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受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年7月2日
2025年7月2日

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した大橋 奈美さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」をもとにした漫画をお届けします。  「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前回までのあらすじ在宅でのお看取りがまだあまり一般的ではなかったころ、どうすれば「その人らしく生きる」ことを支えられるか考えていた大橋さん。そんなときにふと頭に浮かんだのは、病棟看護師時代に受けた訪問看護ステーション所長からのフィードバックだった。病院に向けて、手紙のように温かみのあるフィードバックをしようと考えた大橋さんは……。>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】 「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 大橋 奈美(おおはし なみ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府)この度は、審査員特別賞をいただき、本当にありがとうございました。審査員の先生方やNsPaceの皆さまに感謝申し上げます。エピソード投稿をきっかけに、普段していることを言語化し、振り返るきっかけをいただいたと同時に、改めて看看連携の大事さを思い起こしました。これから先、どのような利用者さんとの出会いが待っているかわかりませんが、今後も一人ひとりの人生に寄り添いながら、その方のエピソードを大事にしながら、望みを最後まで伺い、最善を尽くす訪問看護・在宅医療を目指していきたいと思います。 [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
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2025年7月1日
2025年7月1日

【受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した大橋 奈美さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編 >>後編はこちら(7月2日公開予定)受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編【つたえたい訪問看護の話】   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 大橋 奈美(おおはし なみ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府) [no_toc]

結核の感染者数は増えている?症状・原因・感染経路も解説
結核の感染者数は増えている?症状・原因・感染経路も解説
特集
2025年7月1日
2025年7月1日

結核の感染者数は増えている?症状・原因・感染経路も解説

結核は過去の病気と思われがちですが、2025年現在でも世界的に多くの感染者が報告されており、日本でも完全に根絶されたわけではありません。特に高齢者や基礎疾患を持つ人、免疫が低下している人は発症リスクが高く、注意が必要です。 本記事では、結核の最新の感染状況、症状や原因、感染経路、感染を防ぐための対策について解説します。訪問看護の利用者さんやご家族が結核が疑われる症状を訴えた際のアセスメントに役立ててください。 結核とは 結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる感染症です。主に肺に影響を及ぼしますが、リンパ節や骨、腎臓、脳など全身のさまざまな臓器にも感染する可能性があります。 結核菌は、一般的な細菌とは異なり、手指や土壌、水回りなどの環境中には存在せず、基本的に人の体内でのみ生存し増殖します。感染者が咳やくしゃみをした際に排出される飛沫の中に含まれる結核菌が空気中を漂い、それを長時間かつ大量に吸い込んだ人に感染が広がります。 結核の現在の感染者数 結核の感染状況は近年改善傾向にあり、日本の結核罹患率は低下し続けています。2023年の結核罹患率は人口10万人あたり8.1人で、前年の8.2人からわずかに減少しました。結核の低まん延国の水準である10.0人を下回っており、2021年に初めてこの基準を達成して以来、継続的に低い水準を維持しています。 乳幼児や思春期の若者では発症率が比較的高く、糖尿病、慢性腎不全、エイズ、じん肺などの基礎疾患を持つ人もリスクが高まります。さらに、副腎皮質ホルモン剤やTNFα阻害薬などによる治療を受けている場合、体内の免疫機能が抑制されることで結核の発症リスクが上昇します。 出典:厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」 結核の症状と進行の特徴 結核は多くの場合、6ヵ月から2年の間に症状が現れます。初期症状は軽く、風邪や慢性的な疲労と勘違いされやすいため、自覚するのが遅れることが少なくありません。 症状は咳や痰、血痰、胸の痛みなどの呼吸器症状だけではなく、発熱や倦怠感、冷や汗、体重減少なども起こります。 特に、2週間以上咳が続く場合は、結核の可能性を考慮し、早めに医療機関を受診することが重要です。結核は感染力が強いため、発症した本人が気づかないまま放置すると、周囲の人々にも感染を広げてしまう恐れがあります。 結核の感染経路 結核の主な感染経路は、飛沫核感染(空気感染)です。感染者が咳やくしゃみをした際に排出される飛沫が乾燥し、小さな粒子(飛沫核)となって空気中を漂います。これを吸い込むことで、健康な人の肺に結核菌が侵入し感染が成立するとされています。 飛沫は5μm以上であり短時間で落下するため、感染は近距離のみに限定されますが、飛沫核感染では5μm以下の粒子が長時間空気中に残るため、感染が広がりやすいとされています。 結核の感染予防には、以下のような消毒液を使った消毒が有効です。 高水準消毒薬中水準消毒薬低水準消毒薬グルタラールフタラール過酢酸次亜塩素酸ナトリウムアルコールポビドンヨード両性界面活性剤 結核の検査 結核の感染を調べる検査は、ツベルクリン反応検査とインターフェロンγ遊離試験(QFT・T-SPOT)です。ツベルクリン反応検査は、BCG接種や類似の非結核性抗酸菌の影響を受けるため単独で結核感染の診断には用いられません。一方、インターフェロンγ遊離試験は結核菌に特異的な免疫反応を検出する血液検査で、結核菌感染の有無を調べるのに有用です。 また、胸部レントゲンや胸部CTにて結核を疑い、喀痰検査などで確定診断を行います。喀痰検査には、結核菌を検出する方法として塗抹検査(顕微鏡検査)、培養検査、核酸増幅検査(PCR法)があります。 塗抹検査(顕微鏡検査)喀痰を染色し、抗酸菌の有無を調べる。ただし、検出された抗酸菌が結核菌とは限らない(非結核性抗酸菌の可能性もある)。 培養検査痰の中に含まれる結核菌を、特殊な培養液で増やして検出する検査。確定診断に有用だが、結果が出るまで数週間かかる。 核酸増幅検査(PCR法)痰の中に含まれる結核菌の遺伝子を検出する検査。結核菌の遺伝子を検出するので、迅速な診断が可能。ただし、菌の生存は確認できないため、培養検査と併用するのが望ましい。また、既往歴に肺結核がある場合、死菌を検出し陽性になる可能性があるため、慎重な判断が必要。 結核のワクチン 結核の予防として広く使用されているBCGワクチンは、結核の感染および重症化を防ぐために開発された生ワクチンです。 接種方法は一般的な注射とは異なり、専用の管針を用いた「スタンプ方式」。ワクチンの液を皮膚に滴下し、針を皮膚に押し当てることで薬剤を浸透させます。 生後1歳までに行うことが推奨されており、特に生後5ヵ月から8ヵ月までの間に接種することが望ましいとされています。 結核疑いのある方への訪問の注意点 結核は空気を介して感染する疾患のため、訪問時には感染対策を徹底することが重要です。感染防護の基本としてN95マスクを適切に装着し、呼吸器を通じた病原体の吸入を防ぐことが求められます。 訪問先の室内環境についても十分な配慮が必要で、窓を開けるなどして定期的に換気を行うことで、空気中の菌濃度を下げるよう努めましょう。 なお、利用者さんの健康状態を把握するためにバイタルサインの測定を行いますが、測定機器や手指の消毒については、ほかの利用者さんと同様の衛生管理を徹底すれば問題ありません。 結核にて在宅療養をする場合の注意点 結核の診断を受けた利用者さんが在宅で療養を行う場合、感染予防の徹底と体調の変化を早期に察知することが重要です。 内服管理については、治療の基本となる抗結核薬を確実に服用し続けることが求められます。薬の飲み忘れや自己判断による服薬中断があると、薬剤耐性結核を引き起こすリスクが高まるため、家族や訪問看護師が服薬状況を定期的に確認し、必要に応じて服薬の支援を行います。 また、在宅療養中の環境整備として、室内の換気を徹底しましょう。結核菌は空気中に長時間浮遊するため、窓を開けて空気の流れを作り、清潔な空間を保つよう心がけます。さらに、同居する家族が感染リスクを減らすためにも、マスクの着用を徹底しましょう。 異常の早期発見も在宅療養の重要なポイントです。結核治療中に発熱や倦怠感が強まる、血痰が増える、体重減少が著しいといった症状が現れた場合、病状の悪化や副作用の可能性が考えられます。こうした変化が見られた際には、すぐに医療機関へ相談し、適切な対応を取ることが必要です。 結核の既往歴がない利用者さんであっても、慢性的な咳や血痰が続く場合は結核の可能性を考慮し、訪問時にはN95マスクを着用しながら対応し、医師へ速やかに報告することが重要です。 * * * 訪問看護師が適切な知識を持ち、早期に異変を察知し対応することで、結核の重症化を防ぐことができます。結核の感染リスクを考慮しながら、適切な対応を心がけましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:村田 朗医療法人財団日睡会 理事長御茶ノ水呼吸ケアクリニック 院長日本医科大学内科学講座(呼吸器・感染・腫瘍部門)非常勤講師。日本医科大学、 同大学院卒業。資格・学会:医学博士、日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本睡眠学会会員、肺音(呼吸音)研究会世話人、東京呼吸ケア研究会幹事、American Thoracic Society 会員、European Respiratory Society 会員、International Lung Sounds Association 会員、NPO法人日本呼吸器障害者情報センター顧問、東京都三宅村呼吸器専門診療委託医、日本医師会認定産業医、身体障害者福祉法指定医(呼吸器)、千代田区公害健康被害診療報酬審査委員。 【参考】〇日本小児科学会.「BCGワクチン」(2018年3月)https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-06BCG_202312.pdf2025/6/25閲覧〇厚生労働省.「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001295037.pdf2025/6/25閲覧〇厚生労働省.結核「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-02-02.html2025/6/25閲覧〇東京都感染症情報センター.「結核 Tuberculosis」(2025年2月27日)https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/tb2025/6/25閲覧

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月25日
2025年6月25日

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した田端 支普さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「看護師にご褒美をくれたA氏」をもとにした漫画の後編をお届けします。※漫画タイトルは「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」です。※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。  「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」前回までのあらすじ利用者のあゆみさんは、腎臓がん末期で一人暮らし。入院していましたが、ご本人の「家に帰りたい」という要望が強いことから、訪問看護が入ることになりました。当時訪問看護師になったばかりだった田端さんは、「タバコを吸いたい」という希望に最初は少し戸惑いましたが、安全に配慮しながらご本人のしたい暮らしをサポートしていくことにしました。そして、訪問看護に入って数日経った頃、あゆみさんからオンコールが……?>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」前編【つたえたい訪問看護の話】 「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」後編 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 田端 支普(たばた しほ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府)受賞のお知らせをいただいたときは驚きました。ハートフリーやすらぎからは複数名受賞させていただき、みんなが普段頑張ってきたことが報われたようで、本当にうれしいです!表彰式でもさまざまな訪問看護師さんに出会い、全国に熱い思いを持つ訪問看護師さんがいるんだな、と刺激を受けました。 今回のエピソードは十数年前のもので、これを機に久しぶりにあゆみさん(仮名)にお会いして、プレゼントをいただいたような気持ちにもなりました。皆さんにもあゆみさんの人生の一部を知っていただくことができ、嬉しく思っています。 訪問看護は、制度も含めて変化が激しく、大変なこともあります。でも、「やっぱり訪問看護が好き」という想いを持つ訪問看護師さんは多いと思います。みんなでより良い訪問看護をつくり、楽しく看護をし、訪問看護に関わる人みんなが笑顔になればいいなと思っています。本当にありがとうございました。 [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月24日
2025年6月24日

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した田端 支普さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「看護師にご褒美をくれたA氏」をもとにした漫画をお届けします。※漫画タイトルは「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 ※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。 「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」前編 >>後編はこちら受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」後編【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 田端 支普(たばた しほ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府) [no_toc]

エンゼルケア応用編 ~ご家族対応とQ&A~【セミナーレポート後編】
エンゼルケア応用編 ~ご家族対応とQ&A~【セミナーレポート後編】
特集 会員限定
2025年6月24日
2025年6月24日

エンゼルケア応用編 ~ご家族対応とQ&A~【セミナーレポート後編】

2025年3月14日、NsPace(ナースペース)は、エンゼルケアの実践的な知識をご紹介するオンラインセミナー「エンゼルケア 応用編 ~状態別対応とコミュニケーション~」を開催。「エンゼルメイク研究会」代表の小林光恵さんに、顔や体の状態別のケア方法やお看取り前後のコミュニケーションについて教えていただきました。 セミナーレポート後編では、ご家族とのコミュニケーションの工夫やQ&Aセッションの内容をお届けします。 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちらエンゼルケア応用編 ~お顔の状態別ケア~【セミナーレポート前編】 【講師】小林 光恵さん看護師、作家。編集者を経験後、1991 年からは執筆業を中心に活躍しており、漫画「おたんこナース」、ドラマ「ナースマン」の原案者としても知られる。2001 年には、看護師としての経験をいかして「エンゼルメイク研究会」を発足し、代表に就任。2015 年より「ケアリング美容研究会(旧名・看護に美容ケアをいかす会)」代表も務める。 切開部や拘縮への対応 亡くなられた後、気切部をはじめとした切開部の断端は生着しません。そのため、ケアとしてはまず清拭を行い、創部をしっかりと合わせて、できれば皮膚接合用などのテンションの高いテープを貼ります。その上からフィルム剤、さらにベージュの不織布を貼って、切開部を目立たなくしましょう。ポイントは、一貫して「生着しないこと」に留意して対応することです。 また、関節部分が屈曲したまま硬く固定される「拘縮」が見られる方の対応は、医療者側では行いません。ご家族から関節を伸ばしたいとご要望があった場合は、葬儀社への相談を促してください。 ご家族とのコミュニケーション エンゼルケアでは、ご家族とのコミュニケーションも大切な要素のひとつです。お看取り前後やケアを行う際には、以下のような声かけを意識すると、ご家族の安心や信頼につながります。 お看取り前の声かけ 着替え用衣類の準備については、医師から「残された時間」や「最期が近づいていること」などの病状説明があったタイミングでご案内するとより自然です。「万が一のときは」と前置きのひと言を添えることで、ご家族にも配慮した伝え方になります。 エンゼルケア時 私が自身の母を看取った際は、看護師の方々が「息が止まったら連絡をください」「担当医は◯時に到着します」といった業務的な案内にとどめてくださったことが、かえって心の支えになりました。そうした経験から、私は亡くなった後の言葉がけは必須ではないと考えています。無理に声をかける必要はなく、ご家族の状況に応じた柔軟な対応が大切です。 例えば、抱き移しの際に「どうぞ抱いて差し上げてください」とお声かけするだけでも、ご家族の心情に寄り添う関わりになります。 また、事業所のスタンスにもよりますが、エンゼルケア終了後に「ご不明な点がありましたらいつでもご連絡ください」と伝えておくと、ご家族は心強いはずです。 時代の流れをふまえたエンゼルケアを 近年、「死」への対応についての社会の捉え方は大きく変化しています。とくに葬送はこのところ大幅な簡略化が進み、時間をかけずに終わらせるケースが増加傾向にあります。つまり、ご遺体と過ごす時間が少なくなりつつあります。 これからのエンゼルケアのあり方について検討する際も、そうした流れをふまえる必要があるでしょう。グリーフワークにとってプラスになることを意識しながら、ぜひ事業所のみなさんで考えてみてください。 Q&Aセッション Q.エンゼルケアの説明と料金の提示はどのように行うとよいでしょうか? エンゼルケアの料金は、細かな金額こそ異なるものの、多くの事業所で請求されています。金額提示方法については、研究会では契約書へ記載することを推奨しています。金額とあわせて、事業所で実施しているエンゼルケアの内容を整理して記載しておくとよいでしょう。「担当看護師◯名が◯分間の中で、必要と判断した看護(体をきれいにする、着替えさせるなど)を行います」のように書くのがおすすめです。 Q.自壊創があり、滲出液や出血が見られる場合はどのように対応すればよいですか? 研究会では、生前と同様の処置を継続するのがよいと考えています。滲出液が多く臭気が強い場合は、次亜塩素酸水をスプレーし、その上で生前お使いだった臭気を抑制する軟膏を塗布するなどがよいでしょう。 【お顔への対応】 後頭部や体の背面に滲出液や出血が見られる場合は、重力の影響を受けて流出が続き、時間経過とともにそれらが溜まって汚染が広がる可能性があり、フィルム剤で創部を密閉したり、汚染を吸収する布類を敷いたりなどの対応の必要があります。 それに比べて、お顔の創部は重力の影響は大きくなく、水分を吸収するガーゼなどを当て、フィルム剤で密閉したあとは、ベージュのテープや肌の色に近い布などでカバーして目立ちにくくします。 【浮腫によって滲出液が出ている場合の対応】 浮腫による滲出液はいつまで出続けるか予測がつかないため、汚染しないように吸収するものを当てておく必要があります。身につける衣服も滲出液に汚染される可能性があるので、とくに大事なお着替えの場合は、時間を空けて着せる、吸収するものを当てた状態で着用していただくなどの対応をとってください。 Q.お顔の乾燥を最小限にするコツ、また手に入れやすい保湿剤を教えてください。 乾燥の防止に必要なのは油分をたっぷりなじませることです。おすすめの保湿剤は、化粧品のクリーム。油分で油膜をつくるワセリンやオリーブオイルでも乾燥は防止できますが、化粧品としてつくられた保湿クリームは、伸びのよさやなじみやすさの点で優秀です。 クリームを選ぶ際は「バニシングクリーム」や「コールドクリーム」を避けてください。前者は油分が少ない、あるいは油分がまったく入っておらず、後者はクレンジングやマッサージに適したもので、いずれも保湿には向きません。「保湿クリーム」と表記されているものを選びましょう。 また、最も乾燥に注意したい部位は唇で、葬儀社の方も「唇はとにかく早い段階で保湿してほしい」と話します。唇はワセリンやオリーブオイルなどで保湿し、メイクをする場合は口紅をしっかり塗ります。 * * * 今回は研究会が考えるエンゼルケアのノウハウについて、具体的な場面をイメージしながらお伝えしてきました。ぜひ現場で実践して、より質の高いケアを目指していただければ幸いです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月17日
2025年6月17日

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) 木戸 恵子さんの大賞エピソード「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」をもとにした漫画の第2話をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」前回までのあらすじ4人のお子さんがいるえみさんは、末期の肺がんを患っている。子どもたちと最後の思い出をつくるために、主治医の許可も得て宮崎から東京に飛行機で移動していたところ、容体が急変してしまい、緊急入院することになった。えみさんや夫は「子どもたちのいる宮崎に帰りたい」と言っており、J病院の医師・看護師たちはリスクが大きいため悩んだが、訪問看護師の木戸さんに相談することにした。<主な登場人物>>>第1話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第1話【つたえたい訪問看護の話】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話 続く。第3話(最終話)は約1ヵ月後に公開予定です。 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者: 木戸 恵子(きど けいこ)さん株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

エンゼルケア応用編 ~お顔の状態別ケア~【セミナーレポート前編】
エンゼルケア応用編 ~お顔の状態別ケア~【セミナーレポート前編】
特集 会員限定
2025年6月17日
2025年6月17日

エンゼルケア応用編 ~お顔の状態別ケア~【セミナーレポート前編】

2025年3月14日、NsPace(ナースペース)はオンラインセミナー「エンゼルケア 応用編 ~状態別対応とコミュニケーション~」を開催しました。講師を務めてくださったのは、「エンゼルメイク研究会」代表の小林光恵さん。顔や身体の状態に応じた対応のノウハウや、エンゼルケアの重要なポイントであるご家族とのコミュニケーションのコツなどを教えていただきました。 セミナーレポート前編では、状態別「お顔のケア方法」についてご紹介します。 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】小林 光恵さん看護師、作家。編集者を経験後、1991年からは執筆業を中心に活躍しており、漫画「おたんこナース」、ドラマ「ナースマン」の原案者としても知られる。2001年には、看護師としての経験をいかして「エンゼルメイク研究会」を発足し、代表に就任。2015年より「ケアリング美容研究会(旧名・看護に美容ケアをいかす会)」代表も務める。 お顔の状態別ケア「黄疸が出ている」 お身体に黄疸が出ている場合、「ビリルビン色素の酸化亢進」などが主な原因となって皮膚がくすむように変色します。その変化は一様に表れるわけではなく、眉毛やひげ、毛髪の生え際などに顕著に見られます。 こうした変化については、あらかじめご家族へご説明しておくことが大切です。説明文書の中に「黄疸によって肌色が変化する可能性がある」ことを明記しておくとよいでしょう。口頭での説明も可能ですが、タイミングを逃したり、十分に伝わらなかったりする場合もあるため、文書での案内もあわせて行うことをおすすめします。また、ご家族から後になって「肌色が変化している」とご連絡をいただいた場合は、黄疸による自然な変化であることやカバー方法について丁寧に説明してください。 肌色はいつ、どれくらい変化する? 黄疸による肌色の変化は、死後1日ほど経過してから強く表れることが多く、一般的には薄緑がかった色から濃いグレーになっていきます。 臨終時:黄色死後 24 時間から 36 時間ほど:淡緑色死後 36 時間から 48 時間ほど:淡緑灰色 しかし、変化には個人差が大きく、厳密に変化の度合いを予測するのは難しいのが実情です。先々のくすみに備えてカバーしようとするとファンデーションが厚塗りになり、自然さが失われてしまいがちなため、メイクを施す時点の肌の状態に合わせて仕上げてください。 その後の肌色の変化が気になった場合には、ファンデーションでカバーしていただいてよいことを、ご家族に口頭で伝えるか文書に記述しておくことをおすすめします。 黄疸カバーメイクの方法 黄疸をメイクでカバーする際のポイントは、「黄色」を使うこと。できればクレンジングマッサージをした後に保湿とベースメイクを済ませ、黄色のクリームファンデーションや下地をなじませましょう。その上で、赤みを加えたファンデーションで失われた血色を補い、さらに肌色のリキッドもしくはクリームファンデーションを重ねます。耳や首の皮膚の色も変化するので、露出している部分の塗り忘れのないように意識してください。 お顔の状態別ケア「まぶたが閉じない」 まぶたが閉じていない状態でお亡くなりになった方へのケアには、クレンジングマッサージがおすすめです。マッサージを行うことで、お顔が徐々に柔らかくなり、まぶたが自然と閉じることがあります。 それでもうまく閉じない場合は「二重まぶたをつくる化粧品の糊」を使用することがあります。やり直しが可能で、時間経過によってまぶたやその周囲がひきつれたという報告もありません。上下のまぶたの縁に糊を薄くつけ、その部分を手で扇いで少し乾かしてから合わせると、自然に閉じることができます。 ケアをするまでの乾燥対策も忘れずに 眼球表面が外気に触れると、乾燥が進み、色調変化を起こすリスクがあります。閉じる対応までの間、眼球の表面に綿棒でオリーブオイルなどの油分を塗布しておきましょう。もしくは、外気が触れないようにガーゼでカバーします。 その際、ご家族に「目は乾燥しやすいのでカバーします。後ほどまぶたを閉じるケアをしますね」と説明することも忘れないでください。 お顔の状態別ケア「お口が開いている」 お口が開いている場合は、まず、枕を少し高くし、筒状に丸めたタオルを顎の下に挟んで口を閉じましょう。それでもうまく閉じない時は、ご本人が使用されていた入れ歯を装着するとうまくいく可能性があります。ただし、中には「入れ歯を装着しても、顎は固定できるものの口元が閉じない」というケースも。この場合、口内の入れ歯が接する部分に「入れ歯安定剤」を薄く塗布してから口を閉じることで解消できることもあります。 なお、口腔内の変形をはじめとしたトラブルによってご本人の入れ歯を装着できない場合は、エンゼルメイク専用の入れ歯を使う選択肢もあります。 口を閉じるケアは必須ではない ご家族によっては「無理に口を閉じなくてよい」と希望されることもあるので、よく相談しながら対応を検討してください。ただし、口が開いたままだと口腔内が乾燥するため、口腔ケアの仕上げに油分を塗布しておくことをおすすめします。 お顔の状態別ケア「痩せている」 頬がこける、眼窩がくぼむなど、顔が痩せた状態で亡くなる方も少なくありません。この場合の対応について、研究会では「含み綿は行わない」ことを基本方針としています。理由は、自然な見た目にするのが非常に難しいためです。 頬やまぶたに含み綿をすると凸凹ができるケースが多く、「その人らしさ」が失われてしまうことも。また、こめかみには含み綿を入れることができないため、頬やまぶたにだけ行うと、不自然なバランスになるリスクもあります。そのため、含み綿を施す時間をほかのケアに充てたほうがよいというのが私たちの見解です。 どうしても痩せた印象を和らげたい場合には、1段明るめのファンデーションを使って気になる部分をやさしくカバーする方法もあります(イラスト「緑色」斜線部分)。 また、ご希望があれば、葬儀関係者やエンバーマーの技術によってお顔全体を自然にふっくらと整えることが可能な場合もあります。こうした対応についてご家族から要望があった際には、葬儀社へ相談するよう案内してください。 含み綿を希望するご家族は多くない エンゼルメイクは、その場にいらっしゃる近しいご家族のために行うもの。そして多くの場合、そのご家族は痩せる経過や痩せた状態のお顔をそばで見てきており、その姿を受け入れている面があるからか、臨終後すぐにお顔をふっくらさせてほしいと希望されるケースはあまり聞きません。ご家族の想いに寄り添うエンゼルケアを目指すのであれば、クレンジングマッサージやシャンプーなど、ほかのケアを一つひとつ丁寧に行うことが、より大切ではないかと考えています。 次回は、お看取り前やエンゼルケア時のご家族とのコミュニケーションの工夫、Q&Aセッションの内容などをまとめます。 >>後編はこちらエンゼルケア応用編 ~ご家族対応と Q&A~【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

透析患者さんの特徴と訪問時に注意したい状況・症状、報告のタイミングとは
透析患者さんの特徴と訪問時に注意したい状況・症状、報告のタイミングとは
特集
2025年6月17日
2025年6月17日

透析患者さんの特徴と訪問時に注意したい状況・症状、報告のタイミングとは

透析患者さんの高齢化が進むなか、訪問看護師さんが日常生活の支援を担う場面が増加しています。透析看護は、一般的な慢性疾患の看護に加え、シャントの管理や心不全徴候の確認など、透析特有の知識と観察力が欠かせません。今回は、訪問看護師さんが知っておくべき、透析患者さんの基本的な特徴、透析室との連携が求められるトラブルや注意を要する状況・症状について解説します。 透析患者さんの特徴とは? 身体的特徴:包括的な視点での看護が必要 透析患者さんは、除水の影響や循環血液量の変化、心機能の低下(心不全・虚血性心疾患)、自律神経障害、降圧薬の影響などにより、血圧の変動が起こりやすくなっています。また、免疫機能の低下により易感染性の状態となっており、感染予防も重要なケアのひとつです。動脈硬化の進行、下肢末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)の合併率も高く、重症下肢虚血(critical limb ischemia:CLI)を予防するための観察と対応が求められます。 そのほかにも、さまざまな合併症による身体症状がみられます(図1)。例えば、貧血、抗凝固療法に伴う出血リスク、骨の脆弱性による骨折リスクが挙げられます。さらに、透析や食事制限に伴う低栄養、尿毒素の蓄積による皮膚の乾燥や掻痒感などが生じることもあります。このように、多岐にわたる症状がみられるため、包括的な視点での看護が必要です。 図1 透析患者さんに関連する合併症 心理社会的特徴:段階に応じた支援が必要 透析導入期の患者さんは、病気や治療そのものへの不安だけでなく、生活の制限や将来の見通し、社会的孤立など多くの不安を抱えています。この時期には、身体的・精神的・社会的側面に目を向け、患者さん一人ひとりの状況に応じた多面的な支援が重要です。 また、透析治療を受け入れていく過程では、「落胆・喪失」「否認」「不安」「怒り」「抑うつ」などの心理状態を経て、最終的に「受容」に至るのが一般的です。それぞれの段階に応じた適切な支援が求められます。 バスキュラーアクセスと体重管理 透析患者さんの特徴を理解する上で、バスキュラーアクセス(vascular access:VA)と体重管理は特に重要なため、この2点について説明します。 VAの種類と特徴 血液透析を実施するには、多くの血液量を確保する必要があり、そのためにVAが作成されます。VAとは、透析治療を行うために血液を体外に取り出し、再び体内に戻すための専用の「血液の出入口」のこと。透析を安全かつ効率的に行うために、VAの維持・管理は重要です。VAの観察・アセスメント・トラブル対応について確認しておきましょう。 VAには、「シャント」「動脈表在化」「カフ型カテーテル」の3つの種類があります。それぞれの特徴について解説します。 ●内シャント(AVF、AVG)シャントとは、動脈と静脈を手術でつなぎ合わせて、透析に必要な血流の通り道(バイパス)を確保することをいいます。最も一般的な方法で、使用する血管は自己血管(arterio venous fistula:AVF)または人工血管(arterio venous graft:AVG)があります(図2)。それぞれ患者さんの状態に応じて選択されます。 シャントの管理では、視診・触診(スリル)・聴診(シャント音)を行い、閉塞や感染兆候がないか観察します。また、清潔保持と自己管理指導を継続的に実施します。(>>シャントの管理については次回詳しく解説します。トラブル事例も紹介する予定です) 図2 内シャント ●動脈表在化手術により、深部にある動脈を皮膚の直下に移動させ、穿刺をしやすくする方法です。この方法は、血管が脆弱な高齢者や心機能が低下している患者さんに適応されます。 ●カフ型カテーテル(長期留置カテーテル)シャントを作成するための血管がない場合、心機能が低下しシャントの作成が困難な場合に選択される方法です。内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈などの太い静脈にカフ付きカテーテルを挿入します(図3)。ただし、感染や閉塞のリスクが伴うため、日常的な管理が非常に重要です。 図3 カフ型カテーテル(長期留置カテーテル) 透析患者さんの体重管理 ●ドライウェイト(dry weight:DW)DWとは、透析後の目標体重であり、体内の余分な水分が取り除かれた状態を指します(図4)。「基礎体重」とも呼ばれ、DWが適正でない場合には心不全や低血圧などのリスクが生じます。患者さんの生活の質(QOL)を維持・向上させるためにも、DWは定期的に評価・見直しを行います。 図4 ドライウェイト(DW)とは ●体重管理透析では、透析間に増加した体重(主に水分)を、次の透析で4時間かけて除去(除水)する必要があります。体重増加が多いと、心血管系の合併症を引き起こすリスクが高まります。一方で、過度の除水は透析中の血圧低下や除水に伴うショックなどを招く恐れがあります。いずれの場合も最終的には生命予後に影響を与えるため、透析間の体重増加にはめやすが設けられています(図5)。 図5 透析間の体重増加のめやす ○透析間が中1日(例:木曜日・土曜日)の場合、DWの3%未満○透析間が中2日(例:火曜日)の場合、DWの6%未満 の体重増加が望ましい 患者さんの観察・情報共有のポイント 透析患者さんは、体調の変化によって透析の中止・変更・緊急透析が必要となる場合があります。そのため、訪問時には異常の早期発見と、透析室との速やかな情報共有がきわめて重要となります。 表1に訪問看護師さんが透析室へ連絡すべき主な状況を示します。 表1 透析室へ連絡すべき主な状況【感染】 【シャント・カテーテル】 【体重管理】 【そのほか】 連絡すべきか迷ったら? 「迷ったら連絡!」が鉄則です。「こんなことで……?」と思うような些細な変化でも、透析室にとっては重要な情報となる場合があります。 訪問看護師さんの「気づき」と「ひと声」が透析治療の質と患者さんのQOLを大きく左右します。訪問看護師さんと透析室の連携を強化することで、患者さんの安心・安全な在宅生活が実現できると考えています。  執筆:熊澤 ひとみ医療法人偕行会 透析医療事業部 副事業部長透析看護認定看護師【職歴】昭和63(1988)年 名古屋共立病院 入職平成11(1999)年 偕行会 セントラルクリニック 異動平成17(2005)年 透析医療事業部 副事業部長令和3(2021)年 医療法人偕行会 法人本部 理事【所属学会】日本腎不全看護学会 監事日本臨床腎臓病看護学会日本透析医学会編集:株式会社照林社

難病看護の特徴とは? 療養支援の伴走者・難病看護師の役割も解説
難病看護の特徴とは? 療養支援の伴走者・難病看護師の役割も解説
特集
2025年6月10日
2025年6月10日

難病看護の特徴とは? 療養支援の伴走者・難病看護師の役割も解説

訪問看護において、難病患者の支援者は療養生活を支える重要な役割を担っています。この記事では、難病看護の特徴や療養支援に求められる考え方を分かりやすく解説するとともに、難病看護の専門家「日本難病看護学会認定・難病看護師」(以下、難病看護師)の役割や支援内容についても詳しく紹介します。 生活障害を軸にみる難病看護 難病は、原因不明で治療法未確立のため、長期に療養が必要となる疾病であり、その希少性からめったに出会うことはありません。ですが、訪問看護の対象としては、それなりの「層」があるといえます。 難病と一口で言っても、令和7(2026)年4月時点で指定難病だけで348疾病に及びます。私たちは、ADL(activities of daily living:日常生活動作)と症状の程度などから、指定難病を3類型に分けて、生活障害を軸にみることを提案しました(図1)1)。 類型1:「ADL要介助、症状が不安定」 療養生活支援のニーズをもつ 類型2:「ADL自立、症状不安定」 病状改善のニーズをもつ 類型3:「ADL自立、症状は安定」 病状維持のニーズをもつ  図1 指定難病の類型化 文献1)より引用 このなかで訪問看護の対象となるのは、類型1である場合が多いようです。訪問看護制度における別表7(※1)や別表8(※2)、さらには介護保険の第2号保険者に指定難病が多く含まれていることもあり、訪問看護の世界では、難病は希少とは言い切れないところがあります。 ※1 別表7 厚生労働大臣が定める疾病等 末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態 下線:指定難病、点線:特定疾患 ※2 別表8 厚生労働大臣が定める状態等 1 在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理又は在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者2 以下のいずれかを受けている状態にある者在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理、在宅肺高血圧症患者指導管理3 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者4 真皮を超える褥瘡の状態にある者5 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者 経過に合わせてチームで支援を展開 難病には以下の特徴があります1)。1)症状が多彩で個別性が高いこと2)社会資源を活用して生活を組み立てること 難病患者の支援では、経過を知り、経過をともに歩むことと、難病患者が利用できる社会資源を知り、適切な時機に選択できるようにすることが大切です。もちろん、これは訪問看護だけではなしえません。多職種連携により、チームで伴走しながら展開しています。こうした支援こそが、難病看護の最大の魅力といえ、この記事ではその魅力を紐解いていきたいと思います。 「療養行程」に沿ってケアを紡ぐ 難病看護では経過に応じた支援が重要であり、図2に示す「療養行程」という考え方を大切にしています。以下にこの図をもとに支援のポイントについて説明します。 図2 難病の療養行程 文献2)より引用 難病の療養行程には5つの経過があります。 発症期:症状を自覚し、診断がつく時期 進行期:健康障害・生活障害の軽度から重度、重度から軽度へと変動しながら、症状が進行している時期 移行期:医療処置や療養の場の選択に基づいた支援を行う時期 維持・安定期:必要な治療や適切な支援により、症状コントロールがつき、健康問題・生活障害への対応法が確立している時期 終末期:死を身近にとらえ、グリーフケアを必要とする時期 これらの経過に沿って、タイミングを逃さずケアを紡いでいきます。この療養行程は、看護等支援者側からみたものであり、近年では「患者の旅路(patient journey)」という表現もよく用いられていると思います。 患者の旅路とは 「患者の旅路」という概念は「医療専門職が患者を理解して医療ケアを向上させるために、そして患者が自らのたどる道筋を理解し、病いと共に生きる生活をつくり上げていくために利用」3)されており、患者中心の医療、患者とともにある医療をめざすものです。難病患者への訪問看護を通じ、患者が他者との「出会い」を経験し、「変容」をきたす。「この病気になったからこそ見える世界がある」という言葉に代表されるようなナラティブの書き換えに通じた概念であるといえます。 難病の訪問看護では「出会い」に課題 難病の訪問看護は、「出会い」のタイミングから難しさがあります。訪問看護が難病の「発症期」からかかわることは想定しにくく、進行期や医療処置管理が必要になることがきっかけで、導入、つまり出会うことになるのではないでしょうか。 訪問看護が開始された時点で、患者が意思伝達障害をきたしていれば、人となりを知ることや関係性を築くことにおいて困難があります。また、呼吸障害や嚥下障害をきたしていれば、命を護ることで精一杯な状況もあります。さらに、ADLが自立している場合や目に見えない症状を呈している場合、訪問看護の必要性が認識されないことも生じます。 難病看護の専門家「難病看護師」とその役割 難病看護は、療養行程に沿ってチームで支援していくことといえますが、では、実際にどうしたらよいのか?ということが次なる疑問です。前述したように、訪問看護の世界では、難病は珍しくないかもしれません。しかし、希少疾患・個別性が高いことは否めず、ルーチンでのかかわりが通用しないこともあります。支援者側のバーンアウトも問題になっていますし、希少疾患のため相談先は少なく、全国津々浦々、看護師たちが孤立して悩んでいることも少なくありませんでした。 私たちの先人は、1979年に「在宅看護研究会」を発足し、年に1度、実践を報告し合う活動を続けていました。それが1994年に「日本難病看護学会」となり、2017年に法人格をもつ学術団体として「一般社団法人日本難病看護学会」となりました。 その過程のなかで、難病法の施行を見据え、難病看護の専門家を求めるニーズの高まりがあり、2013年に日本難病看護学会認定・難病看護師制度を発足しました。「難病看護師」は、難病看護に関する幅広い知識と療養生活支援技術を有していると認められた者をいい、以下の役割を果たすこととしました4)。 ● 難病の病態・病期に応じた看護判断に基づき、患者の主体的な療養生活を支援する看護実践ができる● 質の高い療養生活を送ることができるよう、難病患者・家族に対して相談・助言を行うことができる● 難病患者・家族の支援について、看護職員・関係職種の職員に対して連携し、助言・支持ができる● 難病患者・家族の生活の質向上を目指した地域としての取り組みに参画し、社会支援システムの向上・創造に寄与できる文献4)より引用 すなわち、質の高い難病看護実践と、相談・助言などのコンサルト、そして地域の支援体制の中核としてコーディネートができる、リーダーシップを発揮できる人材です。制度発足から10年以上が経過し、2025年3月現在、600人以上の難病看護師を認定してきました。 この資格を持っているからといって、給与が上がるわけでも、診療報酬を加算できるわけでもありません。「難病看護に詳しい人」であることを分かりやすく示すための資格といえるかもしれません。ですが、「退院調整時に難病看護師がいる訪問看護ステーションを紹介した」「地域の関係機関に向けて、難病に関する勉強会を開催した」など、難病看護師が地域支援のハブとなって活躍している様子が報告されるようになり、難病支援についての情報拠点として、目に見える形となったことの意義は大きかったかといえます。 * * * この連載では、そんな難病看護師たちの、日ごろの活動を紹介してもらうことで、難病の抱える7つの難とそこへの取り組みの一端を紹介していきます。正解はない世界のなかで、日々最適解を当事者とともに探している、そんな難病看護師たちの実践を共有してください。 【ALS難病看護事例】長期の経過を支える難しさ 変化に応じたケアの試行錯誤 【PSP難病看護事例】「食べたい」を叶える 支援者の不安に向き合う多職種連携 【MSA難病看護事例】ADL低下に気づけない 病識の乏しさがみられたときの対応 【SCD難病看護事例】難病だけではない 介護職との連携、別疾患発症から看取りまで 【MS難病看護事例】看護ができることが見えにくい 孤立を防ぐかかわりと制度の狭間 【EB難病看護事例】「知られていない」がゆえに届かない看護 制度解釈の課題 【人工呼吸器装着者 難病看護事例】災害時どうする?避難計画策定の実際と課題 監修・執筆:中山 優季東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター 難病ケア看護ユニット、日本難病看護学会認定・難病看護師看護学生時代よりALS在宅人工呼吸療養者の支援にかかわり、ケアや長期経過に関する集学的研究、療養環境向上に関する研究に取り組んでいます。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)中山優季:神経難病看護とは.髙橋一司医学監修,中山優季,原口道子,松田千春編著,神経難病の病態・ケア・支援がトータルにわかる,照林社,東京,2024:ⅹ.2)中山優季:神経難病看護とは.髙橋一司医学監修,中山優季,原口道子,松田千春編著,神経難病の病態・ケア・支援がトータルにわかる,照林社,東京,2024:ⅻ.3)細田満和子:「新しい自分」を見つける「患者の旅路」.Jpn J Rehabil Med 2020:57(10);898-903.4)日本難病看護学会:難病看護師制度.https://nambyokango.jp/nambyokangoshi/2025/3/31閲覧

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