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地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】
地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】
コラム
2024年1月23日
2024年1月23日

地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 東北ブロック、戸崎 亜紀子さんのご登場です。訪問看護師になったきっかけや、東日本大震災のご経験、地域のニーズに向き合う活動、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の啓発活動などをご紹介いただきます。 執筆: 戸崎 亜紀子星総合病院 法人在宅事業部長/在宅ケア認定看護師総合病院で急性期看護を経験した後、育児・介護のため一時退職。クリニック勤務を経て星総合病院に入職し、精神科病棟を経験した後、訪問看護ステーションへ。訪問看護ステーション管理者、在宅事業部事務局長、法人看護部長を経て、現職。2009年~ ポラリス保健看護学院 非常勤講師(在宅看護論)2012年~2021年 福島県訪問看護連絡協議会 理事、副会長2015~2016年 福島県看護協会 施設・在宅看護師職能委員会2016年~ 郡山医師会 在宅医療介護連携推進特別委員会メンバー2021年~ 日本訪問看護認定看護師協議会 理事2022年~ 感染管理認定看護師教育課程開設準備 東北ならではの在宅看取り実践事例を紹介 まずは、訪問看護認定看護師協議会の東北ブロックについてご紹介します。東北ブロックの会員数は10名です(2024年1月現在)。少ない人数ですが、年に2回は仙台に集合して研修を行ってきました。近年はオンラインでのミーティングや研修もできるようになり、交通費や移動時間の心配がないぶん、より活動しやすくなっています。 2021年に、協議会では日本財団支援事業として全国 各ブロックで「在宅看取りを実践できる訪問看護師の育成事業」に取り組みました。東北ブロックの私たちもオンラインでの打ち合わせを重ね、研修当日は東北の訪問看護師86名に対して、東北ならではの実践事例を紹介。それを踏まえたディスカッションも行うことができました。これは、認定看護師として力が発揮できたと実感でき、自信になる取り組みでした。 ※参考日本訪問看護認定看護師協議会「2021年度日本財団支援事業(遺贈基金) 在宅看取りを実践できる訪問看護師の育成プロジェクト」 東北ブロック活動報告(PDF) ブロック活動では、悩みや境遇が近い認定看護師同士でディスカッションでき、刺激を受けることや励まされることが多くあります。今後もっと仲間が増えることを切に願っています。 「家に帰りたい」患者さんのために さて、ここからは私自身の経験や活動内容についてもお話ししていきたいと思います。 私が訪問看護を始めたきっかけは、当時ナースバンク(現福島県ナースセンター)からお知らせのあった「訪問看護婦養成講座」です。「ブランクの不安解消になるのでは」という安易な気持ちで参加したのですが、その講座で介護保険や訪問看護制度を知ったことが、私の転機になりました。 急性期病院で働いていたとき、「家に帰りたい」と言いながら病棟で息を引き取っていった終末期の患者さんたちを数多く看てきましたが、仕方のないことだと思っていました。それが「今の時代なら自宅に帰してあげられるんだ」と知り、衝撃を受けたのです。 「ぜひ訪問看護をしたい」と現在勤めている法人に就職し、病棟で精神科看護を経験したのち、訪問看護ステーションに異動となりました。精神科訪問看護や介護保険での高齢者の訪問、在宅看取りに携わりました。 3.11東日本大震災を経験。災害への想い 私が訪問看護認定看護師になったのは、訪問看護ステーションに勤めて4年目の2010年のこと。退院調整でがん性疼痛看護認定看護師と協働する機会があり、彼女に大きな刺激を受け、44歳で認定看護師になったのです。 学んだことを活かしてより深くアセスメントできるようになり、やりがいをもって活動していた矢先、2011年に東日本大震災と原子力発電所の事故が起きました。当地は津波こそない地域でしたが、震度6弱の揺れにより自宅が全壊判定となる被害を受け、余震と放射能の恐怖や先の見えない不安のなか、無我夢中で日々を送りました。 星総合病院 被災写真(2011年3月12日撮影)。スプリンクラーが作動し、二次被害も危惧されたため、300人以上の患者さんは全員避難。当日のうちに、法人の関連病院や地域の急性期病院に振り分けた そのような状況下で私が前を向くことができたのは、認定看護師教育課程の先生や同期の仲間、その他大勢の方々が心を寄せてくださったおかげです。そして、自分の看護を待っている方がいることも、大きな支えでした。突然病気や障害を抱えることになった患者さんの気持ちと、突然被災した自分を重ねることも度々ありました。被災者になってみて、看護のもつ力、例えばそばにいること、見通しに関する情報を提供すること、関心を寄せ続けることなどが大きな力になると実感し、この経験から数多くのことを学びました。 実は震災の2年前、「宮城県沖地震(1978年)が再来する確率80%以上」といわれていました。そのため、当時所属していた部署で阪神・淡路大震災や新潟県中越地震が起きた際の訪問看護ステーションの事例を読み合わせし、対策を検討する機会を持ちました。この会を通じて、電話がつながらなくなり安否確認に苦労した話や、波打った道路や崩れた塀などで夜間の訪問が危険になった話を知り、当時できることを検討して取り組みました。そのうちのいくつかは、東日本大震災の時に現実に。「念のため」と思って対策していたことが、まさかこれほど短期間のうちに役に立つとは、思いもよりませんでした。 近年は「想定外の災害」「命を守る行動を」といった言葉を、頻繁に耳にするようになりました。新型コロナウイルスのパンデミックも災害といえます。「大丈夫だろう」ではなく、「起きるかもしれない」と自分事として考えておくこと。そしてBCPを作成しておくこと。私はこれらの大切さを、身をもって実感しています。 今年度(2023年度)に日本訪問看護認定看護師協議会がBCP作成支援事業に取り組むことになり、私は担当理事になりました。BCP作成に対して億劫なイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当に役に立ちますし、必要なものです。参加した事業所のBCP作成をしっかりと支援すべく、委員一同本気で取り組んでいます。 地域のニーズに応え、幅広く活動 訪問看護ステーションに勤めている間に、所属する法人が「看護師特定行為研修機関」になり、私も研修を受講できました。地域で働く看護師こそ、これにより裁量権が増えて活躍できるのではと、心躍りました。 ※参考:公益社団法人 日本看護協会 「特定行為研修制度とは」 当時、当法人では「医療機関ではあるが、もっと地域のニーズを拾い、できることをしよう」と在宅事業部事務局を創設することになりました。そこに私が異動することになり、「法人の看護職がもっと地域のニーズに向き合い、看護の視野を広げ活躍できるように」という想いを抱きながら、法人在宅事業部事務局長に就任しました。総合病院に籍を置きながら、現在でも地域の方々と数多くの接点を持ち、「つながっていく」ための活動をしています。 「懸け橋メイトミーティング」 2019年、星ヶ丘福祉タウンでの懸け橋メイトミーティングの様子 市内地域の訪問看護ステーションや病院の退院調整担当者、そしてケアマネジャーを巻き込んで、多職種連携研修を行っており、「顔の見える」関係構築につながっています。 コロナ禍もオンラインやハイブリッド方式で継続し、年に3回程度実施しています。 「どこでもメディカルセミナー」 特別養護老人ホームにて演習付き講義を行った際の様子 地域の医療介護従事者に向けた出張型研修プログラム。地域との連携強化につながっています。申込者と職員とのマッチングをし、研修をコーディネートをしています。 「オレンジカフェ☆キラリ」 オレンジカフェにて人生会議に関する健康教室を開催した際の様子 認知症疾患医療センターと連携した認知症カフェの取り組みです。星総合病院の敷地内で、原則月に2回開催しています。 複数の専門職やボランティア、学生等が参加しており、健康体操、健康講座などのイベントをあわせて開催しています。 2019年のお花見ツアー企画 カフェ常連の認知症当事者の方と介護者・スタッフとで、お花見ツアーも行いました。 写真に写っている認知症当事者の方(右)の一言が発端で、お花見が実現しました。 コロナ禍で中断したものもありますが、これら以外にも精神科の患者さんやお子さんを対象としたイベントも含め、数多くの取り組みを行ってきました。 こうした活動を通して、地域住民の方がぽつりぽつりと健康相談・介護相談・認知症の相談をしてくださるようになりました。見知らぬ人同士が出会って、信頼関係ができ、いろんなつながりができる。訪問看護の経験が大きく活きる活動でした。 「あなたらしい生き方」を支えるために 最後に、私が注力してきたACP(アドバンス・ケア・プランニング)に関する活動もご紹介します。 これまで、たくさんの高齢者や終末期の利用者さん、そのご家族との出会いがありましたが、皆さんそれぞれに文化や思いがあります。こちらの常識で決めつけてはいけないということ、看護職が行う情報提供の必要性や、看護職だからこそできる情緒的なサポートの重要性、そして、看取り支援をするためには、ヘルパーやケアマネジャーと情報を共有し、チームで利用者さんとご家族を支えることがとても大切なのだと学びました。 患者さんや地域住民だけでなく、病院職員も含めたすべての人にACPの啓発活動をしていくべきとの思いから、2018年に法人内の事務職やセラピスト、医師も含めACPプロジェクトチームを創設しました。 ACPプロジェクトチームは少しずつ活動を広げ、今も法人各施設から多職種を委員として選出して定例会を実施しています。全職員向けの研修会、新入職員研修での「もしバナカードゲーム」を用いたACP啓発活動や、地域住民向けの出前講座なども行っています。2020年にはACP啓発ツール「未来への手紙」~ACPのすすめ~の作成と配布を開始しました。 参考: 公益財団法人 星総合病院 ACPプロジェクトチーム Webサイト(「未来の手紙」のダウンロードも可能) 2017年の職員向け「もしバナカードゲーム」体験会の様子 社会資源として、地域住民の健康を支える 色々と立場は変わってきましたが、私の活動の判断基準は常に「そのことが地域住民の心身の健康につながるか」です。 人生において「入院患者」としての期間はほんの一部分で、その前後は「生活者」です。私たちが提供する医療や看護は、その方のQOLを良くすることにつながらなければいけないと思っています。当法人は「病気を治療するだけでは人は健康に暮らすことができない。地域が必要とする救急医療・高度医療・専門医療並びに介護・福祉事業の提供をもって地域の公衆衛生の向上に資することを事業として行う」と掲げています。 認定看護師になったばかりの頃、所属法人の理事長から「あなたは社会資源となりなさい」という言葉をいただきました。今後も、自分の言葉、振舞い、活動が少しでも地域住民の健康に暮らすことの一助になるように、活動を続けていきたいと思います。 * * * 最後になりますが、この原稿の校正中に令和6年能登半島地震が発生しました。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。当協議会ができる支援を考え続け、何らかの活動をしていきたいと考えています。少しでも安心と安寧の時間が増えていきますように。 ※本記事は、2024年1月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック
コラム
2024年1月16日
2024年1月16日

地域の出前講座で訪問看護を普及【訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の皆さまの活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会の九州ブロック、安部 美保さんの活動記です。安部さんは、訪問看護ステーション管理者で、大分県訪問看護ステーション協議会 副会長でもあります。大分県内の訪問看護ネットワークについてや、地域市民の方々向けの出前講座への取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:安部 美保保健師・助産師学科を卒業後、地元の総合病院へ入職1997年 病院併設の訪問看護ステーション開設と同時に管理者となる。2012年 訪問看護認定看護師資格取得2020年~ 日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロック長2022年~ 一般社団法人 大分県訪問看護ステーション協議会 副会長 月に1回の「おしゃべり会」開催 日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロックの体制は、九州・沖縄の8県の会員で構成されています。会員数は、2023年11月現在で24名です。ブロック長1名と大分・福岡・佐賀・熊本・鹿児島からそれぞれ1名の委員が選出されており、研修会・交流会の企画運営などを中心に、ブロック活動を行っています。 2008年9月に西日本で初めて訪問看護認定看護師教育課程が大分県立看護科学大学看護研究交流センターに開設されました。そのため、九州やその近県に住む方は受講がしやすくなり、当時、九州内の訪問看護認定看護師も増加傾向にありました。しかし、2013年3月で大分の教育課程が閉講となったこと、経験豊かな訪問看護認定看護師が定年を迎え認定更新をしない方が増えてきたことなど、さまざまな要因が重なって、九州ブロックの会員数は、この5年間で10人程度減少しています。 年1回開催してきた研修会・交流会は、会員が開催地に集合し、顔を合わせて語り合うことのできる貴重な場となっていました。コロナ禍以降もリモート開催や対面・リモートのハイブリッド開催で継続してきましたが、会員数の減少と相まって、参加者が増えない状況がここ数年続いています。このように衰退していく状況を何とか打開したいという思いで、ブロック役員で話し合いを繰り返し行いました。 アイデアを出し合った結果、今年の7月から月1回、会員なら誰でも自由に参加できるリモートでの会議、通称「おしゃべり会」を定期的に開催することになりました。おしゃべり会を地道に開催していくうちに、これまで会員であっても交流のなかった方々が参加され、顔見知りが増え、それぞれの貴重な活動の報告が聞けて、新たな交流が生まれています。 「おしゃべり会」の会話の中で、「今年度の研修会に、ぜひ聖路加国際大学大学院看護学研究科教授の山田雅子先生に講演をお願いしたいね」という話が出ました。お忙しい先生に九州に来てもらうのは難しいのではと思ったのですが、山田先生から快く講師を受けていただくことができました。今から、先生の講演会をみんな楽しみにしています。 協議会の機能充実。大分の訪看ネットワーク 続いて、私が管理者を勤めている「訪問看護ステーションくにさき」も所属している、一般社団法人大分県訪問看護ステーション協議会(以下、協議会)の活動についてもご紹介します。 以前、協議会は大分県医師会が事務局を執り行う任意団体でしたが、6年前に法人化し、一般社団法人となりました。法人化後は、大分県看護研修会館内の一室をお借りして、事務員を一人雇用して活動を始めました。現在の協議会加入訪問看護ステーション(以下、ステーション)は135ヵ所で、大分県内の約70%のステーションが入会しています。会長の強いリーダーシップにも支えられ、この6年間で運営もスムーズになり、協議会機能も充実してきています。その成果の一つとして、今年度、法人化して初めて大分県から「訪問看護就職ガイダンス・インターンシップ事業」を受託できました。行政からも信頼される法人へと成長した証と喜んでいます。 加入ステーションはビジネスチャットでつながっており、事務局や会員からのタイムリーな情報提供があり、情報伝達・情報共有がスムーズです。また、県内を2次医療圏単位で分けて11の支部を作り、支部から理事を任命。支部長も兼ねてもらいます。支部ごとで定期的な支部会・研修会など活動を行っており、顔の見える関係ができています。 このネットワークのお陰で、訪問看護の実務でも協力しやすくなったという声があがっているほか、BCP策定にも役立っており、支部単位で協力してBCPを作り上げているところもあります。今後もさらに会員同士が交流でき、協力し合える協議会に発展していくことを願っています。 出前講座で訪問看護を普及 私は生まれ育った地元で訪問看護を30年以上おこなっています。30年前は医療職でさえ「訪問看護って何?」という人が大半なほど知名度が低かったことを覚えています。それが今では、訪問看護師の地道な努力の成果もあり、医療・介護・保健にかかわる方で訪問看護を知らない人はいない状況になってきています。 ただ、一般市民の方々の訪問看護の認知度はまだまだ低いと感じています。このような中で、長年地元で訪問看護をさせてもらい、訪問看護認定看護師の資格まで取得することができた私の役割は、地域住民に訪問看護を普及させることだと考えています。そうすれば、必要な方が必要な時に訪問看護を利用することができるという思いがあります。 出前講座の様子 それを実現するため、地域への出前講座を8年ほど前からはじめました。地域サロン活動から依頼を受けて、訪問看護の普及啓発に力を入れています。「そんないい制度があるとは知らなかった。必要になったらお願いしたい」といった声も聴かれています。地道な活動ですが、今後も続けていきたいと思っています。 * * * 訪問看護は、今後ますます在宅の場で必要とされ、発展していく分野です。人が本来生活する場所である自宅での暮らしを支え、自分らしく生き抜こうとする方たちを一緒にサポートしていきましょう。訪問看護はやりがいのある仕事ですよ。 ※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック
コラム
2023年12月26日
2023年12月26日

後進に繋ぐ在宅看護への想い【訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 中四国ブロック、杉本 由紀子さんのご登場です。杉本さんは現在、訪問看護ステーションでの後進育成を行うと同時に、看護大学で教鞭をとっています。 今回は、地域包括ケアシステムの中で訪問看護師が担う役割の重要性や、新卒訪問看護師輩出への想いなどを教えていただきます。 執筆:杉本 由起子訪問看護認定看護師/人間環境大学松山看護学部(地域・在宅看護学領域)・AOIケアリングステーション非常勤勤務大阪府出身。看護学校卒業後、大学病院等に勤務。結婚、出産後「目指したい看護」を模索し、「在宅終末期看護、在宅看取り」実践のため1995年より訪問看護ステーションに勤務。2012年 群市医師会に地域連携室を開設、「厚生労働省在宅医療連携拠点事業」や在宅緩和ケア推進モデル事業受託。2016年仲間と訪問看護ステーションを立ち上げ、2021年から現職。2001年 介護支援専門員資格取得2010年 訪問看護認定看護師教育課程修了2017年 大学院看護研究科看護学専攻臨床看護学分野高齢者看護学博士前期課程修了2021年 看護大学に勤務し、立ち上げた訪問看護ステーションでアドバイザー的役割に従事 海を超えたネットワーク! 私が所属する日本訪問看護認定看護師協議会の中四国ブロックは、美しい島嶼(とうしょ)部の浮かぶ瀬戸内海を超えたネットワークが自慢です。私が入会した当初は3人のメンバーでしたが、今では10倍近いメンバーになりました(2023年11月現在)。 ここ数年、ブロック長を中心に力を入れている活動は、「臨床推論」「在宅看取り」の講義です。臨床推論は主に新人訪問看護師を対象に開催し、ファシリテーターの役割を訪問看護認定看護師が担っています。 また、中四国エリアの特徴として、在宅・慢性期領域パッケージを含む認定看護師教育課程在宅ケア分野が徳島大学にあることも大きいでしょう。認定資格を取りやすい立地環境のため、メンバーの年齢層は幅広いです。訪問看護創設期を率いてきた世代はいわゆる「訪問看護第一世代」と呼ばれますが、その想いを引き継いだ第二世代、介護保険が始まって以降の第三世代のメンバーもおり、幅広い知識や情報の共有がしやすいことも誇りです。 中四国ブロックメンバーの訪問看護認定看護師も在宅ケア認定看護師も、みんなで協力し合って日本訪問看護認定協議会を盛り上げています。 訪問看護師は地域包括ケアのキーパーソン! 私の在宅看護実践における大きな経験・強みは、「在宅医療連携推進事業」のモデル事業に参加し、地域文化を重視したシステム作りに従事できたことです。 地域包括ケアシステム構築のためには、在宅医療の推進が必須。また、地域独自の方法を早急に確立することが求められています。難易度が高いながらもこれらの事業を無事に完遂できたのは、訪問看護認定看護師教育課程で培った、「実践・指導・相談」の学びがあったからこそです。 多職種との交流や、職種を超えたネットワーク・チーム作りのためには、情報共有のための共通言語化が欠かせません。多職種間を繋ぐことは訪問看護師の地域での大事な役割でもありますので、経験を生かして「顔の見える関係作り」に貢献できたと思っています。 訪問看護認定看護師として新たな働き方へ 2016年に訪問看護ステーションを立ち上げた際の経験についてもご紹介します。以下の3つのポリシーを掲げてスタートしました。 地域住民ファースト開かれたステーション地域課題の発見 例えば、休日・休日料金を設定しない。山間部エリアも活動エリアとする。いつでも地域住人や多職種からの相談を受け付ける。そして、地域の方々とのコミュニケーションを通じて地域課題を見つけることを心掛けてきました。 3人の仲間で開設した訪問看護ステーションも、現在ではケアマネジャーや多職種を含め30名あまりのスタッフ数に。機能強化型訪問看護ステーション1の算定もできるようになりました。現在私は、相談役として訪問看護ステーションに在籍し、臨床現場の後輩育成に関わっています。 また、訪問看護認定看護師としての活動を生かし、看護教員としても働いています。「看護を語る」ことや「在宅終末期看護の魅力」を看護基礎教育の場で学生に伝えていくことで、一人でも多くの学生に在宅看護に興味を持ってもらいたいと思っています。 新カリキュラムがスタートし、「地域・在宅看護」の教育を受けた看護学生たちがどんどん世に出ていきます。これからの地域包括ケアへの強い味方・担い手として、多くの新卒訪問看護師が誕生することを夢見ています。 * * * 「あきらめない看護実践」の場として、在宅看護はキラキラ輝いています。ご利用者さんやご家族とともに、希望を叶える。そんな現場が訪問看護にはあります。そして、どうか仲間とともに多くの「看護の語り」をしてください。その経験は、自己の成長に必ず役に立ちます。 ※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部 【参考】〇厚生労働省.「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html2023/11/9閲覧〇一般社団法人全国訪問看護事業協会.「訪問看護ステーションにおける 新卒看護師採用及び教育のガイドブック策定事業  報告書」(2016年3月)https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/H27-3.pdf2023/11/9閲覧

訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
コラム
2023年11月21日
2023年11月21日

介護職員養成&通学支援【訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 東海北陸ブロック、松下 容子さんの活動記です。介護職員向けの喀痰吸引等研修や、三重県で2023年度より導入されている医療的ケア児の通学支援の取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:松下 容子看護学校を卒業後、総合病院に勤務し、2000年から訪問看護に従事。2011年 訪問看護認定看護師資格取得2012年 四日市社会保険病院 訪問看護ステーション管理者(現:四日市羽津医療センター)2021年~現在 みんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市 管理者 全国で1番の会員数を誇る東海北陸ブロック 私は、日本訪問看護認定看護師協議会の理事に就任して4年目になります。担当業務は総務で、主に総会・同時開催研修会と交流集会の計画、開催等に関わっています。研修会の講師や内容については、会員の皆様からのアンケート調査に基づき、皆様のご希望を反映できるよう、心がけています。 例えば、2023年6月の総会後の同時開催研修会は以下のような内容で実施しました。 第1講「認定更新申請の情報提供」5年目の訪問看護の認定更新を済まされた会員からの情報提供第2講「法律制度を活用したコミュニケーション向上術」看護師であり、社労士事務所代表の方によるご講演 次に、私が所属している東海北陸ブロックの活動状況を紹介します。当ブロックは静岡、愛知、岐阜、三重、福井、富山、石川の7県から構成され、会員数は101名となりました(2023年10月時点)。協議会全体での会議とは別に、ブロック内で年に2回の研修会と交流会、年に数回の役員会を開催しています。役員は、ブロック長をはじめ各地区代表の10名で構成されており、研修会をはじめとした企画・運営を取り仕切っています。9月末には、今年度最初の研修会として、「在宅ケアにおける倫理」をテーマに開催しました。 喀痰吸引等研修講師として10年目 個別で行っている講師活動についてもご紹介します。私はこれまでの10年間、毎年喀痰吸引等研修の講師を務めています。喀痰吸引等研修とは、「たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)」と「経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養)」を行える介護職員等を養成するための研修です。また、この介護職員を現地で指導するための指導者研修(看護師)もあり、いずれも研修内容は講義と演習で構成されています。そのほか、これまでに介護職員数名の実地研修の指導者としても関わらせていただきました。 喀痰吸引等研修会演習風景 今後もこの活動を通して介護職員の喀痰吸引等に関する手技の維持・拡大と喀痰吸引等提供の質確保に努め、介護職員を含めた多職種による協働体制の構築に尽力していきたいと思います。 県初、医ケア児の通学支援開始 医療的ケア児への支援活動についてもご紹介します。四日市市には特別支援学校があり、多くの医療的ケア(人工呼吸器や喀痰吸引、胃ろう管理等)を必要とする児童が通学をしています。しかし、ほとんどの児童はスクールバスへの乗車が困難な状況です。スクールバスに乗れない児童は家族送迎を余儀なくされ、家族の負担は非常に大きいものとなっています。例えば、母親による往復の送迎に1時間程度かかる場合、母親の仕事の時間が削られているケースはもちろん、就業を諦めざるを得ないケースもたびたび見かけられます。 三重県では、そんな家族の負担を軽減すべく、2023年度に「三重県医療的ケア児通学支援事業」が試行され、現在、当ステーションでは週に2回、朝の通学支援に協力させていただいています。業務内容は、指定された福祉タクシーに同乗し、運転手さんと協力して安全に児童を特別支援学校まで送り届けることです。道中、車内での児童の状態観察と喀痰吸引の必要があれば実施し、学校到着後に担任教員に母親からの伝達事項や車内での状態を引き継ぐという流れになっています。 まだ開始したばかりの事業であり、実際、受け入れのできる訪問看護ステーションも、まだまだ少ないのが現状です。障害があっても健常な児童と変わらず、平等に学習機会が確保され、必要な支援のもと、児童の成長、発達と家族へのサポートがますます促進されるよう、今後も微力ながら関わっていきたいと考えています。そして、誰もが豊かに暮らせる地域に発展することを心から願っています。 * * * この記事をお読みいただいている訪問看護師の皆様にも、ぜひ安心・安全の提供と、自分らしい生活・ありたい姿の実現を見据えながら、療養者様やご家族に寄り添っていただけたら幸いです。 ※本記事は、2023年10月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

認定看護師活動記 南関東
認定看護師活動記 南関東
コラム
2023年10月10日
2023年10月10日

「看護を語る」ことを大切に【訪問看護認定看護師 活動記/南関東ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 南関東ブロック、伊藤 みほ子さんの活動記です。南関東ブロックの活動内容や訪問看護総合支援センターの開設、「在宅看取り語りの場」の取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:伊藤 みほ子介護支援専門員/訪問看護認定看護師/認定看護管理者。看護学校卒業後、赤十字病院にて病棟、外来、訪問看護ステーションで勤務。現在は長野県看護協会 常務理事 地域支援部 訪問看護総合支援センター担当。 「看取りを考える会」を年4回開催 私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会 南関東ブロックは、神奈川、山梨、長野の3県の訪問看護認定看護師協議会 会員による活動を行っています。 協議会の活動が始まった10年前は、ブロック長を中心とした年1回の交流会(研修会)を開催していました。現在は活動の幅が広がり、ブロック長、各県代表とブロック理事によるブロック会議で交流会や研修会などを企画し、開催しています。南関東ブロックの会員数は30名弱と少人数ですが、オンラインの会議や交流会により、情報共有が有意義にできています。 例えば、2022年度に全ブロックで開催した「在宅看取りを実践できる訪問看護師の育成事業」は、ブロック会員の協力により有意義な研修となりました。この事業に参加した南関東ブロックの会員から、「ブロックの活動として在宅看取りについて検討する場を継続していきたい」という意見があり、2023年度は「看取りを考える会」を年4回開催する計画となりました。 それぞれ多忙なため、ブロック活動の参加者が少人数になることもありますが、しっかり継続できています。訪問看護認定看護師同士が「看護を語る場」として、実践を語り、互いに学べる場は貴重であり、各々がその意義を感じているためと考えています。 訪問看護提供体制の強化とさらなる推進 私が長野県看護協会の常任理事として行っている活動についてもご紹介します。特に注力しているのは、長野県全域の訪問看護提供体制の強化と推進で、2023年4月には「訪問看護総合支援センター(以下「支援センター」)」を看護協会の中に開設しました。2021年に日本看護協会の支援センター試行事業に参加して以降、今回の開設に向けて準備をしてきました。支援センターには、私を含めた訪問看護認定看護師2名を配置し、訪問看護の課題に取り組んでいます。 支援センターの役割は、「経営支援」、「人材確保」、「訪問看護の質向上」の3つです。具体的には、以下のようなことを行っています。 【1】訪問看護支援事業(長野県受託事業) 訪問看護事業所運営基盤整備:コンサルテーション訪問看護制度等の電話相談事業所訪問による看護技術等のシミュレーションによる演習や講義等訪問看護事業所の新規開設支援潜在看護師、プラチナナース等の就業および転職支援新卒訪問看護師採用に向けた取り組み訪問看護に関する調査・実態把握教育・研修の企画、実施 【2】地域住民への訪問看護周知と活用推進としての在宅看取りに関する取り組み 【3】長野県訪問看護ステーション連絡協議会との連携(事務局) 支援センター開設以降、新規訪問看護事業所開設の相談や制度についてなど、問い合わせが増えています。認定教育課程で学んだ知識を活かして対応できることにやりがいを感じています。 また、「在宅看取り」については、日本訪問看護財団の助成を受け、県内の訪問看護認定看護師たちと研究に取り組んでいます。日本訪問看護認定看護師協議会のネットワークがこうした活動の連携に活かされており、研修の講師として活躍いただける場も提供できています。 訪問看護師による「在宅看取り語りの場」 前述した支援センターの事業のうち、「【2】在宅看取りの取り組み」として、訪問看護師による「在宅看取り語りの場」という活動も行っています。 訪問看護師に在宅看取りの様子を語ってもらい、地域の一般参加者の方々にも今の思い(介護していること、今までに経験した家族の看取りのことなど)を語っていただくことで、自分の思いに気づき、表出することができます。また、地域の方々に在宅医療や看護について知っていただくきっかけにもなります。 私は以前から、訪問看護の終末期ケアの実践から学べることは大変多いと考えていました。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を進めていく上でも、終末期や在宅看取りに関する具体的なイメージを持っていただくことは大切です。 訪問看護師の「技」といっていいスキルのうち一つにコミュニケーション能力があり、認定看護師に限らず、多くの訪問看護師が終末期ケア、在宅看取りを実践しながらコミュニケーション能力を磨いていると思います。そうした強みや経験を活かして、在宅で最期まで暮らせることの幸せを地域の方々に伝える取り組みができれば、と考えています。 「在宅看取り語りの場」の様子 * * * 私は、今までも「看護を語る」ことを実践し、意義を感じてきました。これからも、「看護を語る」ことから学ぶ機会をつくっていきたいと考えています。 ※本記事は、2023年9月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

認定看護師活動記 北海道
認定看護師活動記 北海道
コラム
2023年9月19日
2023年9月19日

病院や看護学校での啓蒙活動【訪問看護認定看護師 活動記/北海道ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師・在宅ケア認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 北海道ブロックに所属する、田川 章江さんの活動記です。病院や看護学校での講演活動もされている田川さんに、北海道ブロックの活動内容や、退院指導・生活指導にまつわる看看連携、看護学生に訪問看護の魅力を伝える活動などをご紹介いただきます。 執筆:田川 章江訪問看護認定看護師/日本訪問看護認定看護師協議会 理事(2021年~地域貢献活動担当理事)。看護学校卒業後、総合病院で勤務。現在は、社会医療法人 孝仁会 訪問看護ステーションはまなす(北海道釧路市)でスタッフとして勤務。「現場の職人」でいたいという想いが強く、スタッフ歴を更新中 広ーい北海道でアットホームに活動中です まずは、私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の「北海道ブロック」についてご紹介しましょう。北海道ブロックは、札幌、函館、帯広、釧路、紋別、稚内にメンバーがいます。面積は広いのですが人数は少なめで、8名で活動中です(2023年8月現在)。私は頼りない北海道ブロック理事なのですが、皆様のお力を借りながら、コンサルテーション担当として研修会の企画を行っています。 新型コロナウイルスの感染拡大前は、主に私たち協議会のメンバーが北海道の各地で地域の看護師向けに研修会を開催していました。特にテーマとして多かったのは、訪問時の緊急事態が起こった際の対応についてです。その後、コロナ禍でオンライン化が進んだこともあり、最近はZoomを利用してメンバー間でハラスメントの事例検討会を行ったり、外部の講師の方をお呼びして研修会を開催したりと、活動の幅を広げています。和気あいあいとした雰囲気で、話し出すと止まらず、あっという間に時間が過ぎることも多々あります。 広大な北海道では移動にも時間がかかり、なかなか対面で集まる調整難易度が高いのですが、オンライン化が進んだことによって、参加しやすくなりました。ただ、各地域で集まって、勉強会後においしいものを食べることもメンバーの楽しみの一つ。完全にオンライン化するのではなく、対面での研修会の企画も継続していきたいと考えています。 病院での講義~訪問看護からみた退院指導 私の個別の活動についても、一部ご紹介したいと思います。先日は、釧路市内の病院で開催された糖尿病に関する検討会で、看護師向けの講義をさせていただきました。 私が所属している訪問看護ステーションの利用者さんで、その病院に通院している方の話を絡めながら、 実際の生活の場で、どのように服薬やインスリン注射をしているか薬物療法を継続することの難しさ在宅での食事について などをお話しさせていただきました。 病棟看護師が患者さんに「服薬や生活指導について理解してもらった」と思っていても、退院後の在宅の場では継続が難しいことは多々あります。経済的な問題や介護力の問題で、わかっていてもできないこともあります。在宅での現状を踏まえ、病院での退院指導や生活指導を検討していただきたいことを伝えました。 訪問看護師の立場から、病院からは見えない「生活の場の利用者さん」の姿を伝えることは、非常に有意義だと思っています。また、情報を伝えるだけにとどまらず、地域の病棟看護師と訪問看護師との「顔の見える関係」づくりにもつながっていきます。 未来の看護師さんに訪問看護の魅力を伝える 看護学校で、戴帽式を済ませた学生さんへ講義する機会をいただいたこともあります。看護学生さんたちにとっては、訪問看護は仕事内容がイメージしづらいので、積極的に訪問看護の魅力を伝えていくことが大切だと思っています。 当日は、訪問看護の事例を含めた訪問看護師についての説明や、私が訪問看護師として働く中で大切にしていることなどをお話ししました。 当時の講演内容をもとに著者作成 学生さんたちからは、「自宅での看取りをイメージできた」「着実にやっていくことが大切と分かった」といった感想をいただきました。この看護学校の生徒さんたちは、私が所属する「訪問看護ステーションはまなす」に実習に来ていただいています。「いつか訪問看護師として働いてみたい」と思っていただけるように、実習の場も含めて、今後も訪問看護の魅力を伝えていきたいと思います。 * * * 在宅でも病棟でも、看護師として働く中で色々なストレスがかかり、疲弊しがちな方は多いと思います。今後も私が認定看護師としてお伝えできることをしっかり伝え、一緒によりよい案や対応を考えていきたいと思います。 ※本記事は、2023年8月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

認定看護師活動記 近畿
認定看護師活動記 近畿
コラム
2023年8月22日
2023年8月22日

地域と病院をつなげる取り組み【訪問看護認定看護師 活動記/近畿ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 近畿ブロック、雨森 千恵美さんの活動記です。近畿ブロックの活動内容や、フィードバックカンファレンスの導入をはじめとした看看連携の取り組み、地域で訪問看護の存在感を高める取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:雨森 千恵美訪問看護ステーション ゆげ(滋賀県) 管理者。看護学校卒業後、医科大学付属病院に勤務、代謝・内分泌内科病棟での臨床経験を活かし、糖尿病療養指導士の資格を取得する。結婚出産後は、夜勤のない職場に復帰するため訪問看護ステーションに再就職。在宅看護の魅力にとりつかれ2012年に独立。訪問看護を深く学ぶため訪問看護認定看護師の資格を取得した。2018、2019年には協議会の近畿ブロック長に就任。「近畿ブロックの規約」の作成を行い、その後も「在宅看取りの育成研修事業」を企画。実行力や統率力を評価されている。 現在は、訪問看護のパイオニアとして後任の指導と、地域と病院がつながるしくみ作り(フィードバックカンファレンスの定着)や認定看護師の活躍の場作り、災害時支援チームの一員としての活躍の場をますます広げている。 会員相互の交流を図りネットワークを構築 まずは、私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の、近畿ブロックの活動についてご紹介します。 近畿ブロックでは、毎年訪問看護認定看護師としての日頃の実践報告を6府県の代表者が発表する日を設けています。認定看護師として自身の活動を振り返り、今後に活かす貴重な機会です。また、実践報告と同時に「経営について」や「災害といのち」などの関心の高いテーマの基調講演を行っており、学びつつ交流もできる、非常に充実した1日になるため、会員の満足度も高くなっています。これらの活動に参加していると、訪問看護認定看護師として同じ志を持った熱い仲間と交流することができるため、企画すること自体が非常に楽しいです。 フィードバックカンファレンスで看看連携 私が行っている、地域での活動についてもお伝えします。私が住んでいる滋賀県では、全世代型地域包括ケアシステムの充実のために、圏域別に地域看護ネット会議を開催しています。過去には、地域課題として「退院後の振り返りができていない」ことが取り上げられ、まずは「病院と在宅との看看連携強化が必要」との意見も出ました。 そこで私は、訪問看護認定看護師実践報告会で聴いた「フィードバックカンファレンス」の手法が、看護職同士がつながるしくみとして効果的ではないかと提案しました。フィードバックカンファレンスとは、フィードバックが必要だと感じたケースについて、病院側・地域側のどちらからでも依頼できる、というしくみです。例えば病院側が訪問看護ステーションにフィードバックカンファレンスを依頼することにより、退院時の支援や調整が適切であったか、振り返ることができます。 2019年から始め、今年で5年目。コロナ禍で一時はオンライン形式の開催に変更し、調整が難航する時期もありましたが、2023年7月時点までで16例の実績をつくることができました。 実際に開催してみると、フィードバックカンファレンスは、相互理解や信頼関係の構築に役立つのはもちろんのこと、認定看護師の指導を受ける機会になる、看護師以外の専門職とつながる機会になる、そして本人・家族の思いを共有できる場になる、といったメリットがあることがわかりました。今後は、よりフィードバックカンファレンスが全国に普及するよう願っています。 地域での訪問看護の存在価値を高める そのほかにも、地域の中で訪問看護の存在価値を高めるための活動を行っています。 病院看護では医療職同士のつながりのみとなってしまうケースも多くありますが、地域ではさまざまな専門職が協働しています。医療と介護と看護が一体となって、療養者の日常生活の支援から看取りまで実践していきます。多職種との連絡・調整・協働は、訪問看護の最も得意とする分野であり、必要不可欠。人的ネットワークを広げて信頼関係を構築しておくことは、困難なケースでの交渉・円滑な支援につながるでしょう。 最近は、高齢一人暮らしの利用者が増えています。癌ターミナルや認知症になっても、最期まで家で過ごすためにどうしたら良いか。地域の特性を活かして行政と一体となり、地域住民も巻き込んでいく必要があります。本人・家族はもちろん、支援者のすべてが穏やかでいられる方法を模索するのも、やりがいがあって楽しいものです。 また、医療的ケア児をとおして学校関係者とつながったり、育児相談事業を行って、地域の母親たちとつながったりする活動も行っています。新たなつながりを構築することにもやりがいを感じています。新型コロナウイルス感染症によって自宅療養者が急増したときは、保健所の負担を少しでも減らしたいと、電話による健康観察や自宅訪問事業も受託しました。多いときは1ヵ月で2,000件を超える対応を行いました。今後も、さまざまな場面で訪問看護の力を発揮し、地域での存在価値を高めていきたいと考えています。 * * * 訪問看護の魅力は何でしょうか?道中は四季を感じながら利用者宅に向かうと「待ってました」の笑顔に迎えられ、時には想像以上の力を発揮され隠されたパワーに驚かされます。日常生活を一緒に過ごし、喜びと悲しみを共有し、人として成長させていただきます。訪問看護をはじめて25年。在宅医療をこよなく愛し、日々やりがいを持って看護を行っています。訪問看護を目指す方が増え、一緒に訪問看護の素晴らしさを共有できる日を待ち望んでいます。 ※本記事は、2023年7月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

エンジョイALS
エンジョイALS
コラム
2023年7月25日
2023年7月25日

enjoy!ALS最終回〜人生を味わいつくそう〜

ALSを発症して8年、42歳の現役医師である梶浦さんによるコラム連載です。ちょうど2年の区切りを迎え、今まで読んでくださった皆さまへ感謝を込めて、最終回をお届けします。 ALS患者に必要な「情報」を届けたい 「enjoy!ALS」というタイトルで毎月連載を書いてきて、24回目の今回でちょうど2年が経ちました。「コラムを書いてくれないか?」というお話をいただいた当初は連載回数や内容など何も決まっていませんでしたが、書いていくうちに、この連載を書くことで救えるALS患者さんがいるのではないか。だとしたら、これも医師としての立派な仕事ではないだろうか。そう思うようになっていきました。 特にALSという病気は、診断されてから初期の段階でのハードルがとても高いのです。 ALS患者さんの多くは、まだ体が比較的自由に動かせる病気の初期の段階で「将来的には手も足も動かなくなり、声も出せず、呼吸もできなくなり人工呼吸器を装着しないと生きることができない」。そんな絶望的な情報がいっぺんに入ってきます。それをいきなり受け入れて処理することなんて、とうていできるはずがありません。多くの方はそこで絶望感に打ちひしがれ、症状の進行に対処する方法がわからず、対応が後手後手にまわってしまいます。 しかし、私はALSを発症して8年の経験のなかで、この病気をうまく乗り越えていくには、できるだけ先手先手をとることが最も重要なのだと実感しました。 もちろん簡単にできることではないですが……。そのためには多くの有益な「情報」と、自分を支えてくれる家族やヘルパーさん、医師や看護師やリハビリテーションスタッフなどの「支援者」の存在が不可欠です。 この「情報」の部分を、私の連載で少しでもカバーしたいと思いました。私がALSを発症したときに「こんな情報が欲しかった!」というものを、私なりにまとめて、ALS患者さんやその家族、関係者の皆さまに少しでもお役に立てるものをお届けしたい。そして、ALSと診断されたからといって人生を諦める必要はない。考えかたと工夫しだいで十分楽しく生活できることを伝えたい。そういう思いで、熟慮を重ねて書いてきました。 2年間というちょうどよい区切りで、私の伝えたいことがまとまって書けたので、今回で最終回にしたいと思います。決して体調が悪くなったり、文字が打てなくなったから終わりにするわけではありません。 深い谷底からでも、見上げれば光が見える ALSを発症してから始めた皮膚科遠隔診療は今でも毎日続けており、気がつけば今まで遠隔診療してきた患者さんが10,000人を超えました! 体調は良いです。technologyを武器に、まだまだこれからも医師として働きつづけていきます! 以前、私の主治医の佐藤先生が、この連載の第1回目を読んで、自身のクリニックのブログで紹介してくださいました。 その最後に Enjoy!ALS。その先にあるのはRejoice!(祝福せよ)、=運命を受け入れた上で人生を味わい楽しみなさい、という力強い応援歌ではないだろうか。 梶浦さんの文章を読んで、つくづくそう感じた次第です。 という言葉をいただきました。ありがたい限りです。 人生が常に順調な人などいません。良い時もあれば、悪い時もあります。「人生山あり谷あり」といいますが、このALSという病気では深い谷が待ち構えています。深い谷底に落ちたら、周りは真っ暗かもしれません。しかし上を見れば必ず光が見えます。私は、ALSにかぎらずどんなにつらい病気でも必ず希望はあると思っています。 この病気は確かに、つらいことも大変なことも多いです。しかし、そんななかでも病気を少しずつ受け入れて、前向きに生きていれば楽しいこともたくさんあります。 たとえどんな病気であろうとも、その人の価値や尊厳を奪うことはできない! 全部ひっくるめて、一度きりの自分の人生なのだから、思う存分味わいつくそう! Enjoy ALS!! 最後に…… この連載を始めるにあたり、ありのままの自分を写真で載せるか、イラストにするか、迷いました。 この連載は、ALSと診断されてまだそれを受容できていない患者さんや、その家族、関係者の方々に、勇気や希望を送りたいという思いで書きはじめました。私は、まだALSと診断されて間もない、病気を受容できていないころは、人工呼吸器を付けて寝たきりになっている患者さんの写真を見るだけで、将来の自分の姿と重ね合わせてつらくなってしまうため、なるべく見ないようにしていました。なのでこの連載では、どんな人にも安心して読んでいただけるように、人工呼吸器をつけている私を、明るく、イケメン風(作者特権です!笑)にイラストで描いてもらうことにしました。 しかし、病気の経過とともに変わっていく、ありのままの自分の姿を経時的に示すことも、ALSという病気を理解する上で大切な情報の一つであることも事実です。 なので、もし機会があれば今後、自分の経過や、お役立ち情報を、写真を加えながら詳しくまとめて、本にして書いていこうかとも思っていますが、今は違う記事でも書きながらちょっと休憩しようかなぁ……。 今まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました! そして温かいメールをくださった方々に、たいへん励まされました! 皆さまが幸せになれますように!! コラム執筆者:医師 梶浦 智嗣編集:株式会社メディカ出版

認定看護師活動記
認定看護師活動記
コラム
2023年7月25日
2023年7月25日

看多機(かんたき)を通じて広げる「輪」 【訪問看護認定看護師 活動記/北関東ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師・在宅ケア認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 北関東ブロックに所属する、山崎 佳子さんの活動記をご紹介します。 看護小規模多機能型居宅介護事業所(看多機)の管理者としても活躍する山崎さんに、北関東ブロックの活動や、看多機の管理者としての活動などをご紹介いただきます。 執筆:山崎 佳子在宅ケア認定看護師株式会社やさしい手 看多機かえりえ南佐津間 管理者福岡県出身。看護学校卒業後、総合病院・医療器メーカー・CRC等に従事。2005年より訪問看護に携わる2007年 介護支援専門員資格取得2017年 訪問看護認定看護師教育課程修了2018年9月 「看多機かえりえ河原塚」管理者となる2020年度~2021年度 松戸市小多機看多機連絡協議会会長、松戸市介護保険運営協議会委員2022年 特定行為研修 在宅ケアパッケージ修了2023年5月 新規オープンの「看多機かえりえ南佐津間」管理者となる 訪問看護認定看護師 北関東ブロックの活動 まずは、私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の「北関東ブロック」についてご紹介します。北関東ブロックは、千葉・群馬・栃木・新潟・茨城の5県の会員で構成しており、会員数は2023年7月時点で40名弱。半数以上は千葉の会員、群馬・新潟・栃木は5名前後、茨城は1名のみです。2022年度の活動としては、前期に事例検討会、後期に地域向け研修会を実施しました。 人数構成上、どうしても例年、活動が千葉県中心になってしまうので、年1回行っている地域向け研修会を、各県の持ち回りで行うことにしています。2022年は、5名の群馬県の会員を中心に、他県の実行委員を加えた10名で研修会の企画を進めていきました。会費をいただいての研修なので、失礼があってはならないと色々なことを想定して準備を進め、Zoomでの会議のほか、LINEを使って話し合いをもち、時には夜遅くまで意見交換をすることもありました。その結果11月の研修会は46名の参加をいただき、スムーズに開催をすることができました。 実際には、北関東ブロック内で一度も対面でお会いしていないメンバーもたくさんいますが、ブロック全体で力を合わせて開催できたと感じました。2023年度もこの取り組みを継続しており、新潟県のメンバーが中心になって新しい実行委員も加わり研修の準備を進めているところです。 看多機の管理者として多職種連携に取り組む では、ブロック活動以外に、私が普段どのような活動をしているかについてもご紹介します。私は、約5年前に社内異動で訪問看護ステーションの管理者から看護小規模多機能型居宅介護事業所(看多機かえりえ河原塚)の管理者になりました。当時、「看多機」という名称は知っていましたが、実際にどんなことをやっているのかはまったくといっていいほど理解していない状態。私は、この異動をきっかけに多職種連携に正面から取り組むことになったのです。 看護職と介護職の違い 赴任して、まず私に立ちはだかった壁は、「看護師と同じように伝えても、介護職には伝わらない」ということです。しかし、ある時、介護職の一人が「介護は、『寄り添いなさい』『受け入れなさい』って教育されるのですよ」と言ったのです。その言葉を聞き、看護職は問題解決思考になりやすく、いつも利用者さんが抱える問題点を探しているように思い、その違いにはっとしました。なるほど…。視点が違うのだから、理解や思いにも違いが生じるのは当たり前だ、と改めて気づいたのです。 互いに伝えることが大切 そして、介護職が看護師に遠慮して、自分たちの思いや考えを言いそびれている場面をよく見かけたので、介護職がそれらを言語化し、発信できるようになることが必要と感じました。介護職は生活援助を通して看護師より利用者さんのそばにいる時間が長いので、ありのままの利用者像を知っていることが多いと感じます。「看護師には言えないんだけど…」というような、利用者さんの本音を聞く機会もあるようです。介護職が持っている情報はとても大切で重要なものだということを自覚して、とにかく自信を持ってその情報を発信してほしい、と伝え続けています。 また、一番身近な介護職が利用者さんの変化に気づくことができれば、病状の変化にもいち早く対応できると思います。それを実現するためには、疾病の知識、観察点、予後予測などを看護師がしっかり学んで理解し、常日頃から介護職に丁寧に伝達していくことが、必要と考えます。介護職にわかってもらえるためにはどうしたらよいか…。看護師には、特に伝える力を養ってほしいと考えています。 看多機では、看護師と介護職が同じ空間で同じ利用者さんを、それぞれの専門性をもってみることができます。互いの情報を持ち寄れば、より快適な療養生活を送るには何が必要か、見えてきます。それをもとに重度の方にも安心して過ごしていただけるための支援を考え、実践していけるのではないかと感じています。 今後も、定期的に利用者さんについて話し合う機会を持ち、お互いの専門性を認め合い、意見を遠慮なく言い合える雰囲気づくりを心掛けていきたいと考えています。 松戸市の小多機・看多機連絡協議会の活動 地域での活動についてもご紹介しましょう。私が赴任した看多機かえりえ河原塚は、千葉県の松戸市というところにあります。松戸市の人口は50万人弱ですが、そこに小多機・看多機が9つずつあり、計18事業所が「小多機・看多機連絡協議会」に参加しています。 主に小多機・看多機の普及活動や、市、医師会、介護連(他の介護事業所が集まった協議会)などとの連携、自己研鑽のための研修などの活動をおこなっています。私は看多機の管理者になって2年目に、前会長の退職をきっかけに協議会の会長に就任することになりました。会長として介護保険運営協議会、基幹の地域ケア会議、医師会在宅ケア委員会等へ参加して、地域の医療や介護の事業のしくみを学べたのはとても有意義な経験でした。定例会は2ヵ月に1度開催して、さまざまな意見を話し合います。そこで出た意見を行政(松戸市)に伝え、ルール変更や統一の対応をしていただいたこともありました。 こうした活動を通じて、同業者との横のつながりは、仕事をしていく上での大きな心の支えになることも実感しました。「競合他社」ではありますが、管理者の悩みは一緒であることが多いもの。話をしていると互いに気持ちをわかりあえることが心地よく、「明日も頑張ろう」という力が湧いてくるのを感じました。 2023年7月 千葉県看多機協議会を立ち上げ その後、私は松戸市の隣の鎌ヶ谷市の看多機(看多機かえりえ南佐津間)への異動が決まったため、2年で会長を辞任しました。 鎌ヶ谷市では1件目の看多機なので、今まで協議会の仲間や市とコミュニケーションをとりながら過ごしてきた私は心細さを感じ、同じ県内で看多機を立ち上げておいでの福田裕子先生(株式会社まちナース まちのナースステーション八千代統括所長)にお願いして、2023年の7月に千葉県看多機協議会の立ち上げをすることになりました。 看多機かえりえ南佐津間 立ち上げ準備のために千葉県内の看多機を調べ、連絡を取ってみて気づいたのは、自治体に看多機が1ヵ所しかないところもまだまだ多いということ。そして、管理者の皆様が、「同業者と話をしたい」と思っているということです。 千葉県看多機協議会は、横の繋がりを強化することで、それぞれの事業所が安心していきいきと運営できるよう活動していきたいという思いで設立されます。看多機はできてまだ10年。本当にこれでよかったのか、もっと良い使い方はないのか、現場では毎日試行錯誤しながら実践に取り組んでいます。協議会の活動を通して、地域の頼れる社会資源として成長していきたいと考えています。 * * * 私は、在宅に携わった看護師がみんな、「この仕事をしてよかった」と思ってもらいたいと考えて、日本訪問看護認定看護師協議会の活動に参加してきました。今後は対象を広げ、在宅に関わるすべての職種に「よかった」と思ってもらうことを目指して、活動していきたいと思っています。 ※本記事は、2023年7月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

エンジョイALS
エンジョイALS
コラム
2023年6月27日
2023年6月27日

ALS患者の皆さん、自分らしく生きよう!

ALSを発症して8年、42歳の現役医師である梶浦さんによるコラム連載です。今回は、困難と向き合い、乗り越えていくための、梶浦さん自身の考えかたを紹介します。 ALS患者が「自分らしく生きる」とは ALS患者が自分らしく生きていく。それは、趣味や、生きがいを見つけながら、少しずつ今の自分の状態を受け入れていき、最終的には「これが今の自分!」と胸を張って(開き直って!?)生きることではないでしょうか。 言うのは簡単ですが、誰でも簡単にできることではありません。この連載第11回(「難病患者の病気を受容するプロセス 〜希望を持つことの大切さ〜」参照)で書いたように、「受容」に至る過程で、多くの苦悩や挫折を乗り越えないといけません。 今回は、この困難を乗り越えるための、私自身の考えかたを書こうと思います。 困難を乗り越えていくために! 「遠い未来のことは考えすぎない!」「将来どうなるかではなく、今何ができるかを考える!」 これは、これまで私がたびたび書いてきたことですが、病気を乗り越えていくために最も大切ではないかと思います。ALSという病気は、進行に個人差があります。なかには発症してから10年以上経っても、症状があまり進まない人もいます。なので、絶望的な未来を想像しすぎても落ち込んでしまうだけで、良いことはありません。 大事なのは、今の自分の症状と向き合いながら、少し先の未来を想像して、対策をしていく、その積み重ねです。 たとえば、「指先の動きが悪くなってきて普通の箸が使いにくくなったら、介護用の箸(※)を使うようにしよう」。そして「今後もっと指先の動きが悪くなって、介護用の箸も使えなくなることも想定できる。おかずを、小鉢に分けるのではなく、食べやすいワンプレートにしよう。介護用のスプーンも用意しておこう」など、そのつど工夫と対策を繰り返していくことです。 はじめから遠くにある大きな山(困難)をひとりで登ろうとしても、とうてい無理です。必ず挫折してしまいます。 近くにある小さな山を、仲間たち(家族、ヘルパーさん、医療スタッフさんなど)と協力して一つずつ登っていく。振り返ってみたら、もうこんなに登ってきたのかと思えるような登りかたが理想的なのだと思います。 医師の多くは、大きな山の存在は教えてくれますが、山の登りかたを教えてはくれません。それもそのはずです。山の大きさや登りかたは人それぞれ違いますし、当事者でないとなかなかわからないことが、とても多いのです。なので、医師であり患者でもある私が発信しなくてはならない。そう思って、意気込んで今までいろいろ書いてきました。 ※連載第12回「ALS患者に必要な情報「実用編」 ~上肢①〜」の「指先の筋力が低下しても使える箸」参照 人工呼吸器を着けて外に出かけよう! 多くのALS患者さんは、病気の進行とともに、あまり外に出なくなります。歩けなくなるといった物理的な障害もありますが、気持ちの面で前向きになれないといった精神的な要因もあると思います。 私の場合は、歩けなくなっても電動車いすを操作できる間は、積極的にいろいろな所に出かけていました。しかし、腕もまったく動かなくなって、電動車いすを操作できなくなり、人工呼吸器を装着するようになってからは、あまり外に出なくなりました。人手が必要だったり、用意に時間がかかったりと物理的な障害もありましたが、「人工呼吸器を着けている自分を世間の人は好奇な目で見てくるのではないか」……そんなふうに考えてしまい、なかなか外に出る気分になれませんでした。 そんななかで、息子の幼稚園最後の運動会がありました。妻と息子には来てほしいと言われていましたが、「変な目で見られたら嫌だなぁ」「息子が私のせいでイジメられたりしないか?」など、いろいろと考えてしまい、なかなか行く勇気が出ませんでした。しかし、この機会に行かなかったら外に出るきっかけを失ってしまうと思い、ドキドキしながら運動会に行きました。いざ行ってみたら、周りの人たちは私のことなど気にもしません。皆さん他人の私なんかより自分の子どもの活躍に夢中です。そのときに、世間から特別な目で見られると思っていた私は自意識過剰だったんだなぁと気づかされました。 そして、息子が「わーい、パパ来てくれたんだ」と、満面の笑顔で私のところに走って来てくれたことが、何よりも嬉しかったです。息子は私がつらいときに救ってくれる存在であることをつくづく感じました。 「世間の人は私のことなど気にしていない。私が勝手に世間の人から特別扱いされていると思い込んでいただけなんだ」 そう思えるようになってからは、積極的に外に出るようになり、今でも公園に行ったり、電車やタクシーに乗って遠出したりと、毎週外出しています。(私のわがままを快く聞いてくださるヘルパーの皆さま、いつも本当にありがとうございます!) たまに外に出て、日光を浴びて、風を感じながら、暑さや寒さを通して季節を体感する。以前は当たり前だったそんな行為が、気分をリフレッシュさせ、日々の生活にメリハリをつけて豊かにしてくれますし、体調管理にもつながってきます。 なので、体が動かなくなっても、人工呼吸器を着けていても、周りの人を巻き込んで外に出かけよう!! 発信しよう! ALSは徐々に全身の筋肉が動かせなくなっていく難病中の難病です。有病率は10万人あたり7~11人程度1)と推計されており、非常にまれな疾患です。今のところ治療法もなく、それぞれの症状に合わせて対症療法や生活の工夫を凝らしていくしかありません。ただ、症状や療養環境などの個人差も大きいことから、すべての患者さんに当てはまるような工夫はなかなかないのが現実です。 神経難病のケアを専門とされている先生がたが、いろいろな工夫を発信してくださっていますが、ALSはかなり特殊な病気です。意識はハッキリとしており、やりたいことや訴えたいことは明確にあるのにもかかわらず、体が動かせず、声も出せないので、うまく伝えられない。ただのジレンマとも違うこの独特な感覚は、当事者にしかわかりえない感覚であり、だからこそ当事者にしか思いつかない発想や、当事者にしか語れない経験談があるはずです。 なので、ALS患者自身がそれぞれの工夫や経験を発信して、それをつないでいくことが、ALS患者の未来を豊かにしていく方法なのだと思います。 それが可能なのは10万人のうち、たった7~11人しかいないのです! ALS患者が自らのことを発信する。その行為自体にとても価値があり、それが誰かのためになる。そう思えれば、自分自身の生きがいにもつながっていきます。 自分の病気の経過を日記のようにブログに書くのもおすすめです。ちょっとした生活の工夫、介護者にされて嬉しかったこと、反対に嫌だったこと、など、内容は何でもよいのだと思います。今は誰でもSNSで発信できる時代です。一人でも多くの人が経験談を発信して、それを参考にして一人でも多くの人の生活が豊かになれたらいいなぁと思います。 コラム執筆者:医師 梶浦 智嗣 編集:株式会社メディカ出版 【参考・引用】1)「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会編.筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013.東京,南江堂,2013,2.

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