初めての訪問看護に関する記事

夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント
夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント
コラム
2026年9月8日
2026年9月8日

夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント

夏インフルエンザとは、夏にインフルエンザウイルスへ感染し、発熱、咳、のどの痛み、倦怠感などがみられる状態を指して使われる言葉です。正式な病名として「夏インフルエンザ」があるわけではなく、夏に発症するインフルエンザを分かりやすく表した呼び方です。 インフルエンザは冬に流行するイメージが強いですが、夏でも感染することがあります。夏風邪や熱中症、新型コロナウイルス感染症などと症状が似ていることもあるため、体調の変化を具体的に観察することが大切です。この記事では、夏インフルエンザの症状、原因、見分け方、受診の目安、在宅での観察ポイントを解説します。 夏インフルエンザとは 夏インフルエンザとは、夏に発症するインフルエンザのことです。厚生労働省によると、日本では例年12月〜3月がインフルエンザの流行シーズンですが、ウイルスは世界中で流行しており、地域によっては年間を通して感染がみられることがあります。温帯地域では冬に流行しやすく、熱帯地域では年間を通じて発生することがあります。 夏にインフルエンザがみられる背景の一つに、南半球での流行があります。東京都健康安全研究センターによると、日本を含む北半球が夏の季節のとき、南半球は冬にあたり、インフルエンザが流行する季節を迎えています。 「夏だからインフルエンザではない」とは言い切れません。高熱、強い倦怠感、関節痛、咳などがある場合は、季節に関係なくインフルエンザを含む急性呼吸器感染症を考える必要があります。 夏インフルエンザの症状 夏インフルエンザの症状は、冬にみられるインフルエンザと大きく変わりません。突然の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感に加え、咳、のどの痛み、鼻水などの呼吸器症状がみられることがあります。 主な症状には、以下があります。 発熱 悪寒 頭痛 関節痛 筋肉痛 強い倦怠感 咳 のどの痛み 鼻水 なお、悪心・嘔気や下痢などの消化器症状は、成人でみられることもありますが、特に小児で多いとされています。 多くの場合、症状は3〜7日で軽快に向かいますが、特に高齢者や慢性肺疾患の方では、咳やだるさが2週間以上続くこともあります。また、高齢者では発熱がはっきりしないことや、意識・行動の変化、食欲低下といった典型的でない形で現れることもあります。合併症として肺炎などが起こる場合もあるため、高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患のある方は特に注意が必要です。 夏風邪や熱中症との違い 夏インフルエンザは、夏風邪や熱中症と症状が似ていることがあります。発熱、だるさ、頭痛などは共通してみられるため、症状だけで見分けるのは難しい場合があります。 夏風邪では、のどの痛み、咳、鼻水、下痢、口の中の水疱、発疹などがみられることがあります。一方、インフルエンザでは、急な高熱、強い倦怠感、関節痛、筋肉痛が目立つことがあります。 熱中症では、暑い環境にいた後に、めまい、頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、体温上昇、意識の変化などが起こることがあります。咳やのどの痛みがある場合は、感染症の可能性もあわせて考えます。 ただし、家庭や訪問看護の現場で病名を断定することはできません。発熱の経過、呼吸器症状、周囲の流行状況、水分摂取量、尿量、意識状態をあわせて確認し、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。 うつる期間と感染対策 インフルエンザは、咳やくしゃみのしぶき、ウイルスがついた手を介して広がることがあります。厚生労働省によると、発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。発症前後から周囲へ感染を広げる可能性があるため、症状があるときは無理に出勤や登校をしないことが大切です。感染対策では、以下を意識します。 手洗いを行う 咳エチケットを守る 不織布製マスクを適切に使う 室内を換気する タオルの共有を避ける 体調不良時は人との接触を控える 十分な休養を取る 咳や痰などの症状がある場合は、周囲への感染を防ぐため、マスクの着用を含む咳エチケットが重要です。また、手のひらで咳やくしゃみを受け止めたときは、すぐに手を洗いましょう。 治療の基本と抗ウイルス薬 インフルエンザの治療では、症状や重症化リスクに応じて抗インフルエンザ薬が使われることがあります。発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱期間は通常1〜2日短縮されるとされ、重い合併症を防ぐことにつながる場合もあります。 一方で、軽症で重症化リスクが低い場合は、安静、水分補給、解熱鎮痛薬などによる対症療法で経過をみることもあります。自己判断で以前に処方された薬を使ったり、薬を途中で中止したりせず、医師や薬剤師の指示に従いましょう。 発熱時は汗で水分が失われやすく、夏は暑さによる脱水も重なりやすい時期です。水分が取れているか、尿量が減っていないかを確認します。心不全や腎機能低下などで水分制限がある方は、自己判断で水分量を増やさず、医師や看護師に確認しましょう。 何科を受診する?受診の目安 夏インフルエンザが疑われる場合は、内科、小児科、呼吸器内科などで相談できます。かかりつけの病院があれば、主治医に相談すると日頃の状況と合わせて診察してもらうことができます。受診前には、発熱や咳があることを医療機関へ伝え、受診方法を確認すると安心です。以下のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 高熱が続く 呼吸が苦しい 咳が止まらない 胸の痛みがある 水分が取れない 尿量が少ない ぐったりしている 意識がぼんやりしている けいれんがある 乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方に症状がある 厚生労働省も、高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪い場合は、早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。 訪問看護での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、発熱の有無だけでなく、呼吸状態や脱水のサイン、普段との違いを確認します。 観察したいポイントは、以下のとおりです。 発熱の有無と出現時期 最高体温 咳や痰の有無 のどの痛みの有無 息苦しさの有無 呼吸数 SpO2 食事量 水分摂取量 尿量や尿の回数 倦怠感の程度 意識状態 周囲の感染症の流行状況 服薬状況 基礎疾患の有無 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。「昨日18時ごろから発熱あり。最高体温38.9℃。咳とのどの痛みあり。水分は少量ずつ摂取可能。尿は朝から1回。家族にインフルエンザ陽性者あり。」「発熱2日目。体温39.0℃。倦怠感が強く、食事摂取は数口程度。SpO2 94%。呼吸苦の訴えはないが、普段より声掛けに対して反応が遅い。主治医へ報告。」このように、「いつから」「どの症状が」「普段と比べてどう違うか」を整理すると、医師に状態を伝えやすくなります。 訪問看護でできる予防のポイント 夏インフルエンザの予防でも、基本は冬のインフルエンザ対策と同じです。手洗い、咳エチケット、換気、十分な休養、栄養摂取、人混みを避けることなどが有効と考えられています。 予防のポイントは、以下のとおりです。 外出後や食事前に手を洗う 咳やくしゃみがあるときは口と鼻を覆う 室内をこまめに換気する 睡眠不足を避ける 体調不良時は無理をしない 人混みでは感染対策を意識する 流行状況に応じてワクチン接種を検討する ワクチンは、発症を完全に防ぐものではありませんが、重症化予防につながることがあります。特に高齢者や基礎疾患のある方は、接種時期や対象について、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。 まとめ 夏インフルエンザは正式な病名ではなく、夏に発症するインフルエンザを指す言い方です。インフルエンザの流行の中心は冬ですが、季節を問わず感染することがあります。主な症状は、発熱、悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、強い倦怠感、咳、のどの痛みなどです。ほかの夏の体調不良と区別しにくいため、症状だけで判断せず、経過や周囲の流行状況もあわせて確認しましょう。訪問看護では、発熱、呼吸状態、SpO2、水分摂取量、尿量、意識状態、普段との違いを観察することが大切です。高熱が続く、息苦しい、水分が取れない、ぐったりしている、意識がはっきりしない場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● WHO:「Influenza (seasonal)」.https://www.who.int/health-topics/influenza-seasonal,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2025.html,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「令和6年度インフルエンザQ&A」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html,2026/9/7閲覧 ● 厚生労働省:「インフルエンザ(総合ページ)」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Clinical Signs and Symptoms of Influenza」.https://www.cdc.gov/flu/hcp/clinical-signs/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Treatment of Flu」.https://www.cdc.gov/flu/treatment/index.html,2026/9/7閲覧 ● CDC:「Preventing Seasonal Flu」.https://www.cdc.gov/flu/prevention/index.html,2026/9/7閲覧 ● 東京都健康安全研究センター:「世界でのインフルエンザの発生状況」.https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_virus/influenza_world/,2026/9/7閲覧● 東京都多摩小平保健所:「【医療機関・学校・社会福祉施設等の皆様へ】平常時対策について」.https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamakodaira/kansen/heijojitaisaku,2026/9/7閲覧● 厚生労働省:「夏の感染症対策」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kansentaisaku_summer.html,2026/9/7閲覧● 厚生労働省:「職場でおこる熱中症」.https://neccyusho.mhlw.go.jp/heatstroke/,2026/9/7閲覧

帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説
帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説
コラム
2026年9月8日
2026年9月8日

帯状疱疹とは?症状・原因・治療を解説

帯状疱疹とは、体の片側に痛みやピリピリした違和感が出たあと、赤い発疹や水疱が帯状に現れる病気です。原因は、水痘と同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(以下varicella zoster virus;VZV)です。子どものころなどに水痘にかかったあと、体内に潜んでいたウイルスが再び活動することで発症します。帯状疱疹は、早めに治療を始めることで症状の長期化や合併症のリスクを減らせる可能性があります。この記事では、帯状疱疹の症状、原因、うつる可能性、治療、訪問看護での観察ポイントを解説します。 帯状疱疹とは 帯状疱疹は、VZVによって起こる皮膚疾患です。VZVは、初めて感染したときに水痘を発症します。その後、ウイルスは神経節に潜伏し、加齢や疲労、病気、免疫機能の低下などをきっかけに再活性化することがあります。帯状疱疹は、この再活性化によって起こります。帯状疱疹の特徴は、体の左右どちらか一方に、神経の走行に沿って痛みや発疹が出ることです。胸や背中、腹部に出ることが多いですが、顔や首、腕、足に出ることもあります。また、皮膚症状だけでなく、神経痛をともなう点が特徴です。 帯状疱疹の初期症状 帯状疱疹の初期症状では、発疹が出る前に痛みや違和感が現れることがあります。東京都感染症情報センターでは、通常、皮膚症状の出現2〜3日前から、かゆみや痛みが出現し、初期には皮膚が赤く腫れると説明しています。初期症状としては、以下のようなものがあります。 皮膚がピリピリする チクチクした痛みがある かゆみがある 触れると痛い 体の片側だけに違和感がある 発赤が出る 倦怠感の有無 軽い発熱がある 初期には発疹がまだ目立たないため、筋肉痛、肩こり、腰痛、虫刺され、かぶれなどと間違えられることがあります。特に、片側だけにピリピリした痛みが続く場合や、その後に赤い発疹や水疱が出てきた場合は、帯状疱疹の可能性があります。 帯状疱疹の症状 帯状疱疹では、痛みや違和感のあとに、赤い発疹や水疱が現れます。水疱は神経に沿って帯状に並ぶことが多く、数日かけて増える場合があります。 主な症状は以下のとおりです。 体の片側に出る痛み 赤い発疹 水疱 かゆみ 皮膚の灼熱感 触れるだけで痛い感覚 発熱 頭痛 倦怠感 多くの場合は適切な治療によって改善しますが、強い痛みを伴うことがあります。また、免疫機能が低下している方などでは重症化し、まれに重篤な合併症を起こすことがあります。最も一般的な合併症として帯状疱疹後神経痛が知られており、発疹が治った後も痛みが残ることがあります。 顔に帯状疱疹が出た場合は、目の症状に注意が必要です。目の周囲に発疹がある、目が痛い、見えにくい、まぶしいなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 帯状疱疹の原因 帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化です。子どものころなどに水痘にかかると、症状が治った後もウイルスは体内の神経節に潜んでいます。その後、免疫機能が低下したときに再び活動し、神経に沿って皮膚症状や痛みを起こします。 帯状疱疹のきっかけになりやすい要因には、以下があります。 加齢 過労や強いストレスなどによる免疫機能の低下 がんなど、免疫機能に影響する基礎疾患 免疫を抑える薬の使用 手術や放射線治療 高齢者や基礎疾患のある方では、症状が重くなることがあります。訪問看護や在宅ケアでは、皮膚の症状だけでなく、痛みの強さ、食欲、睡眠、発熱、活動量の変化もあわせて確認することが大切です。 帯状疱疹はうつる? 帯状疱疹そのものが人から人へうつるわけではありません。ただし、VZVへの免疫がない人にウイルスが感染すると、水痘を発症する可能性があります。主に水疱の内容液との接触などによって感染するため、水疱が痂皮化するまでは感染対策が必要です。感染を広げないためには、以下の点に注意します。 水疱をガーゼや衣類で覆う 発疹を触らない 触れたあとは手を洗う タオルを共有しない 水疱が痂皮化するまで接触に注意する 妊婦、乳幼児、免疫機能が低下している方との接触に注意する 訪問看護では、利用者さん本人が発疹を掻把してしまうこともあります。掻把による細菌感染を防ぐためにも、爪を短くし、患部を清潔に保つことが大切です。 帯状疱疹の治療 帯状疱疹の治療では、早期に抗ウイルス薬による治療を始めることで、皮膚症状の治癒を促し、急性期の痛みを軽減することが期待できます。 治療で使われることがある薬には、以下があります。 抗ウイルス薬 解熱鎮痛薬 神経痛に対する薬 外用薬 皮膚の二次感染に対する薬 帯状疱疹は、発症から早い段階で治療を始めることが重要です。片側だけの痛みや発疹、水疱が出た場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関へ相談しましょう。 帯状疱疹後神経痛とは 帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia:PHN)とは、帯状疱疹による皮疹が治った後も痛みが続き、一般に3か月以上持続する状態を指します。痛みの感じ方は人によって異なり、焼けるような痛み、刺すような痛み、衣類が触れるだけで痛い感覚などがみられることがあります。日本皮膚科学会によると、帯状疱疹後神経痛は、60歳以上の方、発疹が重かった方、初期の痛みが強かった方に起こりやすいとされています。痛みが長引くと、睡眠、食事、活動量、気分にも影響することがあります。訪問看護では、痛みの部位、強さ、持続時間、生活への影響を確認し、必要に応じて医師へ報告します。 帯状疱疹ワクチン 厚生労働省は、帯状疱疹ワクチンによって帯状疱疹やその合併症を予防できると説明しています。また、2025年度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました。なお、2025年度から2029年度までの5年間は経過措置として、その年度内に70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方も対象です。また、60〜64歳で、HIVによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方も対象となります。日本で定期接種に使われる帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンがあります。接種対象、接種回数、接種できない方、注意が必要な方はワクチンによって異なります。基礎疾患がある方や免疫抑制剤の投与を受けている方は、接種前に主治医へ相談しましょう。 訪問看護での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、帯状疱疹の症状を早く見つけ、痛みや感染対策、生活への影響を確認することが大切です。確認したいポイントは、以下のとおりです。 痛みがいつからあるか 痛みの部位 痛みの強さ 体の片側に出ているか 発赤や水疱の有無 発疹の広がり 発熱の有無 食事量や水分摂取量 睡眠や活動への影響 掻把の有無 目の周囲の症状 妊婦、乳幼児、免疫機能が低下している方との接触状況 記録する場合は、以下のように書くと共有しやすくなります。 「昨日から右胸部にピリピリした痛みあり。本日、同部位に赤い発疹と小水疱を確認。発熱なし。衣類が触れると痛みあり。食事摂取は普段どおり。」 「左額からまぶた周囲に発疹あり。目の痛みと違和感の訴えあり。主治医へ相談し、受診することになった。」 このように、痛みの部位、左右差、発疹の状態、目の症状の有無を具体的に伝えることが大切です。 受診を考えたい症状 帯状疱疹が疑われる場合は、できるだけ早めに医療機関へ相談しましょう。特に、以下のような場合は注意が必要です。 体の片側に強い痛みがある 赤い発疹や水疱が出てきた 顔や目の周りに発疹がある 目の痛みや見えにくさがある 発熱や強いだるさがある 痛みで眠れない 発疹が広範囲に広がっている 免疫機能が低下している 高齢者で症状が強い 妊婦や乳幼児と接触する機会がある 額・まぶた・鼻など目の周囲に帯状疱疹が疑われる発疹がある場合は、眼症状がなくても早めに医療機関へ相談しましょう。 まとめ 帯状疱疹は、水痘と同じVZVが再び活動することで起こる病気です。初期症状として、体の片側にピリピリした痛みや違和感が出ることがあり、その後、赤い発疹や水疱が帯状に現れます。帯状疱疹は、早期に治療を始めることで、症状の長期化や帯状疱疹後神経痛などの合併症を緩和できる可能性があります。片側だけの痛み、発疹、水疱がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。訪問看護では、痛みの部位、発疹の広がり、発熱、食事や睡眠への影響、目の症状の有無を観察することが大切です。ワクチンによる予防も選択肢のひとつであり、対象年齢の方や基礎疾患がある方は、主治医に相談して検討しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● 厚生労働省:「帯状疱疹ワクチン」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/index.html,2026/9/7閲覧● 国立健康危機管理研究機構:「水痘・帯状疱疹の動向とワクチン」.https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-iasrtpc/8223-462t.html,2026/9/7閲覧● 東京都感染症情報センター:「帯状疱疹 Shingles(Herpes Zoster)」.https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/herpes_zoster/,2026/9/7閲覧● CDC:「Shingles(Herpes Zoster)」.https://www.cdc.gov/shingles/about/index.html,2026/9/7閲覧● CDC:「Shingles Vaccine Recommendations」.https://www.cdc.gov/shingles/hcp/vaccine-considerations/index.html,2026/9/7閲覧● 日本皮膚科学会:「Q11 帯状疱疹とは何ですか?」.https://qa.dermatol.or.jp/qa5/q11.html,2026/9/7閲覧● 日本皮膚科学会:「Q20 帯状疱疹後神経痛とはどういうものですか?」.https://qa.dermatol.or.jp/qa5/q20.html,2026/9/7閲覧

緩和的鎮静とは?在宅での判断を支える「倫理の四要件」【学会レポート】
緩和的鎮静とは?在宅での判断を支える「倫理の四要件」【学会レポート】
特集
2026年9月1日
2026年9月1日

緩和的鎮静とは?在宅での判断を支える「倫理の四要件」【学会レポート】

終末期の利用者さんから「つらいときは眠らせてほしい」と言われたら——。在宅医療に携わる医療・介護職にとって、いつか向き合う可能性のある「緩和的鎮静」をテーマにしたワークショップが、第8回日本在宅医療連合学会大会(2026年7月4日・5日、札幌)で開催されました。緩和的鎮静とは何か、その判断を支える「倫理の四要件」とは。講義と多職種グループワークで構成された学びの濃い90分を、NsPace編集部がレポートします。 ※本記事は学会ワークショップの内容を編集部がレポートしたものです。実際の鎮静の判断は、関連学会の手引きを確認し、主治医を含む多職種チームで行ってください。 ワークショップ概要〜経験はあるのに、枠組みは知られていない ワークショップ冒頭で行われたリアルタイムアンケートでは、鎮静に携わった経験のある参加者が多数を占めた一方、判断の拠りどころとなる「持続的鎮静における倫理の四要件」については、知らないと答えた方が目立ちました。 多くの医療従事者が経験しているのに、判断の枠組みは十分に知られていない。このギャップこそが、緩和的鎮静の難しさを物語っています。ワークショップは前半が講義、後半が架空症例をもとにした多職種グループワークという構成で進みました。 緩和的鎮静とは〜「眠らせること」が目的ではない 講義ではまず、緩和的鎮静の定義が整理されました。現在の定義は「治療抵抗性の苦痛を緩和することを目的として、鎮静薬を投与すること」。ポイントは、意識を低下させること自体が目的ではない、という点です。 緩和的鎮静は大きく2つに分類されます。 間欠的鎮静:夜間など苦痛の強い時間帯に限って鎮静薬を使い、その後は中止する方法 持続的鎮静:鎮静薬を持続的に投与する方法。さらに次の2つに分かれます。 調節型鎮静:苦痛の強さに応じて少量から調節する方法。意識の低下はあくまで副産物で、「これくらいなら耐えられる」という状態を最小量で目指す 持続的深い鎮静:調節型では緩和が難しい、または難しいと予測される切迫した状況で、深い鎮静状態とする方法 原則として調節型鎮静が優先で、持続的深い鎮静はそれでも緩和できない場合の選択肢である、という整理が示されました。 なぜ倫理が問われるのか 鎮静、特に持続的深い鎮静がデリケートな問題となる理由も明確に示されました。鎮静により意思疎通や自己決定が難しくなること、そして、その行為自体が予後を短縮する可能性が否定しきれないことです。講義では、予後が短い(日の単位)と予測される場合には、持続的深い鎮静が予後を極端に縮めることはないと想定されているものの、厳密な断定は難しいという研究の現状も紹介されました。だからこそ、どんなに苦しそうに見えても、倫理的な論点をチームで議論し、丁寧に意思決定のプロセスを踏むことが欠かせないのです。 判断を支える「倫理の四要件」 講義の核心は、持続的鎮静の倫理性を支える4つの要件でした。 (1)相応性 さまざまな選択肢を検討したうえで、鎮静が「相対的に最善」と判断できること。検討の軸は「苦痛の強さ」「治療抵抗性の確実さ」「予測される予後」の3つです。ここで強調されたのは、苦痛の強さとは「強い苦痛」ではなく「耐え難い苦痛」かどうか、という点。周囲からどれほど苦しそうに見えても、本人が「耐えられる」というなら、それは耐え難い苦痛ではない。主観を尊重する視点が印象的でした。また、治療抵抗性とは「他の手段を尽くしたか」ということ。安易に鎮静に飛びつかない、といういましめでもあります。 (2)医療者の意図 鎮静の意図が「苦痛の緩和」であり、生命予後の短縮ではないことを、関わる医療者が理解していること。 (3)患者・家族の意思 本人に意思決定能力があれば本人の意思を確認し、難しい場合はこれまでの言葉や価値観から推定します。家族と話すときは「ご家族はどうしたいですか」ではなく「ご本人ならどう望まれるでしょうか」と、本人の意思を推定する形で対話すること。そして、決断の責任を家族だけに背負わせず、医療チームも一緒に背負うことが大切だと語られました。 (4)医療チームによる判断 一人で決めないこと。在宅医療では全員が集まることが難しい場面もありますが、実施可能な範囲で複数の視点から意見を求め、意思決定の過程を記録に残すことの重要性が強調されました。 グループワーク〜訪問看護師の「相談」から始まる事例 後半は、終末期の肺がんの利用者さん(架空症例)をもとにしたグループワークでした。「苦しい時間が続くなら眠らせてほしい」という本人のかねてからの言葉。「眠ると話せなくなるのでは」と揺れるご家族。そして、症状緩和を尽くしても苦痛が取りきれない状況で、訪問看護師から医師へ「持続的鎮静はどうでしょうか」と相談が上がる——という設定です。各テーブルでは、医師・看護師・薬剤師・ケアマネジャーなど多職種が「四要件はどの程度満たされているか」「鎮静の前にできることはないか」を議論しました。正解探しではなく、迷いや葛藤も大切な意見として扱うというグラウンドルールのもと、それぞれの職種の視点が交わる時間となりました。 「鎮静の前に、叶えたいことを話し合う」 質疑応答で心に残ったやりとりがあります。症例の利用者さんには「家の近くの海が見たい」という願いがありました。この願いにどう向き合うか、という問いに対して、登壇者からは「なぜ海に行きたいのか、その奥にある思いを掘りさげることが大事」という視点が示されました。海そのものが大切な人もいれば、大切な人との思い出こそが本質という人もいます。願いの背景を理解できれば、たとえ海に行けなくても、その人にとって意味のある関わりができるかもしれません。鎮静を検討する前に、本人の叶えたいことをチームで話し合う意義を、あらためて考えさせられる場面でした。 まとめ〜訪問看護師は利用者の意思決定に伴走する〜 在宅で利用者さんに継続的に寄り添う存在として、訪問看護師は重要な役割を担っています。 グループワークの事例でも、鎮静の検討は訪問看護師の気づきと相談から始まりました。 「眠らせてほしい」という言葉を受け止め、耐え難い苦痛かどうかを見きわめ、本人と家族の揺れる思いをチームにつなぐ。倫理の四要件は医師だけのものではなく、訪問看護師が意思決定のプロセスに参加するための共通言語でもある——そう感じたワークショップでした。 なお、鎮静に関する考え方は、日本緩和医療学会の「がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き(2023年版)」にまとめられており、学会ウェブサイトからどなたでも閲覧できます。ぜひ一度目を通してみてください。 【参考文献】 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「ワークショップ・交流集会・ハンズオンセミナー(事前予約)」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/workshop/ 2026/8/27閲覧 日本緩和医療学会 ガイドライン統括委員会:「がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き(2023年版)」.日本緩和医療学会ウェブサイト.2023年6月20日発行.https://www.jspm.ne.jp/publication/guidelines/individual.html?entry_id=1391 2026/8/27閲覧

夏風邪とは?症状・原因・治し方を解説
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コラム
2026年8月25日
2026年8月25日

夏風邪とは?症状・原因・治し方を解説

夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称です。代表的なものに、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などがあります。子どもに多いイメージがありますが、大人がかかることもあります。 夏風邪では、発熱、のどの痛み、咳、鼻水、口の中の水疱、発疹、目の充血、下痢など、原因となるウイルスによってさまざまな症状がみられます。この記事では、夏風邪の主な症状、原因、治し方、受診の目安、在宅での観察ポイントを解説します。 夏風邪とは 夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称で、医学的にひとつの病名を指すものではありません。夏場にみられる発熱、のどの痛み、咳、鼻水、下痢、発疹などを伴うウイルス感染症を指して使われることがあります。 厚生労働省は、「夏かぜ」といわれる感染症として、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などを挙げています。また、夏風邪は子どもがかかるものと思われがちですが、原因となるウイルスには多くの種類があり、1シーズンに何回もかかる大人も少なくないとしています。 今回紹介する手足口病やヘルパンギーナはエンテロウイルス、咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因です。いずれも基本的には症状に応じた治療が行われます。ただし、高熱が続く、水分が摂れない、ぐったりしているなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 夏風邪の主な症状 夏風邪の症状は、原因となるウイルスや病気によって異なります。よくみられる症状には、以下があります。 発熱 のどの痛み 咳 鼻水 頭痛 倦怠感 口の中の水疱 手足や口まわりの発疹 目の充血 下痢 食欲低下 夏風邪は、冬の風邪と比べて、口の中の水疱、手足の発疹、目の症状、胃腸症状が目立つことがあります。特に子どもでは、のどや口の痛みによって水分や食事を摂りにくくなることがあるため、脱水症に注意が必要です。 夏風邪の代表的な病気 手足口病 手足口病は、口の中、手のひら、足の裏などに水疱性の発疹がみられるエンテロウイルスによる感染症です。厚生労働省によると、国内では毎年夏を中心に発生し、7月下旬に流行のピークを迎えます。 3~5日の潜伏期間を経て、口の中や手のひら、足の裏などに2~3mmの水疱性の発疹が生じます。発熱は38℃以下のことが多く、ほとんどの発病者は、3~7日で治るといわれています。 症状は軽く済むこともありますが、口の中の痛みによって食事や水分が摂りにくくなる場合があり、まれに髄膜炎、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺などの合併症により、重症化することがあります。 ヘルパンギーナ ヘルパンギーナは、発熱とのどの痛み、のどの奥の水疱を特徴とする夏風邪の一種です。乳幼児を中心に夏に流行し、主にコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスが原因となります。厚生労働省によると、毎年5月ごろから患者が増え始め、7月ごろにピークを迎えます。その後、8月ごろから減少していきます。 感染してから2〜4日後に突然の発熱が起こり、その後、のどの痛みや水疱が現れます。発熱は1〜3日続き、食欲不振、全身のだるさ、頭痛などを伴うことがあります。 ヘルパンギーナでは、のどの痛みが強く、水分を摂ることを嫌がる場合があります。特に小児では、脱水症、熱性けいれん、まれに髄膜炎や心筋炎などに注意が必要です。 咽頭結膜熱 咽頭結膜熱は、発熱、のどの痛み、目の充血などがみられる感染症です。プール熱とも呼ばれることがあります。原因はアデノウイルスで、飛沫感染や接触感染によって広がります。厚生労働省によると、通常6月ころから徐々に流行しはじめ、7~8月にピークとなります。 咽頭結膜熱では、38〜40℃の高熱、のどの痛み、結膜充血、目の痛みなどがみられることがあります。高熱が5日前後続く場合もありますが、多くは自然に回復します。吐き気や頭痛が強かったり、咳が激しかったりするときは、早めに医療機関に相談することが推奨されています。 夏風邪は大人にもうつる? 夏風邪は子どもだけの病気ではありません。原因となるウイルスには多くの種類があるため、大人も感染することがあります。 大人の夏風邪では、発熱、のどの痛み、倦怠感、咳、鼻水、下痢などがみられます。仕事や家事で休みにくい場合でも、発熱や強い倦怠感があるときは無理をしないことが大切です。 また、大人が感染して症状が軽くても、家庭内で子どもや高齢者にうつることがあります。手洗い、咳エチケット、タオルの共有を避けることなど、基本的な感染対策を続けましょう。 夏風邪は何日で治る? 夏風邪が何日で治るかは、原因となる感染症や体調によって異なります。軽い風邪症状であれば数日から1週間程度で改善することがありますが、咽頭結膜熱のように高熱が数日続く場合もあります。 ヘルパンギーナでは、発熱は1〜3日続くことが多く、一般的には経過が良好とされています。一方、手足口病では、口の中の痛みや発疹がしばらく残ることがあります。 「熱が下がったから、すぐに普段どおりの生活に戻ってよい」と考えるのではなく、食事や水分が摂れているか、尿量が戻っているか、体力が回復しているかも確認することが大切です。 夏風邪の治し方 夏風邪の多くはウイルス感染症のため、治療は症状をやわらげる対症療法が中心です。自宅では、休養、水分補給、室温調整、食べやすい食事を意識します。 のどの痛みが強い場合は、冷たい飲み物、ゼリー、スープなど、飲み込みやすいものを少量ずつ摂るとよいでしょう。酸味の強い飲み物や熱い食べ物は、口の中やのどの痛みを強めることがあります。 発熱や痛みに対しては、医師や薬剤師に相談のうえ、解熱鎮痛薬を使うことがあります。小児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方、腎機能や肝機能に不安がある方は、自己判断で薬を使わず、医師や薬剤師に確認しましょう。 また、下痢が強い場合や長引く場合は、自己判断で市販薬を使用せず医師や薬剤師に相談しましょう。 受診を考えたい症状 夏風邪は自然に回復することもありますが、重症化や脱水症に注意が必要です。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 高熱が続く 水分がほとんど摂れない 尿量が明らかに少ない ぐったりしている 呼びかけへの反応が弱い 呼吸が苦しそう けいれんがある 強い頭痛がある 首を曲げにくい 嘔吐を繰り返す 目の痛みや充血が強い 乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方に症状がある 厚生労働省は、発熱や咳に加えて、呼吸が苦しい、食事や水分が摂取できないといった症状がみられた場合は、すぐに医療機関に相談するよう呼びかけています。 在宅ケアでは、いつもの様子との違いも重要です。熱の高さだけでなく、顔色、反応、食事量、水分摂取量、尿量、睡眠の様子をあわせて確認します。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、病名を決めつけるよりも、症状の経過と全身状態を具体的に観察することが大切です。 確認したいポイントは、以下のとおりです。 発熱が始まった日時 最高体温 咳や鼻水の有無 のどの痛みの程度 口の中の水疱や潰瘍の有無 手足や口まわりの発疹の有無 目の充血や目やにの有無 下痢や嘔吐の有無 食事量 水分摂取量 尿量や尿の回数 家族や園、学校、施設での流行状況 普段の状態との違い 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。 「昨日〇時ごろから発熱。最高体温38.8℃。のどの痛みが強く、水分摂取は少量。口腔内奥に小さな水疱のようなものを認める。尿は朝から1回のみ。」 「本日朝から発熱と目の充血あり。体温39.0℃。のどの痛みあり。食事は半量、水分は摂取可能。家族内に同様症状なし。」 このように、「いつから」「どの症状が」「どの程度あるか」を整理すると、医師や看護師に状態を伝えやすくなります。 夏風邪を予防するには 夏風邪の予防では、手洗い、咳エチケット、換気などの基本的な感染対策が大切です。厚生労働省も、夏かぜを含む感染症対策として、手洗い、咳エチケット、換気などの基本的な対策を挙げています。 特に、手足口病やヘルパンギーナでは、便の中にウイルスが排泄されることがあります。排泄物を適切に処理し、おむつ交換後やトイレの後、食事前には、石けんと流水で手を洗いましょう。 予防のポイントは、以下のとおりです。 外出後や食事前に手を洗う タオルを共有しない 咳やくしゃみがあるときは口と鼻を覆う 室内を換気する おむつ交換後は手を洗う 体調不良時は無理に登園、登校、出勤しない 口や目、鼻を触る前後に手を洗う 十分な睡眠と水分補給を意識する 家庭内で感染者がいる場合は、タオルの共有を避け、よく触れる場所を清潔に保ちます。子どもがいる家庭では、おもちゃやドアノブなども感染対策の対象になります。 まとめ 夏風邪とは、夏に流行しやすいウイルス感染症などを指す俗称です。代表的なものには、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などがあります。発熱、のどの痛み、咳、鼻水、口の中の水疱、発疹、目の充血、下痢など、原因によって症状はさまざまです。 夏風邪の多くは対症療法が中心ですが、水分が摂れない、尿量が少ない、ぐったりしている、高熱が続く、呼吸が苦しそうといった場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 在宅ケアでは、病名を判断することよりも、症状の経過、水分摂取量、尿量、普段との違いを確認することが大切です。手洗い、咳エチケット、換気を行い、タオルの共有を避けることを意識し、家庭や施設内で感染を広げないようにしましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 厚生労働省:「夏を安全に楽しもう! 感染症対策ガイド」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202407_003.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「手足口病」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「ヘルパンギーナ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/herpangina.html2026/8/24閲覧 厚生労働省:「咽頭結膜熱」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pcf.html2026/8/24閲覧 東大阪市:「子どもの夏かぜ(手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱)」https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000004003.html2026/8/24閲覧 CDC:「Non-Polio Enteroviruses Symptoms and Complications」https://www.cdc.gov/non-polio-enterovirus/signs-symptoms/index.html2026/8/24閲覧

感染クラスター対応をゲームで疑似体験!「クラスター8」体験レポート
感染クラスター対応をゲームで疑似体験!「クラスター8」体験レポート
特集
2026年8月12日
2026年8月12日

感染クラスター対応をゲームで疑似体験!「クラスター8」体験レポート

「施設で新型感染症のクラスターが発生。しかも施設長は感染して不在——さあ、どうする?」。そんな緊迫の状況をカードゲームで疑似体験できるワークショップが、第8回日本在宅医療連合学会大会(2026年7月4日・5日、札幌)で開催されました。その名も「感染クラスター乗り切り体験ゲーム『クラスター8』」。実際にプレイヤーとして参加したNsPace編集部が、ゲームの様子と学びをレポートします。 「クラスター8」とは?現場の声から生まれた体験ゲーム クラスター8は、介護施設での感染クラスター発生時の対応を、チームで疑似体験するボードゲーム型の研修ツールです。開発の中心となったのは、コロナ禍で数多くの施設の感染対応を支援してきた医療・介護の実践者集団「一般社団法人KISA2隊(キサツ隊)」。「issue+design」との共同開発により、現場で見てきた工夫や失敗の教訓を集めて作られたといいます。 印象的だったのは、冒頭で語られた開発の動機です。クラスターの被害は感染者数だけでは語れません。感染対応を優先するあまり利用者さんのADL(日常生活動作)が低下してしまう、スタッフが疲弊して離職につながる、チームの人間関係が壊れてしまう——。そうした「二次被害」も含めて危機をどう乗り切るかを、安全な場で体験してもらいたい。ゲームにはそんな願いが込められています。 ゲームの舞台は「施設長不在の小規模施設」 ゲームの舞台は、利用者さん10名を職員6名で支える小規模な介護施設です。ある日、施設長が新型ウイルス感染症に感染して自宅隔離となり、残された職員だけでクラスター対応に立ち向かう——という設定で始まります。参加者は4人1組のチームとなり、それぞれ「医療職員」「介護職員」「ケアマネジャー」「感染対策委員」の役割を担当。感染発生からの8日間をターン制で進めていきます。ルールの骨格はシンプルです。 チーム共通の目標は「施設全体の感染者を一定数以下に抑える」こと 各自にはそれぞれ役割に応じた個人目標がある(職員の感染を防ぐ、利用者さんのADLを守る、職員の元気度を保つ…など) 毎ターン、20種類の「アクションカード」から実行する行動を最大3つまで選ぶ アクションには実行に必要な職員数があり、職員が感染すると打てる手がどんどん減っていく そして意地悪なことに、20種類のアクションの中には「実はあまり効果がないもの」も紛れ込んでいます。限られた人手で何を優先するか。チームの合意形成そのものが、このゲームの本体です。 体験して分かった「合意形成」の難しさ 編集部も1つのチームに入って参加しました。実際にやってみると、これが想像以上に悩ましいのです。 感染拡大を抑えたい医療職視点では、消毒やゾーニングを優先したい。一方で、利用者さんの生活を守る介護職視点では、隔離や制限ばかりだと個人目標のADLが守れない。職員の元気度を担当するメンバーからは「その前に職員が倒れます」と“待った”がかかる。それぞれの正義がぶつかる中で、3枚しか選べないカードをどれにするか——制限時間は刻一刻と減っていきます。 ゲームの結果は、チームの選択によって「グッドエンド」から「バッドエンド」まで複数のエンディングに分岐します。感染は抑えたのに利用者さんのADLが大きく低下し、職員の離職が始まってしまう、という苦いエンディングもあり、「感染者数さえ抑えればよいわけではない」という開発者のメッセージがここにも表れていました。 答え合わせで学ぶ、初動対応のポイント ゲーム後の解説パートでは、推奨される対応が具体的に示されました。詳細は割愛しますが、編集部が特に持ち帰りたいと感じたポイントを3つご紹介します。 (1)最初にやるべきは「指揮系統の明確化」 責任者が不在でも対応が止まらないよう、誰が判断し、誰に確認するのかをまず決める。指示待ちによる初動の遅れが、その後の展開を大きく左右します。 (2)ご家族への連絡は「有事の前」から 有事の連絡だけでは、ご家族の不安は募るばかり。平時から「何もないとき」にも連絡を取り、信頼関係を築いておくことで、緊急時の連絡も前向きに受け止めてもらえる、という指摘にはハッとさせられました。 (3)「よかれと思った対策」にも落とし穴がある 一見有効に思える対策でも、使い方や場面によっては逆効果になり得るものがあります。たとえば仕切りの設置が換気を妨げてしまうケースのように、「その対策は何のためか」を理解して選ぶことの大切さが強調されていました。 訪問看護ステーションでも「避難訓練」を 主催者が繰り返し語っていたのは、「これはあくまで疑似体験、いわば避難訓練です」ということ。本番はもっと過酷で、時間も情報も足りない中での判断を迫られます。だからこそ、平時に安全な場で「チームで決める」経験をしておくことに価値があるのだと感じました。 また、このゲームは医療職と介護職の合意形成ツールとしての側面も持っています。医療の正義と生活の正義、どちらも大切だからこそぶつかる。その調整を疑似体験できる研修ツールは、訪問看護ステーションと連携先の施設・事業所が合同で取り組む研修としても効果的だと感じました。 BCP(業務継続計画)は作って終わりになりがちです。自分たちの計画が本当に機能するのか、ゲームという形で点検してみる。そんな選択肢があることを、多くの事業所の方に知っていただきたいと感じた90分でした。 【参考文献】 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「ワークショップ・交流集会・ハンズオンセミナー(事前予約)」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/workshop/ 2026/8/6閲覧 一般社団法人KISA2隊:「感染クラスター8|感染対策研修をゲームで楽しく実施する!」.一般社団法人KISA2隊ウェブサイト.https://kisa2tai.or.jp/lp/cluster8/ 2026/8/6閲覧 厚生労働省老健局:「介護現場における感染対策の手引き 第3版」.厚生労働省ウェブサイト.令和5年9月.https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001149870.pdf 2026/8/6閲覧 厚生労働省:「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」.厚生労働省ウェブサイト.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/douga_00002.html 2026/8/6閲覧

血管内脱水とは?在宅での観察ポイント
血管内脱水とは?在宅での観察ポイント
コラム
2026年8月4日
2026年8月4日

血管内脱水とは?在宅での観察ポイント

血管内脱水とは、血管の中を流れる水分が不足し、循環血液量が低下している状態を指します。一般的な「脱水」は体全体の水分不足として捉えられますが、血管内脱水では、血管内の水分が少なくなることで、血圧低下や頻脈、尿量減少、意識状態の変化などがみられることがあります。訪問看護や在宅ケアの現場では、利用者さんの口渇や皮膚の乾燥だけでなく、血圧、脈拍、尿量、むくみ、意識状態などをあわせて観察することが大切です。この記事では、血管内脱水の基本的な考え方、起こりやすい原因、在宅で確認したいポイントを解説します。 血管内脱水とは 血管内脱水とは、血管内の水分が不足している状態です。体内の水分は、主に細胞内、細胞と細胞の間にある間質、血管内に分かれて存在しています。血管内の水分が不足すると、全身に血液を十分に送ることが難しくなります。その結果、血圧が下がる、脈が速くなる、尿量が減る、手足が冷たくなるなどの変化が起こることがあります。MSDマニュアルでは、体液量減少が中等度になると起立時の頻脈や低血圧がみられることがあり、重度では頻呼吸、頻脈、低血圧、混乱、毛細血管再充満時間の延長などのショック徴候が起こりうるとされています。ただし、血管内脱水は見た目だけでは判断しにくいことがあります。たとえば、体にむくみがあっても、血管内の水分が不足している場合があります。そのため、「むくんでいるから脱水ではない」と決めつけず、全身状態を総合的に確認することが大切です。 一般的な脱水との違い 一般的に脱水というと、水分摂取不足、発汗、下痢、嘔吐などによって、体内の水分が不足している状態を指します。一方で、血管内脱水は、特に血管内を流れる水分量の不足に注目した考え方です。在宅ケアでは、専門的な分類を厳密に判断するよりも、循環が保たれているかを観察することが重要です。血圧低下、頻脈、尿量減少、立ちくらみ、意識のぼんやり感などがある場合は、血管内の水分不足が関係している可能性があります。 血管内脱水が起こる原因 血管内脱水は、水分や電解質の喪失、血管内から間質への水分移動、出血などによって起こることがあります。代表的な原因には、以下があります。 下痢 嘔吐 発熱や発汗 水分摂取量の低下 利尿薬の使用 出血 感染症 炎症による血管透過性の亢進 低栄養や低アルブミン血症 熱傷 心不全や腎機能低下などの基礎疾患 感染症やDICなどで血管内皮が障害されると、血管内の水分が間質に流出し、体は浮腫状態でも血管内は脱水になることがあります。 細胞外液を補う目的で、等張電解質輸液が血管内や組織間に水分・電解質を補給する輸液として使われることがあります。大塚製薬工場の解説では、等張電解質輸液は細胞外に分布して細胞外液量を増やすため、細胞外液補充液とも呼ばれるとされています。 細胞外液補充液等に反応しない患者、低アルブミン血症があるなど特定の状況下では、アルブミン製剤が使用される可能性もあります。 在宅でみられやすいサイン 血管内脱水では、循環血液量が不足することで、さまざまなサインが現れます。訪問看護や介護の現場では、以下のような変化に注意します。 立ち上がったときにふらつく 血圧がいつもより低い 脈が速い 尿量が少ない 尿の色が濃い 口の中が乾いている 皮膚や舌が乾燥している 手足が冷たい 倦怠感が強い ぼんやりしている 反応が鈍い 食事や水分がとれていない 特に、呼吸困難や呼吸促迫、過度の発汗、意識レベルの低下、低血圧、体温の低下、チアノーゼがみられる場合は、ショック状態を示す重篤な症状の可能性があるため、早急に医師へ報告する必要があります。 ただし、高齢者では症状がはっきり出にくいことがあります。普段より元気がない、食事量が落ちている、反応が遅い、尿量が少ないなど、小さな変化を見逃さないことが大切です。 むくみがあっても注意が必要 血管内脱水で特に注意したいのは、むくみがある場合です。一般的には、むくみがあると「水分が多い状態」と考えがちです。しかし、間質に水分がたまっていても、血管内の水分が不足している場合があります。 たとえば、低栄養や低アルブミン血症、炎症、感染症などでは、血管内に水分を保ちにくくなり、間質に水分が移動しやすくなります。その結果、足や手はむくんでいるのに、血管内の水分は不足していることがあります。 日本腎臓学会誌の解説でも、浮腫は間質に水分が貯留して腫れている状態であり、必ずしも体全体の水分量増加と同じではないと説明されています。 在宅では、むくみの有無だけで判断せず、血圧、脈拍、尿量、体重変化、呼吸状態、食事・水分摂取量などをあわせて観察します。 観察するときのポイント 血管内脱水が疑われる場合は、以下の項目を確認します。 バイタルサイン 血圧、脈拍、体温、呼吸数、SpO2を確認します。特に、普段より血圧が低い、脈が速い、呼吸が速い、発熱がある場合は注意が必要です。頻脈は低容量状態で循環を保つための代償反応としてみられることがあります。 尿量と尿の色 尿量が減っている、尿の色が濃い、排尿回数が少ない場合は、体内の水分不足を示すサインのひとつです。特に、普段と比べて明らかに尿量が少ない場合は、早めに医師や看護師へ報告します。 皮膚・口腔内の状態 口唇や舌の乾燥、皮膚の乾燥、皮膚の張りの低下などを確認します。ただし、高齢者では皮膚の張りがもともと低下していることもあるため、これだけで判断しないようにします。 意識状態 ぼんやりしている、会話がかみ合わない、呼びかけへの反応が鈍いなどの変化がないか確認します。体液量の減少が重くなると混乱などがみられる場合があります。 食事・水分摂取量 食事量や水分摂取量が減っていないかを確認します。暑い日、発熱時、下痢や嘔吐があるときは、普段と同じ量の水分でも不足することがあります。 医師へ報告するときの内容 血管内脱水が疑われる場合は、観察した内容を整理して報告します。一時点の情報だけで伝えるのではなく、経過と普段との差をあわせて伝えると、状態が共有しやすくなります。 報告時には、以下の内容をまとめます。 いつから変化があるか 食事量、水分摂取量 尿量、尿の色、排尿回数 血圧、脈拍、体温、呼吸数、SpO2 立ちくらみやふらつきの有無 下痢、嘔吐、発熱、発汗の有無 むくみの有無 体重の変化 意識状態の変化 服薬状況 利尿薬の使用有無 基礎疾患 普段の状態との違い たとえば、以下のように記録します。 「昨日から食事量が半分程度。水分摂取は約500mL。尿量少なく、尿色濃い。訪問時、血圧92/58mmHg、脈拍104回/分。立ち上がり時にふらつきあり。発熱なし。普段より反応がやや遅い。」 このように書くと、血管内脱水が疑われる状況を具体的に伝えやすくなります。 早めの相談が必要な状態 以下のような場合は、早めに医師や救急へ相談します。 意識がぼんやりしている 呼びかけへの反応が悪い 血圧が大きく低下している 脈が速く、状態が改善しない 尿がほとんど出ていない 強いふらつきがある 発熱、下痢、嘔吐が続いている 手足が冷たく、顔色が悪い 息苦しさがある 出血が疑われる むくみが強いのに尿量が少ない 重度の体液量減少では、頻呼吸、頻脈、低血圧、混乱、毛細血管再充満時間の延長などのショック徴候が現れ、ショックにつながる可能性があります。 在宅では、状態の変化を見つけた時点で早めに相談することが、重症化を防ぐために重要です。 まとめ 血管内脱水とは、血管内の水分が不足し、循環血液量が低下している状態です。水分不足だけでなく、感染症、炎症、出血、利尿薬の使用、低栄養、むくみを伴う病態などでも起こることがあります。 訪問看護や在宅ケアでは、口渇や皮膚の乾燥だけでなく、血圧、脈拍、尿量、意識状態、むくみ、食事・水分摂取量をあわせて観察することが大切です。特に、むくみがある場合でも血管内脱水が隠れていることがあるため、見た目だけで判断しないようにしましょう。 利用者さんの普段の状態を知り、小さな変化を具体的に記録することが、早期発見と適切な対応につながります。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】●NsPace:「血管内脱水」https://www.ns-pace.com/glossary/volume-depletion/,2026/7/30閲覧●MSDマニュアル プロフェッショナル版:「体液量減少」https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/10-内分泌疾患と代謝性疾患/水代謝/体液量減少,2026/7/30閲覧●Cleveland Clinic:「Hypovolemia」.https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22963-hypovolemia,2026/7/30閲覧●日本輸血・細胞治療学会:「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン(改訂第3版)」https://yuketsu.jstmct.or.jp/wp-content/uploads/2024/07/070030406.pdf,2026/7/30閲覧●StatPearls:「Fluid Management」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532305/,2026/7/30閲覧●日本腎臓学会:「浮腫と脱水,濃縮と希釈の考え方」(佐々木成,日腎会誌 2008;50(2):97-99).https://jsn.or.jp/journal/document/50_2/097-099.pdf,2026/7/30閲覧●大塚製薬工場:「水・電解質輸液」.https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/electrolytes/,2026/7/30閲覧

第8回日本在宅医療連合学会大会レポート!訪問看護に役立つ注目プログラム
第8回日本在宅医療連合学会大会レポート!訪問看護に役立つ注目プログラム
特集
2026年7月28日
2026年7月28日

第8回日本在宅医療連合学会大会レポート!訪問看護に役立つ注目プログラム

2026年7月4日・5日の2日間、札幌で「第8回日本在宅医療連合学会大会」が開催されました。在宅医療に携わる多職種が全国から集まる年に一度の大会に、NsPace編集部も参加してきました。会場の熱気や、訪問看護師の皆さんにもぜひ知っていただきたいプログラムの数々を、参加レポートとしてお届けします。 第8回日本在宅医療連合学会大会とは 日本在宅医療連合学会が開催する全国大会で、今回で8回目を迎えます。会期は2026年7月4日(土)・5日(日)の2日間、会場は札幌コンベンションセンターと札幌市産業振興センターの2ヵ所。大会長は大友 宣氏(医療法人財団老蘇会 静明館診療所)が務め、大会テーマには「在宅医療ラララララ~パラダイムシフトをパラダイムシフトする次世代の在宅医療~」が掲げられました。 在宅医療の学会と聞くと医師向けの印象があるかもしれませんが、実際の参加者は医師のほか、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護職、リハビリテーション職など実に多彩です。プログラムもシンポジウムや一般演題だけでなく、参加型のワークショップ、市民公開講座など幅広く用意されており、「在宅医療に関わるすべての職種のための大会」という空気を強く感じました。 編集部が聴講したシンポジウムとワークショップ 編集部は、訪問看護の現場に関わりの深いテーマを中心に選んで聴講しました。その一部をご紹介します。 「在宅ドクターカーの対応と在宅病院前救急との融合 ―地域包括ケアにおける新たな医療体制構築に向けて―」 在宅医療と救急医療をどうつなぐかを考えるシンポジウム。利用者さんの急変時に「搬送か、在宅での継続か」を迫られる場面は訪問看護師にとっても身近なテーマであり、在宅と救急の連携という切り口が印象的でした。 在宅医療の効率化、ご自慢バトル! 全国の在宅医療の現場から、業務効率化の工夫を持ち寄ってプレゼンし、参加者の投票で最優秀を決めるユニークな企画。従来のFAX管理を突き詰めた効率化からAI活用まで、明日から真似したくなるアイデアが次々と登場し、会場も大いに盛り上がっていました。 感染クラスター乗り切り体験ゲーム「クラスター8」 介護施設で新型感染症のクラスターが発生した、という設定をカードゲームで疑似体験するワークショップ。多職種のチームで「限られた人手で何を優先するか」を話し合いながら進める形式で、編集部も実際にプレイヤーとして参加しました。 ACPで安楽死を求められたら 「終末期の意思決定支援」という重いテーマを、寸劇を交えながら現場目線で考えるシンポジウム。答えのない問いに、多職種がそれぞれの立場から向き合う構成でした。 在宅で挑む終末期がん患者の苦痛緩和〜緩和的鎮静の決断と多職種の力〜 在宅での緩和的鎮静をテーマに、講義と多職種でのグループワークを組み合わせたワークショップ。多くの参加者が集まる盛況ぶりで、このテーマへの現場の関心の高さがうかがえました。 会場で感じた3つのこと (1)「体験して学ぶ」プログラムの充実 ゲームやグループワーク、投票企画など、参加者が手と口を動かして学ぶ「参加型のプログラム」が目立ちました。講義を聞くだけでは持ち帰りにくい「判断の難しさ」を、体験を通して実感できる仕掛けが印象的でした。 (2)多職種がフラットに議論する文化 医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護職が同じテーブルで対等に意見を交わす場面が、参加型のプログラムを中心に数多く見られました。在宅医療の意思決定は多職種の力で支えるものだ、というメッセージを会場全体から感じました。 (3)答えのないテーマから逃げない姿勢 終末期の意思決定や感染対応など、正解が1つに定まらないテーマこそ、現場の実感を持ち寄って議論する。そんな姿勢が大会全体を貫いていたように思います。 まとめ 在宅医療の「今」を肌で感じられる2日間でした。訪問看護師の皆さんにとっても、日々のケアを見つめ直すヒントが数多くある大会だと感じます。編集部が特に注目した「クラスター8」と「緩和的鎮静」のワークショップについては、あらためて詳しいレポート記事をお届けする予定です。どうぞお楽しみに。 取材・編集・執筆:NsPace編集部 【参考】 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「開催概要」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/outline/ 2026/7/6閲覧 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「プログラム」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/program/ 2026/7/6閲覧 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「ワークショップ・交流集会・ハンズオンセミナー(事前予約)」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/workshop/2026/7/6閲覧

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本
GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本
特集
2026年7月14日
2026年7月14日

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本

訪問看護の現場において、利用者さんの意識レベルに変化があったとき、そのことを客観的に評価することは重要です。この記事では、GCSの基本的な考え方や評価項目、JCSとの違い、訪問看護師が意識状態を観察するときのポイントを解説します。 GCSとは GCSとは、Glasgow Coma Scale(グラスゴー・コーマ・スケール)の略称です。意識レベルを評価するためのスケールで、主に頭部外傷や脳血管障害など、意識状態の変化が重要になる場面で用いられます。 GCSでは、以下の3つの反応を確認します。 E:Eye opening/開眼反応 V:Verbal response/言語反応 M:Motor response/運動反応 それぞれの項目に点数をつけ、合計点で意識レベルを評価します。合計点は3〜15点で、点数が高いほど意識状態が良好で、点数が低いほど意識障害が強いと判断されます。 GCSの評価項目 GCSは、単に「起きているか」「眠っているか」だけを見るものではありません。開眼反応、会話の成立、指示への反応などを分けて確認することで、意識状態をより具体的に把握します。 E:開眼反応 開眼反応では、利用者さんがどのような刺激で目を開けるかを確認します。 点数状態4点自発的に開眼する3点呼びかけで開眼する2点痛み刺激で開眼する1点開眼しない 普段から目を開けて会話できる方が、呼びかけても目を開けにくい場合は、意識レベルの低下が疑われます。ただし、眠気、薬剤の影響、疲労、視覚障害などが関係することもあるため、普段の状態との違いを確認することが大切です。 V:言語反応 言語反応では、会話の内容や受け答えの適切さを確認します。 点数状態5点見当識がある4点混乱した会話がある3点不適切な発語がある2点意味のない発声がある1点発語がない 「今日は何月何日か」「ここはどこか」「名前を言えるか」などを確認し、受け答えが状況に合っているかを見ます。会話ができていても、話の内容がかみ合わない、急に混乱が強くなった、言葉が出にくいなどの変化がある場合は注意が必要です。 M:運動反応 運動反応では、指示に対して体を動かせるか、刺激に対してどのような反応があるかを確認します。 点数状態6点指示に従って動く5点痛み刺激の部位に手を持っていく4点痛み刺激から逃げるように動く3点異常な屈曲反応がある2点異常な伸展反応がある1点反応がない 運動反応は、GCSの中でも重症度の判断に関わる重要な項目です。たとえば「右手を握ってください」「足を動かしてください」といった簡単な指示に反応できるかを確認します。痛み刺激を用いる評価は、医療職が状態や安全性を確認したうえで行う必要があります。 GCSの点数の見方 GCSは、E・V・Mの点数を合計して評価します。たとえば、開眼反応が4点、言語反応が5点、運動反応が6点であれば、合計は15点です。記録するときは、合計点だけでなく、各項目の内訳も書くことが大切です。例:GCS 15点(E4V5M6)例:GCS 10点(E3V3M4)合計点だけでは、どの反応が低下しているのか分かりにくい場合があります。同じ10点でも、言語反応が低いのか、運動反応が低いのかによって、状態の捉え方が変わります。そのため、GCSは合計点とあわせて、E・V・Mの内訳を伝えることが重要です。GCSの公式資料でも、合計点だけでなく開眼・言語・運動の3要素をそれぞれ報告することの重要性が示されています。 GCSとJCSの違い 日本の医療現場では、GCSとあわせてJCS(Japan Coma Scale)が使われることもあります。JCSは、日本で広く用いられている意識レベルの評価法で、刺激に対する覚醒の程度を数字で表します。一方、GCSは開眼、言語、運動の3つの反応をそれぞれ点数化します。そのため、JCSよりも評価項目が細かく、意識状態の変化を具体的に共有しやすいという特徴があります。ただし、GCSは評価に慣れが必要です。とくに訪問看護の現場では、利用者さんのもともとの認知機能、発語の状態、麻痺の有無、難聴、失語、気管切開の有無などによって、正確に評価しにくいことがあります。その場合は、無理に点数化するのではなく、「普段と比べてどう違うか」を具体的に記録することが大切です。 訪問看護の現場で観察したいポイント 訪問看護の現場では、GCSの点数をつけること自体が目的ではありません。大切なのは、利用者さんの普段の状態を知ったうえで、変化に早く気づくことです。 たとえば、以下のような変化がある場合は注意が必要です。 呼びかけへの反応が鈍い 目を開けにくい 会話がかみ合わない 急にぼんやりしている 手足の動きに左右差がある いつもできる指示に従えない 強い頭痛、嘔吐、けいれんを伴う 転倒後に意識がはっきりしない これらの変化がある場合は、バイタルサイン、転倒や頭部打撲の有無、服薬状況、発熱、脱水、血糖異常の可能性などもあわせて確認します。特に、急な意識レベルの低下や麻痺、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、速やかに医師や救急へ相談する必要があります。 GCSを記録するときの注意点 GCSを記録するときは、点数だけでなく、観察した状況も残しておくと情報共有がしやすくなります。たとえば、以下のように記録します。「訪問時、呼びかけで開眼。名前は言えるが、場所の理解があいまい。右手を握る指示には応じる。GCS 13点(E3V4M6)。普段は会話明瞭で見当識あり。」このように書くと、点数だけでなく、普段との違いも伝わります。医師や救急隊へ連絡する際にも、状態の変化を具体的に説明しやすくなります。また、気管切開や挿管などで発語が難しい場合は、言語反応を「発語なし」として1点にするのではなく、評価不能(NT)として扱い、その理由を記録します。あわせて、頷き、首振り、ジェスチャー、筆談などで意思疎通ができるか、指示に応じられるかといった観察内容も残します。たとえば「気管切開中のためVは評価不能(V-NT)。呼びかけで開眼し、頷きで意思表示あり。右手を握る指示に応じる」のように記録すると、点数だけでは伝わりにくい実際の反応を共有しやすくなります。GCSでは、点数そのものだけでなく、評価できなかった理由と、実際に観察できた反応を明確に記録することが重要です。 まとめ GCSは、意識レベルを開眼、言語反応、運動反応の3つに分けて評価する指標です。合計点は3〜15点で、点数が低いほど意識障害が強いと考えられます。訪問看護の現場では、GCSの点数を正確につけることだけでなく、利用者さんの普段の様子との違いを把握することが大切です。呼びかけへの反応、会話の内容、指示への反応などを観察し、急な変化がある場合は早めに医師や救急へ相談しましょう。GCSを理解しておくことで、意識状態の変化をより客観的に伝えやすくなります。訪問看護や介護の現場でも、利用者さんの安全を守るための観察ポイントとして役立つ指標です。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 ● StatPearls:「Glasgow Coma Scale」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK513298/,2026/5/25閲覧● Glasgow Coma Scale Official Site:「Assessment of Glasgow Coma Scale」.https://www.glasgowcomascale.org/,2026/5/25閲覧● BrainLine:「What Is the Glasgow Coma Scale?」.https://www.brainline.org/article/what-glasgow-coma-scale,2026/5/25閲覧● 日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会†「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/21/5/21_539/_pdf/-char/ja, 2026/07/06閲覧

表彰式イベントレポート
表彰式イベントレポート
特集
2026年6月2日
2026年6月2日

第4回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月8日開催】

2026年3月8日(日)、東京駅近くのイベントホール「My Shokudo Hall & Kitchen」(東京都千代田区)にて、「第4回 みんなの訪問看護アワード」の表彰式を開催しました。 本アワードでは、応募されたエピソードを所属や氏名をすべて伏せた匿名形式を採用。厳正な審査を経て、計25のエピソードが受賞作品として選出されました。 当日は、受賞者の皆さまに加え、特別審査員の先生方や協賛企業の皆さまにもご参加いただき、表彰のほか特別トークセッションや懇親会を実施。胸を打つエピソードや学びの多いトークが続き、会場は終始、共感とあたたかな拍手に包まれました。当日の様子や参加者の皆さまの声を、写真とともにご紹介します。 受賞者の皆さまへのトロフィー・記念品授与 まずは受賞者の皆さまへの表彰が行われました。受賞者お一人おひとりが登壇し、トロフィーと記念品を受け取るとともに、投稿のきっかけや受賞の喜びなどを語りました。 受賞者お一人おひとりを表彰 贈呈されたトロフィー  全受賞エピソード つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2026】 つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2026】 受賞者の皆さまのコメントをピックアップしてご紹介します。 鈴木 開哉さん入賞ウィル訪問看護ステーションよこはま北山田(神奈川県)「訪問看護でしていることは外からは見えにくく、その価値が十分に評価されにくい面もあると感じています。だからこそ、自分たちのケアの意味や訪問看護の魅力を改めて発信したいと思い、応募しました。このような賞をいただき、大変嬉しく思っています」 坂口 葵さん入賞カンナ訪問看護ステーション(千葉県)「大変なこともありますが、訪問看護は毎日がとても楽しく、気づくと仕事のことばかり考えてしまうほど夢中になっています。これからは若手の方にもその楽しさを伝え、訪問看護の輪を広げていきたいです」 大賞に輝いたのは、OUR訪問看護ステーション(宮崎県)の中田 富久さんが投稿したエピソード「わたしらしさを、ともにつくる」です。血友病とHIVを抱え、幼少期から病院中心の生活だった利用者さんが、訪問看護を通して「自分らしい人生」を広げていくエピソードを投稿してくださいました。 大賞を受賞した中田さんのコメントを一部ご紹介します。 「私たちのステーションで初めて担当した利用者さんで、思い入れがあったことから、この事例を選びました。彼は社会とのつながりが薄く、当初はどのようにコミュニケーションをとればよいのか、私自身も試行錯誤しました。しかし、一つひとつのケアの必要性や意味、本当の願いを叶えるためのプロセスを根気よくお伝えする中で、少しずつ心が通うようになったと感じています。今も彼との関わりは続いています。この受賞を励みに、今後も一人ひとりの利用者さんと向き合っていきたいです」 中田さんのエピソードについて、特別審査員の高砂 裕子さんは次のように語りました。 「人生の『最期』に寄り添うエピソードも心に残りましたが、本エピソードは人生の『再スタート』に火を灯した点が印象的で、大賞とさせていただきました。全国訪問看護事業協会では、HIV感染者の方の在宅支援にも取り組んでいます。高齢化などで通院が難しくなった方が訪問看護を利用されるケースも増えており、このエピソードにあるように、どんな背景の方であっても、その方らしい暮らしを支える訪問看護の役割の大きさを改めて実感しました」 受賞エピソードをテーマにしたトークセッション 表彰後は、特別審査員の長嶺 由衣子さんと受賞者3名による特別トークセッションが行われました。3名のエピソードは、日本のグローバル化や超高齢化、施設内訪問看護など、多様な現場を映し出す内容で、訪問看護の本質や今後の展開を考える貴重な機会となりました。 エピソードの背景やその時の思いも語られ、会場も聞き入るトークセッションに 海外の方への訪問看護を経験した小川 祥子さんは、利用者さんとご家族が抱える不安や孤独に寄り添い、多職種と連携しながら信仰や言語の違いに配慮しながら看護に当たった様子を紹介。看護だけでなく「日本で安心して暮らせる居場所づくり」を重視したと語った点が印象的でした。施設内訪問看護で、8歳のお子さんを持つお母様のホスピスケアに携わった高橋 さゆりさんは、ご家族とともにお母様を支えつつ、施設全体でお子さんの成長も見守り、ご家族それぞれが自分らしく過ごせるよう支援したプロセスを語りました。お母様が旅立たれてからも、たくましく成長するお子さんの様子も語られ、会場はあたたかい拍手で包まれました。 寝たきりのご主人を認知症の奥様が支えるエピソードを投稿した米原 拓也さんは、「課題を解決するだけが看護のゴールではない」と実感したと語りました。多職種や地域と連携しながら利用者さんやご家族の「生きる力」を支えたプロセスを紹介し、訪問看護の本質や多様な支援のあり方を伝えました。 参加者の皆さまからは度々拍手があがり、また、受賞者の一人である八箇 多恵さんからは、富山市の取り組みも紹介されました。富山市では認知症等により見守りが必要な方へQRコード付きの見守りシールを配付する取り組みを実施しているとのこと。 訪問看護の多様な現場や想い、ご家族に寄り添う姿、多職種・地域での支援の重要性などが共有され、参加者にとって学びの多いトークセッションとなりました。 お祝いの声があふれ、笑顔に包まれた懇親会 式典終了後に懇親会を開催。大賞のエピソードは漫画化特典がありますが、懇親会の冒頭では、看護師で漫画家の広田 奈都美さんからもコメントをいただきました。 「訪問看護は、利用者さんの生きる力を支え、本当の願いを叶えるために、その方に合った関わり方や支援を考え、形にしていく仕事です。今日のエピソードでは、そのプロセスが具体的に語られましたよね。皆さんの経験は、全国のステーションの方々に多様なアプローチの仕方や考え方があることを知ってもらうきっかけになるはずです。今日の受賞式だけでなく、ぜひ日々の交流の中でもこうしたエピソードを語り合い、訪問看護の可能性をさらに広げてほしいと思います」 懇親会では、受賞者や特別審査員、協賛企業の皆さまが、このイベントの意義や訪問看護の今後の役割について語り合う様子が見られました。1日の訪問件数の調整やスタッフ間の教育・連携の工夫などを話題にするテーブルも。あちこちで熱心な意見交換が行われ、いつまでもお話が途切れない様子が印象的でした。 審査員の先生方のコメント 最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や参加者の皆さまにうかがった感想をご紹介します。 高砂 裕子さん(一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長)こうして受賞者の皆さまが集まれたことを、大変嬉しく思います。訪問看護は「正解のない仕事」だからこそ、悩みや葛藤も多いと思います。でも、だからこそ利用者さんやご家族の人生に寄り添う、忘れがたい瞬間も生まれるのだと改めて感じました。訪問看護では、多職種との連携も含め、「みんなで考えること」がとても大切です。ぜひこれからも、ステーション内外問わず、多くの方とご自身の体験を語り合っていただけたらと思います。 高橋 洋子さん(公益財団法人日本訪問看護財団 事業部部長)受賞者には若手の方も多く、40〜50代が中心といわれる訪問看護師の世界に新しい風が育っていることを嬉しく、頼もしく感じました。利用者さんの最期に寄り添うだけでなく、生きる力や希望を支える看護の大切さも改めて実感しました。看護師は病気だけを見る仕事と思われがちですが、こうしたアワードを通して、より多くの方に訪問看護師の多様な関わり方を知ってもらえたらと期待しています。 山本 則子さん(東京大学大学院医学系研究科 教授)数々のエピソードを拝読し、訪問看護は本当にクリエイティブな仕事だと改めて感じました。「本当の願い」という言葉が何度か出てきましたが、利用者さんの本当の願いに応えるためにあらゆる工夫を尽くすところが、この仕事の素晴らしいところだと思います。一方で、独居の方や老老介護の方が増えるなど、社会の変化に合わせて、医療保険や介護保険といった制度自体も変わっていくことが求められているのではないかと感じました。 長嶺 由衣子さん(東京科学大学 公衆衛生学分野 非常勤講師)受賞者の方々のエピソードから感じたのは、利用者さんやご家族を中心に置きながら、自分たちがどう変わるかを常に考えているという共通の価値観です。この柔軟性こそ、訪問看護の本質ではないでしょうか。また、受賞に至らなかった方も、エピソードを書いて送った行為自体を大切にしてほしいです。何が大事だったかを振り返り、自分の看護を客観視する時間を持つことは、必ず今後の成長につながると思います。 「第4回 みんなの訪問看護アワード」表彰式にご参加いただいた皆さまの集合写真 表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大賞エピソードの漫画も公開していますので、ぜひご覧ください。 取材・執筆:高橋 佳代子編集:NsPace編集部

生活保護制度(医療扶助) 訪問看護師が知っておきたい基礎知識 サムネイル
生活保護制度(医療扶助) 訪問看護師が知っておきたい基礎知識 サムネイル
特集
2026年3月31日
2026年3月31日

生活保護制度(医療扶助) 訪問看護師が知っておきたい基礎知識

レセプト業務を行っていると、患者さんの自己負担金が発生しないケースに出合うことがあります。これまで取り上げてきた医療費助成制度の中でも、生活保護制度による医療扶助は異質かもしれません。生活保護については、訪問看護ステーションにおけるレセプトの公費の欄に医療券番号を入力することになっているため、生活保護における医療扶助のしくみについて知っておく必要があります。 ※本記事は、2025年6月時点の情報をもとに構成しています。 生活保護制度とは 訪問看護を利用している方の中には、生活が困難な状況にあると思われる方もいます。所得が低く、自己負担額の支払いが難しい場合には、生活保護制度(以下、生活保護)の対象となるかもしれません。 日本国憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。生活保護は、最低生活の保障と自立の助長を図ることを目的とし、生活に困窮している人々に対し「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立した生活ができるように積極的に援助する制度です。 生活保護は世帯単位で申請しますが、世帯に資産や能力などがある場合には、まずは世帯員全員がそれらを活用し、最低限度の生活を維持することが求められます。言い換えると、生活保護を受けるには、資産や能力などが活用できないことが要件になります。また、扶養義務の履行ができるかどうかも保護の決定に影響を与えます。扶養義務者が扶養できるのであれば、生活保護は期待できません。 生活保護には8つの扶助があります。このうち、訪問看護ステーションに関係するのは、「(4)医療扶助」と「(5)介護扶助」です。 (1)生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)(2)住宅扶助:アパート等の家賃(3)教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費(4)医療扶助:医療サービスの費用(5)介護扶助:介護サービスの費用(6)出産扶助:出産費用(7)生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用(8)葬祭扶助:葬祭費用 生活保護が決定されれば、「最低生活費」といわれる決められた生活費が支払われます。この最低生活費は、年金や児童扶養手当など受給できる費用(収入)を控除して支払われます(図1)。 図1 収入がある場合の最低生活費(生活保護費) 生活保護を受けるまでの流れ 生活保護を受けたい場合、住所地の市区町村を管轄する福祉事務所の生活相談窓口に相談するところから始まります。生活保護の申請を行うと、主に福祉事務所が訪問調査や資産調査などを実施し、申請から原則14日以内に生活保護を受けることができるかどうかを審査し、判断します。生活保護の受給が開始されると、ケースワーカーが年数回の訪問調査を行い、生活に関する指導を行います。 このようなことから、市区町村のケースワーカーと訪問看護ステーションが連携し、生活保護の対象者について情報を共有しておくことも、訪問看護において有効でしょう。 生活保護による医療扶助とは 生活保護を受けている場合、国民健康保険の被保険者から除外され、「医療扶助」により医療サービスを受けられることが保障されています。 医療に関する制度として、健康保険法・国民健康保険法などの医療保険制度や、これまで解説してきたさまざまな医療費助成制度がありますが、これらの制度では支給の適用範囲に限りがあります。この範囲から外れるものについて、生活保護の医療扶助で賄われることになるのです。 訪問看護ステーションは指定医療機関として要届け出 生活保護を受ける方が医療扶助を受ける場合、福祉事務所などに申請しなければなりません。申請に基づいて認められると、「生活保護法医療券」(以下、医療券)または「診療依頼書」が発行され、この医療券によって指定医療機関で診療を受けることができます。 訪問看護ステーションも生活保護法の指定医療機関として都道府県に届出をし、健康保険や国民健康保険などと変わらないサービスを提供することが求められます。 なお、訪問看護療養費のレセプト請求は、都道府県の社会保険診療報酬支払基金へ請求します。医療券は1ヵ月ごとに発行されます。医療券から請求明細書に必要事項を間違いなく入力し、請求しなくてはなりません。また、医療券は1年間保管する義務があります。 医療扶助によって支給される可能性があるもの 医療扶助では医療のほかに次のものが支給される場合があります。 入院患者に対する日用品費 おむつ代 寝巻などの被服費 入院や退院、通院のための移送費 治療材料費(義肢や装具、眼鏡、収尿器、ストマ用装具など) 訪問看護には関係ありませんが、保険外併用療養費に当たる部分は、原則として医療扶助の対象として認められていません。 【生活保護による介護扶助について押さえておこう】医療扶助に関連する制度として、介護扶助についても簡単に紹介します。介護サービスも介護扶助として生活保護の対象です。介護保険では自己負担の割合は1割ですが、医療保険未加入者の場合、介護報酬の全額を介護扶助で負担します。介護扶助の場合、介護サービス指定事業者や指定居宅介護支援事業者が「介護券」を受け取ります。請求時は、介護券の必要事項を介護報酬明細書へ転記し、介護レセプトを国民健康保険団体連合会に提出します。 * * * 在宅医療において療養生活が長くなると生活が困窮する可能性があります。訪問看護師の皆さんも、基本的な生活保護に関する知識を身に付けた上で、利用者さんやそのご家族を支えていくとよいでしょう。 執筆:木村 憲洋高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科 教授武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部機械工学科卒業、国立医療・病院管理研究所研究科(現・国立保健医療科学院)修了。民間病院を経て、現職。著書に『<イラスト図解>病院のしくみ』(日本実業出版社)などがある編集:株式会社照林社 【参考文献】○ 厚生労働省:生活保護制度.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html2025/6/27閲覧

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