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夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント
夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント
コラム
2026年9月8日
2026年9月8日

夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント

夏インフルエンザとは、夏にインフルエンザウイルスへ感染し、発熱、咳、のどの痛み、倦怠感などがみられる状態を指して使われる言葉です。正式な病名として「夏インフルエンザ」があるわけではなく、夏に発症するインフルエンザを分かりやすく表した呼び方です。 インフルエンザは冬に流行するイメージが強いですが、夏でも感染することがあります。夏風邪や熱中症、新型コロナウイルス感染症などと症状が似ていることもあるため、体調の変化を具体的に観察することが大切です。この記事では、夏インフルエンザの症状、原因、見分け方、受診の目安、在宅での観察ポイントを解説します。 夏インフルエンザとは 夏インフルエンザとは、夏に発症するインフルエンザのことです。厚生労働省によると、日本では例年12月〜3月がインフルエンザの流行シーズンですが、ウイルスは世界中で流行しており、地域によっては年間を通して感染がみられることがあります。温帯地域では冬に流行しやすく、熱帯地域では年間を通じて発生することがあります。 夏にインフルエンザがみられる背景の一つに、南半球での流行があります。東京都健康安全研究センターによると、日本を含む北半球が夏の季節のとき、南半球は冬にあたり、インフルエンザが流行する季節を迎えています。 「夏だからインフルエンザではない」とは言い切れません。高熱、強い倦怠感、関節痛、咳などがある場合は、季節に関係なくインフルエンザを含む急性呼吸器感染症を考える必要があります。 夏インフルエンザの症状 夏インフルエンザの症状は、冬にみられるインフルエンザと大きく変わりません。突然の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感に加え、咳、のどの痛み、鼻水などの呼吸器症状がみられることがあります。 主な症状には、以下があります。 発熱 悪寒 頭痛 関節痛 筋肉痛 強い倦怠感 咳 のどの痛み 鼻水 なお、悪心・嘔気や下痢などの消化器症状は、成人でみられることもありますが、特に小児で多いとされています。 多くの場合、症状は3〜7日で軽快に向かいますが、特に高齢者や慢性肺疾患の方では、咳やだるさが2週間以上続くこともあります。また、高齢者では発熱がはっきりしないことや、意識・行動の変化、食欲低下といった典型的でない形で現れることもあります。合併症として肺炎などが起こる場合もあるため、高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患のある方は特に注意が必要です。 夏風邪や熱中症との違い 夏インフルエンザは、夏風邪や熱中症と症状が似ていることがあります。発熱、だるさ、頭痛などは共通してみられるため、症状だけで見分けるのは難しい場合があります。 夏風邪では、のどの痛み、咳、鼻水、下痢、口の中の水疱、発疹などがみられることがあります。一方、インフルエンザでは、急な高熱、強い倦怠感、関節痛、筋肉痛が目立つことがあります。 熱中症では、暑い環境にいた後に、めまい、頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、体温上昇、意識の変化などが起こることがあります。咳やのどの痛みがある場合は、感染症の可能性もあわせて考えます。 ただし、家庭や訪問看護の現場で病名を断定することはできません。発熱の経過、呼吸器症状、周囲の流行状況、水分摂取量、尿量、意識状態をあわせて確認し、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。 うつる期間と感染対策 インフルエンザは、咳やくしゃみのしぶき、ウイルスがついた手を介して広がることがあります。厚生労働省によると、発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。発症前後から周囲へ感染を広げる可能性があるため、症状があるときは無理に出勤や登校をしないことが大切です。感染対策では、以下を意識します。 手洗いを行う 咳エチケットを守る 不織布製マスクを適切に使う 室内を換気する タオルの共有を避ける 体調不良時は人との接触を控える 十分な休養を取る 咳や痰などの症状がある場合は、周囲への感染を防ぐため、マスクの着用を含む咳エチケットが重要です。また、手のひらで咳やくしゃみを受け止めたときは、すぐに手を洗いましょう。 治療の基本と抗ウイルス薬 インフルエンザの治療では、症状や重症化リスクに応じて抗インフルエンザ薬が使われることがあります。発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱期間は通常1〜2日短縮されるとされ、重い合併症を防ぐことにつながる場合もあります。 一方で、軽症で重症化リスクが低い場合は、安静、水分補給、解熱鎮痛薬などによる対症療法で経過をみることもあります。自己判断で以前に処方された薬を使ったり、薬を途中で中止したりせず、医師や薬剤師の指示に従いましょう。 発熱時は汗で水分が失われやすく、夏は暑さによる脱水も重なりやすい時期です。水分が取れているか、尿量が減っていないかを確認します。心不全や腎機能低下などで水分制限がある方は、自己判断で水分量を増やさず、医師や看護師に確認しましょう。 何科を受診する?受診の目安 夏インフルエンザが疑われる場合は、内科、小児科、呼吸器内科などで相談できます。かかりつけの病院があれば、主治医に相談すると日頃の状況と合わせて診察してもらうことができます。受診前には、発熱や咳があることを医療機関へ伝え、受診方法を確認すると安心です。以下のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 高熱が続く 呼吸が苦しい 咳が止まらない 胸の痛みがある 水分が取れない 尿量が少ない ぐったりしている 意識がぼんやりしている けいれんがある 乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方に症状がある 厚生労働省も、高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪い場合は、早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。 訪問看護での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、発熱の有無だけでなく、呼吸状態や脱水のサイン、普段との違いを確認します。 観察したいポイントは、以下のとおりです。 発熱の有無と出現時期 最高体温 咳や痰の有無 のどの痛みの有無 息苦しさの有無 呼吸数 SpO2 食事量 水分摂取量 尿量や尿の回数 倦怠感の程度 意識状態 周囲の感染症の流行状況 服薬状況 基礎疾患の有無 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。「昨日18時ごろから発熱あり。最高体温38.9℃。咳とのどの痛みあり。水分は少量ずつ摂取可能。尿は朝から1回。家族にインフルエンザ陽性者あり。」「発熱2日目。体温39.0℃。倦怠感が強く、食事摂取は数口程度。SpO2 94%。呼吸苦の訴えはないが、普段より声掛けに対して反応が遅い。主治医へ報告。」このように、「いつから」「どの症状が」「普段と比べてどう違うか」を整理すると、医師に状態を伝えやすくなります。 訪問看護でできる予防のポイント 夏インフルエンザの予防でも、基本は冬のインフルエンザ対策と同じです。手洗い、咳エチケット、換気、十分な休養、栄養摂取、人混みを避けることなどが有効と考えられています。 予防のポイントは、以下のとおりです。 外出後や食事前に手を洗う 咳やくしゃみがあるときは口と鼻を覆う 室内をこまめに換気する 睡眠不足を避ける 体調不良時は無理をしない 人混みでは感染対策を意識する 流行状況に応じてワクチン接種を検討する ワクチンは、発症を完全に防ぐものではありませんが、重症化予防につながることがあります。特に高齢者や基礎疾患のある方は、接種時期や対象について、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。 まとめ 夏インフルエンザは正式な病名ではなく、夏に発症するインフルエンザを指す言い方です。インフルエンザの流行の中心は冬ですが、季節を問わず感染することがあります。主な症状は、発熱、悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、強い倦怠感、咳、のどの痛みなどです。ほかの夏の体調不良と区別しにくいため、症状だけで判断せず、経過や周囲の流行状況もあわせて確認しましょう。訪問看護では、発熱、呼吸状態、SpO2、水分摂取量、尿量、意識状態、普段との違いを観察することが大切です。高熱が続く、息苦しい、水分が取れない、ぐったりしている、意識がはっきりしない場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● WHO:「Influenza (seasonal)」.https://www.who.int/health-topics/influenza-seasonal,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2025.html,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「令和6年度インフルエンザQ&A」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「インフルエンザ(総合ページ)」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Clinical Signs and Symptoms of Influenza」.https://www.cdc.gov/flu/hcp/clinical-signs/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Treatment of Flu」.https://www.cdc.gov/flu/treatment/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Preventing Seasonal Flu」.https://www.cdc.gov/flu/prevention/index.html,2026/9/7閲覧 ● 東京都健康安全研究センター:「世界でのインフルエンザの発生状況」.https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_virus/influenza_world/,2026/9/7閲覧● 東京都多摩小平保健所:「【医療機関・学校・社会福祉施設等の皆様へ】平常時対策について」.https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamakodaira/kansen/heijojitaisaku,2026/9/7閲覧● 厚生労働省:「夏の感染症対策」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kansentaisaku_summer.html,2026/9/7閲覧● 厚生労働省:「職場でおこる熱中症」.https://neccyusho.mhlw.go.jp/heatstroke/,2026/9/7閲覧

耳が痛い原因は?緊急対応が必要なケースと様子を見てもいいケースを解説
耳が痛い原因は?緊急対応が必要なケースと様子を見てもいいケースを解説
特集
2026年9月8日
2026年9月8日

耳が痛い原因は?緊急対応が必要なケースと様子を見てもいいケースを解説

耳の痛みは、子どもから高齢者まで幅広い世代に見られることがあり、その原因もさまざまです。耳そのものに異常がある場合もあれば、顎や鼻、喉の炎症が関係していることもあります。本記事では、耳の痛みを引き起こす病気や、緊急対応が必要なケースについて解説します。利用者さんが耳の痛みを訴えられた際のアセスメントに活用してください。 耳の痛みを引き起こす「耳の病気」 まずは、耳が原因で痛みを引き起こしている場合についてみていきましょう。 中耳炎 中耳炎には大きく分けて「急性中耳炎」「滲出性中耳炎」「慢性中耳炎」「真珠腫性中耳炎」の4種類があり、その中でも急性中耳炎は強い痛みを伴うことが特徴です。急性中耳炎は、風邪や上気道感染症の後に発症することが多く、鼻詰まりや鼻水、喉の痛み、咳などの症状に続いて耳の痛みが現れます。進行すると中耳に膿が溜まり、圧力によって鼓膜が膨張して痛みが増します。 外耳炎 外耳炎は、耳の穴から鼓膜までの通路である外耳道に炎症が起こる疾患です。外耳道の皮膚は非常に薄く、刺激に対して敏感なため、何らかの要因で傷ついたり、過度な刺激を受けたりすると、細菌が繁殖し炎症を引き起こすことがあります。初期症状は、軽いかゆみや違和感です。炎症が進行すると、耳の痛みが生じ、耳を引っ張ったり、口を開閉したりするだけで痛みが増すことがあります。 鼓膜炎 鼓膜炎は、外耳と中耳の間に位置する鼓膜に炎症が生じる疾患で、急性と慢性に分類されます。片側の耳に発症することが多く、両耳に同時に発生することは稀です。 急性鼓膜炎は、鼓膜の表面に黄色い水疱が現れます。激しい痛みが生じることが多く、耳鳴りや耳の閉塞感を伴うこともあります。一方、慢性鼓膜炎は、外耳道の繰り返される炎症や感染が原因となり、長期的に持続する疾患です。鼓膜の表面に肉芽やびらん(ただれ)が形成されますが、痛みはそれほど強くはありません。 耳の痛みを引き起こす「耳以外の病気」 耳の痛みが、耳以外の病気によって引き起こされる場合があります。代表的な疾患は次のとおりです。 顎関節症 顎関節症は、顎の関節やその周囲の筋肉に異常が生じることで、口の開閉時に痛みを感じたり、スムーズに口を開けられなくなったりする疾患です。顎関節症の中でも、II型に分類されるタイプは関節の靭帯に異常が起こります。顎関節は耳のすぐ近くに位置しているため、顎関節痛を耳の痛みと感じる場合があります。 副鼻腔炎 副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔という空洞に炎症が生じる疾患です。鼻は耳管とつながっているため、耳の痛みや違和感など、耳の症状を併発することがあります。 急性副鼻腔炎では、鼻づまりや粘り気のある黄色・緑色の鼻水、頭痛、顔面痛(頬や目の奥、鼻周囲の痛み)・顔面腫脹、発熱などが主な特徴です。慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎が完治せずに慢性化してしまったもので、鼻づまりが長引き、嗅覚の低下が見られることがあります。 歯のトラブル(虫歯・親知らずなど) 虫歯や親知らずの炎症が進行すると、歯茎が腫れ、周囲の組織にまで炎症が広がることで、神経を通じて耳の痛みを感じることがあります。これは、歯やあご、舌の下などとつながる神経が耳にも分布しているためです。 扁桃周囲膿瘍 扁桃炎が悪化すると、扁桃の周囲に膿がたまり、「扁桃周囲膿瘍」を引き起こすことがあります。のどの痛みが非常に強くなり、唾を飲み込む際にも激痛を伴います。そして、耳にまで痛みが広がることもあります。 ラムゼイ・ハント症候群 ラムゼイ・ハント症候群は、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症する疾患です。顔面神経麻痺に加え、耳の周囲や口の中に痛みを伴う発疹が現れることが特徴です。 医療機関を受診した方がよいケース 耳の痛みは、軽い違和感から強い痛みまでさまざまです。痛みの程度や持続時間によっては、すぐに医療機関を受診した方がよいケースも。医療機関を受診した方がよいケースは次のとおりです。 強い痛みがある 強い痛みがある場合は、急性中耳炎の可能性があります。子どもの場合、頻繁に耳を触ったり泣いたりしている場合は強い痛みが起きていることもあり、早めの受診が必要です。 耳の中から出血がある 耳の中から出血がある場合は、外耳炎が悪化している可能性があります。進行すると強い痛みが生じるため、早めの受診が必要です。 顔面麻痺を伴う場合 耳の痛みに顔面麻痺を伴う場合は、ラムゼイ・ハント症候群の可能性があります。放置すると後遺症が残るリスクが高まるため、顔の動きに違和感を覚えたらすぐに診察を受けることが重要です。 高熱が続く場合 急性中耳炎や扁桃周囲膿瘍などの感染症は高熱を伴うことが多く、長引く場合は合併症を防ぐためにも受診が必要です。特に小さな子どもや高齢者は重症化しやすい点に注意が必要です。 耳の痛みで様子を見てもよいケース 耳の痛みが軽度で、短時間で自然におさまる場合は、必ずしも受診する必要はありません。気圧の変化や耳垢の詰まりが原因であれば、数時間以内に症状が軽減することが多いとされています。 ただし、痛みが繰り返し起こる、または徐々に強くなる場合は、慢性的な炎症や病気が隠れている可能性があるため、早めの受診を検討しましょう。 * * * 耳の痛みは、軽度のものから重篤な疾患のサインであるものまでさまざまです。適切な判断を行うために、耳の痛みに関する正しい知識を持つことが重要です。今回、解説した内容を利用者さんのアセスメントにぜひお役立てください。 編集・執筆:加藤 良大監修:瀬尾 達(せお わたる)医療法人瀬尾記念会瀬尾クリニック理事長。耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療の他、京都大学医学部講師や大阪歯科大学講師を兼任。祖父から代々の耳鼻科医の家系。兄は、聖マリアンナ医科大学耳鼻科教授。テレビやマスコミ出演多数。 【参考】〇日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「口腔・咽頭の病気」(2026年9月7日)https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=222026/9/7閲覧

帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説
帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説
コラム
2026年9月8日
2026年9月8日

帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説

帯状疱疹とは、体の片側に痛みやピリピリした違和感が出たあと、赤い発疹や水疱が帯状に現れる病気です。原因は、水痘と同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(以下varicella zoster virus;VZV)です。子どものころなどに水痘にかかったあと、体内に潜んでいたウイルスが再び活動することで発症します。帯状疱疹は、早めに治療を始めることで症状の長期化や合併症のリスクを減らせる可能性があります。この記事では、帯状疱疹の症状、原因、うつる可能性、治療、訪問看護での観察ポイントを解説します。 帯状疱疹とは 帯状疱疹は、VZVによって起こる皮膚疾患です。VZVは、初めて感染したときに水痘を発症します。その後、ウイルスは神経節に潜伏し、加齢や疲労、病気、免疫機能の低下などをきっかけに再活性化することがあります。帯状疱疹は、この再活性化によって起こります。帯状疱疹の特徴は、体の左右どちらか一方に、神経の走行に沿って痛みや発疹が出ることです。胸や背中、腹部に出ることが多いですが、顔や首、腕、足に出ることもあります。また、皮膚症状だけでなく、神経痛をともなう点が特徴です。 帯状疱疹の初期症状 帯状疱疹の初期症状では、発疹が出る前に痛みや違和感が現れることがあります。東京都感染症情報センターでは、通常、皮膚症状の出現2〜3日前から、かゆみや痛みが出現し、初期には皮膚が赤く腫れると説明しています。初期症状としては、以下のようなものがあります。 皮膚がピリピリする チクチクした痛みがある かゆみがある 触れると痛い 体の片側だけに違和感がある 発赤が出る 倦怠感の有無 軽い発熱がある 初期には発疹がまだ目立たないため、筋肉痛、肩こり、腰痛、虫刺され、かぶれなどと間違えられることがあります。特に、片側だけにピリピリした痛みが続く場合や、その後に赤い発疹や水疱が出てきた場合は、帯状疱疹の可能性があります。 帯状疱疹の症状 帯状疱疹では、痛みや違和感のあとに、赤い発疹や水疱が現れます。水疱は神経に沿って帯状に並ぶことが多く、数日かけて増える場合があります。 主な症状は以下のとおりです。 体の片側に出る痛み 赤い発疹 水疱 かゆみ 皮膚の灼熱感 触れるだけで痛い感覚 発熱 頭痛 倦怠感 多くの場合は適切な治療によって改善しますが、強い痛みを伴うことがあります。また、免疫機能が低下している方などでは重症化し、まれに重篤な合併症を起こすことがあります。最も一般的な合併症として帯状疱疹後神経痛が知られており、発疹が治った後も痛みが残ることがあります。 顔に帯状疱疹が出た場合は、目の症状に注意が必要です。目の周囲に発疹がある、目が痛い、見えにくい、まぶしいなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 帯状疱疹の原因 帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化です。子どものころなどに水痘にかかると、症状が治った後もウイルスは体内の神経節に潜んでいます。その後、免疫機能が低下したときに再び活動し、神経に沿って皮膚症状や痛みを起こします。 帯状疱疹のきっかけになりやすい要因には、以下があります。 加齢 過労や強いストレスなどによる免疫機能の低下 がんなど、免疫機能に影響する基礎疾患 免疫を抑える薬の使用 手術や放射線治療 高齢者や基礎疾患のある方では、症状が重くなることがあります。訪問看護や在宅ケアでは、皮膚の症状だけでなく、痛みの強さ、食欲、睡眠、発熱、活動量の変化もあわせて確認することが大切です。 帯状疱疹はうつる? 帯状疱疹そのものが人から人へうつるわけではありません。ただし、VZVへの免疫がない人にウイルスが感染すると、水痘を発症する可能性があります。主に水疱の内容液との接触などによって感染するため、水疱が痂皮化するまでは感染対策が必要です。感染を広げないためには、以下の点に注意します。 水疱をガーゼや衣類で覆う 発疹を触らない 触れたあとは手を洗う タオルを共有しない 水疱が痂皮化するまで接触に注意する 妊婦、乳幼児、免疫機能が低下している方との接触に注意する 訪問看護では、利用者さん本人が発疹を掻把してしまうこともあります。掻把による細菌感染を防ぐためにも、爪を短くし、患部を清潔に保つことが大切です。 帯状疱疹の治療 帯状疱疹の治療では、早期に抗ウイルス薬による治療を始めることで、皮膚症状の治癒を促し、急性期の痛みを軽減することが期待できます。 治療で使われることがある薬には、以下があります。 抗ウイルス薬 解熱鎮痛薬 神経痛に対する薬 外用薬 皮膚の二次感染に対する薬 帯状疱疹は、発症から早い段階で治療を始めることが重要です。片側だけの痛みや発疹、水疱が出た場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関へ相談しましょう。 帯状疱疹後神経痛とは 帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia:PHN)とは、帯状疱疹による皮疹が治った後も痛みが続き、一般に3か月以上持続する状態を指します。痛みの感じ方は人によって異なり、焼けるような痛み、刺すような痛み、衣類が触れるだけで痛い感覚などがみられることがあります。日本皮膚科学会によると、帯状疱疹後神経痛は、60歳以上の方、発疹が重かった方、初期の痛みが強かった方に起こりやすいとされています。痛みが長引くと、睡眠、食事、活動量、気分にも影響することがあります。訪問看護では、痛みの部位、強さ、持続時間、生活への影響を確認し、必要に応じて医師へ報告します。 帯状疱疹ワクチン 厚生労働省は、帯状疱疹ワクチンによって帯状疱疹やその合併症を予防できると説明しています。また、2025年度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました。なお、2025年度から2029年度までの5年間は経過措置として、その年度内に70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方も対象です。また、60〜64歳で、HIVによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方も対象となります。日本で定期接種に使われる帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンがあります。接種対象、接種回数、接種できない方、注意が必要な方はワクチンによって異なります。基礎疾患がある方や免疫抑制剤の投与を受けている方は、接種前に主治医へ相談しましょう。 訪問看護での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、帯状疱疹の症状を早く見つけ、痛みや感染対策、生活への影響を確認することが大切です。確認したいポイントは、以下のとおりです。 痛みがいつからあるか 痛みの部位 痛みの強さ 体の片側に出ているか 発赤や水疱の有無 発疹の広がり 発熱の有無 食事量や水分摂取量 睡眠や活動への影響 掻把の有無 目の周囲の症状 妊婦、乳幼児、免疫機能が低下している方との接触状況 記録する場合は、以下のように書くと共有しやすくなります。 「昨日から右胸部にピリピリした痛みあり。本日、同部位に赤い発疹と小水疱を確認。発熱なし。衣類が触れると痛みあり。食事摂取は普段どおり。」 「左額からまぶた周囲に発疹あり。目の痛みと違和感の訴えあり。主治医へ相談し、受診することになった。」 このように、痛みの部位、左右差、発疹の状態、目の症状の有無を具体的に伝えることが大切です。 受診を考えたい症状 帯状疱疹が疑われる場合は、できるだけ早めに医療機関へ相談しましょう。特に、以下のような場合は注意が必要です。 体の片側に強い痛みがある 赤い発疹や水疱が出てきた 顔や目の周りに発疹がある 目の痛みや見えにくさがある 発熱や強いだるさがある 痛みで眠れない 発疹が広範囲に広がっている 免疫機能が低下している 高齢者で症状が強い 妊婦や乳幼児と接触する機会がある 額・まぶた・鼻など目の周囲に帯状疱疹が疑われる発疹がある場合は、眼症状がなくても早めに医療機関へ相談しましょう。 まとめ 帯状疱疹は、水痘と同じVZVが再び活動することで起こる病気です。初期症状として、体の片側にピリピリした痛みや違和感が出ることがあり、その後、赤い発疹や水疱が帯状に現れます。帯状疱疹は、早期に治療を始めることで、症状の長期化や帯状疱疹後神経痛などの合併症を緩和できる可能性があります。片側だけの痛み、発疹、水疱がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。訪問看護では、痛みの部位、発疹の広がり、発熱、食事や睡眠への影響、目の症状の有無を観察することが大切です。ワクチンによる予防も選択肢のひとつであり、対象年齢の方や基礎疾患がある方は、主治医に相談して検討しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● 厚生労働省:「帯状疱疹ワクチン」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/index.html,2026/9/7閲覧● 国立健康危機管理研究機構:「水痘・帯状疱疹の動向とワクチン」.https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-iasrtpc/8223-462t.html,2026/9/7閲覧● 東京都感染症情報センター:「帯状疱疹 Shingles(Herpes Zoster)」.https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/herpes_zoster/,2026/9/7閲覧● CDC:「Shingles(Herpes Zoster)」.https://www.cdc.gov/shingles/about/index.html,2026/9/7閲覧● CDC:「Shingles Vaccine Recommendations」.https://www.cdc.gov/shingles/hcp/vaccine-considerations/index.html,2026/9/7閲覧● 日本皮膚科学会:「Q11 帯状疱疹とは何ですか?」.https://qa.dermatol.or.jp/qa5/q11.html,2026/9/7閲覧● 日本皮膚科学会:「Q20 帯状疱疹後神経痛とはどういうものですか?」.https://qa.dermatol.or.jp/qa5/q20.html,2026/9/7閲覧

夏風邪とは?症状・原因・治し方を解説
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コラム
2026年8月25日
2026年8月25日

夏風邪とは?症状・原因・治し方を解説

夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称です。代表的なものに、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などがあります。子どもに多いイメージがありますが、大人がかかることもあります。 夏風邪では、発熱、のどの痛み、咳、鼻水、口の中の水疱、発疹、目の充血、下痢など、原因となるウイルスによってさまざまな症状がみられます。この記事では、夏風邪の主な症状、原因、治し方、受診の目安、在宅での観察ポイントを解説します。 夏風邪とは 夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称で、医学的にひとつの病名を指すものではありません。夏場にみられる発熱、のどの痛み、咳、鼻水、下痢、発疹などを伴うウイルス感染症を指して使われることがあります。 厚生労働省は、「夏かぜ」といわれる感染症として、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などを挙げています。また、夏風邪は子どもがかかるものと思われがちですが、原因となるウイルスには多くの種類があり、1シーズンに何回もかかる大人も少なくないとしています。 今回紹介する手足口病やヘルパンギーナはエンテロウイルス、咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因です。いずれも基本的には症状に応じた治療が行われます。ただし、高熱が続く、水分が摂れない、ぐったりしているなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 夏風邪の主な症状 夏風邪の症状は、原因となるウイルスや病気によって異なります。よくみられる症状には、以下があります。 発熱 のどの痛み 咳 鼻水 頭痛 倦怠感 口の中の水疱 手足や口まわりの発疹 目の充血 下痢 食欲低下 夏風邪は、冬の風邪と比べて、口の中の水疱、手足の発疹、目の症状、胃腸症状が目立つことがあります。特に子どもでは、のどや口の痛みによって水分や食事を摂りにくくなることがあるため、脱水症に注意が必要です。 夏風邪の代表的な病気 手足口病 手足口病は、口の中、手のひら、足の裏などに水疱性の発疹がみられるエンテロウイルスによる感染症です。厚生労働省によると、国内では毎年夏を中心に発生し、7月下旬に流行のピークを迎えます。 3~5日の潜伏期間を経て、口の中や手のひら、足の裏などに2~3mmの水疱性の発疹が生じます。発熱は38℃以下のことが多く、ほとんどの発病者は、3~7日で治るといわれています。 症状は軽く済むこともありますが、口の中の痛みによって食事や水分が摂りにくくなる場合があり、まれに髄膜炎、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺などの合併症により、重症化することがあります。 ヘルパンギーナ ヘルパンギーナは、発熱とのどの痛み、のどの奥の水疱を特徴とする夏風邪の一種です。乳幼児を中心に夏に流行し、主にコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスが原因となります。厚生労働省によると、毎年5月ごろから患者が増え始め、7月ごろにピークを迎えます。その後、8月ごろから減少していきます。 感染してから2〜4日後に突然の発熱が起こり、その後、のどの痛みや水疱が現れます。発熱は1〜3日続き、食欲不振、全身のだるさ、頭痛などを伴うことがあります。 ヘルパンギーナでは、のどの痛みが強く、水分を摂ることを嫌がる場合があります。特に小児では、脱水症、熱性けいれん、まれに髄膜炎や心筋炎などに注意が必要です。 咽頭結膜熱 咽頭結膜熱は、発熱、のどの痛み、目の充血などがみられる感染症です。プール熱とも呼ばれることがあります。原因はアデノウイルスで、飛沫感染や接触感染によって広がります。厚生労働省によると、通常6月ころから徐々に流行しはじめ、7~8月にピークとなります。 咽頭結膜熱では、38〜40℃の高熱、のどの痛み、結膜充血、目の痛みなどがみられることがあります。高熱が5日前後続く場合もありますが、多くは自然に回復します。吐き気や頭痛が強かったり、咳が激しかったりするときは、早めに医療機関に相談することが推奨されています。 夏風邪は大人にもうつる? 夏風邪は子どもだけの病気ではありません。原因となるウイルスには多くの種類があるため、大人も感染することがあります。 大人の夏風邪では、発熱、のどの痛み、倦怠感、咳、鼻水、下痢などがみられます。仕事や家事で休みにくい場合でも、発熱や強い倦怠感があるときは無理をしないことが大切です。 また、大人が感染して症状が軽くても、家庭内で子どもや高齢者にうつることがあります。手洗い、咳エチケット、タオルの共有を避けることなど、基本的な感染対策を続けましょう。 夏風邪は何日で治る? 夏風邪が何日で治るかは、原因となる感染症や体調によって異なります。軽い風邪症状であれば数日から1週間程度で改善することがありますが、咽頭結膜熱のように高熱が数日続く場合もあります。 ヘルパンギーナでは、発熱は1〜3日続くことが多く、一般的には経過が良好とされています。一方、手足口病では、口の中の痛みや発疹がしばらく残ることがあります。 「熱が下がったから、すぐに普段どおりの生活に戻ってよい」と考えるのではなく、食事や水分が摂れているか、尿量が戻っているか、体力が回復しているかも確認することが大切です。 夏風邪の治し方 夏風邪の多くはウイルス感染症のため、治療は症状をやわらげる対症療法が中心です。自宅では、休養、水分補給、室温調整、食べやすい食事を意識します。 のどの痛みが強い場合は、冷たい飲み物、ゼリー、スープなど、飲み込みやすいものを少量ずつ摂るとよいでしょう。酸味の強い飲み物や熱い食べ物は、口の中やのどの痛みを強めることがあります。 発熱や痛みに対しては、医師や薬剤師に相談のうえ、解熱鎮痛薬を使うことがあります。小児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方、腎機能や肝機能に不安がある方は、自己判断で薬を使わず、医師や薬剤師に確認しましょう。 また、下痢が強い場合や長引く場合は、自己判断で市販薬を使用せず医師や薬剤師に相談しましょう。 受診を考えたい症状 夏風邪は自然に回復することもありますが、重症化や脱水症に注意が必要です。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 高熱が続く 水分がほとんど摂れない 尿量が明らかに少ない ぐったりしている 呼びかけへの反応が弱い 呼吸が苦しそう けいれんがある 強い頭痛がある 首を曲げにくい 嘔吐を繰り返す 目の痛みや充血が強い 乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方に症状がある 厚生労働省は、発熱や咳に加えて、呼吸が苦しい、食事や水分が摂取できないといった症状がみられた場合は、すぐに医療機関に相談するよう呼びかけています。 在宅ケアでは、いつもの様子との違いも重要です。熱の高さだけでなく、顔色、反応、食事量、水分摂取量、尿量、睡眠の様子をあわせて確認します。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、病名を決めつけるよりも、症状の経過と全身状態を具体的に観察することが大切です。 確認したいポイントは、以下のとおりです。 発熱が始まった日時 最高体温 咳や鼻水の有無 のどの痛みの程度 口の中の水疱や潰瘍の有無 手足や口まわりの発疹の有無 目の充血や目やにの有無 下痢や嘔吐の有無 食事量 水分摂取量 尿量や尿の回数 家族や園、学校、施設での流行状況 普段の状態との違い 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。 「昨日〇時ごろから発熱。最高体温38.8℃。のどの痛みが強く、水分摂取は少量。口腔内奥に小さな水疱のようなものを認める。尿は朝から1回のみ。」 「本日朝から発熱と目の充血あり。体温39.0℃。のどの痛みあり。食事は半量、水分は摂取可能。家族内に同様症状なし。」 このように、「いつから」「どの症状が」「どの程度あるか」を整理すると、医師や看護師に状態を伝えやすくなります。 夏風邪を予防するには 夏風邪の予防では、手洗い、咳エチケット、換気などの基本的な感染対策が大切です。厚生労働省も、夏かぜを含む感染症対策として、手洗い、咳エチケット、換気などの基本的な対策を挙げています。 特に、手足口病やヘルパンギーナでは、便の中にウイルスが排泄されることがあります。排泄物を適切に処理し、おむつ交換後やトイレの後、食事前には、石けんと流水で手を洗いましょう。 予防のポイントは、以下のとおりです。 外出後や食事前に手を洗う タオルを共有しない 咳やくしゃみがあるときは口と鼻を覆う 室内を換気する おむつ交換後は手を洗う 体調不良時は無理に登園、登校、出勤しない 口や目、鼻を触る前後に手を洗う 十分な睡眠と水分補給を意識する 家庭内で感染者がいる場合は、タオルの共有を避け、よく触れる場所を清潔に保ちます。子どもがいる家庭では、おもちゃやドアノブなども感染対策の対象になります。 まとめ 夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称です。代表的なものには、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などがあります。発熱、のどの痛み、咳、鼻水、口の中の水疱、発疹、目の充血、下痢など、原因によって症状はさまざまです。 夏風邪の多くは対症療法が中心ですが、水分が摂れない、尿量が少ない、ぐったりしている、高熱が続く、呼吸が苦しそうといった場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 在宅ケアでは、病名を判断することよりも、症状の経過、水分摂取量、尿量、普段との違いを確認することが大切です。手洗い、咳エチケット、換気を行い、タオルの共有を避けることを意識し、家庭や施設内で感染を広げないようにしましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 厚生労働省:「夏を安全に楽しもう! 感染症対策ガイド」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202407_003.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「手足口病」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「ヘルパンギーナ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/herpangina.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「咽頭結膜熱」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pcf.html2026/8/24閲覧 東大阪市:「子どもの夏かぜ(手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱)」https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000004003.html2026/8/24閲覧 CDC:「Non-Polio Enteroviruses Symptoms and Complications」https://www.cdc.gov/non-polio-enterovirus/signs-symptoms/index.html2026/8/24閲覧

多疾患併存の緩和ケアがよく分かる 開始のタイミングと支援ニーズの理解
多疾患併存の緩和ケアがよく分かる 開始のタイミングと支援ニーズの理解
特集
2026年8月18日
2026年8月18日

多疾患併存の緩和ケアがよく分かる 開始のタイミングと支援ニーズの理解

非がん疾患の患者さんに質の高い緩和ケアを届けるための知識・視点を整理。訪問時のケアの実践につながるヒントをお届けします。今回は、「多疾患併存(multimorbidity、マルチモビディティ)」を取り上げます。東京ふれあい医療生活協同組合 ふれあいファミリークリニックの角允博先生に、多疾患併存に対する緩和ケアにおいて必要とされる支援について解説いただきます。 はじめに 多疾患併存とは、一般的に2つ以上の慢性疾患が1人の患者に並存している状態と定義されます1)。またQOLの低下、死亡率、ポリファーマシー、転倒、入院などのリスク増加との関連が示されており、国際的にも喫緊の課題に挙げられています2)。 本稿では、多疾患併存に対する緩和ケアの意義と課題を、「なぜ」「いつ」「どのように」の3つの観点から検討します。 なぜ多疾患併存の緩和ケアが求められるのか WHOの緩和ケアの定義は「緩和ケアは生命を脅かす病に直面する患者と家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に発見・評価し対応することで苦痛を予防・緩和するアプローチ」とされています 3)。 日本ではこれまで緩和ケアはがん中心に発展してきましたが、この定義に照らせば対象はすべての重篤疾患であり、がん以外の慢性疾患にも対応する体制整備が急務とされています。また、これまでは単一疾患に対する緩和ケアが主体でしたが、現在のわが国の超高齢者の多くは認知症や心不全、COPD、脊柱管狭窄症など複数の慢性疾患・障害の連鎖の中で終末期を迎えています。こうした患者群では疾患間の相互作用や医療的介入の複雑化により、身体的・心理社会的苦痛が重層化しています。したがって、疾患単位の管理を超えた緩和ケアが今、求められているのです。 多疾患併存の緩和ケアをいつ提供するのか 多疾患併存の軌跡は一見予測不可能なため、終末期を特定することがしばしば困難です。多疾患併存の中でも、慢性的で治癒不可能な性質を反映している「Advanced multimorbidity」 (高度な多疾患併存)という概念がありますが、近年のレビューでは緩和ケアを必要とする多疾患併存症の患者をどのように認識し、どの時期に緩和ケアを提供することが望ましいかは明らかではありません4)。 「サプライズクエスチョン」による特定方法 終末期を迎え、緩和ケアを必要とする可能性のある患者を特定するための方法の1つに、「サプライズクエスチョン」というシンプルな質問法があります。これは、「患者が12ヵ月以内に亡くなっても驚きませんか?」と医師や看護師が自問し「驚かない」と回答することで緩和ケア対象者を同定する方法です。 サプライズクエスチョンを検討したメタアナリシスでは、「驚かない」と回答した場合のその後の死亡率を感度として0.69、「驚く」と回答した場合のその後の死亡率を特異度として0.69であり、中等度の精度を示しました。ただし、セッティング、追跡期間、回答者により、ばらつきがみられました5)。 「治療負担」という考え方 また、多疾患併存への緩和ケアの開始は、治療負担の概念から考えることもできます。Mayらは、慢性疾患患者や長期医療を受ける人々にとって、病気そのもの(症状、制約、合併症など)から生じる負担(burden of illness)に加えて、医療制度・治療プロセス・自己管理から生じる「治療負担」(burden of treatment)という別の重みがあると論じ、注意喚起をしています6)。 これらの負担に対応する能力はcapabilityと呼ばれ、負担とのバランスが崩れると個々の患者の医療成果が悪化するだけでなく、介護者の負担が増大し、さらに医療サービスの需要とコストが増加する可能性が指摘されています7)。これをふまえ、多疾患併存の各疾患の医療制度・治療プロセス・自己管理が患者や介護者の生活にどのような影響を及ぼしているかを把握し、医療者と生活者である患者の間で調整を行うことが重要です。 この調整は、今まで疾患治癒を目的としていた医療的介入を縮小し、症状緩和や患者家族の生活を配慮したケアにシフトするアプローチです。医療従事者が多疾患併存への治療介入自体が患者にとって生活負担になっていると感じる時こそ、緩和ケアの契機になると考えられます。 多疾患併存に対してどういった緩和ケアを行うか 多疾患併存にどのような緩和ケアを行うかは明らかになっていない点が多いですが、多疾患併存に対する緩和ケアのニーズをまとめた先行文献8)、9)を参考に、どういった緩和ケアが必要かを考察します。 (1)身体的苦痛 多疾患併存の身体的苦痛では、痛みと移動の困難が最も多いといわれています8)。日常臨床でも心不全、腎不全などの内部疾患に伴う疼痛、変形性膝関節症や脊柱管狭窄症などの整形疾患、帯状疱疹後神経痛など多様な痛みを訴える患者に遭遇します。さらに認知機能障害を合併した場合、疼痛の評価は困難となることも多くあります。 症状は疾患間で相互作用を及ぼし、一連の疾患をそれぞれ個別に治療し、他疾患を考慮に入れないことは非効率的で、潜在的に有害であることを考慮する必要があります10)。 移動の困難については、介護保険サービスによるリハビリテーションや福祉用具を活用してサポートしているのが現状ですが、「移動が困難であること」それ自体が患者の「苦痛」であることを認識しておく必要があります。これらの身体的苦痛は、後述する心理社会的・スピリチュアルな苦痛と混在し、その表現型として疼痛を訴える場合もあり、解釈には注意を要します。 (2)心理社会的苦痛 Nicholsonらの研究によると、多疾患併存の患者とその介護者は、身体的なニーズには十分に対応されていると考えていた一方で、心理社会的およびスピリチュアルなニーズへのサポートが不足していると認識していました。 心理面では「不幸」「孤独」「不安」「抑うつ」、社会面では「社会的なつながりの維持」「個性とアイデンティティの維持」「介護者への信頼」「家族のサポート」がテーマとして抽出されました8)。心理面は社会面とも密接に関係し、患者本人だけでなく、対応する家族や介護者への教育的サポートも必要であると示されています。 社会的なつながりの維持については、患者と介護者の双方において指摘されています。患者自身も機能の低下によって社会と断絶されることは容易に想像されますが、介護者もまたフルタイムの介護を提供することで、社会的接触が減少し、友人、隣人、地域社会からの孤立感を訴えます。 実臨床において、介護者が患者に信頼され、家族がサポートできる体制をとれているケースがすべてではありません。その結果、患者家族は施設入所を選びますが、介護施設で問題になるのが多数の入居者の中で個性とアイデンティティを維持することです8)。こういった社会的苦痛に現行の介護保険制度の枠組みだけで対応していくことは困難であり、介護施設を含め、介護を社会にひらいていく上での新たな取り組みも必要であると考えられます。 (3)スピリチュアルペイン さらに、Nicholsonらによる研究では、多疾患併存のスピリチュアルに対するニーズは、「意味と目的」「悲しみと喪失」「宗教性および宗教的嗜好」「現在をよく生きること」の4つのテーマに分類されています8)。がん患者において、時間存在である人間は、過去から将来をつなぐ時間の中で現在を生きていますが、罹患し将来がみえなくなることで現在の生に意味や存在が成立しなくなるといわれています11)。この時間存在の概念は、「意味と目的」や「現在をよく生きること」といったニーズに関連します。 多疾患併存の高齢者は、長期にわたる臨床経過の中で、こうした実存的な課題に直面しているのです。時にそれはスピリチュアルペインほど強くない訴えで、身体的・心理社会的苦痛と混在して表出されるため、これを識別・認識するのがしばしば困難になります。 臨床では、「もう生きていてもしょうがない」「早く迎えが来ないかな」「迷惑ばかりかけている」といった言葉を耳にすることも少なくありません。ここではそれをメッセージとして受け取り、言語化し、それを相手に返していく作業が大切です。元来、スピリチュアルペインの概念はがん領域で問題になることが多くありましたが、訪問看護を含めた在宅医療従事者はこの問題に今後、普遍的に取り組む必要があると考えます。 まとめ 本稿では、多疾患併存に対する緩和ケアの必要性、導入時期、提供方法について検討しました。多疾患併存の緩和ケアは、緩和ケア領域のみならず在宅医療やプライマリケアの現場でも喫緊の課題です。今後、臨床実践と研究の両面から、患者の多層的な苦痛を的確に理解し支える枠組みの構築が期待されます。 本文で使用した略語一覧(本文登場順)QOL:quality of life(生活の質)WHO:world health organization(世界保健機関)COPD:chronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患) 執筆:角 允博東京ふれあい医療生活協同組合 ふれあいファミリークリニック 東京都足立区小台宮城で家庭医・在宅医として外来、在宅を通じプライマリケアに従事。多疾患併存における臨床的複雑性と意思決定にチームで取り組んでいる。 編集:株式会社照林社 【参考文献】 1)Valderas JM,Starfield B,Salisbury C,et al.:Defining comorbidity:implications for understanding health and health services.Ann Fam Med 2009;7(4):357-363.2)Multimorbidity:clinical assessment and management.NICE guideline,2016.https://www.nice.org.uk/guidance/ng562026/8/10閲覧3)日本ホスピス緩和ケア協会:WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義(2002年)https://www.hpcj.org/info/history.html2026/8/10閲覧4)Bowers SP,Black P,McCheyne L,et al.:Descriptions of advanced multimorbidity:A scoping review with content analysis.J Multimorb Comorb 2025;15:26335565251326309.5)Gupta A,Burgess R,Drozd M,et al.:The Surprise Question and clinician-predicted prognosis:systematic review and meta-analysis.BMJ Support Palliat Care 2024;15(1):12-35.6)May CR,Eton DT,Boehmer K,et al.:Rethinking the patient:using Burden of Treatment Theory to understand the changing dynamics of illness.BMC Health Serv Res 2014;14:281.7)May C,Montori VM,Mair FS:We need minimally disruptive medicine.BMJ 2009;339:b2803.8)Nicholson CJ,Combes S,Mold F,et al.:Addressing inequity in palliative care provision for older people living with multimorbidity.Perspectives of community-dwelling older people on their palliative care needs:A scoping review.Palliat Med 2023;37(4):475-497.9)Llop-Medina L,Fu Y,Garcés-Ferrer,et al.:Palliative Care in Older People with Multimorbidities:A Scoping Review on the Palliative Care Needs of Patients,Carers,and Health Professionals.Int J Environ Res Public Health 2022;19(6):3195.10)Hourican C,Peeters G,Melis R,et al.:Understanding multimorbidity requires sign-disease networks and higher-order interactions,a perspective.Front Syst Biol 2023;3:1155599.11)村田久行:終末期がん患者のスピリチュアルペインとそのケア.日ペインクリニック会誌 2011;18(1):1–8.

食中毒症状とは?観察と受診の目安
食中毒症状とは?観察と受診の目安
コラム
2026年8月18日
2026年8月18日

食中毒症状とは?観察と受診の目安

食中毒では、下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状がみられます。原因となる細菌やウイルス、寄生虫、自然毒などによって、症状の出方や発症までの時間は異なります。訪問看護や在宅ケアの現場では、「何を食べたか」だけでなく、「いつから症状が出たか」「水分が取れているか」「尿量が減っていないか」などを確認することが大切です。この記事では、食中毒でみられる主な症状、注意したいサイン、在宅での観察ポイントを解説します。 食中毒とは 食中毒とは、細菌やウイルス、有害な物質などが含まれた食品を食べることで、腹痛や下痢、嘔吐などの症状が起こる状態です。厚生労働省では、食中毒の原因として、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、リステリア、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、ノロウイルス、アニサキス、毒キノコ、有毒植物などを挙げています。 食中毒は夏に多いイメージがありますが、原因によって流行しやすい時期は異なります。たとえば、細菌性食中毒は気温や湿度が高い時期に増えやすく、ノロウイルスによる食中毒は冬に多くみられます。ただ、季節だけで判断せず、症状や食事内容、周囲の流行状況をあわせて確認することが大切です。 食中毒でみられる主な症状 食中毒の症状は、原因によって異なりますが、よくみられる症状には以下があります。 下痢 腹痛 吐き気 嘔吐 発熱 倦怠感 頭痛 悪寒 脱水症状 胃痛や腹部けいれん 重症の食中毒では、血便、3日以上続く下痢、高熱、頻回の嘔吐、脱水症状がみられることがあります。 高齢者や小児、妊婦、基礎疾患のある方、免疫機能が低下している方では、症状が重くなることがあります。特に在宅療養中の利用者さんでは、普段の体調や食事量、内服薬の影響も含めて観察することが重要です。 症状が出るまでの時間 食中毒は、食べてすぐに症状が出るものもあれば、数日後に症状が出るものもあります。発症までの時間は、原因を考えるうえで手がかりになります。厚生労働省が発表している、発症までの目安は次の通りです。 原因の例発症までの目安主な症状黄色ブドウ球菌30分〜6時間程度吐き気、嘔吐セレウス菌 嘔吐型30分〜6時間程度吐き気、嘔吐ウエルシュ菌6〜18時間程度腹部膨満、腹痛、下痢ノロウイルス24〜48時間程度吐き気、嘔吐、下痢、腹痛カンピロバクター2〜7日程度下痢、腹痛、発熱、嘔吐、吐き気腸管出血性大腸菌3〜8日程度腹痛、下痢、血便 ただし、同じものを食べても、全員が同じ症状になるとは限りません。年齢、体調、食べた量、基礎疾患などによって症状の強さは変わります。 注意したい症状 食中毒が疑われる場合でも、症状が軽く、水分が取れていて、尿が出ている場合は、主治医へ報告したうえで、点滴など特別な処置はせず様子を見ることがあります。一方で、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 3日以上続く下痢 嘔吐が続き、水分が取れない 血便がある 強い腹痛がある 高熱がある 尿量が明らかに少ない 口の中が乾いている 立ち上がるとふらつく ぐったりしている 意識がぼんやりしている 乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方に症状がある 特に、乳幼児や高齢者などにおいて、血便や強い腹痛がある場合は注意が必要です。腸管出血性大腸菌では、溶血性尿毒症症候群 や脳症などの重症合併症を発症する場合があります。 脱水症状に注意する 食中毒で特に注意したいのが脱水症状です。下痢や嘔吐が続くと、水分だけでなく電解質も失われます。高齢者では、のどの渇きを感じにくいことがあり、気づかないうちに脱水が進むことがあります。在宅では、以下のような変化を確認します。 尿量が少ない 尿の色が濃い 口唇や舌が乾いている 皮膚や口腔内が乾燥している 立ちくらみがある 脈が速い 血圧がいつもより低い ぼんやりしている 食事や水分が取れていない 嘔吐がある場合は、一度に多く飲むと吐き気が強くなることがあります。少量ずつ、こまめに水分を摂れるか確認します。経口補水液を使う場合は、基礎疾患や水分制限の有無にも注意し、必要に応じて医師や看護師に確認しましょう。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、症状だけでなく、発症前後の食事内容や生活状況を確認します。食中毒は原因の特定が難しいこともありますが、以下の情報を整理しておくと、医師や保健所への相談時に役立ちます。 症状が始まった日時 主な症状 下痢や嘔吐の回数 便の性状 血便の有無 体温 腹痛の部位と強さ 水分摂取量 食事摂取量 尿量と尿の回数 食べたもの 同じものを食べた人の症状 服薬状況 基礎疾患 普段の状態との違い たとえば、以下のように記録すると共有しやすくなります。 「昨日夕食後から吐き気あり。本日朝までに嘔吐3回、水様便4回。体温37.8度。水分は少量ずつ摂取できているが、尿は朝から1回のみ。昨日、家族と同じ刺身を摂取。家族1名にも下痢あり。」 このように、「いつから」「何回」「何を食べたか」「水分と尿量はどうか」をまとめると、状態の変化が伝わりやすくなります。 感染を広げないための対応 食中毒の原因によっては、家庭内や施設内で感染が広がることがあります。特にノロウイルスは、ふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感染することがあります。厚生労働省は、ノロウイルスの感染経路として、感染者のふん便や吐ぶつからの二次感染、食品取扱者を介した食品汚染、加熱不十分な二枚貝、消毒不十分な水などを挙げています。感染拡大を防ぐためには、手洗い、吐ぶつやふん便の適切な処理、調理器具の洗浄、食品の十分な加熱が大切です。厚生労働省は、ノロウイルス対策として、調理器具や食器、ふきんなどを洗剤で洗い、熱湯85度以上で1分以上加熱する方法などを紹介しています。在宅では、トイレやドアノブなど、手が触れやすい場所の清掃も重要です。介助者が処理を行う場合は、手袋やマスクを使用し、処理後は石けんと流水で手を洗います。 食中毒を予防する基本 食中毒予防の基本は、菌やウイルスを「つけない」「増やさない」「やっつける」ことです。政府広報オンラインでも、家庭での食中毒予防として、食品の購入、保存、下準備、調理、食事、残った食品の取り扱いなど、各場面で注意することを紹介しています。具体的には、以下のような対策があります。 調理前や食事前に手を洗う 生肉や魚を扱った調理器具を使い回さない 食品を室温に長時間置かない 冷蔵・冷凍が必要な食品は早めに冷蔵庫・冷凍庫に保存する 肉や魚は中心部まで十分に加熱する 残った食品は早めに冷やし、十分に再加熱して食べる 消費期限を確認する 体調不良時は調理を控える 訪問看護では、利用者さんや家族の調理環境、冷蔵庫の管理、食事の保存方法なども確認できる範囲で見ておくとよいでしょう。 まとめ 食中毒では、下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状がみられます。原因によって、食後すぐに症状が出る場合もあれば、数日後に発症する場合もあります。在宅ケアでは、症状だけでなく、発症した時間、食べたもの、下痢や嘔吐の回数、水分摂取量、尿量、普段との違いを確認することが大切です。血便、強い腹痛、高熱、水分が取れない、尿量が少ない、ぐったりしているなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。食中毒は、予防と早期対応が重要です。日ごろから手洗い、食品の適切な保存、十分な加熱を意識し、症状が出たときには脱水や重症化のサインを見逃さないようにしましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● 厚生労働省:「食中毒」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html,2026/8/10閲覧● 厚生労働省:「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/norovirus.html,2026/8/10閲覧● 厚生労働省:「食事にひそむキケン~おいしく安全に食べるヒント」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202406_003.html,2026/8/10閲覧● 政府広報オンライン:「食中毒予防の原則と6つのポイント」https://www.gov-online.go.jp/article/20110602/entry-8196.html,2026/8/10閲覧● CDC:「Food Poisoning Symptoms」https://www.cdc.gov/food-safety/signs-symptoms/index.html,2026/8/10閲覧

ヘルパンギーナと溶連菌の見分け方
ヘルパンギーナと溶連菌の見分け方
コラム
2026年8月12日
2026年8月12日

ヘルパンギーナと溶連菌の見分け方|症状の違いと受診目安

ヘルパンギーナと溶連菌感染症は、どちらも発熱やのどの痛みがみられる病気です。症状が似ているため、「どちらなのか見分けにくい」と感じることもあります。 ただし、ヘルパンギーナは主にウイルスが原因で、のどの奥に水疱や潰瘍がみられやすい病気です。一方、溶連菌感染症は細菌が原因で、急なのどの痛みや発熱、扁桃の腫れ、首のリンパ節の腫れなどがみられます。この記事では、ヘルパンギーナと溶連菌感染症の違い、観察ポイント、受診の目安を解説します。 ヘルパンギーナとは ヘルパンギーナは、発熱とのどの痛み、口の中の水疱を特徴とする感染症です。乳幼児を中心に、夏に流行しやすい「夏かぜ」のひとつとされています。主な原因はコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスです。 厚生労働省によると、ヘルパンギーナは感染してから2〜4日後に突然の発熱が起こり、その後、のどの痛みや水疱が現れます。発熱は1〜3日続くことが多く、食欲不振、全身のだるさ、頭痛などを伴うこともあります。 のどの奥に小さな水疱や潰瘍ができるため、飲み込むときに痛みが強くなり、水分や食事を取りにくくなることがあります。小児では、脱水症に注意が必要です。 溶連菌感染症とは 溶連菌感染症は、主にA群β溶血性レンサ球菌という細菌によって起こる感染症です。感染すると、急な発熱や強いのどの痛み、飲み込むときののどの痛み、扁桃が赤く腫れるなどの症状がみられ、首の前側のリンパの腫れ、口蓋の赤い点状出血、扁桃の白い付着物といった特徴的な症状が出現することもあります。 溶連菌感染症は細菌感染のため、A群β溶血性レンサ球菌による扁桃咽頭炎では、医師の判断により抗菌薬が投与されることがあります。 見分けるポイント ヘルパンギーナと溶連菌感染症は、症状だけで完全に見分けることは難しい場合があります。ただし、観察のポイントを整理すると、違いを把握しやすくなります。 項目ヘルパンギーナ溶連菌感染症原因主にウイルス主に細菌流行時期夏に多い冬季と春から初夏の2つの流行ピークがある年齢乳幼児に多い学童期の子どもに多い発熱突然の高熱がみられ、発熱は1~3日続く急な発熱が多いが、通常発熱は3~5日以内に下がるのどの所見のどの奥に水疱・潰瘍扁桃の腫れ、白い付着物咳・鼻水みられることがある目立たないことが多い治療対処療法が中心抗菌薬が必要な場合がある ヘルパンギーナでは、のどの奥の水疱や潰瘍が特徴です。一方、溶連菌感染症では、扁桃の腫れや白い付着物、首の前側のリンパ節の腫れなどが手がかりになります。 ただし、実際には症状が重なることもあります。家庭や在宅ケアの現場で「ヘルパンギーナだ」「溶連菌だ」と断定せず、症状の経過や全身状態を確認し、必要に応じて受診につなげることが大切です。 受診を考えたい症状 溶連菌感染症では、扁桃周囲膿瘍などの局所化膿性合併症やリウマチ熱、糸球体腎炎に至ることがあるため、早期に診断し抗菌薬投与する必要があるとされています。そのため、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 水分がほとんど取れない 尿の回数が明らかに少ない ぐったりしている 呼びかけへの反応が弱い 高熱が続く のどの痛みが強く、飲み込めない 発疹がある 首の腫れや強い痛みがある 呼吸が苦しそう けいれんがある ヘルパンギーナでは、のどの痛みによって水分摂取が難しくなり、脱水症につながることがあります。厚生労働省も、ヘルパンギーナの合併症として、熱性けいれん、脱水症、小児ではまれに髄膜炎や心筋炎などへの注意を挙げています。 在宅での観察ポイント 訪問看護や在宅ケアでは、病名を見分けることよりも、利用者さんや子どもの状態を具体的に観察することが重要です。 確認したいポイントは、以下のとおりです。 発熱がいつからあるか 最高体温 のどの痛みの程度 水分摂取量 食事量 尿量や尿の回数 口の中の水疱や潰瘍の有無 扁桃の腫れや白い付着物の有無 咳や鼻水の有無 発疹の有無 家族や園、学校での流行状況 活気の低下や意識状態の変化 記録する場合は、以下のように、症状と経過を具体的に書くと共有しやすくなります。 「昨日夕方から発熱。最高体温39.0度。のどの痛みが強く、水分摂取は少量。口腔内奥に小さな水疱様の所見あり。尿は朝から1回のみ。」 「本日朝から発熱とのどの痛みあり。咳・鼻水は目立たない。扁桃に白い付着物あり。首の前側に圧痛あり。食事摂取は半分程度。」 このように記録すると、医師や看護師に状況を伝えやすくなります。 家庭で気をつけたいこと ヘルパンギーナでも溶連菌感染症でも、発熱やのどの痛みがあるときは、無理に食事を取らせるよりも、水分摂取を優先します。冷たい飲み物、ゼリー、スープなど、のどにしみにくく飲み込みやすいものを選ぶとよいでしょう。 酸味の強い飲み物や熱い食べ物は、のどや口の中の痛みを強めることがあります。食事量が少なくても、水分が取れていて尿が出ているかを確認します。 溶連菌感染症が疑われる場合は、検査や治療が必要になることがあります。自己判断で市販薬だけで様子を見るのではなく、症状や流行状況に応じて医療機関へ相談しましょう。 まとめ ヘルパンギーナと溶連菌感染症は、どちらも発熱とのどの痛みがみられるため、見分けにくいことがあります。ヘルパンギーナは、夏に乳幼児を中心に流行し、のどの奥の水疱や潰瘍が特徴です。溶連菌感染症は、急なのどの痛み、発熱、扁桃の腫れ、首のリンパ節の腫れなどが手がかりになります。 ただし、症状だけで正確に判断することは難しいため、家庭や在宅ケアの現場では、病名を決めつけず、発熱の経過、水分摂取量、尿量、のどの所見、全身状態を観察することが大切です。ぐったりしている、水分が取れない、高熱が続くなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 厚生労働省:「ヘルパンギーナ」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/herpangina.html2026/8/12閲覧 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「ヘルパンギーナ(詳細版)」.https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/herpangina/010/index.html2026/8/12閲覧 CDC:「About Strep Throat」.https://www.cdc.gov/group-a-strep/about/strep-throat.html2026/8/12閲覧 MSDマニュアル プロフェッショナル版:「扁桃咽頭炎」.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/口腔咽頭疾患/扁桃咽頭炎2026/8/12閲覧 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「A群溶血性レンサ球菌感染症」.https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/group-a-streptococcal-infection/index.html2026/8/12閲覧 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「IDWR 2023年第43号<注目すべき感染症> A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」.https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/featured/2023/43/index.html2026/8/12閲覧 MSDマニュアル プロフェッショナル版:「扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎」.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/口腔咽頭疾患/扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎2026/8/12閲覧

熱中症対策義務化とは?職場で必要な対応
熱中症対策義務化とは?職場で必要な対応
特集
2026年7月28日
2026年7月28日

熱中症対策義務化とは?職場で必要な対応

2025年6月1日から、職場における熱中症対策が強化されました。労働安全衛生規則の改正により、熱中症のおそれがある作業を行う事業者には、報告体制の整備、対応手順の作成、関係者への周知が義務付けられています。訪問看護の現場でも、夏場の移動、屋外での待機、空調が十分でない居宅でのケアなど、熱中症リスクが高まる場面があります。この記事では、熱中症対策義務化の概要と、訪問看護ステーションで確認したい対応ポイントを解説します。 熱中症対策義務化とは 熱中症対策義務化とは、職場で熱中症のおそれがある作業を行う場合に、事業者が重症化を防ぐための体制や手順を整えることを義務付けたものです。厚生労働省の資料では、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、状況に応じて迅速かつ適切に対応するため、「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられたと説明されています。 つまり、単に水分補給を呼びかけるだけではなく、熱中症が疑われる人が出たときに、誰へ報告し、誰が判断し、どのように医療機関へつなぐのかを、あらかじめ決めておく必要があります。 対象となる作業 義務化の対象は、熱中症を生ずるおそれのある作業です。具体的には、暑さ指数であるWBGT値が28度以上、または気温31度以上の環境で、連続1時間以上、または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業とされています。 訪問看護では、屋外作業が中心ではなくても、以下のような場面で注意が必要です。 夏場の自転車や徒歩での訪問 炎天下での移動や待機 空調が十分でない居宅でのケア 入浴介助や清拭など、身体的負担が大きいケア 防護具やマスクを着用した状態でのケア 連続訪問で休憩が取りにくい勤務 室内であっても、温度や湿度が高い場合は熱中症のリスクがあります。「屋外ではないから大丈夫」と考えず、訪問先や移動中の環境も含めて確認することが大切です。 事業者に求められる3つの対応 報告体制を整備する まず必要なのは、熱中症の自覚症状があるスタッフや、熱中症のおそれがあるスタッフを見つけた人が、すぐに報告できる体制を作ることです。 たとえば、以下のような内容を決めておきます。 報告先の担当者 報告する連絡手段 担当者が不在の場合の連絡先 訪問中に症状が出た場合の連絡方法 直行直帰時の報告ルール 訪問看護では、スタッフが1人で移動し、1人で利用者さん宅を訪問する場面が多くあります。そのため、事務所内だけでなく、外出中でもすぐに連絡できる体制を整えることが重要です。 対応手順を作成する 次に、熱中症が疑われる場合の対応手順を作成します。環境省の資料でも、熱中症のおそれがある作業者を把握した場合に、迅速かつ的確な判断ができるよう、必要な措置の内容や実施手順を定めることが求められています。 手順には、以下のような内容を含めるとよいでしょう。 涼しい場所へ移動する 衣服をゆるめる 水分・塩分を補給する 体を冷やす 意識状態を確認する 改善しない場合は医療機関へ相談する 意識障害がある場合はためらわずに救急要請をする 特に、意識がぼんやりしている、受け答えがおかしい、自力で水分を取れない、症状が改善しないといった場合は、早急な対応が必要です。 関係者へ周知する 体制や手順を作成しても、スタッフが内容を知らなければ現場で使えません。そのため、作成したルールを関係者へ周知することも義務化の重要なポイントです。厚生労働省は、報告体制や対応手順をあらかじめ定め、関係作業者に周知することを求めています。 周知方法としては、以下が考えられます。 朝礼やミーティングで共有する マニュアルに記載する 事務所内に掲示する チャットツールで共有する 訪問バッグに対応フローを入れる 新人研修や夏前の研修で説明する 訪問看護では、常勤スタッフだけでなく、非常勤スタッフやオンコール担当者にも同じ情報が伝わるようにすることが大切です。 訪問看護で確認したい熱中症対策 訪問看護ステーションでは、スタッフ自身の熱中症対策と、利用者さんの熱中症予防の両方を考える必要があります。 スタッフ向けには、訪問スケジュールの調整、休憩時間の確保、飲料の携帯、移動手段の見直し、暑さ指数の確認などが有効です。環境省が提供する暑さ指数の情報も、日々の判断に役立ちます。厚生労働省の職場における熱中症予防情報では、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」など、職場での熱中症予防に関する情報が掲載されています。 利用者さんについては、室温、湿度、水分摂取量、尿量、食事量、発汗、意識状態などを観察します。高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくいことがあり、エアコンを使わずに過ごしている場合もあります。訪問時には、室温だけでなく、生活環境や家族のサポート状況も確認しましょう。 記録・報告のポイント 熱中症の疑いがある場合は、症状だけでなく、発生した状況も記録します。 たとえば、以下のように整理します。「13時ごろ、訪問移動後に頭痛と強い倦怠感あり。気温32度。水分摂取は午前中に約300mL。事務所へ報告し、涼しい場所で休憩。水分・塩分補給後もふらつきが残るため、管理者判断で受診を調整。」 利用者さんの場合は、以下のように記録します。「訪問時、室温30度、エアコン未使用。発汗あり、口渇の訴えあり。尿量は昨日より少ないとのこと。意識レベルは普段と変わりなく、食事と水分は経口摂取できそうと仰っている。水分摂取を促し、また、家族による室温管理と定期的な水分補給の声掛けを依頼した。主治医へ報告。」 「いつ」「どこで」「どのような症状があり」「どのように対応したか」を残すことで、再発予防やチーム内共有にもつながります。 まとめ 熱中症対策義務化により、職場では熱中症のおそれがある作業に対して、報告体制の整備、対応手順の作成、関係者への周知が求められるようになりました。訪問看護では、夏場の移動や空調が十分でない居宅でのケアなど、熱中症リスクが高まる場面があります。スタッフが安全に働ける環境を整えることは、利用者さんへ安定したケアを届けるためにも重要です。 熱中症対策は、個人の注意だけに任せるものではありません。事業所としてルールを整え、スタッフ全員が同じ手順で動けるようにしておくことが、重症化の予防につながります。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● 厚生労働省:「職場における熱中症対策の強化について」.https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf,2026/5/30閲覧● 厚生労働省:「職場における熱中症予防情報」.https://neccyusho.mhlw.go.jp/,2026/5/30閲覧● 富山労働局:「職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)」.https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/news_topics/oshirase/0706nechushokyoka.html,2026/5/30閲覧● 鹿児島労働局:「職場における熱中症対策の強化について」.https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/nettyusyou/2025-0418-7.html,2026/5/30閲覧● 環境省:「熱中症の対処方法(応急処置)」.https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php,2026/7/13閲覧● 厚生労働省:「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html,2026/7/21閲覧

血尿スケールとは?尿色観察の基本
血尿スケールとは?尿色観察の基本
コラム
2026年7月21日
2026年7月21日

血尿スケールとは?尿色観察の基本

血尿スケールとは、肉眼で確認できる血尿の程度を、尿の色で段階的に評価するための目安です。訪問看護や介護の現場では、利用者さんの尿の色が「いつもより赤い」「茶色っぽい」といった変化に気づくことがあります。 血尿は一時的な体調変化でみられることもありますが、尿路感染症、尿路結石、腎臓や膀胱の病気などが関係している場合もあります。そのため、色の変化だけで判断せず、痛みや発熱、排尿状態などもあわせて観察することが大切です。この記事では、血尿スケールの見方や観察ポイント、医師へ報告する際の注意点を解説します。 血尿スケールとは 血尿スケールとは、尿に血液が混じっている可能性があるときに、尿の色を段階的に確認するための視覚的な目安です。一般的には、肉眼で確認できる血尿を、淡いピンク色から濃い赤色、茶褐色に近い色まで、5〜6段階で評価します。NsPaceの用語集でも、血尿スケールは肉眼的血尿の程度を色によって分類する視覚的基準として説明されています。 血尿には、大きく分けて「肉眼的血尿」と「顕微鏡的血尿」があります。肉眼的血尿は、尿の色の変化として目で確認できる血尿です。一方、顕微鏡的血尿は見た目では分からず、尿検査で確認される血尿です。訪問看護や介護の現場で気づきやすいのは、尿の色が赤い、ピンク色、茶色っぽいなどの肉眼的な変化です。 血尿スケールの見方 血尿スケールは、施設や資料によって段階の分け方が異なる場合があります。ここでは、在宅ケアの現場で観察しやすいように、6段階の目安として整理します。 段階尿の色の目安観察のポイント1段階淡いピンク色少量の血液混入が疑われる2段階やや濃い赤色血尿がはっきり分かる3段階明るい赤色早めの報告を検討する4段階濃い赤色・暗赤緊急性が高い可能性がある5段階鮮血に近い赤色出血量が多い可能性がある6段階茶褐色・黒っぽい色古い血液や別の異常も考える 血尿スケールは、尿の色を客観的に伝えるための補助的な指標です。色が濃いほど注意が必要ですが、色だけで重症度を決めることはできません。血尿が少量でも、初めてみられた場合や症状を伴う場合は、医療職へ相談することが望ましいとされています。 血尿で確認したい症状 血尿を見つけたときは、尿の色だけでなく、ほかの症状もあわせて確認します。特に、以下のような症状がある場合は注意が必要です。 排尿時の痛み 頻尿 残尿感 発熱 腰や背中の痛み 下腹部痛 尿量の減少 血の塊が混じる 尿が出にくい 転倒や打撲後の血尿 血尿の原因には、尿路感染症、尿路結石、腎臓の病気、膀胱の病気、外傷、激しい運動などさまざまなものがあります。血尿は軽視せず、原因の確認につなげることが大切です。 また、赤っぽい尿が必ずしも血尿とは限りません。薬剤やビーツ、ルバーブなどの食品によって尿が赤く見えることもあり、血液による色の変化か判断しにくい場合があるため、確認を受けることが大切です。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、利用者さんの普段の尿の色や排尿パターンを知っておくことが大切です。急な変化があった場合は、血尿スケールの段階だけでなく、「いつから」「どのくらい」「どのような症状を伴うか」を確認します。 たとえば、以下のように観察します。 「本日朝から尿が淡いピンク色。排尿時痛なし。発熱なし。尿量は普段と同程度。血尿スケール1段階程度。」 「訪問時、尿が暗赤色。血の塊あり。下腹部痛を訴える。尿が出にくい様子あり。血尿スケール4段階程度。」 このように記録すると、医師や看護師に状況を共有しやすくなります。特に、尿の色が急に濃くなった場合、血の塊がある場合、痛みや発熱を伴う場合、尿が出にくい場合は、早めに医師へ報告することが望ましいです。 医師へ報告するときの内容 血尿がみられたときは、以下の内容を整理して報告すると、状態が伝わりやすくなります。 血尿に気づいた日時 尿の色と血尿スケールの目安 血の塊の有無 排尿時痛や頻尿の有無 発熱の有無 腰背部痛や腹痛、叩打痛の有無 血圧・脈拍・SpO2 尿量の変化 転倒や打撲の有無 服薬状況 既往歴 水分摂取量 普段の尿色との違い 血尿は、症状が軽く見えても原因の確認が必要な場合があります。尿がピンク、赤、茶色に変化した場合は、医師に相談した方がよいです。 血尿スケールを使うときの注意点 血尿スケールは便利な目安ですが、診断を行うためのものではありません。尿の色は、採尿容器の色、照明、水分摂取量、薬剤、食品などの影響を受けることがあります。また、茶色っぽい尿は血尿以外に、ミオグロビン尿やビリルビン尿などが関係する場合もあります。尿色の異常には複数の原因があるため、尿検査などで確認することが重要です。 在宅では、無理に原因を判断するのではなく、利用者さんの状態を具体的に観察し、必要に応じて医師や看護師につなぐことが大切です。 まとめ 血尿スケールは、尿に血液が混じっている可能性があるときに、尿の色を段階的に把握するための目安です。訪問看護や介護の現場では、尿の色の変化を早く見つけ、普段との違いを具体的に記録することが重要です。 ただし、血尿スケールだけで重症度や原因を判断することはできません。排尿時の痛み、発熱、腰痛、血の塊、尿が出にくいなどの症状がある場合は、早めに医師へ報告しましょう。血尿の観察では、「色」「量」「症状」「経過」をセットで確認することが、利用者さんの安全を守るために役立ちます。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 NsPace:「血尿スケール」.https://www.ns-pace.com/glossary/hematuria-scale/2026/7/17閲覧 NHS:「Blood in urine」.https://www.nhs.uk/symptoms/blood-in-urine/2026/7/17閲覧 Mayo Clinic:「Blood in urine(hematuria)」.https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/blood-in-urine/symptoms-causes/syc-203534322026/7/17閲覧 Cleveland Clinic:「Hematuria」.https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15234-hematuria2026/7/17閲覧 PMC:「Diagnostic Approach to Abnormal Urine Colors」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC12066962/2026/7/17閲覧 日本感染症学会:「腎盂腎炎(Pyelonephritis)|症状からアプローチするインバウンド感染症への対応」.https://www.kansensho.or.jp/ref/d32.html2026/7/17閲覧

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本
GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本
特集
2026年7月14日
2026年7月14日

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本

訪問看護の現場において、利用者さんの意識レベルに変化があったとき、そのことを客観的に評価することは重要です。この記事では、GCSの基本的な考え方や評価項目、JCSとの違い、訪問看護師が意識状態を観察するときのポイントを解説します。 GCSとは GCSとは、Glasgow Coma Scale(グラスゴー・コーマ・スケール)の略称です。意識レベルを評価するためのスケールで、主に頭部外傷や脳血管障害など、意識状態の変化が重要になる場面で用いられます。 GCSでは、以下の3つの反応を確認します。 E:Eye opening/開眼反応 V:Verbal response/言語反応 M:Motor response/運動反応 それぞれの項目に点数をつけ、合計点で意識レベルを評価します。合計点は3〜15点で、点数が高いほど意識状態が良好で、点数が低いほど意識障害が強いと判断されます。 GCSの評価項目 GCSは、単に「起きているか」「眠っているか」だけを見るものではありません。開眼反応、会話の成立、指示への反応などを分けて確認することで、意識状態をより具体的に把握します。 E:開眼反応 開眼反応では、利用者さんがどのような刺激で目を開けるかを確認します。 点数状態4点自発的に開眼する3点呼びかけで開眼する2点痛み刺激で開眼する1点開眼しない 普段から目を開けて会話できる方が、呼びかけても目を開けにくい場合は、意識レベルの低下が疑われます。ただし、眠気、薬剤の影響、疲労、視覚障害などが関係することもあるため、普段の状態との違いを確認することが大切です。 V:言語反応 言語反応では、会話の内容や受け答えの適切さを確認します。 点数状態5点見当識がある4点混乱した会話がある3点不適切な発語がある2点意味のない発声がある1点発語がない 「今日は何月何日か」「ここはどこか」「名前を言えるか」などを確認し、受け答えが状況に合っているかを見ます。会話ができていても、話の内容がかみ合わない、急に混乱が強くなった、言葉が出にくいなどの変化がある場合は注意が必要です。 M:運動反応 運動反応では、指示に対して体を動かせるか、刺激に対してどのような反応があるかを確認します。 点数状態6点指示に従って動く5点痛み刺激の部位に手を持っていく4点痛み刺激から逃げるように動く3点異常な屈曲反応がある2点異常な伸展反応がある1点反応がない 運動反応は、GCSの中でも重症度の判断に関わる重要な項目です。たとえば「右手を握ってください」「足を動かしてください」といった簡単な指示に反応できるかを確認します。痛み刺激を用いる評価は、医療職が状態や安全性を確認したうえで行う必要があります。 GCSの点数の見方 GCSは、E・V・Mの点数を合計して評価します。たとえば、開眼反応が4点、言語反応が5点、運動反応が6点であれば、合計は15点です。記録するときは、合計点だけでなく、各項目の内訳も書くことが大切です。例:GCS 15点(E4V5M6)例:GCS 10点(E3V3M4)合計点だけでは、どの反応が低下しているのか分かりにくい場合があります。同じ10点でも、言語反応が低いのか、運動反応が低いのかによって、状態の捉え方が変わります。そのため、GCSは合計点とあわせて、E・V・Mの内訳を伝えることが重要です。GCSの公式資料でも、合計点だけでなく開眼・言語・運動の3要素をそれぞれ報告することの重要性が示されています。 GCSとJCSの違い 日本の医療現場では、GCSとあわせてJCS(Japan Coma Scale)が使われることもあります。JCSは、日本で広く用いられている意識レベルの評価法で、刺激に対する覚醒の程度を数字で表します。一方、GCSは開眼、言語、運動の3つの反応をそれぞれ点数化します。そのため、JCSよりも評価項目が細かく、意識状態の変化を具体的に共有しやすいという特徴があります。ただし、GCSは評価に慣れが必要です。とくに訪問看護の現場では、利用者さんのもともとの認知機能、発語の状態、麻痺の有無、難聴、失語、気管切開の有無などによって、正確に評価しにくいことがあります。その場合は、無理に点数化するのではなく、「普段と比べてどう違うか」を具体的に記録することが大切です。 訪問看護の現場で観察したいポイント 訪問看護の現場では、GCSの点数をつけること自体が目的ではありません。大切なのは、利用者さんの普段の状態を知ったうえで、変化に早く気づくことです。 たとえば、以下のような変化がある場合は注意が必要です。 呼びかけへの反応が鈍い 目を開けにくい 会話がかみ合わない 急にぼんやりしている 手足の動きに左右差がある いつもできる指示に従えない 強い頭痛、嘔吐、けいれんを伴う 転倒後に意識がはっきりしない これらの変化がある場合は、バイタルサイン、転倒や頭部打撲の有無、服薬状況、発熱、脱水、血糖異常の可能性などもあわせて確認します。特に、急な意識レベルの低下や麻痺、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、速やかに医師や救急へ相談する必要があります。 GCSを記録するときの注意点 GCSを記録するときは、点数だけでなく、観察した状況も残しておくと情報共有がしやすくなります。たとえば、以下のように記録します。「訪問時、呼びかけで開眼。名前は言えるが、場所の理解があいまい。右手を握る指示には応じる。GCS 13点(E3V4M6)。普段は会話明瞭で見当識あり。」このように書くと、点数だけでなく、普段との違いも伝わります。医師や救急隊へ連絡する際にも、状態の変化を具体的に説明しやすくなります。また、気管切開や挿管などで発語が難しい場合は、言語反応を「発語なし」として1点にするのではなく、評価不能(NT)として扱い、その理由を記録します。あわせて、頷き、首振り、ジェスチャー、筆談などで意思疎通ができるか、指示に応じられるかといった観察内容も残します。たとえば「気管切開中のためVは評価不能(V-NT)。呼びかけで開眼し、頷きで意思表示あり。右手を握る指示に応じる」のように記録すると、点数だけでは伝わりにくい実際の反応を共有しやすくなります。GCSでは、点数そのものだけでなく、評価できなかった理由と、実際に観察できた反応を明確に記録することが重要です。 まとめ GCSは、意識レベルを開眼、言語反応、運動反応の3つに分けて評価する指標です。合計点は3〜15点で、点数が低いほど意識障害が強いと考えられます。訪問看護の現場では、GCSの点数を正確につけることだけでなく、利用者さんの普段の様子との違いを把握することが大切です。呼びかけへの反応、会話の内容、指示への反応などを観察し、急な変化がある場合は早めに医師や救急へ相談しましょう。GCSを理解しておくことで、意識状態の変化をより客観的に伝えやすくなります。訪問看護や介護の現場でも、利用者さんの安全を守るための観察ポイントとして役立つ指標です。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 ● StatPearls:「Glasgow Coma Scale」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK513298/,2026/5/25閲覧● Glasgow Coma Scale Official Site:「Assessment of Glasgow Coma Scale」.https://www.glasgowcomascale.org/,2026/5/25閲覧● BrainLine:「What Is the Glasgow Coma Scale?」.https://www.brainline.org/article/what-glasgow-coma-scale,2026/5/25閲覧● 日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会†「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/21/5/21_539/_pdf/-char/ja, 2026/07/06閲覧

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