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JAMA Network Open誌から
100歳を過ぎても認知機能が衰えない人の研究
オランダの調査で神経病理学的変化があるのに認知機能が保たれる人も

 オランダAmsterdam自由大学のNina Beker氏らは、100歳以上で認知機能を維持している人々を対象に、最長4年後まで認知機能の変化を調べ、病理解剖ではアルツハイマー病の特徴などが見つかった人でも、認知機能の低下は見られず、センテナリアンは認知機能の低下に対するレジリエンスを持っている可能性があると報告した。結果は2021年1月15日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 60歳頃に認知症を発症する人がいる一方、100歳を過ぎても認知的健康を維持している人もいる。しかし、健康なセンテナリアンがどのようにして認知機能障害を回避したり遅らせているのかは不明だ。そこで著者らは、認知的に健康な100歳以上の人々の認知機能の変化を領域ごとに評価し、アルツハイマー病関連の神経病理学的特徴など、認知機能低下に関係する危険因子と、認知的予備力にかかわる要因の関係を明らかにしようと考えた。

 この研究は、オランダの100歳以上の高齢者を対象に行われている前向きコホート研究100-plus Studyの一環として行われた。組み入れ対象は、100-plus Studyに参加した人で、認知的に健康であると自己申告し、親族や介護者がそれを確認しており、研究者が年に1回訪問して、診察や認知機能テストを受けることに同意した高齢者とした。

 ベースラインの認知機能検査にはMMSEを用いた。さらに認知機能の各領域を深く調べるために、記憶、実行機能、言語流暢性、視空間機能、注意/処理速度について評価を行い、Zスコアを求めた。各領域のスコアを合わせた全般スコアも算出した。記憶の評価は、リバーミード行動記憶検査とVisual Association Test Aを用いた。実行機能はTrail Making Test(TMT)Bとehavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome Test Battery、ウェクスラー式知能検査(WAIS-III)を用いた。言語の流調整はControlled OralWord Association Testとanimal fluencyを用いた。視空間機能は、Visual Object and Space Perception Batteryと時計描画テストを用いた。注意/処理速度は、WAIS-IIIとTMT Aを用いた。

 危険因子として評価したのは、人口統計学的要因(年齢、性別、APOEε遺伝子型)、身体的健康(バーセルインデックスによるADL、握力、視力、聴力、住居の状況分類による自立度、脳卒中やTIAの病歴、高血圧など)、認知的予備能に関する要因(学歴、家族評価による過去と現在の認知活動の頻度、Dutch Adult Reading Testによって評価した病前IQなど)、解剖によるアルツハイマー病に関連する神経病理学的特徴(アミロイド-β、リン酸化タウ蛋白の集積を含む神経原線維変化、老人斑)に関する情報を収集した。

 認知機能の経過はランダムスロープを想定し、時間を独立変数とした線形混合モデルを用いて、年齢、性別、学歴、視力、聴力を調整した上で検討した。続いて、線形混合モデルを用いて、認知的予備力の背景にある要因、ベースラインの身体的健康状態、AD関連の神経病理学が、認知機能の経時的変化に及ぼす影響を検討した。

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