用語集
STSS(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS:streptococcal toxic shock syndrome)は、通称「人食いバクテリア」と呼ばれる重篤な感染症で、主にA群溶血性レンサ球菌(A群溶連菌)によって引き起こされます。発症後、短時間で全身状態が悪化することが特徴です。この細菌は通常、喉や皮膚に存在し、感染しても無症状のことが多く、ほとんどが咽頭炎や軽い皮膚感染症にとどまります。しかし、まれに無菌状態の肺や筋肉、脂肪組織、血液などに侵入し、突発的に発症。敗血症をはじめとした重篤な症状を引き起こします。その結果、急速に手足の壊死や多臓器不全が進行するほか、ショック状態から死に至るおそれがあります。
具体的な初期症状には、咽頭痛、発熱、血圧低下、全身倦怠感、消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢)筋肉痛、四肢の疼痛、腫脹などが含まれますが、明らかな前駆症状がない場合もあります。発症後24時間以内に軟部組織の病変、循環不全、呼吸不全、播種性血管内凝固症候群(DIC:disseminated intra- vascular coagulation)、肝腎不全などが急速に進行します。
発症リスクが高いのは、糖尿病や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患を持つ人、免疫抑制剤を使用している人、高齢者、新生児、妊婦や周産期の女性などです。ただし、誰にでも感染リスクがあるため注意が必要です。
治療は適切な抗菌薬の使用が基本で、ペニシリン系薬剤が第一選択とされ、毒素産生を抑制するためにクリンダマイシンの併用が推奨されています。また、全身状態の管理や必要に応じて外科的処置を行い、病原体の評価や感染範囲の確認、感染源の除去(デブリードマン)を実施します。
感染対策としては、個室隔離し飛沫予防策と接触予防策を徹底します。壊死性筋膜炎など滲出液がある場合は、滲出液が出なくなる、あるいは培養検査で陰性が確認されるまで(検体採取の目安:抗菌薬開始7~10日後)、感染対策を継続することが推奨されます。ただし、創部をしっかりガーゼで覆い、滲出液の漏出が防げる場合は隔離を解除することも可能です。その際は、処置時の防護具の着用や処置後の環境整備を確実に行うことが重要です。
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監修: とよだクリニック院長 豊田 早苗