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「新幹線で転院したい」と言われたら? 新幹線搬送は「乗るまでの準備」が9割
「新幹線で転院したい」と言われたら? 新幹線搬送は「乗るまでの準備」が9割
コラム
2026年7月21日
2026年7月21日

「新幹線で転院したい」と言われたら? 新幹線搬送は「乗るまでの準備」が9割

もし受け持ち患者様から「新幹線で遠方の病院へ転院したい」と相談されたら、あなたはすぐに具体的なイメージが湧きますか? 車両での長時間移動に比べ、患者様の身体的負担を抑えられる新幹線ですが、その裏には一般の乗車とは全く異なる緻密な事前調整が存在します。今回は、新幹線搬送のリアルな実務と、安全な移動を支える民間救急の役割を解説します。 執筆:藤 健二郎(とう けんじろう)社会人経験を経て看護師となり、済生会福岡総合病院の救命救急センターで勤務。重症患者の看護に従事した後、大学院で看護師のストレスに関する研究を行い、急性・重症患者看護専門看護師を取得。現在は東京女子医科大学病院CCUでの臨床と並行し、ケアプロ株式会社 交通医療事業部長として、重症患者搬送や外出支援など「医療×移動」の分野で事業を展開している。■ケアプロ株式会社「ドコケア」:https://dococare.com/transport民間救急とは?緊急性の低い患者の搬送を行う民間サービスのこと。多くは、消防庁の認可を受けて「患者等搬送事業(一般乗用旅客自動車運送業)」を行っている。 長距離搬送では、新幹線という選択肢がある 前回までは、民間救急の役割や、重症患者様の搬送事例について紹介してきました。今回は、長距離搬送の中でも、”新幹線”を利用した搬送についてお伝えします。 遠方の病院や施設へ移動する場合、車両だけで長時間移動する方法もありますが、患者様の状態によっては、新幹線を利用した方が身体への負担を抑えられることがあります。 一方で、新幹線搬送は、通常の乗車とは大きく異なります。寝たきりの患者様や、人工呼吸器、吸引器、酸素などの医療機器を使用している患者様の場合、ただ切符を取ればよいわけではありません。 多目的室の確保、車椅子スペースの予約、車椅子やストレッチャーのサイズ確認、駅構内の動線確認など、事前に確認すべきことが数多くあります。 また、新幹線チケットは電話だけで完結しづらく、乗降場所の管轄駅との調整も必要であり、実務上は直接駅へ行く方が早いケースが多いです。 新幹線搬送は、チケット手配から動線確認まで調整が続く 新幹線搬送でまず重要になるのが、座席やスペースの確保です。車椅子の方であれば車椅子スペース、横になった状態での移動が必要な方であれば多目的室の利用を検討します。ただし、多目的室は誰でも自由に使える場所ではなく、利用には事前の相談や調整が必要です。 また、車椅子で乗車する場合も、車椅子の幅や奥行き、リクライニングの有無によって、乗車可能かどうかや必要なスペースが変わります。そのため、患者様の状態だけでなく、使用する車椅子やストレッチャー、医療機器のサイズまで確認しておく必要があります。 さらに、乗車駅と降車駅の選定も重要です。新幹線の停車時間は限られています。特に寝たきりの方や人工呼吸器を使用している方では、途中駅から乗車したり、途中駅で降車したりすることが難しい場合があります。 東京駅などの始発駅から乗車し、目的地側でもできるだけ終点や主要駅を選ぶことで、乗降に必要な時間を確保しやすくなります。 「移動できる状態」をつくることが、民間救急の役割 新幹線搬送では、病院から駅まで、駅構内、新幹線車内、到着駅から搬送先まで、いくつもの場面をつなぐ必要があります。 出発病院での準備、駅までの介護タクシー、駅構内の移動、新幹線への乗車、車内での観察、到着後の介護タクシー、受け入れ先への引き継ぎ。そのどこか一つでも調整が不十分だと、安全な搬送は成立しません。 また、長距離移動では、患者様の状態変化にも備える必要があります。基礎疾患、ADL、嚥下、排泄、認知機能、夜間の状態、せん妄歴などを事前に把握し、緊急時の連絡先や受診先、診療情報提供書の準備を確認することが重要です。 新幹線搬送は、単に新幹線に乗る搬送ではありません。 患者様の状態、医療機器、駅の構造、車両設備、乗降時間、到着後の移動手段までを一つひとつ確認し、「安全に移動できる状態」をつくる仕事です。 私たちはこれからも、患者様とご家族の希望を大切にしながら、医療と移動をつなぐ長距離搬送を丁寧に支えていきます。

血尿スケールとは?尿色観察の基本
血尿スケールとは?尿色観察の基本
コラム
2026年7月21日
2026年7月21日

血尿スケールとは?尿色観察の基本

血尿スケールとは、肉眼で確認できる血尿の程度を、尿の色で段階的に評価するための目安です。訪問看護や介護の現場では、利用者さんの尿の色が「いつもより赤い」「茶色っぽい」といった変化に気づくことがあります。 血尿は一時的な体調変化でみられることもありますが、尿路感染症、尿路結石、腎臓や膀胱の病気などが関係している場合もあります。そのため、色の変化だけで判断せず、痛みや発熱、排尿状態などもあわせて観察することが大切です。この記事では、血尿スケールの見方や観察ポイント、医師へ報告する際の注意点を解説します。 血尿スケールとは 血尿スケールとは、尿に血液が混じっている可能性があるときに、尿の色を段階的に確認するための視覚的な目安です。一般的には、肉眼で確認できる血尿を、淡いピンク色から濃い赤色、茶褐色に近い色まで、5〜6段階で評価します。NsPaceの用語集でも、血尿スケールは肉眼的血尿の程度を色によって分類する視覚的基準として説明されています。 血尿には、大きく分けて「肉眼的血尿」と「顕微鏡的血尿」があります。肉眼的血尿は、尿の色の変化として目で確認できる血尿です。一方、顕微鏡的血尿は見た目では分からず、尿検査で確認される血尿です。訪問看護や介護の現場で気づきやすいのは、尿の色が赤い、ピンク色、茶色っぽいなどの肉眼的な変化です。 血尿スケールの見方 血尿スケールは、施設や資料によって段階の分け方が異なる場合があります。ここでは、在宅ケアの現場で観察しやすいように、6段階の目安として整理します。 段階尿の色の目安観察のポイント1段階淡いピンク色少量の血液混入が疑われる2段階やや濃い赤色血尿がはっきり分かる3段階明るい赤色早めの報告を検討する4段階濃い赤色・暗赤緊急性が高い可能性がある5段階鮮血に近い赤色出血量が多い可能性がある6段階茶褐色・黒っぽい色古い血液や別の異常も考える 血尿スケールは、尿の色を客観的に伝えるための補助的な指標です。色が濃いほど注意が必要ですが、色だけで重症度を決めることはできません。血尿が少量でも、初めてみられた場合や症状を伴う場合は、医療職へ相談することが望ましいとされています。 血尿で確認したい症状 血尿を見つけたときは、尿の色だけでなく、ほかの症状もあわせて確認します。特に、以下のような症状がある場合は注意が必要です。 排尿時の痛み 頻尿 残尿感 発熱 腰や背中の痛み 下腹部痛 尿量の減少 血の塊が混じる 尿が出にくい 転倒や打撲後の血尿 血尿の原因には、尿路感染症、尿路結石、腎臓の病気、膀胱の病気、外傷、激しい運動などさまざまなものがあります。血尿は軽視せず、原因の確認につなげることが大切です。 また、赤っぽい尿が必ずしも血尿とは限りません。薬剤やビーツ、ルバーブなどの食品によって尿が赤く見えることもあり、血液による色の変化か判断しにくい場合があるため、確認を受けることが大切です。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、利用者さんの普段の尿の色や排尿パターンを知っておくことが大切です。急な変化があった場合は、血尿スケールの段階だけでなく、「いつから」「どのくらい」「どのような症状を伴うか」を確認します。 たとえば、以下のように観察します。 「本日朝から尿が淡いピンク色。排尿時痛なし。発熱なし。尿量は普段と同程度。血尿スケール1段階程度。」 「訪問時、尿が暗赤色。血の塊あり。下腹部痛を訴える。尿が出にくい様子あり。血尿スケール4段階程度。」 このように記録すると、医師や看護師に状況を共有しやすくなります。特に、尿の色が急に濃くなった場合、血の塊がある場合、痛みや発熱を伴う場合、尿が出にくい場合は、早めに医師へ報告することが望ましいです。 医師へ報告するときの内容 血尿がみられたときは、以下の内容を整理して報告すると、状態が伝わりやすくなります。 血尿に気づいた日時 尿の色と血尿スケールの目安 血の塊の有無 排尿時痛や頻尿の有無 発熱の有無 腰背部痛や腹痛、叩打痛の有無 血圧・脈拍・SpO2 尿量の変化 転倒や打撲の有無 服薬状況 既往歴 水分摂取量 普段の尿色との違い 血尿は、症状が軽く見えても原因の確認が必要な場合があります。尿がピンク、赤、茶色に変化した場合は、医師に相談した方がよいです。 血尿スケールを使うときの注意点 血尿スケールは便利な目安ですが、診断を行うためのものではありません。尿の色は、採尿容器の色、照明、水分摂取量、薬剤、食品などの影響を受けることがあります。また、茶色っぽい尿は血尿以外に、ミオグロビン尿やビリルビン尿などが関係する場合もあります。尿色の異常には複数の原因があるため、尿検査などで確認することが重要です。 在宅では、無理に原因を判断するのではなく、利用者さんの状態を具体的に観察し、必要に応じて医師や看護師につなぐことが大切です。 まとめ 血尿スケールは、尿に血液が混じっている可能性があるときに、尿の色を段階的に把握するための目安です。訪問看護や介護の現場では、尿の色の変化を早く見つけ、普段との違いを具体的に記録することが重要です。 ただし、血尿スケールだけで重症度や原因を判断することはできません。排尿時の痛み、発熱、腰痛、血の塊、尿が出にくいなどの症状がある場合は、早めに医師へ報告しましょう。血尿の観察では、「色」「量」「症状」「経過」をセットで確認することが、利用者さんの安全を守るために役立ちます。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 NsPace:「血尿スケール」.https://www.ns-pace.com/glossary/hematuria-scale/2026/7/17閲覧 NHS:「Blood in urine」.https://www.nhs.uk/symptoms/blood-in-urine/2026/7/17閲覧 Mayo Clinic:「Blood in urine(hematuria)」.https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/blood-in-urine/symptoms-causes/syc-203534322026/7/17閲覧 Cleveland Clinic:「Hematuria」.https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15234-hematuria2026/7/17閲覧 PMC:「Diagnostic Approach to Abnormal Urine Colors」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC12066962/2026/7/17閲覧 日本感染症学会:「腎盂腎炎(Pyelonephritis)|症状からアプローチするインバウンド感染症への対応」.https://www.kansensho.or.jp/ref/d32.html2026/7/17閲覧

訪問看護ステーションの開業資金はどう準備する?融資先の選び方と失敗しないポイント
訪問看護ステーションの開業資金はどう準備する?融資先の選び方と失敗しないポイント
コラム
2026年7月7日
2026年7月7日

訪問看護ステーションの開業資金はどう準備する?融資先の選び方と失敗しないポイント

訪問看護ステーションの開業を目指すとき、事業計画や人員体制と並んで避けて通れないのが「資金の準備」です。 開業には、初期費用と運転資金を合わせて、1,200〜1,500万円程度が必要な目安とされています。自己資金で足りない分は融資で補うことになるものの、看護師にとって融資は馴染みの薄い世界。「どこに相談すればいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか? このコラムでは、融資先の選び方・よくある失敗・動き始めるタイミングについてわかりやすく解説します。 開業時の資金繰りは情報収集が重要 知識がないまま開業準備を進めてしまうと、審査に通らなかったり、開業後に運転資金が底をついたりするケースが起こりえます。融資は「申し込めば通る」ものではなく、事業計画の妥当性や自己資金の割合、申請するタイミングなど、複数の要素が審査に影響します。 「とりあえず動き始めてから考えよう」では、気づいたときには選択肢が狭まっていた——ということにもなりかねません。まずは、融資先の種類や特徴について詳しくみていきましょう。 融資先の特徴と選び方 ひとくちに融資といっても、相談先によって金利や審査のハードルが異なります。 主な融資先とその特徴を比較してみましょう。 主な融資先の比較 融資先金利審査のハードル特徴日本政策金融公庫2~3%台低め・創業実績なしでも可・開業時の第一候補信用金庫・地方銀行2~4%台中程度・地元に根ざした金融機関メガバンク低め高い・創業時は3~5年以上の実績が必要 ※上記に記載した融資の金利はあくまで目安であり、将来的に変更される可能性があります。実際に融資を検討する際は、必ず最新の条件を各金融機関へご確認ください。 開業時の融資は、日本政策金融公庫を第一候補に、信用金庫・地方銀行を併用するのが現実的です。メガバンクは、開業後に実績を積み、大口の資金需要が発生した際に検討する選択肢と考えておきましょう。 また、融資以外の手段として、クラウドファンディングという選択肢もあります。クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法です。資金調達と認知度向上を同時に狙える方法でもあり、訪問看護ステーションの開業で活用した事例もあります。 資金調達でよくある失敗 資金調達を進めるうえで、開業を考えている看護師が陥りやすい失敗があります。 よくある3つの失敗のパターンをあらかじめ知っておくと、同じ失敗は防ぎやすくなります。 失敗1.自己資金不足のまま融資申請してしまう 自己資金が少ないと、「事業への本気度が低い」と判断されやすく、審査で不利になります。「まず融資を受けてから自己資金を足せばいい」と考える方もいますが、自己資金なしでは融資を受けること自体が難しいのが現実です。開業を意識し始めたタイミングから、計画的に貯め始めておくことが大切です。 失敗2.見積もりの甘さから融資審査が通らない 訪問看護の報酬には、約2ヶ月間の入金タイムラグがあります。4月に提供したサービスの報酬が入金されるのは6月末です。このしくみを資金計画に織り込めていないと、「資金繰りの見通しが甘い」と判断され、融資審査が通らないケースがあります。また見積もりが甘いと、審査を通過できたとしても、開業後に運転資金が底をつくリスクも生じます。収益が安定するまでの6ヶ月分(金額にすると600〜1,000万円程度)の確保が必要です。このように、入金タイムラグを前提とした資金計画を立てておきましょう。 失敗3.助成金・補助金を当てにしてしまう もう一つ注意しておきたいのが、助成金・補助金の扱いです。助成金・補助金は後払いが基本のため、開業直後の資金繰りには使えません。助成金を当てにして資金計画を立ててしまうと、思わぬ資金不足につながる恐れもあります。あくまで「プラスアルファ」として考えておきましょう。 資金調達を始めるタイミング 資金調達は、思い立ったときに始めるのでは遅い場合があります。開業の時期から逆算して、計画的に動き始めましょう。目安となるスケジュールは以下のとおりです。 開業を意識し始めたらすぐ:自己資金を準備する 融資審査では、300〜500万円程度の自己資金があると有利になります。ただし、融資だけでは資金が足りなくなるケースもあるため、できれば1,000万円程度を目標に準備しておくと安心です。開業を意識し始めたら、まず貯蓄から始めましょう。 開業6ヶ月前:日本政策金融公庫に相談する 自己資金の目途が立ってきたら、日本政策金融公庫の窓口に相談しましょう。窓口への相談は無料で、「いくら借りられるか」「どんな書類が必要か」といった基本的な疑問から相談できます。事業計画書のたたき台・資金計画・開業時期の見通しを持参すると、話がスムーズに進みやすくなるでしょう。「まだ準備中だから」とためらわず、早めに足を運んでみてください。 開業3ヶ月前:融資申請・審査 相談の内容が固まってきたら、いよいよ融資申請のステップです。申請から実行までは、1〜2ヶ月かかります。「開業直前に申請すればいい」と後回しにしてしまうと、資金が間に合わなくなるリスクがあります。 このタイミングで動き出せるよう、逆算して準備を進めておきましょう。 また、日本政策金融公庫の融資だけでは必要な資金額に達しない場合もありますので、地方銀行や信用金庫への相談も同時並行で進めましょう。 まとめ:資金調達は、融資先を知って早めに動き始めよう! 金調達は、知識と準備が整っているほど、スムーズに進められます。融資先の特徴を理解し、開業の時期から逆算して動き始めると、資金面での不安を減らせます。 融資先の窓口相談は無料のところも多く、開業実績がなくても丁寧に対応してもらえます。「融資なんて自分にできるのかな」とためらわず、気軽に足を運んでみてはいかがでしょうか。 まずは情報収集から始め、自己資金を貯え、融資相談・申請をする——このステップで、開業準備を整えていきましょう。 監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士)株式会社UPDATE代表取締役2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。 現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。そのほか、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。

民間救急 搬送事例~超高流量の酸素投与をしながら自宅へ~
民間救急 搬送事例~超高流量の酸素投与をしながら自宅へ~
コラム
2026年6月23日
2026年6月23日

民間救急 搬送事例~超高流量の酸素投与をしながら自宅へ~

「最期は自宅で過ごしたい」ーー。そう希望しても、医療的ケアが必要な患者さんが自宅へ戻ることは簡単ではありません。特に、高度な酸素管理が必要な状態では、移動中の安全確保だけでなく、退院後の医療体制まで見据えた準備が求められます。今回は、ネーザルハイフローを使用しながら自宅退院を希望された患者様の搬送事例をご紹介します。病院、訪問診療、訪問看護、ケアマネジャー、そして民間救急がどのように連携し、「自宅で過ごしたい」という願いを支えたのか。その実際をお伝えします。 執筆:藤 健二郎(とう けんじろう)社会人経験を経て看護師となり、済生会福岡総合病院の救命救急センターで勤務。重症患者の看護に従事した後、大学院で看護師のストレスに関する研究を行い、急性・重症患者看護専門看護師を取得。現在は東京女子医科大学病院CCUでの臨床と並行し、ケアプロ株式会社 交通医療事業部長として、重症患者搬送や外出支援など「医療×移動」の分野で事業を展開している。■ケアプロ株式会社「ドコケア」:https://dococare.com/transport民間救急とは?緊急性の低い患者の搬送を行う民間サービスのこと。多くは、消防庁の認可を受けて「患者等搬送事業(一般乗用旅客自動車運送業)」を行っている。 「自宅に帰りたい」という願いを支える搬送 前回の記事では、民間救急が「ただ移動を支援するサービス」ではなく、医療・生活・移動をつなぐ役割を担っていることをお伝えしました。今回は、その具体例として、実際に私たちが対応した搬送事例をご紹介します。 患者様は、高流量鼻カニュラ酸素療法(High flow nasal cannula oxygen therapy:HFNC)の装置(以下「HFNC装置」)を使用して、超高流量の酸素投与をしながら、ご自宅への退院を希望されていました。 病院からご自宅までは車で約10分。一見すると短距離の搬送ですが、超高流量の酸素を必要とする状態であり、搬送前の準備や関係職種との連携、車内での観察と対応が重要となるケースでした。 事前準備と車内での医療的対応 搬送前には、退院前カンファレンスに参加し、病院スタッフ、訪問診療、訪問看護、ケアマネジャーと情報を共有しました。 ご自宅に戻った後も医療が途切れないよう、在宅チームとの連携を確認し、当日の流れを整えました。また、搬送中は弊社所有のHFNC装置を使用するため、酸素ボンベの残量確認や高流量に対応した流量計の準備も行いました。 FiO₂95%、50Lという設定では酸素消費量が非常に多くなるため、短距離であっても酸素不足が起きないよう準備する必要があります。 搬送当日は、車内でもバイタルサインを観察し、呼吸状態に合わせて酸素を調整しました。また、呼吸が少しでも楽になるよう、呼吸法について声かけを行いながら、ご自宅まで慎重にお送りしました。 「自宅で過ごしたい」を支える搬送 ご自宅到着後は、待機していた訪問診療、訪問看護、ケアマネジャー、ご家族へ状態を引き継ぎました。 搬送中は弊社のHFNC装置と酸素ボンベを使用していましたが、ご自宅では同じ酸素量を継続することはできません。そのため、到着後は事前に相談していた方針に沿って、弊社の機器を切り離し、ご自宅で対応可能な最大量の酸素投与へ切り替えました。 そのうえで、訪問診療チームにより苦痛をできる限り和らげるための薬剤調整が行われ、ご家族に見守られながら、ご本人は静かに息を引き取られました。この流れは、搬送後に突然決まったものではありません。 退院前カンファレンスの時点で、病院、訪問診療、訪問看護、ケアマネジャー、搬送チームが集まり、ご本人の状態やご家族の希望、自宅で可能な医療体制を確認したうえで共有していた方針でした。 「最期は自宅で過ごしたい」 その願いを叶えるためには、病院から自宅へ運ぶだけではなく、自宅に着いた後の医療やケアまで見据えた連携が欠かせません。 民間救急は、ただ患者様を移動させる仕事ではありません。医療的な安全を守りながら、その人が望む場所へ移動することを支え、病院から在宅へ医療をつなぐ役割を担っています。 私たちはこれからも、患者様とご家族の想いに寄り添いながら、医療と移動をつなぐ搬送を一つひとつ丁寧に行っていきます。

事業計画の立て方
事業計画の立て方
コラム
2026年6月16日
2026年6月16日

訪問看護ステーションを開業するには?具体的な事業計画の立て方

事業計画が必要なのはわかっていても、具体的な準備となると、なかなか手が動かないものです。前編「訪問看護ステーションの開設に必要な事業計画とは?」では、事業計画の意義や、選ばれる事業所づくりの考え方をお伝えしました。今回は、人員体制の考え方から収支計画の立て方まで、事業計画を実際に立てる具体的なステップを解説していきます。 開業に必要な人員体制を考える 「どんな利用者を支えたいか」「どのエリアで活動するか」が見えてきたら、次に考えるのが人員体制です。 訪問看護ステーションを開業するには、法令で定められた人員基準を満たす必要があり、常勤換算で看護職員2.5名以上の配置が必要です。 ただし、看護職員2.5名体制は開業の最低基準です。1人が退職や休職になると、人員基準を割り込むリスクがあります。安定した運営を続けるためには、まず3〜5名体制を目指すとよいでしょう。 開業時の人員構成を考える際は、次の3つを整理しておきましょう。 常勤・非常勤の人数: 常勤採用だけでなく、非常勤採用も合わせて必要数を考えましょう。 オンコールの体制:24時間365日の緊急対応の有無と、緊急対応をする場合はオンコールをどのように分担するかを考えましょう。 リハビリ職(PT・OT・ST)の採用: 多様なニーズに応えていくために、いつごろからリハビリ職を採用するかを検討しましょう。 人員構成は収支にも直結します。どのタイミングでどのような人を採用するかまで含めて設計することが重要です。また、「どんな利用者を支えたいか」「どんな地域に貢献したいか」などビジョンが明確であるほど、必要な人員構成も見えてきます。 持続可能な収支計画を立てる 人員体制が決まったら、次に取り組むべきは収支計画——いわゆる「お金の計画」です。「数字は苦手」という方も多いかもしれませんが、ここを後回しにしたまま開業すると、理念はあっても事業が続かない状況になりかねません。 収支計画を立てる際は、 収益モデルに合わせたKPI管理を行う 固定費を上げすぎない 資金繰りを考えた計画を立てる の3つのポイントを押さえておきましょう。 収益モデルに合わせたKPI管理を行う 訪問看護の収益は、主に介護保険・医療保険からの報酬で成り立っています。たとえば、訪問看護(1時間程度)は、1回あたり約8,000〜10,000円前後です。適応となる保険や利用者の状態、事業所の体制によって単価が変動します。仮に利用者20名に月8回(週2回x4週)訪問すると、月の売上はおよそ128〜160万円規模になります。 訪問看護では、訪問を行うプロセスが報酬で評価されるため、看護師を配置するだけでは売上にならず、訪問件数の管理が重要となります。企業や地域による差もありますが、給与や法定福利、社用車、携帯電話やタブレット端末、その他スタッフ雇用に必要な毎月の経費を考えると、1名あたり月に50万円程度かかります。 しっかりと、各スタッフが自らに抱える経費以上の売上を上げないと、事業所全体として赤字が続き存続できなくなってしまいます。スタッフごとの訪問稼働率を重要指標として管理することが重要です。 固定費を上げすぎない 訪問看護の支出は、人件費やスタッフ雇用にかかる経費、賃料など、そのほとんどが毎月固定でかかる経費です。これらの経費は、売上が予想通りに伸びないことや、一時的に下がることがあっても、下げることができないという特徴があります。 「スタッフを多く採用したい」「人材が集まらないから」と地域の相場以上に給与を高くしたり、事務所にお金をかけたりすると、開業時から固定費が高くなってしまいます。そうすると、赤字の金額と期間が増加し、資金不足に陥る可能性があるため注意が必要です。 資金繰りを考えた計画を立てる 開業後、利用者への訪問を行うと売上があがりますが、その売上はサービス提供後すぐに入金されるわけではありません。月末に実績を締めレセプト提出後、支払い基金から入金されるまで約2ヶ月のタイムラグがあります。また、特に開業初期のうちはレセプトの間違いなどにより返戻が生じることもあります。予定より入金が遅れる可能性も視野に入れておきましょう。 さらに、訪問看護事業所の立ち上げが増えている昨今は、開業初月は利用者の依頼がない(売上0円)というケースも少なくありません。そのため、利用者数の増加も厳しめに見積もり、緩徐に伸びていく計画を立てておくことが重要です。 開業に必要な資金を準備する 収支計画が見えてきたら、次は「開業までにいくら必要か」を整理しましょう。開業時には、次のような費用がかかります。 採用費 人件費 事務所の敷金・礼金 内装・備品 医療機器 訪問看護システム(電子カルテ) 車両費 合計の目安は500万円前後とされています。(※開業規模や地域によって異なります)ただし、開業時の費用だけでなく、開業後しばらくの資金も準備しておく必要があります。 先述したように、訪問看護の報酬は実際に入金されるまで2ヶ月ほどかかるしくみです。開業直後は売上がゼロの状態ですが、人件費・家賃・光熱費などの固定費は毎月発生します。 運転資金として6ヶ月分の固定費を手元に確保しておくのが安心で、金額にすると600〜1,000万円程度になります。初期費用と運転資金を合わせると、1,200〜1,500万円程度が現実的なラインです。 大きな金額に見えますが、自己資金だけで全額用意する必要はありません。資金の調達方法には、主に次の3つがあります。 ▼主な資金の調達方法 調達方法特徴ポイント自己資金返済不要で自由に使える手元資金事業の安定性・信用力のベースになる総資金の2〜3割が目安多いほど融資審査で有利日本政策金融公庫の創業融資開業実績がなくても申し込みやすい金利も比較的低い事業計画書の内容が審査の核助成金・補助金自治体によっては開業支援の補助あり条件・申請期限あり、早めのリサーチが必要あくまで、補助的な位置付け 融資を受ける場合は、毎月の返済額を収支計画に組み込んでおく必要があります。借りられたからOKではなく、「返しながら事業を続けられるか」を必ず確認しておきましょう。 まとめ:事業計画は「作って終わり」ではない 事業計画は、開業のために一度だけ作るものではありません。事業を動かし続けるためのベースになります。 看護の現場に置き換えると、ケアプランに近いイメージです。利用者の状態変化に合わせてケアプランを見直すように、事業計画も現実に合わせて更新していくものと考えておきましょう。現場が忙しくなると、計画を見返す機会が減りがちです。月1回の収支確認、半年に1回の計画見直しを習慣にすると、問題の早期発見につながります。 最初から完璧な事業計画である必要はありません。「何人のスタッフが必要か」「収支はどうなるか」「資金はどう調達するか」——まずはこの3つを書き出すことから始めてみてください。その積み重ねが、開業への道筋をつくっていくでしょう。 執筆:広瀬 よしの(看護師ライター)編集者:米沢 まさこ(看護師ライター) 監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士)株式会社UPDATE代表取締役2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。 現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。その他、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。

人工呼吸器装着後の安楽な姿勢とベッド周りの環境整備:当事者の知恵と工夫
人工呼吸器装着後の安楽な姿勢とベッド周りの環境整備:当事者の知恵と工夫
コラム
2026年6月9日
2026年6月9日

人工呼吸器装着後の安楽な姿勢とベッド周りの環境整備:当事者の知恵と工夫

ALSを発症して10年、現役医師・梶浦先生によるコラム連載、第2弾。最終回となる今回は、梶浦先生が受けてこられた質問の中で最も多かった人工呼吸器装着後の安楽な姿勢を保つ方法と、ベッド周りの環境整備のコツについてたっぷりご紹介いただきます。 本記事は、医療従事者の指導・管理のもとで行われている在宅医療の一例を紹介するものです。掲載されている医療機器の配置や使用方法を、一般の方が医療者の指示なく参考・模倣することは安全上のリスクがあります。在宅での医療機器管理については、必ず主治医や訪問看護師等の医療従事者にご相談ください。 はじめに ALS当事者や関係者の⽅々から最も多く寄せられた質問が、今回のタイトルです。 気管切開して⼈⼯呼吸器を付ける前のALS当事者にとって、装着後の⽣活がどのように変わるのかを想像することは難しいものです。人工呼吸器をつけても安楽に過ごせるのか。どのような環境整備が必要なのか。こうした情報は、人工呼吸器をつけて生きていくか否かの決断に大きく関わるにもかかわらず、調べてもなかなか出てきません。 私自身、これから⾃分がどうなっていくのかよく分からないながらも、死にたくない⼀⼼で、気管切開と人工呼吸器装着を決断しました。だからこそ、その後の生活で一番考えながら、改良を重ねてきたのもこのテーマだったのです。 ALSという病気は、症状も進行スピードも人によって違います。また、在宅療養環境(⽀援体制や⾃宅のスペースなど)もそれぞれの家庭で大きく異なります。⼀概に「こうしたほうがよい」とは⾔えず、教科書的に一括りにして扱うことが難しいのが実情です。 それゆえに、ALS当事者や関係者たちが、在宅での療養生活で実際に取り入れている知恵や工夫を持ち寄り、それを発信し、「いいな」と思った部分を⾃分の⽣活の中に取り⼊れていくしかないのだと思います。 そこで今回は、私が考えて、実践している⼯夫を紹介していきたいと思います。それぞれの状況に応じて参考にしていただければ幸いです。 安楽な姿勢の基本原則:接触面積を広くとる ⼈⼯呼吸器をつける前のALS患者を含む、重度の四肢体幹障害者に共通して重要なのは、 体と、⾞椅⼦・ベッドとの接触面積を広くとり、浮いている部分をできるだけなくす ということに尽きます。 これにより体圧が1ヵ所にかかり過ぎるのを防ぎ、分散することができ、身体への負担を最⼩限に抑えることができます。 座位での姿勢の工夫(図1) ⾞椅⼦に座るときやベッドの背もたれを起こしたときには、以下を意識します。 腰の部分が浮かないように、できるだけ深く座る 枕と⾸の間に隙間ができないよう、タオルや薄いクッションを丸めて入れる 図1 ベッド上での座位姿勢の工夫 側臥位での姿勢の工夫 クッションを活用し接触面積を広くとりつつ、足の骨同士が重ならないように気をつけています(図2)。 図2 側臥位での姿勢の工夫 ちなみに、私は毎晩、側臥位で寝ています。その際、空圧センサーにつま先を接地しておくようにし、ほんのわずかな⼒でもセンサーを押して、人を呼べるようにしています。センサーを押したら「反対側の側臥位へ体位変換してほしい」という合図です。 人工呼吸器をつけることで大きく変わること 人工呼吸器をつけると、気管孔と⼈⼯呼吸器が回路(ホース)で常につながるようになります。このホースが動いてしまうと、それが刺激になり、むせてしまったり、気管孔周囲に⾁芽組織*を形成する原因になったりします。そのため、ホースはできるだけ動かないように固定しておく必要があります。私がおすすめする固定⽅法は、胸元とベッドの2点で固定することです(図3)。 *肉芽組織:傷の治癒過程や慢性炎症の際に形成される、新しい結合組織と⽑細⾎管のこと。出血を伴うこともある。 図3 ホースの固定方法 ホースを胸元とベッドの2点で固定し、ホースができるだけ動かないように工夫している ホースの動きにさえ注意していれば、⼈⼯呼吸器をつける前と安楽な姿勢はあまり変わりません。私は人工呼吸器を装着したことで、呼吸苦から解放され、大きな安堵を感じました。 ベッド周りの環境整備と物品管理の工夫 ベッド周囲の環境は、部屋の広さやレイアウトによって変わる部分が⼤きいのですが、ここでは私が試⾏錯誤の末にたどり着いた「理想的な形」を書いていこうと思います。参考にしてみてください。 ベッド周りには⼈が⼊れるスペースを確保する 部屋を広く使うためにベッドを壁につけている⽅も少なからずいらっしゃいます。しかし、これは介助者にとっては、とてもやりにくい配置になります。 例えば、先述した側臥位の体位変換を左右均等に行うには、介助者がベッドの左右から行う必要があります。可能であれば、人が1人⼊れるくらいのスペースをどちらにも確保しておくことをおすすめします。 ■介護用電動ベッドとモーター数ちなみに、介護⽤電動ベッドはモーター数によって性能が変わります(表1)。モーター数が多いほど性能がよく、ALS患者のように介護度が高い場合、3モーター以上のモデルが推奨されます。 なお、要介護度によりますが、介護⽤電動ベッドは介護保険を利用してレンタルができます。 表1 電動ベッドのモーター数と機能 モーター数     機能           1モーター   背上げ(または脚上げとの連動)基本的な動作2モーター背上げ+脚上げ標準的な介護に対応3モーター背上げ+脚上げ+高さ高度な介護に対応。ベッドの高さが変えられるため、介護者の負担が軽減される4モーター以上背上げ+脚上げ+高さ+αベッド自体の傾斜が変更できる機能、立ち上がりサポート機能、体位変換機能など、さまざまな機能があり、より個々の細かいニーズに対応。 ベッド周りの物品は「厳選」し「コンパクトに配置」する ⼈⼯呼吸器を使用すると、人工呼吸器はもちろん、吸引器や排痰補助装置など、ベッドの周りに置いておく機器が増えます。限られたスペースの中で効率的に動けるよう、動線を考えてコンパクトにまとめることが大切です。 ■私の機器配置の工夫ここでは私が実際に配置している機器の配置⽅法をご紹介します(図4)。私は必要なものをできるだけコンパクトに置きたいため、1つのワゴンに人工呼吸器、吸引器、排痰補助装置、持続吸引器を載せています。⼈⼯呼吸器の加湿器もワゴンの⽀柱に固定してます。 図4 私の機器配置の工夫(一例として) ■カテーテルの保管方法⼝腔内と⿐腔内の吸引に必要なカテーテルは、洗濯バサミの⽳に通し、ワゴンの取⼿に固定して吊り下げています。気管カニューレ内を吸引するカテーテルは、特に清潔な状態を保つ必要があるため、壁から吊るして、⼈の⼿や身体などが触れない場所に保管しています。 在宅療養環境での一般的なカテーテルの保管⽅法としては、以下の2つが⽤いられることが多いです。私の場合、「(2)乾燥させて保管する方法」を採⽤しています。 (1)清潔な容器で保管する方法清潔な蓋つきの保存容器、または未開封の専⽤パック・滅菌袋に入れて保管する⽅法です。容器を再利用する場合は、十分に洗浄・乾燥させてから使用します。(2)乾燥させて保管する方法(私が採用している方法)風通しのよい場所で自然乾燥させて保管する方法です。カテーテルは水分が残ると細菌が繁殖しやすいため、しっかり乾燥させます。 病院では、基本的に吸引カテーテルを1回使⽤したら捨てるのが原則かと思いますが、在宅医療の現場では、使用できる吸引カテーテルの数が限られています。数日使用してから交換するケースが⼀般的なため、私はこのような方法で管理しています。 ■吸引カテーテルの色分け吸引カテーテルは太さによってコネクターの⾊が違います。私は、緑色の14Frを口腔内用、白色の12Frを気管カニューレ内用、黒色の10Frを鼻腔内用として使用しています。原則「鼻用は黒」など、吸引する部位ごとに色を分けておくと、家族が使うときにも間違えなくてよいかと思います。 ■通水ボトルの管理方法カテーテルを使⽤した後は、カテーテルの内腔に水道水を通して洗浄する必要があります。この時に使う水も、私はペットボトルに入れて、フックを取り付け、ワゴンに吊り下げています。気管吸引用カテーテルを通水する水は清潔な状態を維持しないといけないため、常にペットボトルの蓋を締め、⼝腔用・⿐腔⽤のペットボトルと間違えないようにしています。また、ペットボトルの⽔が半分以下になったら中⾝を破棄し、新しい⽔に交換します。ペットボトル自体は、週1回、新しいものに交換しています。 カテーテルや通⽔ボトルの管理⽅法は、家庭ごとに異なります。ここで紹介した方法は、1つの例として参考にしてください。 「enjoy!ALS 2」最終回の最後に― ALSと診断された⼈は、必ず⼀度は「死」を意識するでしょう。これまでずっと、⽣きることに前向きな情報だけを発信してきた私もそうでした。⼈は死を⾝近に感じたときに、改めて⾃分の⼈⽣について振り返るものです。 それが⼀瞬の出来事であれば「⾛⾺灯」と呼ばれるものなのかもしれません。⾃分の⼈⽣について振り返ったときに、⾃分は⼗分⽣きたのか? ⾃分の⼈⽣は満⾜なものだったのか? という問いについて考えさせられることになります。 当時35歳の私は、医師としてのキャリアも順調で、愛する家族もでき、⼈⽣には「希望」しかありませんでした。それが突然、⾃分はALSという病気であり、あと数年で死ぬかもしれないという予測不能な無慈悲な現実に直⾯しました。そのとき、⾃分の希望に満ちた未来は「絶望」という⾔葉に置き換わりました。絶望の中から⼀筋の希望を探し出し、前向きに⽣きていくことは、⾔葉ではとうてい表現できないほど、とてもつらく⼤変なことでした……。 私は「⼈の役に⽴ちたい」という強い思いから医師になり、医師の仕事が⾃分の⽣きがいでした。私の中の⼀筋の希望は「死ぬまで医師として、誰かの役に⽴てるように⽣き続けていこう」という決意でした。そんな⾃分の希望を守っていくために、さまざまな⼯夫を凝らしながら、もがき続けました。対⾯診療ができなくなったら遠隔診療に切り替え、⼿でカルテが書けなくなったら、⻭でカルテを書いてきたのです。 これからもさまざまな困難に直⾯すると思いますが、そのつど⼯夫を凝らしながら、もがき続けていきたいと思っています。そして、精⼀杯⽣きて、⼈⽣の最後にただ愛する妻と息⼦に「パパがんばってたね! かっこよかったね!」と⾔ってもらえたら、きっと⾃分の⼈⽣はとても有意義で素晴らしいものだったと思えることでしょう。そんな⽣き⽅をしたいものです。 コラム執筆者:医師 梶浦 智嗣「さくらクリニック」皮膚科医。「Dermado(デルマド)」(マルホ株式会社)にて「ALSを発症した皮膚科医師の、患者さんの診かた」を連載。また、「ヒポクラ」にて全科横断コンサルトドクターとしても活躍。編集:株式会社照林社

PENUT記事
PENUT記事
コラム
2026年6月2日
2026年6月2日

訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム「PENUT-T」特徴&指導者の声/日本訪問看護財団

在宅での看取りを支える訪問看護師の育成には、実践力だけでなく「人を育てる力」が求められています。PENUT連載最終回となる本記事のテーマは、在宅看取りを地域に広げ、次世代を育てる指導者を育成するための実践的プログラム「PENUT-T(ピーナット・ティー)」です。プログラムの特徴や指導者のリアルな声を通して、その魅力と可能性をご紹介します。 訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T)とは PENUTの連載第3弾では、訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T: Program of End-of-life care for home visiting Nurses Training-Trainer)をご紹介します。 PENUT-Tは、在宅看取りを推進するという使命感をもち、所属施設や地域において在宅看取りを実践できる訪問看護師を意欲的に養成できる「指導者」の育成を目的としたプログラムです。2024年度より年1回開催しており、現在は全国で126名の指導者が活動しています(2026年度末時点)。 プログラムは講義と演習で構成され、1日間の集合研修として実施されます(表1)。 PENUT-Tの4つの特徴 1.教育学の専門家による講義 講義「グループワーク研修の実施・評価とファシリテーターの役割・コツ」は、教育学の専門家が担当します。講義では、実践者を対象とした研修で押さえておくべき理論やポイント、ファシリテーターの役割と実践のコツについて学習します。 2.PENUTスーパーバイザーによるファシリテータートレーニング 演習はグループワーク形式で実施され、各グループにはスーパーバイザーが配置されます。スーパーバイザーは、在宅看取りを指導的立場で実践し、社会活動を通じてPENUTの質向上と普及に貢献してきた訪問看護師の方々です。 前列左から:大橋 奈美氏、柴田 三奈子氏、中島 朋子氏、平原 優美、富岡 里江氏、藤田 愛氏後列左から:岩本 大希氏、福田 裕子氏、清野 美砂氏、島田 珠美氏、黒澤 薫子氏、豊田 好美氏 3.修了後は「指導者」としてPENUT演習の開催が可能に PENUT-Tの修了者は、指導者としてPENUTの演習を開催できるようになります。指導者は、開催日時、開催形式(集合/オンライン)、受講料などを自ら設定し、地域や所属施設の在宅看取り実践力向上を目的に研修を企画・実施しています。 4.エビデンスに基づくプログラム PENUT-TはPENUTと同様に、アンケート調査、インタビュー調査、専門家のレビュー、モデル事業を経て開発された、エビデンスに基づく系統的なプログラムです。PENUT-Tの有効性を検証した研究成果は、日本看護科学学会の学術集会1)および学会誌2)にて公表しています。 1)濱谷 雅子, 平原 優美, 小沼 絵理, 沼田 華子, 野口 麻衣子, 菱田 一恵, 岡本 有子, 竹森 志穂, 新幡智子, 山田 享介, 栗田 佳代子, 山本 則子. 訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(指導者)(PENUT-T)の有効性の検討. 第44回日本看護科学学会学術集会(2024年12月)2)濱谷 雅子, 平原 優美, 小沼 絵理, 新幡 智子, 沼田 華子, 野口 麻衣子, 菱田 一恵, 山田 享介, 岡本有子, 竹森 志穂, 栗田 佳代子, 山本 則子. 訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T)の有効性の検討. 日本看護科学会誌. in press. 指導者の声 地域で活躍する指導者の声を紹介します。 小川 綾乃さん(ソフィアメディ訪問看護ステーション成城 管理者、訪問看護認定看護師/2025年度PENUT-T修了)―PENUT-Tを受講し、指導者を取得した理由を教えてください。これまでもELNEC-J(End-of-Life Nursing Education Consortium-Japan)コアカリキュラム指導者として、講義を行ってきましたが、より在宅の場にフィットした内容で学びを届けたいという思いがありました。また、自ステーションが本年度から東京都の教育ステーションに認定されたこともPENUT-T受講のきっかけとなりました。お看取りの経験が少ない地域のステーションに対してPENUTを実施することで、地域全体の在宅看取りケアの底上げに貢献できるのではないかと考え、受講を決めました。―PENUT-Tを実際に受講してみていかがでしたか。鍋田先生の「グループワーク研修の実施・評価とファシリテーターの役割・コツ」は、本当に素晴らしく、思わず引き込まれる講義でした。私はこれまで、研修では本題を話すことが最も重要だと考えており、研修の目標はついさらっと流してしまいがちでした。しかし、まずは目標をしっかり共有することが、受講者の学びを大きく左右するのだと気づかされました。さらに、「受講者としっかり目線を合わせる」など、講義を進めるうえでの受講者との接し方や心構えも学ぶことができました。受講後すぐに講師を務める機会があったのですが、学んだことを早速実践しています。―グループワーク(演習)はいかがでしたか。グループメンバーは初対面の方ばかりだったので、最初はお互いをきちんと評価し合うことが難しく、「コミュニケーションが上手ですね」「笑顔が素敵ですね」といった、当たり障りのないフィードバックに終始していました。そんなとき、スーパーバイザーから「そういうのはいらない。大事なことはきちんと伝えなければ駄目だ」とズバッと指摘していただき、受講者の学びのために指導者としてどうあるべきか、その心構えを教えていただきました。また、スーパーバイザーは、常に広い視野で状況を捉えていて、いただくアドバイスはどれも有意義でした。大人数の前で手を挙げて質問するのは躊躇してしまう場面もありますが、各グループにスーパーバイザーがついてくださったことで、気軽に質問や相談ができ、理解が深まり、腑に落ちる学びが得られました。ここで身につけたファシリテーションスキルは、面談などさまざまな場面で生きています。―PENUTの開催についてはどのようにお考えですか。自社では、新卒や卒後3年以内の若いスタッフが増えています。お看取りの経験がなく、終末期の身体の変化を知らないスタッフも少なくありません。そのようなスタッフには、PENUTで知識を身につけてもらうことで、利用者や家族に安心していただけるサポートにつながると考えています。まずは自社スタッフを対象にPENUTを実施し、その後は地域でもぜひ開催してみたいです。一方で、演習開催の前に、講義受講料が必要となる点が1つのネックだと考えています。例えば、会社全体から受講希望者を募り、受講料を会社負担で実施できないかなど、いくつかの方法を検討してはいるのですが、まだ実施には至っていないのが現状です。―PENUT-Tの受講を検討している方へメッセージをお願いします。コミュニケーションの取り方やファシリテーションの方法など、自分自身の学びにつながり、実践でいかせる内容が多くあります。受講に迷っている方は、ぜひ受講していただけたらと思います。また、一緒に学んだ仲間との横のつながりができるのもPENUT-Tの魅力です。地域でPENUTを開催する際にも、一人で抱え込まず、仲間と協力しながら取り組むことができます。仲間づくりという点でも、とてもおすすめの研修です。 土屋 清美さん(つむぐ訪問看護ステーション 管理者、訪問看護認定看護師/2023年度 PENUT-T修了)―PENUT-Tを受講し、指導者を取得した理由を教えてください。これまでELNEC-Jコアカリキュラム指導者として地域で活動してきました。ELNEC-Jは病院向けの内容も多いのですが、在宅看取りに特化したプログラムが新たにできたと聞き、自分自身の知識を深めたいと思ったことが受講理由のひとつです。自ステーションのケアの質をより高めたいという思いもありました。さらに、訪問看護認定看護師として「地域に向けて何かできることはないか」と考えていたこともあり、指導者の取得を決めました。―自ステーションのケアの質の向上という点で、PENUTをどのようにいかされていますか。PENUTでは、訪問看護計画の立案とコミュニケーションの演習を行います。経験の浅い訪問看護師が作成する訪問看護計画書は、どうしても看護師側の視点に寄ってしまう傾向があります。そのため、「利用者の目線に立つとどのような計画になるだろうか」と一緒に考える時間を大切にしています。また、利用者や家族への声掛けに躊躇してしまうスタッフもいるため、実際の場面を振り返りながら、コミュニケーションの取り方について一緒に考える機会をつくっています。スタッフにはPENUTの受講を積極的に勧めています。私もスタッフも、PENUTの教材をボロボロになるまで読み込み、日々の実践にいかしています。―地域に向けてはいかがでしょうか。自ステーションが所属する練馬区訪問看護ステーション連絡会の石神井ブロックには、研修会チームがあり、不定期で勉強会を行っています。まずは自ステーションのケアの質を高めていくことを大切にしながら、いずれはPENUT開催の企画を提案できたらと考えています。一方で、開催に至るまでのハードルの高さや日々の忙しさなどには課題も感じています。先日、あすか山訪問看護ステーションがPENUTを開催されたと伺いました。そのような事例も参考にしながら、地域での学びの場づくりにつなげていきたいと思っています。―PENUTやPENUT-Tの受講を検討している方へメッセージをお願いします。PENUTは、在宅という実践の場をしっかりと見据えてつくられたプログラムなので、困ったときに該当ページを開くと、何かしらのヒントが得られると思います。演習では、訪問看護計画書の作成方法やコミュニケーションについてグループで話し合うことで、自分の傾向に気づき、多くの学びを得られる点も魅力です。さらにPENUT-Tを受講して、学んだ知識をスタッフ教育にいかせるようになったと実感しています。 連載のおわりに ここまで3回にわたり、PENUTについてご紹介してきました。開発に携わった多くの訪問看護師、講師、研究者の思いが形となり、PENUTを受講してくださった訪問看護師の皆さんが、今日も全国で素晴らしいケアを実践されていることは、私たちにとって何にも代えがたい喜びです。 一方で、PENUTをより多くの地域や多様な現場へ届けていくためには、例えば、指導者による演習開催の推進、受講者のフォローアップ体制の強化など、まだまだ取り組むべき課題が残されています。さらに、プログラムを時代の変化や現場のニーズに合わせてブラッシュアップし続けていくことも必要です。 これからも、現場の皆さんとともに歩みながら、より実践に根ざした学びの場を育てていきたいと考えています。 PENUT受講案内1. 講義お申込受付中受講形式:オンデマンド配信受講時間:約11時間(テスト含む)受講可能期間:60日間(この間は繰り返し受講可能)プログラム・対象等詳細: https://www.jvnf.or.jp/penutkensyu/2. 演習【日本訪問看護財団主催】(1)会場開催開催日時:2026年11月14日(土)9:30~16:05申込期間:2026年8月1日(土)~10月28日(水)プログラム・対象等詳細:https://jvnf.manaable.com/login/cd87bf81-a546-4684-be21-d46b52f07f9f/detail(2)Web開催開催日時:2027年1月30日(土)9:20~16:05申込期間:2026年10月1日(木)~2027年1月13日(水)プログラム・対象等詳細:https://jvnf.manaable.com/login/230e3b63-f73b-4f42-9799-e2e9e012e5fa/detail【他団体(PENUT-T修了者)主催】他団体主催の演習は、トップページのお知らせに掲載しておりますhttps://www.jvnf.or.jp/penut/PENUT-T受講案内受講形式:集合研修(東京会場)開催日時:2027年2月20日(土)申込期間:2026年11月1日(日)~2027年2月3日(水)プログラム・対象等詳細は、日本訪問看護財団公式ホームページにて後日公表いたします 研修情報・詳細はこちらさらに詳しい情報や研修開催情報については、PENUT専用ウェブサイトをご覧ください。https://www.jvnf.or.jp/penut/ 執筆:濱谷 雅子(はまたに まさこ)/公益財団法人 日本訪問看護財団 事業部博士(看護学)。早稲田大学スポーツ科学部を卒業後、修士課程から看護学の道へ。2020年度より現職。日本訪問看護財団が5年間にわたり実施した「訪問看護師向け在宅看取り教育プログラムの開発」事業では、主研究者として開発に携わる。訪問看護師の優れた実践をインタビュー調査などを通じて理論化し、その成果を広く社会へ発信する研究活動を行っている。

看護師同乗の「民間救急」とは? 要望に応え、不測の事態に備える仕事
看護師同乗の「民間救急」とは? 要望に応え、不測の事態に備える仕事
コラム
2026年5月26日
2026年5月26日

看護師同乗の「民間救急」とは? 要望に応え、不測の事態に備える仕事

病気や障害などによって「移動の壁」に直面する人は多く、公的支援だけでは不十分な現状があります。そうした課題の中で注目されているのが、医療的ケアを伴う移動を支える「民間救急」です。本記事では、ケアプロ株式会社 交通医療事業部長の藤 健二郎氏に、民間救急の調整や事前対応の実際を紹介いただきます。 執筆:藤 健二郎(とう けんじろう)社会人経験を経て看護師となり、済生会福岡総合病院の救命救急センターで勤務。重症患者の看護に従事した後、大学院で看護師のストレスに関する研究を行い、急性・重症患者看護専門看護師を取得。現在は東京女子医科大学病院CCUでの臨床と並行し、ケアプロ株式会社 交通医療事業部長として、重症患者搬送や外出支援など「医療×移動」の分野で事業を展開している。■ケアプロ株式会社「ドコケア」:https://dococare.com/transport民間救急とは?緊急性の低い患者の搬送を行う民間サービスのこと。多くは、消防庁の認可を受けて「患者等搬送事業(一般乗用旅客自動車運送業)」を行っている。 「民間救急=ただの移動」という誤解 民間救急と聞くと、多くの人は「病院から病院へ、患者を運ぶだけ」「タクシーの延長みたいなもの」と思うかもしれません。 しかし、実際は大きく異なります。そこにいるのは、以下のような患者さんです。 認知症で環境が変わると混乱してしまう人 痙攣のリスクを抱えた人 ALSなど、呼吸や意思伝達に制限がある人 心不全で、今この瞬間も循環動態が揺れ動いている人 こうした患者さんを、医療的ケアを行いながら安全に移動させるのが民間救急です。 状態を安定させながら搬送する たとえば、こんなケースがあります。 末期の心不全で入退院を繰り返している80代の男性。「地元に帰りたい」という強い希望があり、東京から九州へ搬送することになりました。この方は、強心薬と利尿薬を持続投与しながら、身体の状態を維持していました。 つまり、単純に移動するだけではなく、 薬剤の持続投与 バイタルサインのモニタリング 急変リスクへの対応 を行いながらの搬送です。 こうした医療的ケアは、すべて主治医の指示のもとで事前に準備し、搬送中も治療が途切れないように設計しています。さらに今回は、患者さんから「道中で大阪の親戚に会いたい」という希望があり、バリアフリーのホテルを確保して1泊することになりました。宿泊中も医療管理が継続できるよう、必要な薬剤や機器を事前に整え、万が一に備えて近隣の医療機関とも連携をとった上で対応をしました。 予測できないことが起きる前提で動く 慣れない環境で、その患者さんは夜間にせん妄を発症しました。点滴を抜こうとする、落ち着かない、指示が通らない。こうした状況は珍しくありません。 持参していた薬剤を使用しながら対応し、なんとか朝を迎えました。しかし、ここで重要なのは「対応できたこと」ではなく、“対応できる前提で準備していること”です。 万が一に備え、移動経路にある医療機関へ事前連絡 薬剤は搬送終了までもつ量を準備し、事前に医師の指示書を取得 宿泊施設の選定と動線確保 患者と家族、医療者、交通手段の調整 これらをすべて整えたうえで、はじめて「移動」が成立します。 民間救急は「見えない調整」の積み重ねで成り立つ 実際の現場では、 新幹線の座席調整 車いすやストレッチャーの導線確保 タクシーや介護車両の手配 患者の状態に応じた人員配置 など、無数の調整が同時並行で進みます。 しかもそれらは、患者の状態によって常に変化します。 つまり、民間救急とは「医療・生活・移動を同時に成立させる仕事」なのです。 * * * 民間救急は、「ただ運ぶ仕事」ではありません。むしろ、その人の人生の続きをつなぐ仕事です。もし、移動を理由に何かを諦めている患者さんや家族がいるなら、こうした選択肢があることを、知ってもらえたら嬉しいです。

訪問看護ステーションの開設に必要な事業計画とは?
訪問看護ステーションの開設に必要な事業計画とは?
コラム
2026年5月19日
2026年5月19日

訪問看護ステーションの開設に必要な事業計画とは?

訪問看護ステーションの運営は、ケアを提供するだけでは成り立ちません。スタッフの育成や地域との連携、安定した運営体制の構築など――。日々の業務の中で、管理者が考えるべきことは多岐にわたります。そのような状況で、現場の質を保ちながら訪問看護事業を継続していくためには、目の前の業務だけを見ていては不十分です。「誰にどんなサービスを提供していくか」という長期的な視点が欠かせません。そこで重要になるのが、ステーションを立ち上げる前に立案する「事業計画」です。 訪問看護で事業計画を立てる理由 訪問看護ステーションを開業する際、まず着手すべき事業計画。とはいえ、 「そもそも事業計画って何?」 「現場経験しかないけど、自分にできるかな?」という不安を感じている方は少なくないでしょう。 看護の分野は、経営や営業などの文脈では語られることが少なく、「ケアの質が高ければ成り立つ」というイメージを持たれやすいのも事実です。 しかし実際には、「どうやって事業として継続させていくか」を考えなければ、安定した運営は難しくなります。 そこで今回は、訪問看護ステーション立ち上げにおける事業計画とは何か、そしてなぜ必要なのかについて、わかりやすく解説していきます。 事業計画は事業を成立させるための「設計図」 事業計画とは、一言でいうと「事業をどうやって成り立たせるかを整理したもの」です。訪問看護に置き換えると、例えば次のような問いに答えていくことになります。 どんな利用者にケアを提供するのか ステーションの強みは何か どのエリアで開業するのか どうやって地域の方々に選んでもらうのか これらを整理せずに開業してしまうと、なんとなく運営している状態になりかねません。気がついたときには利用者が集まらず、経営が不安定になるリスクも出てきます。 逆に言えば、事業計画をしっかり立てておくことで、ステーションの運営理念が明確になり、経営判断の軸にもなっていくでしょう。 訪問看護の利用者は、自然に増えるわけではない 訪問看護は本来、必要な人に届けるものです。一般的な商売のように、広告や営業で売り込むようなものではありません。そのため、「いいケアをしていれば自然と利用者が増えるのでは?」と思われることもあります。 しかし実際には、地域の中で複数の訪問看護ステーションが存在しており、その中から選ばれる必要があります。つまり、「自分たちのステーションだからこそ発揮できる価値」を考えることが重要です。ここで必要になるのが、まず地域のニーズを知り、他のステーションの特徴を調べること。そしてこれらを踏まえ、どんな価値を発揮するステーションにしていくかを考えることです。 地域ごとの具体的なニーズを把握する 選ばれるステーションにしていくためには、地域のニーズを具体的に知っておく必要があります。エリアによって、訪問看護を利用したい方のニーズは大きく異なります。 独居の高齢者が多い 小児医療のニーズが高い すでに多くのステーションがある などの情報を把握していないと、「ニーズが少ない分野を選んで開業してしまう」「他のステーションが多すぎて選ばれない」といった状況にもなりかねません。 逆に、地域のニーズと自分たちの強みが一致すれば、無理に利用者を増やそうとしなくても選ばれやすいステーションになるでしょう。 そのため事業計画では、「どこで・誰に・何を提供するのか」をセットで考えることが重要です。 地域の中で選ばれる理由を把握する 数あるステーションの中から選ばれるためには、自分たちだからこそ発揮できる価値を考える必要があります。近隣のステーションの特徴を踏まえ、独自の「強み」を見出し、育てていきましょう。例えば、 難病の利用者へのケア体制がある 精神科看護に詳しい人材を確保できている 小児分野の看護・医療体制が整っている などの高い専門性があれば、これらを強みとして、他のステーションとは異なる価値を発揮できます。 このように「どんなサービスを、誰に、どのように提供するか」を、「自分たちだからこそ発揮できる価値」とセットで考えることが、選ばれる事業所づくりにつながるのです。 計画を実現可能にする3ステップ 事業計画は、ただ考えるだけでは机上の空論になってしまいます。実行できる形に落とし込むためには、次の3ステップで進めるとよいでしょう。 ステップ1.やるべきことを洗い出す 手続き・採用・営業準備など、必要なタスクを整理することで、抜け漏れを防げます。 ステップ2.タスクを分類分けする 大小さまざまなタスクを、大まかなジャンルごとに振り分けていきます。 ステップ3.期限から逆算してスケジュールを組む いつまでに開設するのか、そのために何をいつまでにやるのかを決めるフェーズです。月や週単位で何をやるかまで落とし込むことで、計画が現実的になります。また、計画通りに進まないことも考慮し、予備日を設けるようにしましょう。 まとめ:事業計画は、経営で迷わないための地図になる 事業計画は「どうやってこの事業を続けていくのか」を、言葉に落とし込んだものです。日々さまざまな判断を求められる訪問看護管理者にとって、方向性を示す地図があることで、経営の安定性は大きく変わっていくでしょう。 もし今あなたが立ち上げを考えているのであれば、「自分は、どんな訪問看護ステーションをつくりたいのか?」 「誰に、どんな価値を届けたいのか?」といった問いを言葉にすることが、事業計画の第一歩です。 次回のコラムでは、収益構造や人員体制などの視点で事業計画をどう立てるべきか、具体的に解説していきます。それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。 執筆・編集者:米沢 まさこ(看護師ライター) 監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士)株式会社UPDATE代表取締役2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。 現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。その他、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。

エンバーミングの今と役割―海外事例・コロナ禍の研究から
エンバーミングの今と役割―海外事例・コロナ禍の研究から
コラム
2026年5月12日
2026年5月12日

エンバーミングの今と役割―海外事例・コロナ禍の研究から

日本におけるエンバーミングの浸透状況や背景を整理しつつ、海外で広がる「セレブラント」の取り組みを通して、葬儀がもつ意味を考えます。さらにコロナ禍に、著者である橋爪 謙一郎氏が代表取締役を務める株式会社ジーエスアイが参画したエンバーミングに関する研究やマニュアル作成の取り組みも紹介。「どのような状況でもご遺族が大切な時間を持てるようにしたい」という揺るぎない思いが、すべての活動の根底にあります。 はじめに 米国カリフォルニア州のエンバーマーライセンスを取得し、現地で業務に従事する中で、エンバーミングの価値を実感しました。その経験を胸に、2001年に日本に帰国。日本でもいずれエンバーミングが重要な選択肢となることを期待し、日本人エンバーマーの育成やエンバーミングに関するさまざまな啓蒙活動に取り組んできました。 昨今、大切な人や自分自身の葬儀を検討する際に、宗教やこれまでのしきたりにとらわれず、「自分らしさ」やそれぞれの「死生観」をはじめとした価値観を反映させたいと考える人たちが増えています。しかし、個々人の思いや理想がそのまま実現されることはなかなか難しいのが現実です。 今回は「エンバーミング」が日本でどのくらい浸透しているのか、そしてその背景にある要因についてお伝えします。さらに、葬儀が多様化する中で、海外で広がる「セレブラント」の取り組みを参考に、日本において何を軸に「葬儀」を考えればよいかを「グリーフ(悲嘆)」の視点から考察していきたいと思います。 エンバーミングの普及を阻むもの 2024年時点で、日本全国でどのくらいエンバーミングが行われているのか、あらためて調べてみました。一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)のまとめによると、およそ82,000件1)。同じ年の総死亡者数と照らし合わせると、その割合は約5%にすぎません。残念ながらまだまだ浸透しているとはいえない状況が見えてきます。 浸透度合いが、現状に留まる要因はいくつか考えられますが、ここでは、その中でも特に影響を与えている2点について解説します。 (1)エンバーミング施設とエンバーマーの不足 2025年4月1日現在、全国32の都道府県に90の専門施設が開設され、エンバーミングを提供しています。しかし、これらの施設は都市部に集中しており、エンバーミングを依頼したくてもできない地域があるのが現状です(図1)。 図1 エンバーミング施設のある都道府県 ピンク色:施設のある都道府県日本遺体衛生保全協会:日本への導入経緯.https://www.embalming.jp/embalming/medic/(2026/5/8閲覧)より許諾を得て転載 また、2025年現在、IFSAの認定エンバーマーは約300人になりますが、実際に稼働している人数はこれより少なくなっています。そして、1人が1日に処置できるエンバーミングの件数は、最大で3~4件ほどです(労働時間を8時間として計算)。年間に提供できるエンバーミングの件数を増やすには、エンバーミング施設の数や、認定師資格をもつエンバーマーの人数を増やすしか方法がないといえます。 エンバーマーの数を増やすには、教育機関の拡充も必要ですが、現在、エンバーマーを育成する教育機関は1校しかありません。学校を卒業後、認定試験を受けて、毎年20人前後のエンバーマーが認定されますが、実際の需要に追い付いていない状況です。 (2)価値が伝わらない―業界内の認知の壁 日本にエンバーミングが導入され、1988年に埼玉県内の葬儀社で初めて提供されてから、すでに37年以上が経過しています。しかし、エンバーミングを自社の商品として取り扱っていない葬儀社のスタッフの中には、エンバーミングがご遺族にもたらす価値について、正確な知識を有している人が多いとはいえません。 例えば、「日本では土葬をするわけではないから、エンバーミングは必要ない」あるいは「火葬までの数日間であれば、ドライアイスや保冷庫できれいな状態を保てる」といった考えから、ご遺族にエンバーミングを勧めない葬儀社もあります。 実際に、いくつかの葬儀社に問い合わせをしたものの「エンバーミングは不要」と説得されたり、「当社では対応できない」と断られ、インターネットで探し回った末に弊社にたどり着いたというケースがありました。「エンバーミングをお願いできる会社にやっと出会えた」とホッとされるご家族がまだまだいらっしゃいます。 実は、今回この原稿の執筆依頼をお受けしたのは、正しい情報や知識を必要としている人たちにお届けしたいと考えたからです。ご家族と接する専門職の皆さんがこの記事を読むことで、終末期医療や在宅医療を受けている患者さんのお身体の状態や、ご家族の心身の状態を把握した上で、エンバーミングについて適切に情報提供できるようになるかもしれない。そうすれば、大切な人を喪った後の気持ちを整理し、感情との折り合いをつけていく上で、欠かせない支援になると思うのです。 大切なのは、「エンバーミングが必要かどうか」だけで判断するのではなく、故人のお身体の状態やご家族の心身の状態を踏まえ、医療従事者と葬祭事業者が連携して最適な対応を考えていくことです。死別を経験されたご家族が少しずつ元気を取り戻していけるよう、その過程を支える社会的なしくみが求められているのではないかと感じています。 世界で活躍する「セレブラント」 皆さんは「セレブラント」という職業をご存知でしょうか? セレブラント(Celebrant)とは、故人やその家族の意思、信念、価値観、文化的な背景などを反映させてプランニングされた「世界に一つの儀式」を執り行う人材のことです2)。1973年にオーストラリアで誕生しました。 それまで結婚の儀式は教会のみで挙げるものとされていましたが、移民の増加や性の多様性などの社会的な変化の影響もあり、キリスト教に属していない人々の要望を受けて、政府が結婚式の司祭認可制度を設立しました。これにより、結婚の儀式は教会以外の場所でも行うことが可能になり、選択肢の幅が大きく広がったのです。 やがてこのムーブメントは結婚式だけにとどまらず、葬儀の場にも広がりました。セレブラントが宗教色にとらわれず、故人の生き方やご家族の思いを中心にセレモニーを設計・司会する専門職だったからかもしれません。セレブラントは、宗教だけでは解決できないことを解決し、思いを整理する役割を果たしてきました。ご遺族のグリーフに対して細やかな配慮ができる場づくりが評価され、オーストラリアでは大切な人を亡くした時に、セレブラントに葬儀を依頼する人が増えています。 セレブラントによって執り行われる葬儀の割合について、いくつかの国の統計を参考までに共有します(表1)。 表1 国別セレブラントによって執り行われる葬儀の割合3)-7) ニュージーランド  56%オーストラリア  60~70%アメリカ合衆国52%イギリス40% 日本における葬儀の現状とこれから 日本では葬儀が何のために執り行われるのかという目的を考えることなく、葬儀にかかるコスト面に焦点を当て、簡素化を選択する動きも増えてきたように思います。 確かに、終末期までそばに寄り添えたからこそ「葬儀は質素で構わない」と考える人もいるでしょう。しかし、葬儀の際に故人の「生き方」や「価値観」、「家族との思い出」を反映させた時間をつくり、心の中にしっかりと思い出を残せるような機会をつくることは、グリーフサポートの観点からも必要不可欠だと考えます。諸外国で広がる「セレブラント」の活躍を見ていると、日本においても今その必要性は増しているのではないかと強く感じます。 COVID-19禍における研究への取り組み 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がパンデミックになった際、感染を広げないために葬儀にもガイドラインが設けられました。今振り返ってみると、そこまでしなくてもよかったのではないかと思えるほどの過度な感染対策の結果、顔を見ることもできないまま火葬となり、遺骨を受け取ることしかできなかったご遺族も少なくなかったはずです。 デルタ株が蔓延していた時期、感染対策を徹底しつつご家族が希望するお別れの場をつくるため、当社は千葉大学法医学教室や東京大学法医学教室とともにエンバーミング処置に関する研究に参加しました。検討した内容は(1)感染対策、(2)薬品の濃度、(3)処置の方法など、多岐にわたります。 さらに、この研究に先駆けて、日本医師会総合政策研究機構対新型コロナウイルス特別医療支援タスクフォース「新型コロナウイルス感染症 ご遺体の搬送・葬儀・火葬の実施マニュアル支援プロジェクト」に当初より参画し、海外での対策事例の調査やマニュアル執筆にも携わりました。それは、ご家族や葬儀の参列者はもちろん、エンバーマー、ご遺体を搬送する担当者、葬儀の担当者、火葬場職員など、関わるすべての人々が安全な状態で葬儀を執り行えるようにするためでした。 「さよならのない別れ」とエンバーミングの役割 ミネソタ大学名誉教授のポーリン・ボス博士は、COVID-19で家族を亡くした場合、それは「完全な喪失」ではなく「あいまいな喪失」になる可能性があると示唆しました。喪失そのものが不明瞭な状況であったため、喪失後に起こるグリーフの反応が複雑化したり、凍結したりすることが起こり得ると指摘したのです。 日本ではパンデミック初期から病院での面会制限や遺体への接触制限が広く導入され、「お見舞いにも行けない」「臨終に立ち会えない」「顔を見ることができない」「葬儀を行えないまま火葬される」といった事態が各地で起こりました。こうした状況下での喪失体験は、「本当に亡くなったのか」という思いが宙づりの状態になってしまいます。つまり、「心理的には存在しているが、身体的(物理的)には存在していない状態」に当たると考えられるため、いわば「さよならのない別れ」になってしまうことが危惧されました。 これらのことから、エンバーミングを活用し、感染対策を講じ安全を確保しながらも「死を現実として受けとめる場」を提供する必要性があると考え、当社は研究に協力しました。今後どのような状況においても、ご遺族に必要なお別れの場を提供できるよう研究に取り組み、情報提供に努めていくつもりです。 * * * 4回にわたり、この記事をお読みくださった方には、エンバーミングの「防腐」「殺菌」「修復」の3つの機能をどう活かすかで、意義のあるお別れができるようになることをご理解いただけたのであれば、うれしく思います。 執筆:橋爪 謙一郎株式会社ジーエスアイ 代表取締役一般社団法人グリーフサポート研究所 代表理事米国で葬祭科学とエンバーミング、グリーフサポートを学び、帰国後(有)ジーエスアイと(一社)研究所を設立。現在は東大大学院で脳科学的視点からグリーフの研究を行う。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)日本遺体衛生保全協会:エンバーミングの法的解釈.https://www.embalming.jp/embalming/interpretation/2026/5/8閲覧2)株式会社ジーエスアイ:セレブラントとは.https://www.griefsupport.co.jp/griefsupport/celebrant.html2026/5/8閲覧3)The Funeral Directors Association of New Zealand:2023 New Zealand Funeral Industry Trends Report.2023.https://funeraldirectors.co.nz/assets/2023-FINAL-NZ-Funeral-Industry-Trends-Report-v3.pdf2026/5/8閲覧4)McCrindle Research Pty. Ltd.:Australian Bureau of Statistics, The Australian Funeral Directors Association Funeral Industry Trends Report 2024. https://mccrindle.com.au/app/uploads/2018/04/Deaths-and-funerals-in-Australia_McCrindle.pdf2026/5/8閲覧5)National Funeral Directors Association:2024 Consumer Awareness and Preference Studyhttps://nfda.org/about-nfda/research-and-information2026/5/8閲覧6)Church of England Data Services team:The Church of England, Detailed Diocesan tables for Statistics for Mission 2023.https://www.churchofengland.org/sites/default/files/2024-12/statisticsformission2023.pdf2026/5/8閲覧7)Office for National Statistics (ONS):Statistical bulletin, Death registered in England and Wales 2023.https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/birthsdeathsandmarriages/deaths/bulletins/deathsregistrationsummarytables/20232026/5/8閲覧 【参考文献】○Pauline Boss:The Myth of Closure: Ambiguous Loss in a Time of Pandemic and Change.New York:W. W. Norton & Company;2021.○黒川雅代子,石井千賀子,中島聡美,他編著:あいまいな喪失と家族のレジリエンス 災害支援の新しいアプローチ:誠信書房,東京,2019.○ポーリン・ボス著,中島聡美,石井千賀子監訳:あいまいな喪失とトラウマからの回復 家族とコミュニティのレジリエンス.誠信書房,2015.

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