2026年7月28日
表皮水疱症の医療費助成制度&学校生活における支援【特別トークセッション 第2回】
表皮水疱症の治療・療養を継続していくためには、社会保障制度の活用が不可欠です。本連載では、自家培養表皮移植による再生医療を行う蒲郡市民病院の医師、皮膚・排泄ケア認定看護師、高校2年生の当事者・山崎璃斗さんとお母様をお迎えしたトークセッションの内容をお届けしています。第2回のテーマは、医療費助成制度や学校生活についてです。
久保 良二(くぼ りょうじ)先生蒲郡市民病院 皮膚科 部長。日本専門医機構認定皮膚科専門医。専門領域は乾癬、白斑、褥瘡。名古屋市立大学医学部臨床准教授、蒲郡市民病院特定認定再生医療等委員会委員。藤田 順子(ふじた じゅんこ)さん蒲郡市民病院 看護部/皮膚・排泄ケア特定認定看護師。山崎璃斗さんの同院での初めての手術をきっかけに介入を開始。 山崎 璃斗(やまざき りと)さん栄養障害型表皮水疱症の当事者。現在はS高等学校(通信制)の2年生。幼少期より皮膚や粘膜の脆弱性に伴う広範な創傷や、関節の拘縮(屈曲変形)などの症状を抱えながら療養を継続。2020年より蒲郡市民病院にて自家培養表皮による再生医療を複数回受けている。山崎 奈美(やまざき なみ)さん璃斗さんの母 / 看護師・DebRA Japan(表皮水疱症友の会)所属。璃斗さんの誕生直後から日々の洗浄・ガーゼ処置・栄養管理を担ってきた。最新の知見を集めながら、在宅ケアを実践。救命救急受付の仕事に就いている。取材協力蒲郡市民病院株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC)
※本文中一部敬称略※本記事は、2026年6月4日時点の情報をもとに構成しています。
指定難病制度・医療費助成の実際
――表皮水疱症の治療・療養に欠かせない社会保障制度について教えてください。
久保: まず、指定難病制度やお子様の場合は自治体の小児医療費助成制度などが代表的な保障制度になるかと思います。表皮水疱症の患者様は全国で500~1,000名程度と言われていますが、重症度によっては指定難病制度の医療費助成の対象にならないケースもあり、その場合は自己負担が大きくなります。また、使い勝手が良く、ぜひ在宅で使っていただきたい被覆材が現行の制度では処方できないこともあり、そういった部分も改善されていくと良いと思います。
山崎(母): ガーゼ類は診療報酬で上限1,000点(1万円分)と決まっていて、被覆材は上限なしなんですが、実際にはガーゼがその点数分では収まらない現実もあります。
※表皮水疱症患者等に対しては「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料(C114)」が設けられており、ガーゼ等の衛生材料費が含まれる。
でも、璃斗が幼いころは被覆材もすべて自費でしたし、東京の特定の病院でしか手に入らないものがあって、東京に住む親族に大きな病院で取り寄せて買ってもらう…ということもしていました。今は資材がかなり手に入りやすくなり、保険適用範囲も広がっているので助かっています。今は小児医療費助成制度も使えるので、本当にありがたいですね。
暮らしの中で積み重なる経済的負担
――医療費以外の「見えにくいコスト」にはどのようなものがあるでしょうか。
藤田: お母様から「今住んでいる地域では、車椅子が借りられなかった」と伺ったときは驚きました。当時、璃斗さんにとって車椅子は必要不可欠なものだったので、そういった支援がいきわたると良いと思っています。
山崎(母): そうですね。車椅子は15万円程度かけて用意しました。当時は再生医療も何もやっていない時期で、皮膚から栄養も出て行ってしまうので鉄分が全然足りなくて貧血がひどく、輸血ぎりぎりの状態でした。すごく疲れやすく、熱も出やすくて、足もうまく伸ばせないので、どこか行くにも車椅子がないと無理でした。でも、「障害」と認定されるほどではないため車椅子の貸し出しや助成金などは出ないという状況だったんです。
あとは、皮膚を掻くことを抑制するための装具をつけていたこともあるのですが、これも保険適用にはならなかったので、数万円単位の自己負担が発生する…ということもありましたね。
在宅療養がご本人・ご家族にもたらす変化
――保育園や学校での生活についてはいかがでしたか。印象的に残っているエピソードも教えてください。
山崎(母): 自家培養表皮移植手術をするまでは歩行がうまくできなかったので、特別支援学校への進学も考えたのですが、最終的にはなんとか地域の保育所や小・中学校の特別支援学級に通学することができました。我ながら、毎日の送り迎えを、よくやりきったなぁと思います。
保育園時代は、慣らし保育を半年程度行いながら、受け入れてくださって、ありがたかったです。給食も、食材を細かくカットしながら、みんなと同じものを食べさせてくださいました。ただ、おやつについてはおせんべいなどを食べると口の中が切れてしまうので、別メニューのことが多かったです。本人が「僕だけいつもバウムクーヘンだ!」と怒っていることもありましたね…。
あとは、中学校で反抗期にさしかかったときに親子喧嘩をして、「もう歩いて自分で帰りなさい」と言ってしまったこともありました。結局ゆっくり歩く璃斗の後ろからついていっていたのですが(笑)。
璃斗: 保育園の時のことは覚えていませんが…中学校のときに徒歩で帰ったときは、いつもと違って友達と一緒に帰れたので、僕としては楽しい思い出です(笑)。
――ご本人は楽しかったんですね! お友達と遊ぶときなどに気を付けていたことはありますか?
璃斗: 小学校のときは、積極的に動く子が多いのであまり近づけなくて、基本的に1人で遊んでいることが多かった記憶があります。
山崎(母):年齢的にまだ加減のわからないお子さんもいるし、中には多動傾向にあるお子さんもいるので、先生方も苦労して守ってくださいました。それでも、集団生活ですから誰かに押されたり、物を投げられたりして怪我をすることはあります。普通の子なら怪我に至らないようなケースでも、この子の場合は出血を伴う大怪我になってしまうので、相手の子や先生もショックを受けますし、本人も当然痛いです。
だから「自分から距離を取りなさい」と教え込んできました。なので、急に誰かが動いたときにぶつからないように集団から少し離れたり、階段も最後に登ったり、といったことを今では自然に自分でやるようになっています。
――中学校に上がってからはいかがでしたか?
璃斗: 中学では、病弱・身体虚弱特別支援学級に3人しか生徒がいなかったんですよ。だからその子たちとはすごく仲が良くなって、教室でトランプとかをして遊んでいました。
山崎(母): 中学校では、璃斗が他の生徒と物理的な距離をとれるように大きなサイズの机を作ってくださったんです。他の子に必要なオストメイト対応トイレも用意されていましたし、とても手厚かったです。校長先生が毎朝送り迎えの時に声をかけてくれたり、何かあれば教頭先生や主任の先生がしっかりお話を聞いてくれたりと、本当にありがたかったですね。
――現在は通信制のS高等学校2年生とのことですが、現在の生活やお友達との関わりについてはいかがですか?
璃斗: 中学の同級生とも仲が良かったですが、人数が少なかったので、友達付き合いは今の方が断然多いです。チャットアプリで思いついたことを気軽に話したり、アバターをつくってVRChatしたりしています。「いつ見ても接続中だな」という人もいますし(笑)、時間を気にせず遊んでいます。
――オンラインでいつでも繋がれる環境だからこそ、以前よりもお友達付き合いが増えているんですね。ありがとうございます。
次回は、表皮水疱症の「食事と栄養管理」の実際について、お話を伺っていきます。
取材・執筆・編集: NsPace編集部
【参考】〇難病情報センター「表皮水疱症(指定難病36)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/53382026年7月17日閲覧〇今日の臨床サポート「c114在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料」https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_2_2_1/c114.html2026年7月17日閲覧