2024.03.30
# 介護

介護報酬がアップしても職員は大量離職の可能性…介護事業所の現役経営者が指摘する「報酬改定のカラクリ」

厚生労働省は、今年4月から施行する介護保険制度の改定で訪問介護事業所の基本報酬が2~3%引き下げられると発表し、関係者に衝撃を与えています。

「共働きでも毎月赤字です…」介護事業所の現役経営者が「まさかの介護報酬引き下げ」で国に訴えたいこと〉では、介護業界で12年以上勤務する沖縄県浦添市安波茶の訪問介護事業所「おうちでくらせる訪問介護」の代表社員・比嘉歩さんに過酷な現場の実態や、介護報酬を考えるにあたり集合住宅併設とそうでない訪問介護事業所を分けて国が統計調査をとる必要性を紹介しました。

本稿では、介護報酬が上がったものの、今年の6月から介護職が大量離職する恐れがある理由や改善案についてお伝えします。ぜひ最後までお読みください。

6月から介護職が大量離職の可能性がある4つの理由

介護報酬は1.59%にアップ、また6月から新処遇改善加算により介護職の給与は上がるものの、歩さんはこの報酬改定にはカラクリがあり、このままでは介護職員が大量に離職してしまうと警鐘を鳴らします。

比嘉歩さん
 

その理由は下記の1~4です。

1、最低賃金は毎年平均3%~4%引き上げられていますが(コロナの時の2020年はほぼ据え置き)、介護報酬改定は3年に1度の改定のため、3年間で1.59%のアップにとどまっています。そのため、介護職から他の仕事への転職者が相次ぐと予想されます。

2、処遇改善加算は、介護職の口座に国から直接入るわけではありません。分配するのはその事業所毎になります。ですので、給与が上がる人、変わらない人、逆に下がる人、処遇改善加算を算定していない事業所も多くあります。そのような事業所だと訪問介護の場合、給与は減る可能性があります。
加えて、訪問介護に限らず処遇改善を上積みする前の基本給を下げざる得ない事業所も現れてくるでしょう。

3、処遇改善加算の上位区分を算定するには、非常に多くの「職場環境等要件」を満たさなければいけません。一定の経過措置、小規模な事業所への配慮もありますが、限られた人員体制で利用者のケアに追われ要件を満たすのは困難です。実際、対応できないところも少なくないでしょう。

4、10年前に比べて書類作成が増えている印象をもっています。仕事の合間や休日出勤して委員会や会議、研修の資料作成、BCP関連資料作成、介護計画書作成など書類作業をしています。

介護事業所は基本報酬がほとんど上がらないので加算を取らないといけませんが、その加算を取るために事務作業はまた増加します。結果、給料はほぼ横ばいで資料作成業務が増えます。人手不足に拍車をかけ今いる職員に負担が集中します。

歩さんは、Youtubeチャンネル「おうちでくらせる訪問介護」で介護職や介護職に就職希望や家族介護者に向けて訪問介護や介護職の処遇改善や介護業界の問題点を発信しています。直近の「介護業界終了、もう他人事ではなくなります。日本がパニックになります」は3万4000回再生、チャンネル登録者数は4300人以上(*原稿執筆時点)で急成長中のコンテンツです。

歩さんは、「介護はいつ必要になるかわかりません。介護を他人事ではなく、自分事として捉えてほしい」と訴えます。

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