特集

蓄尿バッグに尿がたまっていない場合【訪問看護のアセスメント】

高齢患者さんの症状や訴えから異常を見逃さないために必要な、フィジカルアセスメントの視点をお伝えする連載です。第9回は、膀胱留置カテーテル交換後、蓄尿バッグに尿がたまっていない患者さんです。さて訪問看護師はどのようなアセスメントをしますか?

事例

87歳男性。膀胱留置カテーテルを使用して排尿しています。
カテーテルの入れ替えを行い、その後、家族から「尿がたまっていない」と電話がありました。

あなたはどう考えますか?


アセスメントの方向性

膀胱留置カテーテル交換後に排尿が確認できない事例です。

まず大前提として、カテーテル交換の際は、カテーテルが膀胱に正しく挿入されていることの確認が必須です。具体的には、尿が流出されることを確認してから固定します。

カテーテル交換時には尿が流出することを確認できている場合は、乏尿(無尿)を疑ってアセスメントを行います。

もしも万が一、カテーテル交換をした時、蓄尿バッグやチューブ内へ尿が流出することを確認できていなかったのであれば、カテーテル位置が不良(膀胱まで至っておらず、尿道に留置されている)で、尿閉になっていることが考えられます。その際は、すぐに固定を解除する必要があるので、早急に報告し、対応してください。

ここに注目!

●カテーテル留置不良による尿閉の可能性がある
●カテーテル留置に問題がない場合、乏尿(無尿)の可能性がある


カテーテル留置状態のアセスメント①主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・留置カテーテル交換からの経過時間、交換時の違和感や疼痛・苦痛の訴え
・バッグ内・チューブ内に尿がわずかでもあるか
・亀頭部からの尿漏れはないか
・陰部や下腹部の疼痛・苦痛の訴え
・尿閉の症状(尿意、激しい尿意、腹部膨満感、腹痛、強い焦燥感や不安感、冷汗、など)

カテーテル留置状態のアセスメント②客観的情報の収集

脈拍・血圧測定

痛みや尿が排出できない苦痛で、脈拍や血圧が上昇することがあります。意識レベルの低い高齢者や認知症のかたでは、苦痛の有無を適切に伝えることが難しいため、バイタルサインから推測します。

膀胱内の尿貯留のアセスメント

膀胱は、正常であれば充満しても恥骨結合内部にとどまり、腹壁から視診・触診することはできません。

尿閉で貯留量が多くなった場合は、下腹部が膨満し、硬く触れます。打診すると濁音が聞かれます。

陰茎や陰嚢の観察

膀胱留置カテーテルのバルーンが周辺組織を圧迫し、血流障害を起こす可能性があります。組織は炎症を起こし、最終的には壊死に至ります。

陰茎や陰嚢の視診・触診を行い、発赤・腫脹・熱感、潰瘍や壊死を疑わせる皮膚の変化がないかを観察します。

乏尿(無尿)のアセスメント①主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・尿路結石や腫瘍による激しい疼痛、腰部や背部に放散するような痛み
・乏尿の原因となる循環血流量の減少を招く心不全のアセスメント、脱水の症状を確認する

乏尿(無尿)のアセスメント②客観的情報の収集

排尿量・性状・排尿行動に関する問診・観察

乏尿の基準は400mL/日以下とされています。

脈拍・血圧測定

腎臓への血液循環が低下している状態では乏尿になりますので、血圧の低下、脈拍の低下がないかを確認します。

身体への水分貯留のアセスメント

循環障害や腎障害では、全身性の浮腫があらわれます。顔面や全身の腫脹、重力がかかる部位の圧痕を確認します。水分出納を計算し、できれば体重もチェックできるとよいでしょう。

報告のポイント

・膀胱留置カテーテル交換後、蓄尿バッグ内に尿が確認できないこと
・カテーテルの尿道への留置の可能性と、陰部組織に与えた影響
・乏尿(無尿)の可能性

執筆 
角濱春美(かどはま・はるみ)

青森県立保健大学
健康科学部看護学科
健康科学研究科対人ケアマネジメント領域
教授

記事編集:株式会社メディカ出版

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