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真菌症とは? フットケアにも活かせる知識【多数の症例写真で解説】
真菌症とは? フットケアにも活かせる知識【多数の症例写真で解説】
特集 会員限定
2025年1月21日
2025年1月21日

真菌症とは? フットケアにも活かせる知識【多数の症例写真で解説】

在宅療養者によくみられる皮膚症状を、皮膚科専門医の袋 秀平先生(ふくろ皮膚科クリニック 院長)が写真を見比べながら分かりやすく解説。今回は真菌症の中でも、在宅で特に問題になる白癬菌とカンジダに絞って解説します。 真菌症とは 真菌症とは、真菌(カビ)が寄生して起きる疾患で、皮膚の角層、爪、毛や粘膜表面に生じる浅在性真菌症と、皮膚の深部(真皮、脂肪組織)や内臓に生じる深在性真菌症があります。後者はやや特殊で頻度も低いのに対し、前者は日常の診療で頻繁に遭遇します。 皮膚に病変を引き起こす真菌は複数ありますが、在宅で主に問題になるのは白癬菌とカンジダであると思われ、今回は浅在性の白癬とカンジダに絞ってみていきましょう。 診断確定には真菌の証明が必須 視診で疑うことはもちろんですが、診断確定は原因となる真菌を証明することにつきます。疑わしい部分の角層、毛、爪などを鑷子や眼科の剪刀で採取し、鏡検で菌糸や胞子を確認します(図1)。具体的には、採取した検体をスライドグラスに乗せて、その上から検出液*をかけてさらにカバーグラスを乗せ、軽く熱して角質を溶かしてから確認。慣れれば手技としては簡単ですが、検体を採取するときに適切な場所を選ぶことと、結果の判断が少し難しいと思います。 *検出液:20~30%の水酸化カリウムでよいのですが、さらに見やすくするために10~20%のジメチルスルホキシド(DMSO)を加えた検出液が市販されています。 図1 白癬菌の菌糸と胞子(鏡検像) A:白癬菌の菌糸(矢印)が見られる。B:菌糸の他、ブドウの房のような胞子(破線で囲まれた部分)が見られる。カンジダである。C:角層の隙間や角質細胞間の脂肪滴(破線で囲まれた部分)が白癬菌の菌糸のように見える場合があり、菌様モザイクと呼ばれている。 爪白癬については爪自体が硬く、白癬菌が存在している場所に偏りがある場合もあり、適切に検体を取るのがさらに難しくなります。 特に在宅で、「爪が肥厚しているから」というだけで白癬と判断されて治療されている例を見かけます。実は爪白癬ではない、爪甲鉤彎症(そうこうこうわんしょう)や掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、厚硬爪甲など他の疾患による爪の肥厚(図2)などが含まれている場合もあるので、きちんと診断する必要があります(少なくとも皮膚科では、真菌検査をしないで爪白癬の治療を始めると、医療費請求時に査定されます!)。最近では抗原検査を行うキット(図3)も発売されており、免疫学的に調べられるので、他科の先生方には利用してほしいものです。図2 爪甲鉤彎症(左)と掌蹠膿疱症(右)   図3 爪白癬菌検出キットの例 テストライン部にラインが出現しており「陽性」と判定。 白癬 足に発症した場合は足白癬、爪なら爪白癬、陰股部であれば股部白癬、頭は頭部白癬、手は手白癬と呼び、それ以外の場所は一般に体部白癬とまとめることが多いです。足白癬は一般に趾間型、水疱型、角化型に分類されます(図4)。白癬はかゆみを伴うことが多く、またそういった印象があると思いますが、特に角化型ではかゆくない場合もあります。図4 趾間型(左)、水疱型(中央)、角化型(右) 外用治療が基本ですが、皮疹が見られない場所にも真菌が付着しているため、両足全体に外用することが必要です(図5)。薬を塗る量も重要ですが、最近は「finger tip unit」の概念が普及しているように思います(図6)。チューブから人差し指の末節分の薬を押し出して(約0.5g)、それを大人の手のひら2枚分に塗る、という概念です。だいたい片足全体で1unit(0.5g)、両足に1日1回塗れば1gですので、1ヵ月で30gを消費することになります。また、症状が改善しているように見えても深部に真菌が逃げ込んでいるので、「見た目の症状が消失してからあと1ヵ月」外用を続けることが基準といえます。図5 足全体に付着する白癬菌 皮膚に現れた白癬の症状(破線で囲まれた部分)は一部でも、足全体を培地に接触させるフットプリント法で、広い範囲に白癬菌が付着していることが分かる。(まるやま皮膚科クリニック 丸山 隆児先生 資料) 図6 finger tip unit 人差し指の末節分の長さまで出した塗り薬の量を1finger tip unit(約0.5g)という。その量を大人の手のひら2枚分に塗る。 手掌や足底以外の部位、例えば臀部や四肢、体幹などに白癬が生じた場合は、一般に「境界鮮明・堤防状隆起・中心治癒傾向」の3つの特徴を持つことが多いでしょう(図7)。図7 体部白癬 臀部と下肢に生じた体部白癬。境界がはっきりとしており、周辺が堤防状に隆起し、外側に拡大していくため、中心部が治癒する傾向にある。 爪白癬 爪に真菌が侵入したもので、「混濁・肥厚・崩壊」が特徴ですが、その見た目はさまざまです(図8)。周囲の皮膚に食い込んで感染を起こし壊疽に至ったり、転倒リスクが上昇したりすることが分かってきました1)。現在の日本の高齢者における足白癬・爪白癬の罹患率は高いとの指摘があり、「治せるうちに治しておきたい」疾患であると考えます。図8 爪白癬のさまざまな症状 治療は内服薬か外用薬を選択します。内服にはテルビナフィン塩酸塩かホスラブコナゾールを用います。肝機能障害の懸念があるため、定期的な採血を必要とします。外用にはエフィナコナゾールまたはルリコナゾールがあります。治癒率は内服薬のほうが高いので、日本皮膚科学会のガイドライン2)によれば内服治療の推奨度はA(行うよう強くすすめる)、外用治療はB(行うようすすめる)とされています。肝機能障害や併用薬などの問題がなければ内服治療が望ましい(図9)のですが、副作用の懸念や採血の問題があり、在宅では外用薬が選択されることも多いようです。図9 白癬の治療経過(70代女性) テルビナフィン塩酸塩内服による足爪白癬の治療経過。根元から新しいピンク色の爪が生えてきて、半年ほどで入れ替わる。 カンジダ症 カンジダも真菌の一種ですが、口腔内、腸管、膣内などの常在菌です。寝たきりの高齢者ではオムツの着用率が高く、入浴もままならないこともあり、臀部・外陰部のカンジダ症の発生リスクが高いと考えられます。 臀部・外陰部の白癬は前述のような特徴を持ちますが、一方でカンジダ症は膜のような鱗屑(りんせつ)がついていたり(図10)、衛星病巣といって周辺にパラパラと飛び散るような水疱や膿疱が見られたりすることがあります。ただし、図11のように、なんとなく境界がはっきりしており「膜様鱗屑?」と思っても真菌は検出できず、刺激性の皮膚炎だったという例もあります。やはり最終的には菌の存在の有無を確認することが重要です。在宅の現場や施設などいたるところに皮膚科医が存在していれば、と思うのですが、現実はそうではないため皮膚科医の一人として申し訳なく思っています。図10 膜様鱗屑が見られるカンジダ症 図11 真菌は検出されなかった刺激性の接触皮膚炎 境界明瞭?膜様鱗屑?に見えるが、真菌は検出されず、刺激性の接触皮膚炎だった例。 カンジダ症は外用治療を基本としますが、刺激性の皮膚炎を合併している場合もあります。ここで問題となるのはIAD(失禁関連皮膚炎)ですが、これについては次回で詳しく述べたいと思います。 余談ですが… 筆者が大学を卒業して皮膚科の教室に入局した時の教授が真菌を専門としており、真菌症の診療については厳しく指導されました。一番大切なことは真菌が原因となっていることを証明することであり、そうでない場合は抗真菌薬を使用してはいけない、と教えられました。 実際、例えば患者さんが受診される際に、「水虫だと思って市販の水虫薬を塗っていました」と言われると、非常に困ります。ある程度の期間塗ってしまうと真菌を検出できないことがあり、本当にいないのか、薬の効果で一時的に見えなくなっているのか、判断が困難になるためです。また、市販の外用抗真菌薬にはかゆみ止めをはじめとしたさまざまな成分が含まれており、それによる接触皮膚炎も多く見られます(図12)。図12 市販の水虫用外用薬にかぶれた例 もともと足白癬、爪白癬であったが、市販の水虫用外用薬にかぶれた例。 真菌は、角層のケラチンを餌にして生きています。ですから基本的には角層や表皮が欠損した潰瘍表面で悪さをすることはない、あるいは少ないと考えます。時々、褥瘡の潰瘍表面に真菌が感染したので抗真菌薬を外用した、という報告に触れることがあります。ところが実際に真菌を証明しておらず、「見た目が真菌っぽい」という理由で抗真菌薬を塗っているように見受けられ、筆者としては抵抗があります。 執筆:袋 秀平ふくろ皮膚科クリニック 院長東京医科歯科大学医学部卒業。同大学学部内講師を務め、横須賀市立市民病院皮膚科に勤務(皮膚科科長)。1999年4月に「ふくろ皮膚科クリニック」を開院。日本褥瘡学会在宅担当理事・神奈川県皮膚科医会副会長・日本専門医機構認定皮膚科専門医編集:株式会社照林社 【引用文献】1)加藤豊範, 吉田章悟, 鈴木絢子他:回復期リハビリテーション病棟における転倒予測因子の解析 - 足爪白癬のリスクとその治療の有用性の評価.PROGRESS IN MEDICINE 2020:40 (4);425-429.2)日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン改訂委員会:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019.日皮会誌 2019:129(13):2639-2673.

心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年1月21日
2025年1月21日

心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護で利用者さんを支援していると、利用者さんやご家族の心情や感情を垣間見て心温まる瞬間があります。「みんなの訪問看護アワード2023」への投稿から、胸がほっこりするエピソードを5つご紹介したいと思います。 「みんなと“同じ“になるために。」 目標達成のため努力する利用者さんにエールを送りたくなるエピソードです。 10歳女の子の輝かしい第一歩のお話です。白血病に対する骨髄移植、重症GVHDに悩む女の子です。一般の小学校に通い、周囲のお友達と「同じように」を強く望んでいました。その一つが自転車に乗ることです。お友達と同じ場所や同じ速度感で遊べないことに、もどかしさを感じていました。練習を始めるも課題は多く、特に皮膚トラブルや免疫力の影響で一度でも転んでしまえば入院は免れません。転ばないよう注意しますが、手の巧緻動作や握力が十分でなく、ブレーキが上手くかかりませんでした。本人の強い想いと周囲のサポートにより、最後にはすべての課題を克服し自転車に乗ることができました。練習はとても大変で、「つらい…」と泣いてしまうこともありましたが、最後は笑顔で締めくくることができました。女の子はこの先も、周囲と「同じように」という大きな壁に次々とぶつかると思いますが、今回の成功体験を思い出し、前向きに生きて行くことを願います。 2023年1月投稿 「私を呼ぶ、あなたの声がきけた」 家族の強い愛情が通じ合う瞬間を感じ取れるエピソードです。 5月のうりずん(※)の時期、しとしと雨が降る中でMさんの訪問看護は始まった。Mさんは交通事故に遭われ、持病も重なり長く入院生活を過ごされた後で、ご家族の強い希望で自宅退院された。訪問が始まった時は、脈も早く、口呼吸をし、意識も朦朧としており、いのちの灯火は消えかけていた。Mさんとのコミュニケーションは難しく、声かけに頷いているか明らかでないことも多かった。ある日、それまでは少し遠巻きで見ていた父のことが大好きな長女さんに声かけをし、一緒にMさんの洗髪、足浴、清拭を行った。痩せ細り骨ばった父のからだに愛おしそうに触れ、涙しながら父に話しかけていた。そのとき、意識も朦朧としていた父がはっきりと娘の名前を呼んだ。その呼び声は娘への愛情に満ちていた。この時、この場面でしか出なかった声かもしれない。「こんなに安心して手厚い看護を受けられるなら、早く帰ってくればよかった。お父さん、ごめんね」。長女さんからは、涙がとめどなく流れていたが、どこか父に触れ、大切なことをしてあげられたことへの清々しい笑顔もあった。時期が遅かったかもしれない。しかし、その時間の中でできる最善を尽くす、それだけだ。 2023年1月投稿 ※編集部注:うりずん: 沖縄の古語で、春分から梅雨入りの頃までを指す 「やっぱりお風呂が1番」 乗り気ではなかった利用者さんの様子が変わっていく姿に、見守る私たちも思わず笑顔になってしまうエピソードです。 80代の男性の方でケアハウスに入所している方です。多発性筋痛症、認知症を患っている方でバイタル値は安定し室内は独歩、廊下や少し距離のある場所への移動はシルバーで移動していました。お風呂は週に一回は施設の大浴場で貸切で入っています。倦怠感や全身の関節痛は自制内で経過していますが面倒なことはあまり好きではない性格もあり入浴に対して少し億劫になることも時折見られています。私たち訪問看護師もそのお風呂介助に携わり、一緒に大浴場まで付き添い、背中や手の届かない部分の洗浄をお手伝いします。訪問時は入浴に対して乗り気じゃなく、今日はやめておこうと言われていましたが清潔への大切さや爽快感の話をすると渋々納得され一緒に大浴場へ移動していきます。そしていざ浴槽へ入るとそれまでに固かった表情がなくなり、すごい爽快感が溢れる表情へと変わりました。浴槽に入りながら歌も歌い、心地よい時間を過ごしており私も見守っていました。居室へ戻る時にはやっぱりお風呂が1番と言われ優しく癒された表情にホッコリしたエピソードでした。 2023年1月投稿 「夜空の花火」 利用者さんのご家族かのように思い出を共有する関係に心温まるエピソードです。 大きな家で1人暮らしのAさん。たくさんの薬を自己管理するのが難しくなったり1人でお風呂に入るのが危ない状況となり訪問看護が始まりました。Aさんは「娘ができたみたいで嬉しいよ。」と訪問看護の日をいつも楽しみにしてくれていましたが、「1人はさみしいよ。夕方になると本当にさみしい。」といつも言っていました。ある夏の日ステーションの携帯電話にAさんから電話があり、電話に出た看護師に「○○さん(担当の看護師)いる?」と。携帯に転送になっており、別の看護師が携帯当番なので「ここにはいないですよ。」と伝えると「なら○○さんに伝えて!空を見てごらん。花火がキレイだよ」と言い電話を切ったそうです。携帯当番の看護師が私に電話をくれ、電話の内容を伝えてくれました。Aさんの家から少し離れている私の家からは花火は見えなかったのですが、いつも1人でさみしい思いをしているAさん。「今日はキレイな夜空を見ているんだなぁ。」と花火は見えなくても心がほっこり温かくなりました。今は亡きAさん。夏の夜空に花火を見ると思い出します。 2023年2月投稿 「ちょうだいできた!」 日々の子どもの成長をご家族とともに喜べる微笑ましいエピソードですね。 顔を覗き込んで「こんにちは」と声をかけると、K君は小さなふたつの人差し指をペコリと曲げた。「こんにちは」のサインです。K君がコロナに感染するのが怖くて、外出は病院との往復のみ。補聴器と気管カニューレ、経管栄養の管理も家族だけで頑張っていました。2歳半を過ぎて「社会の中で普通に生きていってほしい」というご両親の思いから、私たちとの関わりが始まりました。K君は難聴で自閉傾向、偏食があり、食事テーブルにつけず、自分から何かしてほしいと伝えることもできませんでした。食事や人との関りを持てるように、K君のペースに合わせ、一緒にお気に入りの電車で遊ぶ、サインや絵カードで対話するなどし、日々、K君の心と体の状態をご家族と共有していきました。訪問看護を開始して数ヵ月、「ちょうだいできた!」とお母さんから連絡がきました。お母さんに空のマグを持ってきたそうです。来週には、春から幼稚園に通うための担当者会議をします。 2023年2月投稿 訪問看護師もまるで家族の一員 訪問看護の利用者さんはお子さんからご高齢の方まで幅広い年代の方がいらっしゃいますが、時には親のように、時には子どものように利用者さんと絆が生まれることもあります。日々の支援の中で、微笑ましい出来事や楽しい時間を共有することができるのも、訪問看護師としてのやりがいのひとつなのかもしれません。こうした心温まるエピソードを見ていると、「明日からも頑張ろう!」と力を分けてもらえる気がしますね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説
アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説
特集
2025年1月21日
2025年1月21日

アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説

アルコール依存症は、長期間にわたる飲酒習慣によって精神的・身体的な機能が損なわれ、症状が進むと日常生活に支障をきたす精神疾患です。 本記事では、アルコール依存症の症状から原因、合併症、訪問看護が介入する際の注意点まで詳しく解説します。アルコール依存症の疑いがある利用者さんやそのご家族のアセスメントにぜひお役立てください。 アルコール依存症とは アルコール依存症は、長期的かつ多量の飲酒によって精神的・身体的にアルコールへの依存状態が形成される精神疾患です。アルコールが生活の中心となり、耐性がつくことで飲酒量が増加し、自分の意志で飲み方をコントロールすることが難しくなっていきます。世界保健機関(WHO)が制定した国際疾病分類第10版(ICD-10)でも「精神および行動の障害」として正式に認められている疾患です。 アルコール依存症は年齢や性別を問わず、誰でも発症する可能性があります。長期間にわたって飲酒を続けることで、「飲酒したい」という欲求を抑えることが難しくなるほか、アルコールが体から抜けた際に手の震えや発汗、悪寒などの離脱症状(禁断症状)が見られるようになります。 アルコール依存症の方は「特徴的な顔つきになる」との噂がありますが、そのような事実はありません。肝機能の低下によって黄疸が出ている場合、顔が黄色く見えることがありますが、黄疸だけでアルコール依存症は判断できません。ただし、妊娠中に母親がアルコールを摂取した場合に出現することがある胎児性アルコール症候群(FAS)や胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)では、胎児期の顔面の形成不全により特徴的な顔つきとなります。 アルコール依存症の原因 アルコール依存症の原因はさまざまで、複数の要因が絡み合っていることも多くあります。 年齢と性別 若年齢から飲酒を始めるとアルコール依存症になりやすいといわれています。アルコール依存症は性別に関係なく発症しますが、飲酒機会の多い男性のほう有病率は高いです。ただし、アルコール分解酵素の量や女性ホルモンの関係で、女性のほうが依存症に陥るまでの期間が短いとされています。 家庭・職場の環境 アルコール依存症の親を持つ子どもはリスクが高いとされているほか、保護者の飲酒態度や虐待、家庭不和などが依存症を助長することもあります。家庭外の職場や友人関係でも、飲酒を助長する環境があればリスク要因になるでしょう。 他の精神疾患 うつ病や不安障害などの精神疾患との併存率が高く、若年の女性患者の場合は摂食障害との併存も多く見られます。他の精神疾患がもとで飲酒を繰り返して、依存症に陥ることがあります。 ※アルコール依存症をきっかけに他の精神疾患を併発するケースもあります。 アルコール依存症の進行度(段階)別の症状 アルコール依存症の精神依存症状としては、飲酒への強い欲求やそのコントロールの喪失、1日の大半の時間を飲酒に割く、飲酒以外の娯楽を無視する、精神的・身体的問題が悪化しているにもかかわらず節酒・断酒をしないなどの行動があります。 身体依存症状としては、飲酒の中止や減量によって離脱症状(禁断症状)が現れたり、「もっと酔いたい」という欲求によって飲酒量が増加したりします。離脱症状の具体例として、手指のふるえや発汗、悪心・嘔吐、不安、イライラ、不眠などがあり、重症化するとけいれんや幻覚が現れることもあります。 アルコール依存症は、以下のように進行します。 段階症状の特徴1段階 (機会飲酒)特定のイベントや会合で時々飲酒する程度で、日常的には依存はない2段階 (習慣飲酒)●日常的に飲酒するようになり、お酒に強くなる●飲酒が生活の一部となる※頻繁に記憶を失う(ブラックアウト)する場合は注意が必要となる        3段階 (軽度のアルコール依存症)      ●お酒がないと物足りなさを感じ、飲酒量が増える●軽い酔いでは満足できなくなる              4段階 (依存症初期)●健康診断で飲酒量を少なく報告するようになる●飲酒を控えるよう周囲から注意される●飲める時間になるまで待てず、落ち着かない状態が続く●飲まないと不眠に悩まされる●アルコール切れで発汗や悪寒など風邪に似た症状(離脱症状)が現れる  5段階 (依存症中期)●迎え酒(二日酔いの悪い気分を治すために飲むお酒)をする習慣が定着する●飲酒のために嘘をついたり隠れ飲みをしたりする●お酒が原因のトラブルが繰り返される●節酒を試みても失敗する6段階 (依存症後期)●アルコールが切れることなく連続的に飲酒するようになる●幻覚や重篤な離脱症状、肝障害などが進行し、仕事や日常生活が困難になる アルコール依存症の合併症 アルコール依存症は、広範な機能に影響を与え、さまざまな合併症を引き起こします。 肝臓への負担 長期間の飲酒は肝細胞の破壊を引き起こし、肝硬変や肝性脳症の原因となります。肝性脳症は、血液中のアンモニア濃度が上昇することで意識障害をもたらし、最悪の場合、昏睡状態に至ることもあります。 心血管系への負担 アルコールの過剰摂取は心血管系への負担も大きく、アルコール性心筋症の発症リスクが高まります。 栄養欠乏 アルコール依存症によってビタミンB群(B1、B12、葉酸)が欠乏しやすく、貧血や神経障害が悪化するほか、免疫力の低下により肺炎や敗血症などの感染症にかかりやすくなります。また、亜鉛やビタミンD不足による骨粗しょう症のリスクも増大します。 【監修・豊田先生のワンポイントチェック】 なぜアルコール依存症で栄養欠乏やビタミン不足に?アルコールには膵外分泌刺激作用があり、大量に飲酒すると、膵液が十二指腸に排出しきれず膵管内に溜まり、膵管内圧が上昇します。そして、膵管から漏れ出した消化酵素が膵臓を自己消化し、膵臓に炎症が起こります。この状態が続き、慢性膵炎になると、膵臓の機能低下が起こり、消化酵素の分泌が悪くなります。膵臓から分泌されている消化酵素は腸の栄養素の吸収に関与しているため、分泌が悪くなることで栄養不足やビタミン不足が起こります。加えて、アルコール依存症の方はお酒を多く摂取し、食事をあまり摂らない傾向にあるため、一層栄養不足に陥りやすくなります。また、ビタミンB1はアルコールを代謝する際に必要なため、アルコールを大量に飲むとたくさんのビタミンB1が消費されます。膵臓の機能低下によりビタミンの吸収率が悪くなっている状態下で、たくさんのビタミンが使われると、需要と供給のバランスが崩れ、ビタミン不足に陥ります。 アルコール依存症のチェック方法 アルコール依存症のチェック方法として、1990年代初頭に世界保健機関(WHO)が支援して開発したスクリーニングテスト「AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)」が広く用いられています。AUDITは10項目からなる自記式のテストで、各質問に対して0点から4点のスコアが与えられます。 テスト全体の合計点は0点から40点の間で評価され、得点に応じて飲酒問題の深刻度を判断します。日本では、アルコール依存症と診断する点数として15点を目安にしています。 各質問と回答については下記のとおりです。 問質問回答1あなたはアルコール含有飲料を、どのくらいの頻度で飲みますか?0:飲まない 1:月に1回以下2:月に2〜4回 3:週に2〜3回4:週に4回以上2飲酒をする時は、通常どのくらいの量を飲みますか?【基準】日本酒1合=2ドリンクビール大瓶1本=2.5ドリンクウィスキー水割りダブル1杯=2ドリンク焼酎お湯割り1杯=1ドリンクワイングラス1杯=1.5ドリンク梅酒小コップ1杯=1ドリンク0:1〜2ドリンク1:3〜4ドリンク 2:5〜6ドリンク 3:7〜9ドリンク 4:10ドリンク以上     3一度に「6ドリンク以上」飲むことが、どのくらいの頻度でありますか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日      4過去1年間で、飲み始めると止められなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日5過去1年間に、普通ならできるようなことが、飲酒していたためにできなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日6過去1年間に、深酒の後の体調を整えるため、朝に迎え酒をしたことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日7過去1年間に、飲酒後に罪悪感や負い目を感じたことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満 2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日8過去1年間に、飲酒のために前夜の出来事を思い出すことができなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満 2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日9飲酒によって、あなた自身かほかの誰かが怪我をしたことがありますか?0:ない2:あるが、過去1年間にはなし4:過去1年間にあり10家族や親密な友人、医師、あるいはほかの健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすようにすすめたりしたことがありますか?0:ない2:あるが、過去1年間にはなし4:過去1年間にあり出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「AUDIT」 アルコール依存症の対処法 アルコール依存症の治療は「解毒治療」「リハビリ治療」「アフターケア」の3段階に分かれており、個人の状態に応じて治療計画を立てます。治療の目的は、身体的・精神的な健康を回復させ、再飲酒のリスクを防ぎながら、社会復帰を目指すことです。 解毒治療 アルコールを体から排出する過程で生じる離脱症状の管理と、アルコールによって引き起こされた合併症への対応を行います。 リハビリ治療 個別カウンセリングやグループ療法によって自らの飲酒問題を直視し、断酒への意欲を高めることを目指します。アフターケアでは、医師のサポートと薬物療法による安定した精神状態の維持を目指し、自助グループでの仲間との交流も促します。 アルコール依存症の訪問看護の注意点 アルコール依存症の方の訪問看護を行う際は、次の注意点を押さえましょう。 病識の欠如に対する配慮 アルコール依存症は「否認の病」といわれることもあり、利用者さんは自分が病気であるという認識が乏しく、治療を拒否するケースもが多く見られるでしょう。無理に病識を押し付けようとすると、利用者さんの拒否感が強まり、治療への意欲が低下する可能性があります。利用者さんのペースに合わせた働きかけが必要です。 信頼関係の構築に時間をかける アルコール依存症の利用者さんは、孤独感を抱えやすく、他者への不信感が強いケースが多々見られます。信頼関係を構築するには時間と忍耐が必要で、急いで関係を築こうとすると逆効果になる場合も。焦らず時間をかけて接し、小さな変化を見逃さない、利用者さんの感情に寄り添い無理な介入を避ける、といったことを心がけましょう。 再飲酒・再発のリスク管理 アルコール依存症の方は、生活の中で再飲酒するリスクが常にあります。アルコール依存症の再発を防ぐためには、訪問看護師が環境を整備しつつ、利用者さんの変化を慎重に観察する必要があります。利用者さんの行動や表情の変化を細かく把握して早期介入し、飲酒の誘惑となる要素(人間関係や環境)を事前に特定して対策を考えていきましょう。 ご家族への病識の理解と協力の促し アルコール依存症からの回復にはご家族の協力が欠かせません。日常生活でのサポートや励ましはもちろん、再飲酒しそうになったときの対処も重要な役割です。 ご家族にとっては、利用者さんが断酒を続けられないことに対し、怒りや失望を感じることも少なくありません。しかし、アルコール依存症は個人の意志の弱さではなく、医療的な治療が必要な病であるという認識を持つことが必要です。アルコール依存症の治療は長期にわたるものであり、利用者さん本人だけでなくご家族にも大きな負担がかかります。そのため、訪問看護師は本人だけではなくご家族にも寄り添う姿勢を持つことが大切です。 * * * アルコール依存症は、一度発症すると長期間にわたる治療とサポートが必要な病気です。本人だけでなく、家族や支援者の理解と協力が治療成功の鍵となります。訪問看護においても、信頼関係の構築、病識の共有、再発リスクの管理といった要素を丁寧に進めることで、回復を促すことができるでしょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【参考】〇厚生労働省「アルコールと依存」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-001.html2024/1/17閲覧〇厚生労働省「アルコール依存症の危険因子」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-003.html2024/12/13閲覧〇厚生労働省「AUDIT(おーでぃっと)」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-021.html2024/12/13閲覧

「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
特集
2025年1月14日
2025年1月14日

「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回はパーキンソン病について、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 パーキンソン病の基礎知識 パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン産生細胞が徐々に減少する神経変性疾患です。1817年イギリスのジェームズ・パーキンソンにより初めて報告されました。加齢は主要な危険因子で、60歳を超えると罹患率が増加します。罹患率は人口10万人あたり約150人です1)。 パーキンソン病の4大症状 パーキンソン病には4つの代表的な運動症状があります。安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害です。 安静時振戦 安静時の振戦は左右非対称で、逆N字型(またはN字型)に進行します(図1)。例えば、右手→右足→左手→左足という順番で振戦が起これば、逆N字型進行です。 図1 逆N字型・N字型進行 固縮 体幹や手足がこわばります。上肢に歯車現象、下肢に鉛管様固縮を認めます。 無動 無表情となり、素早く動くことが困難になってしまう症状です。字を書くと次第に字が小さくなります(小字症)。歩行は前かがみで、最初の一歩を踏み出すことが難しく(すくみ足)、歩幅が小さくなったり(小刻み歩行)、歩行スピードは次第に速くなったり(加速歩行)、停止が困難になったりします(前方突進現象)。また、腕の振りが減少し、方向転換が難しくなるといった症状もみられます。 姿勢反射障害 体が傾いたときに姿勢を立て直すことができなくなり、転倒しやすくなります。 訪問時における病歴聴取/身体所見のポイント パーキンソン症状(パーキンソニズム)は非常によく遭遇します。身体所見の評価ポイントを復習しておきましょう。 顔の表情が乏しくなります(仮面様顔貌)。嚥下しないため、唾液がこぼれます。ベッドで斜めに寝る、斜めに体を傾けて座ります(斜め徴候)。眉間を繰り返し叩打したとき、瞬目が持続します(マイアーソン徴候)。歩行時に前傾姿勢、すくみ足、小刻み、すり足、前方突進現象、腕をふらないといった症状がみられます。方向転換ではまるで銅像が回転するようにぎこちなく回ります。狭い場所での方向転換が困難となるため、トイレの使用が非常に難しくなります。手を叩いてリズムをつけたり、床に一定の間隔で線を引いたりすると歩きやすくなります。上肢を肘関節で屈曲させると、歯車を回転させるときのようなカクカクとした抵抗を認めます(歯車現象)。下肢を膝関節で屈曲や伸展させると、鉛管のような硬さを感じます(鉛管様固縮)。 非運動症状にも注意 上記の運動症状が出現する数年前から非運動症状が出ることも知られるようになりました。早期診断の観点からも非運動症状も知っておくとよいでしょう。 嗅覚の低下(コーヒーや石けんの臭いが分からなければ疑う)便秘うつ症状起立性低血圧不眠や日中の過眠むずむず脚症候群(脚がむずむずしてじっとしていられなくなます)REM(rapid eye movement)睡眠行動障害(睡眠中に大声で叫んだり、隣に寝ている人を殴ったり、壁を蹴るなど) パーキンソン症候群とは パーキンソニズムは、パーキンソン症候群と呼ばれるパーキンソン病以外の疾患でも起こります。パーキンソン症候群には以下の疾患があります。 薬剤性パーキンソニズム向精神病薬(抗精神病薬、抗うつ薬)、消化性潰瘍薬(スルピリド)、制吐薬(メトクロプラミド、ドンペリドン)がよく問題になります。高齢者では常用量でも、しばらく飲んでいるとパーキンソニズムを起こしてくるため注意が必要です。脳血管障害性パーキンソニズム脳梗塞や脳出血が原因のパーキンソニズムで、下肢の固縮が強く、開脚で「逆ハの字」歩行(図2)となります。正常圧水頭症軽い認知症、歩行障害、尿失禁が特徴です。正常圧水頭症の歩行も開脚で「逆ハの字」となります。神経変性疾患レビー小体型認知症や進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症があります。 図2 パーキンソン病と脳血管障害性パーキンソニズムおよび正常圧水頭症の歩行の違い 脳血管障害性パーキンソニズムと正常圧水頭症では、開脚歩行で「逆ハの字」となるのが特徴です。 安静時振戦なし、左右対称の振戦、進行が早い、早期から転倒を繰り返す、治療薬(L-ドパ製剤)に反応が乏しい場合は、パーキンソン病ではなくパーキンソン症候群の可能性が高いです。 診断 パーキンソン病の診断は厚生労働省の診断基準に基づいて行われます2)。 <診断基準> 以下の診断基準を満たすものを対象とする。(Probableは対象としない。)1.パーキンソニズムがある。※12.脳CT又はMRIに特異的異常がない。※23.パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない。4.抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる。※3以上4項目を満たした場合、パーキンソン病と診断する(Definite)。なお、1、2、3は満たすが、薬物反応を未検討の症例は、パーキンソン病疑い症例(Probable)とする。※1.パーキンソニズムの定義は、次のいずれかに該当する場合とする。(1)典型的な左右差のある安静時振戦(静止時振戦:4~6Hz)がある。(2)歯車様強剛、動作緩慢(運動緩慢)、姿勢反射障害(姿勢保持障害)のうち2つ以上が存在する。※2.脳CT又はMRIにおける特異的異常とは、多発脳梗塞、被殻萎縮、脳幹萎縮、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮など他の原因によるパーキンソニズムであることを明らかに示す所見の存在をいう。※3.薬物に対する反応はできるだけドパミンアゴニストまたはL-dopa 製剤により判定することが望ましい。文献2)より引用 治療 パーキンソン病の進行を遅らせる薬はありません。ドパミンの前駆物質であるL-ドパ製剤を中心としたドパミン補充療法が行われます。L-ドパ製剤は脳の中でドパミンに変換されて効果を出しますが、病気が進行すると効果持続時間が短くなります。副作用として嘔気があります。 若い患者にはドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)が用いられます。副作用で突発性睡眠や眠気、欲望が抑えられない症状が発現することがあります。最終的にはすべての患者にL-ドパ製剤が処方されることが一般的です。 REM睡眠行動障害は、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症に合併することが多いです。クロナゼパムが著効します。 最新トピックスパーキンソン症状が進行した場合、脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)と呼ばれる手術療法が行われることがあります。DBSとは、脳内に留置した電極と前胸部に埋め込んだ刺激発生装置を接続し、脳内の標的部位に弱い電気刺激を行うことで症状を改善する治療法です3)。 ●パーキンソン病には4つの代表的な症状(安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害)があります。●運動症状がでる数年前から非運動症状(嗅覚低下、便秘、うつ症状、起立性低血圧)が起こります。●安静時振戦なし、左右対称の振戦、進行が早い、早期から転倒を繰り返す、治療薬(L-ドパ製剤)に反応が乏しい場合は、パーキンソン病ではなくパーキンソン症候群を疑います。 執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問 1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)一般社団法人日本神経学会:パーキンソン病 疫学.https://www.neurology-jp.org/public/disease/parkinson_detail.html2024/12/13閲覧2)難病情報センター:パーキンソン病 診断基準.https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/006-202404-kijyun.pdf2024/12/13閲覧3)横浜市立大学附属市民総合医療センター:パーキンソン病治療〜世界で初!アダプティブDBS機能を使用した当院のDBS治療の取り組み〜 Part 2.2024/09/06.YouTube.https://youtu.be/2v5mI--3AIQ?si=-AuVhhB5IU9mMOQT(横浜市立大学附属市民総合医療センター:パーキンソン病治療〜世界で初!アダプティブDBS機能を使用した当院のDBS治療の取り組み〜.2024.https://www.yokohama-cu.ac.jp/urahp/medical/medicalnews/parkinson.html2024/12/13閲覧) 【参考文献】○上田剛士編著:パーキンソン症候群.高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス,シーニュ,東京,2014:101-115.○鈴木則宏:神経診察クローズアップ 正しい病巣診断のコツ 改訂第2版.メジカルビュー社,東京,2015.

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2025年1月14日
2025年1月14日

オンコール当番の日って…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

オンコール当番の日、なかなか寝付けなくなることも… 緊急電話の対応をする「オンコール当番」の日。「寝られるときには寝なきゃ」と思っても、なかなか寝られなくなることがあるにゃ オンコール当番の日は、何かと落ち着かないものですよね。実際に対応する頻度が低くても、「いつでも行けるようにしなきゃ」と思うと気が張ってしまうもの。訪問看護師さんからは、「実際に緊急出動するケースよりも、傾聴やアドバイスで終わることのほうが多いですが、やっぱり電話が鳴るとドキっとします」「電話のやりとりのみで終わっても、なかなか寝付けなくなることがあります」といった声も聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法患者の災害対策~事前準備や停電時の対応
在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法患者の災害対策~事前準備や停電時の対応
特集
2025年1月7日
2025年1月7日

在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法患者の災害対策~事前準備や停電時の対応

阪神・淡路大震災や東日本大震災に加え、最近では能登半島地震が記憶に新しく、地震や台風などの災害が多く起こっている日本において、国民が抱える災害への不安は計り知れません。その中でも在宅酸素療法(HOT)・在宅人工呼吸療法(HMV)患者さんにとっては、災害時にさまざまなことを考慮する必要があり、事前の準備や連携が重要となります。今回は、HOT、HMV施行時の災害対策について解説します。 災害時に起こりうるリスク(停電時含む) 台風、豪雨、地震、火災、洪水、停電など、災害には数多くのものがありますが、その規模によりさまざまな影響を受けます。台風や地震などの時には停電が起こる確率が高く、機器は電気を要することが多いため、早急な対応が求められます。 機器の取り扱い 酸素濃縮器を使用している場合には、すぐに電源が停止し酸素の供給が止まってしまうため、酸素ボンベにつなぎ変える必要があります。酸素を中断することにより原疾患悪化の可能性があるため、可能な限り安静時の酸素流量で過ごすことが望ましいです。 また、人工呼吸器は充電されているバッテリーに切り替わりますが、充電時間には限度があります。NPPV(非侵襲的陽圧換気)患者さんの場合、その間に可能であれば酸素療法のみに変更したり、TPPV(気管切開下陽圧換気)患者さんの場合には外部バッテリーにつなげたりする必要があります。 酸素ボンベやバッテリーは転倒や落下による被害を受けないように保管場所にも注意を払うことが重要です。使用可能時間を把握した上で業者への連絡を速やかに行います。 感染予防 災害時には劣悪な環境に身を置く可能性が高く、原疾患の悪化だけでなく、感染症に罹患するリスクが高まります。手洗い、アルコール消毒、含嗽、マスク着用などの感染対策を励行することに加え、日頃よりワクチン接種を行っておくことを推奨します。 災害を想定して準備しておくこと 食料品や生活必需品などの準備だけでなく、HOT・HMV患者さんは生命と直結する酸素や電源をどのように調達するのかが最優先となります。停電や緊急時に備えて、患者さん・ご家族が普段から準備しておくとよいことを以下に挙げます。  酸素ボンベは切らすことなく常に余裕をもって配達依頼をする緊急時や停電の中でも落ち着いてボンベ交換や取り扱いができるように日常より練習しておくHMV患者さんはバッテリーを適宜充電しておき、足踏みで行える吸引器や発電機、懐中電灯などを準備しておく鼻カニュラをはじめとした酸素吸入のデバイスや同調器の電池、吸引関連物品なども備蓄しておく災害時は、酸素や人工呼吸器の業者に被災状況を連絡し、ボンベの配送などを依頼すること、業者と連絡がとれない場合は、避難先を明記した貼り紙をどこに貼付するのかなどをあらかじめ業者や訪問看護師と共有しておく避難時にすぐに薬の調達が行える保障はないため、1週間程度の薬(内服薬・吸入薬・貼付薬・軟膏など)とお薬手帳を持参できるように準備しておく 災害時対応で留意すべきポイント 災害時、誰もが優先すべきことは、自分自身の安全の確保です。そのためには患者さん自身のADLやセルフマネジメント能力の程度、ご家族や介護者の有無などを把握しておかなければなりません。 災害の種類や程度によって大きく異なりますが、消防や自治体がすぐに対応できないこともあり、自宅で災害に見舞われた場合には、まず自分たちで行動することを余儀なくされる場合もあります。そういったケースを念頭に置き、避難が必要なときにはどうすればよいかなどを日常からご家族や訪問看護師、協力を求められる人たちで考えておくことも重要です。 災害時は互いの協力が不可欠です。業者や自治体、医療機関で調整を図りながら、患者さんの安全を維持できるよう速やかな現状把握、情報提供、資源提供などを行いましょう。 業者や自治体のフォロー体制と訪問看護師の役割 業者や自治体、医療機関との連携における調整は重要であるため、先行してシステム構築がなされている災害経験地域のモデルを参考に、各地域でもフォロー体制の早急な確立が望まれます(図1)。 図1 大規模災害時におけるHOT患者を取り巻く業者や自治体、医療機関との連携システムのイメージ 業者の役割:来院不可患者への対応とHOTセンターの運営協力 一時的避難でない場合、HOT患者さんには、酸素ボンベでは使用時間に限界があるため、常時酸素吸入できる酸素濃縮器の使用と電気供給が可能な場所が必要です。つまり、どこかの医療機関に避難する必要があります。 ただし、医療機関でも酸素配管があるベッドは入院対象となる患者さんに優先されます。したがって、酸素が確保できれば療養可能な患者さんは、医療機関内に設置されたHOTセンターでの対応となる可能性が高いです。 HOTセンターは、患者さんが使用しているメーカーを問わず、さまざまな業者からの酸素濃縮器を使用して運営されます。災害地外への二次避難でも酸素ボンベが貸し出されるシステム構築を検討しなければなりません。 NPPV・TPPV患者さんにおいては入院対応が優先して検討されると思われますが、酸素同様に契約内容に限られず使用することを念頭に置いた柔軟な対応が求められます。 行政の役割:地域における支援体制の整備 災害時になれば、医療機関は受け入れる患者さんの対応に追われ、自ら患者さんへの連絡を行うのは容易ではありません。患者さんの安否や避難場所の把握など、業者に頼ることが多いと思われます。 2013年以降、災害対策基本法の改正により、災害時に自ら避難することが困難な高齢者や障害者等の名簿(避難行動要支援者名簿)の作成が市町村に義務付けられました1)。名簿を順次更新し、災害発生時には地域だけでなく、医療機関や業者と共有・活用することにより、スムーズな対応が可能となります。そのためにも必要な患者情報の選別や共有・活用できるシステムの構築を行政主体で執り行うことが望まれます。 訪問看護師の役割:患者さん・ご家族の災害への備えの支援 災害への不安はあっても、実際を想定して備えることは困難なため、どのような準備が必要か、利用できる社会資源はあるかなど、患者さん・ご家族への情報提供や対応検討をともに行います。事前の準備や登録が必要なこともありますが、時間経過とともに危機意識も薄まるため、繰り返し相談・実践する機会を設けることが重要です。 事前登録の例を1つ紹介します。大阪府訪問看護ステーション協会では、2年ごとに発電機・蓄電器を管理する拠点ステーションを選出し、訪問看護ステーションを通じて、平時に患者さんからの貸出申請書を受け付けています。発災時には事前登録した患者さんが要請すれば、拠点ステーションに貸出可否の確認がされ、可能であれば貸出が行われます。 災害時に利用できる制度・団体 災害時に利用できる制度や団体にはさまざまなものがあります。一部を表1に示しますので、普段からこういった情報を調べておくとよいでしょう。 表1 災害時に利用できる制度・団体の例 執筆:渡部 妙子地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター慢性呼吸器疾患看護認定看護師監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長編集:株式会社照林社 【引用文献】1)内閣府.「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」(平成25年)https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/yoshiensha.html2024/3/29閲覧 【参考文献】〇3学会合同セルフマネジメント支援マニュアル作成ワーキンググループ他編.「災害対策と対応」,『呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル』.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2022;32(特別増刊号):229-236.〇内閣府.「被災者支援に関する各種制度の概要」(令和6年) https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/kakusyuseido_tsuujou.pdf2024/12/24閲覧〇内閣府.「災害中間支援組織について」https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/voad.html2024/3/29閲覧〇大阪府訪問看護ステーション協会 在宅患者災害時支援体制整備事業委員会.「人工呼吸器装着者の予備電源確保推進にむけた災害対策マニュアル」https://daihoukan.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/06/6a0157155302e8e5eea69f00e66de24d-1.pdf2024/12/24閲覧

医療と介護の2025年問題とは?「看護師が余る」噂についても解説
医療と介護の2025年問題とは?「看護師が余る」噂についても解説
特集
2025年1月7日
2025年1月7日

医療と介護の2025年問題とは?「看護師が余る」噂についても解説

「2025年問題」は、2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達することで、医療と介護の需要が急増し、現場が逼迫するほか、社会保障制度の持続性にも影響を与えるとされる社会問題です。本記事では、2025年問題の課題と対応方法に加え、「看護師が余る」という噂の真相にも触れていきます。 医療と介護の2025年問題とは 2025年問題は、団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者になることで、医療および介護の需要が急増し、社会保障制度や医療・介護体制に深刻な影響を及ぼすとされる社会問題です。日本全体で少子化が進む一方で、団塊の世代が一斉に高齢期に突入するため、「現役世代の負担増加」「医療・介護人材の不足」が一気に加速します。 医療の2025年問題の原因 内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が2180万人、65~74歳の前期高齢者人口が1497万人に達する見込みです。国民の約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上となり、高齢化が極めて深刻な段階に進むことが示されています。 一方で、少子化の傾向も顕著です。総務省の「我が国のこどもの数」によると、2023年4月1日時点で日本の総人口に占める15歳未満の子どもの割合は11.5%となり、49年連続で低下しました。労働人口の減少が進む一方で、高齢者を支える現役世代の負担はますます増えると予測されます。 医療と介護の2025年問題で起こり得る問題 2025年以降、医療と介護でどのような問題が起こり得るのか、より具体的に見ていきましょう。 医療・介護利用者の増加と人手不足 高齢化の進行によって、医療機関の受診者数の増加や入院期間の長期、介護施設や在宅医療サービスの利用者増加が見込まれます。医療・介護従事者の安定した確保が難しくなります。 国が地域包括ケアシステムを推進していることから、在宅療養を支援する訪問看護の需要が高まっていますが、訪問看護師の不足により、在宅医療の供給体制が追いつかない事態が予測されています。介護士も不足しており、介護現場の負担がさらに増加する見込みです。家族への負担も大きくなり、介護離職がさらに増加するでしょう。 社会保障制度の負担増加 高齢者が増えて医療費と介護費が増加する一方で、現役世代が少ないために、社会保障制度の持続可能性が課題です。年金、医療、介護などの社会保障給付費は、現役世代の保険料だけでは足りず、税収入、国債などでまかなわれていますが、社会保険料も上がり続けており、手取り収入が減ることで生活への影響も増していきます。 地方と都市部の医療格差が広がる 日本の医療体制では、都市部に医師や医療資源が集中する一方、地方では医師不足が深刻な問題となっています。この傾向は、2025年問題の進行に伴い、さらに拡大する可能性があります。 2025年問題で看護師が余る? 「2025年問題で看護師が余る」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これは高度急性期病棟を中心に発生すると考えられている問題です。 「平成26年度診療報酬改定の概要」では、高度急性期病棟の病床数を約35万7,500床から18万床へ縮小する方針が決定されました。それに伴い、徐々に高度急性期病棟における看護師の需要が低下していくものと見られています。 しかし、看護師全体では当然不足傾向にあります。厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会 中間とりまとめ案(概要)」によると、2025年の看護師の需要推計が188万~202万人であるのに対し、供給推計は175万~182万人と、6万~27万人が不足するとされています。また、厚生労働省の「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によれば、訪問看護ステーションの求人倍率(※)(2021年度)は3.22倍。訪問看護師の人材確保が困難な状況であることがわかります。 ※「有効求人数÷有効求職者数」で計算され、1.0倍以上になると求職者数よりも求人数が多いことを示す。 医療と介護の2025年問題への対応方法 医療と介護の2025年問題に対応するために、医療従事者の増加につながる施策だけではなく、医療の効率化が現場で進められています。対応方法について見ていきましょう。 ICT活用による医療の効率化 電子カルテやAI診断などのICT導入により、医療業務の効率化を図る方法があります。なかでもAI診断は、病気の発見を補助し、医師の負担を軽減することが期待されています。 また、オンライン診療の普及により、通院が難しい患者が自宅にいながら医師の診察を受けられるケースが増えれば、医療の地域格差を縮小できる可能性があります。 在宅医療の推進 訪問看護は、病気や障害を持つ人が住み慣れた地域やご自宅でその人らしい療養生活を送れるよう支援するサービスです。団塊の世代が後期高齢者となる中、医療費削減という観点からも、地域で患者を支える在宅医療の拡充が急務です。 これを実現するためには、訪問看護師の育成と支援、働きやすい環境の整備が必要です。昨今、大規模化によって個々人の負担軽減や多様なニーズへの対応につなげている事業所や、新卒訪問看護師の育成に取り組み、専門スキルを段階的に磨ける環境を用意する事業所も増えています。 タスク・シフト、タスク・シェア タスク・シフトとは、これまで医師や看護師が担っていた業務の一部を、介護職をはじめ他の職種に移譲することです。一方、タスク・シェアは、複数の職種が業務を分担しながら協力して行う体制を指します。 医療現場や介護施設における人材不足を補い、各職種の負担を軽減するため、医療職と介護職のタスク・シフト/シェアが検討されているため、訪問看護においても導入が進んでいくでしょう。 * * * 2025年問題を乗り越えるためには、訪問看護師の存在がこれまで以上に重要になります。在宅医療の最前線で患者を支える方々が、それぞれの専門性を活かしながら地域に根ざしたケアを提供することが、医療と介護の未来を支える鍵となるでしょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇内閣府「高齢化の状況」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf2024/12/23閲覧〇総務省「我が国のこどもの数」(2023年5月4日)https://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/pdf/topics137.pdf2024/12/23閲覧〇日本医師会「診療報酬改定をプラス改定とする方策とは」(2024年2月5日)https://www.med.or.jp/nichiionline/article/011548.html2024/12/23閲覧〇日本看護協会「訪問看護アクションプラン 2025」https://www.jvnf.or.jp/wp-content/uploads/2019/09/actionplan2025.pdf2024/12/23閲覧

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特集 会員限定
2024年12月24日
2024年12月24日

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A

2024年10月25日(金)に開催したNsPaceオンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」では、重症な足病変の予防やケアについて、倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子医師が解説。今回は、セミナー時に寄せられたご質問について、特別に小山先生に回答いただきました。 なお、本記事はQ&Aの抜粋版です。完全版はお役立ちツールにてダウンロード可能ですので、そちらもぜひご利用ください。 【セミナー講師/質問回答】 小山 晃子 氏倉敷市立市民病院 形成外科医長平成16年 高知大学卒 倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修終了平成18年 川崎医科大学付属病院 形成外科・美容外科にて 褥瘡、創傷治癒を学ぶ平成24年より現職入院・外来・在宅で医療を行いながら、医療者、介護者、市民を対象としたセミナーを行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動中です。 ■お役立ちツールも公開! お役立ちツール『「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧』では、より多数のご質問への回答を読むことができます。ぜひご活用ください。>>「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 足の洗浄について <Q1>・セミナーでは、「血流がない場合は足を洗ってはいけない」とおっしゃっていましたが、なぜでしょうか?感染が広がるためでしょうか。湿潤や摩擦、温度が影響するためでしょうか。 ・血行不良の状態で洗うと、どういう機序で悪化するのでしょうか。 「血流がない足=すべて洗ってはいけない」というメッセージを受け取られた方が多いようで、私の説明不足を反省しています。漫然と洗浄してはいけないのは、傷のある血流のない足です。 ミイラ化を目指している場合には、極力組織の水分を減らしたいため、当然洗浄は避けます。血流の乏しい足の傷に壊死した皮膚皮下組織、腱などの血流のない組織が露出しているケースを想定してみましょう。血流がない(免疫細胞が到達しない)組織は、血流がある(免疫細胞が到達できる)生きた組織・人体側と接しています。その二つの境界で、人体側はゆっくりと傷を治そうとしています。この状態で血流がない組織に水を含ませると、その組織は細菌にとってのよい培地(湿気と温度がある環境)になってしまいます。生きた傷の表面に、細菌培地で「湿布」することになるので、水分を避けることが望ましいと考えています。 壊死組織がなく、傷のある血流の乏しい足については、漫然と洗わないでいただきたいです。洗ってそのままにするのではなく、翌日以降 痛みの訴え浸出液傷の周囲の腫れ壊死組織 等の変化がないかを見て、洗浄したことの功罪を慎重に判断してください。 <Q2>・患部を避けた清拭や入浴、シャワー浴は可能ですか? ・血流がなく壊疽して感染している場合の洗わないケア方法を教えていただきたいです。 患部を避けた入浴、シャワー、清拭は可能です。 血流がなく感染しているときは、ケアではなく、キュア(治療)が必要です。抗菌薬全身投与、局所処置(浸出液の除去、消毒)、疼痛管理などの治療を行います。 <Q3>月に1、2回の訪問をしている独居の方で、足病変があった場合、医師に処置の指示を依頼し、洗浄をするために訪問頻度を増やしたほうがいいでしょうか。毎日が難しい場合は、最低限どれくらいの頻度で洗浄が必要ですか? 自分で足が洗えない方だと理解をしました。靴下を履き替えるだけでもいいのではないかと思っています。 足病変があった場合、血の巡りがあるのかないのか、傷の深さがどうか、感染を起こしているかどうか、といったような専門の判断を一度受けて、みんなで「治療の組み立て」をしてからどれぐらいの頻度で看護師さんに助けていただくのが良いか、考えたいです。 「最低限」ということであれば、靴下を毎日履き替えるっていうことを、頑張ってみたらいかがでしょうか。清潔が何よりです。 ミイラ化について <Q4>血流障害の方は洗浄をしてはいけないとのことですが、ターミナル期で治療をしない方は、何もせずミイラ化を見守るだけでよいのでしょうか?軟膏塗布などの処置だけなのか、看護師がやるべき処置があったら教えていただきたいです。 ミイラ化を目指す場合、放置はすすめません。ターミナル期でも、目と手をかけることを続けていただきたいです。まずは、十分な除痛を行うことが最優先です。ミイラ化をしていく過程で生体と壊死部分の境目から浸出液が出る場合は、その境目をポビドンヨード液で清拭します。浸出液が多いときは、オムツパッド等で患部をふんわり巻いて、寝具が汚染したり、においで利用者さんやご家族が不快な思いをしたりしないよう配慮します。におい対策にはストーマ用のスプレーも有効です。 処置は、基本的に「シンプル」にすることも重要です。ターミナル期の利用者さんの大切な時間を浪費しないよう配慮してください。軟膏を使用した場合、次回の処置で落とす必要があります。落とすのに苦労するような種類の軟膏(ワセリン基剤のものは堆積します)は避けるようにしましょう。 足に傷・潰瘍がある場合について <Q5>訪問で、最初に創を見つけたとき、何をしたらよいのでしょうか?もちろん受診をすすめますが、すぐに行けない場合はそれまでどう手当てしたらよいのでしょうか?微温湯での洗浄もいけないのでしょうか。 初回の訪問では、まず微温湯で洗浄して足をよく観察していただくのがよいと思っています。よく見た結果、傷を見つけたら、以下の対応でよいと思います。 血流のない足は1日単位で悪化する可能性があるので直ちに受診をすすめる(少なくとも写真を病院に届けて、相談)血流に問題のない足は通常の創処置をし、1週間ごとの評価をする 保清・軟膏について <Q6>黒色壊死の方は洗ってはだめでしょうか?精製白糖・ポビドンヨードを使う場合が多いですが、微温湯洗浄をして処置をしていました。 血流があり、黒色壊死部をどんどん浸軟させて除去(物理的デブリードマン)したいときには、しっかり洗うこともあります。洗浄と併せて精製白糖・ポビドンヨードを使用し、浸出液の吸収と、抗菌を図ります。いずれにしても、行った処置の結果、傷が治癒傾向なのか悪化傾向なのかをしっかりと「見る」こと、悪化傾向の場合に主治医に伝えることが肝要です。 <Q7>・血流の悪い足を洗わない場合、毎日処置する際は軟膏の除去などはどうしたらよいのでしょうか?当院では基本的にほとんどの傷をしっかり洗浄するように指示があり、血流が悪い足の場合で血行再建前でもしっかり洗浄していました。 ・血流が悪い方の下肢の創処置を行う際に 医師からは洗浄し軟膏処置(ヨウ素軟膏)の指示が出ます。洗浄できない血流の悪い足の場合、軟膏を落とすためにはどのような方法が適切でしょうか? 病院で、「きれいな水がある」「しっかりと水分を拭き取ることができる」「十分な量の滅菌ガーゼがある」「毎日観察ができる」「すぐに医師に相談できる」環境があれば、創が悪化していかない限り、洗浄可能だと思います。一方、在宅においては衛生資材、観察環境、病院へのアクセスに制限のある環境を想定し、リスクヘッジのため無闇に洗わないことをおすすめしています。 また、洗浄の際に落としやすい軟膏を選択することも医師の責務だと考えています。ヨウ素軟膏を使っているということは、浸出液が多く、感染を制御したい傷があるということですね。浸出液が多いということは、血流はさほど悪くないと逆算できます。洗い流してよろしいのではないかと思います。 ウオノメ、タコのケア方法について <Q8>・市販のタコ、ウオノメ用シール(サリチル酸絆創膏)を使う際の注意点はありますか? ・毎日観察できるわけではないため心配な面もありますが、在宅でサリチル酸絆創膏を使用することについての先生のご意見をいただきたいです。 少しでもそのウオノメ・タコ自体を柔らかくして対処しやすくしてあげようという考えであれば、尿素配合クリームやサリチル酸を塗っていただくとよいと思います。ただし、皮膚を少しただれさせるような効果もありますので、周りの薄い皮膚には塗らないように、ウオノメ・タコのところだけピンポイントで塗るようにお願いします。 ウオノメシールを貼るときは、肥厚している角質よりも一回り小さく切って貼って下さい。3日ほど貼りっぱなしにすると浸軟した角質がとれやすくなります。シールを固定するためのテープでまわりの皮膚を損傷しないようにすることも注意しましょう。 ただし、シールは「その場しのぎ」で、前述のとおり外力の除去が根本的治療です。極論ですが、「寝たきり」になったら足の裏のウオノメ、タコは「完治」します。外力を減らせるような履物を使うことを強くおすすめします。 爪切り、爪のケアについて <Q9>・爪白癬、肥厚爪についてケアのしかたを教えてください。・かなり肥厚している爪を小さくするために在宅で簡単に用意できるものはありますか? ・ワルファリンカリウム錠を服薬中のため、ニッパーは避けてヤスリがけをしています。ほかによい方法はありますか? 爪が非常に分厚くなっていて、どこから手をつけたらいいか分からないというような爪の方も本当に多くいらっしゃると思います。在宅で、簡単に肥厚爪に取り組むことはなかなか難しいことかもしれません。 爪切りをする前に、まずは必ず「血流があるかないか」を見てください。血流がある方に対して爪切りをする前提でお話をします。私の場合は、爪切りにはニッパーを使います。十分に明るい環境で、切りやすい方向から、少しずつ爪切りをすることを心がけています。 その時に、爪の甲がどのように変形しているのかのイメージをしっかりと持ちましょう。爪白癬の場合、爪がバームクーヘンのように層になっているので、そのバームクーヘンの層を1枚ずつ剥がすようなイメージで、ニッパーを層と層の間に入れていただくとポロッと剥がれると思います。そのようにして使ってみてください。大まかなところをニッパーで減量して、爪床が近くなってきたなと思ったら、ヤスリで整える…という風に手当てをしていただければと思います。 <Q10>白癬により爪が剥がれた場合の対処方法を教えてください。 あまりに白癬がひどいと、爪の根まで白癬菌が食べてしまい、爪の甲がぽろっと自然と取れてしまうという現象が起こることがあります。この場合、剥がれた後に出血していなければ、そのままで結構です。剥がれた後に爪床や爪母の部分に傷があったら、消毒などをしてください。 実は、白癬の分厚い爪が指先から取れたということは、「白癬菌のお家がいなくなった」ということなので、爪の表面にいる白癬菌の量は確実に減っています。ここをチャンスとして爪の水虫の治療をすると、分厚い爪の甲に塗るよりも塗り薬の効き目が早くしっかりと出ます。傷が治った後に爪白癬、水虫の薬をしっかり塗って、水虫菌をしっかりとやっつけてあげてください。 <Q11>・反っている小さい爪のケアについて教えてください。・寝たきりの児童で、肥厚して足背側にどんどん反沿ってしまうので、とりあえずやすりをかけていますが、それがいいのか悪いのかも分かりません。 例えば、この患者さんの右足の第3趾と左足の2、3趾が反り爪で、4趾も少し反り爪っぽくなっています。このちゃんと踏めない指の爪が反ってくるということを時々経験します。この方も含めて、反り爪は爪の甲がブリッジしたようになっており、爪先が指の近位側、体の中心に近い側にあります。 そのため、そこの部分に注意しながら細い爪切りで切っていただくのが、最も手っ取り早くて、患者さんの指の痛みを除去できる方法じゃないかなと思っています。 なので、この爪の先を、できたら気を付けてニッパーややすりで切っていただくっていうことをやってみてください。爪先側に、指先側に爪先がないので、よく見てどこを切るかをよくよく考えながら対応していただけるとありがたいです。 <Q12>爪の同じところに亀裂が入ります。治す方法はありますか? 爪甲の縦方向の亀裂は(1)爪甲に白癬などの感染を起こしている(2)爪床の変形(3)爪母に腫瘍ができているということが理由として考えられます。 一方、爪甲に横方向の亀裂が生じる場合、その原因が爪甲に限られることはまれで(1)爪床の変形(2)爪母全幅の問題 a:抗癌剤などで爪母の爪甲製造能力が一時的に衰えていた b:爪甲を伸ばしすぎたことで爪甲の自由縁を圧迫され、爪母に圧が加わったことで 製造された爪甲に横皺を形成した等の状況がよくみられる状態です。 また、爪甲先端のひび割れ・剥がれの場合は過度の乾燥が考えられます。それぞれの原因に対処することで爪の亀裂が改善する可能性があります。 医師との連携について <Q13>・医師への報告のしかたについて教えてください。 ・看護師からの報告について困るケース、助かるケースを知りたいです。 私たち形成外科の領域は特に、傷の状態を見れば何が起こっているかが分かるという場合が本当に多いです。そのため、報告のしかたとしては、ぜひ写真に撮って見せていただきたいです。写真を撮る際のポイントとしては、足の全体像と病気があるピンポイントの部分の2種類を撮ることです。その2種類をいただくと、何かお役に立てることが多いです。また、写真からは伝わりませんがぜひ伝えていただきたい情報が、「血流」です。「この人の足は冷たいです。そしてこのような症状が出ています」と写真を添えて相談していただけると本当に助かります。写真を撮った日付もお願いします。 また、セミナーでも申し上げたとおり、体にできた傷は基本的には治ります。治らない傷には、治らない理由があります。その理由を見つけて取り除かない限りは、傷は「治りたくても治ることができない」んです。様子を見る期間は2週間です。皆さんが困って、あるいは主治医の先生が何か対応を始めて、それでも2週間経ってなかなか治らない傷には、理由が必ずあります。その治ることができない理由を、もしかしたら形成外科の医師は見つけることができるかもしれません。なので、2週間やってみて難しいケースは、傷を診る専門の先生にぜひ繋いでいただきたいんです。 NsPace読者の方は全国にいらっしゃるので「困ったら私に見せてください」といういつもの逃げ口上が言えないのですが、皆さんの地域にも形成外科はきっとあると思います。皮膚科の先生の中にも足の傷を診ることに長けた先生はいらっしゃるし、糖尿病専門の先生の中に足の傷まで診てくれる先生も全国に散らばっています。 フットケア・足病医学会のホームページを見ていただけると、どんな先生が頼りになるのかのヒントがありますので、ぜひ一度勇気を持って「困ったときには相談に乗ってもらえませんか?」という風に一度声を掛けていただいて、そして本当に困ったときには写真を持って、血の巡りの有無を添えて、相談していただければと思っています。 * * * 後日、オンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」の講義内容をダイジェストにしたレポート記事も公開いたします。ぜひそちらもご覧ください。 >>シリーズ一覧はこちら「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」セミナーレポート>>お役立ちツールはこちら「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 編集: NsPace編集部

想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】
想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護をしていると、利用者さんやご家族のたくさんの想いと向き合います。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんやそのご家族の想いに胸が迫るエピソードを5つご紹介します。 「最期まで、妻・母・娘として生きたN子さん。」 末期のがんに罹りながら家族とともに懸命に生き、最期の場面でも家族を想う姿に胸が打たれるエピソードです。 63歳のN子さんは肺がん末期で骨転移等もあった。12月初めの退院前カンファレンスでは、クリスマスは迎えられてもお正月は厳しい、と告げられていた。自宅に戻る際も頸部・体幹のコルセットは外せず、不本意ではあるが夜間はおむつ内で排泄するよう指導されていた。しかし、63歳という年齢、夫にも気兼ねがありコッソリと夜間もポータブルトイレに座っておられた。クリスマスが過ぎお正月が過ぎ、期待と不安を抱え桜の季節を迎えた。担当ケアマネから、近所の川沿いにある桜並木の下でお花見をさせてあげたい!と声が上がり、ご主人・ヘルパー・看護師・ケアマネとともに小春日和の中、ゆっくりと桜の下を車いすで散歩することができた。その後、「最後になるかも知れないけれど、家族のために料理がしたい。お風呂に入りたい」とご本人から希望があり、短期間であったが調理や入浴をすることができた。秋が過ぎ骨盤に転移した腫瘍が急激に大きくなり、みるみる体調は悪化傾向になっていったが、お酒の好きな夫の健康を気遣い、高齢のご両親より先に逝くことを詫び、夏に生まれた孫の成長を楽しみに、初冬、最期まで弱音を吐かず笑顔の素敵な母の姿を残して旅立たれた。 2023年1月投稿 「涙あり、笑いあり、そんなお看取り。」 故人との別れに悲しみもある中、家族総出でのお見送りの準備に愛情が感じられるエピソードです。 最期が近いAさん。お正月というのもあって娘様家族が来ている。同じ空間にベッドで寝ているAさん。とても穏やかな時間が流れていた。Aさんは声掛けに「はい」と吐息で答えてくれる。何か言いたげだが言葉にならない。(今日中かな…)そう思いながら明日も訪問することを伝え退室。その日の夜、ご家族から「息が止まりました」と連絡が入った。私は車で向かう。到着すると家族に見守られながら眠っているAさん。娘様は涙を流している。湯灌の予定だったが、それが高いことを知り、急遽フルエンゼルケアをさせていただくことに。お孫さんも含め全員で行った。みんなで役割分担しながらあーでもない、こーでもないと言いながら娘様を中心に。そこには涙は無くて笑顔が溢れていた。うるさすぎて奥様に怒られるほどだった。最後に奥様に口紅を塗ってもらったが、グロスだったのかな?「女装したみたいになったね」と笑い合う。ご家族に囲まれて幸せだなぁ。 2023年2月投稿 「患者の最期の願いを叶えた自宅での看取り」 最期に願いを叶えられた利用者さんの心からの感謝が胸に響くエピソードです。 私は訪問看護ステーションに配属された新人訪問看護師。肺癌の診断で自宅療養中のA氏から訪問看護利用の依頼があった。呼吸苦はあるが園芸の話をする、好きなサイダーを飲む等病状は安定していた。1ヵ月後、病状は増悪し「30年かけ作った庭をもう一度見たい。ほかに思い残すことはない。」と言葉が聞かれるようになった。自宅前に本人が作った庭があった。願いを叶えるためケアマネ、家族と協力しスロープと車椅子を準備した。当日本人から「体調が悪い、庭へ行くのは諦める。」と電話があった。短時間で行えるようがんばるので庭を見ましょうと励まし私、ケアマネ、家族で本人を庭へ移動した。涙を浮かべ「庭を見られて良かった。ありがとう。」と言葉が聞かれた。翌日、肺から出血し麻薬投与が開始され家族に見守られながら永眠された。後日訪問時、香典返しの挨拶状に庭を見た日のことが記載されており庭を見た後「幸せな人生だった。」と話していたことが分かった。 2023年2月投稿 「思い出の一場面」 ひとりでも自宅にいたいと思う利用者さんの気持ちが伝わってくるエピソードです。 24時間緊急対応の当番は電話が鳴るとビクビクする。何年やっていても緊張する。そんな中、Aさんからの緊急電話はなんだかホッとしてしまう。よく緊急電話をかけてくるAさん。尿カテトラブルが多く、呼ばれるのは大抵尿漏れ。夕飯時に呼ばれることが多く、またかぁ、という気持ちになるけれど、「こんな時間に悪いねぇ。」と申し訳なさそうに言うAさんの顔を見ると、そんな嫌な気分は吹き飛んでしまう。ある時、いつも通り夜に呼ばれて処置をしていると犬の遠吠えが聞こえてきた。そこから、かつてラブラドールを飼っていたと話し出すAさん。奥さんも子どももいて、よくラブラドールを家の庭で走らせていたという。「家の周りぐるぐる回るんだけど、曲がり損ねて転んじゃって。妻と大笑いしたよ。13年間、楽しませてもらったよ。」と嬉しそうに話すAさん。楽しい話なのになんだか切なくなり泣きそうになってきた。広い家に一人暮らしのAさん。話を聞いていて、楽しかったころの情景がパッと頭の中に浮かんできた。思い出たくさんの家で、少しでも長く過ごせるようお手伝いしていきたいと切に思った出来事だった。 2023年2月投稿 「優しく切ないけれど、温かい話」 相手を想うからこその奥様の配慮と、その優しさに気付きながらも配慮したご主人。どんな時でもお互いを想い合う夫婦に胸が温かくなるエピソードです。 ALSの60代男性。点滴加療の入院中に、可愛がっていた小鳥が突然死んでしまいました。奥さんと子どもは「とても可愛がっていたので、悲しんで気落ちすると病状も進行してしまう」と心配しました。そこで退院までに同じ種類の小鳥を手配して取り繕うことにしました。皆ハラハラしましたが、ご主人は亡くなるまで特に変わりなく小鳥に接していたので安心していました。初盆参りの時に奥さんは「小鳥が変わっていたことに本当は気が付いていたと思います」「主人にもっと優しく接することができたら良かったのに」と涙を流されていました。それから1年と経たないうちに、奥さんから私を看取って欲しいと驚きの連絡がありました。末期の肺がんでした。3ヵ月後、気丈で美しい最期を子どもさんとともに看取らせていただきました。命の儚さについて、改めて考えさせられた小鳥とご主人、そして奥さん。きっとどこかで再会しているはずだとスタッフ一同、信じています。 2023年2月投稿 利用者さんとそのご家族の想いを支える 今回は、投稿者の皆さんが利用者さんを大切にする姿勢が垣間見えるお話ばかりでした。訪問看護では、利用者さんやそのご家族の立場、背景、想いなどをくみ取って理解し、それぞれにあった支援をしていくことが求められます。正解がわからず模索するケースも多い中で、勇気づけられるエピソードですね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ コミュニケーション、栄養、口腔ケアetc.

訪問看護では、認知症の利用者さん・ご家族との関わりも多いですよね。NsPaceでは、これまで認知症に関連する多くの記事やセミナーをお届けしてきました。今回は、知りたい情報にアプローチしやすいように、記事をピックアップしてご紹介。気になる記事からチェックしていただき、日々の看護に役立てていただけたら嬉しいです。 「認知症」疾患の知識を深める! 認知症という病気がもたらす事象の原因や理由を理解することで、対応が変わり、できることが増えます。利用者さん・ご家族への貢献度が上がることはもちろんのこと、日々の看護の喜びも増えるはず。ケアする側のこころの状態が相手に大きく影響するので、好循環が生まれます。 【在宅医が解説】「認知症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 認知症の鑑別、認知症以外の可能性や治る認知症を見逃さない、悪化させないなどの視点で、わかりやすく解説いただいています。 また、鑑別に役立つ「せん妄アセスメントシート」を以下記事にてご紹介しています。ぜひご活用ください。>>せん妄への対応【精神症状の緩和ケア】 「高齢者のうつ病の特長」などについて解説されている以下の記事もおすすめです。>>【在宅医が解説】「うつ病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 【セミナーレポート】看護師が意識したい7つのポイント -在宅で行う認知症看護-   講師の福岡裕行さん(認知症看護認定看護師)の優しい言葉と関わりが心に染みる記事です。ポイントがわかりやすく紹介されていて、「すぐにやってみよう!」と楽しみになる内容です。後編では、「認知症患者を支えることは、その家族の心を癒すこと」という言葉が印象的。Q&Aセッションも学びが深まる内容です。あわせてお読みください。>>セミナーレポート後編【セミナーレポート】ご家族とのかかわり方 -在宅で行う認知症看護- 高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生にご登壇いただいたセミナーのレポート記事です。認知症の方に対しての具体的な食事支援や認知症予防につながる食事について学ぶことができます。 事例を通じてケアを磨く! 認知症のある方やそのご家族へのケアは多種多様。事例を通じて、引き出しを増やしていきましょう。 認知症のある患者さんに接するときの7か条(前編)   シリーズ「認知症患者とのコミュニケーション(全12回)」の第1弾の記事です。シリーズ第1回~2回では認知症患者さんと接するときのポイントを、第3回~12回では、「言葉による返事がない」「物盗られ妄想がある」など、ケースごとにケアのポイントを解説いただいています。実践に生かせる内容なので、興味のあるテーマから学んでみてください! >>認知症のある患者さんとのコミュニケーションシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/dementia-patient-communication/ 自己流の介護を続ける家族への関わり【家族看護 事例】 認知症のある利用者さんのご家族は、複雑な心情や多くのストレスにさらされているからこそ、訪問看護師との関係性が難しくなってしまうこともありますよね。本記事では、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例解説を通じて、訪問看護ならではの家族看護について学ぶことができます。 認知症と義歯の関係 認知症があると口腔ケアに難色を示されることや意思の疎通が難しい状況で効果的なケアが行えないこともありますよね。咀嚼機能が回復した事例を通して、工夫のしかたを学べる記事です。 高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説 脳トレや「脳トレ+運動」で、認知機能の向上、身体機能の向上が期待できます。具体的な方法と効果についてご紹介しています。利用者さんが楽しめるケアのヒントになれば幸いです。 「上手く伝えられない」に対応する! 認知症では、辛さや症状を上手く表現できないからこそ、看護師が異常を察知し、適切に評価できることが求められます。場合によっては表現通りの意味とは限らない訴えや拒否をいかに捉えられるかが重要です。利用者さんの価値観をおもんぱかるために、見識を拡げていきましょう! 悪性消化管閉塞への対応【がん身体症状の緩和ケア】 認知症の終末期は、症状マネジメントに苦慮しますよね。事例をとおして、悪性消化管閉塞について学びつつ、認知症の在宅看取りについてイメージを持てる記事です。 大学教授が解説!大量嘔吐でイレウスが疑われる場合のアセスメント 「イレウスの既往のあり、認知症が進み、自分からは訴えられない方が大量に嘔吐…。あなたはどう考えますか?」という事例とおして、フィジカルアセスメントについて学べる記事です。なお、このフィジカルアセスメントシリーズは全12回です。ほかにも『認知症のある患者さんが「転んだけど大丈夫」と話している場合』など、認知症の方の事例解説がありますので、あわせてご覧ください。 >>訪問看護のフィジカルアセスメントシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/physical-assessment/ もしかしてネグレクト? 訪問看護師は虐待疑いにどう対応すべきか 虐待が疑われる場合、どのように行動すればよいか。状況に合わせた慎重な対応が求められ、特に認知症が疑われる場合は、判断が難しくなることもあります。このようなセンシティブな状況では、多角的な視点で考え、細心の注意を払った言動が求められます。本記事は、弁護士の外岡潤先生に解説いただいた、法律・制度を踏まえた事例解説記事です。訪問看護に発生する義務は何か?という点も含めて確認しておきましょう。 * * * 認知症のある方は、今後もますます増加すると予測されています。地域を支える訪問看護師のサポートへの期待もさらに高まっていくでしょう。認知症のある方が幸せに生きられる社会になるヒントは、日々のケアの蓄積の中から見出されていくようにも感じます。NsPaceでは、今後も日々の学びの機会を通して、訪問看護に携わる皆さまの力になる企画を提供していきます。 執筆・編集: NsPace編集部

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