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手足が勝手にくねくね動く まっすぐ立てない パーキンソン病が進行した時の治療法は?…新しい「持続皮下注療法」が登場

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 手足の震えや歩行困難などが表れる「パーキンソン病」。進行すると、薬の効果が短くなり体のバランスが取れなくなる、効き過ぎて手足が勝手に動くなどの症状が出てきます。こうした進行期の患者向けに、薬剤を体に24時間注入することで効果が持続する新しい治療法が昨年、登場しました。(小山内裕貴)

従来薬の効果数年

 パーキンソン病は、脳内にある一部の神経細胞が極端に減少し、情報伝達を担う物質のドーパミンが減ることで起き、動作が緩慢になる、手足が震える、筋肉が硬直するといった症状が出ます。高齢になるほど発症する割合が高くなり、国内には約29万人の患者がいると推計されています。

 根本的に治す方法は見つかっておらず、主に飲み薬で症状の軽減や改善を目指します。中心となる治療薬は、脳内のドーパミンを増やす働きがある「L―ドーパ」で、発症当初の3~5年はよく効くとされます。

 病気が進行すると、薬の量を増やしても効きにくくなり、動きにくいなどの症状が表れやすくなります。逆に薬が効きすぎて、手足が勝手にくねくねと動く症状が出ることもあります。神経細胞の減少により、脳内のドーパミンの量を調節するのが難しくなることなどが原因とみられます。

 こうした進行期の患者を対象に、パッチをおなかに貼り付け薬液を注入する持続皮下注療法が、2023年5月に保険適用されました。L―ドーパをポンプから24時間持続的にパッチに送り、パッチから伸びる針状の細い管を通じて血管に薬液を入れます。

腹に貼るパッチ

 これまで進行期の治療法は、おなかに穴を開け、胃にチューブを通してゼリー状のL―ドーパを小腸に注入する「経腸療法」と、脳の病変部位に電極を埋め込み電気刺激によって症状の改善を促す「脳深部刺激手術」が主流でした。どちらも効果が長続きする利点はあるものの、それぞれ腹部や脳にチューブ、電極を入れる手術を受ける必要があります。

 国立精神・神経医療研究センター(東京都)脳神経内科診療部医長の向井洋平さんは「持続皮下注療法はパッチを貼るだけで済み、手術を受けずに済みます」と話しています。

 都内に住む男性(75)は8年前にパーキンソン病の診断を受けました。2年前、薬の効果が弱まり、体中の筋肉がこわばって動けなくなる症状が出ました。食事も喉を通りにくくなり、流動食に切り替えました。

 向井さんの勧めもあり、23年9月から持続皮下注療法を受け始めました。症状は改善し、普通の食事も少し軟らかくして取れるようになりました。体力を維持しようと、ほぼ毎日散歩や体操を行っています。男性は「充実した毎日を送れています」と喜んでいます。

 持続皮下注療法はパッチで皮膚が腫れることがあります。また、高齢などで認知機能が低下し、パッチを自分で外してしまう可能性のある患者には向いていません。

 順天堂大脳神経内科教授の服部信孝さんは「パッチを着けるのに介護者の助けが必要な人もいます。副作用などの問題も含めて、医師と相談し、自分に合った治療法を決めてほしい」と助言しています。

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