特集

自費の訪問看護

訪問看護師は保険外のサービスを提供することもあります。このシリーズでは、そんな保険外サービスとして、在宅治験と自費訪問看護を取り上げます。前回は、保険の枠外、利用者自己負担で提供する訪問看護です。

保険外で訪問看護を提供するには

医療保険・介護保険の制度のもとでは、皆さまもよくご存じのとおり、訪問回数の上限や利用限度額が決まっていて、本人が強く希望しても、保険制度が認める対象外であれば訪問看護を利用することはできません。

一方、保険制度の範囲を超えて、自己負担利用での訪問看護も提供している事業所も多くあります。

たとえば、24時間在宅看護が必要な人で夜間のケアに手が足りない、制度内の訪問看護だけではご家族の負担が大きすぎる場合や、旅行や家族の結婚式参列への付き添いなどに、自費サービスが威力を発揮します。

医師による訪問看護指示書

保険外で提供する看護であっても、主治医に訪問看護指示書を書いてもらうことは必須です。これは医療保険・介護保険での訪問看護と同様です。

たとえ医療行為の提供はなく、外出や旅行の付き添いなど療養上のケアだけであっても、医師の指示書は必要です。保険での訪問看護も利用されたうえで自費の訪問看護を利用される場合は、保険の分の指示書と自費の分の指示書を別々に発行してもらいます。

他に注意することとしては、保険での訪問看護と連続した時間で、自費枠の訪問看護を提供してはいけないといった決まりがあります。

旅をしたいご希望をかなえる支援

自費サービスならではの仕事の一つに、旅行への同行があります。

旅行同行の相談を受けると、その方が車いすか、自立歩行がどれくらい可能かを見きわめ、行く先々の交通機関やバリアフリーマップを手に入れることから始まります。

介護タクシーの手配や病院への連絡が特に重要です。万一、救急車に搬送されたときにすぐ診てもらえるよう、かかりつけ医の指示書、旅行先での対応可能な病院への紹介状も書いてもらいます。ご家族にも旅行に行くことで急変することもあると伝え、リスク説明はより慎重に行います。

最近は、バリアフリー、介護に対応しているホテルや旅館も増え、以前より旅行はしやすくなりました。「要介護になっても旅行に行きたい」というニーズは今後も増えそうです。

自費訪問看護のよさ

自費サービスと通常の訪問看護の大きな違いは、患者さん・利用者さんと接することができる時間の長さです。一緒に過ごす時間が長いことで、本人のご要望や、どういうリズムで生活しているのか、ふだんはどんなものを食べているのかなど、保険での提供では見えなかったものを把握することができます。

事業所と利用者さんの契約によりますが、訪問看護師という専門職の仕事ではないとされているような、たとえば車いすでのお散歩、買い物への同行、ご家族の話し相手になったり悩みを伺ったりも、保険外だからこそご希望に応えることができます。

自費訪問看護の料金設定

自費サービスは診療報酬とは違い、独自に価格を設定できますが、診療報酬よりも低い価格設定としている事業所が大半です。

保険制度では、患者・利用者さん本人はかかった金額の一部しか負担せず、残りは保険から支払われます。公費対象の人では全額公費負担のこともあります。保険で訪問看護を利用することは、自己負担分以外は保険から支払われるので、「あなたが利用できるのはここまで」という縛りがあります。

これが、自費で利用する場合は、全額自己負担になります。つまり、1割負担の人であれば、診療報酬と同額の自費サービスを利用すると、「同じ時間なのに10倍高い」ととらえられてしまいます。

保険内で安く訪問看護サービスを利用しなれている人に、いきなり10倍の値段を提示することはなかなか難しいため、自費サービスは、診療報酬よりも低い価格設定にせざるを得ないのだと考えられます。

また、保険診療では、事業所の収入は自己負担+保険からの支払です。看護師の給料もそこから出ます。自費サービスでは、もちろん保険からの支払はなく、患者・利用者さんからの自己負担だけです。入ってくるお金が少なければ、訪問した看護師が受け取る報酬も高くできないのが現状です。

ただ自費サービスは、認められたことしかできない保険サービスとは違い、事業所が価格やサービス内容を設計できる自由度があります。患者・利用者さんのニーズをうまくとらえたサービス提供によって、利益拡大、従業員への還元、地域でのブランド確立など、成功を収めている事業所も少なくありません。

記事編集:株式会社メディカ出版

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