医療崩壊防げ「松本モデル」 新型コロナ重症度で病院が分担

2021年2月8日 18時00分
 新型コロナウイルス対策のための緊急事態宣言が8日、10都府県で約1カ月の延長期間に入った。宣言解除に向け病床の確保が焦点となる中、長野県松本市を中心とする松本医療圏の取り組みが「松本モデル」として全国的に注目を集めている。患者の重症度などに応じて公立、民間の各医療機関が受け入れを分担、連携し、地域がワンチームで医療崩壊を防ぐ試みだ。(竹内なぎ)
 松本市や周辺では昨年末以降、二つの高齢者施設や相沢病院(同市)で集団感染が相次ぎ発生。先月上旬には1週間で100人以上の感染者が出て、コロナ病床が逼迫する状態となったが、連携し何とか乗り切った。

◆日本病院会会長「準備が重要」

 日本病院会会長で相沢病院を運営する慈泉会の相沢孝夫理事長(73)は「病院間の連携で医療崩壊を防ぐことができている」と言い「感染の広がりに応じた計画を作り、準備しておくことが重要。各病院に心構えができていた」と話す。

相沢理事長

 同病院は、地域で中核的役割を果たす医療機関。2018年平昌五輪女子スピードスケート500メートル金メダルの小平奈緒選手も所属する。
 松本医療圏は松本、塩尻、安曇野市など3市5村にまたがる二次医療圏。唯一の感染症指定医療機関である松本市立病院を中心に、国立や公立、日赤など公的、民間が運営する計七つの医療機関がコロナ患者を受け入れている。一方、別の二つの民間病院はコロナ患者以外の治療に集中。地域医療を各機関で支える態勢を構築している。
 コロナ患者の受け入れも症状や各病院の設備などに応じて分担、効率化を図る。信州大付属病院(松本市)は重症、相沢病院は重症と中等症のほか透析患者を担当。県立こども病院(安曇野市)が子ども、松本市立病院が主に中等症や疑似症、宿泊療養施設は軽症―といった具合だ。
 こうした態勢づくりは、感染拡大を想定して昨年2月から協議を始めた。同4月に国の緊急事態宣言が発令された直後、臥雲義尚・松本市長が市立病院で率先してコロナ患者を受け入れると宣言すると、他の病院も病床確保を約束。市立病院が上限を37床とし、それ以上は別の病院に患者を振り分けることにした。臥雲市長は「市として覚悟を示し、他の病院へ協力をお願いした」と振り返る。
 相沢理事長によると、医療圏内の自治体では20年以上前から、災害時の救急医療体制を一緒に協議してきた。円滑に対応できた背景には「病院同士が協議し、協力する素地があったことが大きい」と説明し「病院間で情報を共有し、柔軟に対応していくしかない」と強調した。

2次医療圏 医療圏には1~3次がある。1次は市町村単位が原則で、診療所の外来など日常的な医療を提供する区域。3次は都道府県単位が原則で、広範囲のやけどや臓器移植など特殊・先進医療を提供する区域。2次は複数の市町村にまたがり、救急を含む一般的な入院治療を提供する区域。医師数や病床数などの計画のベースとなる。

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