特集

5日前インフルエンザにかかり、ずっと排便がない場合【訪問看護のアセスメント】

高齢患者さんの症状や訴えから異常を見逃さないために必要な、フィジカルアセスメントの視点をお伝えする連載です。第4回は、インフルエンザにかかってからずっと排便がない患者さん。さて訪問看護師はどのようにアセスメントをしますか?

事例

5日前からインフルエンザにかかり、昨日から熱が下がってきた80歳女性。 ふだんは2日に1回の頻度で排便があるのですが、ここ5日間は排便がなく、何らかの対処が必要かどうか看護師は考えています。

便の頻度や便の性状は、▷食事の摂取量 ▷水分出納 ▷交感神経と副交感神経のバランスが乱れたことによる腸蠕動運動の変調 ── など、さまざまな要因で変化します。排便のケアを考えるにあたっては、便がどの程度、どこに貯留しているかをアセスメントする必要があります。

たとえば、下行結腸に便が貯留していないのに浣腸をしても排便は起こりません。腹部のアセスメントを十分に行ってからケアを考え、苦痛が最小限になるような排便ケアを考えていきましょう。

ここに注目!

●排便の頻度からみると、便秘状態と考えられる。
●インフルエンザ罹患の影響で、食事や水分の摂取、腸蠕動に変調があった後であり、便の貯留はどの程度かをアセスメントし、ケアを考える必要がある。


主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・便秘の経過(ふだんの排便の頻度と性状、最終排便からの日数、最終排便の量・性状、排便困難、ふだんの下剤や浣腸の使用、など)
・便秘の症状(腹部膨満感とこれに伴う苦痛、腹痛、腹部不快感、排ガス、便意、悪心、など)
・便秘の要因について(食事摂取量、食事内容〈繊維質の量、ヨーグルトなどの乳酸菌食品の摂取〉、水分摂取量、水分出納、など)

客観的情報の収集

便の性状と回数

これまでの排便、最終排便の状況について、記録を参照し、量と硬さを確認して現在の便の貯留量を推測します。
ふだんから排便量が少ない場合は、食事摂取ができていなければ、もっと便の量が減る可能性があります。

腹部の視診・触診

視診で腹部全体の膨満があれば、便やガスの貯留が疑われます。
皮下脂肪が少ない場合は、便の貯留部位が膨隆して視診できる場合があります。恥骨結合直上から左側腹部にかけてよく視診します。

触診は、恥骨結合の上から左下腹部を少し深め(3cmくらい)の位置で、手を動かして感触を探りながら行います。

普通便が貯留している腸は、鉛筆ほどの太さで柔らかく触れます。大量に貯留している場合は、より太く、範囲が広くなります。また、兎糞便化している場合は、コロコロと小さく硬く触れます。

腹部の打診

打診では、ガスが貯留している場合は鼓音となり、音の性質もポンポンと高い音になります。固形の便が貯留している場合は、その部分が濁音となります。左下腹部を重点的に打診して、どの程度、便が貯留しているかを見積もります。

腹部打診音とその評価

鼓音
(ポンポンと高く響く軽い音)
ガスの貯留であり、腸の存在部位では正常音。高い鼓音は、高度なガス貯留を示す
濁音
(ドンドンと響かない短い音)
水分が多い状態、充満した膀胱、肝臓、便、腫瘍

腸音

右の下腹部で腸音を1分間聴取します。腸の蠕動が低下している場合は、腸音は低く、頻度が少なくなります。

ストレスなどにより腸の運動を支配している自律神経のバランスが乱れると、下痢と便秘を繰り返す痙攣性の便秘となることがあります。精神的ストレスが大きいときに起こることが多い便秘の種類です。この場合は、腸蠕動が亢進していることも考えられます。

報告のポイント

・最終排便からの日数と腹部膨満感や嘔吐、食欲不振の症状の有無
・腸蠕動と排ガスの有無による腸管麻痺の可能性
・腹部膨満、打診・視診による便の貯留の位置や量の推定

執筆 
角濱春美(かどはま・はるみ)
 
青森県立保健大学
健康科学部看護学科
健康科学研究科対人ケアマネジメント領域
教授
 
記事編集:株式会社メディカ出版

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