【梅雨に注意】気象病とは?気圧変化による体調不良の原因・対策を解説
梅雨の季節には、「気象病」と呼ばれる体調不良が起こりやすくなります。気圧変動が激しい日に頭痛や肩こり、めまい、倦怠感などが起きた場合は、気象病を疑いましょう。原因不明の体調不良として見過ごしてしまうのではなく、セルフケアや医療機関への受診をすることで、生活の質を改善できる可能性があります。 この記事では、気象病の症状やメカニズム、セルフケア、対策などについて詳しく解説します。 気象病とは 気温・湿度・気圧の変化によって体の不調を引き起こす気象病。日本では3~7日に1回程度の頻度で雨が降る上に、梅雨の40~50日ほどはさらに天気が崩れる日が増えます。気象病の症状の強さには個人差があり、我慢できるものから薬で対処しなければ起き上がることすらままならないものまでさまざまです。中には気象病が日々の生活や仕事などに大きな影響を及ぼしている方もいます 。 気象病のメカニズム 気象病は、天候の変化が自律神経に影響を与えることで症状が出ます。自律神経は心身の活動を高め、痛みにも関連する「交感神経」と、心身の休息やリラックスする際に働く「副交感神経」で成り立っているため、このバランスが崩れると心身の不調につながるのです。また耳の中にある内耳には気圧を感知するセンサーがあり、気圧の変化を敏感に察知し前庭神経が過剰に興奮することで、自律神経のバランスが乱れ症状が現れるとも考えられています。心疾患・低血圧・リウマチ・喘息など基礎疾患がある場合や、もともと頭痛や関節痛がある方は気象の変化によって症状が悪化することもあるため注意が必要です。 天候の変化には、気圧だけではなく気温と湿度も関係しています。例えば、梅雨の時期は雨の日と晴れの日で気圧と気温、湿度のいずれも変化します。また、夏から秋のような季節の変わり目には朝晩の寒暖差が大きくなり、気象病の症状が現れる場合があります。現れる症状と症状の強さは人それぞれですが、気圧と気温、湿度のどれが変化したかによって症状は異なる傾向にあります。 一般的な症状の現れ方としては、気圧の変化では倦怠感や眠気、めまい、頭痛。気温の変化では肩こりや頭痛、気分の浮き沈み。湿度の変化ではこれらの症状に加えて関節痛が悪化するとされています。 >>関連記事自律神経について詳しく解説しています。自律神経の不調の原因とセルフケアについて 気象病の予防法 気象病を予防するためには、自律神経のバランスを整えることが重要です。自律神経のバランスを保つために、ストレスを溜め込まないように心がけましょう。また、次のような習慣を心がけることで、気象病の症状が現れにくくなります。 朝に日光を浴びる 朝に日光を浴びることは、身体の生活リズムを整えるために重要です。太陽光は体内時計をリセットし、睡眠を促すメラトニンというホルモンの生成を促進します。その結果、夜の睡眠の質が高まり、日中も活動的に動けるようになります。例えば、朝起きたらカーテンを開け、自然光を浴びながら朝食をとることを習慣にするのもよいでしょう。 1日3食 規則正しい食生活を心がける 1日3食の規則正しい食生活を心がけることが重要です。特に朝食は、寝ている間に下がった体温を上げ、身体を目覚めさせる役割を果たします。また、朝食をとることで腸の活動が活発化し、自律神経を活性化させるホルモンが生成されます。 運動を習慣づける ストレスを受けたときには、通常交感神経が優位になります。身体を動かすことで、交感神経から副交感神経に切り替えやすくなります。運動習慣がない方は、簡単なストレッチからはじめて少しずつ強度が高い運動に切り替えていくとよいでしょう。 寝る前のスマホ操作を避ける スマホやテレビ、パソコンのモニターなどから放出されるブルーライトは、交感神経を刺激することで寝つきを悪くしたり、睡眠の質を低下させたりします。就寝の1時間30分前からスマホの画面やテレビなどは見ないようにしましょう。 胃腸の状態を整える 近年、「胃脳相関」「脳腸相関」が注目されています。胃腸の状態が悪いと、脳・自律神経へも悪影響とされています。胃腸の状態を安定させるために、ヨーグルトをはじめとした発酵食品を定期的にとることをおすすめしています。免疫系にもプラスの働きがあるため、感染症なども引き起こしにくくなります。 気象病のセルフケア 気象病の症状を軽減できる可能性がある簡単なセルフケア方法をご紹介します。 耳マッサージ 耳を軽くつまんだ状態で上下左右に引っ張ってそれぞれ5秒キープします。耳を折り曲げた状態を5秒キープします。耳に手のひらを当て、円を描くように後ろ向きに5回まわします。 これを朝・昼・晩の1日3回行いましょう。内耳周辺の血行が促されることで、気象病の症状が和らぐ可能性があります。 タオル体操 首にタオルをかけて、両端を握ります。前方の斜め上に向かってゆっくりと引っ張ります。目線を上げて首の力を抜き、タオルにゆだねた状態で10秒かけてゆっくりと呼吸します。タオルに首をゆだねたまま顎を10回上下させます。 首から耳にかけての血流が促され、自律神経の乱れを整えることが期待できます。これも1日3回を目安に行いましょう。 痛み日記をつける 痛み日記をつけることは、気象病の症状と天気の関係を把握する上で役立ちます。天気や気圧の変化、痛みの強さや発生時期などを記録しましょう。1ヵ月ほど続けると、身体のリズムと天候の関係が見えてきて、適切なタイミングでセルフケアができるようになります。 気象病の治療法 気象病の症状が強い場合、医療機関では次のような薬が処方されます。 漢方薬 第一選択薬として、漢方薬を使用することが多いとされています。漢方薬には身体を温めたり、血行を促進したりする作用があり、気象病の症状緩和に役立つことがあります。 抗めまい薬 めまいや吐き気などの症状に対しては、乗り物酔い止めの薬が使用されますが、それでも改善されない場合には抗めまい薬(内耳循環障害改善薬)が選択されます。 鎮痛剤 頭痛や肩こり、腰痛、関節痛などの症状を軽減するために、一般的な鎮痛剤を使用することがあります。 * * * 気象病は天気が悪いことが影響して体調が悪くなるため、原因がわかりづらく、周りの人にはなまけているように見えるかもしれません。しかし、現れる症状には個人差があり、人によっては生活に支障をきたす可能性があります。利用者さんやその家族が、天気が悪いときにだけ原因不明の体調不良が起きる場合は、気象病である可能性も検討してみましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇奈良県医師会「「気象病」って何? ―天気で痛みが出てくる―」https://nara.med.or.jp/for_residents/6421/2024/5/10閲覧