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インタビュー

一人開業から正規の訪問看護ステーションへ/第3回 訪問看護の1人開業・立ち上げ

渡部さんは訪問看護ステーション一人開業の後、2014年に現在のぷりけあ訪問看護ステーションを設立されました。第3回は、自費サービスも含めた幅広い支援を行うぷりけあ訪問看護ステーションの運営についてお伺いします。

地域での訪問看護におけるサービス継続のために

ぷりけあ訪問看護ステーションの立ち上げ経緯について教えてください。
渡部:
被災地特例の一人開業には期限が定められていて、生き残りの道として看護師2.5人以上の正規の訪問看護ステーションで継続するしかありませんでした。利用者さんもいましたので、ほかに選択肢がなかったんです。
ぷりけあ訪問看護ステーションの基本理念は、生まれてきてくれてありがとう、生きていてくれてありがとう、と言い合える社会の追求です。どんな病状であっても、どんな生活環境であっても、今生きているということ自体、その人ががんばって時間を積み重ねてきた証だと思うので…。それは利用者さんも、働く職員同士も同じです。
人にはみんな生きてきた歴史があって、その人をちゃんと理解するところから始めるという考え方を、訪問看護を通して社会に少しでも広めていきたい、という思いを込めて活動しています。特に石巻は震災で大きな被害を受けて、生き続けること自体がすごくしんどい時期をみんなで乗り越えてきた地域なので、お互いに思いやりを持って、自分たちのできることをやり続けていきたいと思っています。
地方は看護師が集まりにくいと言われていますが、スタッフはどのようにして集まってきたのでしょうか。
渡部:
訪問看護は未経験のスタッフがほとんどです。外来などでは患者さんと関わっていたけれど、家での生活が気になるとか、病院の外でももっと深く関わりたいという思いがあるスタッフが集まってくれました。現在のスタッフは、看護師6人、作業療法士(OT)が1人、事務1人です。みんな、もう病院勤務には戻れないと言っています(笑)。
一時期、人材紹介会社に頼んでいたこともありましたが、今はいい具合に知り合いからの紹介などが増えてきています。ほかのステーションの所長さんがそういう方法を取っていると聞いて、常に訪問先でも「知り合いに看護師さんいますか?」と聞いたりして、いい人とのつながりを作れるようにしています。こうした種まきのようなことが、少しずつ実を結んできているかもしれませんね。

利用者さんの生き方を支援する訪問看護の自費サービス

渡部:
現在の利用者さんは、訪問件数では介護保険と医療保険は5割ずつくらいです。(2020年12月時点)
がん末期の方や特別訪問看護指示書による点滴や褥瘡の処置、看取り、精神科や障がいのある方もいます。今は小児の利用者さんはいませんが、重症心身障害の20代の若い方もいます。
-自費サービスもされているそうですね。どのようなものでしょうか。
渡部:
今の介護保険や医療保険では2時間が上限なので、それ以上の時間が必要な場合には自費のサービスを紹介しています。
家族のレスパイトや旅行、買い物、また普段は療養型病院に入院している方が外出する際の付き添いなど、お金を払ってでも外に出たいという要望にお応えしています。石巻市外からも、地域内の訪問看護ステーションでは対応してくれる人がいなくて、前はボランティアさんにお願いしていたこともあるけれど、今はいないということで依頼を受けています。病気や障がいであきらめていたこともあったけれど、社会との関わりのため、自分がやりたいことのために、一歩を踏み出す…。こうした貴重な場面に立ち会えるのは看護師としての醍醐味だと思います。
こうしたニーズは、地域で利用者さんと長く関わっていれば、必然的に出てくるのではないでしょうか。利用者さん本人、それに家族も丸ごとサポートしようとなると、医療や治療をメインにした訪問だけではなく、利用者さんの人生のどこに看護師として関わるのか、ということが求められてくる気がします。
今はコロナ禍なので自粛していますが、本当はもっとやっていきたいですね。看護師はもっと患者さんと向き合いたいと思っている人も多いはず。看護師にはこんな世界もあるんだよ、こんな寄り添い方があるんだよと知ってもらいたいし、経験してもらいたいです。
提供サービス
病状の観察、悪化予防
血圧・体温・脈拍などのチェックをし、全身状態の把握。異常の早期発見
在宅療養上のケア
身体の清拭、洗髪・入浴介助、食事や排泄などの介助・指導
薬の相談・指導
薬の作用・副作用の説明、飲み方の助言、残薬の確認など
医師の指示による医療処置
点滴、膀胱留置カテーテル、胃瘻、インシュリン注射など
医療機器の管理
在宅酸素、点滴ポンプ、人工呼吸器などの管理
床ずれや皮膚トラブルの予防・処置
――
認知症や精神疾患のケア
家族の相談、対応方法に関する助言など
ご家族への介護支援・相談
介護方法の助言、不安の相談など
介護予防、リハビリテーション
――
ターミナルケア
がん末期や終末期を、ご自宅で過ごせるような支援
保険外自費サービス
長時間の外出や旅行の付き添い、介護家族のレスパイト等
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ぷりけあ訪問看護ステーション 代表取締役/保健師・看護師
渡部 あかね(わたなべ あかね)旧姓:佐々木
東日本大震災のボランティア活動で、医療者が地域の中に出向いていかなければ気づけ対応できないニーズが非常に多いことを経験。看護師として、本当に困っている人のそばに身を置いて関わっていきたいという思いから、被災地特例で一人開業し、その後2014年にぷりけあ訪問看護ステーションを開業。

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