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夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント
夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント
コラム
2026年9月8日
2026年9月8日

夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント

夏インフルエンザとは、夏にインフルエンザウイルスへ感染し、発熱、咳、のどの痛み、倦怠感などがみられる状態を指して使われる言葉です。正式な病名として「夏インフルエンザ」があるわけではなく、夏に発症するインフルエンザを分かりやすく表した呼び方です。 インフルエンザは冬に流行するイメージが強いですが、夏でも感染することがあります。夏風邪や熱中症、新型コロナウイルス感染症などと症状が似ていることもあるため、体調の変化を具体的に観察することが大切です。この記事では、夏インフルエンザの症状、原因、見分け方、受診の目安、在宅での観察ポイントを解説します。 夏インフルエンザとは 夏インフルエンザとは、夏に発症するインフルエンザのことです。厚生労働省によると、日本では例年12月〜3月がインフルエンザの流行シーズンですが、ウイルスは世界中で流行しており、地域によっては年間を通して感染がみられることがあります。温帯地域では冬に流行しやすく、熱帯地域では年間を通じて発生することがあります。 夏にインフルエンザがみられる背景の一つに、南半球での流行があります。東京都健康安全研究センターによると、日本を含む北半球が夏の季節のとき、南半球は冬にあたり、インフルエンザが流行する季節を迎えています。 「夏だからインフルエンザではない」とは言い切れません。高熱、強い倦怠感、関節痛、咳などがある場合は、季節に関係なくインフルエンザを含む急性呼吸器感染症を考える必要があります。 夏インフルエンザの症状 夏インフルエンザの症状は、冬にみられるインフルエンザと大きく変わりません。突然の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感に加え、咳、のどの痛み、鼻水などの呼吸器症状がみられることがあります。 主な症状には、以下があります。 発熱 悪寒 頭痛 関節痛 筋肉痛 強い倦怠感 咳 のどの痛み 鼻水 なお、悪心・嘔気や下痢などの消化器症状は、成人でみられることもありますが、特に小児で多いとされています。 多くの場合、症状は3〜7日で軽快に向かいますが、特に高齢者や慢性肺疾患の方では、咳やだるさが2週間以上続くこともあります。また、高齢者では発熱がはっきりしないことや、意識・行動の変化、食欲低下といった典型的でない形で現れることもあります。合併症として肺炎などが起こる場合もあるため、高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患のある方は特に注意が必要です。 夏風邪や熱中症との違い 夏インフルエンザは、夏風邪や熱中症と症状が似ていることがあります。発熱、だるさ、頭痛などは共通してみられるため、症状だけで見分けるのは難しい場合があります。 夏風邪では、のどの痛み、咳、鼻水、下痢、口の中の水疱、発疹などがみられることがあります。一方、インフルエンザでは、急な高熱、強い倦怠感、関節痛、筋肉痛が目立つことがあります。 熱中症では、暑い環境にいた後に、めまい、頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、体温上昇、意識の変化などが起こることがあります。咳やのどの痛みがある場合は、感染症の可能性もあわせて考えます。 ただし、家庭や訪問看護の現場で病名を断定することはできません。発熱の経過、呼吸器症状、周囲の流行状況、水分摂取量、尿量、意識状態をあわせて確認し、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。 うつる期間と感染対策 インフルエンザは、咳やくしゃみのしぶき、ウイルスがついた手を介して広がることがあります。厚生労働省によると、発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。発症前後から周囲へ感染を広げる可能性があるため、症状があるときは無理に出勤や登校をしないことが大切です。感染対策では、以下を意識します。 手洗いを行う 咳エチケットを守る 不織布製マスクを適切に使う 室内を換気する タオルの共有を避ける 体調不良時は人との接触を控える 十分な休養を取る 咳や痰などの症状がある場合は、周囲への感染を防ぐため、マスクの着用を含む咳エチケットが重要です。また、手のひらで咳やくしゃみを受け止めたときは、すぐに手を洗いましょう。 治療の基本と抗ウイルス薬 インフルエンザの治療では、症状や重症化リスクに応じて抗インフルエンザ薬が使われることがあります。発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱期間は通常1〜2日短縮されるとされ、重い合併症を防ぐことにつながる場合もあります。 一方で、軽症で重症化リスクが低い場合は、安静、水分補給、解熱鎮痛薬などによる対症療法で経過をみることもあります。自己判断で以前に処方された薬を使ったり、薬を途中で中止したりせず、医師や薬剤師の指示に従いましょう。 発熱時は汗で水分が失われやすく、夏は暑さによる脱水も重なりやすい時期です。水分が取れているか、尿量が減っていないかを確認します。心不全や腎機能低下などで水分制限がある方は、自己判断で水分量を増やさず、医師や看護師に確認しましょう。 何科を受診する?受診の目安 夏インフルエンザが疑われる場合は、内科、小児科、呼吸器内科などで相談できます。かかりつけの病院があれば、主治医に相談すると日頃の状況と合わせて診察してもらうことができます。受診前には、発熱や咳があることを医療機関へ伝え、受診方法を確認すると安心です。以下のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 高熱が続く 呼吸が苦しい 咳が止まらない 胸の痛みがある 水分が取れない 尿量が少ない ぐったりしている 意識がぼんやりしている けいれんがある 乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方に症状がある 厚生労働省も、高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪い場合は、早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。 訪問看護での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、発熱の有無だけでなく、呼吸状態や脱水のサイン、普段との違いを確認します。 観察したいポイントは、以下のとおりです。 発熱の有無と出現時期 最高体温 咳や痰の有無 のどの痛みの有無 息苦しさの有無 呼吸数 SpO2 食事量 水分摂取量 尿量や尿の回数 倦怠感の程度 意識状態 周囲の感染症の流行状況 服薬状況 基礎疾患の有無 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。「昨日18時ごろから発熱あり。最高体温38.9℃。咳とのどの痛みあり。水分は少量ずつ摂取可能。尿は朝から1回。家族にインフルエンザ陽性者あり。」「発熱2日目。体温39.0℃。倦怠感が強く、食事摂取は数口程度。SpO2 94%。呼吸苦の訴えはないが、普段より声掛けに対して反応が遅い。主治医へ報告。」このように、「いつから」「どの症状が」「普段と比べてどう違うか」を整理すると、医師に状態を伝えやすくなります。 訪問看護でできる予防のポイント 夏インフルエンザの予防でも、基本は冬のインフルエンザ対策と同じです。手洗い、咳エチケット、換気、十分な休養、栄養摂取、人混みを避けることなどが有効と考えられています。 予防のポイントは、以下のとおりです。 外出後や食事前に手を洗う 咳やくしゃみがあるときは口と鼻を覆う 室内をこまめに換気する 睡眠不足を避ける 体調不良時は無理をしない 人混みでは感染対策を意識する 流行状況に応じてワクチン接種を検討する ワクチンは、発症を完全に防ぐものではありませんが、重症化予防につながることがあります。特に高齢者や基礎疾患のある方は、接種時期や対象について、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。 まとめ 夏インフルエンザは正式な病名ではなく、夏に発症するインフルエンザを指す言い方です。インフルエンザの流行の中心は冬ですが、季節を問わず感染することがあります。主な症状は、発熱、悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、強い倦怠感、咳、のどの痛みなどです。ほかの夏の体調不良と区別しにくいため、症状だけで判断せず、経過や周囲の流行状況もあわせて確認しましょう。訪問看護では、発熱、呼吸状態、SpO2、水分摂取量、尿量、意識状態、普段との違いを観察することが大切です。高熱が続く、息苦しい、水分が取れない、ぐったりしている、意識がはっきりしない場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● WHO:「Influenza (seasonal)」.https://www.who.int/health-topics/influenza-seasonal,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2025.html,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「令和6年度インフルエンザQ&A」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「インフルエンザ(総合ページ)」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Clinical Signs and Symptoms of Influenza」.https://www.cdc.gov/flu/hcp/clinical-signs/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Treatment of Flu」.https://www.cdc.gov/flu/treatment/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Preventing Seasonal Flu」.https://www.cdc.gov/flu/prevention/index.html,2026/9/7閲覧 ● 東京都健康安全研究センター:「世界でのインフルエンザの発生状況」.https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_virus/influenza_world/,2026/9/7閲覧● 東京都多摩小平保健所:「【医療機関・学校・社会福祉施設等の皆様へ】平常時対策について」.https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamakodaira/kansen/heijojitaisaku,2026/9/7閲覧● 厚生労働省:「夏の感染症対策」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kansentaisaku_summer.html,2026/9/7閲覧● 厚生労働省:「職場でおこる熱中症」.https://neccyusho.mhlw.go.jp/heatstroke/,2026/9/7閲覧

帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説
帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説
コラム
2026年9月8日
2026年9月8日

帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説

帯状疱疹とは、体の片側に痛みやピリピリした違和感が出たあと、赤い発疹や水疱が帯状に現れる病気です。原因は、水痘と同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(以下varicella zoster virus;VZV)です。子どものころなどに水痘にかかったあと、体内に潜んでいたウイルスが再び活動することで発症します。帯状疱疹は、早めに治療を始めることで症状の長期化や合併症のリスクを減らせる可能性があります。この記事では、帯状疱疹の症状、原因、うつる可能性、治療、訪問看護での観察ポイントを解説します。 帯状疱疹とは 帯状疱疹は、VZVによって起こる皮膚疾患です。VZVは、初めて感染したときに水痘を発症します。その後、ウイルスは神経節に潜伏し、加齢や疲労、病気、免疫機能の低下などをきっかけに再活性化することがあります。帯状疱疹は、この再活性化によって起こります。帯状疱疹の特徴は、体の左右どちらか一方に、神経の走行に沿って痛みや発疹が出ることです。胸や背中、腹部に出ることが多いですが、顔や首、腕、足に出ることもあります。また、皮膚症状だけでなく、神経痛をともなう点が特徴です。 帯状疱疹の初期症状 帯状疱疹の初期症状では、発疹が出る前に痛みや違和感が現れることがあります。東京都感染症情報センターでは、通常、皮膚症状の出現2〜3日前から、かゆみや痛みが出現し、初期には皮膚が赤く腫れると説明しています。初期症状としては、以下のようなものがあります。 皮膚がピリピリする チクチクした痛みがある かゆみがある 触れると痛い 体の片側だけに違和感がある 発赤が出る 倦怠感の有無 軽い発熱がある 初期には発疹がまだ目立たないため、筋肉痛、肩こり、腰痛、虫刺され、かぶれなどと間違えられることがあります。特に、片側だけにピリピリした痛みが続く場合や、その後に赤い発疹や水疱が出てきた場合は、帯状疱疹の可能性があります。 帯状疱疹の症状 帯状疱疹では、痛みや違和感のあとに、赤い発疹や水疱が現れます。水疱は神経に沿って帯状に並ぶことが多く、数日かけて増える場合があります。 主な症状は以下のとおりです。 体の片側に出る痛み 赤い発疹 水疱 かゆみ 皮膚の灼熱感 触れるだけで痛い感覚 発熱 頭痛 倦怠感 多くの場合は適切な治療によって改善しますが、強い痛みを伴うことがあります。また、免疫機能が低下している方などでは重症化し、まれに重篤な合併症を起こすことがあります。最も一般的な合併症として帯状疱疹後神経痛が知られており、発疹が治った後も痛みが残ることがあります。 顔に帯状疱疹が出た場合は、目の症状に注意が必要です。目の周囲に発疹がある、目が痛い、見えにくい、まぶしいなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 帯状疱疹の原因 帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化です。子どものころなどに水痘にかかると、症状が治った後もウイルスは体内の神経節に潜んでいます。その後、免疫機能が低下したときに再び活動し、神経に沿って皮膚症状や痛みを起こします。 帯状疱疹のきっかけになりやすい要因には、以下があります。 加齢 過労や強いストレスなどによる免疫機能の低下 がんなど、免疫機能に影響する基礎疾患 免疫を抑える薬の使用 手術や放射線治療 高齢者や基礎疾患のある方では、症状が重くなることがあります。訪問看護や在宅ケアでは、皮膚の症状だけでなく、痛みの強さ、食欲、睡眠、発熱、活動量の変化もあわせて確認することが大切です。 帯状疱疹はうつる? 帯状疱疹そのものが人から人へうつるわけではありません。ただし、VZVへの免疫がない人にウイルスが感染すると、水痘を発症する可能性があります。主に水疱の内容液との接触などによって感染するため、水疱が痂皮化するまでは感染対策が必要です。感染を広げないためには、以下の点に注意します。 水疱をガーゼや衣類で覆う 発疹を触らない 触れたあとは手を洗う タオルを共有しない 水疱が痂皮化するまで接触に注意する 妊婦、乳幼児、免疫機能が低下している方との接触に注意する 訪問看護では、利用者さん本人が発疹を掻把してしまうこともあります。掻把による細菌感染を防ぐためにも、爪を短くし、患部を清潔に保つことが大切です。 帯状疱疹の治療 帯状疱疹の治療では、早期に抗ウイルス薬による治療を始めることで、皮膚症状の治癒を促し、急性期の痛みを軽減することが期待できます。 治療で使われることがある薬には、以下があります。 抗ウイルス薬 解熱鎮痛薬 神経痛に対する薬 外用薬 皮膚の二次感染に対する薬 帯状疱疹は、発症から早い段階で治療を始めることが重要です。片側だけの痛みや発疹、水疱が出た場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関へ相談しましょう。 帯状疱疹後神経痛とは 帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia:PHN)とは、帯状疱疹による皮疹が治った後も痛みが続き、一般に3か月以上持続する状態を指します。痛みの感じ方は人によって異なり、焼けるような痛み、刺すような痛み、衣類が触れるだけで痛い感覚などがみられることがあります。日本皮膚科学会によると、帯状疱疹後神経痛は、60歳以上の方、発疹が重かった方、初期の痛みが強かった方に起こりやすいとされています。痛みが長引くと、睡眠、食事、活動量、気分にも影響することがあります。訪問看護では、痛みの部位、強さ、持続時間、生活への影響を確認し、必要に応じて医師へ報告します。 帯状疱疹ワクチン 厚生労働省は、帯状疱疹ワクチンによって帯状疱疹やその合併症を予防できると説明しています。また、2025年度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました。なお、2025年度から2029年度までの5年間は経過措置として、その年度内に70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方も対象です。また、60〜64歳で、HIVによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方も対象となります。日本で定期接種に使われる帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンがあります。接種対象、接種回数、接種できない方、注意が必要な方はワクチンによって異なります。基礎疾患がある方や免疫抑制剤の投与を受けている方は、接種前に主治医へ相談しましょう。 訪問看護での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、帯状疱疹の症状を早く見つけ、痛みや感染対策、生活への影響を確認することが大切です。確認したいポイントは、以下のとおりです。 痛みがいつからあるか 痛みの部位 痛みの強さ 体の片側に出ているか 発赤や水疱の有無 発疹の広がり 発熱の有無 食事量や水分摂取量 睡眠や活動への影響 掻把の有無 目の周囲の症状 妊婦、乳幼児、免疫機能が低下している方との接触状況 記録する場合は、以下のように書くと共有しやすくなります。 「昨日から右胸部にピリピリした痛みあり。本日、同部位に赤い発疹と小水疱を確認。発熱なし。衣類が触れると痛みあり。食事摂取は普段どおり。」 「左額からまぶた周囲に発疹あり。目の痛みと違和感の訴えあり。主治医へ相談し、受診することになった。」 このように、痛みの部位、左右差、発疹の状態、目の症状の有無を具体的に伝えることが大切です。 受診を考えたい症状 帯状疱疹が疑われる場合は、できるだけ早めに医療機関へ相談しましょう。特に、以下のような場合は注意が必要です。 体の片側に強い痛みがある 赤い発疹や水疱が出てきた 顔や目の周りに発疹がある 目の痛みや見えにくさがある 発熱や強いだるさがある 痛みで眠れない 発疹が広範囲に広がっている 免疫機能が低下している 高齢者で症状が強い 妊婦や乳幼児と接触する機会がある 額・まぶた・鼻など目の周囲に帯状疱疹が疑われる発疹がある場合は、眼症状がなくても早めに医療機関へ相談しましょう。 まとめ 帯状疱疹は、水痘と同じVZVが再び活動することで起こる病気です。初期症状として、体の片側にピリピリした痛みや違和感が出ることがあり、その後、赤い発疹や水疱が帯状に現れます。帯状疱疹は、早期に治療を始めることで、症状の長期化や帯状疱疹後神経痛などの合併症を緩和できる可能性があります。片側だけの痛み、発疹、水疱がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。訪問看護では、痛みの部位、発疹の広がり、発熱、食事や睡眠への影響、目の症状の有無を観察することが大切です。ワクチンによる予防も選択肢のひとつであり、対象年齢の方や基礎疾患がある方は、主治医に相談して検討しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● 厚生労働省:「帯状疱疹ワクチン」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/index.html,2026/9/7閲覧● 国立健康危機管理研究機構:「水痘・帯状疱疹の動向とワクチン」.https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-iasrtpc/8223-462t.html,2026/9/7閲覧● 東京都感染症情報センター:「帯状疱疹 Shingles(Herpes Zoster)」.https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/herpes_zoster/,2026/9/7閲覧● CDC:「Shingles(Herpes Zoster)」.https://www.cdc.gov/shingles/about/index.html,2026/9/7閲覧● CDC:「Shingles Vaccine Recommendations」.https://www.cdc.gov/shingles/hcp/vaccine-considerations/index.html,2026/9/7閲覧● 日本皮膚科学会:「Q11 帯状疱疹とは何ですか?」.https://qa.dermatol.or.jp/qa5/q11.html,2026/9/7閲覧● 日本皮膚科学会:「Q20 帯状疱疹後神経痛とはどういうものですか?」.https://qa.dermatol.or.jp/qa5/q20.html,2026/9/7閲覧

「飛行機で地元へ帰りたい」を叶えるには? 多くの制限の中で安全を組み立てる民間救急の力
「飛行機で地元へ帰りたい」を叶えるには? 多くの制限の中で安全を組み立てる民間救急の力
コラム
2026年9月1日
2026年9月1日

「飛行機で地元へ帰りたい」を叶えるには? 多くの制限の中で安全を組み立てる民間救急の力

「北海道や九州にいる家族の元へ移りたい」「離島の自宅へ帰りたい」。そんな遠方への長距離搬送において、大きな選択肢となるのが「飛行機」です。 移動時間を劇的に短縮できる一方で、機内へのストレッチャー搬入や医療機器の持ち込みには、航空会社や空港との極めて緻密な事前調整が求められます。最終回となる今回は、数ある搬送の中でも最も難易度が高いとされる「飛行機搬送」の舞台裏に迫ります。 執筆:藤 健二郎(とう けんじろう)社会人経験を経て看護師となり、済生会福岡総合病院の救命救急センターで勤務。重症患者の看護に従事した後、大学院で看護師のストレスに関する研究を行い、急性・重症患者看護専門看護師を取得。現在は東京女子医科大学病院CCUでの臨床と並行し、ケアプロ株式会社 交通医療事業部長として、重症患者搬送や外出支援など「医療×移動」の分野で事業を展開している。■ケアプロ株式会社「ドコケア」:https://dococare.com/transport民間救急とは?緊急性の低い患者の搬送を行う民間サービスのこと。多くは、消防庁の認可を受けて「患者等搬送事業(一般乗用旅客自動車運送業)」を行っている。 遠方への搬送では、飛行機が必要になることがある 長距離搬送では、車両や新幹線だけでなく、”飛行機”を利用するケースもあります。 たとえば、北海道や九州、離島など、車両や新幹線では移動時間が長くなりすぎる場合、患者様の身体的負担を考慮して、飛行機搬送を選択することがあります。 一方で、飛行機搬送は、通常の航空券を予約して乗るだけでは成立しません。ストレッチャーで搭乗する場合、機内の座席を複数席使用する必要があります。 また、酸素、吸引器、SpO₂モニターなどの医療機器を持ち込む場合は、事前に航空会社へ機器の種類や型式を申請し、使用可否を確認する必要があります。 弊社の事例ですが、東京から北海道への搬送において、気管切開があり、酸素投与と頻回な吸引が必要な患者様に対して、飛行機搬送を選択しました。新幹線や車両では移動時間が10時間を超えることや、乗り換えの際の人員確保・リスク管理が難しいと判断したためです。 飛行機搬送では、診断書・機器申請・空港手続きが必要になる 飛行機搬送で重要になるのは、航空会社との事前調整です。まず、希望する便に空きがあるかを確認します。そのうえで、ストレッチャー対応が可能か、必要な座席数を確保できるかを確認します。 ストレッチャー搬送では、患者様が横になった状態で搭乗するため、通常より多くの座席を使用します。そのため、便に空席があっても、必要な座席数をまとめて確保できなければ搬送は成立しません。 また、航空会社指定の診断書や同意書が必要になることがあります。医師に診断書の作成を依頼し、予約番号や使用予定の医療機器情報を病院側と共有するなど、連携を同時に進めます。 持ち込む医療機器についても、人工呼吸器、吸引器、SpO₂モニターなどの型式を確認し、航空会社へ事前に申請します。 なお、バッテリーの扱いや機内電源の使用可否なども確認が必要ですが、基本的には、搬送車両のように自由に電源を使えるわけではないため、機内で何ができて、何ができないかを事前に把握しておくことが欠かせません。 さらに、ストレッチャーの患者様を搭乗させる場合、空港の制限区域に車両で入ることがあります。 その際には、車両の車検証やドライバーの免許証情報を事前に提出し、空港側の確認を受ける必要があります。 空港に到着してから考えるのではなく、病院、航空会社、空港、搬送チームが事前に情報を共有し、当日の流れを組み立てておくことが重要です。 多くの制限の中で、安全な搬送を組み立てる 飛行機搬送では、病院から空港、空港内、機内、到着空港、搬送先まで、複数の場面を切れ目なくつなぐ必要があります。 病院を出発する時間、空港到着時間、手荷物検査、制限区域への入場、機体近くでの移乗、機内への搭乗、到着後の介護タクシーとの合流。そのすべてが、航空会社や空港の運用時間に合わせて進みます。 ストレッチャー搬送では、出発予定時刻のかなり前から空港での手続きが始まります。医療機器の確認、手荷物検査、車両やドライバーの確認、制限区域内での移動など、通常の搭乗とは異なる工程が多くあります。 また、機内では使える医療機器や酸素に制限があります。地上の搬送車両のように、必要な機器を自由に積み込めるわけではありません。 だからこそ、飛行機搬送では、患者様の状態だけでなく、航空会社のルール、空港内の動線、機内で使用できる医療機器、酸素の条件、到着後の搬送体制まで確認し、その制限の中で安全な搬送計画を立てる必要があります。 飛行機搬送は、単に遠くへ早く移動するための手段ではありません。限られた条件の中で、医療的な安全を守りながら、患者様とご家族の希望する場所へつなぐための搬送です。 私たちはこれからも、遠方への転院や帰郷を希望される患者様とご家族に対し、医療と移動をつなぐ選択肢を丁寧に提供していきます。

夏風邪とは?症状・原因・治し方を解説
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コラム
2026年8月25日
2026年8月25日

夏風邪とは?症状・原因・治し方を解説

夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称です。代表的なものに、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などがあります。子どもに多いイメージがありますが、大人がかかることもあります。 夏風邪では、発熱、のどの痛み、咳、鼻水、口の中の水疱、発疹、目の充血、下痢など、原因となるウイルスによってさまざまな症状がみられます。この記事では、夏風邪の主な症状、原因、治し方、受診の目安、在宅での観察ポイントを解説します。 夏風邪とは 夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称で、医学的にひとつの病名を指すものではありません。夏場にみられる発熱、のどの痛み、咳、鼻水、下痢、発疹などを伴うウイルス感染症を指して使われることがあります。 厚生労働省は、「夏かぜ」といわれる感染症として、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などを挙げています。また、夏風邪は子どもがかかるものと思われがちですが、原因となるウイルスには多くの種類があり、1シーズンに何回もかかる大人も少なくないとしています。 今回紹介する手足口病やヘルパンギーナはエンテロウイルス、咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因です。いずれも基本的には症状に応じた治療が行われます。ただし、高熱が続く、水分が摂れない、ぐったりしているなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 夏風邪の主な症状 夏風邪の症状は、原因となるウイルスや病気によって異なります。よくみられる症状には、以下があります。 発熱 のどの痛み 咳 鼻水 頭痛 倦怠感 口の中の水疱 手足や口まわりの発疹 目の充血 下痢 食欲低下 夏風邪は、冬の風邪と比べて、口の中の水疱、手足の発疹、目の症状、胃腸症状が目立つことがあります。特に子どもでは、のどや口の痛みによって水分や食事を摂りにくくなることがあるため、脱水症に注意が必要です。 夏風邪の代表的な病気 手足口病 手足口病は、口の中、手のひら、足の裏などに水疱性の発疹がみられるエンテロウイルスによる感染症です。厚生労働省によると、国内では毎年夏を中心に発生し、7月下旬に流行のピークを迎えます。 3~5日の潜伏期間を経て、口の中や手のひら、足の裏などに2~3mmの水疱性の発疹が生じます。発熱は38℃以下のことが多く、ほとんどの発病者は、3~7日で治るといわれています。 症状は軽く済むこともありますが、口の中の痛みによって食事や水分が摂りにくくなる場合があり、まれに髄膜炎、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺などの合併症により、重症化することがあります。 ヘルパンギーナ ヘルパンギーナは、発熱とのどの痛み、のどの奥の水疱を特徴とする夏風邪の一種です。乳幼児を中心に夏に流行し、主にコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスが原因となります。厚生労働省によると、毎年5月ごろから患者が増え始め、7月ごろにピークを迎えます。その後、8月ごろから減少していきます。 感染してから2〜4日後に突然の発熱が起こり、その後、のどの痛みや水疱が現れます。発熱は1〜3日続き、食欲不振、全身のだるさ、頭痛などを伴うことがあります。 ヘルパンギーナでは、のどの痛みが強く、水分を摂ることを嫌がる場合があります。特に小児では、脱水症、熱性けいれん、まれに髄膜炎や心筋炎などに注意が必要です。 咽頭結膜熱 咽頭結膜熱は、発熱、のどの痛み、目の充血などがみられる感染症です。プール熱とも呼ばれることがあります。原因はアデノウイルスで、飛沫感染や接触感染によって広がります。厚生労働省によると、通常6月ころから徐々に流行しはじめ、7~8月にピークとなります。 咽頭結膜熱では、38〜40℃の高熱、のどの痛み、結膜充血、目の痛みなどがみられることがあります。高熱が5日前後続く場合もありますが、多くは自然に回復します。吐き気や頭痛が強かったり、咳が激しかったりするときは、早めに医療機関に相談することが推奨されています。 夏風邪は大人にもうつる? 夏風邪は子どもだけの病気ではありません。原因となるウイルスには多くの種類があるため、大人も感染することがあります。 大人の夏風邪では、発熱、のどの痛み、倦怠感、咳、鼻水、下痢などがみられます。仕事や家事で休みにくい場合でも、発熱や強い倦怠感があるときは無理をしないことが大切です。 また、大人が感染して症状が軽くても、家庭内で子どもや高齢者にうつることがあります。手洗い、咳エチケット、タオルの共有を避けることなど、基本的な感染対策を続けましょう。 夏風邪は何日で治る? 夏風邪が何日で治るかは、原因となる感染症や体調によって異なります。軽い風邪症状であれば数日から1週間程度で改善することがありますが、咽頭結膜熱のように高熱が数日続く場合もあります。 ヘルパンギーナでは、発熱は1〜3日続くことが多く、一般的には経過が良好とされています。一方、手足口病では、口の中の痛みや発疹がしばらく残ることがあります。 「熱が下がったから、すぐに普段どおりの生活に戻ってよい」と考えるのではなく、食事や水分が摂れているか、尿量が戻っているか、体力が回復しているかも確認することが大切です。 夏風邪の治し方 夏風邪の多くはウイルス感染症のため、治療は症状をやわらげる対症療法が中心です。自宅では、休養、水分補給、室温調整、食べやすい食事を意識します。 のどの痛みが強い場合は、冷たい飲み物、ゼリー、スープなど、飲み込みやすいものを少量ずつ摂るとよいでしょう。酸味の強い飲み物や熱い食べ物は、口の中やのどの痛みを強めることがあります。 発熱や痛みに対しては、医師や薬剤師に相談のうえ、解熱鎮痛薬を使うことがあります。小児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方、腎機能や肝機能に不安がある方は、自己判断で薬を使わず、医師や薬剤師に確認しましょう。 また、下痢が強い場合や長引く場合は、自己判断で市販薬を使用せず医師や薬剤師に相談しましょう。 受診を考えたい症状 夏風邪は自然に回復することもありますが、重症化や脱水症に注意が必要です。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 高熱が続く 水分がほとんど摂れない 尿量が明らかに少ない ぐったりしている 呼びかけへの反応が弱い 呼吸が苦しそう けいれんがある 強い頭痛がある 首を曲げにくい 嘔吐を繰り返す 目の痛みや充血が強い 乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方に症状がある 厚生労働省は、発熱や咳に加えて、呼吸が苦しい、食事や水分が摂取できないといった症状がみられた場合は、すぐに医療機関に相談するよう呼びかけています。 在宅ケアでは、いつもの様子との違いも重要です。熱の高さだけでなく、顔色、反応、食事量、水分摂取量、尿量、睡眠の様子をあわせて確認します。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、病名を決めつけるよりも、症状の経過と全身状態を具体的に観察することが大切です。 確認したいポイントは、以下のとおりです。 発熱が始まった日時 最高体温 咳や鼻水の有無 のどの痛みの程度 口の中の水疱や潰瘍の有無 手足や口まわりの発疹の有無 目の充血や目やにの有無 下痢や嘔吐の有無 食事量 水分摂取量 尿量や尿の回数 家族や園、学校、施設での流行状況 普段の状態との違い 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。 「昨日〇時ごろから発熱。最高体温38.8℃。のどの痛みが強く、水分摂取は少量。口腔内奥に小さな水疱のようなものを認める。尿は朝から1回のみ。」 「本日朝から発熱と目の充血あり。体温39.0℃。のどの痛みあり。食事は半量、水分は摂取可能。家族内に同様症状なし。」 このように、「いつから」「どの症状が」「どの程度あるか」を整理すると、医師や看護師に状態を伝えやすくなります。 夏風邪を予防するには 夏風邪の予防では、手洗い、咳エチケット、換気などの基本的な感染対策が大切です。厚生労働省も、夏かぜを含む感染症対策として、手洗い、咳エチケット、換気などの基本的な対策を挙げています。 特に、手足口病やヘルパンギーナでは、便の中にウイルスが排泄されることがあります。排泄物を適切に処理し、おむつ交換後やトイレの後、食事前には、石けんと流水で手を洗いましょう。 予防のポイントは、以下のとおりです。 外出後や食事前に手を洗う タオルを共有しない 咳やくしゃみがあるときは口と鼻を覆う 室内を換気する おむつ交換後は手を洗う 体調不良時は無理に登園、登校、出勤しない 口や目、鼻を触る前後に手を洗う 十分な睡眠と水分補給を意識する 家庭内で感染者がいる場合は、タオルの共有を避け、よく触れる場所を清潔に保ちます。子どもがいる家庭では、おもちゃやドアノブなども感染対策の対象になります。 まとめ 夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称です。代表的なものには、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などがあります。発熱、のどの痛み、咳、鼻水、口の中の水疱、発疹、目の充血、下痢など、原因によって症状はさまざまです。 夏風邪の多くは対症療法が中心ですが、水分が摂れない、尿量が少ない、ぐったりしている、高熱が続く、呼吸が苦しそうといった場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 在宅ケアでは、病名を判断することよりも、症状の経過、水分摂取量、尿量、普段との違いを確認することが大切です。手洗い、咳エチケット、換気を行い、タオルの共有を避けることを意識し、家庭や施設内で感染を広げないようにしましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 厚生労働省:「夏を安全に楽しもう! 感染症対策ガイド」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202407_003.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「手足口病」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「ヘルパンギーナ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/herpangina.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「咽頭結膜熱」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pcf.html2026/8/24閲覧 東大阪市:「子どもの夏かぜ(手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱)」https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000004003.html2026/8/24閲覧 CDC:「Non-Polio Enteroviruses Symptoms and Complications」https://www.cdc.gov/non-polio-enterovirus/signs-symptoms/index.html2026/8/24閲覧

訪問看護ステーションの開業に活用できる助成金・補助金とは?
訪問看護ステーションの開業に活用できる助成金・補助金とは?
コラム
2026年8月18日
2026年8月18日

訪問看護ステーションの開業に活用できる助成金・補助金とは?

訪問看護ステーションの開業には、まとまった資金が必要です。融資や自己資金とともに、助成金・補助金も知っておきたい選択肢のひとつです。原則として返済不要のため、うまく活用できれば開業資金の負担を軽減できるでしょう。 ただし、多くの制度は「後払い」が基本のため、開業直後の運転資金として使えない点に注意が必要です。制度の内容を事前に把握しておかないと、申請のタイミングを逃してしまう場合もあります。 立ち上げ時に活用できる助成金・補助金の種類と注意点を知り、ぜひ開業準備に役立ててみてください。※本記事の情報は2026年7月時点のものです。各制度は変更される可能性があるため、詳細や最新情報は担当省庁や自治体の公式サイトにてご確認ください。 採用・雇用環境の整備に使える助成金 スタッフの確保・定着は、訪問看護ステーションの運営を支える大切な基盤です。雇用環境の整備に活用できる助成金を紹介します。 キャリアアップ助成金(正社員化コース) 非正規雇用のスタッフの正社員転換や直接雇用を促進し、雇用の安定とキャリアアップを支援する制度です。正規雇用化によってスタッフの働く意欲が高まり、職場の魅力向上にもつながります。 なお、申請には転換の前日までに「キャリアアップ計画」の提出が必要です。申請を考えている場合は、早めに準備を進めておきましょう。 働き方改革推進支援助成金 労働時間の適正管理や休暇取得の促進など、働きやすい職場環境づくりを後押しする助成金です。対象となる取り組みは幅広く、勤怠管理システムの導入や労務管理に関する専門家へのコンサルティング依頼なども含まれます。 「記録業務に時間がかかりすぎる」「スタッフが休みを取りにくい」といった現場の課題を抱えている場合に、活用できる可能性があります。 両立支援等助成金 育児や介護を抱えるスタッフが、仕事を続けやすい環境づくりを支援する制度です。柔軟な働き方の導入や業務代替体制の整備など、幅広い取り組みが対象となります。代表的なものに「育児休業等支援コース」があり、育休取得から職場復帰までの流れをサポートした場合に支給されます。 スタッフの離職防止・定着はもちろん、「ここなら長く働ける」と思ってもらえる職場の魅力づくりにも役立つ助成金です。 65歳超雇用推進助成金 定年延長や、継続雇用制度の導入に取り組んだ事業主を支援する助成金です。将来的にスタッフが長く働き続けられる環境を整えたいときに、選択肢のひとつとして知っておくとよいでしょう。 業務効率化・設備投資に使える助成金 業務効率化や設備投資を後押しする助成金も活用できます。開業時のコスト負担を抑えながら、現場環境を整えたい方はチェックしてみてください。 業務改善助成金 業務改善助成金は、生産性向上や業務効率化を目的とした、設備投資を支援する制度です。訪問スケジュール管理ソフトや電子カルテシステムの導入、休憩スペースの整備なども対象となります。 記録作業などの事務負担を減らし、スタッフが利用者さんへの対応に集中できる環境づくりに役立ちます。 IT導入補助金 業務改善助成金が設備投資全般を対象とするのに対し、IT導入補助金はITツールの導入に特化した補助金です。中小企業や小規模事業者を対象に、導入にかかる費用の一部を補助します。 クラウドサービスや電子カルテシステム、スケジュール管理ソフトなど、デジタル化全般が対象となります。 自治体独自の助成金・補助金 都道府県や市区町村が、訪問看護人材の確保・育成や事業所の運営支援を目的とした、独自の制度を設けている場合があります。 たとえば、 研修費用 設備導入費用の補助 人材確保 育成支援 など、地域の実情に合わせたさまざまな制度が存在します。 内容や要件は自治体によって異なります。申請期限が設けられているケースも多いため、開業予定地域の福祉局や担当窓口に早めに問い合わせておくとよいでしょう。 助成金・補助金活用前に知るべき3つのポイント 助成金・補助金は活用できれば心強い反面、知っておくべき注意点もあります。活用前に押さえておきたい3つのポイントを確認しておきましょう。 ポイント(1)支給は「後払い」が原則 助成金・補助金は、対象の取り組みを実施した後に申請・支給されるしくみです。開業直後の運転資金として当てにはできないため、自己資金や融資とは切り離して考える必要があります。 ポイント(2)必ず受け取れるとは限らない 審査に落ちるケースや、予算上限に達して申請期間が早期終了する場合もあります。「申請すれば確実にもらえる」という前提で、資金計画を立てるのは危険です。 ポイント(3)あくまで「プラスアルファ」の支援策 助成金・補助金は、自己資金や融資を軸とした資金計画を補完するものです。メインの資金源として頼りすぎず、活用できた場合の上乗せとして位置づけておきましょう。 まとめ:助成金・補助金は制度を知って早めに動こう 採用・雇用環境の整備、業務効率化・設備投資など、訪問看護ステーションの立ち上げで活用できる助成金・補助金は幅広くあります。返済不要の制度も多く、うまく活用できれば開業資金の負担を軽くできるでしょう。 ただし、どの制度も申請には準備が必要で、タイミングを逃すと活用できないケースもあります。 「使えそうな制度はあるか」「申請のタイミングはいつか」——開業を具体的に考え始めたら、ぜひ一度調べてみてください。知っている制度が増えるほど、資金計画の選択肢も広がります。 執筆:広瀬 よしの(看護師ライター)編集:米沢 まさこ(看護師ライター)監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士)株式会社UPDATE代表取締役2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。 現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。そのほか、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。

食中毒症状とは?観察と受診の目安
食中毒症状とは?観察と受診の目安
コラム
2026年8月18日
2026年8月18日

食中毒症状とは?観察と受診の目安

食中毒では、下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状がみられます。原因となる細菌やウイルス、寄生虫、自然毒などによって、症状の出方や発症までの時間は異なります。訪問看護や在宅ケアの現場では、「何を食べたか」だけでなく、「いつから症状が出たか」「水分が取れているか」「尿量が減っていないか」などを確認することが大切です。この記事では、食中毒でみられる主な症状、注意したいサイン、在宅での観察ポイントを解説します。 食中毒とは 食中毒とは、細菌やウイルス、有害な物質などが含まれた食品を食べることで、腹痛や下痢、嘔吐などの症状が起こる状態です。厚生労働省では、食中毒の原因として、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、リステリア、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、ノロウイルス、アニサキス、毒キノコ、有毒植物などを挙げています。 食中毒は夏に多いイメージがありますが、原因によって流行しやすい時期は異なります。たとえば、細菌性食中毒は気温や湿度が高い時期に増えやすく、ノロウイルスによる食中毒は冬に多くみられます。ただ、季節だけで判断せず、症状や食事内容、周囲の流行状況をあわせて確認することが大切です。 食中毒でみられる主な症状 食中毒の症状は、原因によって異なりますが、よくみられる症状には以下があります。 下痢 腹痛 吐き気 嘔吐 発熱 倦怠感 頭痛 悪寒 脱水症状 胃痛や腹部けいれん 重症の食中毒では、血便、3日以上続く下痢、高熱、頻回の嘔吐、脱水症状がみられることがあります。 高齢者や小児、妊婦、基礎疾患のある方、免疫機能が低下している方では、症状が重くなることがあります。特に在宅療養中の利用者さんでは、普段の体調や食事量、内服薬の影響も含めて観察することが重要です。 症状が出るまでの時間 食中毒は、食べてすぐに症状が出るものもあれば、数日後に症状が出るものもあります。発症までの時間は、原因を考えるうえで手がかりになります。厚生労働省が発表している、発症までの目安は次の通りです。 原因の例発症までの目安主な症状黄色ブドウ球菌30分〜6時間程度吐き気、嘔吐セレウス菌 嘔吐型30分〜6時間程度吐き気、嘔吐ウエルシュ菌6〜18時間程度腹部膨満、腹痛、下痢ノロウイルス24〜48時間程度吐き気、嘔吐、下痢、腹痛カンピロバクター2〜7日程度下痢、腹痛、発熱、嘔吐、吐き気腸管出血性大腸菌3〜8日程度腹痛、下痢、血便 ただし、同じものを食べても、全員が同じ症状になるとは限りません。年齢、体調、食べた量、基礎疾患などによって症状の強さは変わります。 注意したい症状 食中毒が疑われる場合でも、症状が軽く、水分が取れていて、尿が出ている場合は、主治医へ報告したうえで、点滴など特別な処置はせず様子を見ることがあります。一方で、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 3日以上続く下痢 嘔吐が続き、水分が取れない 血便がある 強い腹痛がある 高熱がある 尿量が明らかに少ない 口の中が乾いている 立ち上がるとふらつく ぐったりしている 意識がぼんやりしている 乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方に症状がある 特に、乳幼児や高齢者などにおいて、血便や強い腹痛がある場合は注意が必要です。腸管出血性大腸菌では、溶血性尿毒症症候群 や脳症などの重症合併症を発症する場合があります。 脱水症状に注意する 食中毒で特に注意したいのが脱水症状です。下痢や嘔吐が続くと、水分だけでなく電解質も失われます。高齢者では、のどの渇きを感じにくいことがあり、気づかないうちに脱水が進むことがあります。在宅では、以下のような変化を確認します。 尿量が少ない 尿の色が濃い 口唇や舌が乾いている 皮膚や口腔内が乾燥している 立ちくらみがある 脈が速い 血圧がいつもより低い ぼんやりしている 食事や水分が取れていない 嘔吐がある場合は、一度に多く飲むと吐き気が強くなることがあります。少量ずつ、こまめに水分を摂れるか確認します。経口補水液を使う場合は、基礎疾患や水分制限の有無にも注意し、必要に応じて医師や看護師に確認しましょう。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、症状だけでなく、発症前後の食事内容や生活状況を確認します。食中毒は原因の特定が難しいこともありますが、以下の情報を整理しておくと、医師や保健所への相談時に役立ちます。 症状が始まった日時 主な症状 下痢や嘔吐の回数 便の性状 血便の有無 体温 腹痛の部位と強さ 水分摂取量 食事摂取量 尿量と尿の回数 食べたもの 同じものを食べた人の症状 服薬状況 基礎疾患 普段の状態との違い たとえば、以下のように記録すると共有しやすくなります。 「昨日夕食後から吐き気あり。本日朝までに嘔吐3回、水様便4回。体温37.8度。水分は少量ずつ摂取できているが、尿は朝から1回のみ。昨日、家族と同じ刺身を摂取。家族1名にも下痢あり。」 このように、「いつから」「何回」「何を食べたか」「水分と尿量はどうか」をまとめると、状態の変化が伝わりやすくなります。 感染を広げないための対応 食中毒の原因によっては、家庭内や施設内で感染が広がることがあります。特にノロウイルスは、ふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感染することがあります。厚生労働省は、ノロウイルスの感染経路として、感染者のふん便や吐ぶつからの二次感染、食品取扱者を介した食品汚染、加熱不十分な二枚貝、消毒不十分な水などを挙げています。感染拡大を防ぐためには、手洗い、吐ぶつやふん便の適切な処理、調理器具の洗浄、食品の十分な加熱が大切です。厚生労働省は、ノロウイルス対策として、調理器具や食器、ふきんなどを洗剤で洗い、熱湯85度以上で1分以上加熱する方法などを紹介しています。在宅では、トイレやドアノブなど、手が触れやすい場所の清掃も重要です。介助者が処理を行う場合は、手袋やマスクを使用し、処理後は石けんと流水で手を洗います。 食中毒を予防する基本 食中毒予防の基本は、菌やウイルスを「つけない」「増やさない」「やっつける」ことです。政府広報オンラインでも、家庭での食中毒予防として、食品の購入、保存、下準備、調理、食事、残った食品の取り扱いなど、各場面で注意することを紹介しています。具体的には、以下のような対策があります。 調理前や食事前に手を洗う 生肉や魚を扱った調理器具を使い回さない 食品を室温に長時間置かない 冷蔵・冷凍が必要な食品は早めに冷蔵庫・冷凍庫に保存する 肉や魚は中心部まで十分に加熱する 残った食品は早めに冷やし、十分に再加熱して食べる 消費期限を確認する 体調不良時は調理を控える 訪問看護では、利用者さんや家族の調理環境、冷蔵庫の管理、食事の保存方法なども確認できる範囲で見ておくとよいでしょう。 まとめ 食中毒では、下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状がみられます。原因によって、食後すぐに症状が出る場合もあれば、数日後に発症する場合もあります。在宅ケアでは、症状だけでなく、発症した時間、食べたもの、下痢や嘔吐の回数、水分摂取量、尿量、普段との違いを確認することが大切です。血便、強い腹痛、高熱、水分が取れない、尿量が少ない、ぐったりしているなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。食中毒は、予防と早期対応が重要です。日ごろから手洗い、食品の適切な保存、十分な加熱を意識し、症状が出たときには脱水や重症化のサインを見逃さないようにしましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● 厚生労働省:「食中毒」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html,2026/8/10閲覧● 厚生労働省:「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/norovirus.html,2026/8/10閲覧● 厚生労働省:「食事にひそむキケン~おいしく安全に食べるヒント」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202406_003.html,2026/8/10閲覧● 政府広報オンライン:「食中毒予防の原則と6つのポイント」https://www.gov-online.go.jp/article/20110602/entry-8196.html,2026/8/10閲覧● CDC:「Food Poisoning Symptoms」https://www.cdc.gov/food-safety/signs-symptoms/index.html,2026/8/10閲覧

ヘルパンギーナと溶連菌の見分け方
ヘルパンギーナと溶連菌の見分け方
コラム
2026年8月12日
2026年8月12日

ヘルパンギーナと溶連菌の見分け方|症状の違いと受診目安

ヘルパンギーナと溶連菌感染症は、どちらも発熱やのどの痛みがみられる病気です。症状が似ているため、「どちらなのか見分けにくい」と感じることもあります。 ただし、ヘルパンギーナは主にウイルスが原因で、のどの奥に水疱や潰瘍がみられやすい病気です。一方、溶連菌感染症は細菌が原因で、急なのどの痛みや発熱、扁桃の腫れ、首のリンパ節の腫れなどがみられます。この記事では、ヘルパンギーナと溶連菌感染症の違い、観察ポイント、受診の目安を解説します。 ヘルパンギーナとは ヘルパンギーナは、発熱とのどの痛み、口の中の水疱を特徴とする感染症です。乳幼児を中心に、夏に流行しやすい「夏かぜ」のひとつとされています。主な原因はコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスです。 厚生労働省によると、ヘルパンギーナは感染してから2〜4日後に突然の発熱が起こり、その後、のどの痛みや水疱が現れます。発熱は1〜3日続くことが多く、食欲不振、全身のだるさ、頭痛などを伴うこともあります。 のどの奥に小さな水疱や潰瘍ができるため、飲み込むときに痛みが強くなり、水分や食事を取りにくくなることがあります。小児では、脱水症に注意が必要です。 溶連菌感染症とは 溶連菌感染症は、主にA群β溶血性レンサ球菌という細菌によって起こる感染症です。感染すると、急な発熱や強いのどの痛み、飲み込むときののどの痛み、扁桃が赤く腫れるなどの症状がみられ、首の前側のリンパの腫れ、口蓋の赤い点状出血、扁桃の白い付着物といった特徴的な症状が出現することもあります。 溶連菌感染症は細菌感染のため、A群β溶血性レンサ球菌による扁桃咽頭炎では、医師の判断により抗菌薬が投与されることがあります。 見分けるポイント ヘルパンギーナと溶連菌感染症は、症状だけで完全に見分けることは難しい場合があります。ただし、観察のポイントを整理すると、違いを把握しやすくなります。 項目ヘルパンギーナ溶連菌感染症原因主にウイルス主に細菌流行時期夏に多い冬季と春から初夏の2つの流行ピークがある年齢乳幼児に多い学童期の子どもに多い発熱突然の高熱がみられ、発熱は1~3日続く急な発熱が多いが、通常発熱は3~5日以内に下がるのどの所見のどの奥に水疱・潰瘍扁桃の腫れ、白い付着物咳・鼻水みられることがある目立たないことが多い治療対処療法が中心抗菌薬が必要な場合がある ヘルパンギーナでは、のどの奥の水疱や潰瘍が特徴です。一方、溶連菌感染症では、扁桃の腫れや白い付着物、首の前側のリンパ節の腫れなどが手がかりになります。 ただし、実際には症状が重なることもあります。家庭や在宅ケアの現場で「ヘルパンギーナだ」「溶連菌だ」と断定せず、症状の経過や全身状態を確認し、必要に応じて受診につなげることが大切です。 受診を考えたい症状 溶連菌感染症では、扁桃周囲膿瘍などの局所化膿性合併症やリウマチ熱、糸球体腎炎に至ることがあるため、早期に診断し抗菌薬投与する必要があるとされています。そのため、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 水分がほとんど取れない 尿の回数が明らかに少ない ぐったりしている 呼びかけへの反応が弱い 高熱が続く のどの痛みが強く、飲み込めない 発疹がある 首の腫れや強い痛みがある 呼吸が苦しそう けいれんがある ヘルパンギーナでは、のどの痛みによって水分摂取が難しくなり、脱水症につながることがあります。厚生労働省も、ヘルパンギーナの合併症として、熱性けいれん、脱水症、小児ではまれに髄膜炎や心筋炎などへの注意を挙げています。 在宅での観察ポイント 訪問看護や在宅ケアでは、病名を見分けることよりも、利用者さんや子どもの状態を具体的に観察することが重要です。 確認したいポイントは、以下のとおりです。 発熱がいつからあるか 最高体温 のどの痛みの程度 水分摂取量 食事量 尿量や尿の回数 口の中の水疱や潰瘍の有無 扁桃の腫れや白い付着物の有無 咳や鼻水の有無 発疹の有無 家族や園、学校での流行状況 活気の低下や意識状態の変化 記録する場合は、以下のように、症状と経過を具体的に書くと共有しやすくなります。 「昨日夕方から発熱。最高体温39.0度。のどの痛みが強く、水分摂取は少量。口腔内奥に小さな水疱様の所見あり。尿は朝から1回のみ。」 「本日朝から発熱とのどの痛みあり。咳・鼻水は目立たない。扁桃に白い付着物あり。首の前側に圧痛あり。食事摂取は半分程度。」 このように記録すると、医師や看護師に状況を伝えやすくなります。 家庭で気をつけたいこと ヘルパンギーナでも溶連菌感染症でも、発熱やのどの痛みがあるときは、無理に食事を取らせるよりも、水分摂取を優先します。冷たい飲み物、ゼリー、スープなど、のどにしみにくく飲み込みやすいものを選ぶとよいでしょう。 酸味の強い飲み物や熱い食べ物は、のどや口の中の痛みを強めることがあります。食事量が少なくても、水分が取れていて尿が出ているかを確認します。 溶連菌感染症が疑われる場合は、検査や治療が必要になることがあります。自己判断で市販薬だけで様子を見るのではなく、症状や流行状況に応じて医療機関へ相談しましょう。 まとめ ヘルパンギーナと溶連菌感染症は、どちらも発熱とのどの痛みがみられるため、見分けにくいことがあります。ヘルパンギーナは、夏に乳幼児を中心に流行し、のどの奥の水疱や潰瘍が特徴です。溶連菌感染症は、急なのどの痛み、発熱、扁桃の腫れ、首のリンパ節の腫れなどが手がかりになります。 ただし、症状だけで正確に判断することは難しいため、家庭や在宅ケアの現場では、病名を決めつけず、発熱の経過、水分摂取量、尿量、のどの所見、全身状態を観察することが大切です。ぐったりしている、水分が取れない、高熱が続くなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 厚生労働省:「ヘルパンギーナ」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/herpangina.html2026/8/12閲覧 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「ヘルパンギーナ(詳細版)」.https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/herpangina/010/index.html2026/8/12閲覧 CDC:「About Strep Throat」.https://www.cdc.gov/group-a-strep/about/strep-throat.html2026/8/12閲覧 MSDマニュアル プロフェッショナル版:「扁桃咽頭炎」.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/口腔咽頭疾患/扁桃咽頭炎2026/8/12閲覧 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「A群溶血性レンサ球菌感染症」.https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/group-a-streptococcal-infection/index.html2026/8/12閲覧 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「IDWR 2023年第43号<注目すべき感染症> A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」.https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/featured/2023/43/index.html2026/8/12閲覧 MSDマニュアル プロフェッショナル版:「扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎」.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/口腔咽頭疾患/扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎2026/8/12閲覧

学校だけがゴールではない─不登校支援と訪問看護師のケアマネジメント
学校だけがゴールではない─不登校支援と訪問看護師のケアマネジメント
コラム
2026年8月4日
2026年8月4日

学校だけがゴールではない─不登校支援と訪問看護師のケアマネジメント

不登校支援において、訪問看護師はどのような役割を担えるのでしょうか。家庭と学校・福祉をつなぐ多機関連携の実践と、訪問看護師が果たすケアマネジメント機能についてお伝えします。 不登校支援における訪問看護師の立場 ショートケーキ訪問看護ステーションは、東京都豊島区、板橋区、北区を中心に、発達障害や不登校など、生きづらさを抱える子どもと家族を対象とした児童精神科訪問看護を提供しています。 私たちは家庭という生活の場で子どもや家族と関わりながら、医療だけでなく教育や福祉とも積極的に連携し、その子らしく成長できる環境づくりを支援しています。学校訪問や支援者会議への参加、関係機関との情報共有も日常的な実践の1つです。 近年、不登校児童生徒数は増加し続けています。その背景には発達障害や精神的な不調、家庭環境の課題、友人関係の悩みなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。そのため、不登校支援は学校だけで完結するものではなく、家庭、医療、福祉、地域資源など、多くの関係者が連携しながら支援を行うことが求められています。 児童精神科領域の訪問看護に携わる中で、私は「子どもを支援する」というよりも、「子どもを取り巻く環境全体を支援する」という感覚を持つことが少なくありません。特に不登校支援においては、多機関連携をどのように進めるかが支援の質を大きく左右すると感じています。 今回は、ショートケーキ訪問看護ステーションでの実践を通して感じている多機関連携と訪問看護師のケアマネジメントについてお伝えしたいと思います。 学校と家庭をつなぐ情報共有 当ステーションでは、保護者の同意を得たうえで学校へ情報提供書を送付しています。担任やスクールソーシャルワーカー、特別支援教育コーディネーターなどと、定期的な情報共有やカンファレンスも行っています。 訪問看護師は家庭という生活の場に入るため、子どもや保護者から日常の様子を直接聞くことができます。 例えば、 「昨夜、両親とのトラブルがあり気持ちが不安定になっている」「友達とけんかをしたが仲直りはできた。しかし本人はまだ不安を抱えている」「睡眠が乱れており朝から活動することが難しい」 といった情報は、家庭で関わる訪問看護師だからこそ把握できる内容です。 一方で学校には、 「今日は朝から表情が硬かった」「授業中に集中が続かなかった」「休み時間は一人で過ごしていた」 など、家庭では見えない子どもの姿があります。 どちらも子どもの状態を理解するために重要な情報ですが、それぞれが独立して存在しているだけでは十分な支援にはつながりません。訪問看護師が学校と家庭の間に入り、双方の情報を整理しながら共有することで、支援者全体の目線を合わせることができます。 実際に行った支援者会議では、担任の先生から次のような言葉がありました。 「学校は楽しいところだよって本人に知ってもらいたいんです。来てくれたらたくさん楽しませたいと思っています。でも、そのための手立てが分からなかったんです」 家庭では本人の不安や悩みを聞くことができても、その情報が学校へ十分に伝わっていないことがあります。一方で学校側も、子どもを支えたいという思いを持ちながら、どのように関わればよいか悩んでいることがあります。 家庭での様子や本人の思いを共有したことで、学校側からは「子どもへのアプローチの選択肢が増えたことが嬉しい」という声が聞かれました。 この経験を通して、多機関連携の目的は支援者を増やすことではなく、子どもを理解する視点を増やすことなのだと改めて感じました。 子どもの居場所を増やすという視点 不登校支援では、「学校へ行けるようになること」が目標として語られることがあります。しかし、私たちが目指しているのは単純な登校ではありません。大切なのは、子どもが安心して過ごせる場所を増やしていくことです。 自宅だけでなく、 学校 保健室 別室登校 教育支援センター 放課後等デイサービス フリースクール 習い事や地域活動 など、本人が安心して過ごせる居場所を確保しながら、その子のペースに合わせた学習や社会参加の機会を整えていくことが重要です。 実際に、学校への登校は難しくても、放課後等デイサービスへ通うことが外出のきっかけになる子どもがいます。また、フリースクールが新たな学びの場となり、自信を取り戻していく子どももいます。 私たちは「学校へ戻すこと」をゴールにするのではなく、その子が安心して過ごせる場所を1つでも増やし、その子らしい社会とのつながり方を一緒に探していくことを大切にしています。 訪問看護師が担うケアマネジメント 成人領域では、介護支援専門員が支援全体を調整する役割を担っています。 一方、児童領域では事情が異なります。 障害福祉サービスを利用している場合には、計画相談支援事業所の相談支援専門員がケアマネジメントを担います。しかし、不登校の子どもの中には放課後等デイサービスや移動支援などの障害福祉サービスを利用しておらず、相談支援専門員が関与していないケースも少なくありません。 その場合、学校との調整、医療との連携、福祉サービスの導入検討、地域資源とのつながりづくりなど、多くの役割を保護者が担うことになります。 しかし、不登校が長期化すると、保護者自身も疲弊し、十分に調整役を担うことが難しくなることがあります。 そのような場面で訪問看護師は、子どもや保護者の思いを整理し、学校や医療機関、児童相談所、福祉機関へつなぎ、必要に応じて支援者会議を開催します。 また、放課後等デイサービスやフリースクール、教育支援センターなどの地域資源を紹介し、子どもや家族と一緒に新たな選択肢を検討することもあります。 制度上、訪問看護師はケアマネジャーではありません。しかし実践の中では、以下のコーディネーターとしての役割を担っています。 支援者同士をつなぐ 情報を整理する 支援の方向性をそろえる 私は、このケアマネジメント機能こそが、児童精神科領域における訪問看護師の大きな特徴の1つであると感じています。 訪問看護師が担う橋渡しの可能性 不登校支援は、1つの機関だけで完結するものではありません。 家庭、学校、医療、福祉、そして地域の多様な居場所がつながることで、初めて継続的で安定した支援が実現します。 訪問看護師は家庭に最も近い専門職の一人として、子どもと家族の思いを受け止めながら、多機関をつなぐ橋渡し役を担うことができます。 学校に行けることだけがゴールではありません。 子どもが安心して過ごせる場所を1つでも増やし、その子らしいペースで成長していける環境を整えること。そのために今後も、多機関連携とケアマネジメントを大切にした実践を続けていきたいと思います。 執筆:齋藤 透ケアプロ株式会社ショートケーキ訪問看護ステーション リーダー日本赤十字看護大学大学院 地域看護学領域 専門看護師コース修了 児童精神・発達支援・不登校支援を中心に活動。「学校に行かせること」だけをゴールにせず、家庭という生活の場から、親子関係や安心感、人とのつながりを支えることを大切にしている。ゲームや好きな話題を通した関係形成、親子間の感情整理、学校連携などを得意としている。 編集:NsPace 編集部 【参考文献】〇文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」https://www.mext.go.jp/content/20260305-mxt_jidou02-100002753_3.pdf2026/6/25閲覧

血管内脱水とは?在宅での観察ポイント
血管内脱水とは?在宅での観察ポイント
コラム
2026年8月4日
2026年8月4日

血管内脱水とは?在宅での観察ポイント

血管内脱水とは、血管の中を流れる水分が不足し、循環血液量が低下している状態を指します。一般的な「脱水」は体全体の水分不足として捉えられますが、血管内脱水では、血管内の水分が少なくなることで、血圧低下や頻脈、尿量減少、意識状態の変化などがみられることがあります。訪問看護や在宅ケアの現場では、利用者さんの口渇や皮膚の乾燥だけでなく、血圧、脈拍、尿量、むくみ、意識状態などをあわせて観察することが大切です。この記事では、血管内脱水の基本的な考え方、起こりやすい原因、在宅で確認したいポイントを解説します。 血管内脱水とは 血管内脱水とは、血管内の水分が不足している状態です。体内の水分は、主に細胞内、細胞と細胞の間にある間質、血管内に分かれて存在しています。血管内の水分が不足すると、全身に血液を十分に送ることが難しくなります。その結果、血圧が下がる、脈が速くなる、尿量が減る、手足が冷たくなるなどの変化が起こることがあります。MSDマニュアルでは、体液量減少が中等度になると起立時の頻脈や低血圧がみられることがあり、重度では頻呼吸、頻脈、低血圧、混乱、毛細血管再充満時間の延長などのショック徴候が起こりうるとされています。ただし、血管内脱水は見た目だけでは判断しにくいことがあります。たとえば、体にむくみがあっても、血管内の水分が不足している場合があります。そのため、「むくんでいるから脱水ではない」と決めつけず、全身状態を総合的に確認することが大切です。 一般的な脱水との違い 一般的に脱水というと、水分摂取不足、発汗、下痢、嘔吐などによって、体内の水分が不足している状態を指します。一方で、血管内脱水は、特に血管内を流れる水分量の不足に注目した考え方です。在宅ケアでは、専門的な分類を厳密に判断するよりも、循環が保たれているかを観察することが重要です。血圧低下、頻脈、尿量減少、立ちくらみ、意識のぼんやり感などがある場合は、血管内の水分不足が関係している可能性があります。 血管内脱水が起こる原因 血管内脱水は、水分や電解質の喪失、血管内から間質への水分移動、出血などによって起こることがあります。代表的な原因には、以下があります。 下痢 嘔吐 発熱や発汗 水分摂取量の低下 利尿薬の使用 出血 感染症 炎症による血管透過性の亢進 低栄養や低アルブミン血症 熱傷 心不全や腎機能低下などの基礎疾患 感染症やDICなどで血管内皮が障害されると、血管内の水分が間質に流出し、体は浮腫状態でも血管内は脱水になることがあります。 細胞外液を補う目的で、等張電解質輸液が血管内や組織間に水分・電解質を補給する輸液として使われることがあります。大塚製薬工場の解説では、等張電解質輸液は細胞外に分布して細胞外液量を増やすため、細胞外液補充液とも呼ばれるとされています。 細胞外液補充液等に反応しない患者、低アルブミン血症があるなど特定の状況下では、アルブミン製剤が使用される可能性もあります。 在宅でみられやすいサイン 血管内脱水では、循環血液量が不足することで、さまざまなサインが現れます。訪問看護や介護の現場では、以下のような変化に注意します。 立ち上がったときにふらつく 血圧がいつもより低い 脈が速い 尿量が少ない 尿の色が濃い 口の中が乾いている 皮膚や舌が乾燥している 手足が冷たい 倦怠感が強い ぼんやりしている 反応が鈍い 食事や水分がとれていない 特に、呼吸困難や呼吸促迫、過度の発汗、意識レベルの低下、低血圧、体温の低下、チアノーゼがみられる場合は、ショック状態を示す重篤な症状の可能性があるため、早急に医師へ報告する必要があります。 ただし、高齢者では症状がはっきり出にくいことがあります。普段より元気がない、食事量が落ちている、反応が遅い、尿量が少ないなど、小さな変化を見逃さないことが大切です。 むくみがあっても注意が必要 血管内脱水で特に注意したいのは、むくみがある場合です。一般的には、むくみがあると「水分が多い状態」と考えがちです。しかし、間質に水分がたまっていても、血管内の水分が不足している場合があります。 たとえば、低栄養や低アルブミン血症、炎症、感染症などでは、血管内に水分を保ちにくくなり、間質に水分が移動しやすくなります。その結果、足や手はむくんでいるのに、血管内の水分は不足していることがあります。 日本腎臓学会誌の解説でも、浮腫は間質に水分が貯留して腫れている状態であり、必ずしも体全体の水分量増加と同じではないと説明されています。 在宅では、むくみの有無だけで判断せず、血圧、脈拍、尿量、体重変化、呼吸状態、食事・水分摂取量などをあわせて観察します。 観察するときのポイント 血管内脱水が疑われる場合は、以下の項目を確認します。 バイタルサイン 血圧、脈拍、体温、呼吸数、SpO2を確認します。特に、普段より血圧が低い、脈が速い、呼吸が速い、発熱がある場合は注意が必要です。頻脈は低容量状態で循環を保つための代償反応としてみられることがあります。 尿量と尿の色 尿量が減っている、尿の色が濃い、排尿回数が少ない場合は、体内の水分不足を示すサインのひとつです。特に、普段と比べて明らかに尿量が少ない場合は、早めに医師や看護師へ報告します。 皮膚・口腔内の状態 口唇や舌の乾燥、皮膚の乾燥、皮膚の張りの低下などを確認します。ただし、高齢者では皮膚の張りがもともと低下していることもあるため、これだけで判断しないようにします。 意識状態 ぼんやりしている、会話がかみ合わない、呼びかけへの反応が鈍いなどの変化がないか確認します。体液量の減少が重くなると混乱などがみられる場合があります。 食事・水分摂取量 食事量や水分摂取量が減っていないかを確認します。暑い日、発熱時、下痢や嘔吐があるときは、普段と同じ量の水分でも不足することがあります。 医師へ報告するときの内容 血管内脱水が疑われる場合は、観察した内容を整理して報告します。一時点の情報だけで伝えるのではなく、経過と普段との差をあわせて伝えると、状態が共有しやすくなります。 報告時には、以下の内容をまとめます。 いつから変化があるか 食事量、水分摂取量 尿量、尿の色、排尿回数 血圧、脈拍、体温、呼吸数、SpO2 立ちくらみやふらつきの有無 下痢、嘔吐、発熱、発汗の有無 むくみの有無 体重の変化 意識状態の変化 服薬状況 利尿薬の使用有無 基礎疾患 普段の状態との違い たとえば、以下のように記録します。 「昨日から食事量が半分程度。水分摂取は約500mL。尿量少なく、尿色濃い。訪問時、血圧92/58mmHg、脈拍104回/分。立ち上がり時にふらつきあり。発熱なし。普段より反応がやや遅い。」 このように書くと、血管内脱水が疑われる状況を具体的に伝えやすくなります。 早めの相談が必要な状態 以下のような場合は、早めに医師や救急へ相談します。 意識がぼんやりしている 呼びかけへの反応が悪い 血圧が大きく低下している 脈が速く、状態が改善しない 尿がほとんど出ていない 強いふらつきがある 発熱、下痢、嘔吐が続いている 手足が冷たく、顔色が悪い 息苦しさがある 出血が疑われる むくみが強いのに尿量が少ない 重度の体液量減少では、頻呼吸、頻脈、低血圧、混乱、毛細血管再充満時間の延長などのショック徴候が現れ、ショックにつながる可能性があります。 在宅では、状態の変化を見つけた時点で早めに相談することが、重症化を防ぐために重要です。 まとめ 血管内脱水とは、血管内の水分が不足し、循環血液量が低下している状態です。水分不足だけでなく、感染症、炎症、出血、利尿薬の使用、低栄養、むくみを伴う病態などでも起こることがあります。 訪問看護や在宅ケアでは、口渇や皮膚の乾燥だけでなく、血圧、脈拍、尿量、意識状態、むくみ、食事・水分摂取量をあわせて観察することが大切です。特に、むくみがある場合でも血管内脱水が隠れていることがあるため、見た目だけで判断しないようにしましょう。 利用者さんの普段の状態を知り、小さな変化を具体的に記録することが、早期発見と適切な対応につながります。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】●NsPace:「血管内脱水」https://www.ns-pace.com/glossary/volume-depletion/,2026/7/30閲覧●MSDマニュアル プロフェッショナル版:「体液量減少」https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/10-内分泌疾患と代謝性疾患/水代謝/体液量減少,2026/7/30閲覧●Cleveland Clinic:「Hypovolemia」.https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22963-hypovolemia,2026/7/30閲覧●日本輸血・細胞治療学会:「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン(改訂第3版)」https://yuketsu.jstmct.or.jp/wp-content/uploads/2024/07/070030406.pdf,2026/7/30閲覧●StatPearls:「Fluid Management」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532305/,2026/7/30閲覧●日本腎臓学会:「浮腫と脱水,濃縮と希釈の考え方」(佐々木成,日腎会誌 2008;50(2):97-99).https://jsn.or.jp/journal/document/50_2/097-099.pdf,2026/7/30閲覧●大塚製薬工場:「水・電解質輸液」.https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/electrolytes/,2026/7/30閲覧

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策
訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策
コラム
2026年7月28日
2026年7月28日

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策

訪問看護ステーションの立ち上げに向け、入念に準備をしていても、開業後に思わぬ壁にぶつかることがあります。たとえば、利用者が集まらない・資金が底をつく・スタッフが離職するといった状況は、よく見られるケースです。こうした状況を事前に知っておくと、先まわりして対策を立てやすくなるでしょう。 そこで今回は、営業・収益管理・組織運営の3つの観点から、立ち上げで失敗しやすいポイントと対策を詳しく解説します。 営業・集客で陥りやすい落とし穴 訪問看護の営業は、一般的な営業活動とは少し異なります。良いケアだけで利用者が増えるわけではなく、紹介もととの関係づくりや効率的な動き方が欠かせません。この違いを理解した上で、開業時の営業・集客のポイントを抑えましょう。 開業してもすぐには依頼が来るわけではない 訪問看護ステーションを開業後、依頼が来るまでには時間がかかります。訪問看護の場合、利用者が自分で探して申し込むケースは少ないです。ケアマネジャーや病院から紹介を受けて利用が始まることがほとんどです。そのため、紹介もととの関係づくりが重要になります。 対策として、開業前からケアマネジャーや病院への挨拶まわりをすると、早期の利用者獲得につながります。 エリアを広げすぎて訪問効率がさがる 依頼を断りたくないあまりエリアを広げすぎると、移動時間が増え、1日に訪問できる件数が減ります。訪問件数が減れば売上も伸びず、看護師の負担だけが増える状況にもなりかねません。 こうしたリスクを避けるためには、エリアを絞っておくのが大切です。目安として、事業所から車で片道30分以内に訪問できる範囲を意識しましょう。 なお、中山間地域や過疎地域など、地理的な事情でやむを得ず移動距離が伸びてしまうエリアもあります。その場合は、収支計画書に無理がないかをしっかり確認しましょう。 営業活動がおろそかになる 現場が忙しくなると、営業は後回しになりやすいです。気づけば、最後にケアマネジャーに挨拶したのがいつか分からなくなってしまう場合もあります。 これを防ぐには、営業を個人任せにせず、組織全体としてのしくみづくりが大切です。たとえば、ケアマネジャーへの挨拶まわりやチラシの送付などを、誰がいつ担当するか月間スケジュールとして決めておきましょう。 管理者だけが営業を担うのではなく、メンバーも一緒に動く体制づくりが、利用者の安定した獲得につながります。 収益管理で陥りやすい落とし穴 訪問看護の経営では、収益を取りこぼしたり、気づかない間にコストが膨らんでいたりするケースもあります。ここでは、加算の見逃しや人件費負担など、注意すべき点をみていきましょう。 加算の算定漏れ 加算の算定漏れは、大きな機会損失につながります。緊急時訪問看護加算や特別管理加算など、算定要件を満たしているにも拘わらず、説明・同意の不足やレセプトのチェック漏れによって算定していないケースは少なくありません。 この対策として、定期的に加算対象者のリストを確認し、算定漏れを防ぐしくみをつくりましょう。 人件費率の高止まり 訪問看護は人件費の割合が大きく、売上が少しさがるだけで一気に経営が苦しくなりやすい事業です。スタッフごとの訪問件数(稼働率)を定期的に把握し、人件費率を意識した経営管理を行いましょう。 特に、2〜3か月先の稼働率を予測しながら管理していくと、急な資金繰り悪化を防ぎやすくなります。 人材紹介会社への過度な依存 人材紹介会社への過度な依存は、利益を圧迫する要因のひとつです。一般的に、紹介手数料は年収の20〜35%程度かかるため、採用コストが膨らみ、人件費率をさらに押し上げてしまいます。 採用を行う際は、自社サイトやSNS、スタッフからの紹介(リファラル採用)を活用して、コストを抑える工夫が必要です。 報酬改定による収支変化の見込み不足 診療報酬・介護報酬は、2〜3年ごとに改定されます。そのたびに収益構造が変わるため、改定の影響を考えていないと、想定していた売上や人員計画が崩れてしまう場合もあります。 とはいえ、改定内容を事前に把握することはできません。そのため、報酬がさがった場合や現状維持の場合など、複数のシナリオを想定しておくとよいでしょう。 組織運営で陥りやすい落とし穴 立ち上げ期はスタッフの人数が少ないため、組織運営について深く考える機会は少ないかもしれません。しかし、スタッフが増えるにつれて、コミュニケーションが複雑になりやすいです。 情報共有が行き届かなくなったり、メンバー間で価値観のズレが生じやすくなったりして、チームの一体感が損なわれるリスクがあります。 経験則として、5〜8名につき1名程度のリーダー候補を早期から育成・配置し、管理者とスタッフの間をつなぐ役割を担わせると、組織が大きくなっても一体感を保ちやすくなります。育成は「いつかやる」では遅く、立ち上げ期から意識的に動くようにしましょう。 まとめ:失敗しやすいポイントを知り、長く続く経営を目指そう 立ち上げの失敗は、準備不足よりも知識不足から来ることが多いです。営業・収益・組織ーーそれぞれの落とし穴を事前に知り、対策を考えておけると、トラブルを未然に防ぎやすくなります。 事業計画はケアプランのように、状況の変化に合わせて更新していくことが大切です。管理者だけでなく組織全体で、気づいたときに修正できるしくみづくりが、長く続く経営の基盤となるでしょう。 監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士)株式会社UPDATE代表取締役2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。 現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。そのほか、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。

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