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答えはスタッフの心の中にある(1on1ミーティング)

近年、主には大企業の人材育成の一環として、上司部下の間で行われている「1on1ミーティング」は、上司部下との関係性を高め、部下のやる気を引き出し、組織へのエンゲージメントを高めることなどによって離職率の低下に効果が出ています。
今回は、管理者が一人ひとりのスタッフとの関係の質を高める「1on1ミーティング」のやり方をお伝えしていきます。

1on1ミーティング

管理者として、日ごろからスタッフの方々と、どのようなコミュニケーションをとっているでしょうか。業務上の報告・連絡・相談はもとより、スタッフのその日の調子を確認する声かけや、時にはプライベートな話からちょっとした雑談まで、あらゆるコミュニケーションを心がけていらっしゃると思います。
管理者としてスタッフ全員と等しく、心理的安全な関係ができたら、それは仕事をお互い気持ちよく進める上で理想的な関係と言えます。
しかし、時として忙しくてミーティング時以外は話さない、ルーティーンの電話連絡で必要最低限のことしかやり取りしない、などコミュニケーションを取る時間がない場合もあるでしょう。
また、なかなか心が通わない相手だったり、気軽に話はできても肝心なことは言いにくかったり、人間関係のあんばいで仕事が前進しないこともご経験があるのではないでしょうか。
関係性を深めるためには、意図的にスタッフ一人ひとりとしっかり話す場を設ける必要があります。
そこでやっていただきたいのが「1on1ミーティング」です。
これは評価面談や、業務相談の場ではありません。時間をとって、一対一でスタッフの思いや価値観、今後のキャリアなどを聴く場です。

スタッフと関わる時の三つの「耳」

「1on1ミーティング」はあくまで話し手が、自分の考えや思いを掘り下げ、可能性に気づき、行動につなげることが大切です。基本的な考え方としては「答えは話し手の中にある」ので、アドバイスはせず、問いかけることでコミュニケーションを取っていきます。
そこで大切なのが、傾聴する技術です。ここでは傾聴する技術について、三つの「耳」を用いて説明します。

①事柄を聞く耳

一つ目はスタッフの話す内容にしっかりと耳を傾ける「事柄を聞く耳」です。
普段は忙しく、業務以外の話を聞けていない方もいるかもしれませんが、「1on1ミーティング」ではしっかり時間をとって話を聞いて行きます。
何か相談に乗るときも、プライベートの内容でもスタッフが話す事にきちんと耳を傾け受け止めましょう。

②思いや価値観を聴く耳

二つ目は、その事柄の奥にある「思いや価値観を聴く耳」です。
スタッフがなぜそのことを話してくれるのでしょうか。スタッフが普段から大事にしている価値観が潜んでいないでしょうか。
本当の思いや本音、本人も気づいていない本心がその奥にないでしょうか。管理者としてはそこにもしっかり耳を傾けていきます。
「Aさんが仕事を通じて、大事にしていることは何ですか?」
「そのことを通じて気づいたことは、どんなことですか?」
「Aさんは粘り強く仕事をすることを、大事にしていますね」
など、話されている事象の言葉にならない言葉にも注目するような感じです。「聞く」が「聴く」となったように、耳だけではなく心で聴いていきます。

③その人の成長を願う耳

三つ目は、「その人の成長を願う耳」です。
これは少し抽象的かもしれませんが、この次に触れる、「聴く姿勢」にも通ずる「常に相手の可能性に耳をそば立てる」聴き方です。
この人の可能性はなんだろう、この組織の未来とこの人の未来はどう交わるのだろう、この人はどんな未来に向かっていきたのだろう。こんな思いを持って相手の話を聴いていきます。

大事なのは管理者の聴く心の姿勢

普段一緒に働いているとつい、スタッフに対しても色々な意味での「色メガネ」をかけてみてしまいます。そのメガネをかけたまま「1on1」を行うと、安心安全な場が作りにくく、スタッフの本心が聴きだせなくなります。
「1on1」の時に大事なのは、管理者としての評価判断は一旦脇に置き、スタッフの人そのものに対して焦点を当て、好奇心を持って聴くことです。上述の「その人の成長を願う耳」で聴くのです。
そしてそれは、管理者としての普段からの自身の「あり方」と関係します。
パーソナルコーチングはあくまでコミュニケーションの行動形態の一つです。ですが、コーチがクライアントの成長を願わず、自分のエゴを押し付けてしまっていたら、相手をコントロールしたり、言うことをきかせていたりすることで、「クライアントの中にある答え」を引き出せなくなってしまうのです。
管理者として、スタッフ1人ひとりにどんな願いを持っているでしょうか。「自分のために」「組織のために」の前に、そのスタッフ自身がどのように成長してくれたら嬉しいでしょうか。
その願いを持つ管理者のあり方は、必ずスタッフ本人に言わずもがな伝わります。
その上でさらにスタッフのことを深く知るために「1on1」などの丁寧で意図的なコミュニケーションが必要になります。
このようなコミュニケーションを続けることで成功循環モデルの「関係の質」が高まっていきます。

OfficeItself 代表 コーチ・ファシリテーター
山縣いつ子

2008年から企業や医療従事者向けにコーチングや研修を提供。クライアントは中間管理層を始め、女性管理者も多く、ベンチャーの執行役員、医療従事者、NPO組織の代表など幅広く担当している。

【コラムご意見番】 ~訪問看護ステーション管理者 ぴあの目~

コラムを読んで、私は思わず「う~ん」と唸ってしまいました。
管理者として自分自身コミュニケーションを振り返ってみると、特に「思いや価値観を聴く耳」と「その人の成長を願う耳」を、私は本当に持っていただろうか。持っている気になっていただけだったかも・・・と反省しました。
「思いや価値観を聞く耳」についての話です。
私にはとても信頼を置いているスタッフがいて、私が不在の時なども安心してそのスタッフにステーション運営を任せることができていました。
不在時のステーションの状況報告や提案なども積極的にしてくれ、コニュニケーションも十分取れていると思っていたので、彼女にステーションのリーダー昇格を打診したら、引き受けてくれると思っていました。
しかし、実際にリーダー昇格の打診をしたところ「管理者不在の時は同じ職場で働く仲間としてサポートしただけであり、リーダーなどの管理業務には興味がない。私はこの先も看護師として学んでいきたい」と言われてしまいました。
リーダーの打診をする以前から、リーダーの役割を担ってくれていたので、私は勝手に「彼女はリーダーになりたいに違いない」と思い込み、断られる事は想定していませんでした。
「思いや価値観を聞く耳」をもって「1on1ミーティング」をしていたらこのような事態は防げたのではないかと思います。
仕事ができるからリーダーになって欲しいという思いは、管理者である私の一方的な思いであり、スタッフが仕事に対してどのように向き合っているかまで聞くことができていませんでした。
「その人の成長を願う耳」についても、思い出すエピソードがあります。あるスタッフが「みんなのように成長できる気がしません」と言って退職してしまったことがありました。
スタッフ全員が同じような手技を身につけていくことが当たり前ではなく、キャパシティを超えた努力をしているスタッフの状況を把握できなかったことに問題がありました。
「成長を願う耳」をもってスタッフの勤務状況やケアの内容、スタッフの成長過程について向き合っていれば、このスタッフは違った成長を遂げたのではないかと今でも後悔することがあります。
このコラムを読み、私は実際にすべてのスタッフに平等に「1on1」を実施するようになりました。するとステーションの人間関係も良好になり、業務に関するディスカッションも頻繁に行われるようになりました。
まだ聴き手として未熟な部分も多いですが、「1on1」の中で仕事や生活で大切にしていることを聴くことで、生活の大部分を占める「仕事」の場を、より過ごしやすい環境にできるのではないかと感じています。

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