上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心不全の「緩和ケア」はこれからどんどん進化していく

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 2018年から心不全が「緩和ケア」の対象疾患になり、近年、注目されていると前回お話ししました。心不全とは、心臓の働き=ポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなった病態で、放置して慢性心不全になると徐々に心機能が低下していき、命を縮めます。末期になると根治させる治療法はなく、呼吸困難や痛みなどの苦痛症状が現れます。

 心不全を起こす原因は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心房細動などの不整脈といった心臓疾患の多くが該当し、高齢化が加速する日本では患者さんが急増しています。そうした状況から、かねて緩和ケアの重要性が叫ばれていました。

 とはいえ、心不全に対する緩和ケアはまだ始まったばかりで、体制が十分に整備されているとはいえません。それでも、循環器を診ている医師の中では心不全の緩和ケアを専門にする人や、緩和ケアチームがつくられるケースが増えてきています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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