A05異業種参入の壁

インタビュー

異業種参入 第四の壁:専門職の教育

セントケア・グループが訪問看護部門の立ち上げたのは、今から約20年前です。拡大するにつれ、ケアの一定の質担保が困難になりますが、自社でアセスメントツールを開発することで、ケアの質を一定に担保する工夫をしています。教育やサポート体制について藤原さんにお伺いしました。 新人でも、ひとりで考える不安が減るツール ―たくさんの専門職がいる中で、どのようにケアの質を一定に保っているのでしょうか? 藤原: ベテランはアセスメントが得意なのは、全体像が見えているからです。 私たちは、新人や若手も必要な項目を入力していくことで、自分のケアを俯瞰的にとらえられるアセスメントツールとして『看護のアイちゃん』を開発しました。 ―具体的には、どんなメリットがあるのでしょうか? 藤原: 例えば、呼吸に異常を発見したが、医師に報告するべきことか迷うという事態は日常的に起こると思います。『看護のアイちゃん』で、報告するべき呼吸数を事前に設定しておけば、通常のケアの中で項目を入力後、フローチャートが出てきて、「報告が必要です」とシステムが教えてくれます。言い換えれば、別の看護師がなぜ医師に報告をしたのかを知りたい時にも、簡単に確認ができます。 ーなるほど。それは安心感がありますね。 藤原: また、毎回訪問看護でみる項目が決まっているので、新人さんでも目の前の何を見たらいいのかと、ひとりで考えなくてはいけない不安が軽減できると思います。 日々の記録はもちろん、計画書や報告書にもクラウド上で情報が反映されるようになっているので、管理者のチェック業務も、かなり楽になりました。 ―そのほかの看護師さんをサポートするしくみを教えていただけますか。 藤原: 採用時の研修は1.5日ほど座学と、1か月の同行研修があり、だいたい3か月でほぼひとり立ちの流れです。 ただ、技術的な部分のフォロー体制はまだ足りていないと感じています。今後は、手技をシナリオに沿って学習できるシミュレーションモデルのようなものも活用して行きたいです。 また、入職された後、中長期的な目標として、認定や専門看護師などのスペシャリスト、管理者のようなジェネラリストのキャリアステップを選べるようなしくみも作りたいと考えています。 ―管理者のチェック業務も楽になったとのことですが、レセプトの処理はどのようにされていますか? 藤原: 本社で集約しています。訪問看護事務という部門があり、そこで医療保険の請求書の間違いがないよう、加算のとり忘れがないように徹底してチェックしてから、レセプト請求しています。部門としては10人ほどいます。ただ、制度に関する相談は、私のいる訪問看護部門に連絡が来ることが多いです。それでもわからなければ、コンプライアンス課や厚労省に直接確認することもあります。 今後は、訪問のスケジュール立てから記録、請求までのすべてが、お客様の情報として管理できるような一気通貫のシステムにしていきたいですね。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)      

インタビュー

異業種参入 第三の壁:お客様獲得

事業規模の拡大には、専門職の確保とともに継続的にお客様の確保が必要です。オープン当初のステーションにも真似できる、営業戦略の立て方と営業のコツを藤原さんに伺いました。 データを活用した、綿密な計画 ーセントケア・グループの営業戦略を教えていただけますか? 藤原: 訪問診療をやっている医師が強い、ケアマネさんが強いなど、地域によって特徴があります。お客様獲得には、こういったデータをもとに戦略を立てることが大切です。 セントケアでは、以下の手順で営業戦略を決めています。 1. お客様獲得が必要なエリアを選定 2. 該当エリアにある訪問先リストの作成 3. データをもとに各訪問先に対し、「誰が営業に行くか」「どういったことを話すか」を会議で決定 特に3については、その施設にいる方の性質まで考えた上で、誰が行くべきかを決めています。営業先の中で特に重要だと思っているのが、病院です。訪問看護の指示を出すのは医師なので、医師との信頼関係は、継続的なお客様獲得にとって重要なことだと思っています。 ー病院への営業というのは、具体的にどのようなことをされるのでしょうか? 藤原: 具体的な営業方法はシンプルで、看護師が定期的に病院に伺うようしています。 そうすると、どの病院でどんな患者さんが退院されるのかがわかるようになってきますし、退院調整室と顔見知りになれます。 そこで相談してもらい、退院前のカンファレンスに参加することができれば、主治医との信頼関係を作ることができます。医師との信頼関係があれば、退院後のやり取りもスムーズになるので、お客様の安心にもつながっていると感じます。こういった戦略は各子会社の事業部と本社の私達が一緒に考えています。 ー看護師さんの中には、「営業が苦手」という方も多いかと思いますが、どのようにサポートしていますか? 藤原: 本社から現場の悩みに対応したアドバイスをしています。例えば「ケアマネさんへの営業で、初回にセントケアの良いところをアピールし終わってしまうと、二回目以降の訪問に行きづらいです。どうしたら良いでしょうか?」というお悩みがありました。 これには「アピールだけでは、うまく行きません。今、ケアマネさんがどんなお客様を担当されているかを聞いた上で、困ったことがあれば相談してもらえる関係性を作るといいですよ」とアドバイスしました。 ーなるほど。ちょっとしたことかもしれませんが、すごく納得しました。 藤原: ほかにも「来週お答えを持ってきますね」と言えば、次につながりやすいなど、今まで上手くいった例をお伝えする役割を本社で担っています。 また営業の際に活用できる、お客様の病気や状態への対応方法の事例をまとめたチラシも現在では50種類くらい用意しています。 ー50種類も!チラシはどのように活用されているのでしょうか? 藤原: 活用方法としては例えば、胃ろうを作った直後のお客様の家族が、今後のこと心配している状態であれば、「訪問看護ではこういうケアをしていきますよ」とチラシを使って説明して、ケアを実際にイメージしてもらっています。こういったお客様に安心してもらう工夫の積み重ねが、セントケアの価値を高めていくと思います。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)    

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異業種参入 第二の壁:マネジメント

異業種から参入した経営者が開業後に課題を感じるのが、看護師とのコミュニケーションの難しさです。 セントケア・グループが業界トップクラスの97事業所までに拡大したのは、経営と現場の間に立つ藤原さんの存在が大きかったようです。看護師マネジメントのポイントと、今後の拡大計画について伺いました。 経営者の実現したいビジョンを心に届く形で ―異業種から参入するにあたり、最大の課題は何だと思われますか? 藤原: 看護師のマネジメントが一番の課題となると思います。 中には利益や数字の話に拒否反応を示す人も多くいるので、経営サイドからの売り上げや管理の話をどう現場に落としていくかは、頭を使う部分です。 例えば、売り上げを何割か上げるという場合でも、「そのためにはどのくらいお客様が必要か」「たくさんのお客様に求められる看護師であるために何ができるか」と自分の中で落とし込んでから現場に説明することで、衝突を避けることができると感じます。 ―藤原さんはご自身も看護師でいらっしゃいますが、どのような思いがありますか? 藤原: 私自身は、前職で勤め先のステーションが閉鎖した時にセントケアに助けていただいた恩があるので、どうやったら会社に貢献できるかという視点で常に考えるようにしています。 ―セントケア・グループは97か所という多くのステーションを運営していますよね。マネジメントがうまくいっている秘訣は何でしょうか? 藤原: セントケアは創業時から訪問入浴をやっていて、看護師をマネジメントした経験があったことで、訪問看護事業所をスムーズに開設できたと思います。最近また、当社のステーション数は右肩上がりになっておりますが、これは全国を一括で私たちの部門が支える体制を作れているからだと思います。 ―具体的にはどんなことに取り組まれていますか? 藤原: 具体的には、本社で事業のシミュレーションやマニュアル作りなどを、看護師や保健師、歯科衛生士などの専門職が行い、それを全国のステーションに共有しています。地域会社にもエリアの担当者を置いていて、私たちとのやりとりもスムーズに行える体制です。 また、訪問介護や施設などのセントケア・グループの名前が知られているエリアで、ケアマネさんがいて訪問看護がほしいというニーズがあるところで立ち上げているのも大きいと思います。 ―セントケア・グループとしては、今後どういった事業に注力していきますか? 藤原: 訪問看護や看護小規模多機能型居宅介護などの医療に近いところの事業を拡大、積極投資していこうとしています。特別に一定のエリアに集中的に注力するわけではなく、それぞれの地域のニーズや市場性に合わせて、例えば精神や小児の訪問看護、自費サービスなども展開して行きたいです。 セントケア・グループとしては入り口がどのサービスであっても「介護保険に関するサービスなら、セントケアに任せたい」と思ってもらえるような会社でありたいですね。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)  

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異業種参入 第一の壁:採用

近年、異業種から訪問看護に参入する企業が増えています。 そんな中、参入した経営者が口をそろえて言うのが、「採用の難しさ」です。 看護師を中心に800人以上の専門職が在籍しているセントケア・グループの訪問看護事業では、どのように人材を確保しているのでしょうか。訪問看護部門統括次長の藤原祐子さんにお話を伺いました。 人材紹介会社に頼らない大規模採用 ―採用の方法について、教えていただけますか? 藤原: 基本的には、ホームページ、YouTube、Twitter、Instagramの活用と、社員紹介制度を利用した採用を行っています。今までは使っていた人材紹介会社も、今年からは積極的には頼らない方針にしました。 採用は「誰に伝えるか」「何を伝えるか」を考えながら行っています。 例えば、病院などで働いている若い方向けにはSNSやアニメーションなどを活用する、中堅ベテラン層向けにはハローワークで企業としての安定性や研修制度を売りにしてもらうなどです。 またハローワークや紹介会社には情報を出すだけではなく、窓口や担当の方がセントケアを紹介したくなるような関係づくりも意識しています。 SNS関連の採用事例の成果については検証中ではありますが、ホームページをみて入社する人は増えてきている実感はあります。全体的に見ると40代の方が多いですね。 これまでは自社アピールを全面に出し過ぎるのは良くないかなと思っていたのですが、ダイレクトに伝えないとわからない部分もあることがわかってきました。 今はオンラインセミナーなどで、「セントケア・グループでは看護師を積極的に募集しています」「セミナーや勉強会も開催しています」と言うようにしています。 社員紹介制度に関しては、紹介してくれた方と入社してくださった方に、入社お祝い金として3~5万円(キャンペーンなどによって変動あり)のお支払いをしています。地域会社によっては、社内紹介がすごく盛んなところもありますね。 将来的にはオンラインサロンのような、コミュニティ運営もやっていきたいです。 ステーション安定が私のミッション ―セントケア・グループとしての、採用基準はありますか? 藤原: 採用基準はステーションの状況に合わせてもらっているので、こちらから条件は特に出していません。 ただ、新規開設の場合には、正社員3人以上で始めること、24時間365日対応のためにオンコール対応ができることなどは決めています。 ―藤原さんご自身は、どのようにしてセントケア・グループに入職されたんですか? 藤原: 私の入職には、ちょっと変わった経緯があります。 私が訪問看護師になったのが32歳の時だったのですが、当時に勤めていたステーションが人員割れで閉鎖することになりました。 行き場のないお客様やスタッフを受け入れてくれてもらうため、同じエリア内のいくつかのステーションに連絡をしたところ、すぐに連絡をくれて、その日に会いに来てくれたのが、セントケアでした。 当時のセントケアはそのエリアでは訪問介護事業所しか運営していなかったのですが、訪問看護ステーションも立ち上げるということで、私が所長として入職することになりました。 その後、係長職や課長職を経て、現在は本社の訪問看護部門で統括次長をやっています。 ―本社の統括次長としてのミッションを教えてください。 藤原: 事業全体の中長期計画を立て基盤をつくるのが、本社の管理・企画部門の主な役割ですが、私自身は自社の訪問看護ステーションが安定できるようにサポートすることがミッションだと思っています。 特に魅力的な看護師にセントケアに来てもらって、長く働き続けていただくためにできることをやっていきたいですね。 ちなみに本社はとりまとめる役割なので、実際に事業を運営するのは各都道府県の子会社です。 本社の出した全体計画を各社が地域に合わせた形に落とし込んで、実行しています。介護や医療は地域ごとに状況が異なるので、それに沿って運営できた方がいいですからね。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)

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