コラム

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 新事業・事業構造の変革編~

第7弾は「新事業・事業構造の変革」についてお伝えします。まずは唐突ですが、中国唐の時代の詩人(白楽天)の詩の一節を紹介します。
 「野火焼不尽 春風吹又生
和訳すると、「野火がどんなに激しく燃えても、草を焼き尽くすことはできない。根さえしっかりとはっておけば、春風とともに、また新しい生命の芽を吹きだし、やがて緑の草原となえる」という意味合いになります。これは禅の教えでよく用いますが、経営者の中でもたいへん貴重な教えとして重宝されています。
環境が激変する昨今ですが、将来に向けてしっかりとした根を張ったブレない経営をする、ということを肝に銘じた上で本題に入りたいと思います。

新事業・事業構造の変革についての方針

ソフィアメディ創業者の水谷氏は、スタッフの実際の訪問現場、営業の活動現場で起こることをとにかく細かく丁寧に把握した上で、次々と対応・対策を打ち出し、お客様サービスの向上のためにストイックに改善・改変を繰り返していました。ただ、その間もひと時として新事業・事業構造の変革、将来への投資を怠ることもありませんでした。そのもととなる思想が前述の詩であり、以下の経営方針で示した内容でした。一部にはなりますが紹介します。
①会社は永続性のものである。何がどうあっても生き残らなければならない。いつでも将来の収益を確保するため、常に新事業を考え開発しなければならない。また、将来を予測して事業構造を変革しなければならない。慣れた仕事を手放したくない、変えたくないのが人情であるが、現状維持は変化に比べてリスクが大きい。環境が変化していく、将来の変革が予測される中、旧態依然を死守するのは自滅行為である。
※経営にとっての不変の真理は「変化すること」と水谷氏は明言します。変化が無くなった時、それは衰退だと認識してください。
②訪問看護サービスの実績データ統計を駆使して、必要なスキル、症例への対策等を明確にする。さらに症例・病状・時系列な成果等サービスのメニュー化を確立して、病院窓口、居宅介護支援、地域関係者、ご本人・ご家族にも、当事業所を選択する理由を明確にしていく。
※前回までのコラム「営業編」に通じる内容ですが、情勢・制度を知り、データを駆使しつつ、地域ニーズに寄り添ったサービスメニューを作り、存在意義を明確にすることが大事だと指導されました。
③経営は学問でも学歴でもない、成功や失敗の経験学である。本物の経営者の鉄則である。
※これも水谷氏の口癖の一つです。途中で辞めるから失敗になる、失敗をしながらも成功するまで続ければいい。耳にタコができるくらい指導されたのを覚えています。多くの著名経営者が「失敗から学ぶ」という主旨の名言・格言を残していますが、王道経営・健全経営を謳う水谷氏においても同様でした。王道経営・健全経営≠保守的、旧態依然(決してイコールではありません)、だということをぜひご認識の上、未来への投資にチャレンジしてください。
いかがでしょうか?前回コラムで「着眼大局着手小局」とお伝えしましたが、今回は「大局」の基本となる考え方について紹介しました。あとはこれらをどう具体的に示し、具現化するかが最重要です。
机上の空論、絵にかいた餅、どこかの首長の演説…計画を立案したらスピード感のある実践実務が無いと、このように言われてしまいそうです。(私はよく言われていました…苦笑)
次回も引き続き、水谷氏の著書(※1)には書かれていない内容を中心に、私の実体験も交えてお伝えしていきたいと思います。
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一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫
【 略歴 】
2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。
2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務

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