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11 昨日の夜から排尿がない

高齢患者さんの症状や訴えから異常を見逃さないために必要な、フィジカルアセスメントの視点をお伝えする連載です。第11回は、ふだんは朝に排尿があるのに、昨夜から今朝まで排尿がない患者さんです。さて訪問看護師はどのようなアセスメントをしますか?

事例

おむつを使用して排泄している90歳男性。ふだんは朝に排尿があるにもかかわらず、昨日の夜から、朝までおむつに排尿がみられません。

あなたはどう考えますか?


アセスメントの方向性

尿が出ていない場合は、①尿の生成量が少なく、膀胱に尿がほとんど貯留していない(乏尿・無尿) ②尿の生成ができていて膀胱に貯留していても排出できない(尿閉) ── が考えられます。

①乏尿では、▷脱水や嘔吐、発熱、心臓のポンプ能力の低下などで腎血流量が減少して尿の生成ができない ▷腎機能そのものに障害がある ▷尿路結石や腫瘍の浸潤により尿管が閉塞し、膀胱に尿がたまらない状態 ── などが考えられます。

②尿閉は、膀胱よりも下位の障害、神経因性膀胱や前立腺肥大、尿道狭窄により起こるものです。患者さんの苦痛が大きく、放置しておくと尿貯留が上行性に広がり、水腎症や腎盂腎炎などを引き起こす恐れがあります。

乏尿(無尿)と尿閉では対処方法がまったく違いますので、これらが区別できるような情報を収集し、報告しましょう。

ここに注目!

●乏尿(無尿)により排尿がないのではないか?
●尿閉により排尿がないのではないか?


乏尿(無尿)のアセスメント①主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・尿路結石や腫瘍による激しい疼痛、腰部や背部に放散するような痛み
・乏尿の原因となる循環血流量の減少を招く心不全のアセスメント、脱水の症状を確認する

乏尿(無尿)のアセスメント②客観的情報の収集

排尿量・性状・排尿行動に関する問診・観察

乏尿の基準は400mL/日以下とされています。一回排尿量が150mLとすると、排尿回数では3回/日以下では注意が必要となります。最終排尿からの時間で換算すると、単純計算では8時間以上間隔が空くと要注意です。

ただし、ホルモンや血流量の関係で、日中は排尿間隔が長く、夜間には短くなるので、いつもの排尿時刻や回数と比較してください。

腎機能が保たれているのに尿量が少ない場合は、尿が濃くなります。最終排尿の色や臭気、いつもとの違いを確認してください。

脈拍・血圧測定

腎臓への血液循環が低下している状態では乏尿になりますので、血圧の低下、脈拍の低下がないかを確認します。

体温測定

高体温になると、不感蒸泄の増加で脱水状態となり、乏尿をきたす可能性があります。

身体への水分貯留のアセスメント

循環障害や腎障害では、全身性の浮腫があらわれます。顔面や全身の腫脹、重力がかかる部位の圧痕を確認します。水分出納を計算し、できれば体重もチェックできるとよいでしょう。

尿閉のアセスメント①主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・尿閉の症状(尿意、激しい尿意、腹部膨満感、腹痛、強い焦燥感や不安感、冷汗、など)
・尿閉の原因(前立腺肥大、尿線が細い、残尿がある、脳血管疾患や脊髄疾患等、神経因性膀胱となる要因、など)

尿閉のアセスメント②客観的情報の収集

排尿量・性状・排尿行動に関する問診・観察

最終排尿時刻を確認し、どれくらいの時間出ていないのか、排泄できずに貯留している尿量を見積もります。また、ふだんの排尿時に、尿線が細い、排尿に時間がかかる、出きらない感覚がなかったかを確認します。

脈拍・血圧測定

痛みや尿が排出できない苦痛で、血圧や脈拍が上昇することがあります。意識レベルの低い高齢者や認知症の患者さんの場合には、苦痛の有無をバイタルサインから推測してください。

膀胱内の尿貯留の確認

膀胱は、正常であれば充満しても恥骨結合内部にとどまり、腹壁から視診・触診することはできません。

尿閉などで貯留量が多くなった場合は、下腹部が膨満し、硬く触れます。打診すると濁音が聞かれます。

腎臓の叩打診

背部の肋骨の下縁くらいに手を置き、その手の上を叩きます。両側行います。

尿路結石や尿路の狭窄では、叩打診をした場合に響くような痛みを感じることがあります。

カテーテルを挿入しての尿排出の確認

医師の指示を得て行いましょう。カテーテルを挿入する経路に狭窄や閉塞がある可能性があるので、なるべく細いカテーテルを用いること、違和感があった場合は速やかに挿入をやめて、医師に相談することが必要です。

報告のポイント

・最終排尿時刻と尿の性状、本人の訴え
・乏尿または、尿閉の可能性があると判断したアセスメント結果

執筆 
角濱春美(かどはま・はるみ)
 
青森県立保健大学
健康科学部看護学科
健康科学研究科対人ケアマネジメント領域
教授
 
記事編集:株式会社メディカ出版

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