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能登半島地震2週間、体と心のケア急務 1万9000人避難所生活、助かった命をつなぐため

2024年1月15日 05時05分 (1月15日 05時05分更新)

避難所となっている飯田小学校で問診する福井赤十字病院の医療チームの医師ら=石川県珠洲市で

 能登半島地震で今も約1万9千人が約390カ所で避難生活を送る中、高齢者を中心に体調を崩す被災者が目立ってきた。どのようにして「災害関連死」を防ぐか。各地から派遣されてきた医療関係者が、被災者の体と心のケアに奔走している。 
 「お変わりありませんか」「どこか痛くないですか」。避難所になっている石川県珠洲市の飯田小学校で、福井赤十字病院(福井市)の医療チーム4人が住民たちの診療に当たっていた。日赤が派遣する救護班による巡回診療で、福井赤十字病院の医師宮島萌乃さん(27)が一人一人の顔色を見ながら、脚の血栓などエコノミークラス症候群の症状がないか、服用薬は足りているかなどを確かめた。
 宮島さんは「避難生活はおにぎりや間食などが中心で栄養が偏り、活動も少なくなる」と心配。被災者に「水分や野菜ジュース、果物をしっかり摂取したり、脚をよく動かしたりしてほしい」と促している。
 14日午後2時時点で、死者221人のうち災害関連死とされるのは13人に上る。停電や断水が続き、特に高齢者が体調を崩すなどして亡くなった事例が判明している。
 避難生活が長期化すると、心のケアも課題だ。福井日赤の看護師長を務める西郡知代さんによると、すでに「死にたい」との電話が医療チームに寄せられている。厚生労働省の統計によると、2011年の東日本大震災での被害に関連した「震災関連自殺」は、昨年12月までに252人に上る。西郡さんは「被災者が必要としているのが医療なのか、精神的ケアなのかを見極め、必要があれば災害派遣精神医療チーム(DPAT)につなぐなど、組織の連携を図っている」と強調する。
 日本医師会の災害医療チーム(JMAT)も公立能登総合病院(七尾市)に本部を置いて、同市と志賀町、穴水町を中心に約10班が活動している。配置を調整する愛知県医師会の医師伊藤之一さん(56)は、住民の「かかりつけ医」となる医院の診療再開も含めた復旧が課題と指摘。「住民のほとんどが高齢者という地域。JMATが1年も被災地にいることは考えられないが、地域医療の再生も含めて必ず長期戦になる」と話した。
 (宮崎厚志、奥川瑞己、染谷明良)

過去の地震は1か月以内に震災関連死多発「今が正念場」

福祉防災コミュニティ協会代表理事の鍵屋一さん

 能登半島地震の被災地で今も約1万9千人が避難所に身を寄せる中、懸念されるのが、持病が悪化するなどで亡くなる「震災関連死」だ。一般社団法人福祉防災コミュニティ協会代表理事の鍵屋一さん(67)は「過去の地震では発生から1カ月以内に震災関連死が多発している。今が命を守るための正念場だ」と話す。
 2016年の熊本地震では、震災関連死が地震の直接的な被害で亡くなる直接死の4倍の218人に上った。鍵屋さんによると、今回の地震では、断水の影響でトイレの回数を減らすために水分や食事を控えて体調を崩したり、歯磨きなど口腔(こうくう)ケアができずに誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしたりすることが懸念される。新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症も広がっており、避難生活で体力が落ちた高齢者などが特に注意が必要という。
 家族や地域の人らと一緒に避難すると、コミュニティーのつながりを保ち、孤立を防ぐことに役立つという。ただ住み慣れた場所を離れることに抵抗を感じる高齢者も。鍵屋さんは「体調を崩すと治療が必要になり、逼迫(ひっぱく)する医療現場の負担になる。体力があるうちに広域避難をすることが、みんなのためになる」と話した。
 (河野紀子)
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