1日17時間勤務!休みなんて1日もなかった コロナ「訪問診療」スタッフたちが見た「孤独社会ニッポン」

壮絶700日の記録(後編)

今も続く異様な「激務」

コロナ禍の約2年間、救急訪問診療の民間業者「ナイトドクター事務局」の電話は鳴り止むことがなかった。それは第6波がピークアウトし、「まん防(まん延防止等重点措置)」が全面的に解除された今も変わらない。

まん防解除の5日後、事務局を訪れると、スタッフたちは相変わらず目を血走らせ、髪を振り乱して、医師派遣要請の電話対応に追われていた。

前編に引き続き、代表の菊地拓也氏(47歳)が激務の合間に取材に応じてくれた。

「私たちのような民間の救急訪問診療業者はいくつかありますが、コロナがはじまってからはどこも多忙を極めています。それは裏を返せば、一般の病院がまともに機能していないということ。今も私たちを頼ってくる患者さんの数はピーク時と変わらず、まだまだ終わりの見えない状況は続いています」

ナイトドクター事務局ナイトドクター事務局

今も続くコロナとの戦い。この2年間、菊地氏をはじめとする救急訪問診療会社のドクターやスタッフたちはどんな日々を送ってきたのか。訪問診療の現場で何を見て、どんな経験をしてきたのか。彼らに改めて話を聞くと、孤独社会ニッポンの闇と在宅医療の重要性が見えてきた。

1日17時間の過酷労働

「コロナ第1波がはじまった2年前、電話応対の事務員やドライバーの数を2〜3倍に増やしましたが、息を抜く暇もない緊張した状況がずっと続く仕事なので、3分の1のスタッフは途中で脱落していきました。今、残っているのは患者さんのために『やるしかないんだ』という強い思いと使命感を持ったスタッフやドクターばかりです。とは言え、日本一多忙は職場なんじゃないかと思うほど、日々の仕事は過酷そのものですが」

 

菊地氏自身、この2年間は1度も休むことなく、毎日15〜17時間働いてきたという。体や心は持つのだろうか。

「常にドライバー不足の状態なので、自分も毎日運転しなければならない。だから、どんなに忙しくても睡眠だけはきちんと7時間程度は取るようにしています」

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