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[4]知っておきたい、結婚式の席に同行するときのマナーや事前準備

訪問看護師の方に知ってほしいマナーについての連載です。今回は、利用者さんが出席される結婚式に同行するときのマナーや事前準備について解説します。付き添い看護のプロにもお話を伺っていますので、参考になさってください。

大切な日だからこそ利用者さんに「恥をかかせない」看護を

訪問看護を担当する利用者さんから「結婚式に出席するため同行してほしい」と依頼された経験はあるでしょうか? このような依頼があったら、頼りにしていただけたことがうれしい反面、慣れていないために不安な気持ちになるかもしれません。

今回は、結婚式などのお祝いの日に、日頃から担当している訪問看護師として利用者さんに同行する際のマナーや事前準備のポイントを考えます。

某看護雑誌の企画で、看護部長のみなさまのインタビュー記事を連載したことがあります。そのときのある看護部長のコメントが大変印象的でした。
「患者さんに恥をかかせない。それが看護よ」
この言葉は、特別な行事に参加する利用者さんをサポートする訪問看護師のみなさまにとってもキーワードになるのではないでしょうか。

付き添い看護のプロ、前田和哉さんにお話を伺う

オーダーメイドの付き添い看護サービス「かなえるナース」を立ち上げられた株式会社ハレ取締役代表の前田和哉さんに伺ったお話をご紹介します。同行する際のマナーから、事前に準備しておくこと、確認しておくことなど、知っておきたいポイントを教えていただきました。

― 結婚式に出席する方に同行する場合、服装はどのようにされていますか?

[前田さん]
礼服にしています。
ラフな平服で同行したケースで、両家対面の際に、同行した側の方たちではなく、相手方のご家族が看護師の服装について難色を示した、という話を聞きまして。
依頼者のご迷惑にならないよう、そして式に礼意を表すためにも基本的に礼服を着用するようになりました。

― 服装は、礼服か礼服に準じたものが適切と考えたほうがよいですね。必要物品を入れるバッグなどの持ち物も、その場にマッチした外見かどうか、事業所内で確認しておくとよいかもしれませんね。できるだけ物々しくならないように配慮することも必要そうです。
同行する対象の方の病状によって持参する物品は違ってくると思いますが、マナーの観点から現場で「持参すればよかった」と思われた物品はありますか?

[前田さん]
はい。
まず思い出すのは、粘着テープでできたクリーナーです。依頼者である男性が着用された礼服にフケが目立ったときがありまして。髪に寝癖がついたまま、といったこともあり、ドライシャンプーなどでさっと保清して差し上げるなどもよいと思い、準備したりもします。

それから、「替え用のマスク」。感極まって、涙を流されてマスクが濡れてしまったためです。

他は「ストロー」でしょうか。水分摂取をするためにご自宅では吸い飲みを使っているとしても、祝宴の場ですからストローのほうがよいようです。会場の方にご準備をお願いすることもよいと思います。ただ、持参していたほうがさっと使えてよいですね。

在宅療養では、自然にそろっている何気ない用品がありませんから、その点を意識して持参物品をそろえるといいでしょうね。

― なるほど。確かに、と思うことばかりです。
式次第などスケジュールへの配慮にはどのようなことがあるでしょうか。

[前田さん]
何といっても記念写真の撮影への配慮は欠かせません。
みなで記念写真などを撮影するタイミングに、トイレに行っていたとか、別室で何かしら処置をする必要ができたなどで、写れなかったら大変残念です。また、例え写真に入れたとしても、そのときに疲れ果てた状態で、疲れた表情のまま写ってしまわないように、と考えます。いつごろ何をどう対応するべきか、と考えながら注力します。

― 大事な点ですね。ご本人は、写真にはよい表情で写りたいでしょうし、ご家族や縁者の方たちもそれを望んでいると思いますし。
式には最初から最後まで出席する方が多いのでしょうか。

[前田さん]
いえ、そんなことはないです。
容態によっては、式の最初から最後まで出席することにこだわらず、乾杯とか、写真撮影とか、要所のみ出席していただくような方向も看護職としてご提案します。

― どのくらいの時間でお疲れになるとか、望ましい姿勢やお薬を飲むタイミングなど、状況に応じて看護判断を行い、おすすめの方法をご提案できるとよいですね。依頼したご本人やご家族も安心して過ごすことができると思います。

最後に、日ごろ訪問看護をしている方から結婚式の付添いの依頼があり、慣れていない対応のため不安のある方に向けてアドバイスをお願いできますか?

[前田さん]
特に付き添い看護は難しいことではないです。基本的に病院受診に同行することなどと同じですよ。

― ありがとうございました。

事前準備も十分に行うことが大切

同行当日までに、主治医とご本人やご家族と打ち合わせ、輸液ポンプや酸素ボンベ、吸引器などを持ち込む必要がある場合は、それらをどのように配置し、使用するかをしっかり検討し、結論を出します。結論は、ご本人やご家族と共有するだけでなく、会場の担当者とも必要な部分のみ共有しておくとよいでしょう。

また、会場までの交通や会場の下見も必要です。車椅子で利用できるエレベーターがあるかなどバリアフリーに関する情報も調べておきます。会場の担当者とは、容態が変化したときに使用できる別室があるかどうか、横になったほうがよいときの対応方法なども打ち合わせておきます。当日、何かあったときにすぐに連携できる体制を整えておくと安心です。

なお、当日の飲食については、こちらの役割をまっとうするために遠慮させていただくことを伝えておくとよいです。

事前準備を十分に行っておけば、当日は、普段どおり、病院受診に同行するときと同じように、観察し判断し、必要な対応をとれるのだと思います。

以上、計4回にわたって、マナーにまつわる記事を連載いたしました。参考になる点がありましたら幸いです。

わが国では1992年に訪問看護ステーション制度が発足し、看護職の所長が誕生して30年たちました。今後も、訪問看護時のマナーを継続的に話題にしていくことが、訪問看護領域のさらなる成熟につながるように思います。

ワンポイントメモ
●同行に訪問看護指示書は必要?
今回ご紹介したような結婚式への同行は保険外対応として行います。そのため訪問看護指示書は必須ではありません。

ただし、利用者さんの状態によっては、出先の状況に応じて医師の指示に基づく医療行為が必要であるなど、訪問看護指示書が重要となるケースも少なくないと思います。主治医と利用者さん、ご家族と事前の打ち合わせする際に、訪問看護指示書の必要性について確認しておくとよいでしょう。



執筆 小林 光恵
看護師、作家
 
●プロフィール

看護師、編集者を経験後、1991年より執筆業を中心に活躍。2001年に「エンゼルメイク研究会」を発足し、代表を務める。2015年より「ケアリング美容研究会(旧名・看護に美容ケアをいかす会)」代表。漫画「おたんこナース」、ドラマ「ナースマン」の原案著者。

記事編集:株式会社照林社

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