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インフルエンザ感染拡大 1回かかっても2回、3回感染する可能性も…その確率を減らすには

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 インフルエンザの感染拡大が続いています。厚生労働省によると、10月30日~11月5日の1週間に全国約5000か所の定点医療機関から報告された感染者数は、1医療機関あたり21.13人で、11週連続で増えています。今シーズンは、1回かかっても、2回、3回と、再び感染する可能性もあると言います。その理由について、インフルエンザに詳しい慶応大客員教授の菅谷憲夫さんに聞きました。(聞き手・利根川昌紀)

目立つ子どもの感染

インフルエンザ感染拡大 1回かかっても2回、3回感染する可能性もその理由は?

――今の感染状況を教えてください。

 国内では、2020年1月に始まった新型コロナウイルスの流行により、マスクの着用やこまめな手洗い、ソーシャルディスタンスといった感染予防策が強化されました。そうした要因もあり、インフルエンザは2シーズン、流行しませんでした。22~23年にかけて流行が始まりましたが、今ほどではありませんでした。ただ、例年だと春に収まる流行が夏場も続き、今の状況に至っています。

 インフルエンザの感染者は例年、10歳代を含めた子どもが5~6割程度を占めるとされていますが、今はそれよりも、子どもの感染者の割合が高まっているという状況です。

――それは、なぜですか。

 インフルエンザに対する免疫は、感染することでつきます。しかし、この3年間は、インフルエンザが大きく流行することはなく、免疫力が低下しました。コロナ下に生まれた子どもは、自然免疫がほぼないと言えます。加えて、ワクチンの接種率も下がっています。

 そうした状況の中、学校では、これまで自粛されてきた運動会や文化祭といった行事が再開され、マスクを着ける子どもも減りました。

 もちろん大人も、インフルエンザウイルスに対する免疫力は落ちていますが、一般的には子どもよりはあります。

感染を繰り返す理由

――感染者が増え続けている要因を教えてください。

 流行するインフルエンザは、ウイルスの種類によって大きく三つのタイプに分けられます。09年に「新型インフルエンザ」として大流行したA(H1N1)型、A香港型として知られるA(H3N2)型、B型です。現在、日本国内で感染者が最も多いのはA香港型です。

 ただ、オーストラリアやシンガポールではA(H1N1)型も流行しており、日本でもこのタイプの感染者が目立ってきています。異なるタイプのインフルエンザウイルスが同時に感染拡大を続けているという状況です。

 つまり、1回、インフルエンザにかかっても、もう1回、かかる可能性があるということです。A(H1N1)型に感染すれば、このタイプへの免疫はつきますが、A香港型やB型への免疫はつきません。今は日本で流行していないB型の感染拡大が今後、起こるようになれば、3回かかることもあり得ます。

――ワクチンを接種すれば、いずれも防げると考えてよいのでしょうか。

 ワクチンは、A(H1N1)型とA香港型、B型の二つの系統の4種類について、予防効果が期待できるよう作られています。だいたい50%前後の発症予防効果があると考えられています。このうちA香港型は、ワクチンが効きにくいとされていますが、感染したとしても重症化を予防することは期待できます。

治療薬足りず

――感染して熱が出た場合、どのように対処すればよいですか。

 医療機関を受診する場合は、まず電話などで問い合わせをし、受診の可否を尋ねましょう。

 治療には抗インフルエンザ薬を使いますが、今回の感染拡大により、オセルタミビルリン酸塩(タミフルなど)のドライシロップの需要が増えています。子どもに処方されることが多いシロップ薬ですが、厚労省は11月8日、この薬が不足している場合は、カプセル剤の中身を取り出して代用することなどを盛り込んだ事務連絡を各自治体に出しました。

早期診断・治療が大切

――感染拡大を食い止めるための手立てはありますか。

 A香港型は、高齢者の死亡リスクを高め、また、子どもが脳症を起こすこともあります。症状が出たら、早めにかかりつけ医などを受診してほしいと思います。早期診断・治療が、重症化を予防することにつながります。

インフルエンザ感染拡大 1回かかっても2回、3回感染する可能性もその理由は?

菅谷憲夫(すがや・のりお) 1972年3月、慶応大医学部卒。81年2月、日本鋼管病院小児科長、2002年8月、けいゆう病院小児科部長。10年4月、慶応大客員教授。22年4月、けいゆう病院名誉参事。日本感染症学会感染症専門医・評議員、日本小児科学会専門医、国際インフルエンザ学会(ISIRV)理事、国際抗ウイルス薬学会(AVG)理事。

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