年12月投稿 「ワンチームで叶える最後の願い」 投稿者: 坂下 聡美(さかした さとみ) さん 一般社団法人 在宅看護センター北九州訪問看護・リハビリステーション 在宅看護センター北九州(福岡県) 2023年10月、スリランカに嫁いだ娘が帰ってくると嬉しそうに語るY様。余命は、週単位となっていた。Y様家族は、実行したいリストなどを作成し、私たち訪問看護師に見せて下さる。私たち訪問看護師は、介入して間もなかったが、その温かいご家族の空気感の中、いつの間にかその家族の一員になっていくような感覚を覚えた。11月に入り、「菊花祭、見に行けるかな…」と呟くY様。娘様曰く、息子様が新車を購入したので交通安全祈願のついでに、家族みんなでお出かけしたいとのことであった。ちょうどその時、主治医がお見えになられ、勇気を振り絞り、「最後の家族外出をしたい」と、Y様が仰った。主治医は、深くうなずいて見守る私たち訪問看護師の目を見て、「ワンチームでその願い叶えましょう!」と、英断され、そこからが、このチームのすごいところ。訪問看護師の鶴の一声で、多職種各事業所の方も参加下さり、「最後の外出」を決行した。当日、天気にも恵まれ、神様もワンチームとなったその日から4日後に旅立たれた。菊を見たら、今でもその時の光景を思い出す。 2024年1月投稿 「感謝の気持ちと恩返し。」 投稿者: 鉾山 英美(ほこやま えみ) さん りゅうじん訪問看護ステーション枚方公園(大阪府) 病棟に5年勤め、訪問看護に携わり10年以上続けています。病棟では、環境の変化や人間関係から鬱病になり、一度看護師を辞めました。看護師を辞めて半年程すると、また看護師をしたいなぁと思い、知人の紹介で初めて訪問看護の世界に飛び込みました。まだ鬱病も治っていない状況で、私の中では社会復帰と思いながらまずは週2回の勤務から始めました。それでも、時々言いようのない不安や怖さに襲われ、事務所の最寄り駅に着いたら涙が溢れ、立ち竦むこともあり。出勤できない日もありました。それでもスタッフの皆が理解してくれ、温かく見守ってくれました。徐々に訪問を重ねる中で、利用者様から「また来てな」と声を掛けられたり、スタッフとも気兼ねなく話せるようになり、出勤日数も徐々に増やせました。移動中に見る景色、利用者様とのゆったりした時間。スタッフや家族のサポートがあり、鬱病を克服することができました。そして、ずっと訪問看護を続けています。あの時、訪問看護で働いていなければ、今の私はいません。私を救ってくれたこの仕事にいつも感謝し、恩返しの気持ちでいっぱいです。大好きな仕事です。これからも続けていきます!訪問看護ありがとう! 2024年1月投稿 「心に残る誕生日プレゼント」 投稿者: 大日向 麻子(おおひなた まこ) さん 訪問看護ステーションリカバリー 東村山事務所(東京都) 「誕生日を家で迎えさせてあげたい」電話口でのご家族の言葉でした。利用者様はある日ご自宅での転倒を機に入院、主疾患治療中に他疾患も併発してしまい、医師より余命や療養型病院への転院についてお話があったとの事でした。その言葉を聞いた後、私は関係各所と連絡をとり、改めてご家族へ在宅療養を提案してみる事にしました。ご家族は悩んだ末、在宅で過ごす決断をしてくださり、サービスを調整して年末に退院。徐々に全身状態低下は見られましたが年明けには待望のお誕生日を迎える事が出来ました。「ケーキのクリームを舌に乗せたら、にこっと笑った気がしたの!こっちがプレゼントもらった気分だよ…」とご家族からもニコニコで報告がありました。その1週間後、眠るように息を引き取られました。最期の時間をどう過ごすか、選択をする事は大変な事だと思いますが、その選択に意味があると感じます。これからも自分たちに出来る事を探し続けて行きたいです。 2024年1月投稿 「最期の洗髪」 投稿者: 安藤 あゆ美(あんどう あゆみ) さん 公益社団法人 新潟県看護協会 訪問看護ステーションつくし(新潟県) 癌末期のAさんは美人でいつも髪の毛をきれいにアップしている理容師さん。お姉さんと息子さんと理容室を営んでいてお姉さんが熱心に介護されていました。徐々にベッドで過ごす事が多くなり残された時間が短いと思われた頃、訪問看護師から息子さんに洗髪を提案。頭の下にオムツを敷いて「初めて母親の髪を洗いました」と言う息子さんの手つきはさすがプロ。「気持ちいいね」とAさん。数日後にご家族に見守られながら穏やかなお顔で旅立たれました。実はあの時、洗髪を息子さんにお願いしたのは理由がありました。息子さんが直接介護をする事が少なかったので、亡くなった後に後悔するのではと思ったのです。洗髪する事で息子さんが満足する看とりができるといいなと考えたのです。Aさんのお悔やみに伺った際、訪問看護への思いを聞いた時「最高でした」と笑顔で答えてくださいました。良かったなと思いました。 2024年1月投稿 「訪看だって泣いていいんだ。」 投稿者: 中島 絵理子(なかじま えりこ) さん 一般財団法人同友会 藤沢訪問看護ステーション(神奈川県) 急性期で働いていた頃、看取りは日常的だった。看護師は常に冷静で、涙を流す事など許されないと思っていた。訪問看護師として働き7年が過ぎた頃、あるご夫婦を担当することになった。ご主人Tさんは肺癌末期、奥様Sさんは心不全でお二人同時に介入をしていた。Tさんは癌性疼痛があってもSさんを気遣い、そう遠くない将来別れが来るのかと思うと、Tさんの笑顔を見る事を辛く感じる事もあった。半年が過ぎた頃、Tさんの容態が悪化し入院することになった。『僕はね、この家で死にたいんだ』といつも言っていたが、Sさんの負担になりたくないというご本人の希望だった。1人になったSさんを訪問すると私を見るなり『連れて帰りたい!私、頑張るから!私が見るから!』と泣きじゃくった。私は何と言って良いのか分からず、Sさんの肩を抱いて一緒に泣く事しかできなかった。数日後Tさんが亡くなった。Tさんの仏前に手を合わせる私にSさんは言ってくれた。『中島さん、一緒に泣いてくれてありがとう。これからも私の訪問に来てくれる?』今もSさんのお宅へ訪問に伺っている。Tさんの思い出話をするSさんの笑顔を1日でも長く見られる事を願っている。 2024年1月投稿 * * * 皆さま、おめでとうございます!今後、「みんなの訪問看護アワード」表彰式の様子をご紹介する記事や、大賞・審査員特別賞・ホープ賞を受賞したエピソードの漫画記事も順次公開予定です。ぜひご覧ください。 編集: NsPace編集部 [no_toc]

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表
つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表
特集
2024年3月12日
2024年3月12日

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。厳正な審査を経て、受賞作品が決定しました。本記事では、大賞1件、審査員特別賞3件、ホープ賞1件、協賛企業賞5件のエピソードをご紹介します! 「役割を求めて」 投稿者: 岡川 修士(おかがわ しゅうじ) さん 訪問看護ステーションかすたねっと(大阪府) パーキンソン病に罹患して私達の訪問看護を利用することになった加東さん。彼女は元看護師で、まだまだ働く予定だったが、病気の影響で外出困難となり、退職を余儀なくされた。ある日、私が訪問すると「今は誰の役にも立ってない。まだ働きたい。欲しいのはお金じゃなく、役割なの」と話された。その表情は寂しそうだったが、働くことを諦めていない強い意志も感じた。聞くと、今もパソコンは使えるし看護師時代はサマリー等の事務作業も得意だったという。そこに可能性を感じた私は事務所に帰って社長に加東さんとのやり取りを説明した。すると社長は、「うちには事務員いないし、在宅で事務作業をしてもらおう!」と、雇用することを決めた。それを聞いて加東さんは大喜び。その後、初給料でお孫さんにクリスマスプレゼントを買ってあげた。加東さんは事務員という私達の事務所に欠かせない役割だけでなく、祖母としての役割も取り戻すことができた。 2024年1月投稿 「100年ぶりに入浴したU子さん」 投稿者: 新田 光里(にった あかり) さん @(あっと)訪問看護ステーション(東京都) U子さんは92歳。認知症があり内服管理と入浴目的で訪問が開始になった。人嫌いな一面があり、入室を拒む事もしばしば。入浴は数年間していないと思われた。皮膚トラブルを心配した私は入浴させる事に必死になり受け入れてくれないU子さんに憤りを感じ始めていた。所長に相談すると「まず、あなたがU子さんを好きにならなくちゃ」と助言をいただき、訪問の度にU子さんの素敵な所を見つけるようにした。ケアにこだわらず仲良くなることを最優先として一緒に塗り絵をしたり、りんごの唄を熱唱したり、戦争体験談を聞いては労いの言葉をかけ続けた。担当になって1年が経過したある日「汗かいちゃったから一緒にシャワーどうですか?」と声をかけると「シャワーはダメ。お風呂にしなさい」と言われた。嫌々ながらも脱衣していたが浴槽に溜まった湯が自分好みの湯加減だと分かると自ら浴槽に入り「う~ん!気持ちいい!100年ぶり~!」と満面の笑みがこぼれ、タオルで腕を擦っていた。100年ぶりの入浴後の湯は白濁していた。以後、毎週入浴介助することができた。U子さんの笑顔と甘酒のようなお湯の思い出は一生忘れられないだろう。 2024年1月投稿 「遠く離れていても」 投稿者: 鳥居 香織(とりい かおる) さん 医療法人社団亮仁会 さくら訪問看護ステーション(栃木県) 「肺気腫で在宅酸素をしている独居のAさん。奥様を亡くしてから、人との関わりを避け、いつ死んでも良いと言うの。トイレに行くだけで、肩呼吸をする程で、ヘルパーさんからは『介入するのが怖い』と言われて困って。会うだけ会ってくれないかしら」とケアマネさんからの電話。訪問するとAさんはベッドに座り、横を向いたまま私と目を合わせようとしません。ですが、テーブルにはカルピスが入ったコップが2つ並んでいました。(これがAさんの答えなのかな?)と思い、ゆっくり声をかけながら、背中のマッサージを始めると「気持ちが良いなあ。温かいなぁ。」とAさん。それから面白いように言葉が溢れ、若いころの話、奥様との馴れ初めの話、生前葬を決意した話などを語りました。人との関わりを避けていたAさんが訪問の度に笑顔になり、変化されていく様子はとても不思議な感じがしました。しかし、転倒を機に引っ越され、突然の訪問終了。どうされているか心配していたある日、葉書が届きました。「カーテンを閉めようと思って窓の外を見たら、お月様と目が合った。いつの間にか鳥居さんの顔に変わっていたよ。」と震える字で書かれていました。離れていても支えることが出来る事を学んだのです。 2024年1月投稿 「幸せとは」 投稿者: 川上 加奈子(かわかみ かなこ) さん よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県) 「『幸せとは、体験するものではなく、あとから思い出して気づくものだ』ですって!深いですねー」87歳になられるTさんの訪問時には、毎回その日の名言カレンダーを読み上げ、暗唱し、それについて話し合う、ということを看護ケアの脳トレとして行なっていました。「Tさんの今まで生きてきた中で1番幸せだと思ったことは何ですか?」と私。すると少しの沈黙の後に「何もない」とTさん。「えーそんな寂しいこと言わないでくださいよ。一つ位ありませんか?」と私。するとまた「…何もない」とTさん。側にいて会話を聞かれていた息子さんにも何だか申し訳ない様な気持ちになっていたその時でした。「だって、ずっと幸せだから」とぽそりとTさんが言われたのです。一瞬、時が止まったような衝撃を受け、何故だか泣きそうになっている自分がいました。寝たきりになってもなお、愛する息子さん2人がいつも側にいて、大好きな餡子を食べさせてくれたり、たまに喧嘩をしながらもリハビリをしてくれていること。それこそがTさんにとって、過去ではなく現在進行形の幸せなのだと気付かされたのでした。『幸せとは…』私もいつか自分の人生を振り返った時には、Tさんの様に思えたらいいなと感じています。 2023年12月投稿 ※訪問看護師歴3年未満の方対象 「最期のキッス」 投稿者: 大矢根 尚子(おおやね なおこ) さん 社会医療法人 三宝会 南港病院訪問看護ステーション(大阪府) O様 70歳女性 肺がん 脳転移にて終末期の方で心に残る経験をさせていただきました。口数の少ないご主人が1人で介護をされており訪問中も不安の表出や困りごとを口にされることなどがない方でした。ユマニチュードも取り入れながら、O様が大好きだった竹内まりやの「人生の扉」を流しながらケアを終えた時、ご主人が不意にO様の額にチュッとキッスをされたのです。意識も混濁していたO様ですが、嬉しそうに顔をくしゃくしゃにしながらニッコリと微笑まれました。照れくさそうに笑うご主人とO様を見ていると死が差し迫っているから特別にキッスをしたわけではなく、この夫婦の日常なんだと心が温まりました。歌詞も重なり素敵な年輪を重ねて生きてこられたご夫婦の愛を感じ涙涙でした。ユマニチュードも実践することでご主人の緊張がとけ、一緒にO様を支えることができ生活史に寄り添うことができたと感じました。また、自分の人生と重ね、今まで以上に時間を大切にしようと思いました。 2024年1月投稿 「無人島に街を!」メディヴァ賞 協賛企業:株式会社メディヴァヘルスケア系コンサルティング&イノベーション・カンパニー。「無人島に街をつくる」開拓者のように、医療・介護界の発展を実現していきます。 「秋ひまわりプロジェクト:外出のきっかけづくり」 投稿者: 白﨑 翔平(しらさき しょうへい) さん いま訪問看護リハビリステーション(大阪府) ご利用者さんの多くは、通院以外では家からほとんど出られません。そこで、秋ひまわりプロジェクトとして、事業所の駐車場裏の小さな雑木林を8ヶ月かけて丁寧にひまわり畑に変えました。その過程の写真を訪問の度にご利用者様と共に確認し、行ってみたい場所になることを目指しました。そして、ひまわり畑が形を成す頃、ご利用者様が担当の療法士や看護師と会話を楽しむ外出の機会を作り出したいと考えていました。しかし、残暑の影響で早すぎる開花があり、イベント当日には花が枯れてしまうと予測されました。そこで、企画を「ヒマワリ喫茶」から「ヒマワリの花束のプレゼント」に変更しました。刈り取る前にヒマワリ畑を訪れてくれたご利用者さんもおられました。収穫したひまわりを美しくアレンジし、お届けした瞬間の笑顔は忘れられない思い出となりました。多くの方がその花束をお仏壇に飾り、感謝の言葉を伝えてくださいました。 2024年1月投稿 ぽけにゅー賞 協賛企業:株式会社大塚製薬工場臨床栄養関連の医薬品・OS-1などに加え、在宅療養者の食・栄養課題の抽出・解決を支援するWEBサービス「ぽけにゅー」を提供しています。 「1週間は母より長生きしたい」 投稿者: 井出 咲子(いで さきこ) さん 訪問看護ステーションほのか(長野県) 進行性の胃がんを患い、医師から告げられた余命よりもう3ヶ月頑張って生きていらっしゃる76歳男性Fさん。Fさんは自宅での生活が困難で有料老人ホームで生活しています。私達はそこへ訪問看護としてお伺いしています。Fさんには97歳のお母様がいらっしゃり、お母様は別の老人ホームで生活していました。Fさんがホームで暮らすようになって、お母様と一緒に過ごしたいと希望され、お母様も同じホームに入所されました。Fさんの願いはただ一つ『母より1週間は長く生きたい』その気持ちで治療を受け、倦怠感が強くても、食欲がない時も頑張って食べ物を口に運び、精一杯生きていらっしゃいます。Fさんとお母様は仲が良く、可能な限り一緒の時間を過ごされています。Fさんのお布団にお母様は足を入れて温まっていてその姿がとても微笑ましいです。ある日、ホームの管理者からFさん親子をお寿司屋さんに連れて行きたいと相談がありました。私達訪問看護も同行しお寿司屋さんへ行きました。Fさんは6皿召し上がり大変喜ばれました。これからも『母より1週間は長く生きたい』というFさんの気持ちに寄り添い続け看護をしていきたいです。 2024年1月投稿 Tomopiia賞 協賛企業:株式会社Tomopiiaがん罹患者の方々の不安や孤独な気持ちに、SNSを使って看護師が個別対話で寄り添う、SNS看護サービス「Tomopiia」を提供しています。 「みんなに贈る体調管理表」 投稿者: 小林 奈美(こばやし なみ) さん 株式会社不二ビルサービス ケア事業部訪問看護ステーションふじ川内(広島県) Mさんは前立腺癌末期。几帳面な方で体調管理表を自ら作成されていた。妻は介護に悩み涙を見せる事もあった。ある時発熱、肺炎症状があり入院され過ごされていたが、数日経ち妻から「もう時間がない、家で過ごさせてあげたい」という電話を受けた。訪看が介入し一時外出する事になった。モルヒネ皮下注射を受けながらも笑顔のMさんに私は「おかえりなさい!」と声をかけた。そこにはいつもの日常があった。家族がいて、テレビを観たりソファーで座ったり特別な事をしているわけではなく、Mさんを包み込むように当たり前の幸せがあった。夕方病院へ帰る介護タクシーを見送った。次の日の朝である。さっき息を引き取ったよ、家に連れて帰るね、と連絡があったのは…。「見て…」と妻から見せてもらった体調管理表には「みんなのおかげで私の人生楽しかった ありがとう」と少し震えた文字。私は涙があふれた。この言葉が家族、私たちみんなを救っていた。 2024年1月投稿 看護のアイちゃん:本物の看護がしたい賞 協賛企業:セントワークス株式会社訪問看護の特性を踏まえたアセスメント・業務支援システム「看護のアイちゃん」などを提供しています。 「走る理由」 投稿者: 大日向 莉子(おおひなた りこ) さん ソフィアメディ訪問看護ステーション小山(東京都) 「息をしていないようです」と震えた声。遠くから「お父さん、お父さん、返事してよ」と叫ぶ音。連絡があったのは、年明け間もない1月のことでした。山田さん70代、前立腺癌。年越しを迎えるのは難しいと、ご家族は本人にその事実を伝えず、決死の想いで在宅療養を選択しました。家族だけが抱える「余命宣告」。それでも本人が不安でないように、眠れない日々も不安な日々も、ご家族は笑顔でいました。「山田さん、本当によく頑張りました」と話しかけると、そこにいた全員から大粒の涙が溢れました。お客様との信頼を築き、人生の最期に立ち会い、お別れに一緒に涙を流す。医療職として、一緒に涙を浮かべるのはどうなのかと言う人もいるかもしれません。だけど、ひとりの人として、その人と関わった者として、涙を流すのに正解も不正解もないと信じています。「ネクタイ結んであげませんか」「髭剃りしませんか」と家族と行うエンゼルケアも、最期に着る服が生前よく着てたスーツなのも、在宅の醍醐味だと思うのです。ケアの最後には涙でなく、そこには笑顔がありました。みんなが悔いなく、幸せであるように、今日も自転車を走らせるのです。 2024年1月投稿 NTTデバイステクノ賞 協賛企業:NTTデバイステクノ株式会社訪問看護ステーション専用に設計された電子カルテ「モバカルナース」などを提供しています。 「生涯いい男」 投稿者: 佐藤 有紗(さとう ありさ) さん 医療法人社団愛友会 訪問看護ステーションブルーべル(埼玉県) 毎週木曜日、インターホンを押すと部屋の奥から「いらっしゃい!上がって上がって」と声がする。私が訪問看護ステーションで働き始めた時から変わらない元気な声でいつも迎えてくれていました。その方は癌末期。余命は長くないと言われながらも元気に前向きに生活していました。その方はいつも野球を見ていたので、野球がわからない私は勉強がてら野球をみて、少しでも話ができるように準備してから訪問するようにしていました。担当してから3ヶ月ほど経った金曜日、かかりつけ医から「食事がしばらく取れていない、点滴加療が必要」と連絡がありました。私は驚きました。昨日もいつもと変わらない元気な利用者さんをみていたから。そこから目でわかるほど痩せて行く姿をみて、初めての終末期の対応に動揺している私を見て、利用者さんは「昨日の野球みた?」といつもの笑顔でいつも通りの会話を始めました。段々会話もできなくなって、土日まで持つかどうかと言われていたが、木曜日は訪れました。いつもの優しい笑顔で迎えてくれたその数時間後、天国へ旅立ちました。弱い所を見せず、ずっと前向きだった利用者さんはずっといい男でした。 2024年1月投稿 皆さま、おめでとうございます! 入賞作品については、こちらの記事をご覧ください。つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 編集: NsPace編集部 [no_toc]

訪問看護の呼吸ケア
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2024年3月12日
2024年3月12日

訪問看護の呼吸ケア 安定期を長く過ごすための療養法・支援方法 基礎知識

在宅酸素機器や在宅人工呼吸器を使用し、在宅で療養する人が増えています。訪問看護師が安心して確実なケアを行えるようになるために、本シリーズでは日々酸素療法や人工呼吸療法にかかわる医療・看護のエキスパートがケアのポイントはもちろん、機器のしくみや管理方法、トラブル対応などをわかりやすく解説します。今回は、慢性呼吸器疾患をもつ利用者さんが安定期を長く過ごすために、訪問看護師が知っておきたい心の持ちようや療養法・支援方法の基礎知識を確認しましょう。 安定期を長く過ごせるためのケアが大切 慢性呼吸器疾患は、増悪、軽快を繰り返しながら緩徐に進行し、それに伴い呼吸困難が増強します。慢性呼吸器疾患患者さんにおいて、呼吸困難は、身体的側面だけでなく精神的・社会的・スピリチュアル的問題を生じさせます。日常生活活動を制限し、役割や趣味、生きがいなどの喪失をきたすため、疾患の治療および呼吸困難の改善を図る医療とケアは重要です。 呼吸困難を軽減する医療としては、例えば慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)であれば、ガイドラインに基づいた吸入療法などの疾患特異的治療、在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)、非侵襲的陽圧換気療法(non-invasive positive pressure ventilation:NPPV)、呼吸リハビリテーションなどがあります。看護ケアとして、患者さんがこれらの治療法や療養法の必要性を理解し、生活に取り入れてセルフマネジメントできるように支援します。 慢性呼吸器疾患患者さんが安定期を長く過ごせるかどうかは、在宅で医療や療養法などをいかにセルフマネジメントできるかにかかっており、訪問看護師の役割はきわめて大きいです。導入編となる今回は、慢性呼吸器疾患患者さんへの支援を行う看護師の心の持ちようと、患者さんの療養生活についてお伝えしましょう。特に、患者さんから「もっと教えてほしい」というニーズのある「息切れを軽くする日常生活動作の工夫」や「呼吸訓練」1)など含めいくつかの必要な療養法や支援について説明します。 なおHOTやNPPVなどの個別の療法については、本シリーズの後発記事で解説します。 >>シリーズ一覧はこちら「訪問看護と酸素・人工呼吸療法」https://www.ns-pace.com/series/hot-hmv/ 看護師が支援を行う上での心の持ちよう 心の持ちようとして皆さんにお伝えしたい内容は次の3点です。 呼吸困難は「呼吸時の不快な感覚」で、主観的な症状です。患者さんが「呼吸困難がある」と言えばSpO2がよくても呼吸困難はあるのです。呼吸困難は身体的側面だけでなく精神的・社会的・スピリチュアル的な側面を併せもった多面的なものであり「Total Dyspnea」といわれています2)。呼吸困難の原因を多面的にアセスメントしていくことが大切です。私たちは、呼吸困難のある患者さんが治療や療養法などのセルフマネジメント能力を身につけることは、患者さんにとって「大きな仕事」であることを理解し、心から応援する気持ちで支援します。患者さんは自己の価値観に基づいて行動しています。すぐにアドヒアランス不良とレッテルを貼るのではなく、患者さんの考え方や価値観、病いに伴う個人の体験の理解が必要であることを認識し、患者さんの療養法や行動の意味を理解します。 患者さんの支援に必要なスキル 患者さんの支援に必要なスキルとして、患者理解、パートナーシップの構築、アドヒアランス・自己効力感へのアプローチがあります。 患者さんを理解する 患者さんの病いの体験やライフヒストリーなどの語りを対話で促進します。しっかりと聴いて、病いの解釈や価値観、患者さんが行っている療養行動の意味や病いとともに生活する中での苦悩を理解します。 パートナーシップを構築する 尊重する、信じる、謙虚な態度、聴く姿勢を示す、ともに歩む姿勢を見せる、熱意を示す、心配を示すなどの「患者教育専門家として醸し出す雰囲気」といわれる態度で接することが大切です3)。患者さんが望む生活に即したテーラーメイドの療養法をともに考える姿勢を大切にしましょう。 アドヒアランス、自己効力感の維持・向上へのアプローチを行う 自己効力感へのアプローチでは、成功体験、代理的経験、言語的説得、生理的・情動的状態の4つの情報を活用すると有効です。具体的に説明します。■ 成功体験自分で「達成できた」という成功体験をもつことです。酸素濃縮装置、携帯用酸素ボンベの取り扱いなど、小さな目標を立てて段階的に行い、自分で「できた」という成功体験を積み重ねていきます。■ 代理的経験自分と同じ状況にある人の成功体験や問題解決方法を知り、疑似的な成功体験をもつことです。例えば、HOT導入により生きがいである畑仕事ができなくなると感じている患者さんに、酸素を使って畑仕事を継続しているほかの患者さんの状況を紹介します。それにより、自分も「できる」という自信をもつことです。■ 言語的説得専門性に優れた信頼できる人から、励まされたり、褒められたりすることで自信を高めることです。例えば、「あなたなら、きっと酸素をうまく使って趣味のゲートボールをすることができますよ」と力強く話すことで、患者さんは「信頼している人からできると言われたのでできそうな気がする」と自信を高めます。■ 生理的・情動的状態課題を実行したときに生理的、心理的に良好な反応を自覚することです。適切な酸素流量の使用により、息切れの軽減を実感してもらいます。それとともに、モニタリングを行い、脈拍やSpO2が安定していることを視覚的に提示し、息切れが少ない状態を称えることで、患者さんは自信を高めます。 療養法を生活に取り入れるための試行錯誤するプロセスを称賛しながら保証し、「待つ姿勢」を大切にします。患者さんが呼吸困難のある中、がんばっておられることに私たちは気づくことが大切です。そして、少しでも行動変容が見られたらポジティブフィードバック、つまり承認・称賛します。 呼吸ケアに必要な療養法と支援 息切れを軽くする日常生活動作の工夫を伝える 日常生活動作(activities of daily living:ADL)の工夫としては、図1のような息切れを増強させる4つの動作、すなわち「上肢挙上動作」「息を止める動作」「反復動作」「体幹前屈姿勢」を控えていただくことが大切です。4つの動作をいきなり説明するのではなく、どのようなときに息切れがあるのか、そのときの動作要領はどのようなものかを患者さんに振り返っていただきます。その後で息切れを増強させる動作を行っている場合は、その原因と工夫(対策)を説明します。 また呼気は、筋収縮がなく呼吸仕事量が少ないため、動作の開始を呼気時に合わせること、動作が早い場合はゆっくり動き適宜休憩を取り入れることを説明します。特に拡散障害が著明な間質性肺炎は、労作時に低酸素血症になりやすい病態を示し、動作要領や休憩を取り入れるように伝えます。 図1 息切れを生じさせる4つの動作 呼吸訓練の指導を行う 呼気排出障害であるCOPDには、「口すぼめ呼吸」の習得は不可欠です。口すぼめ呼吸は気道内圧を上昇させ、末梢の気道閉塞や肺胞の虚脱を防ぎ呼気をスムーズにします。指導方法は図2を参照してください。 患者さんは、息切れがあると一生懸命に息を吸おうとしますが、呼気排出障害による動的肺過膨張により息が吸えずかえって息切れが増強します。息を吐くことで酸素が入ってくると説明し、呼気を意識するように促します。間質性肺炎は呼気排出障害でないため、口すぼめ呼吸は必須ではありません。呼気時間が必然的に長くなることで呼吸数を減少させてしまい、かえって息切れが増強する場合があります。 慢性呼吸器疾患患者さんは、呼吸困難が強い場合、口すぼめ呼吸やゆっくり大きな呼吸はできません。まず看護師は、タッチングや呼吸介助を行い「大丈夫ですよ」と声をかけ不安の軽減に努めます。そして、少し呼吸回数が減少したときに患者さんに呼吸調整を行ってもらいます。例えば、鼻から吸って口から吐くようにしてもらったり、COPDの患者さんであれば口すぼめ呼吸を促したりするとよいでしょう。呼吸困難が軽減したとき、「ご自身で息切れを軽減できましたね」と称賛し、自己コントロール感を高めます。自己で呼吸困難を軽減できた体験は、呼吸困難の再来への不安を軽減し、ADL制限の減少につながります。 図2 口すぼめ呼吸の指導方法 身体活動性の維持・向上を促す 慢性呼吸器疾患患者さんは、息切れによる行動制限によって筋力低下をきたし、さらに息切れが増強するという悪循環をきたします。できるだけ座位時間(sedentary時間)を減らし、少しでも動くこと、散歩は早く歩くのではなくゆっくり長い距離を歩くこと4)が効果的であると説明します。家族を含めて自宅で可能な運動や方法についてともに考えるとよいでしょう。万歩計は、ご自身で自然に目標設定できるため有効です。 精神的・社会的・スピリチュアル的側面への支援 呼吸困難は、病状だけでなく不安や恐怖などにより増強するという悪循環に陥ります。また、できることが少なくなり、役割喪失感や家族から受ける支援の増加などにより自尊感情の低下をきたします。患者さんの病状や療養生活の中で生じているさまざまな感情や思いを傾聴し、よき理解者となり、「訪問看護師さんが来てくれたらホッとする」と思ってもらえるような存在になることが重要です。 自宅には患者さんが大切にしている趣味や価値観を見出すものがたくさんあります。それらの話題や生活の中でがんばっていること、「役割」を見出し、言語化して家族とともに称賛することは、患者さんの精神的な支援になり、自尊感情を高めることにつながります。そして、社会的・スピリチュアル的側面への支援にもつながります。 アドバンス・ケア・プランニング アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)とは、将来の意思決定能力の低下に備えて、今後の治療・療養について患者さんやその家族とあらかじめ話し合うプロセスです。在宅は、病院と異なり患者さんがくつろげる場所であり、訪問看護師も患者さんの大切なものを見出しやすい状況にあります。 日々の療養支援の中で、患者さんは何気なく大切にしていることや望む生き方を語ることがあります。この貴重な「想いのかけら」をキャッチし、対話によりピースをつなげながら5)ご家族、医療者と話し合いを繰り返す中で価値観を共有していくことで、患者さんの意思を尊重することができます。 監修・執筆:竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長慢性疾患看護専門看護師 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)日本呼吸器学会肺生理専門委員会在宅呼吸ケア白書 COPD疾患別解析ワーキンググループ編.『在宅呼吸ケア白書2010』,日本呼吸器学会,2010:17.2)日本呼吸器学会 日本呼吸ケアリハビリテーション学会合同 非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021作成委員会編.『非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021』,メディカルレビュー社,東京,2021:25.3)河口照子編.『慢性看護の患者教育 患者の行動変容につながる「看護の教育的関わりモデル」』,メディカ出版,大阪,2018:65-72.4)南方良章.「慢性閉塞性肺疾患患者に対する身体活動性研究の進歩」,日内科学誌 2019:108(12);2554-2560.5)西川満則,大城京子.「コミュニケーションの基本」,『ACP入門 人生会議の始め方ガイド』,日経メディカル,東京,2020:101-114. 【参考文献】安酸史子.『改訂3版 糖尿病患者のセルフマネジメント教育』,メディカ出版,大阪,2021.

訪問看護認定看護師 活動記/関東ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/関東ブロック
コラム
2024年3月5日
2024年3月5日

地域がつながる「ケアの駅」【訪問看護認定看護師 活動記/関東ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。最終回となる今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 関東ブロック、山田 富恵さんの活動記です。コロナ禍での協議会の取り組み、地域住民や介護・医療職などをつなげる「ケアの駅」の設立、地域に向けたACP(アドバンス・ケア・プランニング)の啓蒙活動などについてご紹介いただきます。 執筆:山田 富恵看護学校卒業後、病棟勤務、脳外科急性期病院、クリニックのパート勤務などを経て、子育てをしながら医師会立訪問看護ステーションに勤務。子育て時間を優先し、ワークライフバランス重視で選んだだけのつもりが訪問看護の魅力にはまる。「在宅看護の現場で行われている看護判断や技術を系統立てて学びたい」「それを言語化するための学習がしたい」と感じ、2010年に訪問看護認定看護師資格取得。2014年に日本財団在宅看護センター 起業家育成事業を知って感銘を受け、第1期生として参加。修了後、2016年に起業し、現在アィルビー訪問看護ステーション管理者。2023年より日本訪問看護認定看護師協議会関東ブロック長。 役立つ知識の共有会や交流会を楽しく企画 私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の関東ブロックは、東京都と埼玉県を範囲としています。ブロック委員みんなで知恵を絞り、関心の高い話題について学びつつ、交流も兼ねた活動報告ができるよう、年に2回の研修会と交流会を開催しています。 他ブロックの地域に比べると住民人口が多く、訪問看護認定看護師の人数も一番多いのですが、都市部の特徴なのでしょうか。所属事業所を越えての認定看護師同士の交流は少ないように感じます。私も当初は関東ブロックの委員にお声掛けいただいたことがきっかけで研修会や交流会に参加するようになったのですが、最近の話題に触れたり、日頃の悩みを話せたりと、皆様とつながれることに安心感と刺激をもらえる場です。 私は2023年度からブロック長を拝命したばかりなので、まだ何もお役に立っていませんが、前年度までのブロック長さんたちが大事にしてきたことを繋げていけたらと思っています。 コロナ禍で繋がる訪問看護の力に救われる 認定看護師として事業所を運営していて「本当に良かった!」と思ったのは、コロナ禍で不足していた感染防護具を、地域の訪問看護ステーションや介護事業所へ届ける活動に協力ができたことです。 地域に届けた感染防護具 日本訪問看護認定看護師協議会を通じて日本訪問看護財団からの情報をいただき、有志の協力団体のひとつとして活動をしました。スタッフや利用者さんを守りたいのにマスクや手袋が手に入らなかった日々…。感染防護具をお届けした地域の事業所にも、大変喜んでいただけました。 この感染防護具を届けるプロジェクトの協力団体は、北海道から沖縄まで110ヵ所あまりになったと聞いています。日本全体が感染症への怖さで閉塞感、孤立感を感じていた中で、このような活動に一部でも参加できてつながれたことは、本当に涙が出るほどありがたいことでした。実のところ、地域に貢献するために活動していたというよりも、経営者として管理者として、ひとりぼっちで重圧を感じていた私自身が、この活動によって大きく救われていたのです。品物がある以上に「つながっている」という安心感をいただきました。 コロナ禍当時は大変過ぎて、記憶が飛んでしまっている部分も多くありますが、今思い出すのは、感染防護具の箱を手渡した時の他事業所のスタッフの笑顔、訪問苦労話でスタッフと笑いあった笑顔、「あの時は来てくれてありがとう」とおっしゃった利用者さんとご家族の笑顔です。 「道の駅」のように「ケアの駅」があったら 認定看護師の教育課程を受けるうち、私がやりたいと思うようになったのは地域活動です。訪問看護ステーションを立ち上げ、今の広めの場所に事務所を移転したことをきっかけに、地域住民の方や地域連携職が集まって情報発信ができる場を作りました。観光地への移動途中にひと休みしたり、その地域の情報を得たりできる「道の駅」のようになってほしいという願いから、「ケアの駅」と名付けました。このケアの駅は、地域を走り回るケア提供者や地域の方が、気軽に立ち寄って休息したり、介護・健康情報の共有や相談をしたりすることで、ゆるくつながれる場にしたいと思っています。 元々鰹節屋さんだった風情あるアィルビー訪問看護ステーション 実際には、現事務所に引っ越した約1ヵ月後に新型コロナウイルス感染症の流行が始まってしまったので、2024年2月時点ではまだ一般の方が立ち寄れるようにはなっていませんが、感染対策に気を付けながら情報発信の会は複数回開催しています。 例えば、以下のような内容です。 在宅歯科医師によるオーラルフレイルの講義管理栄養士や企業の調理師によるとろみ剤と調理の工夫に関する講義社会福祉協議会の担当者による後見人制度に関する講義在宅医師による意思決定支援や在宅医療についての講義 また、今年度は都立病院と共同して、地域にACP(アドバンス・ケア・プランニング)を拡げる看護研究実践を行っています。「『人生会議』をしませんか」と題して、カードゲームを体験しながら自分の大事だと思うことを話し合う会を開催しました。また、区民まつりにテントを出して、健康相談窓口をしながらACPの周知活動を行いました。 ACPのカードゲーム区民まつりの様子ケアの駅での在宅歯科医師をお呼びしての講座認知症カフェで出前講座をしている著者 このように書くと順調に進んでいるように思われるかもしれませんが、なかなか思い通りにいかないこともあります。クラウドファンディングに挑戦してもうまくいかなかったり、準備をした会の当日に新型コロナや悪天候の影響で中止したり、会の開催以外は「ケアの駅」スペースは閉めているので広いスペースが無駄になっていたり…。試行錯誤の連続です。でも、広いスペースがあるおかげで、前述の感染防護具の箱を地域の分も含めて多く備蓄することができたので、「どんな経験も無駄にはならない」と自分に言い聞かせています。 私自身も、スタッフに訪問を分担してもらいながら重症者への訪問や緊急時訪問に行っているのですが、管理者業務や土日祝の訪問、地域活動などを頑張れるのは、利用者さんやスタッフのおかげです。在宅療養やお看取りで利用者さんやそのご家族に「本当に良かった」と言っていただけることや、新しいスタッフが「訪問看護が楽しい」と言って働いてくれることなどが、私の栄養になっています。 訪問看護の役割はますます重要に 2023年の総務省の人口推計1)では80歳以上の割合が初めて10%を超え、10人に1人が80歳以上になったそうです。驚いてしまいますね。今後、地域において訪問看護はますます役割が重要になってくると思われます。今現在、訪問看護に従事している方も、これから挑戦してみたい方も、無理と思わず奥深い地域活動や在宅看護にぜひ飛び込んでみてください。また、訪問看護師は一人で訪問することが多いですが、決して一人ではありません。お近くの訪問看護認定看護師や在宅ケア看護師とつながっていただけると大きな力になるのではないかと思っています。 ※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部 【参考】1)総務省統計局.「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」統計トピックスNo.138(令和5年9月17日)https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1380.html2024/2/9閲覧

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