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認知症のある患者さんに接するときの7か条(前編)

患者さんの言動の背景には何があるのか? 訪問看護師はどうかかわるとよいのか? 認知症を持つ人の行動・心理症状(BPSD)をふまえた対応法を解説します。第1回は、「認知症のある患者さんと接するときの7か条」を、前後編にわけて紹介します。

認知症のある患者さんとのコミュニケーションの特徴

認知症の人は理解力や判断力が低下しているため、コミュニケーションをスムーズにとることが難しくなります。
「認知症の人は話がわからない」「説明してもどうせわからない」と、偏見や苦手意識を持っている援助者も少なくありません。認知症の人のほうも、周りとどう対話すればよいのかわからず、困惑しています。

認知症の症状や生活への影響、性別や年齢、生まれ育ったところなど、一人一人が違い、コミュニケーションの方法もさまざまです。そして、本人が認知症をどう受け止めているのか・感じているのかも違います。そのため、認知症の人とのコミュニケーションの方法は、統一した枠にはめることができません。

認知症の人とのコミュニケーションでは、信頼関係を築き、安心して話ができるよう、相手の気持ちを理解し寄り添う気持ちが大切です。本人のできることや強み、長所に目を向け、その人の立場に立って考えるといったコミュニケーションの方法を工夫する必要があります。

1条 コミュニケーションのための環境を整えましょう

話をするときの環境に留意することで、コミュニケーションがとりやすくなります。

まず、静かな環境を作りましょう

認知症の人は、気になることがあると、そればかりが気になってしまいます。大きな音や、気になる音に意識が向いてしまいます。そして、会話をしていても一つの音に集中することが難しくなります。
ざわざわと人がたくさんいる騒がしい場所や、つけっぱなしのテレビがある場所などは、コミュニケーションがとりにくい場所といえます。
また、認知症の人には高齢者が多く、難聴がある人も多いといえますので、生活雑音をなるべく小さくすることが大切です。こちらの声に集中してもらえるように、会話をするときは静かな場所を選びましょう。

次に、明るさを整えましょう

相手の顔をよく認識できる程度の明るさの場所を確保しましょう。コミュニケーションは、言葉だけでなく、相手の表情や身振りなども大切です。声だけでなく、視覚からも情報が得やすい環境を整えると、言葉と合わせて認識することができます。

そのほか、不快な香りがない場所を選びましょう

不快な香りがある場所では落ち着いて話ができません。快適なほのかな香りは気持ちが穏やかになります。

なじみのある環境、落ち着いた場所、居心地のよい場所は、自然にリラックスした状態でコミュニケーションがとれるようになります。

2条 笑顔で安心感が与えられる姿勢や態度を心がけましょう

表情や態度、しぐさ、服装などの第一印象は重要です。認知症の人とコミュニケーションをとるときには、優しく、笑顔を心掛けましょう。
怖そうな顔をしていると、この人は怖そう、今日はこの人に近づきたくないと感じるでしょう。顔の表情が怖い、目が合わない、などでは、心地よい印象や雰囲気が得られません。
また威圧的な態度は、安心できない相手と感じ取られてしまいます。このような状況ではコミュニケーションが難しくなります。

認知症の人とコミュニケーションをとるときには、笑顔で気持ちを込めて話し掛ける、優しいしぐさ、穏やかな表情や声で、そばに寄り添うよう心掛けることで安心感が生まれます。

3条 視線を合わせて優しく触れる

名前を呼んで視線を合わせる

声を掛けるときや何かをする前に、まずその人の名前を呼びましょう。突然目の前に人が現れると、びっくりすることがあります。話し掛けるときや話を聞くときは、笑顔でその人の正面から視線を合わせるようにしましょう。

目の高さを、その人の目の高さに合わせます。立ったままの状態で上から話し掛けられると、見下されているような印象や不安を与えてしまうことがあります。ベッドで過ごしている人や車いすを利用している人には、こちらが体勢を下げて、本人と目の高さを合わせることが大事です。

優しく触れる

認知症の人は、集中力の低下や空間認知力の衰えによって、話し掛けられても反応するまでに時間がかかる、視線が合わないようなことがあります。会話をするときは言葉だけでなく、優しく体に触れることです。こちらを認識し、安らぎや安心感を与えることができます。

しかし、手や顔など敏感な部位にいきなり触れると驚かせてしまうことがあります。最初は腕や肩から触れましょう。手のひら全体の広い面積で、柔らかく、ゆっくりなでるように優しく触れることが大切です。


執筆
浅野均(あさの・ひとし)
つくば国際大学医療保健学部看護学科 教授
 
監修
堀内ふき(ほりうち・ふき)
佐久大学 学長
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
〇一般社団法人日本認知症ケア学会.『認知症ケアの実際Ⅱ:各論.改訂5版』東京,ワールドプランニング,2018,113-6.
〇一般社団法人日本認知症ケア学会.『認知症ケアの実際Ⅰ:総論.改訂4版』東京,ワールドプランニング,2016,39-45.
〇鷲見幸彦監著.『一般病棟で役立つ!はじめての認知症看護』東京,エクスナレッジ,2014,66-7.
〇鈴木みずえ監修.『認知症の人の気持ちがよくわかる聞き方・話し方』東京,池田書店,2018,34-47.
〇飯干紀代子.『看護にいかす認知症の人とのコミュニケーション』東京,中央法規出版,2019,50-84.
〇井藤英喜監.『認知症の人の「想い」からつくるケア:在宅ケア・介護施設・療養型病院編』東京,インターメディカ,2017,32-47.
〇井藤英喜監.『認知症の人の「想い」からつくるケア:急性期病院編』東京,インターメディカ,2017,22-9.
〇鈴木みずえ監.『3ステップ式パーソン・センタード・ケアでよくわかる認知症看護のきほん』東京,池田書店,2019,37-44.

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