認定看護師に関する記事

訪問看護認定看護師 活動記/関東ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/関東ブロック
コラム
2024年3月5日
2024年3月5日

地域がつながる「ケアの駅」【訪問看護認定看護師 活動記/関東ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。最終回となる今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 関東ブロック、山田 富恵さんの活動記です。コロナ禍での協議会の取り組み、地域住民や介護・医療職などをつなげる「ケアの駅」の設立、地域に向けたACP(アドバンス・ケア・プランニング)の啓蒙活動などについてご紹介いただきます。 執筆:山田 富恵看護学校卒業後、病棟勤務、脳外科急性期病院、クリニックのパート勤務などを経て、子育てをしながら医師会立訪問看護ステーションに勤務。子育て時間を優先し、ワークライフバランス重視で選んだだけのつもりが訪問看護の魅力にはまる。「在宅看護の現場で行われている看護判断や技術を系統立てて学びたい」「それを言語化するための学習がしたい」と感じ、2010年に訪問看護認定看護師資格取得。2014年に日本財団在宅看護センター 起業家育成事業を知って感銘を受け、第1期生として参加。修了後、2016年に起業し、現在アィルビー訪問看護ステーション管理者。2023年より日本訪問看護認定看護師協議会関東ブロック長。 役立つ知識の共有会や交流会を楽しく企画 私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の関東ブロックは、東京都と埼玉県を範囲としています。ブロック委員みんなで知恵を絞り、関心の高い話題について学びつつ、交流も兼ねた活動報告ができるよう、年に2回の研修会と交流会を開催しています。 他ブロックの地域に比べると住民人口が多く、訪問看護認定看護師の人数も一番多いのですが、都市部の特徴なのでしょうか。所属事業所を越えての認定看護師同士の交流は少ないように感じます。私も当初は関東ブロックの委員にお声掛けいただいたことがきっかけで研修会や交流会に参加するようになったのですが、最近の話題に触れたり、日頃の悩みを話せたりと、皆様とつながれることに安心感と刺激をもらえる場です。 私は2023年度からブロック長を拝命したばかりなので、まだ何もお役に立っていませんが、前年度までのブロック長さんたちが大事にしてきたことを繋げていけたらと思っています。 コロナ禍で繋がる訪問看護の力に救われる 認定看護師として事業所を運営していて「本当に良かった!」と思ったのは、コロナ禍で不足していた感染防護具を、地域の訪問看護ステーションや介護事業所へ届ける活動に協力ができたことです。 地域に届けた感染防護具 日本訪問看護認定看護師協議会を通じて日本訪問看護財団からの情報をいただき、有志の協力団体のひとつとして活動をしました。スタッフや利用者さんを守りたいのにマスクや手袋が手に入らなかった日々…。感染防護具をお届けした地域の事業所にも、大変喜んでいただけました。 この感染防護具を届けるプロジェクトの協力団体は、北海道から沖縄まで110ヵ所あまりになったと聞いています。日本全体が感染症への怖さで閉塞感、孤立感を感じていた中で、このような活動に一部でも参加できてつながれたことは、本当に涙が出るほどありがたいことでした。実のところ、地域に貢献するために活動していたというよりも、経営者として管理者として、ひとりぼっちで重圧を感じていた私自身が、この活動によって大きく救われていたのです。品物がある以上に「つながっている」という安心感をいただきました。 コロナ禍当時は大変過ぎて、記憶が飛んでしまっている部分も多くありますが、今思い出すのは、感染防護具の箱を手渡した時の他事業所のスタッフの笑顔、訪問苦労話でスタッフと笑いあった笑顔、「あの時は来てくれてありがとう」とおっしゃった利用者さんとご家族の笑顔です。 「道の駅」のように「ケアの駅」があったら 認定看護師の教育課程を受けるうち、私がやりたいと思うようになったのは地域活動です。訪問看護ステーションを立ち上げ、今の広めの場所に事務所を移転したことをきっかけに、地域住民の方や地域連携職が集まって情報発信ができる場を作りました。観光地への移動途中にひと休みしたり、その地域の情報を得たりできる「道の駅」のようになってほしいという願いから、「ケアの駅」と名付けました。このケアの駅は、地域を走り回るケア提供者や地域の方が、気軽に立ち寄って休息したり、介護・健康情報の共有や相談をしたりすることで、ゆるくつながれる場にしたいと思っています。 元々鰹節屋さんだった風情あるアィルビー訪問看護ステーション 実際には、現事務所に引っ越した約1ヵ月後に新型コロナウイルス感染症の流行が始まってしまったので、2024年2月時点ではまだ一般の方が立ち寄れるようにはなっていませんが、感染対策に気を付けながら情報発信の会は複数回開催しています。 例えば、以下のような内容です。 在宅歯科医師によるオーラルフレイルの講義管理栄養士や企業の調理師によるとろみ剤と調理の工夫に関する講義社会福祉協議会の担当者による後見人制度に関する講義在宅医師による意思決定支援や在宅医療についての講義 また、今年度は都立病院と共同して、地域にACP(アドバンス・ケア・プランニング)を拡げる看護研究実践を行っています。「『人生会議』をしませんか」と題して、カードゲームを体験しながら自分の大事だと思うことを話し合う会を開催しました。また、区民まつりにテントを出して、健康相談窓口をしながらACPの周知活動を行いました。 ACPのカードゲーム区民まつりの様子ケアの駅での在宅歯科医師をお呼びしての講座認知症カフェで出前講座をしている著者 このように書くと順調に進んでいるように思われるかもしれませんが、なかなか思い通りにいかないこともあります。クラウドファンディングに挑戦してもうまくいかなかったり、準備をした会の当日に新型コロナや悪天候の影響で中止したり、会の開催以外は「ケアの駅」スペースは閉めているので広いスペースが無駄になっていたり…。試行錯誤の連続です。でも、広いスペースがあるおかげで、前述の感染防護具の箱を地域の分も含めて多く備蓄することができたので、「どんな経験も無駄にはならない」と自分に言い聞かせています。 私自身も、スタッフに訪問を分担してもらいながら重症者への訪問や緊急時訪問に行っているのですが、管理者業務や土日祝の訪問、地域活動などを頑張れるのは、利用者さんやスタッフのおかげです。在宅療養やお看取りで利用者さんやそのご家族に「本当に良かった」と言っていただけることや、新しいスタッフが「訪問看護が楽しい」と言って働いてくれることなどが、私の栄養になっています。 訪問看護の役割はますます重要に 2023年の総務省の人口推計1)では80歳以上の割合が初めて10%を超え、10人に1人が80歳以上になったそうです。驚いてしまいますね。今後、地域において訪問看護はますます役割が重要になってくると思われます。今現在、訪問看護に従事している方も、これから挑戦してみたい方も、無理と思わず奥深い地域活動や在宅看護にぜひ飛び込んでみてください。また、訪問看護師は一人で訪問することが多いですが、決して一人ではありません。お近くの訪問看護認定看護師や在宅ケア看護師とつながっていただけると大きな力になるのではないかと思っています。 ※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部 【参考】1)総務省統計局.「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」統計トピックスNo.138(令和5年9月17日)https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1380.html2024/2/9閲覧

地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】
地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】
コラム
2024年1月23日
2024年1月23日

地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 東北ブロック、戸崎 亜紀子さんのご登場です。訪問看護師になったきっかけや、東日本大震災のご経験、地域のニーズに向き合う活動、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の啓発活動などをご紹介いただきます。 執筆: 戸崎 亜紀子星総合病院 法人在宅事業部長/在宅ケア認定看護師総合病院で急性期看護を経験した後、育児・介護のため一時退職。クリニック勤務を経て星総合病院に入職し、精神科病棟を経験した後、訪問看護ステーションへ。訪問看護ステーション管理者、在宅事業部事務局長、法人看護部長を経て、現職。2009年~ ポラリス保健看護学院 非常勤講師(在宅看護論)2012年~2021年 福島県訪問看護連絡協議会 理事、副会長2015~2016年 福島県看護協会 施設・在宅看護師職能委員会2016年~ 郡山医師会 在宅医療介護連携推進特別委員会メンバー2021年~ 日本訪問看護認定看護師協議会 理事2022年~ 感染管理認定看護師教育課程開設準備 東北ならではの在宅看取り実践事例を紹介 まずは、訪問看護認定看護師協議会の東北ブロックについてご紹介します。東北ブロックの会員数は10名です(2024年1月現在)。少ない人数ですが、年に2回は仙台に集合して研修を行ってきました。近年はオンラインでのミーティングや研修もできるようになり、交通費や移動時間の心配がないぶん、より活動しやすくなっています。 2021年に、協議会では日本財団支援事業として全国 各ブロックで「在宅看取りを実践できる訪問看護師の育成事業」に取り組みました。東北ブロックの私たちもオンラインでの打ち合わせを重ね、研修当日は東北の訪問看護師86名に対して、東北ならではの実践事例を紹介。それを踏まえたディスカッションも行うことができました。これは、認定看護師として力が発揮できたと実感でき、自信になる取り組みでした。 ※参考日本訪問看護認定看護師協議会「2021年度日本財団支援事業(遺贈基金) 在宅看取りを実践できる訪問看護師の育成プロジェクト」 東北ブロック活動報告(PDF) ブロック活動では、悩みや境遇が近い認定看護師同士でディスカッションでき、刺激を受けることや励まされることが多くあります。今後もっと仲間が増えることを切に願っています。 「家に帰りたい」患者さんのために さて、ここからは私自身の経験や活動内容についてもお話ししていきたいと思います。 私が訪問看護を始めたきっかけは、当時ナースバンク(現福島県ナースセンター)からお知らせのあった「訪問看護婦養成講座」です。「ブランクの不安解消になるのでは」という安易な気持ちで参加したのですが、その講座で介護保険や訪問看護制度を知ったことが、私の転機になりました。 急性期病院で働いていたとき、「家に帰りたい」と言いながら病棟で息を引き取っていった終末期の患者さんたちを数多く看てきましたが、仕方のないことだと思っていました。それが「今の時代なら自宅に帰してあげられるんだ」と知り、衝撃を受けたのです。 「ぜひ訪問看護をしたい」と現在勤めている法人に就職し、病棟で精神科看護を経験したのち、訪問看護ステーションに異動となりました。精神科訪問看護や介護保険での高齢者の訪問、在宅看取りに携わりました。 3.11東日本大震災を経験。災害への想い 私が訪問看護認定看護師になったのは、訪問看護ステーションに勤めて4年目の2010年のこと。退院調整でがん性疼痛看護認定看護師と協働する機会があり、彼女に大きな刺激を受け、44歳で認定看護師になったのです。 学んだことを活かしてより深くアセスメントできるようになり、やりがいをもって活動していた矢先、2011年に東日本大震災と原子力発電所の事故が起きました。当地は津波こそない地域でしたが、震度6弱の揺れにより自宅が全壊判定となる被害を受け、余震と放射能の恐怖や先の見えない不安のなか、無我夢中で日々を送りました。 星総合病院 被災写真(2011年3月12日撮影)。スプリンクラーが作動し、二次被害も危惧されたため、300人以上の患者さんは全員避難。当日のうちに、法人の関連病院や地域の急性期病院に振り分けた そのような状況下で私が前を向くことができたのは、認定看護師教育課程の先生や同期の仲間、その他大勢の方々が心を寄せてくださったおかげです。そして、自分の看護を待っている方がいることも、大きな支えでした。突然病気や障害を抱えることになった患者さんの気持ちと、突然被災した自分を重ねることも度々ありました。被災者になってみて、看護のもつ力、例えばそばにいること、見通しに関する情報を提供すること、関心を寄せ続けることなどが大きな力になると実感し、この経験から数多くのことを学びました。 実は震災の2年前、「宮城県沖地震(1978年)が再来する確率80%以上」といわれていました。そのため、当時所属していた部署で阪神・淡路大震災や新潟県中越地震が起きた際の訪問看護ステーションの事例を読み合わせし、対策を検討する機会を持ちました。この会を通じて、電話がつながらなくなり安否確認に苦労した話や、波打った道路や崩れた塀などで夜間の訪問が危険になった話を知り、当時できることを検討して取り組みました。そのうちのいくつかは、東日本大震災の時に現実に。「念のため」と思って対策していたことが、まさかこれほど短期間のうちに役に立つとは、思いもよりませんでした。 近年は「想定外の災害」「命を守る行動を」といった言葉を、頻繁に耳にするようになりました。新型コロナウイルスのパンデミックも災害といえます。「大丈夫だろう」ではなく、「起きるかもしれない」と自分事として考えておくこと。そしてBCPを作成しておくこと。私はこれらの大切さを、身をもって実感しています。 今年度(2023年度)に日本訪問看護認定看護師協議会がBCP作成支援事業に取り組むことになり、私は担当理事になりました。BCP作成に対して億劫なイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当に役に立ちますし、必要なものです。参加した事業所のBCP作成をしっかりと支援すべく、委員一同本気で取り組んでいます。 地域のニーズに応え、幅広く活動 訪問看護ステーションに勤めている間に、所属する法人が「看護師特定行為研修機関」になり、私も研修を受講できました。地域で働く看護師こそ、これにより裁量権が増えて活躍できるのではと、心躍りました。 ※参考:公益社団法人 日本看護協会 「特定行為研修制度とは」 当時、当法人では「医療機関ではあるが、もっと地域のニーズを拾い、できることをしよう」と在宅事業部事務局を創設することになりました。そこに私が異動することになり、「法人の看護職がもっと地域のニーズに向き合い、看護の視野を広げ活躍できるように」という想いを抱きながら、法人在宅事業部事務局長に就任しました。総合病院に籍を置きながら、現在でも地域の方々と数多くの接点を持ち、「つながっていく」ための活動をしています。 「懸け橋メイトミーティング」 2019年、星ヶ丘福祉タウンでの懸け橋メイトミーティングの様子 市内地域の訪問看護ステーションや病院の退院調整担当者、そしてケアマネジャーを巻き込んで、多職種連携研修を行っており、「顔の見える」関係構築につながっています。 コロナ禍もオンラインやハイブリッド方式で継続し、年に3回程度実施しています。 「どこでもメディカルセミナー」 特別養護老人ホームにて演習付き講義を行った際の様子 地域の医療介護従事者に向けた出張型研修プログラム。地域との連携強化につながっています。申込者と職員とのマッチングをし、研修をコーディネートをしています。 「オレンジカフェ☆キラリ」 オレンジカフェにて人生会議に関する健康教室を開催した際の様子 認知症疾患医療センターと連携した認知症カフェの取り組みです。星総合病院の敷地内で、原則月に2回開催しています。 複数の専門職やボランティア、学生等が参加しており、健康体操、健康講座などのイベントをあわせて開催しています。 2019年のお花見ツアー企画 カフェ常連の認知症当事者の方と介護者・スタッフとで、お花見ツアーも行いました。 写真に写っている認知症当事者の方(右)の一言が発端で、お花見が実現しました。 コロナ禍で中断したものもありますが、これら以外にも精神科の患者さんやお子さんを対象としたイベントも含め、数多くの取り組みを行ってきました。 こうした活動を通して、地域住民の方がぽつりぽつりと健康相談・介護相談・認知症の相談をしてくださるようになりました。見知らぬ人同士が出会って、信頼関係ができ、いろんなつながりができる。訪問看護の経験が大きく活きる活動でした。 「あなたらしい生き方」を支えるために 最後に、私が注力してきたACP(アドバンス・ケア・プランニング)に関する活動もご紹介します。 これまで、たくさんの高齢者や終末期の利用者さん、そのご家族との出会いがありましたが、皆さんそれぞれに文化や思いがあります。こちらの常識で決めつけてはいけないということ、看護職が行う情報提供の必要性や、看護職だからこそできる情緒的なサポートの重要性、そして、看取り支援をするためには、ヘルパーやケアマネジャーと情報を共有し、チームで利用者さんとご家族を支えることがとても大切なのだと学びました。 患者さんや地域住民だけでなく、病院職員も含めたすべての人にACPの啓発活動をしていくべきとの思いから、2018年に法人内の事務職やセラピスト、医師も含めACPプロジェクトチームを創設しました。 ACPプロジェクトチームは少しずつ活動を広げ、今も法人各施設から多職種を委員として選出して定例会を実施しています。全職員向けの研修会、新入職員研修での「もしバナカードゲーム」を用いたACP啓発活動や、地域住民向けの出前講座なども行っています。2020年にはACP啓発ツール「未来への手紙」~ACPのすすめ~の作成と配布を開始しました。 参考: 公益財団法人 星総合病院 ACPプロジェクトチーム Webサイト(「未来の手紙」のダウンロードも可能) 2017年の職員向け「もしバナカードゲーム」体験会の様子 社会資源として、地域住民の健康を支える 色々と立場は変わってきましたが、私の活動の判断基準は常に「そのことが地域住民の心身の健康につながるか」です。 人生において「入院患者」としての期間はほんの一部分で、その前後は「生活者」です。私たちが提供する医療や看護は、その方のQOLを良くすることにつながらなければいけないと思っています。当法人は「病気を治療するだけでは人は健康に暮らすことができない。地域が必要とする救急医療・高度医療・専門医療並びに介護・福祉事業の提供をもって地域の公衆衛生の向上に資することを事業として行う」と掲げています。 認定看護師になったばかりの頃、所属法人の理事長から「あなたは社会資源となりなさい」という言葉をいただきました。今後も、自分の言葉、振舞い、活動が少しでも地域住民の健康に暮らすことの一助になるように、活動を続けていきたいと思います。 * * * 最後になりますが、この原稿の校正中に令和6年能登半島地震が発生しました。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。当協議会ができる支援を考え続け、何らかの活動をしていきたいと考えています。少しでも安心と安寧の時間が増えていきますように。 ※本記事は、2024年1月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック
コラム
2024年1月16日
2024年1月16日

地域の出前講座で訪問看護を普及【訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の皆さまの活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会の九州ブロック、安部 美保さんの活動記です。安部さんは、訪問看護ステーション管理者で、大分県訪問看護ステーション協議会 副会長でもあります。大分県内の訪問看護ネットワークについてや、地域市民の方々向けの出前講座への取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:安部 美保保健師・助産師学科を卒業後、地元の総合病院へ入職1997年 病院併設の訪問看護ステーション開設と同時に管理者となる。2012年 訪問看護認定看護師資格取得2020年~ 日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロック長2022年~ 一般社団法人 大分県訪問看護ステーション協議会 副会長 月に1回の「おしゃべり会」開催 日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロックの体制は、九州・沖縄の8県の会員で構成されています。会員数は、2023年11月現在で24名です。ブロック長1名と大分・福岡・佐賀・熊本・鹿児島からそれぞれ1名の委員が選出されており、研修会・交流会の企画運営などを中心に、ブロック活動を行っています。 2008年9月に西日本で初めて訪問看護認定看護師教育課程が大分県立看護科学大学看護研究交流センターに開設されました。そのため、九州やその近県に住む方は受講がしやすくなり、当時、九州内の訪問看護認定看護師も増加傾向にありました。しかし、2013年3月で大分の教育課程が閉講となったこと、経験豊かな訪問看護認定看護師が定年を迎え認定更新をしない方が増えてきたことなど、さまざまな要因が重なって、九州ブロックの会員数は、この5年間で10人程度減少しています。 年1回開催してきた研修会・交流会は、会員が開催地に集合し、顔を合わせて語り合うことのできる貴重な場となっていました。コロナ禍以降もリモート開催や対面・リモートのハイブリッド開催で継続してきましたが、会員数の減少と相まって、参加者が増えない状況がここ数年続いています。このように衰退していく状況を何とか打開したいという思いで、ブロック役員で話し合いを繰り返し行いました。 アイデアを出し合った結果、今年の7月から月1回、会員なら誰でも自由に参加できるリモートでの会議、通称「おしゃべり会」を定期的に開催することになりました。おしゃべり会を地道に開催していくうちに、これまで会員であっても交流のなかった方々が参加され、顔見知りが増え、それぞれの貴重な活動の報告が聞けて、新たな交流が生まれています。 「おしゃべり会」の会話の中で、「今年度の研修会に、ぜひ聖路加国際大学大学院看護学研究科教授の山田雅子先生に講演をお願いしたいね」という話が出ました。お忙しい先生に九州に来てもらうのは難しいのではと思ったのですが、山田先生から快く講師を受けていただくことができました。今から、先生の講演会をみんな楽しみにしています。 協議会の機能充実。大分の訪看ネットワーク 続いて、私が管理者を勤めている「訪問看護ステーションくにさき」も所属している、一般社団法人大分県訪問看護ステーション協議会(以下、協議会)の活動についてもご紹介します。 以前、協議会は大分県医師会が事務局を執り行う任意団体でしたが、6年前に法人化し、一般社団法人となりました。法人化後は、大分県看護研修会館内の一室をお借りして、事務員を一人雇用して活動を始めました。現在の協議会加入訪問看護ステーション(以下、ステーション)は135ヵ所で、大分県内の約70%のステーションが入会しています。会長の強いリーダーシップにも支えられ、この6年間で運営もスムーズになり、協議会機能も充実してきています。その成果の一つとして、今年度、法人化して初めて大分県から「訪問看護就職ガイダンス・インターンシップ事業」を受託できました。行政からも信頼される法人へと成長した証と喜んでいます。 加入ステーションはビジネスチャットでつながっており、事務局や会員からのタイムリーな情報提供があり、情報伝達・情報共有がスムーズです。また、県内を2次医療圏単位で分けて11の支部を作り、支部から理事を任命。支部長も兼ねてもらいます。支部ごとで定期的な支部会・研修会など活動を行っており、顔の見える関係ができています。 このネットワークのお陰で、訪問看護の実務でも協力しやすくなったという声があがっているほか、BCP策定にも役立っており、支部単位で協力してBCPを作り上げているところもあります。今後もさらに会員同士が交流でき、協力し合える協議会に発展していくことを願っています。 出前講座で訪問看護を普及 私は生まれ育った地元で訪問看護を30年以上おこなっています。30年前は医療職でさえ「訪問看護って何?」という人が大半なほど知名度が低かったことを覚えています。それが今では、訪問看護師の地道な努力の成果もあり、医療・介護・保健にかかわる方で訪問看護を知らない人はいない状況になってきています。 ただ、一般市民の方々の訪問看護の認知度はまだまだ低いと感じています。このような中で、長年地元で訪問看護をさせてもらい、訪問看護認定看護師の資格まで取得することができた私の役割は、地域住民に訪問看護を普及させることだと考えています。そうすれば、必要な方が必要な時に訪問看護を利用することができるという思いがあります。 出前講座の様子 それを実現するため、地域への出前講座を8年ほど前からはじめました。地域サロン活動から依頼を受けて、訪問看護の普及啓発に力を入れています。「そんないい制度があるとは知らなかった。必要になったらお願いしたい」といった声も聴かれています。地道な活動ですが、今後も続けていきたいと思っています。 * * * 訪問看護は、今後ますます在宅の場で必要とされ、発展していく分野です。人が本来生活する場所である自宅での暮らしを支え、自分らしく生き抜こうとする方たちを一緒にサポートしていきましょう。訪問看護はやりがいのある仕事ですよ。 ※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック
コラム
2023年12月26日
2023年12月26日

後進に繋ぐ在宅看護への想い【訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 中四国ブロック、杉本 由紀子さんのご登場です。杉本さんは現在、訪問看護ステーションでの後進育成を行うと同時に、看護大学で教鞭をとっています。 今回は、地域包括ケアシステムの中で訪問看護師が担う役割の重要性や、新卒訪問看護師輩出への想いなどを教えていただきます。 執筆:杉本 由起子訪問看護認定看護師/人間環境大学松山看護学部(地域・在宅看護学領域)・AOIケアリングステーション非常勤勤務大阪府出身。看護学校卒業後、大学病院等に勤務。結婚、出産後「目指したい看護」を模索し、「在宅終末期看護、在宅看取り」実践のため1995年より訪問看護ステーションに勤務。2012年 群市医師会に地域連携室を開設、「厚生労働省在宅医療連携拠点事業」や在宅緩和ケア推進モデル事業受託。2016年仲間と訪問看護ステーションを立ち上げ、2021年から現職。2001年 介護支援専門員資格取得2010年 訪問看護認定看護師教育課程修了2017年 大学院看護研究科看護学専攻臨床看護学分野高齢者看護学博士前期課程修了2021年 看護大学に勤務し、立ち上げた訪問看護ステーションでアドバイザー的役割に従事 海を超えたネットワーク! 私が所属する日本訪問看護認定看護師協議会の中四国ブロックは、美しい島嶼(とうしょ)部の浮かぶ瀬戸内海を超えたネットワークが自慢です。私が入会した当初は3人のメンバーでしたが、今では10倍近いメンバーになりました(2023年11月現在)。 ここ数年、ブロック長を中心に力を入れている活動は、「臨床推論」「在宅看取り」の講義です。臨床推論は主に新人訪問看護師を対象に開催し、ファシリテーターの役割を訪問看護認定看護師が担っています。 また、中四国エリアの特徴として、在宅・慢性期領域パッケージを含む認定看護師教育課程在宅ケア分野が徳島大学にあることも大きいでしょう。認定資格を取りやすい立地環境のため、メンバーの年齢層は幅広いです。訪問看護創設期を率いてきた世代はいわゆる「訪問看護第一世代」と呼ばれますが、その想いを引き継いだ第二世代、介護保険が始まって以降の第三世代のメンバーもおり、幅広い知識や情報の共有がしやすいことも誇りです。 中四国ブロックメンバーの訪問看護認定看護師も在宅ケア認定看護師も、みんなで協力し合って日本訪問看護認定協議会を盛り上げています。 訪問看護師は地域包括ケアのキーパーソン! 私の在宅看護実践における大きな経験・強みは、「在宅医療連携推進事業」のモデル事業に参加し、地域文化を重視したシステム作りに従事できたことです。 地域包括ケアシステム構築のためには、在宅医療の推進が必須。また、地域独自の方法を早急に確立することが求められています。難易度が高いながらもこれらの事業を無事に完遂できたのは、訪問看護認定看護師教育課程で培った、「実践・指導・相談」の学びがあったからこそです。 多職種との交流や、職種を超えたネットワーク・チーム作りのためには、情報共有のための共通言語化が欠かせません。多職種間を繋ぐことは訪問看護師の地域での大事な役割でもありますので、経験を生かして「顔の見える関係作り」に貢献できたと思っています。 訪問看護認定看護師として新たな働き方へ 2016年に訪問看護ステーションを立ち上げた際の経験についてもご紹介します。以下の3つのポリシーを掲げてスタートしました。 地域住民ファースト開かれたステーション地域課題の発見 例えば、休日・休日料金を設定しない。山間部エリアも活動エリアとする。いつでも地域住人や多職種からの相談を受け付ける。そして、地域の方々とのコミュニケーションを通じて地域課題を見つけることを心掛けてきました。 3人の仲間で開設した訪問看護ステーションも、現在ではケアマネジャーや多職種を含め30名あまりのスタッフ数に。機能強化型訪問看護ステーション1の算定もできるようになりました。現在私は、相談役として訪問看護ステーションに在籍し、臨床現場の後輩育成に関わっています。 また、訪問看護認定看護師としての活動を生かし、看護教員としても働いています。「看護を語る」ことや「在宅終末期看護の魅力」を看護基礎教育の場で学生に伝えていくことで、一人でも多くの学生に在宅看護に興味を持ってもらいたいと思っています。 新カリキュラムがスタートし、「地域・在宅看護」の教育を受けた看護学生たちがどんどん世に出ていきます。これからの地域包括ケアへの強い味方・担い手として、多くの新卒訪問看護師が誕生することを夢見ています。 * * * 「あきらめない看護実践」の場として、在宅看護はキラキラ輝いています。ご利用者さんやご家族とともに、希望を叶える。そんな現場が訪問看護にはあります。そして、どうか仲間とともに多くの「看護の語り」をしてください。その経験は、自己の成長に必ず役に立ちます。 ※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部 【参考】〇厚生労働省.「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html2023/11/9閲覧〇一般社団法人全国訪問看護事業協会.「訪問看護ステーションにおける 新卒看護師採用及び教育のガイドブック策定事業  報告書」(2016年3月)https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/H27-3.pdf2023/11/9閲覧

在宅の褥瘡・スキンケア 下肢潰瘍
在宅の褥瘡・スキンケア 下肢潰瘍
特集 会員限定
2023年12月5日
2023年12月5日

原因・特徴は? 下肢潰瘍のアセスメントと重症化を予防的するスキンケア

下肢は、解剖生理的に、外傷や物理的刺激を受けやすい、動脈の交感神経支配が強く皮膚血流量が少ない、重力によるうっ滞や血栓を生じやすい、という特性があります。足に関連した病変(足病変)は、潰瘍病変、下肢特有の皮膚や爪病変、虚血性疾患、静脈疾患・リンパ浮腫疾患などさまざまで、重症化するリスクが高いためアセスメントや予防的なケアが重要です。 そこで今回は、看護の実践場面で遭遇する難治性潰瘍の一つである下肢潰瘍について、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、それぞれの特徴と予防的スキンケアのポイントを中心に解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 予防のために知っておきたい下肢潰瘍の原因と特徴 下肢潰瘍は、日本皮膚科学会による「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン−5下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン」1)において、「下肢に生じる潰瘍の創傷で、種々の原因で生じるが、静脈性潰瘍の頻度が最も多く欧米では約7〜8割は静脈性とされている。約1割は動脈性で両者の合併もあるが、下腿潰瘍の多くは循環障害によるものである。その他の原因として膠原病、血管炎、褥瘡、悪性腫瘍、感染症、接触皮膚炎などがある」と定義されています。 下肢潰瘍の原因 下肢潰瘍の原因、および分類は以下のとおりです。 糖尿病(糖尿病性足病変)動脈硬化(閉塞性動脈硬化症〔ASO〕、バージャー病など)静脈うっ滞(下肢静脈環流異常、下肢静脈瘤など)膠原病(全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、高リン脂質抗体症候群など)血管炎(結節性多発動脈炎など)物理的障害(熱傷、靴擦れ、褥瘡など)リンパ管循環障害放射線障害 主な下肢潰瘍 ■糖尿病性潰瘍原因:血流障害、末梢神経障害、易感染性糖尿病に起因する末梢神経障害が主な原因となり生じる。自律神経障害による血流の異常や、運動神経の障害により生じる足の変形も糖尿病性足潰瘍の要因になる。症状:易感染性で創傷治癒の遅延をきたしやすい。靴擦れや胼胝(べんち:俗称「たこ」)などが発症している場合も、足の知覚障害により感覚が鈍麻であることから創部が悪化しやすい。対応:糖尿病のコントロール、除圧、感染制御など ■虚血性潰瘍(動脈硬化性潰瘍)原因:糖尿病、脂質異常症、慢性腎不全、喫煙、膠原病や血管炎など足の動脈の血流障害が原因となる下肢閉塞性動脈閉塞症。症状:初期は、足の冷感、歩行時の疼痛がある。その後、少し歩くとふくらはぎや足底に疼痛があり、休むと軽快する「間欠性跛行」となり、進行すると安静時にも疼痛がある。重症化すると足趾が乾燥壊死(黒色化〔ミイラ化〕)に陥る。糖尿病のある人は、疼痛を伴わず突然足が壊死することも。対応:血流の改善、潰瘍の局所治療、生活習慣の改善、血管内治療、血行再建術など ■静脈うっ滞性潰瘍原因:肥満、妊娠・出産、長時間の立ち仕事、遺伝的要因など症状:足の浮腫やだるさ、進行すると皮膚の色素沈着や硬化が生じ、創傷を繰り返す。静脈弁の機能不全により血液が逆流する病態で、重症化すると静脈うっ滞性潰瘍を発症する。難治性であり再発率が高い。対応:下肢挙上により静脈環流を促進する、圧迫療法など ■膠原病や血管炎に伴う皮膚潰瘍膠原病・血管炎が原因で潰瘍を発症し、悪化することがある。ステロイドや免疫抑制剤の内服による、免疫力の低下や皮膚の脆弱性から、創傷治癒が遅延・難治化する場合もある。 ■放射線潰瘍放射線治療後、皮膚に生じる皮膚潰瘍。皮膚細胞の損傷により、小さな潰瘍でも難治化する場合もある。 下肢潰瘍予防のためのアセスメント 下肢潰瘍は、神経障害、血行障害、感染の3要素が大きく関わります。 アセスメントは両下肢を観る 足に異常の訴えがある場合、必ず両下肢を観察しましょう。その際、大切なのは血流の観察です。血流が低下もしくは停止していると、小さな創傷でも治癒が困難になります。さらに壊死など重症化する危険性が高くなります。下肢潰瘍を予防するためには、足の観察とアセスメントが重要です。 本項では、下肢潰瘍の問診・触診・視診によるアセスメントのポイントを、神経障害、脈管障害(動脈性)、脈管障害(静脈性)、感染症のタイプ別に紹介します。 <神経障害> 基礎疾患、既往歴:糖尿病の有無(罹患からの年数など)、二分脊椎をはじめとした先天性疾患など治療歴、内服薬の内容、家族歴人工透析の有無(経過年数など)動脈触知(末梢動脈疾患合併の有無)足の痺れ、麻痺の有無と状態両足の形状(ハンマートゥ、クロウトゥ、シャルコー足、強剛母趾、内反小趾など)歩行状態(歩容):脚軸の確認(O脚、X脚など)皮膚の状態、毛髪の有無、爪の異常(乾燥、亀裂、胼胝、鶏眼など)胼胝がある場合、胼胝下に皮下出血の有無を確認潰瘍や壊死の有無と現在のケア方法(局所ケア方法など) <脈管障害(動脈性)> 基礎疾患、既往歴:糖尿病の有無(罹患からの年数など)人工透析の有無(経過年数など)治療歴、内服薬の内容破行距離:何m連続して歩行が可能か血管閉塞部位の推測:休むときにはどの部位が痛むか疼痛の有無(痛みによる不眠など)皮膚の状態、毛髪の有無、チアノーゼの有無  潰瘍のアセスメント 足の皮膚色の変化の有無と部位、発症時期潰瘍の発症時期、発症要因潰瘍周囲の皮膚所見(感染徴候、色素沈着、接触皮膚炎など)静脈瘤の部位の確認現在のケア方法(1日何回ケアを行うか、誰が行なっているのか、局所ケアの方法、弾性ストッキングの使用など)潰瘍や壊死の有無と現在のケア方法(1日何回ケアを行うか、誰が行なっているのか、局所ケアの方法など) <脈管障害(静脈性)> 基礎疾患、既往歴:リウマチ、婦人科疾患などの既往家族歴職業妊娠や出産の有無動脈触知(末梢動脈疾患合併の有無)下腿部の静脈の状態  潰瘍のアセスメント 潰瘍の有無と部位潰瘍の発症時期、発症要因潰瘍周囲の皮膚所見(感染徴候、色素沈着、接触皮膚炎など)静脈瘤の部位の確認現在のケア方法(1日何回ケアを行うか、誰が行なっているのか、局所ケアの方法、弾性ストッキングの使用など) <感染症> 基礎疾患、既往歴:糖尿病の有無(罹患からの年数など)内服薬(抗生剤)の内容リンパ節触知  潰瘍のアセスメント 潰瘍の有無と部位、発症時期感染の発症時期、発症要因感染周囲の皮膚所見:皮下の握雪感の有無足趾のソーセージ様腫脹:骨髄炎の可能性糖尿病の場合、趾間白癬からの二次感染の可能性があるため全足趾間の皮膚を確認現在のケア方法(1日何回ケアを行うか、誰が行なっているのか、局所ケアの方法、弾性ストッキングの使用など) 下肢潰瘍予防のための基本的なスキンケア 下肢潰瘍の創傷管理においては、TIMEコンセプトに基づいた創面環境調整(WBP:wound bed preparation)のケアを行います。 創傷局所の観察項目は、壊死組織(Tissue)、感染(Infection/Inflammation)、湿潤のバランス(Moisture balance)、創縁(Edge of wound)に分類されます。これらの要因を一つひとつアセスメントして、創傷治癒に最適な環境を整えるという考え方を、各項目の頭文字をとってTIMEコンセプトといいます。 下肢潰瘍は、感染、循環障害、知覚障害などのさまざまな要因によって、治癒しにくい難治性潰瘍です。下肢潰瘍を発症しないように、日々の予防的ケアが重要になります。今回は、創傷の発症予防や再発予防に焦点をあて、下肢潰瘍予防の基本的なスキンケアをご紹介します。 足の皮膚 足底は、角層が脱落しにくいため、厚さがあります。また、汗腺は多く、毛組織がないことから皮脂腺がなく乾燥しやすい特徴があります。さらに、踵や前足部には体重による荷重がかかり、角化、胼胝や鶏眼などのトラブルの好発部位となります。 静脈うっ滞のある場合、状態が悪化するほど下肢の皮膚は乾燥します。それにより皮膚のバリア機能が低下。掻痒感が出現し、掻破することで潰瘍を形成する可能性が高くなります。下肢のドライスキンや掻痒感を軽減するために、毎日の継続的な保湿のスキンケアが大切。また足趾間は、洗浄のスキンケアにより、皮膚の清潔につとめ真菌感染を予防することが重要です。 洗浄のスキンケア 洗浄部位に泡を乗せ、手袋を装着した手で優しく包み込み、泡を転がすように洗いましょう。微温湯で石けん成分が皮膚に残らないように洗い流し、十分な量の微温湯で洗い流します。洗浄後の皮膚は、タオルなどを用いて優しく押さえ、水分を拭き取ります。その他の洗浄のスキンケアについてのポイントや注意点については、「スキンケアで褥瘡予防 洗浄・保湿・保護のポイント」もご参照ください。 真菌感染症の予防には、特に汚れが溜まりやすい間擦部、陰股部、足趾間などは石けんをよく泡立て、丁寧に優しく洗いましょう。過度に洗浄すると皮膚の乾燥を招きスキントラブルを起こすこともあります。毎日の洗浄に、ミコナゾール硝酸塩配合石けんを用いると真菌感染症の予防に期待ができます。創がある下肢の足浴は、医師や皮膚・排泄ケア認定看護師などに相談の上行うようにしましょう。 保湿のスキンケア 保湿剤は、療養者個々の使用感にも考慮しながら、安全性の高い製品を選びましょう。塗布する際は、基本的に皮膚の皮溝に沿って、強く擦りすぎないようにします。ベタつきが少なく、伸びの良いクリーム剤や乳剤性ローションなどを使用して、皮膚を押さえるように塗布しましょう。 なお、冬に気温や室温が下がると、軟膏やクリーム剤は硬くなって塗布しにくい場合があるので要注意。硬くなった保湿剤を無理に塗布すると、使用時に冷たさを感じるのはもちろんのこと、塗りにくい、皮膚にダメージを与える、掻痒の原因になる、といったデメリットがあります。冷所保存が必要な外用薬を除き、保湿剤はあらかじめ常温に戻しましょう。また、塗布する前にディスポ手袋を装着したケア者自身の掌や甲に取って、少し温め、馴染ませてから使用すると、軟膏やクリーム剤は柔らかくなり、冷感も軽減できます。 足の爪ケア 爪は、歩行や立位を安定させる役割があります。爪の肥厚や変形などのトラブルから、ADLやQOLの低下や、肥厚して伸びた爪が他の足趾の皮膚を損傷する、衣類が引っ掛かり爪甲下に出血を生じるなどのトラブルを起こします。 そのため、伸びた爪は適切な長さに切り、肥厚爪は平坦に整えることが大切です。爪切りは、可能であれば足浴後の爪や角質が柔らかくなった状態で行います。爪の周囲の角質を丁寧に取り除き、皮膚と爪の隙間を確認した上で爪を切ります。硬く厚い爪は、ニッパー型爪切りや爪やすりを用いて、少しずつ切りましょう。爪は深く切りすぎず、角は丸く切り落とさないことがポイントです。爪の角は爪やすりで整えましょう。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。編集: NsPace編集部 【引用】1)日本皮膚科学会.日本皮膚科学会ガイドライン「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン−5:下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン」日本皮膚科学会雑誌. 127(10),2239-2259, 2017(平成 29)2241https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/127/10/127_2239/_pdf/-char/ja2023/10/29閲覧 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.〇真田弘美、大浦紀彦他(編)『ナースのためのアドバンスド創傷ケア』照林社.2012.

褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア
褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア
特集 会員限定
2023年11月21日
2023年11月21日

褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア・在宅療養生活でのポイント

褥瘡は、「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間にある軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り、褥瘡となる」と定義されています。 高齢療養者の多くは、自分で体位変換が行えない、長期間の寝たきり状態、栄養状態が悪い、皮膚が脆弱、などの状況にあります。そのような状況で皮膚に圧迫や摩擦、ずれなどの刺激が繰り返されると、褥瘡になるリスクが高まるため日々のケアが重要です。そこで今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、褥瘡の予防的スキンケアを中心に解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 褥瘡の発生要因〜マイクロクライメット〜 褥瘡の発生要因 褥瘡の発生には、圧迫やずれ、摩擦、低栄養などが複合的に影響しています。褥瘡は、寝たきり状態や脊髄損傷などの知覚障害による、筋肉の廃用性萎縮で骨突出部位などに生じる創傷です。自力で体位変換が行える、姿勢を変えることができる療養者は、傷んだ組織も修復されていきます。一方、基礎疾患の進行や体調不良による食事摂取量の減少、ストレスなどによる食欲低下によって栄養状態が低下すると、傷んだ組織は修復されず、次第に悪化して褥瘡を発症します。 在宅療養者:低栄養在宅療養者:関節拘縮 また、トイレや車椅子などへの移乗動作や姿勢の崩れ、ベッドの背上げ・背下げによって生じる姿勢の崩れ、体位変換やおむつ交換などの際には、臀部や仙骨部・背部に「ずれ力」が働きます。適切な姿勢保持や体位変換が行われないと、組織には持続的に圧力も加わり組織障害が進行します。 褥瘡は、主に圧迫により生じる創傷ですが、ずれや栄養障害などの要因が複合的に加わることで発症につながります。 仙骨部にポケット形成を伴う褥瘡仙骨部に感染を伴う褥瘡 さらに、褥瘡の発生や治癒にはマイクロクライメットが影響しているといわれています。マイクロクライメットとは、「皮膚局所の温度・湿度」と定義されています。 褥瘡発生要因の新たな概念:マイクロクライメット管理 褥瘡の予防や治癒の促進には、温度の上昇を予防して湿度を透過させることが重要であるという、マイクロクライメット管理を良好に行うケアが注目されています。 皮膚局所は、体温が高くなると代謝が亢進し、酸素や栄養が消費されて不足しがちになります。その状態で外力を受けると組織耐久性が低下し、わずかなずれや摩擦で皮膚を損傷し、褥瘡を発症しやすくなってしまうのです。また、温度が高くなると汗をかきやすくなります。発汗により皮膚は湿潤状態になり、バリア機能や組織耐久性が低下。さらに通常よりも摩擦力が高くなることにより、わずかなずれや摩擦によって褥瘡の発生リスクは高くなります。 湿度が上昇する要因は、発汗に限りません。失禁による皮膚の湿潤もあります。おむつを使用している皮膚は、高温多湿な環境にあります。おむつ交換の間隔が長くなると、尿はアルカリ性に変化し皮膚への刺激が強まります。また、便に含まれる消化酵素も皮膚を損傷するリスクを高めます。皮膚を健康な状態に保ち、バリア機能を高めるためにも、温度と湿度の管理は重要です。 マイクロクライメット管理には、マイクロクライメット機能が付いたエアマットレスの使用や、吸湿性の高いシーツなどを用いた寝床環境の調整、透湿性に優れたおむつの使用、定期的なおむつ交換などをおすすめします。 【マイクロクライメット管理の主なポイント】 居室内の温度と湿度の調整寝具、寝衣による体温の調整おむつや尿取りパッドの透湿性、適切な使用体圧分散マットレスの通気機能、柔らかさシーツや皮膚に接触するクッションカバーなどの素材 褥瘡予防のためのスキンケア 褥瘡のスキンケアは、褥瘡発生や治癒遅延の要因となる、摩擦、ずれ、湿潤から皮膚を護るケアが必要です。特に、ドライスキンの療養者は、皮膚のなめらかさや柔らかさが失われるため、摩擦やずれなどの外部の刺激によって皮膚が損傷しやすくなります。皮膚の乾燥を防ぐスキンケアを行いましょう。 脆弱な皮膚は、外力を加えないケアが大切です。洗浄の際は力や摩擦を与えないように優しく洗浄しましょう。保湿の際も、保湿剤の塗布時に摩擦やずれが加わる可能性が高くなります。保湿剤はローションタイプのものを使用して、一度にたくさん塗布せず、少量を両手に薄くのばし、擦らず優しくなでるように塗布します。摩擦やずれの予防には、保湿剤や皮膚皮膜剤、撥水性保護クリームを用いた、保護が大切です。排泄物による汚染が予測される部位には、あらかじめ撥水性保護クリームを用いて、排泄物の付着から皮膚を保護します。骨突出部の皮膚は毎日観察し、強い圧迫やマッサージを避けましょう。 摩擦やずれは、頭側挙上時や車いすへの移乗時、体位変換時など、すべての生活場面で生じます。頭側挙上では角度調整や背抜きを行い、できる限り皮膚の表面を損傷しないように留意することが大切です。それには、皮膚の表面を保護すること(「保護のスキンケア」)と、皮膚に何かを貼付して皮膚を覆うケアをおすすめします。皮膚に貼付するものは、安全なもの、スキントラブルをおこさないもの、皮膚の観察がしやすいもの、皮膚を圧迫しないもの、取り扱いしやすいものなどを、療養者の状態や生活に応じて選択します。 褥瘡の予防的なスキンケアはすべての療養者を対象とし、外部からの刺激に負けない健康な皮膚を保つための「基本的なスキンケアの継続」が極めて重要です。 褥瘡予防のケア〜療養生活でのポイント〜 褥瘡を予防するためには、外力(圧迫やずれ力)の大きさを減少させること、外力の持続時間を短縮することが原則です。褥瘡ケアというと局所のケアに目が向きがちですが、褥瘡の予防・治癒促進・再発予防、すべての時期において外力の除去が重要です。 圧迫・ずれ・摩擦   療養者に対する移動の介助は、皮膚への圧迫やずれ・摩擦が生じることによる褥瘡発生はもちろん、介護者の腰痛の原因にもなります。「引きずらない」「擦らない」「本人の動きに合わせる」介助や、リフトを活用した移乗などを実施しましょう。一人で身体介助を行う場合も少なくありません。療養者の身体や安全を守るためにも、トランスファーグローブやトランスファーシートなどの福祉用具の使用を検討することも必要です。 おむつや着衣の交換時、シーツ交換の際は、摩擦が生じやすくなります。おむつ交換の際、尿取りパッドを引き抜くと、仙骨部や尾骨部の皮膚には強い摩擦とずれが生じるため要注意です。また、排尿後に長時間おむつを着用していると皮膚は浸軟します。さらに排泄物を多量に吸収したおむつは、膨潤し硬くなります。そのような状態で座位姿勢になった場合、仙骨部や尾骨部には圧迫が加わりますし、ぬれて蒸れたおむつで過ごすことは不快なため姿勢も崩れやすくなり、ずれと摩擦も生じることに。排尿後は速やかにおむつ交換を行うことが大切です。同時に、療養者の排尿パターンや排尿回数・量にあったおむつを選択しましょう。 体位変換とポジショニング 褥瘡の発生や悪化を予防するために、体位を変えることで骨突出部の皮膚・組織に加わる外力を少なくし、外力の加わる時間を短くする方法が体位変換です。ポジショニングは、体位変換の基本を踏まえつつ、身体各部の相対的な位置関係を整え、身体を安定させてより快適な姿勢の保持を行う方法です。局所への圧迫を減少させ安楽な仰臥位をとるためには身体のねじりやゆがみを取り、できるだけ広い面積で身体を支える「体圧の分散」が重要です。 日頃より、褥瘡好発部位や骨突出部、過去に褥瘡を発症した部位、得手体位により常時マットレスと接している部位の皮膚は、注意深い観察と定期的なアセスメントを行いましょう。発赤を認めた場合は速やかに体圧分散ケアの見直しを行う必要があります。 また、療養者に家族が行う体圧分散ケアは、介護者が療養者に言葉を交わしながら触れること(タッチング)で、かけがえのない家族のぬくもりを感じ合う場でもあります。療養者にやすらぎや安心感を与え、心身の疼痛や苦痛を緩和するなど、褥瘡悪化や予防の観点以外にも大きな効果があると考えます。 栄養  療養者の栄養ケアは、低栄養になってから始めるのではなく、「日頃から低栄養を予防する」という意識をもって支援しましょう。在宅で低栄養状態にある療養者は、自立している高齢者にも見られます。ひとり暮らしで調理が面倒になる、歯の喪失により噛めない、食の嗜好の変化や病状により摂取栄養素が偏っている、などの原因で低栄養が生じている場合も。療養者の食生活は、テーブルの上に置かれている食べ物、ゴミ箱の中、冷蔵庫の中からも知ることができます。療養者の嗜好や嚥下状態、経済性などを考慮した上で栄養補助食品を活用し、偏った栄養素を補う、不足したエネルギーを補充することも必要です。 皮膚科医、WOCナースとの協働 皮膚科医や皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)の知識と技術の提供・協働によって、専門的な褥瘡ケアの視点を補完していくことも重要です。専門性の高い他職種の協力を得ることが、在宅における褥瘡ケア看護の質の向上と療養者・家族のQOLの向上につながります。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。編集: NsPace編集部 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.

訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
コラム
2023年11月21日
2023年11月21日

介護職員養成&通学支援【訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 東海北陸ブロック、松下 容子さんの活動記です。介護職員向けの喀痰吸引等研修や、三重県で2023年度より導入されている医療的ケア児の通学支援の取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:松下 容子看護学校を卒業後、総合病院に勤務し、2000年から訪問看護に従事。2011年 訪問看護認定看護師資格取得2012年 四日市社会保険病院 訪問看護ステーション管理者(現:四日市羽津医療センター)2021年~現在 みんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市 管理者 全国で1番の会員数を誇る東海北陸ブロック 私は、日本訪問看護認定看護師協議会の理事に就任して4年目になります。担当業務は総務で、主に総会・同時開催研修会と交流集会の計画、開催等に関わっています。研修会の講師や内容については、会員の皆様からのアンケート調査に基づき、皆様のご希望を反映できるよう、心がけています。 例えば、2023年6月の総会後の同時開催研修会は以下のような内容で実施しました。 第1講「認定更新申請の情報提供」5年目の訪問看護の認定更新を済まされた会員からの情報提供第2講「法律制度を活用したコミュニケーション向上術」看護師であり、社労士事務所代表の方によるご講演 次に、私が所属している東海北陸ブロックの活動状況を紹介します。当ブロックは静岡、愛知、岐阜、三重、福井、富山、石川の7県から構成され、会員数は101名となりました(2023年10月時点)。協議会全体での会議とは別に、ブロック内で年に2回の研修会と交流会、年に数回の役員会を開催しています。役員は、ブロック長をはじめ各地区代表の10名で構成されており、研修会をはじめとした企画・運営を取り仕切っています。9月末には、今年度最初の研修会として、「在宅ケアにおける倫理」をテーマに開催しました。 喀痰吸引等研修講師として10年目 個別で行っている講師活動についてもご紹介します。私はこれまでの10年間、毎年喀痰吸引等研修の講師を務めています。喀痰吸引等研修とは、「たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)」と「経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養)」を行える介護職員等を養成するための研修です。また、この介護職員を現地で指導するための指導者研修(看護師)もあり、いずれも研修内容は講義と演習で構成されています。そのほか、これまでに介護職員数名の実地研修の指導者としても関わらせていただきました。 喀痰吸引等研修会演習風景 今後もこの活動を通して介護職員の喀痰吸引等に関する手技の維持・拡大と喀痰吸引等提供の質確保に努め、介護職員を含めた多職種による協働体制の構築に尽力していきたいと思います。 県初、医ケア児の通学支援開始 医療的ケア児への支援活動についてもご紹介します。四日市市には特別支援学校があり、多くの医療的ケア(人工呼吸器や喀痰吸引、胃ろう管理等)を必要とする児童が通学をしています。しかし、ほとんどの児童はスクールバスへの乗車が困難な状況です。スクールバスに乗れない児童は家族送迎を余儀なくされ、家族の負担は非常に大きいものとなっています。例えば、母親による往復の送迎に1時間程度かかる場合、母親の仕事の時間が削られているケースはもちろん、就業を諦めざるを得ないケースもたびたび見かけられます。 三重県では、そんな家族の負担を軽減すべく、2023年度に「三重県医療的ケア児通学支援事業」が試行され、現在、当ステーションでは週に2回、朝の通学支援に協力させていただいています。業務内容は、指定された福祉タクシーに同乗し、運転手さんと協力して安全に児童を特別支援学校まで送り届けることです。道中、車内での児童の状態観察と喀痰吸引の必要があれば実施し、学校到着後に担任教員に母親からの伝達事項や車内での状態を引き継ぐという流れになっています。 まだ開始したばかりの事業であり、実際、受け入れのできる訪問看護ステーションも、まだまだ少ないのが現状です。障害があっても健常な児童と変わらず、平等に学習機会が確保され、必要な支援のもと、児童の成長、発達と家族へのサポートがますます促進されるよう、今後も微力ながら関わっていきたいと考えています。そして、誰もが豊かに暮らせる地域に発展することを心から願っています。 * * * この記事をお読みいただいている訪問看護師の皆様にも、ぜひ安心・安全の提供と、自分らしい生活・ありたい姿の実現を見据えながら、療養者様やご家族に寄り添っていただけたら幸いです。 ※本記事は、2023年10月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

在宅の褥瘡・スキンケア (浸軟)
在宅の褥瘡・スキンケア (浸軟)
特集 会員限定
2023年11月7日
2023年11月7日

浸軟の基礎知識 予防的スキンケア&療養生活環境アセスメント

浸軟は、皮膚が水に浸漬することで角層の水分が増加し、一過性に体積が増えふやけることで生じる変化です。失禁関連皮膚炎(IAD)や褥瘡発生を防ぐためには、浸軟を予防すること、さらにはその前段階である湿潤を起こさないためのスキンケアが重要です。 今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、「浸軟」の基礎知識やスキンケア、アセスメントについて解説していただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 皮膚の浸軟とは 皮膚は、長時間の入浴などで一時的に一定の水分保持能力を超えると、体内に水分が吸収されることにより膨潤し、見た目としては白くなります。この状態が一般的に「ふやけ」といわれる、浸軟です。 左:浸軟した皮膚 右:健常な皮膚 一時的な水分の浸漬によって皮膚が膨潤しても、時間の経過とともに角層に吸収されて元の状態に戻ります。角層には、水分を保つ能力(保水能)があり、適度に水分を含んだ角層は、柔らかく滑らかです。角層の持つ水分の保湿に関係するものは、天然保湿因子、皮脂膜、細胞間脂質で、水分保持能力は加齢に伴い変化をします。 健康な皮膚の場合、バリア機能が発揮されるため、細菌や化学物質などは、簡単に体内に入ることはできません。浸軟による角層の過剰な水分の存在は、角質細胞間脂質の流出や細胞同時をつなぐ分子の破綻、細胞間隔の拡大を招きます。それにより、体内の水分の喪失が増え、本来の健康な皮膚が持つバリア機能が障害されるのです。 失禁状態で常に排泄物が皮膚に付着している人、おむつを使用しており、おむつ内部が高温多湿な環境にある人、発汗量の多い人などは、皮膚が湿潤しやすい状況にあります。皮膚の湿潤が持続すると、皮膚のバリア機能が低下して浸軟をきたし、スキントラブルが起こりやすくなります。 浸軟を予防する毎日のスキンケア 洗浄方法&洗浄剤選びのポイント・注意点 洗浄の際は、皮膚の浸軟状態をよく観察しこれまでのスキンケアの評価を行います。浸軟の原因となる汗や排泄物などの汚れを取り除く際、皮膚を擦らないように注意しましょう。 失禁などで皮膚に浸軟を生じている場合、洗浄剤を用いた頻回な洗浄は、皮脂を過剰に取り除いてしまいます。さらに皮膚を擦るという機械的な刺激が加わることで皮膚の表面を損傷し、バリア機能がさらに低下。そこに排泄物の刺激が加わると、スキントラブルを起こす可能性がさらに高くなります。 IAD:臀裂部潰瘍周囲皮膚の浸軟 失禁状態の療養者のスキンケアは、おむつの交換毎に洗浄剤を用いた洗浄を行う必要はありません。洗浄剤の使用は1日1回として、皮膚を守る洗浄のスキンケアを行いましょう。洗浄剤をよく泡立ててから、泡で皮膚を覆い優しく撫でるように洗浄します。洗浄剤の成分を皮膚に残さないように、微温湯で十分に洗い流しましょう。この時も、擦らずに洗い流すことが大切です。洗浄剤は、低刺激性のもの、弱酸性のものを選びます。さらに脆弱な皮膚には、セラミド含有皮膚保護成分配合の洗浄剤を選択しましょう。また、便失禁による排泄物の拭き取りには肛門用清拭剤を用いて、ふき取り時に生じる皮膚への摩擦を軽減します。 保護のスキンケアのポイント&タイミング 浸軟の予防には、保湿剤を使用した保湿のスキンケアに加え、皮膚皮膜剤、撥水性保護クリームを用いた保護のスキンケアが大切です。排泄物による汚染が予測される部位には、あらかじめ撥水性保護クリームなどを用いて、排泄物の付着から皮膚を保護します。皮膚が脆弱で摩擦による皮膚の損傷の恐れがある場合、スプレータイプの皮膚皮膜剤を使用するとよいでしょう。 保護のスキンケアは、おむつ交換で排泄物を拭き取ったタイミングで行うと効果的です。撥水性保護クリームは皮膚に撥水性の皮膜を作るため、排泄物から皮膚を守り、摩擦を軽減することができます。 皮膚が密着している部位は、毎日意識的に観察を行いましょう。特に、皮膚と皮膚が密着している腋窩や臀裂部などは、常に皮膚が湿潤しやすい状態にあります。また、関節拘縮のある方は、身体同士の密着部の領域が増加し、前前腕部と前上腕部の密着面、後上腕部と前胸部の密着面や、麻痺側手指の拘縮による手掌部に、湿潤や浸軟を生じやすくなります。麻痺側手指にハンドロールを使用する場合は、通気性がよく硬すぎない材質のものを利用しましょう。 浸軟を生じる療養生活環境をアセスメント 室温・湿度 高温多湿な療養環境はじめとした、発汗に影響を及ぼす生活環境があるのかを確認しましょう。冬季の暖房器具(エアコン)調節下の室内では、こまめな換気や室温湿度の調整が行われず、療養者の発汗量が増加していることもあります。また、電気毛布や電気あんかを使用している場合、設定温度が発汗に影響していないか、定期的に評価を行い調節することが必要です。 寝衣・寝具 発汗により皮膚が湿潤する場合、皮膚のバリア機能が低下します。肌着や寝具などで汗を吸収し、熱放散により皮膚の浸潤を予防することが大切です。着用する肌着は、木綿素材で汗を吸収する柔らかいものがおすすめです。肌着や寝衣の重ね着、寝具の掛けすぎなどに留意し、室温、湿度にあった寝床環境を調整しましょう。 体圧分散マットレスやベッド上に防水シーツなどを使用している場合、吸水性のない製品は蒸れや発汗の原因になります。さらに、背部にバスタオルを敷いていると、温度が上昇して皮膚の湿潤の原因になりますので、吸湿性のあるシーツを使用することをおすすめします。体圧分散マットレスを使用している場合、身体はマットレスに沈み込むと熱がこもり、汗をかきやすくなります。特に、自力で寝返りができない、可動性や活動性が低下している方には、マイクロクライメット管理のできる体圧分散マットレスもあります。 医療用テープの使用 透湿性の低い医療用テープは皮膚への刺激が強く、浸軟が生じやすくなります。透湿性の高い低刺激性の医療用テープを用いることをおすすめします。 おむつの使用 おむつの交換頻度、使用しているおむつの種類や枚数、おむつ交換時のスキンケア方法を確認しましょう。尿漏れを予防しようと、何枚ものおむつを重ね付けしている場面を見かけます。おむつや尿取りパッドは、それぞれ機能や吸収量が異なります。療養者の排泄状況にあったおむつを使用しているのか、アセスメントを行うことが重要です。 おむつは、体格や排泄状態にあったおむつを選択しましょう。おむつの使用サイズは、テープタイプはヒップサイズ(最大腰回り)、パンツタイプはウエストサイズ(臍回り)が基本となります。大きめのサイズを使用すると隙間が生じ、尿が漏れやすくなります。一方、小さいサイズを使用すると皮膚への圧迫が強くなり、発赤や掻痒感、スキントラブルの要因になります。 また、おむつの重ね付けには、注意が必要です。おむつとパッドの重ね使いは、原則的にアウター(おむつ)1枚とインナー(パッド)1枚までです。インナーの外側は防水フィルムで覆われているため、下のパッドに尿は吸収されず複数枚重ねても吸収量は増えません。さらに、インナーを重ねることで、アウターの立体ギャザーの高さが低くなるため、尿が漏れる原因になります。おむつは、適切な使用方法によって、蒸れや漏れを予防することができるのです。 失禁のある療養者の場合、経済的な問題によって、おむつ交換間隔が長くなり、皮膚に浸軟を生じる場合もあります。各自治体には、さまざまなサービス(おむつ給付サービスや特殊尿器の福祉用具貸与など)があります。また、おむつ代の医療費控除をはじめとした助成制度(税金の控除)もあります。各家庭の経済力を把握し、地域の社会資源の活用を検討しましょう。 医師との連携 皮膚の浸軟が続くと真菌性疾患、失禁関連皮膚炎、褥瘡などを発症するリスクが高くなります。浸軟の原因を取り除き、正しいスキンケアを継続しても皮膚症状が改善しない、もしくは悪化をする場合は、速やかにかかりつけ医や皮膚科専門医へ報告、相談をしましょう。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。編集: NsPace編集部 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.

失禁関連皮膚炎(IAD)のアセスメントと予防
失禁関連皮膚炎(IAD)のアセスメントと予防
特集 会員限定
2023年10月24日
2023年10月24日

スキンケアのポイントは?失禁関連皮膚炎(IAD)のアセスメントと予防

おむつで覆われている皮膚は、高温多湿な環境にあり、排泄物の付着により浸軟しやすく感染リスクも高くなります。特に脆弱な皮膚の高齢者や乳幼児には注意が必要です。療養者は、局所にスキントラブルを生じた場合、排泄物の付着による不快感や掻痒感、疼痛などの苦痛を伴います。同時に、頻回な局所の観察や治療が必要になると、療養者にはさらに精神的な苦痛を強いることになりQOLにも影響を及ぼすといえるでしょう。 療養者の自尊心や羞恥心に配慮した排泄ケア・看護を行うとともに、失禁関連皮膚炎(IAD:incontinence associated dermatitis 以下「IAD」)を理解した上で、予防的なスキンケアを実践し継続することが求められます。今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、失禁関連皮膚炎(IAD)の予防的スキンケアを中心に解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 IADのアセスメント IADは、おむつに覆われた皮膚(角質層)が湿気により浸軟して、バリア機能が破綻した状態になっているところに、排泄に含まれる消化酵素や細菌が、皮膚(真皮)組織の内部に入ることで生じる皮膚組織の障害です。 排泄物が付着する部位は、排泄物の性状や量、おむつの材質や当て方などにより、場合によっては大腿部にもみられます。個々の排泄状況やケア状況を確認することが必要となり、注意深く観察することが大切です。 アセスメントのポイント 【皮膚をみる】 部位(どこに)、時期(いつから)、程度(どのように)発症の経緯皮膚の状態(たるみ・浸軟・紅斑・びらん・潰瘍)掻痒感の有無痛みの有無・程度局所ケアの方法使用している外用薬IAD-setを用いた評価 【全身状態をみる】 年齢、性別、基礎疾患失禁の状態、排泄物の性状・量ドライスキンの有無浮腫の有無糖尿病(血糖コントロール不良)放射線治療の既往・継続中(骨盤内照射)薬剤の使用(下剤、止痢剤、免疫抑制剤、抗がん剤、ステロイド剤、抗菌剤)膀胱直腸瘻、直腸膣瘻バイタルサイン関節拘縮の有無、関節可動域食事摂取量、水分摂取量栄養摂取経路(方法)、経腸栄養投与速度・量栄養状態尿・便以外の刺激物の接触(帯下、下血) 【生活環境をみる】 失禁が生活に及ぼす影響日常生活動作(ADL)・好みの体位・1日の多くを過ごす姿勢頭側挙上の有無・時間、座位の有無・時間おむつの使用(交換頻度、使用しているおむつの種類・枚数、おむつ交換時のスキンケア方法)寝具の種類介護者の介護力・介護方法経済状況 【人・ライフスタイル・価値観をみる】 清潔習慣、入浴の頻度・入浴時の湯温度・入浴時間スキンケアの方法(洗浄剤・保湿剤の種類、具体的なケア方法、頻度)ケアの拒否・困難さ家庭にあるスキンケア用品本人の思い・希望家族の思い・希望 アセスメントには、おむつに覆われた皮膚の状態と療養環境を観察することが大切です。 尿失禁や便失禁の原因、行われている治療やケアのアセスメントも欠かせません。下痢のアセスメントには、栄養管理の情報も必要になります。特に下痢には、経腸栄養剤の種類や投与方法、投与時間の確認などが大切になりますが、下剤の使いすぎということも少なくありません。また、下剤の使用量やタイミングによって便秘と下痢を繰り返し、スキントラブルが改善しないということもあります。 介護する家族によっては、臀部を消毒用アルコールで清拭をしている方、おむつ交換ごとに石鹸を用いた洗浄を行なっている方などさまざまです。個々の生活習慣や価値観によって、さらにはそれぞれの家庭ごとに排泄に関するケアが異なります。排泄に影響を及ぼすさまざまな要因を、広い視点でみることが必要です。 IADのアセスメントには、「IAD重症度評価スケール:IAD-set」があります。IAD-setは、日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術教育委員会によって開発されたIADのアセスメントができるツールです。IAD-setは、排泄物が皮膚に付着する状況にある場合に使用します。評価は、【Ⅰ皮膚の状態】と【Ⅱ付着する排泄物のタイプ】の2つを行います。評点が大きいほど重症と判断し、点数が減少することで改善と判断することができます。 IAD重症度評価スケール:IAD-set IADの予防的スキンケア IADの標準的なスキンケアは「清拭・洗浄・保湿」です。加えて、排泄物が皮膚に付着することを予防するために、保護のスキンケアを行うことも大切です。 便失禁のスキンケア ■清拭排泄を確認したら、その都度清拭を行いましょう。市販のおしりふきやトイレットペーパーに皮膚清拭剤などを使用すると、拭き取りの際の滑りがよく、皮膚への機械的刺激の軽減が期待できます。また、清拭の際は、皮膚を強く擦らないことが大切です。使用するタオルは、皮膚への機械的刺激が少ない、柔らかくふんわりしたものを選びましょう。 ■洗浄のスキンケア洗浄剤を用いて1日1回、皮膚に付着した排泄物や汚れを洗い流します。排泄物が付着していると洗浄剤を用いた洗浄を行いたくなるものです。しかし、皮膚洗浄剤を用いた頻回な洗浄は、皮膚への化学的刺激が大きくなります。そのため、排便回数が多い場合でも洗浄剤の使用は1日1回としましょう。弱酸性洗浄剤を選択し皮膚への化学的刺激を最小限にとどめます。 ■保湿のスキンケア1日1回以上、保湿剤を塗布しましょう。洗浄により皮脂は洗い流されるため、入浴や洗浄後に、保湿剤を塗布するということを習慣化できると良いです。保湿剤は、排泄物が付着している部位や、排泄物が付着する可能性があるすべての部位に塗布しましょう。 ■保護のスキンケア排泄物が皮膚へ付着することを予防するために白色ワセリンやジメチコン(シリコーンオイル)などが配合されている撥水性皮膚保護剤(撥水性皮膚保護クリームや保護オイル)を塗布します。 撥水性皮膚保護剤は、製品の皮膚保護力により使用する頻度や撥水の程度が異なります。保湿成分含有の製品もあります。使用する製品の特徴を理解した上で、皮膚の状態やケア環境にも考慮し、使う人にあった製品を選びましょう。 尿失禁のスキンケア 便失禁のスキンケアと同様の清拭・洗浄・保湿を行い、おむつなどを用いて尿の収集を行います。 ■おむつ選びについて便失禁・尿失禁のある療養者のおむつ選びは、日常生活自立度、身体のサイズ、失禁のタイミングや回数・量などを考慮して選択します。排泄物を吸収したパッドやおむつは、皮膚pHに影響を与えるため、排泄後は速やかに交換を行いましょう。尿取りパッドを選択する際は、逆戻りがない、通気性の良い高性能、吸収体の面積が小さく尿の接触面積を縮小できるものがおすすめです。なお、男性には、男性用の尿取りパッドがあります。 ■療養生活への配慮水様便に対応する軟便専用のパッドがあります。軟便専用パッドは、尿取りパッドに比べ便の収集率が高く、水様便の流れ出しが軽減できます。便の収集率や吸収に優れているとはいえ、軟便専用のパッドを、長時間使用し続けることは避けましょう。便の付着を完全に防ぐ製品ではありませんので、水様便が排泄されたら、速やかにパッド交換を行うという意識を持つことが大切です。製品によって、吸収量やパッド内部の構造が異なりますので、便の性状や量、皮膚の状態に合った製品を選びましょう。 夜間、頻回な尿取りパッドの交換により、療養者や介護者の安眠が妨げられる場合や、尿取りパッドでは対応が困難な場合、男性にコンドーム型収尿器を紹介することもあります。コンドーム型収尿器は、装着に技術を要する場合もありますので、皮膚・排泄ケア認定看護師の技術支援が得られる方法を検討することも必要です。便の性状に経腸栄養剤が影響している可能性がある場合は、かかりつけ医や管理栄養士に相談をして、経腸栄養剤の種類や投与方法について検討しましょう。緩下剤を使用している場合は、かかりつけ医に相談をして便性状の調整を検討することも大切です。 在宅WOCナースがおすすめするIADのケア びらん・潰瘍部:スキンケアのポイント 洗浄のスキンケアの際、洗浄に痛みを伴う場合は、温めた生理食塩水を使用すると疼痛が軽減できます。びらんを生じている場合、局所にストーマ用品の粉状皮膚保護剤を散布した後、びらん部に粉が密着した上に皮膚被膜剤を塗布します。 粉状皮膚保護材を使用 失禁の頻度や機械的刺激によって粉状皮膚保護剤が剥がれてしまう場合は、皮膚・排泄ケア認定看護師などへ相談し、粉状皮膚保護剤と亜鉛華単軟膏を混ぜたものを塗布することを検討しましょう。亜鉛華単軟膏に粉状皮膚保護剤を合わせることで緩衝作用に優れ、皮膚の保護においても効果を発揮します。 亜鉛華軟膏を使用 なお、この方法は、カンジダ症の疑いがある場合は、症状を悪化させる可能性があるので注意が必要です。 ハイドロコロイドドレッシング材やストーマ用の板状皮膚保護剤を使用する場合は、適当な大きさにカットしモザイク状に局所へ貼付します。排泄物で汚染した部分や溶解・膨潤した部分など、一部のみを交換することができます。さらに、モザイク状に貼付した隙間には粉状皮膚保護剤を充填することにより、露出した皮膚を保護することができます。 ポリエステル繊維綿によるケア ポリエステル繊維綿で、肛門周囲から会陰部にかけての皮膚と、おむつの間の隙間を埋める製品もあります。水様便が臀部皮膚に拡散せずパッド内へ吸収されることにより、皮膚への付着を軽減できます。ポリエステル繊維綿はパッドと一緒に、排便ごとに交換します。 装着型肛門様装具や単品系ストーマ装具によるケア 水様便が持続する場合(非感染性の下痢)、装着型肛門様装具や単品系ストーマ装具などで便を回収することもできます。ただし、装具の装着には技術が必要で、療養者は装着中の違和感を伴うことも。装具の購入費用もかかります。療養者・家族と相談の上で使用を検討しましょう。また、装具装着の際は、皮膚・排泄ケア認定看護師の技術支援が得られる方法を検討することも必要です。 医師との連携 皮膚科医によりIADと診断された潰瘍の治療方法については、皮膚科医が指示する外用薬を使用しましょう。皮膚カンジダ症をはじめとした感染徴候が確認されたら、かかりつけ医もしくは皮膚科医へ相談し、感染の有無の確認をすることが大切です。感染が確定したら、医師の指示のもと治療を行います。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.〇一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会編. 『IADベストプラクティス IAD-setに基づくIADの予防と管理』照林社,2015.

在宅の褥瘡・スキンケア/スキン-テア編
在宅の褥瘡・スキンケア/スキン-テア編
特集 会員限定
2023年10月10日
2023年10月10日

高齢者に多いスキン-テア 予防ケアのポイント&第一発見時の対応を解説

スキン-テアは、主に高齢者に発生する皮膚損傷で、摩擦やずれによって皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷です。スキン-テアは、医療的ケアや療養生活の中で生じる摩擦やずれによって発生し、強い痛みを伴い、治りにくく再発しやすいという特徴もあります。毎日介護する家族にとって、スキン-テアの痛みに苦しむ家族の姿を見ることや、その介護は痛々しく悲しいものです。 在宅で要介護状態にある高齢者は、療養生活のケアを家族や他者に委ねることが多くなります。そのため、ケアに当たる時間が多い家族や介護ヘルパーは、皮膚の観察をする頻度が最も高く、第一発見者になる可能性も。今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、スキン-テアについて、発症を予防するケアのポイントや発生時の対応方法を解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 「スキン-テア」を起こしやすい皮膚や状況は?:アセスメント スキン-テアが発生する場面 摩擦とずれによって皮膚が損傷することで、スキン-テアが発生します。例えば、以下のようなケースがあります。 ベッド柵に上肢をぶつけて皮膚が裂けた更衣時に衣類が擦れて皮膚が裂けたリハビリ時に身体を支持していたら皮膚が裂けた上体を引き上げようとしたら皮膚が裂けた車椅子のレバーに手をぶつけて皮膚が裂けた医療用テープを剥がすときに皮膚が剥がれた 車椅子のブレーキレバーに打撲して損傷車椅子のブレーキレバーに打撲して損傷更衣時に衣類が擦れて損傷上肢を強く掴んだ時に損傷 アセスメントのポイント スキン-テア保有者は、75歳以上の後期高齢者、日常生活自立度ランクC2に多く、両上肢に多くみられるという特徴があります。薄く(菲薄)脆い(脆弱)皮膚、特に以下の皮膚状態にある人は要注意です。 ■スキン-テアの既往がある現在スキン-テアを有している人や既往のある人は、スキン-テアの発症リスクが高いため、予防的なケアが重要になります。過去にスキン-テアの既往があるかどうか、現在スキン-テアを有しているか、本人や家族に確認しましょう。皮膚の観察は、スキン-テアが治癒した後に認める特徴的な瘢痕があるかを確認します。 特徴的な瘢痕とは、白い線状や白い星状の瘢痕です。このような症状を認めた場合、過去にスキン-テアを発症したことになります。 スキン-テアの既往:白い線状の瘢痕スキン-テアの既往:白い星状の瘢痕 ■乾燥しているドライスキンは、皮膚の柔軟性が低下し硬く脆くなり、水分量が減少した状態です。皮膚のバリア機能が低下しています。 ■浮腫がある浮腫(※)は、ドライスキンが生じやすくなります。※詳しくは「在宅の褥瘡・スキンケア 脆弱な皮膚 編」参照 ■紫斑がある(老人性紫斑)加齢による血管の脆弱性(老化)が原因で、軽微な外力でも皮下に出血を起こし、紫斑を生じます。抗凝固剤服用中の療養者によくみられます。 紫斑 ■ティッシュペーパー様の皮膚皮膚がティッシュペーパーのように白くかさかさしていて、とても薄い状態です。高齢者で長期間ステロイド薬を内服している療養者に多くみられます。 ■高齢である皮膚は加齢により脆弱化し、わずかな摩擦やずれでもスキン-テアが生じやすくなります。療養者が「年齢75歳以上か」という視点は大切なアセスメントポイントとなります。 ■外力発生要因を確認する:患者行動・管理状況外力発生要因のリスクアセスメントは、療養者本人の行動によって摩擦やずれが生じる「患者行動」と、ケアによって摩擦やずれが生じる「管理状況」をみます。 患者行動には、痙攣・不随意運動、不穏行動、物にぶつかるなどがあります。管理状況には、体位変換や移動介助、入浴・清拭などの清潔ケア介助、更衣の介助、医療用テープの貼付、器具(抑制帯、医療用リストバンドなどの使用)、リハビリテーションの実施などがあります。介護の場面、居室の環境、ケアの介助など、毎日の生活の場面で生じる摩擦やずれによってスキン-テアは発生しますので、スキン-テア発生リスクの観点を持ち、療養者の療養状況を確認することが必要です。 ■ガイドラインに基づいた評価とケアを行うスキン-テアは予防が大切ですが、発生したスキン-テアは、早期に治癒できるように適切な評価とケアを行うことが重要です。スキン-テア発生部の創の観察は、STAR(Skin Tear Audit Research)分類システムを用いて行います。 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会の『ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理』内に掲載されている、「STARスキンテア分類システムガイドライン」で推奨されるケアをおすすめします。 スキンケアのポイント スキン-テアの発生と再発の予防的ケアは、毎日の細やかな観察、栄養管理、外力保護ケア、スキンケア、医療・介護メンバーや療養者・家族の教育が重要です。 栄養管理のポイント スキン-テアとドライスキンは関連していると考えられています。栄養管理によってドライスキンが改善できればスキン-テアの予防につながります。 栄養状態は、食事摂取量の減少、摂食嚥下状態、脱水症状など、本人の身体状況や生活の中でも把握できるポイントがあります。特に高齢者は脱水になりやすいため、毎日の尿量(オムツ交換回数など)や皮膚や舌の乾燥、手指の爪甲を圧迫した際の再充血の遅延、せん妄状態などの観察が重要です。 皮膚の乾燥に効果的な栄養素としてコラーゲンペプチドがあります。コラーゲンペプチドは、経表皮水分蒸散量を減少させ、角層水分量の減少を抑制する効果が示されています。褥瘡治癒の促進にも有効であるといわれていることから、スキン-テアでも効果が期待されている栄養素の一つです。 外力保護のポイント スキン-テアの発生部位は、上肢が最も多く次に下肢となっており、四肢がベッド柵などの物にぶつかることで多く発症しています。スキン-テアを予防するには、皮膚を外力から保護する対策、療養生活環境を整えること、外力から皮膚を保護するケア、安全な医療用品を使用することが大切です。 ■ベッド周囲の環境療養者に、認知機能の低下、痙攣や不随意運動、不穏行動などがある場合、ベッド柵への接触やベッド柵の隙間から手足を出す行為などによって、スキン-テアを生じる可能性があります。ベッド柵をあらかじめカバーで覆い、直接皮膚がベッド柵に接触することを予防し、ベッドの床上にはティッシュケースなどの物を置かないようにしましょう。ベッド上下のボード、ベッド周囲の家具など、身体が接触する可能性のある角の部分にカバーや緩衝材を着けるなどの配慮も必要です。 ■車椅子への移動時の環境スキン-テアを発症する場面に、車椅子への移乗があります。車椅子に移る前に、四肢の露出がないことを確認しましょう。あらかじめ上肢にはアームカバーや手袋、下肢には靴下、レッグウォーマーを着用し皮膚を守ることが大切です。アームカバーやレッグウォーマー、日焼け防止長手袋などは手軽で便利に使用できます。車椅子のブレーキやアームサポート、フットレストなどは、肘や上肢、手背、下肢などが接触しやすい部分でもありますので、素材の柔らかいもので覆い皮膚への接触を軽減しましょう。 ■体位変換や移乗の介助スキン-テアは、体位変換や移乗動作をはじめとする介護の場面など、日常生活の支援で行われるケアに関連して発生します。特に介護する人が高齢者で、体力的な問題がある場合、力任せに引っ張る・引きずるなど、強い力を加える介助はスキン-テアの発生率を高めます。 介助方法のポイント体位変換や移乗動作などの介助は、原則的に2名で行うことが望ましいです。しかし在宅では、マンパワーの不足もあり常時2名で介助を行うことが難しい状況もあります。そのような時は、体位変換補助具の使用をおすすめします。スライディングシート、スライディングボード、スライディンググローブ、介護用リフトなどの使用は、摩擦やずれの低減に繋がり、療養者も介護する人も安全で安楽に行うことができます。在宅では、スライディングシートの代わりに、レジャーシート、ビニールシートなど表面が滑りやすい素材のシートを活用する場合もあります。介助動作のポイント体位変換時や更衣時、上下肢の挙上や支える際に上肢や下肢を掴むと、一ヵ所に力が集中し、圧迫と摩擦、ずれによってスキン-テアが発生します。四肢の挙上には、必ず下から両手で優しく支えるように保持して、掴み上げることや強く握ることは避けましょう。体位変換は、背部や肩、腰部など大きな面積を支えるように行います。体位変換やポジショニングに使用するクッション、着用している寝衣、寝具、おむつを引っ張る行為は、皮膚に摩擦やずれを生じますので控えましょう。 ■皮膚保護のポイントスキン-テアの予防には、皮膚の露出を避けることが大切です。寝衣や衣類は、皮膚が蒸れて浸軟をしないように、吸湿性が高く肌触りが柔らかいもの、すべりの良い素材が好ましいです。また、伸縮性があり、ゆとりのあるものを選択しましょう。きつく伸縮性の少ない衣類は、更衣時にスキン-テアを生じる可能性が高くなります。関節拘縮のある療養者には、やや大きめで伸縮性のある、皮膚が擦れない寝衣を選択すると良いです。 関節拘縮が強い療養者の場合、あらかじめ上肢をアームカバーなどで保護した上で、更衣を行います。スキン-テアのリスクが高い人、既往のある人は、日常的に長袖、長ズボンの寝衣を着用する、靴下は膝下まで覆えるものにするなどの留意が必要です。 予防的なスキンケアのポイント 入浴の際、皮膚は覆うものがなく、濡れて摩擦抵抗は高く、湯温や発汗などで浸軟しやすい状態にもなります。入浴介助は、十分注意をしながら行いましょう。 ■保湿のスキンケア使用する保湿剤は、低刺激性でローションタイプの伸びの良いものがおすすめです。硬く伸びにくい保湿剤の使用は、皮膚に摩擦やずれを生じ、スキン-テアを生じさせる可能性があります。1日2回以上行えると予防効果が高まります。 保湿剤を塗布する際、強く擦りながら行うと、皮膚に摩擦とずれが生じ新たな皮膚損傷を起こす可能性があります。保湿剤の塗布は、ディスポ手袋をした手に保湿剤を馴染ませ、毛の流れにそって押さえるように行います。乾燥が強い場合は、保湿ケアの後、油脂成分のクリームを重ねて塗布することで保湿のケア効果を高めることもできます。皮膚の乾燥状態に応じて、保湿のケアの回数を増やすなどの検討を行います。1日2回以上の保湿のスキンケアが困難な場合には、入浴や清拭時の温湯に保湿成分配合入浴剤を使用するなど、確実に継続できる方法を考えます。 発症後のスキンケア:第一発見者の初期対応 スキン-テアを最初に発見した人は、速やかな初期対応が求められますが、在宅では限られた衛生材料の中でケアを行わなければなりません。その家庭にある衛生材料でできる安全なケア方法を検討しましょう。 第一発見者が家族や介護ヘルパー 出血がある場合は、ガーゼ、ハンカチ、紙おむつやパッドなど、清潔な当てもので保護をして、早急に訪問看護ステーションやかかりつけ医に連絡をします。 第一発見者が訪問看護師など医療従事者 出血がある場合は、ガーゼなどを当て止血します。洗浄後、できる限り皮弁を元の位置に戻し、ガーゼに白色ワセリンなどの油脂性基剤の軟膏を塗布して創面に当てます。ガーゼのみを当てると皮弁がガーゼに固着し二次的損傷を招きます。当てものが創面に固着しないように保護をして、包帯、筒状包帯、ガーゼなど自宅にあるものを使用して固定します。訪問者が、非固着性創傷パッドやシリコーン系ドレッシング材を持っている場合は、優先的に使用します。 両腋窩を支持し上体を引き上げた時に損傷 洗浄後、皮弁を戻しシリコーンゲル粘着性親水性ポリウレタンフォームドレッシングでケア 受傷27日後に治癒を確認 皮弁を元の位置に戻す場合の留意点 スキン-テアは、皮膚が真皮レベルで剥離したものです。そのままでは皮膚が再生しないと治癒に至りません。皮膚は、皮弁を戻すことにより速やかに治癒することができます。しかし、皮弁を戻す際には疼痛を伴います。事前にきちんと説明した上で実施するようにしましょう。 皮弁は、湿らせた綿棒、手袋をした指、または無鉤鑷子を使用してゆっくり戻します。皮弁を元の位置に戻すことが難しい場合、生理食塩水で湿らせたガーゼを5〜10分貼付して再度試みます。皮弁を破損しないように、慌てず丁寧に行いましょう。 日頃から備えておきたい衛生材料 スキン-テアのハイリスク状態にある療養者には、ガーゼ、白色ワセリン、非固着性ガーゼ類、包帯類などを備えておくと応急手当てに役立ちます。また、第一発見者となる可能性の高い介護者や介護ヘルパーには、初期対応のケアの方法や医療者への緊急連絡先などを伝えておくことも大切です。スキン-テアの予防とケアには、医療職、看護職だけでなく、高齢者を支援する地域全体で高齢者の皮膚を護る意識と知識が大切です。 医師や多職種との連携 医療的なケアが必要な場合は、かかりつけ医や皮膚科専門医、皮膚・排泄ケア認定看護師に相談しましょう。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.〇一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会編. 『ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理』照林社,2015.

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