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表皮水疱症の医療費助成制度&学校生活における支援【特別トークセッション 第2回】
表皮水疱症の医療費助成制度&学校生活における支援【特別トークセッション 第2回】
インタビュー
2026年7月28日
2026年7月28日

表皮水疱症の医療費助成制度&学校生活における支援【特別トークセッション 第2回】

表皮水疱症の治療・療養を継続していくためには、社会保障制度の活用が不可欠です。本連載では、自家培養表皮移植による再生医療を行う蒲郡市民病院の医師、皮膚・排泄ケア認定看護師、高校2年生の当事者・山崎璃斗さんとお母様をお迎えしたトークセッションの内容をお届けしています。第2回のテーマは、医療費助成制度や学校生活についてです。 久保 良二(くぼ りょうじ)先生蒲郡市民病院 皮膚科 部長。日本専門医機構認定皮膚科専門医。専門領域は乾癬、白斑、褥瘡。名古屋市立大学医学部臨床准教授、蒲郡市民病院特定認定再生医療等委員会委員。藤田 順子(ふじた じゅんこ)さん蒲郡市民病院 看護部/皮膚・排泄ケア特定認定看護師。山崎璃斗さんの同院での初めての手術をきっかけに介入を開始。 山崎 璃斗(やまざき りと)さん栄養障害型表皮水疱症の当事者。現在はS高等学校(通信制)の2年生。幼少期より皮膚や粘膜の脆弱性に伴う広範な創傷や、関節の拘縮(屈曲変形)などの症状を抱えながら療養を継続。2020年より蒲郡市民病院にて自家培養表皮による再生医療を複数回受けている。山崎 奈美(やまざき なみ)さん璃斗さんの母 / 看護師・DebRA Japan(表皮水疱症友の会)所属。璃斗さんの誕生直後から日々の洗浄・ガーゼ処置・栄養管理を担ってきた。最新の知見を集めながら、在宅ケアを実践。救命救急受付の仕事に就いている。取材協力蒲郡市民病院株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC) ※本文中一部敬称略※本記事は、2026年6月4日時点の情報をもとに構成しています。 指定難病制度・医療費助成の実際 ――表皮水疱症の治療・療養に欠かせない社会保障制度について教えてください。 久保: まず、指定難病制度やお子様の場合は自治体の小児医療費助成制度などが代表的な保障制度になるかと思います。表皮水疱症の患者様は全国で500~1,000名程度と言われていますが、重症度によっては指定難病制度の医療費助成の対象にならないケースもあり、その場合は自己負担が大きくなります。また、使い勝手が良く、ぜひ在宅で使っていただきたい被覆材が現行の制度では処方できないこともあり、そういった部分も改善されていくと良いと思います。 山崎(母): ガーゼ類は診療報酬で上限1,000点(1万円分)と決まっていて、被覆材は上限なしなんですが、実際にはガーゼがその点数分では収まらない現実もあります。 ※表皮水疱症患者等に対しては「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料(C114)」が設けられており、ガーゼ等の衛生材料費が含まれる。 でも、璃斗が幼いころは被覆材もすべて自費でしたし、東京の特定の病院でしか手に入らないものがあって、東京に住む親族に大きな病院で取り寄せて買ってもらう…ということもしていました。今は資材がかなり手に入りやすくなり、保険適用範囲も広がっているので助かっています。今は小児医療費助成制度も使えるので、本当にありがたいですね。 暮らしの中で積み重なる経済的負担 ――医療費以外の「見えにくいコスト」にはどのようなものがあるでしょうか。 藤田: お母様から「今住んでいる地域では、車椅子が借りられなかった」と伺ったときは驚きました。当時、璃斗さんにとって車椅子は必要不可欠なものだったので、そういった支援がいきわたると良いと思っています。 山崎(母): そうですね。車椅子は15万円程度かけて用意しました。当時は再生医療も何もやっていない時期で、皮膚から栄養も出て行ってしまうので鉄分が全然足りなくて貧血がひどく、輸血ぎりぎりの状態でした。すごく疲れやすく、熱も出やすくて、足もうまく伸ばせないので、どこか行くにも車椅子がないと無理でした。でも、「障害」と認定されるほどではないため車椅子の貸し出しや助成金などは出ないという状況だったんです。 あとは、皮膚を掻くことを抑制するための装具をつけていたこともあるのですが、これも保険適用にはならなかったので、数万円単位の自己負担が発生する…ということもありましたね。 在宅療養がご本人・ご家族にもたらす変化 ――保育園や学校での生活についてはいかがでしたか。印象的に残っているエピソードも教えてください。 山崎(母): 自家培養表皮移植手術をするまでは歩行がうまくできなかったので、特別支援学校への進学も考えたのですが、最終的にはなんとか地域の保育所や小・中学校の特別支援学級に通学することができました。我ながら、毎日の送り迎えを、よくやりきったなぁと思います。 保育園時代は、慣らし保育を半年程度行いながら、受け入れてくださって、ありがたかったです。給食も、食材を細かくカットしながら、みんなと同じものを食べさせてくださいました。ただ、おやつについてはおせんべいなどを食べると口の中が切れてしまうので、別メニューのことが多かったです。本人が「僕だけいつもバウムクーヘンだ!」と怒っていることもありましたね…。 あとは、中学校で反抗期にさしかかったときに親子喧嘩をして、「もう歩いて自分で帰りなさい」と言ってしまったこともありました。結局ゆっくり歩く璃斗の後ろからついていっていたのですが(笑)。 璃斗: 保育園の時のことは覚えていませんが…中学校のときに徒歩で帰ったときは、いつもと違って友達と一緒に帰れたので、僕としては楽しい思い出です(笑)。 ――ご本人は楽しかったんですね! お友達と遊ぶときなどに気を付けていたことはありますか? 璃斗: 小学校のときは、積極的に動く子が多いのであまり近づけなくて、基本的に1人で遊んでいることが多かった記憶があります。 山崎(母):年齢的にまだ加減のわからないお子さんもいるし、中には多動傾向にあるお子さんもいるので、先生方も苦労して守ってくださいました。それでも、集団生活ですから誰かに押されたり、物を投げられたりして怪我をすることはあります。普通の子なら怪我に至らないようなケースでも、この子の場合は出血を伴う大怪我になってしまうので、相手の子や先生もショックを受けますし、本人も当然痛いです。 だから「自分から距離を取りなさい」と教え込んできました。なので、急に誰かが動いたときにぶつからないように集団から少し離れたり、階段も最後に登ったり、といったことを今では自然に自分でやるようになっています。 ――中学校に上がってからはいかがでしたか? 璃斗: 中学では、病弱・身体虚弱特別支援学級に3人しか生徒がいなかったんですよ。だからその子たちとはすごく仲が良くなって、教室でトランプとかをして遊んでいました。 山崎(母): 中学校では、璃斗が他の生徒と物理的な距離をとれるように大きなサイズの机を作ってくださったんです。他の子に必要なオストメイト対応トイレも用意されていましたし、とても手厚かったです。校長先生が毎朝送り迎えの時に声をかけてくれたり、何かあれば教頭先生や主任の先生がしっかりお話を聞いてくれたりと、本当にありがたかったですね。 ――現在は通信制のS高等学校2年生とのことですが、現在の生活やお友達との関わりについてはいかがですか? 璃斗: 中学の同級生とも仲が良かったですが、人数が少なかったので、友達付き合いは今の方が断然多いです。チャットアプリで思いついたことを気軽に話したり、アバターをつくってVRChatしたりしています。「いつ見ても接続中だな」という人もいますし(笑)、時間を気にせず遊んでいます。 ――オンラインでいつでも繋がれる環境だからこそ、以前よりもお友達付き合いが増えているんですね。ありがとうございます。 次回は、表皮水疱症の「食事と栄養管理」の実際について、お話を伺っていきます。 取材・執筆・編集: NsPace編集部 【参考】〇難病情報センター「表皮水疱症(指定難病36)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/53382026年7月17日閲覧〇今日の臨床サポート「c114在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料」https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_2_2_1/c114.html2026年7月17日閲覧

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策
訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策
コラム
2026年7月28日
2026年7月28日

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策

訪問看護ステーションの立ち上げに向け、入念に準備をしていても、開業後に思わぬ壁にぶつかることがあります。たとえば、利用者が集まらない・資金が底をつく・スタッフが離職するといった状況は、よく見られるケースです。こうした状況を事前に知っておくと、先まわりして対策を立てやすくなるでしょう。 そこで今回は、営業・収益管理・組織運営の3つの観点から、立ち上げで失敗しやすいポイントと対策を詳しく解説します。 営業・集客で陥りやすい落とし穴 訪問看護の営業は、一般的な営業活動とは少し異なります。良いケアだけで利用者が増えるわけではなく、紹介もととの関係づくりや効率的な動き方が欠かせません。この違いを理解した上で、開業時の営業・集客のポイントを抑えましょう。 開業してもすぐには依頼が来るわけではない 訪問看護ステーションを開業後、依頼が来るまでには時間がかかります。訪問看護の場合、利用者が自分で探して申し込むケースは少ないです。ケアマネジャーや病院から紹介を受けて利用が始まることがほとんどです。そのため、紹介もととの関係づくりが重要になります。 対策として、開業前からケアマネジャーや病院への挨拶まわりをすると、早期の利用者獲得につながります。 エリアを広げすぎて訪問効率がさがる 依頼を断りたくないあまりエリアを広げすぎると、移動時間が増え、1日に訪問できる件数が減ります。訪問件数が減れば売上も伸びず、看護師の負担だけが増える状況にもなりかねません。 こうしたリスクを避けるためには、エリアを絞っておくのが大切です。目安として、事業所から車で片道30分以内に訪問できる範囲を意識しましょう。 なお、中山間地域や過疎地域など、地理的な事情でやむを得ず移動距離が伸びてしまうエリアもあります。その場合は、収支計画書に無理がないかをしっかり確認しましょう。 営業活動がおろそかになる 現場が忙しくなると、営業は後回しになりやすいです。気づけば、最後にケアマネジャーに挨拶したのがいつか分からなくなってしまう場合もあります。 これを防ぐには、営業を個人任せにせず、組織全体としてのしくみづくりが大切です。たとえば、ケアマネジャーへの挨拶まわりやチラシの送付などを、誰がいつ担当するか月間スケジュールとして決めておきましょう。 管理者だけが営業を担うのではなく、メンバーも一緒に動く体制づくりが、利用者の安定した獲得につながります。 収益管理で陥りやすい落とし穴 訪問看護の経営では、収益を取りこぼしたり、気づかない間にコストが膨らんでいたりするケースもあります。ここでは、加算の見逃しや人件費負担など、注意すべき点をみていきましょう。 加算の算定漏れ 加算の算定漏れは、大きな機会損失につながります。緊急時訪問看護加算や特別管理加算など、算定要件を満たしているにも拘わらず、説明・同意の不足やレセプトのチェック漏れによって算定していないケースは少なくありません。 この対策として、定期的に加算対象者のリストを確認し、算定漏れを防ぐしくみをつくりましょう。 人件費率の高止まり 訪問看護は人件費の割合が大きく、売上が少しさがるだけで一気に経営が苦しくなりやすい事業です。スタッフごとの訪問件数(稼働率)を定期的に把握し、人件費率を意識した経営管理を行いましょう。 特に、2〜3か月先の稼働率を予測しながら管理していくと、急な資金繰り悪化を防ぎやすくなります。 人材紹介会社への過度な依存 人材紹介会社への過度な依存は、利益を圧迫する要因のひとつです。一般的に、紹介手数料は年収の20〜35%程度かかるため、採用コストが膨らみ、人件費率をさらに押し上げてしまいます。 採用を行う際は、自社サイトやSNS、スタッフからの紹介(リファラル採用)を活用して、コストを抑える工夫が必要です。 報酬改定による収支変化の見込み不足 診療報酬・介護報酬は、2〜3年ごとに改定されます。そのたびに収益構造が変わるため、改定の影響を考えていないと、想定していた売上や人員計画が崩れてしまう場合もあります。 とはいえ、改定内容を事前に把握することはできません。そのため、報酬がさがった場合や現状維持の場合など、複数のシナリオを想定しておくとよいでしょう。 組織運営で陥りやすい落とし穴 立ち上げ期はスタッフの人数が少ないため、組織運営について深く考える機会は少ないかもしれません。しかし、スタッフが増えるにつれて、コミュニケーションが複雑になりやすいです。 情報共有が行き届かなくなったり、メンバー間で価値観のズレが生じやすくなったりして、チームの一体感が損なわれるリスクがあります。 経験則として、5〜8名につき1名程度のリーダー候補を早期から育成・配置し、管理者とスタッフの間をつなぐ役割を担わせると、組織が大きくなっても一体感を保ちやすくなります。育成は「いつかやる」では遅く、立ち上げ期から意識的に動くようにしましょう。 まとめ:失敗しやすいポイントを知り、長く続く経営を目指そう 立ち上げの失敗は、準備不足よりも知識不足から来ることが多いです。営業・収益・組織ーーそれぞれの落とし穴を事前に知り、対策を考えておけると、トラブルを未然に防ぎやすくなります。 事業計画はケアプランのように、状況の変化に合わせて更新していくことが大切です。管理者だけでなく組織全体で、気づいたときに修正できるしくみづくりが、長く続く経営の基盤となるでしょう。 監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士)株式会社UPDATE代表取締役2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。 現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。そのほか、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。

第8回日本在宅医療連合学会大会レポート!訪問看護に役立つ注目プログラム
第8回日本在宅医療連合学会大会レポート!訪問看護に役立つ注目プログラム
特集
2026年7月28日
2026年7月28日

第8回日本在宅医療連合学会大会レポート!訪問看護に役立つ注目プログラム

2026年7月4日・5日の2日間、札幌で「第8回日本在宅医療連合学会大会」が開催されました。在宅医療に携わる多職種が全国から集まる年に一度の大会に、NsPace編集部も参加してきました。会場の熱気や、訪問看護師の皆さんにもぜひ知っていただきたいプログラムの数々を、参加レポートとしてお届けします。 第8回日本在宅医療連合学会大会とは 日本在宅医療連合学会が開催する全国大会で、今回で8回目を迎えます。会期は2026年7月4日(土)・5日(日)の2日間、会場は札幌コンベンションセンターと札幌市産業振興センターの2ヵ所。大会長は大友 宣氏(医療法人財団老蘇会 静明館診療所)が務め、大会テーマには「在宅医療ラララララ~パラダイムシフトをパラダイムシフトする次世代の在宅医療~」が掲げられました。 在宅医療の学会と聞くと医師向けの印象があるかもしれませんが、実際の参加者は医師のほか、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護職、リハビリテーション職など実に多彩です。プログラムもシンポジウムや一般演題だけでなく、参加型のワークショップ、市民公開講座など幅広く用意されており、「在宅医療に関わるすべての職種のための大会」という空気を強く感じました。 編集部が聴講したシンポジウムとワークショップ 編集部は、訪問看護の現場に関わりの深いテーマを中心に選んで聴講しました。その一部をご紹介します。 「在宅ドクターカーの対応と在宅病院前救急との融合 ―地域包括ケアにおける新たな医療体制構築に向けて―」 在宅医療と救急医療をどうつなぐかを考えるシンポジウム。利用者さんの急変時に「搬送か、在宅での継続か」を迫られる場面は訪問看護師にとっても身近なテーマであり、在宅と救急の連携という切り口が印象的でした。 在宅医療の効率化、ご自慢バトル! 全国の在宅医療の現場から、業務効率化の工夫を持ち寄ってプレゼンし、参加者の投票で最優秀を決めるユニークな企画。従来のFAX管理を突き詰めた効率化からAI活用まで、明日から真似したくなるアイデアが次々と登場し、会場も大いに盛り上がっていました。 感染クラスター乗り切り体験ゲーム「クラスター8」 介護施設で新型感染症のクラスターが発生した、という設定をカードゲームで疑似体験するワークショップ。多職種のチームで「限られた人手で何を優先するか」を話し合いながら進める形式で、編集部も実際にプレイヤーとして参加しました。 ACPで安楽死を求められたら 「終末期の意思決定支援」という重いテーマを、寸劇を交えながら現場目線で考えるシンポジウム。答えのない問いに、多職種がそれぞれの立場から向き合う構成でした。 在宅で挑む終末期がん患者の苦痛緩和〜緩和的鎮静の決断と多職種の力〜 在宅での緩和的鎮静をテーマに、講義と多職種でのグループワークを組み合わせたワークショップ。多くの参加者が集まる盛況ぶりで、このテーマへの現場の関心の高さがうかがえました。 会場で感じた3つのこと (1)「体験して学ぶ」プログラムの充実 ゲームやグループワーク、投票企画など、参加者が手と口を動かして学ぶ「参加型のプログラム」が目立ちました。講義を聞くだけでは持ち帰りにくい「判断の難しさ」を、体験を通して実感できる仕掛けが印象的でした。 (2)多職種がフラットに議論する文化 医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護職が同じテーブルで対等に意見を交わす場面が、参加型のプログラムを中心に数多く見られました。在宅医療の意思決定は多職種の力で支えるものだ、というメッセージを会場全体から感じました。 (3)答えのないテーマから逃げない姿勢 終末期の意思決定や感染対応など、正解が1つに定まらないテーマこそ、現場の実感を持ち寄って議論する。そんな姿勢が大会全体を貫いていたように思います。 まとめ 在宅医療の「今」を肌で感じられる2日間でした。訪問看護師の皆さんにとっても、日々のケアを見つめ直すヒントが数多くある大会だと感じます。編集部が特に注目した「クラスター8」と「緩和的鎮静」のワークショップについては、あらためて詳しいレポート記事をお届けする予定です。どうぞお楽しみに。 取材・編集・執筆:NsPace編集部 【参考】 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「開催概要」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/outline/ 2026/7/6閲覧 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「プログラム」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/program/ 2026/7/6閲覧 第8回日本在宅医療連合学会大会運営事務局:「ワークショップ・交流集会・ハンズオンセミナー(事前予約)」.第8回日本在宅医療連合学会大会.https://www.aeplan.jp/jahcm2026/workshop/2026/7/6閲覧

熱中症対策義務化とは?職場で必要な対応
熱中症対策義務化とは?職場で必要な対応
特集
2026年7月28日
2026年7月28日

熱中症対策義務化とは?職場で必要な対応

2025年6月1日から、職場における熱中症対策が強化されました。労働安全衛生規則の改正により、熱中症のおそれがある作業を行う事業者には、報告体制の整備、対応手順の作成、関係者への周知が義務付けられています。訪問看護の現場でも、夏場の移動、屋外での待機、空調が十分でない居宅でのケアなど、熱中症リスクが高まる場面があります。この記事では、熱中症対策義務化の概要と、訪問看護ステーションで確認したい対応ポイントを解説します。 熱中症対策義務化とは 熱中症対策義務化とは、職場で熱中症のおそれがある作業を行う場合に、事業者が重症化を防ぐための体制や手順を整えることを義務付けたものです。厚生労働省の資料では、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、状況に応じて迅速かつ適切に対応するため、「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられたと説明されています。 つまり、単に水分補給を呼びかけるだけではなく、熱中症が疑われる人が出たときに、誰へ報告し、誰が判断し、どのように医療機関へつなぐのかを、あらかじめ決めておく必要があります。 対象となる作業 義務化の対象は、熱中症を生ずるおそれのある作業です。具体的には、暑さ指数であるWBGT値が28度以上、または気温31度以上の環境で、連続1時間以上、または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業とされています。 訪問看護では、屋外作業が中心ではなくても、以下のような場面で注意が必要です。 夏場の自転車や徒歩での訪問 炎天下での移動や待機 空調が十分でない居宅でのケア 入浴介助や清拭など、身体的負担が大きいケア 防護具やマスクを着用した状態でのケア 連続訪問で休憩が取りにくい勤務 室内であっても、温度や湿度が高い場合は熱中症のリスクがあります。「屋外ではないから大丈夫」と考えず、訪問先や移動中の環境も含めて確認することが大切です。 事業者に求められる3つの対応 報告体制を整備する まず必要なのは、熱中症の自覚症状があるスタッフや、熱中症のおそれがあるスタッフを見つけた人が、すぐに報告できる体制を作ることです。 たとえば、以下のような内容を決めておきます。 報告先の担当者 報告する連絡手段 担当者が不在の場合の連絡先 訪問中に症状が出た場合の連絡方法 直行直帰時の報告ルール 訪問看護では、スタッフが1人で移動し、1人で利用者さん宅を訪問する場面が多くあります。そのため、事務所内だけでなく、外出中でもすぐに連絡できる体制を整えることが重要です。 対応手順を作成する 次に、熱中症が疑われる場合の対応手順を作成します。環境省の資料でも、熱中症のおそれがある作業者を把握した場合に、迅速かつ的確な判断ができるよう、必要な措置の内容や実施手順を定めることが求められています。 手順には、以下のような内容を含めるとよいでしょう。 涼しい場所へ移動する 衣服をゆるめる 水分・塩分を補給する 体を冷やす 意識状態を確認する 改善しない場合は医療機関へ相談する 意識障害がある場合はためらわずに救急要請をする 特に、意識がぼんやりしている、受け答えがおかしい、自力で水分を取れない、症状が改善しないといった場合は、早急な対応が必要です。 関係者へ周知する 体制や手順を作成しても、スタッフが内容を知らなければ現場で使えません。そのため、作成したルールを関係者へ周知することも義務化の重要なポイントです。厚生労働省は、報告体制や対応手順をあらかじめ定め、関係作業者に周知することを求めています。 周知方法としては、以下が考えられます。 朝礼やミーティングで共有する マニュアルに記載する 事務所内に掲示する チャットツールで共有する 訪問バッグに対応フローを入れる 新人研修や夏前の研修で説明する 訪問看護では、常勤スタッフだけでなく、非常勤スタッフやオンコール担当者にも同じ情報が伝わるようにすることが大切です。 訪問看護で確認したい熱中症対策 訪問看護ステーションでは、スタッフ自身の熱中症対策と、利用者さんの熱中症予防の両方を考える必要があります。 スタッフ向けには、訪問スケジュールの調整、休憩時間の確保、飲料の携帯、移動手段の見直し、暑さ指数の確認などが有効です。環境省が提供する暑さ指数の情報も、日々の判断に役立ちます。厚生労働省の職場における熱中症予防情報では、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」など、職場での熱中症予防に関する情報が掲載されています。 利用者さんについては、室温、湿度、水分摂取量、尿量、食事量、発汗、意識状態などを観察します。高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくいことがあり、エアコンを使わずに過ごしている場合もあります。訪問時には、室温だけでなく、生活環境や家族のサポート状況も確認しましょう。 記録・報告のポイント 熱中症の疑いがある場合は、症状だけでなく、発生した状況も記録します。 たとえば、以下のように整理します。「13時ごろ、訪問移動後に頭痛と強い倦怠感あり。気温32度。水分摂取は午前中に約300mL。事務所へ報告し、涼しい場所で休憩。水分・塩分補給後もふらつきが残るため、管理者判断で受診を調整。」 利用者さんの場合は、以下のように記録します。「訪問時、室温30度、エアコン未使用。発汗あり、口渇の訴えあり。尿量は昨日より少ないとのこと。意識レベルは普段と変わりなく、食事と水分は経口摂取できそうと仰っている。水分摂取を促し、また、家族による室温管理と定期的な水分補給の声掛けを依頼した。主治医へ報告。」 「いつ」「どこで」「どのような症状があり」「どのように対応したか」を残すことで、再発予防やチーム内共有にもつながります。 まとめ 熱中症対策義務化により、職場では熱中症のおそれがある作業に対して、報告体制の整備、対応手順の作成、関係者への周知が求められるようになりました。訪問看護では、夏場の移動や空調が十分でない居宅でのケアなど、熱中症リスクが高まる場面があります。スタッフが安全に働ける環境を整えることは、利用者さんへ安定したケアを届けるためにも重要です。 熱中症対策は、個人の注意だけに任せるものではありません。事業所としてルールを整え、スタッフ全員が同じ手順で動けるようにしておくことが、重症化の予防につながります。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】● 厚生労働省:「職場における熱中症対策の強化について」.https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf,2026/5/30閲覧● 厚生労働省:「職場における熱中症予防情報」.https://neccyusho.mhlw.go.jp/,2026/5/30閲覧● 富山労働局:「職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)」.https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/news_topics/oshirase/0706nechushokyoka.html,2026/5/30閲覧● 鹿児島労働局:「職場における熱中症対策の強化について」.https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/nettyusyou/2025-0418-7.html,2026/5/30閲覧● 環境省:「熱中症の対処方法(応急処置)」.https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php,2026/7/13閲覧● 厚生労働省:「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html,2026/7/21閲覧

専門性と情熱で築く在宅ケア~セントケア訪問看護ステーション船橋東 澁谷さん・髙吉さんにインタビュー~
専門性と情熱で築く在宅ケア~セントケア訪問看護ステーション船橋東 澁谷さん・髙吉さんにインタビュー~
インタビュー
2026年7月28日
2026年7月28日

専門性と情熱で築く在宅ケア~セントケア訪問看護ステーション船橋東 澁谷さん・髙吉さんにインタビュー~

今回お話を伺ったのは、セントケア訪問看護ステーション船橋東の所長・澁谷彩さんと、採用担当の髙吉さん。多様な病棟経験を経て訪問看護の道へ進んだ澁谷さんは、若くして二つのステーション立ち上げに携わってきた実力派。さらに、人事という立場から現場を支える髙吉さんも、スタッフが安心して働ける環境づくりに力を注いでいます。 今回は「訪問看護のやりがい」と「セントケアが誇る看護の質」について、お二人の情熱あふれる言葉をお届けします。 【※本記事はナスキャリが事業所向けに提供している「特集記事掲載サービス」によるものです。取材・撮影・編集はナスキャリが担当しました。】 多様な病棟経験から訪問看護へ -澁谷さんのご経歴をお聞かせいただけますか? 澁谷さん:「専門学校を卒業してからは病院で長く勤めてきました。慢性期病棟から始まり、小児科、眼科、そして循環器の急性期病棟など、幅広い分野を経験しました。その後はHCUでの勤務を経て、急性期医療の面白さに魅了され、さらにECUでも働く機会を得ました。こうしたさまざまな現場での経験を積んだのち、2019年にセントケアへ入社しました。」 幅広い病棟経験は、訪問看護を目指すための大切な土台になったと澁谷さんは語ります。 澁谷さん:「もともと訪問看護をやりたいと考えていました。だからこそ、一通りの病棟経験を積むことが自分の強みになると考えました。」 -訪問看護に興味をもったきっかけは何だったのでしょう? 澁谷さん:「祖父が自宅で最期を過ごしたんです。介護保険がまだ十分に整っていない頃から、訪問診療や訪問入浴、デイサービスまでフルに利用していて…。その姿を見て、『看護師になろう』と感じました。」 高校生で看護師を志した原点には、この体験が深く刻まれていました。さらに、訪問看護を始めてからも強く感じたことがあります。 澁谷さん:「病院では『早く帰りたい』と話していた方が、ご自宅に戻るとできることが増えて生き生きとされる。その姿を見て、あらためて“おうちの力ってすごい”と実感しました。」 新拠点立ち上げに込めた思い -これまでに訪問看護ステーションの立ち上げを経験されたと伺いました。船橋東ではどのような思いで取り組まれているのでしょうか? 澁谷さん:「袖ヶ浦では看護小規模併設のステーションを任され、訪問看護と看多機(看護小規模多機能型居宅介護)の両方を管理しました。立ち上げの大変さはありましたが、やりがいも大きかったですね。 セントケアは千葉県内で18カ所ありますが、船橋市は交通事情やエリアの広さから、どうしても手が届かない地域がありました。だからこそ東部エリアに拠点を作り、そこに注力することが大切だと思ったんです。」 地域の声に応えようとする強い想いが、言葉の端々から伝わってきました。迷いなく言葉を紡ぐ姿には、未来を見据えるリーダーの力強さがありました。 「おうちの力ってすごいんです」と話す、澁谷さん セントケアが誇る看護の強み -訪問看護の魅力、そしてセントケアならではの強みについて教えてください。 澁谷さん:「病院だと治療が中心で関わりは一時的。でも訪問看護は、その方の生活そのものを支えることができます。ご自宅に上がり、日々の暮らしに寄り添う。人生の一部に関われることが大きな魅力です。 また、私は特定行為研修を修了していて、皮膚・呼吸器・嚥下関連など幅広く対応できます。医療依存度が高い方でも、ご自宅で生活を続けられるように支援するのが私たちの役割です。」 専門性の高い知識と技術を在宅の現場に活かすこと。それがセントケアの看護の質を支えています。 -その“質の高さ”を支える教育体制についても教えていただけますか? 澁谷さん:「セントケアではプリセプター制度を導入しています。未経験の方でも1対1で相談や悩みを共有できるので、時間をかけてその方を育てていきます。」 澁谷さん:「特定行為や認定看護師など、専門性を伸ばしたい人には会社が後押しします。仕事と並行しながら学ぶのは大変ですが、それが自分の成長に直結するのを実感できますね。」 支え合いながら長く働ける環境 -働きやすい環境づくりについて教えてください。 髙吉さん:「セントケアでは朝・昼・夕方と顔を合わせて話す時間を大切にしています。記録だけでは伝わらないニュアンスも、生の情報交換で共有できるんです。時間に余裕を持てるように調整しているので、お客様としっかり向き合いながら仕事ができるんです。」 澁谷さん:「お客様は担当制ではないので、いろんなスタッフの目で看て支えられます。『こういうケアをしたら良かったよ』と顔を合わせて話せるのがいいですね。お客様のことだけではなくコミュニケーションが豊富なので、風通しが良いのが魅力ですね。」 日常的に顔を合わせることで、スタッフが孤立せずに支え合える雰囲気が自然と育まれていました。また、制度面でも、スタッフ同士で快く支え合える文化が整っているといいます。 髙吉さん:「産休・育休からの復職率は100%。育児短時間勤務は小学校6年生まで利用可能です。子どもがいなくても、家庭の状況に合わせて短時間正社員制度を利用できます。さらに70代のスタッフも現役で活躍していて、ライフステージや世代に合わせて働き方を選べます。安心して長く働ける環境が、質の高い看護につながるんです。」 澁谷さん:「お子さんにとってお母さんは1人ですよね。だからこそ、急なお休みでもスタッフが快く変わってあげられる。そういう雰囲気があるのは、普段から仲が良く、風通しがいい職場だからだと思います。」 加えて、男性スタッフの活躍も目立ちます。セントケアでは男性ナースも多く、リハビリ職を含めて男性の育休取得も進んでいます。男女問わず働きやすい環境が整っています。 情報共有が気軽にできる、風通しのよい雰囲気があります 地域と共に広がる訪問看護の未来 -地域との連携について、どのように取り組まれていますか? 澁谷さん:「訪問看護だけではお客様の生活を支えきれません。だから医師や薬剤師、ヘルパー、ケアマネさんなど、多職種との協力が欠かせないんです。時には他社のステーションとも協力して支えることもあります。 ”競合”ではなく、”地域を共に支える仲間”として一緒に動く。それがお客様にとって一番の支援になると思っています。」 地域の担い手たちを“仲間”と捉える姿勢が、とても印象的です。 澁谷さん:「社内でも横のつながりがとても強いです。訪問介護や訪問入浴、福祉用具の部門とすぐ連携できるので、必要な支援をワンストップで提供できます。例えば、ターミナル期のお客様に『最後にお風呂に入りたい』という希望があれば、訪問入浴と連携してすぐに実現できるんです。」 髙吉さん:「他のステーションとも協力しやすく、行政や地域の病院とも顔の見える関係を築いています。セントケアのネットワークと地域のつながりの両方を活かすことで、お客様にとってより安心できる体制を整えられるんです。」 グループ内のサービスと地域のつながりを重ね合わせることで、一人ひとりの願いを叶える体制が整っています。セントケア訪問看護ステーション船橋東は、これからも地域とともに歩みながら、お客様とスタッフ双方にとって安心できる拠点を築いていくでしょう。 インタビュアーより お二人の言葉から浮かび上がるのは、澁谷さんが語っていた「おうちの力」を多くの人に届けたいという想い。その力を引き出す訪問看護を広げていきたい――そんな熱意でした。澁谷さんの情熱と、髙吉さんの制度面からの支援。その両輪があるからこそ、セントケア船橋東は『やりがい』と『看護の質』を両立できているのだと感じました。 事業所概要 事業所名:セントケア訪問看護ステーション船橋東 住所:千葉県船橋市習志野台1-2-2-4F 事業所紹介ページ:https://ns-pace-career.com/facilities/14574 この記事を読んで「訪問看護、自分にもできるかも」と感じた方へ 「もっと患者さんと関わりたい」「自分らしい看護を実現したい」そう感じている看護師の方は少なくありません。 ナスキャリナビでは、訪問看護の現場で働く看護師のリアルな声を多数掲載しています。 精神科訪問看護で活躍する看護師の声 未経験から訪問看護を始めた体験談 育児と両立しながら働く現場の実例 各ステーションの教育体制・チーム文化 さらに、キャリアの悩みやモチベーション維持のコツなど看護師として働くうえで役立つ記事も充実。 「自分に合う訪問看護の職場って、どんなところだろう?」そのヒントが、きっと見つかります。 ▶ 他の訪問看護師インタビューを読むhttps://ns-pace-career.com/media/ 記事提供:ナスキャリナビ編集部

表皮水疱症 在宅ケアの実際と医療者に求められる視点【特別トークセッション 第1回】
表皮水疱症 在宅ケアの実際と医療者に求められる視点【特別トークセッション 第1回】
インタビュー
2026年7月21日
2026年7月21日

表皮水疱症 在宅ケアの実際と医療者に求められる視点【特別トークセッション 第1回】

わずかな摩擦で全身に水疱や創傷が生じる指定難病「表皮水疱症」。地域での対応経験がある訪問看護師は少なく、在宅療養への介入に不安を抱くケースも少なくありません。本連載では、自家培養表皮移植による再生医療を行う蒲郡市民病院の医師、皮膚・排泄ケア認定看護師、高校2年生の当事者・山崎璃斗さんとお母様をお迎えしたトークセッションの模様を全4回でお届けします。第1回は、病院と在宅での視点の違いや、家庭での処置に関するお話です。 久保 良二(くぼ りょうじ)先生蒲郡市民病院 皮膚科 部長。日本専門医機構認定皮膚科専門医。専門領域は乾癬、白斑、褥瘡。名古屋市立大学医学部臨床准教授、蒲郡市民病院特定認定再生医療等委員会委員。 藤田 順子(ふじた じゅんこ)さん蒲郡市民病院 看護部/皮膚・排泄ケア特定認定看護師。山崎璃斗さんの同院での初めての手術をきっかけに介入を開始。 山崎 璃斗(やまざき りと)さん栄養障害型表皮水疱症の当事者。現在はS高等学校(通信制)の2年生。幼少期より皮膚や粘膜の脆弱性に伴う広範な創傷や、関節の拘縮(屈曲変形)などの症状を抱えながら療養を継続。2020年より蒲郡市民病院にて自家培養表皮による再生医療を複数回受けている。 山崎 奈美(やまざき なみ)さん璃斗さんの母 / 看護師・DebRA Japan(表皮水疱症友の会)所属。璃斗さんの誕生直後から日々の洗浄・ガーゼ処置・栄養管理を担ってきた。最新の知見を集めながら、在宅ケアを実践。救命救急受付の仕事に就いている。取材協力蒲郡市民病院株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC) ※本文中一部敬称略※本記事は、2026年6月4日時点の情報をもとに構成しています。 自家培養表皮移植を機に蒲郡市民病院へ ――2020年、璃斗さんが小学校5年生のタイミングで、蒲郡市民病院での自家培養表皮移植をスタートされたと伺っています。当時のことを教えてください。 久保: 2019年から表皮水疱症に対する自家培養表皮移植が保険適用になっており、そのタイミングで主治医の先生からご紹介いただきました。 表皮水疱症は、日常生活のなかで皮膚に加わるごくわずかな摩擦や刺激によって、全身に水疱(水ぶくれ)や創傷ができてしまう遺伝性の希少疾患です。ただし、同じ「表皮水疱症」でも、皮膚の表面のみの軽いタイプから重症なタイプまでさまざまで、患者様によって症状が大きく異なります。 私も大学の専門外来で1年ほど表皮水疱症の患者様を診ていたことがありますが、当時は再生医療がありませんでしたし、症状としても軟膏を塗布して被覆材をお渡しすることに留まることがほとんどでした。璃斗くんのように、全身のガーゼを外して診る機会は初めてだったので、普段の処置のしかたについて、お母様から教えていただいた側面が大きいですね。 藤田: 私にとっては、璃斗くんは本当に初めて担当させていただく表皮水疱症の患者様でした。知識としては知っていても、どうすれば上手にケアできるのか、いちから検討する必要がありました。事前に株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC)(※)の担当者の方が勉強会なども開いてくださいましたが、私も璃斗くんとお母様の「お家ではこうやっていたんだよ」というお話が大変勉強になり、ケアの土台になりました。お母様や璃斗さんとの関係性なくしては、ケアが成り立たなかったと思っています。 ※愛知県蒲郡市に本社を置く再生医療製品メーカー ――症例が少なく、患者様によって大きく症状も異なるため、ご家族からの情報や良好な関係性が不可欠だったのですね。 日々の処置に数時間。表皮水疱症 在宅ケアの実際 ――ご自宅でのケアも、相当なご負担があると伺っています。実際のところはいかがでしょうか。 山崎(母):小さいころは、処置にとても時間がかかりました。特に、2020年ごろまで使っていた被覆材は、体液を吸い込むと皮膚にくっついて固まってしまうものだったんです…。そのため、ふやけて剥がれるまで湯船に浸かって待つんですが、長く浸かりすぎると、自分の皮膚までふやけて症状が悪化してしまうため、バランスを取るのが難しかったですね。被覆材が取れたら皮膚を乾かして、また全身にガーゼをつける。そんなことをしていると、大体3~4時間はかかっていました。 ――そうだったのですね。璃斗さんご本人の負担も相当なものだったかと思います。 璃斗: そうですね。小学校高学年のときに初めて自分で処置をしてみたんですが、背中などがうまく洗浄できていないと熱が出てしまって、それも大変でした。今は被覆材も変わり、当時より早く処置できるようになりましたが、2時間ほどはかかります。 山崎(母): 最近も高校の行事があったのですが、宿泊場所のお風呂は使えないので、別のホテルを一部屋取りました。限られた時間のなかで、私や夫も手伝いながら急いで必死に処置をしてなんとか1時間半というところでしたが、集団生活に参加しようとするとそういった対応も必要になりますね。 ――ご自宅の環境面で気を付けていらっしゃることはありますか? 掃除に気を遣いますね。どうしても痒みから皮膚を掻きむしってしまうので、落屑の量がとても多いんです。粘着クリーナーやハンドクリーナー、掃除機などを使って、こまめに対応しています。 医療者は普段処置している患者様・ご家族の声を大事に ――訪問看護師を含め、これまで表皮水疱症の対応経験がない医療者が介入する際、どのような心がけや視点が必要だと思われますか。 久保: 表皮水疱症の患者様は皮膚に被覆材をたくさんつけていますが、あれを剥がす時はとっても痛いんですよ。ですから、医療者主導で処置をしようと思っても、最初から思ったようにはできません。まずは患者様ご本人や、普段処置をされているご家族のお話が何よりも重要で、しっかりお話を伺ったうえで対応していくことが大切だと思います。 山崎(母): そうですね。私は医療従事者だったので、深い傷にもなんとか対処できる知識が最初からありましたが、一般の方が見たら驚くような傷の深さなんですよね。 看護師さんであっても、事前知識がないと驚いてしまうかと思います。今でもよく覚えていますが、璃斗が産まれたとき、外にでてきた瞬間からどんどんと皮膚が剥がれ落ちていって、産着も着せることができず、ただ裸で置かれて、泣き続けていました。ミルクを飲ませようと思ったら、その刺激で口の中が剥けてしまい、ガーゼを貼ろうとしたらその刺激でまた剥ける…。看護師さんたちもどうしたらいいかわからなかったわけです。 今はネットでさまざまな情報が手に入るので、表皮水疱症について知ってほしいですし、久保先生のおっしゃるように、ご家族とも話し合いをして進めていただけたらと思います。 藤田: 璃斗くんが自家培養表皮移植で入院する際も、どうやって入院中に清潔を保てばいいか、お母様にもさまざまなものを用意いただきながら、試行錯誤していきましたよね。症状や状態によってケースバイケースなので決まった「正解」は最初から見えず、話し合いながら模索していくことも必要だと思います。 ――ありがとうございました。第2回では、こうした療養生活を支えるための制度や、学校生活での工夫について伺っていきます。 取材・執筆・編集: NsPace編集部 【参考】〇難病情報センター「表皮水疱症(指定難病36)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/53382026年7月17日閲覧〇株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC)「適応対象:栄養障害型表皮水泡症及び接合部型表皮水泡症」https://www.jpte.co.jp/customers/medical/JACE/blisters/index.html2026年7月17日閲覧

「新幹線で転院したい」と言われたら? 新幹線搬送は「乗るまでの準備」が9割
「新幹線で転院したい」と言われたら? 新幹線搬送は「乗るまでの準備」が9割
コラム
2026年7月21日
2026年7月21日

「新幹線で転院したい」と言われたら? 新幹線搬送は「乗るまでの準備」が9割

もし受け持ち患者様から「新幹線で遠方の病院へ転院したい」と相談されたら、あなたはすぐに具体的なイメージが湧きますか? 車両での長時間移動に比べ、患者様の身体的負担を抑えられる新幹線ですが、その裏には一般の乗車とは全く異なる緻密な事前調整が存在します。今回は、新幹線搬送のリアルな実務と、安全な移動を支える民間救急の役割を解説します。 執筆:藤 健二郎(とう けんじろう)社会人経験を経て看護師となり、済生会福岡総合病院の救命救急センターで勤務。重症患者の看護に従事した後、大学院で看護師のストレスに関する研究を行い、急性・重症患者看護専門看護師を取得。現在は東京女子医科大学病院CCUでの臨床と並行し、ケアプロ株式会社 交通医療事業部長として、重症患者搬送や外出支援など「医療×移動」の分野で事業を展開している。■ケアプロ株式会社「ドコケア」:https://dococare.com/transport民間救急とは?緊急性の低い患者の搬送を行う民間サービスのこと。多くは、消防庁の認可を受けて「患者等搬送事業(一般乗用旅客自動車運送業)」を行っている。 長距離搬送では、新幹線という選択肢がある 前回までは、民間救急の役割や、重症患者様の搬送事例について紹介してきました。今回は、長距離搬送の中でも、”新幹線”を利用した搬送についてお伝えします。 遠方の病院や施設へ移動する場合、車両だけで長時間移動する方法もありますが、患者様の状態によっては、新幹線を利用した方が身体への負担を抑えられることがあります。 一方で、新幹線搬送は、通常の乗車とは大きく異なります。寝たきりの患者様や、人工呼吸器、吸引器、酸素などの医療機器を使用している患者様の場合、ただ切符を取ればよいわけではありません。 多目的室の確保、車椅子スペースの予約、車椅子やストレッチャーのサイズ確認、駅構内の動線確認など、事前に確認すべきことが数多くあります。 また、新幹線チケットは電話だけで完結しづらく、乗降場所の管轄駅との調整も必要であり、実務上は直接駅へ行く方が早いケースが多いです。 新幹線搬送は、チケット手配から動線確認まで調整が続く 新幹線搬送でまず重要になるのが、座席やスペースの確保です。車椅子の方であれば車椅子スペース、横になった状態での移動が必要な方であれば多目的室の利用を検討します。ただし、多目的室は誰でも自由に使える場所ではなく、利用には事前の相談や調整が必要です。 また、車椅子で乗車する場合も、車椅子の幅や奥行き、リクライニングの有無によって、乗車可能かどうかや必要なスペースが変わります。そのため、患者様の状態だけでなく、使用する車椅子やストレッチャー、医療機器のサイズまで確認しておく必要があります。 さらに、乗車駅と降車駅の選定も重要です。新幹線の停車時間は限られています。特に寝たきりの方や人工呼吸器を使用している方では、途中駅から乗車したり、途中駅で降車したりすることが難しい場合があります。 東京駅などの始発駅から乗車し、目的地側でもできるだけ終点や主要駅を選ぶことで、乗降に必要な時間を確保しやすくなります。 「移動できる状態」をつくることが、民間救急の役割 新幹線搬送では、病院から駅まで、駅構内、新幹線車内、到着駅から搬送先まで、いくつもの場面をつなぐ必要があります。 出発病院での準備、駅までの介護タクシー、駅構内の移動、新幹線への乗車、車内での観察、到着後の介護タクシー、受け入れ先への引き継ぎ。そのどこか一つでも調整が不十分だと、安全な搬送は成立しません。 また、長距離移動では、患者様の状態変化にも備える必要があります。基礎疾患、ADL、嚥下、排泄、認知機能、夜間の状態、せん妄歴などを事前に把握し、緊急時の連絡先や受診先、診療情報提供書の準備を確認することが重要です。 新幹線搬送は、単に新幹線に乗る搬送ではありません。 患者様の状態、医療機器、駅の構造、車両設備、乗降時間、到着後の移動手段までを一つひとつ確認し、「安全に移動できる状態」をつくる仕事です。 私たちはこれからも、患者様とご家族の希望を大切にしながら、医療と移動をつなぐ長距離搬送を丁寧に支えていきます。

血尿スケールとは?尿色観察の基本
血尿スケールとは?尿色観察の基本
コラム
2026年7月21日
2026年7月21日

血尿スケールとは?尿色観察の基本

血尿スケールとは、肉眼で確認できる血尿の程度を、尿の色で段階的に評価するための目安です。訪問看護や介護の現場では、利用者さんの尿の色が「いつもより赤い」「茶色っぽい」といった変化に気づくことがあります。 血尿は一時的な体調変化でみられることもありますが、尿路感染症、尿路結石、腎臓や膀胱の病気などが関係している場合もあります。そのため、色の変化だけで判断せず、痛みや発熱、排尿状態などもあわせて観察することが大切です。この記事では、血尿スケールの見方や観察ポイント、医師へ報告する際の注意点を解説します。 血尿スケールとは 血尿スケールとは、尿に血液が混じっている可能性があるときに、尿の色を段階的に確認するための視覚的な目安です。一般的には、肉眼で確認できる血尿を、淡いピンク色から濃い赤色、茶褐色に近い色まで、5〜6段階で評価します。NsPaceの用語集でも、血尿スケールは肉眼的血尿の程度を色によって分類する視覚的基準として説明されています。 血尿には、大きく分けて「肉眼的血尿」と「顕微鏡的血尿」があります。肉眼的血尿は、尿の色の変化として目で確認できる血尿です。一方、顕微鏡的血尿は見た目では分からず、尿検査で確認される血尿です。訪問看護や介護の現場で気づきやすいのは、尿の色が赤い、ピンク色、茶色っぽいなどの肉眼的な変化です。 血尿スケールの見方 血尿スケールは、施設や資料によって段階の分け方が異なる場合があります。ここでは、在宅ケアの現場で観察しやすいように、6段階の目安として整理します。 段階尿の色の目安観察のポイント1段階淡いピンク色少量の血液混入が疑われる2段階やや濃い赤色血尿がはっきり分かる3段階明るい赤色早めの報告を検討する4段階濃い赤色・暗赤緊急性が高い可能性がある5段階鮮血に近い赤色出血量が多い可能性がある6段階茶褐色・黒っぽい色古い血液や別の異常も考える 血尿スケールは、尿の色を客観的に伝えるための補助的な指標です。色が濃いほど注意が必要ですが、色だけで重症度を決めることはできません。血尿が少量でも、初めてみられた場合や症状を伴う場合は、医療職へ相談することが望ましいとされています。 血尿で確認したい症状 血尿を見つけたときは、尿の色だけでなく、ほかの症状もあわせて確認します。特に、以下のような症状がある場合は注意が必要です。 排尿時の痛み 頻尿 残尿感 発熱 腰や背中の痛み 下腹部痛 尿量の減少 血の塊が混じる 尿が出にくい 転倒や打撲後の血尿 血尿の原因には、尿路感染症、尿路結石、腎臓の病気、膀胱の病気、外傷、激しい運動などさまざまなものがあります。血尿は軽視せず、原因の確認につなげることが大切です。 また、赤っぽい尿が必ずしも血尿とは限りません。薬剤やビーツ、ルバーブなどの食品によって尿が赤く見えることもあり、血液による色の変化か判断しにくい場合があるため、確認を受けることが大切です。 在宅での観察ポイント 訪問看護や介護の現場では、利用者さんの普段の尿の色や排尿パターンを知っておくことが大切です。急な変化があった場合は、血尿スケールの段階だけでなく、「いつから」「どのくらい」「どのような症状を伴うか」を確認します。 たとえば、以下のように観察します。 「本日朝から尿が淡いピンク色。排尿時痛なし。発熱なし。尿量は普段と同程度。血尿スケール1段階程度。」 「訪問時、尿が暗赤色。血の塊あり。下腹部痛を訴える。尿が出にくい様子あり。血尿スケール4段階程度。」 このように記録すると、医師や看護師に状況を共有しやすくなります。特に、尿の色が急に濃くなった場合、血の塊がある場合、痛みや発熱を伴う場合、尿が出にくい場合は、早めに医師へ報告することが望ましいです。 医師へ報告するときの内容 血尿がみられたときは、以下の内容を整理して報告すると、状態が伝わりやすくなります。 血尿に気づいた日時 尿の色と血尿スケールの目安 血の塊の有無 排尿時痛や頻尿の有無 発熱の有無 腰背部痛や腹痛、叩打痛の有無 血圧・脈拍・SpO2 尿量の変化 転倒や打撲の有無 服薬状況 既往歴 水分摂取量 普段の尿色との違い 血尿は、症状が軽く見えても原因の確認が必要な場合があります。尿がピンク、赤、茶色に変化した場合は、医師に相談した方がよいです。 血尿スケールを使うときの注意点 血尿スケールは便利な目安ですが、診断を行うためのものではありません。尿の色は、採尿容器の色、照明、水分摂取量、薬剤、食品などの影響を受けることがあります。また、茶色っぽい尿は血尿以外に、ミオグロビン尿やビリルビン尿などが関係する場合もあります。尿色の異常には複数の原因があるため、尿検査などで確認することが重要です。 在宅では、無理に原因を判断するのではなく、利用者さんの状態を具体的に観察し、必要に応じて医師や看護師につなぐことが大切です。 まとめ 血尿スケールは、尿に血液が混じっている可能性があるときに、尿の色を段階的に把握するための目安です。訪問看護や介護の現場では、尿の色の変化を早く見つけ、普段との違いを具体的に記録することが重要です。 ただし、血尿スケールだけで重症度や原因を判断することはできません。排尿時の痛み、発熱、腰痛、血の塊、尿が出にくいなどの症状がある場合は、早めに医師へ報告しましょう。血尿の観察では、「色」「量」「症状」「経過」をセットで確認することが、利用者さんの安全を守るために役立ちます。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 NsPace:「血尿スケール」.https://www.ns-pace.com/glossary/hematuria-scale/2026/7/17閲覧 NHS:「Blood in urine」.https://www.nhs.uk/symptoms/blood-in-urine/2026/7/17閲覧 Mayo Clinic:「Blood in urine(hematuria)」.https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/blood-in-urine/symptoms-causes/syc-203534322026/7/17閲覧 Cleveland Clinic:「Hematuria」.https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15234-hematuria2026/7/17閲覧 PMC:「Diagnostic Approach to Abnormal Urine Colors」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC12066962/2026/7/17閲覧 日本感染症学会:「腎盂腎炎(Pyelonephritis)|症状からアプローチするインバウンド感染症への対応」.https://www.kansensho.or.jp/ref/d32.html2026/7/17閲覧

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本
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特集
2026年7月14日
2026年7月14日

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは?意識レベル評価の基本

訪問看護の現場において、利用者さんの意識レベルに変化があったとき、そのことを客観的に評価することは重要です。この記事では、GCSの基本的な考え方や評価項目、JCSとの違い、訪問看護師が意識状態を観察するときのポイントを解説します。 GCSとは GCSとは、Glasgow Coma Scale(グラスゴー・コーマ・スケール)の略称です。意識レベルを評価するためのスケールで、主に頭部外傷や脳血管障害など、意識状態の変化が重要になる場面で用いられます。 GCSでは、以下の3つの反応を確認します。 E:Eye opening/開眼反応 V:Verbal response/言語反応 M:Motor response/運動反応 それぞれの項目に点数をつけ、合計点で意識レベルを評価します。合計点は3〜15点で、点数が高いほど意識状態が良好で、点数が低いほど意識障害が強いと判断されます。 GCSの評価項目 GCSは、単に「起きているか」「眠っているか」だけを見るものではありません。開眼反応、会話の成立、指示への反応などを分けて確認することで、意識状態をより具体的に把握します。 E:開眼反応 開眼反応では、利用者さんがどのような刺激で目を開けるかを確認します。 点数状態4点自発的に開眼する3点呼びかけで開眼する2点痛み刺激で開眼する1点開眼しない 普段から目を開けて会話できる方が、呼びかけても目を開けにくい場合は、意識レベルの低下が疑われます。ただし、眠気、薬剤の影響、疲労、視覚障害などが関係することもあるため、普段の状態との違いを確認することが大切です。 V:言語反応 言語反応では、会話の内容や受け答えの適切さを確認します。 点数状態5点見当識がある4点混乱した会話がある3点不適切な発語がある2点意味のない発声がある1点発語がない 「今日は何月何日か」「ここはどこか」「名前を言えるか」などを確認し、受け答えが状況に合っているかを見ます。会話ができていても、話の内容がかみ合わない、急に混乱が強くなった、言葉が出にくいなどの変化がある場合は注意が必要です。 M:運動反応 運動反応では、指示に対して体を動かせるか、刺激に対してどのような反応があるかを確認します。 点数状態6点指示に従って動く5点痛み刺激の部位に手を持っていく4点痛み刺激から逃げるように動く3点異常な屈曲反応がある2点異常な伸展反応がある1点反応がない 運動反応は、GCSの中でも重症度の判断に関わる重要な項目です。たとえば「右手を握ってください」「足を動かしてください」といった簡単な指示に反応できるかを確認します。痛み刺激を用いる評価は、医療職が状態や安全性を確認したうえで行う必要があります。 GCSの点数の見方 GCSは、E・V・Mの点数を合計して評価します。たとえば、開眼反応が4点、言語反応が5点、運動反応が6点であれば、合計は15点です。記録するときは、合計点だけでなく、各項目の内訳も書くことが大切です。例:GCS 15点(E4V5M6)例:GCS 10点(E3V3M4)合計点だけでは、どの反応が低下しているのか分かりにくい場合があります。同じ10点でも、言語反応が低いのか、運動反応が低いのかによって、状態の捉え方が変わります。そのため、GCSは合計点とあわせて、E・V・Mの内訳を伝えることが重要です。GCSの公式資料でも、合計点だけでなく開眼・言語・運動の3要素をそれぞれ報告することの重要性が示されています。 GCSとJCSの違い 日本の医療現場では、GCSとあわせてJCS(Japan Coma Scale)が使われることもあります。JCSは、日本で広く用いられている意識レベルの評価法で、刺激に対する覚醒の程度を数字で表します。一方、GCSは開眼、言語、運動の3つの反応をそれぞれ点数化します。そのため、JCSよりも評価項目が細かく、意識状態の変化を具体的に共有しやすいという特徴があります。ただし、GCSは評価に慣れが必要です。とくに訪問看護の現場では、利用者さんのもともとの認知機能、発語の状態、麻痺の有無、難聴、失語、気管切開の有無などによって、正確に評価しにくいことがあります。その場合は、無理に点数化するのではなく、「普段と比べてどう違うか」を具体的に記録することが大切です。 訪問看護の現場で観察したいポイント 訪問看護の現場では、GCSの点数をつけること自体が目的ではありません。大切なのは、利用者さんの普段の状態を知ったうえで、変化に早く気づくことです。 たとえば、以下のような変化がある場合は注意が必要です。 呼びかけへの反応が鈍い 目を開けにくい 会話がかみ合わない 急にぼんやりしている 手足の動きに左右差がある いつもできる指示に従えない 強い頭痛、嘔吐、けいれんを伴う 転倒後に意識がはっきりしない これらの変化がある場合は、バイタルサイン、転倒や頭部打撲の有無、服薬状況、発熱、脱水、血糖異常の可能性などもあわせて確認します。特に、急な意識レベルの低下や麻痺、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、速やかに医師や救急へ相談する必要があります。 GCSを記録するときの注意点 GCSを記録するときは、点数だけでなく、観察した状況も残しておくと情報共有がしやすくなります。たとえば、以下のように記録します。「訪問時、呼びかけで開眼。名前は言えるが、場所の理解があいまい。右手を握る指示には応じる。GCS 13点(E3V4M6)。普段は会話明瞭で見当識あり。」このように書くと、点数だけでなく、普段との違いも伝わります。医師や救急隊へ連絡する際にも、状態の変化を具体的に説明しやすくなります。また、気管切開や挿管などで発語が難しい場合は、言語反応を「発語なし」として1点にするのではなく、評価不能(NT)として扱い、その理由を記録します。あわせて、頷き、首振り、ジェスチャー、筆談などで意思疎通ができるか、指示に応じられるかといった観察内容も残します。たとえば「気管切開中のためVは評価不能(V-NT)。呼びかけで開眼し、頷きで意思表示あり。右手を握る指示に応じる」のように記録すると、点数だけでは伝わりにくい実際の反応を共有しやすくなります。GCSでは、点数そのものだけでなく、評価できなかった理由と、実際に観察できた反応を明確に記録することが重要です。 まとめ GCSは、意識レベルを開眼、言語反応、運動反応の3つに分けて評価する指標です。合計点は3〜15点で、点数が低いほど意識障害が強いと考えられます。訪問看護の現場では、GCSの点数を正確につけることだけでなく、利用者さんの普段の様子との違いを把握することが大切です。呼びかけへの反応、会話の内容、指示への反応などを観察し、急な変化がある場合は早めに医師や救急へ相談しましょう。GCSを理解しておくことで、意識状態の変化をより客観的に伝えやすくなります。訪問看護や介護の現場でも、利用者さんの安全を守るための観察ポイントとして役立つ指標です。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 ● StatPearls:「Glasgow Coma Scale」.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK513298/,2026/5/25閲覧● Glasgow Coma Scale Official Site:「Assessment of Glasgow Coma Scale」.https://www.glasgowcomascale.org/,2026/5/25閲覧● BrainLine:「What Is the Glasgow Coma Scale?」.https://www.brainline.org/article/what-glasgow-coma-scale,2026/5/25閲覧● 日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会†「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/21/5/21_539/_pdf/-char/ja, 2026/07/06閲覧

子育て中も安心して働ける訪問看護~ともろー訪問看護ステーション市沢 山口さんにインタビュー~
子育て中も安心して働ける訪問看護~ともろー訪問看護ステーション市沢 山口さんにインタビュー~
インタビュー
2026年7月14日
2026年7月14日

子育て中も安心して働ける訪問看護~ともろー訪問看護ステーション市沢 山口さんにインタビュー~

ともろー訪問看護ステーション市沢の管理者・山口さんは、急性期病院での経験を経て訪問看護に転身。「じっくり関わりたい」という想いを胸に、訪問看護一筋で25年のキャリアを歩んできました。子育て中のスタッフも安心して働ける環境づくりや、チームで支え合う柔軟な体制を整えるなど、誰もが長く続けられる訪問看護のかたちについてお話を伺いました。 【※本記事はナスキャリが事業所向けに提供している「特集記事掲載サービス」によるものです。取材・撮影・編集はナスキャリが担当しました。】 小学生の頃から看護師に憧れて ―山口さんが看護師を目指したきっかけは、どんなことだったのでしょうか? 「小さい頃から、道を聞かれたり『これ教えてくれない?』と頼まれることが多かったんです。人の役に立つことが自然にできる自分に気づき、将来はそういう仕事をしたいと感じるようになりました。さらに、看護師をしていた叔母2人から『あなたは看護師に向いている』と勧められ、小学生の頃には目標がはっきり固まりました。」 ―卒業後は病院勤務からスタートされたんですよね。 「はい。奨学金の関係もあり、神奈川県の300床規模の病院に就職しました。内科を中心に、皮膚科や整形外科など幅広い診療科で経験を積むことができました。急性期での多忙な毎日を通して、一人ひとりとじっくり関わる時間の大切さを実感し、訪問看護への興味が芽生えました。」 訪問看護で実感した「じっくり関われる喜び」 ―訪問看護を最初に体験されたのは、いつ頃ですか? 「病院を辞める少し前に、ある訪問看護ステーションでアルバイトとして少しだけ入ってみたんです。そうしたら、すごく楽しくて。『これだ!』って思いましたね。利用者さんご本人だけでなく、ご家族にも関われるのが訪問看護の魅力だと思います。チームと連携しながらケアを進める感じが、私にはすごく合っていました」 ―そこから25年、訪問看護一筋で歩んでこられたのですね。 「はい、気がついたらあっという間で!今は本当に、病院より訪問看護のほうが自分には合っているなと感じます。達成感もありますし、“深みにはまった”っていう表現がしっくりきますね」 スタッフと積極的にコミュニケーションをとる山口さん(写真右)。 チーム制と柔軟な働き方で、誰もが働きやすい ―ともろー訪問看護ステーション市沢に入職されたきっかけは? 「前職でも訪問看護をしていましたが、転職を考えていた時に友人から紹介を受けました。平成24年から管理者として勤務し、もう15年近く経ちます。日々の課題はありますが、スタッフ全員が働きやすい環境づくりを第一に考えています」 ―働きやすさのための工夫はありますか? 「昔は完全担当制でしたが、現在は担当を持ちつつもチームで動く体制に変えました。これにより休みが取りやすくなり、利用者さんにとっても『担当が違うから不安』という心配が減ります。月1回のカンファレンスに加え、日常的に訪問帰りに自然と情報共有する文化を大切にしています」 ―子育て中のスタッフへの配慮はどうされていますか? 「多くのスタッフが子育て中なので、お互いに譲り合いながらシフトを組んでいます。基本は平日勤務、土日は休みですが、必要に応じて交代でスポット訪問もします。社用車やユニフォームの貸与、冷蔵庫の飲料常備など、小さな配慮も働きやすさにつながっていると思います。たとえばユニフォームはレンタルで、クリーニング込みです。訪問から帰ってきて、自分たちで洗濯しなくて良いのは助かりますよね」 ―カンファレンスや情報共有は、どのようにされているのでしょうか? 「月に1回は必ずカンファレンスを行っています。それ以外にも、朝や夕方の訪問から戻ってきたタイミングで、自然に相談や報告の会話が飛び交っています。とにかく“話しやすい雰囲気”を大切にしています」 経験豊富なスタッフと多様な症例に挑む ―現在のスタッフ体制を教えてください。 「看護師は約5人、リハビリ職が2人です。訪問リハとの連携もスムーズで、訪問看護と訪問リハビリのセットで依頼も多いです」 ―教育体制も充実していると聞きました。 「はい。新しく入った方には必ずベテランスタッフが同行します。最初は見学からスタートして、徐々にケアの中心を新人さんに移していきます。必要に応じて半年以上の同行期間を設けることもありますし、飲み込みが早い方は早めに独り立ちすることもあります。だからと言って“いきなり一人で訪問する”ってことは絶対にありません。安心して働いてもらえるようにしています」 地域と共に「その人らしい暮らし」を支える ―地域との関わりについても教えてください。 「市沢町では、地域の方向けに月1回体操教室を開いています。うちの理学療法士が講師として参加していて、地域の方とも顔なじみになってきました。“こんにちは〜”って声をかけてもらえるのが嬉しいですね。地域とのつながりが支援の土台になっていると感じます」 ―印象に残っているエピソードはありますか? 「がんのターミナルの利用者さんです。訪問看護を一度終了したのですが、私が気になって時々電話をかけていたんです。独居だったので気になっていて。しばらくは生活できていたようなのですが、ある日から動けなくなってしまったとお話をいただいて、そこから訪問看護を再開したんです。最期の2週間は1日3回訪問するほど濃厚な関わりでした。前日に“ありがとう”って笑顔で言ってくださって…。娘さんが3人いらっしゃって、交代で泊まったりしていました。最初は“入院させたい”という気持ちもあったようですが、最終的には『自宅で看取れてよかった』と言っていただけました」 ―ご本人だけでなく、ご家族の安心も支える役割を担っているんですね。 「その通りです。利用者さんやご家族からSOSを出せる関係を作っておくことも、訪問看護の大切な役割だと思っています」 インタビュアーより 今回お話を伺って、山口さんが25年もの長きにわたり訪問看護の道を歩んでこられた背景には、「一人ひとりにじっくり向き合いたい」という変わらぬ想いがあることを強く感じました。取材中も、笑顔を交えながらスタッフや利用者さんへの気遣いを語る姿が印象的で、「チームで支え合うこと」や「柔軟な働き方」を当たり前のように実現している職場の空気感が伝わってきます。また、地域とのつながりを大切にし、最期のときまでその人らしい暮らしを支えるエピソードからは、訪問看護の奥深さとやりがいを改めて感じました。子育て中の方やブランクのある方でも安心して働ける環境を探している方にとって、山口さんの職場はきっと心強い選択肢になるはずです。 整理整頓された明るい雰囲気の事務所。アースカラーのユニフォームがおしゃれです。 事業所概要 事業所名: ともろー訪問看護ステーション市沢 所在地: 神奈川県横浜市旭区市沢町262-11 NKビル1階 事業所紹介ページ:https://ns-pace-career.com/facilities/16865 この記事を読んで「訪問看護、自分にもできるかも」と感じた方へ 「もっと患者さんと関わりたい」「自分らしい看護を実現したい」そう感じている看護師の方は少なくありません。 ナスキャリナビでは、訪問看護の現場で働く看護師のリアルな声を多数掲載しています。 精神科訪問看護で活躍する看護師の声 未経験から訪問看護を始めた体験談 育児と両立しながら働く現場の実例 各ステーションの教育体制・チーム文化 さらに、キャリアの悩みやモチベーション維持のコツなど看護師として働くうえで役立つ記事も充実。 「自分に合う訪問看護の職場って、どんなところだろう?」そのヒントが、きっと見つかります。 ▶ 他の訪問看護師インタビューを読むhttps://ns-pace-career.com/media/ 記事提供:ナスキャリナビ編集部 NsPace Career

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