特集

ケアマネは多職種との信頼あってこそ司令塔

新宿区一帯で在宅ケアを提供している事業所の有志が集まった「新宿食支援研究会」。「最後まで口から食べる」をかなえるために、日々、多職種での支援を実践しています。本研究会から、各職種の活動の様子をリレー形式で紹介します。第6回は、ケアマネジャーの森岡真也さんから、訪問看護師を含む多職種チーム構築を紹介します。

サービス調整だけではないケアマネの仕事

私が担当している地域、東京都新宿区は人口343,662人、高齢者人口67,187人、高齢化率19.6%(2022年5月1日現在)。新宿というと、一般的には高層ビル群や歌舞伎町の繁華街がクローズアップされるため、生活している人が少ない印象ですが、実際にはかなりの数の高齢者が住んでいる地域です。

地域的な特徴としては、独居高齢者・高齢者のみ世帯の比率が多く、また高齢化率が50%を超える大規模な都営住宅が2ヵ所あります。区内には大規模な病院が数多くあり、難病などで療養生活を送る方も多くいらっしゃいます。そのためか、訪問診療や訪問看護などの在宅医療が昔から充実している地域でもあります。

そんな新宿区で私がケアマネジャーの仕事を始めて16年になります。ケアマネジャーは一般的に、利用者に適したケアプランを作成し、利用者とサービス提供事業者の間に立って連絡調整をする、いわば介護保険の道先案内人のような専門職。最近では、介護保険外のサービスを調整する機会も多くあります。

ケアマネジャーとして働くためには、もちろん介護保険の幅広い知識が必要ですが、活動する地域のさまざまなフォーマル・インフォーマルサービスを提供する方々と関係を作り、利用者に紹介できるよう準備することも重要なのです。

顔の見える関係で把握できた情報が在宅ケアチーム構築につながる

新宿食支援研究会に参加したのは、同会設立時の2009年。以降、研修会やワーキンググループ、イベントなどでさまざまな方と出会い、その出会いが現在の私の仕事の糧となっています。

在宅生活の支援では、さまざまな問題が複合的に重なるケースが少なくありません。訪問看護師さんには、疾病上の管理のみならず、生活上の支援や家族関係の情報収集など、さまざまなことをお願いしています。また、看護師さん個々人のスキルや資質を頼ってケースを依頼することもあります。

新宿食支援研究会に関係している看護師さんとは、研修会などを通してスキルと顔の見える関係ができており、また食支援全般に深い知識と興味がある方が多いため、摂食嚥下機能障害をはじめ、さまざまな問題のある利用者の支援をお願いすることが多くあります。

病院などで組織内にすでにある多職種チームで支援を行うのとは違い、在宅ではさまざまな制約があり、支援の工夫が必要です。たとえば、本来必要な専門職が地域に不足している、または経済的な面で導入ができないため、多職種からその役割を補完してケアチームを組み立てることが多くあります。本来ならばST(言語聴覚士)の導入が必要なケースに、摂食嚥下訓練に詳しい看護師さんに入ってもらうことなどが過去にありました。

また、摂食嚥下機能に問題があり、一回の食事介助で少量しか食べられない方の食事回数・水分補給の回数を増やすため、ヘルパー・看護師・理学療法士・言語聴覚士・医師・歯科医師・管理栄養士など訪問するすべての職種の方々に、こまめな食事介助、水分補給の介助をお願いしたケースもあります。

このように、在宅ケアチームの構築には、地域の専門職個々人のスキルや資質を把握しておくことが重要となります。この把握にはやはり、実際に一緒にケアチームとして仕事をする前に、さまざまな研修会などで知り合えていることが役立っています。

多職種が常駐し、介護相談できるカフェをオープン

新宿食支援研究会でよく使われる「MTK-H®」という言葉があります。「M」は「見つける」、「T」は「つなぐ」、「K」は「結果を出す」、「H」は「広める」という、食支援にかかわる人の役割を表しています。

私たちケアマネジャーの役割の一つは、「T」、つなぐこと。在宅生活を希望されているご本人にとって、現況最適な在宅ケアチームを構築する役割です。そのためには、まず「M」、見つける役割を担う人が必要となります。われわれケアマネジャーが見つける人はもちろん、ご家族や地域住民の方です。ケアマネジャーとして、地域住民の方とつながって地域の社会資源を育んでいくことも、重要な仕事です。

新宿食支援研究会では、現在ワーキンググループとして地域住民の方とともにプロジェクトを進めています。

また法人事業として2022年6月に介護事業所併設のカフェ「介護相談もできるカフェ Sunnydays Café」をオープンしました。このカフェは、地域の喫茶店として機能しつつ、ケアマネジャーをはじめ介護の専門職がカフェに常駐し、地域の方の介護相談がある場合にはさりげなく寄り添いたいという思いでつくりました。Sunnydays Café内には、地域の方と医療・介護・福祉の関係者をつなぐ、さまざまなしくみを用意しています。

ケアマネジャーとして、多くの「K」、つまり結果を出す看護師さんをはじめとする医療・介護・福祉の専門職と、地域住民をつなぐ役割をこれからも果たしていこうと考えています。

訪問看護師さんには、ぜひ私たちケアマネジャーと直接つながる機会を持っていただき、地域の看護師さんの情報を気軽に利用者・家族・地域住民・専門職の方と共有できるよう、必要な情報をケアマネジャーに教えていただければと思います。

第7回へ続く

森岡真也
ケアマネジャー
株式会社モテギ新宿ケアセンター長
新宿食支援研究会


Sunnydays Café
https://sunnydayscafe.hp.peraichi.com/

記事編集:株式会社メディカ出版

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