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家族まるごと看るサービスも  「東大看護GNRC目白台プロジェクト」の新たな取り組み

家族まるごと看るサービスも  「東大看護GNRC目白台プロジェクト」の新たな取り組み

東京大学医学部附属病院 分院の跡地(東京都文京区目白台)にヘルスケア複合建物が誕生し、2025年7月にグランドオープンを迎えました。ここには、東京大学大学院 医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター(以下「東大GNRC」)のオープンラボや、新たな取り組みに挑戦する看護ステーションも入っています。新たな看護の拠点で行われる取り組みや研究内容に迫ります。

文京区目白台に誕生したヘルスケア複合建物

東京大学医学部附属病院 分院の跡地に誕生したヘルスケア複合建物「Tonowa Garden(トノワ ガーデン)目白台」。「SUSTAINABLE COMMUNITY CAMPUS~地域をむすぶ、世界に広がる、未来へつながる。」というコンセプトで、人同士の多様なつながりが生まれることを目指しています。

建物内には、ヘルスケア関連の施設が多数あります。サービス付き高齢者向け住宅、介護付有料老人ホーム、リハビリ特化型デイサービス、クリニック、調剤薬局、学童保育施設のほか、「東大看護ステーション目白台」、「東大GNRCオープンラボ」という新たな看護の拠点も入っています。

「東大看護ステーション目白台」とは?

東大看護ステーション目白台は、東大GNRCの教員らが立ち上げた「一般社団法人東大看護学実装普及研究所」が運営する看護ステーション。研究者であり臨床経験も積んでいるメンバーが、東大GNRCと連携しながら質の高い看護サービスを提供します。介護保険・医療保険制度による訪問看護はもちろんのこと、新しい保険外看護サービスも提供。世帯単位での月額制看護サービス「GNRCつながるケア」を展開しています。

「家族まるごと支える」新たなチャレンジ

東大看護ステーション目白台「GNRCつながるケア」
提供:一般社団法人東大看護学実装普及研究所

「GNRCつながるケア」は、個人ではなく世帯単位で看護を提供する点が特徴的です。定期面談、メール・電話での相談、別居のご家族へのレポート送付などに対応しています(※)。介護保険・健康保険による訪問看護の対象にならない方や病院の受診に至っていない方など、これまで医療との接点がなかったご家族にも看護師による健康相談サービスを届けられる新しい取り組みです。

※プランにより、対象人数や面談頻度、提供サービスなどは異なります。

「東大GNRCオープンラボ」とは?

東大GNRCオープンラボは、東京大学医学系研究科附属の研究機関で、東大看護系教員、大学院生、学部生などによって運営されています。

「誰もが自分と自分のまわりの人たちを大事にできる『幸せ社会』を目指す拠点」として、文京区民が気軽に立ち寄れる暮らしの保健室の機能を持つほか、さまざまな研究・取り組みが行われる予定です。多目的スペースのため、自由度高く活用できます。

直近では、2025年6月~12月に文京区からの委託事業として『共に学ぶ「ケア」講座』を実施しており、学生から高齢者まで幅広い層の方から定員を超える多数の申し込みがあったとのこと。地域住民の関心・ニーズの高さがうかがえます。

東大GNRCセンター長 山本 則子教授

東大GNRCセンター長 山本 則子教授。
東大医学部衛生看護学科を1963年に卒業した遠藤和枝さんが東大GNRCに寄贈された絵画「酸素を放出する微細藻類」と。

完成見学会も盛況

2025年5月末に行われた東大GNRCオープンラボの完成見学会では、研究分野ごとにコーナーが設けられ、研究内容や開発した商品、取り組みなどを説明。訪れた方々は熱心に聞き入っていました。

東大GNRCオープンラボの完成見学会
2025年5月末に行われた完成見学会での様子

例えば、地域看護学・公衆衛生看護学分野のコーナーでは、「乳児の股関節脱臼の遅診断・見落としゼロ」プロジェクトが紹介されていました。乳児股関節脱臼は、徒手検査では一部見落とされる可能性があり、発見が遅れると高齢期の変形性股関節症に至るリスクもあります。こうしたリスクを減らすために、各自治体が行っている新生児訪問指導時に保健師等による超音波検査を行うことを提案しており、一部地域で試行したことによる成果も出ています。

新生児超音波検査の体験
イベント時には、人形を用いた超音波検査の体験も

そのほかにも複数の体験コーナーが設けられ、医療や健康に関心を持ってもらえるような工夫が凝らされており、活発な交流も生まれていました。

東大GNRCオープンラボの完成見学会体験コーナー

イノベーティブな発想で「新しい看護」にチャレンジ

最後に、東大GNRCオープンラボ・東大看護ステーション目白台を運営している皆さまのコメントをご紹介します。

東大GNRCセンター長 山本則子教授

看護が人間の生活にとって重要で欠かせないものであるという点は今後も変わりませんが、ニーズに応じて看護の形、やり方は変わっていきます。だからこそ私たちは、イノベーティブな発想を持ち、勇気をもって新しい取り組みにチャレンジしていくべきだと思っています。 東大GNRCオープンラボ・東大看護ステーション目白台では、多様な方々の力を合わせながら、新たな看護を生み出す研究・開発を進めていきます。


東大看護ステーション目白台 管理者 北村智美さん

「GNRCつながるケア」は保険外サービスであり、ご自宅に限らず入院先や施設での面談、通院への立ち合いなどさまざまな可能性があると思います。利用者のニーズに合わせて、柔軟な形で看護を提供していけたらと思います。 将来的にはここから得た研究知見を発表し、他地域でも提供可能な方法を検討していきたいと考えております。


東大GNRCオープンラボ 広報担当 仲上豪二朗教授

東大GNRCオープンラボは、地域の方々とともに研究を推進できる先進的な場です。 東大病院の分院が閉院した2001年以降、この建物が完成するまでに多数の検討・調整がなされてきました。東大研究者たちの強い想いや努力の積み重ね、そして東大に愛着を持ってくださっている地域の方々からの後押しなどがあったからこそ、東大GNRCオープンラボが誕生できた経緯があります。 先人たちからのバトンをしっかり受け取り、少しでも早く社会に役立つ研究を推進すべく、覚悟と信念をもって取り組んでいきます。

* * *

新たな看護の研究拠点が誕生し、世帯単位での看護サービスや市民参加型の研究活動など、先進的な取り組みが展開されています。ぜひ今後の展開に注目していきましょう。

執筆・取材・編集:NsPace編集部




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