KDDIと情報通信研究機構(NICT)、NECソリューションイノベータは、高齢者向け対話AI(人工知能)システムを活用した介護モニタリングの実証実験を実施した。本プロジェクトは内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期に採択され、その支援の下で研究開発を進めている。

 介護モニタリングとは、ケアマネジャーが自宅などに訪問し高齢者に直接会って、健康状態・生活状況の変化を把握し、現在のケアプランが適切かどうか見直して改善する業務で、ケアマネジャーの業務全体の4分の1を占める。

 高齢者の適切なケアマネジメントに関する研究を行ってきた日本総合研究所の協力を得て、KDDIとNICT、NECソリューションイノベータが介護モニタリングの一部を代替するマルチモーダル音声対話システム(Multimodal Interactive Care SUpport System、MICSUS=ミクサス)を開発した。介護の専門家の知見を対話AIシステムに取り込んでおり、対話を通じて高齢者の健康状態や生活状況の変化についての情報を収集する。Webサイトの情報やニュース記事などを基にした雑談も可能だという。

実証実験の様子
実証実験の様子
(画像:NECソリューションイノベータ)
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 2022年6月28日から2023年1月28日まで実証実験を実施した。サービス付き高齢者向け住宅などの施設や自宅で生活する高齢者179人が、MICSUSが組み込まれたぬいぐるみ型の専用端末やスマートフォンに向かって計927回面談した。MICSUSを通じて取得した高齢者の情報をケアマネジャーが確認用ツールアプリから確かめることで、面談とその記録に要する業務時間を面談1回当たり平均7.0分から2.2分へと、約7割短縮することに成功した。

実証で使用した端末
実証で使用した端末
(画像:NECソリューションイノベータ)
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 研究代表であるKDDIは今後について、NICTとNECソリューションイノベータ、日本総研と協力して、本技術の社会実装に向け、さまざまなパートナーとの共同実証を実施していくと意気込む。