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臨死期のケア変化への対応家族への支援
臨死期のケア変化への対応家族への支援
特集
2026年10月27日
2026年10月27日

亡くなる前の変化への対応と家族への支援【せん妄や呼吸・循環動態】

在宅医療の第一線で活躍されている、すぎもと在宅医療クリニックの杉本由佳先生に解説していただき、臨死期における訪問看護師の役割を深く掘り下げていきます。今回は、死期が迫り、せん妄や呼吸、循環動態の変化などが見られた利用者さんや、それを見守るご家族への対応について解説します。 亡くなる前の変化とその対応 病状が進行すると、利用者さん自身が「終わりの時」が近づいていることを肌で感じるようになります。亡くなる約1~2週間前(終末期)からせん妄が出現することが多く、ご家族の介護疲れも蓄積してきます。その後、亡くなる数日前には呼吸状態や循環動態の変化が現れ、その様子にご家族は強い不安を抱くことがあります。そのため、症状について、事前にご家族へ丁寧に詳しく説明しておくことが重要です。そして、ご家族の不安、寂しさ、悲しみ、これからのことなどを傾聴し、共感することが大切です。 せん妄への対応 終末期患者の約9割にせん妄が出現するとされ1)、これは特別なことではなく、ある意味「自然な現象」ともいえます。特に「もっと生きていたい」「まだ死にたくない」と強く願う方ほど、せん妄が激しく現れる傾向があります。死を望んでいないのに、身体が徐々に衰えていく感覚を体験することで、心と身体の乖離が生じ、せん妄が起こりやすくなるのです。 ここではせん妄について、予防と対策の基本、具体的な症状と対応の工夫について解説します。 せん妄の予防と対策の基本 激しいせん妄にならないよう、できるだけ穏やかに保つためには以下の取り組みが大切です。 訪問開始時から利用者さんの性格や人生観を丁寧にリサーチすること 病状について繰り返し説明することで、少しずつ恐怖を和らげていくこと 「常に在宅スタッフがそばにいる」という安心感を持ってもらうこと せん妄の具体的な症状 せん妄の症状は多様で、以下のような行動が見られることがあります。 ベッド柵を叩く、大声を出す、怒鳴る 「消防車を呼んで!」といった突飛な要求 「~さんが来ているからお茶を出して!」と幻視に対して指示する 手で何かを払いのけるような動作 小声で独り言を言い続ける これらは、死を受け入れようとしながらも、恐怖や葛藤が残っていることの表れです。家族には「せん妄はほとんどの人に起こる現象であり、特別なことではない」と説明し、「自分も同じ道を歩むのですよ」と伝えることで、理解と共感を促します。 夜間の対応と工夫 せん妄は特に静まり返った夜間に強く現れやすく、家族の疲労も重なりやすい時間帯です。暗く静まり返った部屋で目覚めた時、「死んでしまったのでは」と不安になることもあるため、以下のような工夫が有効です。 部屋を明るく保つ テレビやラジオをつけっぱなしにする(音楽よりも話し声が安心感を与える) 扇風機で風を送ることで感覚刺激を与える ベッドの高さを下げ、床に座布団や毛布を敷いて安全対策を講じる 家族は別室で休みながら、必要に応じて対応できるようにする せん妄の時間も「大切な時間」として 在宅移行後の期間が非常に短く、家族との時間も限られている場合には、せん妄の時間も「かけがえのない時間」として捉えるよう促すことがあります。 「明日になれば静かになるかもしれません。そうなると、逆に寂しく感じるかもしれません。今晩だけでも、少し付き合ってみませんか?」 このような声かけは、ご家族が利用者さんとの時間をより深く受け止めるきっかけになります。 呼吸状態や循環動態の変化への対応 死が近づくと、呼吸状態や循環動態に変化が現れます。前回の訪問時と比べて「今日はこう変わっています」と具体的に伝えることで、死が近づいてきていることを少しずつ実感していただけるようにしましょう。 例えば、以下のように具体的な症状を伝えることで、ご家族が心の準備をしやすくなります。 「病状が進行し、さまざまな治療を行っても症状のコントロールが難しくなってきました。ステロイドの効果も薄れ、血圧が低下し、尿量も減少しています。肝機能の悪化を示す特有の臭いも感じられます。あと数日かもしれません」 下顎呼吸、舌根沈下 亡くなる直前には、無呼吸の時間が長くなり、下顎呼吸(顎を上下させるような呼吸)に移行します。舌根沈下によっていびきが強くなり、「苦しそう」と感じるご家族もいます。その際は、側臥位にして背中側にクッションを置いて倒れてこないように支えることで、いびきが軽減されます。 血圧低下 血圧が低下してくると、鼠径部で大腿動脈の拍動を確認することで血圧の変化を把握しやすくなります。鼠径部で脈が触れなくなってきた場合は、血圧がかなり低下しており心停止が近い可能性があるため、事前にその兆候を説明しておきましょう。 発熱 亡くなる直前に、突然高熱を出すこともあります。クーリングや室温調整で対応しましょう。 在宅医や介護スタッフらとの連携 余命1~2日と考えられる場合には、在宅医から「間もなくです」とご家族に説明していただくようお願いします。 余命についてご本人に伝えるかどうかは、利用者さんの年齢、病気への理解度、ご本人やご家族の希望などを踏まえて判断します。予後が数日と見込まれる場合、必ずしもご本人に伝える必要はなく、むしろ最期を見届けるご家族にしっかりと状況を説明しておくことが大切です。 また、介護スタッフ、訪問入浴サービスのスタッフ、ケアマネジャーなど関係者にも事前に状況を共有しておきましょう。特に独居の利用者さんの場合、亡くなっているのをヘルパーさんが最初に発見することも多くあります。その際の対応については、あらかじめ以下のように伝えておくと安心です。 「驚かれるかもしれませんが、終末期ですので、もし亡くなっているのを見つけたら、落ち着いて訪問看護師や在宅医に連絡してください」 間もなく亡くなりそうな場面での家族への声かけ せん妄の時期を過ぎ、呼吸状態や循環動態が悪化していく中で、心身ともに疲れているにもかかわらず、懸命に見守り続けてくださっているご家族に、ねぎらいの気持ちを言葉でしっかりと伝えましょう。 息を引き取る瞬間を、片時も離れず見守るご家族もいらっしゃいます。近年では老々介護のケースも増え、長期間にわたる看病は介護者の体調を崩す原因にもなっています。利用者さんの意識がなくなってからは、常にそばにいる必要はありません。この時期は、これまでの闘病生活や元気だった頃の姿を思い返しながら、時々、静かに寝顔を見守る時間です。 意識がある時に希望を伝えられ、寂しがっている時には足をさすってもらい、好みの飲み物を飲ませてもらったり、おしゃべりに付き合ってもらったり……。ご家族が寄り添ってくださったことは、ご本人にとって幸せで、かけがえのない時間だったのだと思います。 目を閉じる瞬間を見届けることが重要なことではないのです。家族の温もりに包まれながら過ごす時間そのものが、利用者さんにとっての安らぎです。この頃には、主介護者以外のご家族も集まっていることが多く、家庭の音や団らんの声を聞きながら眠ることが、何よりの幸せです。 「家族に見守られながら自宅で旅立つことは、とても幸せなことです」と、心を込めてご家族にお伝えしましょう。 自宅で亡くなるということ 愛する人、大切な人を失うことは、残されるご家族にとって深い悲しみを伴う体験です。自宅で介護することにより、「人は死ぬ」という過程を肌で感じることができます。介護は大変だけれど、共に過ごした大切な経験を通じて、「大変だったけれど、やれることを一生懸命頑張った。寂しいけど後悔はない」と残されたご家族の前進につながっていきます。 またこの体験は、子や孫、若い世代に「死」というものを伝える機会にもなります。命の尊さ、家族の絆の深さを感じ、さらに次の世代につないでいくのです。「タオルを取ってきてもらう、コップに水を汲んできてもらう、体を支えてもらう」、そんな些細なお手伝いであっても、子や孫の心にしっかり刻まれることでしょう。 人は誰しも、年を重ね、病を患い、少しずつ衰えていきます。やがて日常の動作も誰かの手を借りなければならなくなり、そして静かに死を迎える時が訪れます。 一人の人間がこの一生を終える時、その姿がどんなに変わってしまっても、近くにいてくれる人がいるということは、きっとその人が本当に愛されていた証です。私自身も、いつか死を迎える時、誰かがそばにいてくれるような生き方をしていけたらと思います。 執筆:杉本 由佳すぎもと在宅医療クリニック 院長1995年名古屋市千種区にすぎもと在宅医療クリニック開業。在宅栄養管理、緩和医療が専門分野。 所属学会日本在宅医療連合学会(専門医・指導医・評議員・特任理事)日本緩和医療学会(認定研修施設 認定医)日本栄養治療学会(認定医) その他、活動実績● 日本在宅医療連合学会「がん疾患の在宅医療人材育成講座」執筆● 原著論文「在宅静脈栄養における脂肪乳剤の使用状況と問題点 」Medical Nutritionist of PEN Leaders Vol.2 No.1 2018 に掲載 編集:株式会社照林社 【引用文献】 1) Lawlor PG,Gagnon B,Mancini IL,et al.Occurrence, causes, and outcome of delirium in patients with advanced cancer: a prospective study.Arch Intern Med 2000;160(6):786-794.

児童精神科訪問看護で子どものVisionを描く|家族と考える支援目標
児童精神科訪問看護で子どものVisionを描く|家族と考える支援目標
コラム
2026年10月27日
2026年10月27日

児童精神科訪問看護で子どものVisionを描く|家族と考える支援目標

児童精神科訪問看護では、子どもや家族とどのように支援の目標を描いていけばよいのでしょうか。目の前の困りごとだけでなく、その子らしい未来を見据えて考える「Vision」と、そこから支援を組み立てる実践についてお伝えします。 「何を改善するか」から始めない ショートケーキ訪問看護ステーションは、東京都豊島区、板橋区、北区を中心に、発達障害や不登校などの子どもと家族を対象とした児童精神科訪問看護を提供しています。 訪問看護開始前の面談では、家族から「学校に行けるようになってほしい」「言葉を増やしてほしい」「不器用さを改善してほしい」など、さまざまな相談をいただきます。 もちろん、どれも大切な願いです。しかし私たちは、その困りごとをそのまま訪問看護の目標にするのではなく、「なぜ、それができるようになってほしいのだろう?」というWhyを家族と一緒に考えることを大切にしています。 そのため、面談の最初から「困っていることは何ですか?」と尋ねるのではなく、「お子さんの生活の中で、もう少しこうなってほしいな、応援したいなと思っていることはありますか?」といった聞き方をすることがあります。 困りごとだけに焦点を当てて尋ねると、どうしても子どもの「できていないこと」や「問題」に話題が集まりやすくなります。そこで、お子さんのこれからを前向きに考えながら相談できるよう、質問の仕方を工夫しています。 例えば「不登校なので学校に行ってほしい」という相談でも、話を聞いていくと、「家族以外の人との交流を増やしたい」「安心できる居場所を持ってほしい」という願いが隠れていることがあります。 そう考えると、学校へ行くことだけが方法ではありません。訪問看護師との交流、外出、放課後等デイサービスやフリースクールなど、目的を実現するための選択肢は広がります。 大切なのは、What(何をするか)やHow(どうするか)の前に、Why(なぜそれをするのか)を家族と共有することです。 「この子の良いところは何ですか?」 ある学齢期の子どもの支援を始めた際、保護者からは、家庭でのトラブルや約束を守れないことなど、さまざまな困りごとが語られました。 そこで私は、「この子の良いところや得意なところは何ですか?」と尋ねました。 返ってきたのは、「え、この子に良いところなんてあるんですかね。問題だらけですよ」という言葉でした。その言葉からは、保護者が日々の対応に苦慮している様子がうかがえました。 そこで一緒に生活を振り返っていくと、「物がどこにあるかをすぐに見つけられる」「欲しいものがあると、いろいろな方法を考えて試すことができる」といった姿が出てきました。 見方を変えれば、「よく観察して覚える力がある」「目的に向かって試行錯誤できる」という強みとも捉えられます。 家族から困りごとが多く語られる背景には、それだけ日々の生活で困難に直面してきたことがあると考えています。だからこそ、支援者が困りごととは違う角度から子どもを見る機会をつくることが大切だと感じています。 Kingら(1997)は、家族中心性の評価尺度「Measure of Processes of Care(MPOC)」を用いた検討を報告しています。この尺度では、専門職と家族のパートナーシップや、家族を尊重し支持する関わりなどが評価領域に含まれています。また、Lawら(2003)は、家族中心的なサービスに対する保護者の認識や満足度に関連する要因を検討しました。その結果、保護者がより家族中心的なサービスであると認識することが、サービスへの満足度と強く関連していたと報告しています。 Howがいつの間にかゴールになっていないか その後、保護者から「塾で落ち着いて授業を受けられず、退塾の話が出ている」という相談がありました。 そこで、本人と一緒に気持ちを整理するために、ノートを活用して気持ちや考えを見える化していきました。 子どもによっては、自分の気持ちを言葉にしたり、自分自身を客観的に振り返ったりすることが難しい場合があります。発達特性が関係することもありますが、年齢や発達段階を考えれば自然なことでもあります。そこで看護の場面では、ノートに書いたり図にしたりしながら、本人が自分の気持ちや考えを整理し、それを周囲に伝えやすくすることがあります。 「今頑張りたいことは何?ノートに書いてみて」と伝えると、子どもがノートに大きく「サッカーを頑張りたい」と書いてくれました。そこから、「今はどんなことに取り組んでいるの?」「どんな技ができるようになりたい?」など、子どもが力を入れていることについて聞いていきました。聞いていく中で、ノートには『勉強』とも書かれていました。 本人に「勉強したくて塾に通っているの?」と尋ねると、「サッカーの強い学校に行きたい。そのためには受験するしかないと言われた」と話してくれました。 ここで一度、ノートを見ながら目的を整理しました。 本人と話をするなかで見えてきたのは、「塾へ通うこと」や「受験すること」そのものではなく、その先にある「サッカーをもっと頑張りたい」という思いでした。 そこで、「サッカーを頑張る方法は受験だけなのかな。今いるチームで強くなっていく方法もあるかもしれないね」と本人に伝え、考えを整理をしました。その後、子どもと一緒に作ったノートを見ながら、家族も交えて選択肢を整理していきました。そうした話し合いを重ねるなかで、本人と家族は今後の過ごし方をあらためて考え、納得したうえで塾を辞めることを選択しました。 Costaら(2017)は、日常生活上の困難を抱える5~10歳の子ども38名と保護者、教師を対象に目標設定を検討しました。子どもの回答からは、自己効力感や参加が、健康やウェルビーイングにとって重要であることが示されました。また、子ども・保護者・教師では設定する目標に違いがみられました。 こうした結果からも、支援者や家族が考える「必要なこと」だけではなく、子ども自身が何を大切にしているのかを確認しながら目標を考えることが重要だといえるでしょう。 Visionが見えると、支援の選択肢が増える 本人の「サッカーを頑張りたい」というVisionが見えてくると、日常生活の見え方も変わりました。 生活を整理すると、家族とのトラブルなどは、本人が何もすることがない時間に起こりやすい傾向がありました。一方、サッカースクールには継続して通うことができています。 そこで、「家族が困っている行動をどう減らすか」だけではなく、「本人が好きなことに取り組み、力を発揮できる時間をどう増やすか」という視点から、サッカーに取り組む機会を増やすことも家族に提案しました。 子どものVisionが見えることで、支援は「できないことを直す」だけではなく、「持っている力をどこで生かすか」へと広がっていきます。 家族と一緒に「この子の未来」を描く 家族支援というと、保護者の悩みを聞いたり、子どもへの対応方法を伝えたりすることがイメージされるかもしれません。 しかし、それだけではないと私は考えています。 「この子はどんな子で、どんなことが好きですか?」「この子がどんな人生を歩んだら、この子らしいと思いますか?」 こうした問いを家族と一緒に考え、本人の思いにも耳を傾けながら、その子のVisionを描いていく。そして、その未来から逆算して、「では訪問看護では何をしよう」「家庭では何をしてみよう」と支援を組み立てていく。 「何をできるようにするか」の前に、「何のために支援するのか」を家族と共有する。 それが、私たちが大切にしている家族支援です。 「この子の何を直したいですか?」ではなく、「この子がどんな人生を歩んだら、この子らしいと思いますか?」 私は、そんな問いから始まる児童精神科訪問看護を、これからも実践していきたいと考えています。 ※本稿の事例は、日々の複数の実践をもとに、個人が特定されないよう内容を再構成しています。 執筆:齋藤 透ケアプロ株式会社ショートケーキ訪問看護ステーション リーダー日本赤十字看護大学大学院 地域看護学領域 専門看護師コース修了 児童精神・発達支援・不登校支援を中心に活動。「学校に行かせること」だけをゴールにせず、家庭という生活の場から、親子関係や安心感、人とのつながりを支えることを大切にしている。ゲームや好きな話題を通した関係形成、親子間の感情整理、学校連携などを得意としている。 【参考文献】 1) King GA, Rosenbaum PL, King SM. Evaluating family-centred service using a measure of parents' perceptions. Child Care Health Dev. 1997;23(1):47-62.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9023031/2026/10/13閲覧 2) Law M, Hanna S, King G, et al. Factors affecting family-centred service delivery for children with disabilities. Child Care Health Dev. 2003;29(5):357-366.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12904243/2026/10/13閲覧 3) Costa UM, Brauchle G, Kennedy-Behr A. Collaborative goal setting with and for children as part of therapeutic intervention. Disabil Rehabil. 2017;39(16):1589-1600.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27385635/2026/10/13閲覧

眠れない原因と対処法|快眠のための具体的な改善策を紹介
眠れない原因と対処法|快眠のための具体的な改善策を紹介
特集
2026年10月27日
2026年10月27日

眠れない原因と対処法|快眠のための具体的な改善策を紹介

訪問看護の利用者さんやそのご家族から「眠れない」という相談を受けた際は、「眠れない」という相談を受けた際は、原因や状態を確認したうえで、生活習慣や睡眠環境の調整など、日常生活で取り入れられる方法を一緒に検討することが大切です。 睡眠を整えるためには、生活習慣の見直しやリラックス法、環境の調整など、さまざまな方法があります。 本記事では、眠れない原因や対処法について解説します。訪問看護の利用者さんやそのご家族から相談を受けた際の対応だけではなく、自身の健康管理にも役立ててください。 眠れない原因 眠れない原因はさまざまですが、主に 生活習慣の乱れ ストレス 身体的な不調 環境要因 が影響を及ぼします。 訪問看護師が眠れなくなるきっかけ 訪問看護師自身は、夜間のオンコール対応や緊急出動によって生活リズムが崩れがちで、十分な睡眠を確保することが難しい場合があります。不規則な勤務により体内時計が乱れると、自然な眠気が訪れにくくなり、眠ろうとしてもなかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたりすることがあります。また、オンコール待機中の不安や出動後の緊張状態などが続くことで睡眠不足状態が続いてしまうこともあるでしょう。 また、長時間の移動や利用者宅での介助作業による身体的な疲労が、筋肉のこわばりや痛みを引き起こし、快適な睡眠を妨げることがあるほか、精神的なストレスも不眠の大きな要因になります。訪問看護の現場では、利用者さんとの関わりが深く、ご逝去などの場面に直面することも少なくありません。そのような出来事が心に残り、気持ちが落ち着かないまま布団に入ると、考えが頭の中を巡り続け、眠ることが難しくなることがあります。 訪問看護師における休息の重要性と管理者対応 長期間、質のよい睡眠が確保できないと、集中力の低下や身体の不調を招く可能性があるため、眠れないときの対処法を知り、適切なケアを行うことが重要です。 また、所長や管理者は、法律やルールに則って夜間出動のあったスタッフが適切な休息を取れるよう管理する必要があります。 移動が自転車や車である訪問看護の現場では、睡眠不足による運転のリスクも考慮し、スタッフの健康管理を優先することが大切です。 眠れないときの対処法 眠れないときは、次の対処法を組み合わせて実践しましょう。 生活習慣の改善 生活習慣を整えることは、質のよい睡眠を確保するために不可欠です。できるだけ同じ時間に起床と就寝をすると、体内時計が整ってスムーズに入眠しやすくなります。 夕方以降のカフェイン摂取を控え、就寝前のスマートフォンやPCの使用を減らし、リラックスして過ごしましょう。また、軽い運動を取り入れることで、適度な疲労を感じ、深い睡眠につながるため、夕方の散歩などを習慣にするのもよいでしょう。 訪問看護師がオンコールを担当する際も、可能な範囲で休息や睡眠時間を確保することが重要です。夜間出動があった場合は、翌日の勤務調整などについて事業所内で検討することも必要です。 リラックス方法 睡眠の質を向上させるためには、リラックスする習慣を持つことが大切です。 カフェインレスのハーブティーやホットミルクは、リラックス効果が高いとされています。また、深呼吸や瞑想を行うことで、副交感神経が優位になり、心が落ち着きやすくなります。アロマテラピーを活用し、ラベンダーやカモミールなどのリラックス効果のある香りを取り入れるのも効果的でしょう。 さらに、就寝の1〜2時間前に入浴をして身体を温めておくことで、その後、深部体温が下がり寝つきがよくなるとされています。 環境の調整 睡眠環境を整えることも重要です。部屋を暗くし、静かな環境を作ると、よりスムーズに入眠できるでしょう。 室温や湿度を適切に調整し、快適な寝室環境を整えることも効果的です。外部の光が気になる場合は、遮光カーテンやアイマスクを使用するなど、眠りを妨げにくい環境を整えるのも一つの方法です。 また、マットレスや枕の硬さを自身の好みに合わせると、快適な睡眠につながります。 食事の工夫 食事のタイミングも睡眠に影響を与えます。朝食を摂ることは体内時計の調整に役立ち、睡眠リズムを整えることにつながります。一方、就寝前の夜食や間食は体内時計を遅らせ、翌朝の睡眠休養感や睡眠の質を低下させる可能性があります。 そのため、朝食をとることと、就寝直前の食事を避けることを意識しましょう。また、睡眠改善に有効な特定の食品は明らかになっていないため、主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスのよい食事を意識することが大切です。 ストレスの軽減 訪問看護師は、日々多くの利用者さんと関わり、医療ケアだけでなく、精神的なサポートを行う機会も多くあります。そのため、利用者さんのご逝去などをきっかけに、不眠が続くこともあります。 そうした際には1人で抱え込まず、デスカンファレンスを実施したり、信頼できる同僚・上司に話を聞いてもらったりすることが大切です。気持ちを言葉にすることで、心の負担が軽減され、安心感につながります。また、日記を書くことで思考を整理し、ストレスを可視化するのも有効な方法です。さらに、趣味や好きな音楽を聴くことも、気持ちを落ち着かせる手段です。 >>関連記事利用者さんが訴える精神症状に対する緩和ケアについては、以下をご参照ください。不眠への対応【精神症状の緩和ケア】 * * * 良質な睡眠を取ることは、基本的な健康管理の1つです。利用者さんやそのご家族がよりよい睡眠を取れるようにサポートするだけでなく、自身の健康管理のためにも、眠れないときの原因や対処法について理解しておきましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:森田 麻里子Child Health Laboratory 代表医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家2012年東京大学医学部医学科卒。 亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。 【参考】〇e-ヘルスネット「不眠症」(2023年01月23日)https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-0012026/10/13閲覧〇厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年2月)https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf2026/10/13閲覧

終末期における輸液による栄養療法 基本的な考え方と家族への関わり
終末期における輸液による栄養療法 基本的な考え方と家族への関わり
特集
2026年10月20日
2026年10月20日

終末期における輸液による栄養療法 基本的な考え方と家族への関わり

終末期の利用者さんに対して、水分や栄養を補給する目的で輸液療法が行われることがあります。しかし、その必要性や効果は、利用者さんの状態によってさまざまです。今回は、輸液による栄養療法について、終末期における基本的な考え方やご家族の思いに寄り添った対応について解説します。 栄養療法の基本的な考え方 食事は、単に必要な栄養を補う手段ではなく、生きる喜びや安心感をもたらす重要な要素であり、人とのコミュニケーションの場でもあります。そのため、生活の質(QOL)を維持・向上させる上で欠かせない役割を担っています。 しかし人はいずれ老いて、また病気によって栄養障害をきたすようになります。栄養状態の悪化は、筋肉量や体力の低下を招き、日常生活動作(ADL)の低下を引き起こします。これにより褥瘡、転倒・骨折、多臓器障害などのリスクが高まります。 終末期においては、利用者さんの原疾患の種類や病状進行のスピードを適切に見極め、それに基づいた個別の栄養管理が求められます。経口摂取が可能であれば、それが最優先です。しかし、病態によっては経口摂取が困難になる場合も多く、先を見据えた適切な栄養投与ルートの確保が不可欠です。これは、必要な薬剤を確実に投与できるルートを確保するという点でも重要な意味をもちます。 利用者さんやご家族に病状や治療の選択肢を十分に説明し、本人にとって最も負担が少なく、QOLを維持できる栄養管理方法を一緒に考える姿勢が求められます。 血管ルートの選択とタイミング 予後が1~2週間と短くなると、末梢血管の確保が困難になるケースが多く、利用者さんに苦痛を与えてしまうことがあります。そのため、ADLが良好な時期にPICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)、CVポート、胃瘻の造設などについてあらかじめ検討し、必要な処置を早期に実施することが望まれます。 以下は、進行によって特定の合併症が予測される疾患の例です。これらの進行を見越して、適切なタイミングで介入を行うことが、利用者さんのQOLの維持や在宅療養の継続支援につながります。 ●食道がん食道の完全閉塞が予想される場合は、胃内視鏡検査が可能なうちに胃瘻の造設を提案する。●肺がん反回神経麻痺により嗄声をきたし、誤嚥性肺炎のリスクが増大する。早めの胃瘻造設か、中心静脈栄養の導入を提案する。●腹膜播種腸閉塞の進行により嘔吐が出現する可能性がある。早めの中心静脈栄養の導入を提案する。 誤嚥性肺炎は、抗菌薬の投与や吸引・口腔ケアなど多くのケアを要し、利用者さん・ご家族・訪問看護師など関わる人たちすべての負担となります。可能であれば早期に中心静脈カテーテルを挿入し、在宅中心静脈栄養(HPN)を導入しましょう。 ただし、初回訪問時にすでに予後が数日程度と見込まれる場合は、HPNや経腸栄養などの積極的な栄養療法は控えます。代わりに、利用者さんの活動量に応じた必要最小限のエネルギー量を末梢静脈輸液製剤で補い、過度な水分負荷を避けることが重要です。その上で、症状緩和を目的とした薬剤(オピオイドやステロイドなど)の持続皮下注射を優先する対応が適切と考えます。 経口摂取をめぐるご家族の思い・看護の役割 「食べられなくなること=死」と直感的に捉え、何とか食べさせたいと願うご家族は少なくありません。また「死んでもいいから食べたい」と訴える利用者さんも多く、「食べられなくなったら点滴をしてもらわないといけない」と認識している人もいます。 訪問看護師の皆さんには、主治医の判断を踏まえて、まず経口摂取が可能かどうかを正確に評価し、経口摂取が可能であれば以下のような支援や助言を行っていただきたいです。 ミキサー食やとろみ食など形状を調整した食事の提案 味や香り、温度、盛り付けなどの工夫 ST(言語聴覚士)による嚥下訓練の実施 歯科衛生士や看護師による口腔ケア・リハビリテーションの実施 一方、経口摂取が困難な場合は、末梢静脈栄養(点滴)を行うか、あるいは自然な経過として受け止め見守るか、本人とご家族の価値観に寄り添いながら、丁寧に話し合いを重ねていくことが大切です。 栄養療法に関するガイドラインの要点 利用者さんやご家族と栄養療法の方針について話し合う際には、医学的な知識が欠かせません。そのため、関連するガイドラインでどのように述べられているのかを、あらかじめ確認しておくことが大切です。以下に、代表的なガイドラインで示されている要点を紹介します。 「がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 2024年版 総論編」(日本栄養治療学会)腸管が機能している場合は、経口摂取または胃瘻を選択する。使用困難な場合は静脈栄養を選択する。 「静脈経腸栄養ガイドライン 第3版」(日本静脈経腸栄養学会(現:日本臨床栄養代謝学会))栄養状態の低下はがん患者のQOLを低下させ、生命予後を悪化させる。また定期的に栄養アセスメントを行い、栄養不良に陥る前に栄養管理を開始することが推奨されている。 「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版」(日本緩和医療学会)QOL向上のエビデンスが乏しいため、消化管狭窄・閉塞の有無にかかわらず、高カロリー輸液は基本的に推奨されない。 在宅療養においては、日常生活を継続していくために、ADLを長く保つことが重要です。そのためにはがん終末期においても労作に応じた栄養が必要と考えています。予後が数日となった段階での積極的栄養療法は控えるべきですが、それまでの経過における必要エネルギー量の投与は、ADLやQOLを保つために重要です。 ご家族に対して必要となるサポート 食事摂取量が日ごとに減っていく過程を見守るご家族は、強い不安や葛藤を抱えています。在宅における終末期の栄養選択に正解はありませんが、医学的根拠に基づく説明を丁寧に行い、今後の方針について早い段階から対話を重ねることが、ご家族の納得感および心のケアにつながります。 「点滴ひとつしてもらえなかった」「点滴をいっぱい入れたことで身体がムクムクになってしまい、本人の姿とはかけ離れてしまった」「医師から食事を中止するように言われていたのに食べさせてしまい、肺炎になって苦しんで亡くなってしまった」……こういった後悔が残らないよう、希望と現実をつなぐ「架け橋」になる姿勢を大切にしましょう。 執筆:杉本 由佳すぎもと在宅医療クリニック 院長1995年名古屋市千種区にすぎもと在宅医療クリニック開業。在宅栄養管理、緩和医療が専門分野。 所属学会日本在宅医療連合学会(専門医・指導医・評議員・特任理事)日本緩和医療学会(認定研修施設 認定医)日本栄養治療学会(認定医) その他、活動実績● 日本在宅医療連合学会「がん疾患の在宅医療人材育成講座」執筆● 原著論文「在宅静脈栄養における脂肪乳剤の使用状況と問題点 」Medical Nutritionist of PEN Leaders Vol.2 No.1 2018 に掲載 編集:株式会社照林社 【参考文献】○日本栄養治療学会編:がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 2024年版 総論編.金原出版,東京,2024.○日本静脈経腸栄養学会編:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,東京,2013. ○日本緩和医療学会:終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版.金原出版,東京,2013.

ターミナルケアとは?在宅での支援内容
ターミナルケアとは?在宅での支援内容
コラム
2026年10月20日
2026年10月20日

ターミナルケアとは?在宅での支援内容

ターミナルケアとは、病気の治癒が難しく、人生の最終段階にある方に対して、身体的・精神的な苦痛をやわらげ、その人らしい時間を過ごせるように支えるケアです。終末期ケアとも呼ばれます。 ターミナルケアでは、痛みや息苦しさなどの症状緩和だけでなく、本人の希望、家族の不安、療養場所の選択、看取りに向けた準備なども大切になります。この記事では、ターミナルケアの意味、緩和ケアとの違い、在宅で受けられる支援、訪問看護での観察ポイントを解説します。 ターミナルケアとは 2009年に全日本病院協会が発表したガイドラインでは、「終末期」とは、医師が客観的な情報を基に治療により病気の回復が期待できないと判断すること、患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師などの関係者が納得すること、患者・家族・医師・看護師などの関係者が死を予測し対応を考えること、これら3つの条件を満たす場合をいうとしています。 終末期に行われるターミナルケアは、人生の最終段階にある方に対して、苦痛をやわらげながら生活の質を保つためのケアです。病気を治すことだけを目的にするのではなく、本人が何を大切にしたいか、どこで過ごしたいか、どのような医療やケアを望むかを確認しながら支援します。また、本人・家族などの精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行うことが必要です。 人生の最終段階における医療やケアでは、本人が医療・ケアチームと十分に話し合い、自分の意思に基づいて方針を決めることが重要とされています。本人の意思が確認できない場合でも、家族などと話し合いながら、本人にとって最善と考えられる方針を検討します。 ターミナルケアの対象は、がんだけではありません。心不全、呼吸器疾患、神経難病、認知症、老衰など、さまざまな病気や状態が含まれます。大切なのは、病名だけで判断するのではなく、本人の状態や希望、生活背景に合わせて支援することです。 緩和ケアとの違い ターミナルケアと似た言葉に、緩和ケアがあります。緩和ケアは、病気による身体や心のつらさをやわらげるケアです。終末期だけに行うものではなく、病気と診断された早い段階から受けることができます。 一方、ターミナルケアは、人生の最終段階にある方を支えるケアとして使われることが多い言葉です。医療の開始・中止・変更、痛みや息苦しさへの対応に加え、残された時間をどう過ごすか、家族とどのように関わるか、どこで最期を迎えたいかといった内容も含まれます。 どちらも、本人と家族の苦痛をやわらげ、その人らしい生活を支えるという点では共通しています。現場では、ターミナルケアと緩和ケアを切り離して考えるのではなく、必要な支援を組み合わせることが大切です。 在宅ターミナルケアで受けられる支援 在宅ターミナルケアでは、自宅や施設など、本人が過ごしたい場所で療養を続けられるように支援します。訪問診療、訪問看護、訪問介護、訪問薬剤管理、福祉用具、介護サービスなどを組み合わせて体制を整えます。 在宅で受けられる支援には、以下があります。 痛みや息苦しさへの対応 吐き気、便秘、倦怠感などの症状緩和 服薬管理 点滴や酸素療法などの医療処置 食事や水分摂取の相談 口腔ケア 排泄ケア 褥瘡予防や皮膚ケア 入浴や清拭の支援 家族への介助方法の説明 急変時や看取り時の連絡体制づくり 本人や家族の心理的支援 ターミナルケアでは、「何かをすること」だけが支援ではありません。静かにそばにいること、本人の言葉を聞くこと、家族が不安を話せる場をつくることも大切なケアです。 訪問看護の役割 在宅でのターミナルケアでは、訪問看護が重要な役割を担います。訪問看護師は、本人の症状や生活状況を確認し、医師やケアマネジャー、介護職、薬剤師などと連携しながら療養生活を支えます。 訪問看護で行う支援には、以下があります。 バイタルサインの確認 痛みや息苦しさの観察 薬の効果や副作用の確認 医師の指示の下での医療処置の実施 皮膚や褥瘡の予防・ケア 食事や水分摂取の確認 排泄状況の確認 意識状態の変化の確認 家族への介助方法の説明 急変時の対応相談 看取りに向けた支援 本人の状態が変化しやすい時期には、訪問回数や連絡体制を見直すことがあります。夜間や休日に不安が強い場合は、緊急時の連絡先、どのようなときに連絡するか、救急搬送を希望するかなどを、あらかじめ確認しておくことが大切です。 本人の意思を確認する ターミナルケアで大切なのは、本人の意思をできる限り確認することです。病状が進むにつれて、認知機能の低下などにより、本人が思いを言葉にしにくくなることがあります。そのため、意思を示せるうちだけでなく、日々の関わりの中で専門職が機会をとらえ、本人の意向を繰り返し確認していくことが大切です。 どのような治療を受けたいか、どこで過ごしたいか、誰にそばにいてほしいか、何を大切にしたいかは、人によって異なります。 本人の希望は、一度決めたら変えられないものではありません。体調や気持ち、家族の状況によって変わることがあります。そのため、医療やケアの方針は、本人、家族、医療・ケアチームで繰り返し話し合うことが大切です。 話し合っておきたい内容には、以下があります。 どこで療養したいか どのような治療を望むか 延命治療についてどう考えるか 苦痛が強いときの対応 急変時に救急搬送を希望するか 誰に意思決定を支えてほしいか 家族に伝えておきたいこと 最期の時間をどのように過ごしたいか このような話し合いは、本人や家族にとって負担になることもあります。無理に一度で決めようとせず、体調や気持ちに配慮しながら進めることが大切です。 家族への支援 ターミナルケアでは、本人だけでなく家族への支援も欠かせません。家族は、介護や見守り、医療判断への不安、仕事や生活との両立、看取りへの心配など、さまざまな負担を抱えることがあります。 家族支援では、以下のような内容を確認します。 介護を担う人は誰か 夜間の見守りができるか 家族の休息時間があるか 不安を相談できる相手がいるか 医療処置や薬の管理に不安がないか 急変時の対応を理解しているか 看取りについて話し合えているか 在宅療養を支える家族には、休息の機会も必要です。短期入院や介護サービスを利用して、家族の身体的・精神的な負担を軽減する選択肢もあります。 家族が「もっとできたのではないか」と自分を責めることもあります。医療・介護職は、家族の頑張りを認め、不安や迷いを受け止めながら支えることが大切です。 ターミナルケアでは、家族の言動に戸惑いや違和感を覚えることもあるかもしれません。そのようなときは、「対応が難しい家族」と捉えるのではなく、つらい状況の中で気持ちが揺れ動き、支えを必要としている存在として理解してみましょう。家族の思いに目を向けることで、医療・介護職も中立的な立場で関われるようになるでしょう。 在宅での観察ポイント 終末期は、病状や体力が少しずつ変化していくことがあります。訪問看護や介護の現場では、症状の変化と本人の苦痛を丁寧に観察します。 確認したいポイントは、以下のとおりです。 痛みの有無と強さ 息苦しさの有無 表情や反応 意識状態 食事量や水分摂取量 尿量 便秘や下痢の有無 吐き気や嘔吐の有無 眠れているか 皮膚の状態 褥瘡の有無 口腔内の乾燥 むくみ 家族の疲労や不安 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。 「本日、食事摂取は数口程度。水分は少量ずつ摂取可能。痛みの訴えは少ないが、体位変換時に顔をしかめる様子あり。呼吸苦の訴えなし。家族より夜間の不安について相談あり。」 「午前中から傾眠傾向。呼びかけには開眼するが発語少ない。尿量は前日より減少。口腔内乾燥あり。家族へ状態変化を説明し、主治医へ報告。」 このように、本人の症状だけでなく、家族の不安や介護負担も記録しておくと、チームで支援しやすくなります。 費用や利用できる制度 ターミナルケアにかかる費用は、利用するサービスや事業所の加算状況、保険の種類、自己負担割合、医療処置の内容、訪問回数などによって異なります。自宅での療養では、医療保険や介護保険を使って、訪問診療、訪問看護、訪問介護、福祉用具などを利用することがあります。 介護保険を使う場合は、要介護認定やケアプランが関係します。医療保険で訪問看護を利用する場合もあります。どちらを使うかは、病名や状態、医師の指示、制度上の扱いによって変わるため、ケアマネジャー、訪問看護ステーション、医療機関へ確認しましょう。 費用面の不安がある場合は、早めに相談することが大切です。医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談すると、利用できる制度やサービスを整理しやすくなります。 まとめ ターミナルケアとは、人生の最終段階にある方が、できるだけ苦痛を少なく、その人らしく過ごせるように支えるケアです。痛みや息苦しさなどの症状緩和だけでなく、本人の意思決定、家族支援、療養場所の選択、看取りに向けた準備も含まれます。本人や家族の思いを繰り返し聞きながら、その人らしい最期を迎えられるよう、医療やケアを進めていくことが大切です。 そのために、訪問診療、訪問看護、訪問介護、薬剤師、ケアマネジャーなど、多職種が連携して支援し、必要なサービスを整えることが大切です。 訪問看護や介護の現場では、痛み、息苦しさ、食事量、水分摂取量、意識状態、皮膚の状態、家族の疲労や不安を継続して観察します。本人と家族が安心して過ごせるよう、早めに話し合い、チームで支える体制をつくりましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 厚生労働省:「人生会議とは?」https://www.mhlw.go.jp/acp-jinseikaigi/about/2026/10/8閲覧 厚生労働省:「人生会議してみませんか」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html2026/10/8閲覧 厚生労働省:「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197721.pdf2026/10/8閲覧 国立がん研究センター がん情報サービス:「緩和ケア」https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/relaxation/index.html2026/10/8閲覧 国立がん研究センター がん情報サービス:「緩和ケア病棟」https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/kanwa_care_hosp.html2026/10/8閲覧 厚生労働省:「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html2026/10/8閲覧 全日本病院協会:「終末期医療に関するガイドライン ~よりよい終末期を迎えるために~」https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1224-14f.pdf2026/10/8閲覧 厚生労働省:「人生の最終段階における医療・介護(参考資料)」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001104699.pdf2026/10/8閲覧 蓮見 歩,中山 美由紀,井上 敦子:「がん終末期の意思決定で生じる家族内葛藤に対する家族支援専門看護師の実践―急性期病院からの移行に焦点をあてて―」.家族看護学研究,27(1),51-62,2021.https://jarfn.or.jp/newsletter/doc/kikanshi/27-1/27-1_6.pdf2026/10/8閲覧

マイコプラズマ肺炎とは?症状と治療
マイコプラズマ肺炎とは?症状と治療
コラム
2026年10月20日
2026年10月20日

マイコプラズマ肺炎とは?症状と治療

マイコプラズマ肺炎とは、「肺炎マイコプラズマ」という細菌によって起こる呼吸器感染症です。発熱、だるさ、頭痛、のどの痛みなどから始まり、乾いた咳が長引くことがあります。 子どもや若い世代に多いとされていますが、大人がかかることもあります。症状が軽い場合もある一方で、肺炎に進行したり、咳が数週間続いたりすることもあります。この記事では、マイコプラズマ肺炎の症状、原因、感染経路、治療、受診の目安、ご自宅で見ておきたいポイントを解説します。 マイコプラズマ肺炎とは マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマに感染することで起こる肺炎です。感染した人、特に小児の多くは気管支炎などの軽い症状で済むことがありますが、一部では肺炎となり、重症化する場合もあります。厚生労働省によると、潜伏期間は比較的長く、感染してから発症するまで2〜3週間程度とされています。 マイコプラズマ肺炎は、一般的な肺炎と比べて症状が軽く、歩ける程度の体調で経過することもあります。そのため「軽い風邪が長引いている」と思われることがあります。ただし、咳が長く続く、発熱が続く、息苦しさや呼吸時に異常な音がある場合は注意が必要です。 主な症状 マイコプラズマ肺炎の症状は、かぜ症状に似て始まることがあります。最初は発熱、頭痛、倦怠感、のどの痛みなどがみられ、その後、咳が目立つようになることがあります。 主な症状には、以下があります。 発熱 頭痛 倦怠感 のどの痛み 乾いた咳 痰が少ない咳 息苦しさ 特徴的なのは、咳が長引きやすいことです。発熱が落ち着いたあとも、乾いた咳が3〜4週間続く場合があります。また、厚生労働省によると、5〜10%未満の方で、中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を伴う例も報告されています。 また、CDCによると5歳未満の幼い子どもたちは、下痢、くしゃみ、嘔吐など異なる症状を示すことがあるとしています。 風邪との違い マイコプラズマ肺炎は、初期には風邪と見分けにくいことがあります。ただし、次のような場合は、単なる風邪ではなくマイコプラズマ肺炎などの可能性も考えます。 咳が1週間以上続いている 乾いた咳が強い 発熱が長引く 家族や学校、職場で流行している 咳で眠れない 息苦しさがある 風邪症状だけで病名を判断することはできません。咳や発熱が長引く場合は、診察や検査が必要になることがあります。 感染経路とうつる期間 マイコプラズマ肺炎は、主に飛沫感染や接触感染によって広がります。咳やくしゃみのしぶきを吸い込んだり、病原体がついた手で口や鼻を触れたりすることで感染することがあります。感染拡大には、家族、学校、職場など、近い距離で過ごす環境が関係します。 潜伏期間が2〜3週間程度と長いため、いつ感染したか分かりにくいことがあります。また、症状が軽い人から広がる場合もあります。家庭内で咳が続く人がいる場合は、手洗い、咳エチケット、換気を意識しましょう。 治療の基本 マイコプラズマ肺炎の治療では、症状や検査結果、全身状態に応じて抗菌薬が使われることがあります。軽い感染では自然に回復する場合もありますが、肺炎と診断された場合は抗菌薬による治療が行われることがあります。 肺炎マイコプラズマは、ほかの一般的な細菌と性質が異なり、ペニシリン系などの抗菌薬が効かないという特徴があります。このため、どの薬を使うかは医師が判断します。自己判断で以前の薬を使ったり、途中で服用をやめたりせず、医師の指示に従いましょう。 咳がつらい場合でも、市販薬だけで長く様子を見るのは避けたほうがよい場合があります。発熱や咳が続く、息苦しさがある、食事や水分が取れない場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 何科を受診する? マイコプラズマ肺炎が疑われる場合は、内科、呼吸器内科、小児科などで相談できます。子どもの場合は小児科、大人の場合は内科や呼吸器内科が選択肢になります。 受診を考えたい症状は、以下のとおりです。 発熱が続いている 咳が長引いている 咳で眠れない 息苦しさがある 胸の痛みがある 食事や水分が取れない ぐったりしている 呼吸が速い SpO₂(血中酸素飽和度)が普段より低い 高齢者や基礎疾患のある方に症状がある 喘息や慢性呼吸器疾患がある方では、咳や息苦しさが悪化することがあります。普段の呼吸状態と違う場合は、早めに相談しましょう。 ご自宅で見ておきたいポイント ご自宅で過ごしている方に咳や発熱が続くときは、咳や発熱だけでなく、呼吸の様子や食事・水分がとれているかもあわせて見ておくことが大切です。訪問看護や介護の現場でも、同じ点を確認します。特に高齢者や基礎疾患のある方では、症状の訴えがはっきりしないことがあります。 確認したいポイントは、以下のとおりです。 発熱がいつからあるか 咳の強さ 咳の続いている期間 痰の有無 息苦しさの有無 呼吸数(1分間の呼吸の回数) SpO₂(パルスオキシメーターで測れる場合) 胸の痛みの有無 食事量 水分摂取量 睡眠への影響 家族や周囲の流行状況 薬を指示どおり飲めているか 普段の状態との違い 受診や相談のときに伝えやすいよう、以下のようにメモしておくと役立ちます。 「5日前から熱と咳があります。今朝の体温は37.5℃くらいです。乾いた咳が続き、夜は咳で眠りにくそうです。SpO₂は95%でした。食事はいつもの半分ほどです。家族にも咳が出ている人がいます。」 「熱は下がってきましたが、咳が2週間続いています。話しているときに咳き込みます。息苦しさは本人からは出ていませんが、階段を上ると息が切れるようです。受診について主治医に相談する予定です。」 このように、症状の経過と普段との差を伝えることで、医師や看護師が状態を判断しやすくなります。 家庭でできる予防 マイコプラズマ肺炎を完全に防ぐことは難しいですが、基本的な感染対策で広がりを抑えることができます。特に、咳がある人がいる家庭や施設では、手洗い、咳エチケット、換気を続けることが大切です。 予防のポイントは、以下のとおりです。 石けんと流水で手を洗う 咳やくしゃみをするときは口と鼻を覆う マスクを適切に使う タオルの共有を避ける 室内を換気する 体調不良時は無理に登校・出勤しない 咳が続いている間は、周囲へ広げない配慮も必要です。子どもの登園・登校や大人の出勤については、症状、全身状態、医師の指示、施設や学校のルールに沿って判断しましょう。 まとめ マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマによって起こる呼吸器感染症です。発熱、頭痛、倦怠感、のどの痛みなどから始まり、乾いた咳が長く続くことがあります。 風邪と似た症状で始まるため、初期には見分けにくいことがあります。咳が長引く、発熱が続く、息苦しさがある、胸の痛みがある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 ご自宅では、咳の強さや続いている期間、発熱、息苦しさ、SpO₂(測れる場合)、食事・水分の量、睡眠への影響を見ておくことが大切です。手洗い、咳エチケット、換気を行い、家庭や施設内で感染を広げないようにしましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 厚生労働省:「マイコプラズマ肺炎」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mycoplasma.html2026/10/8閲覧 厚生労働省:「マイコプラズマ肺炎」.https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-38.html2026/10/8閲覧 CDC:「About Mycoplasma pneumoniae Infection」.https://www.cdc.gov/mycoplasma/about/index.html2026/10/8閲覧 CDC:「Clinical Care of Mycoplasma pneumoniae Infection」.https://www.cdc.gov/mycoplasma/hcp/clinical-care/index.html2026/10/8閲覧 CDC:「Causes and How It Spreads」.https://www.cdc.gov/mycoplasma/causes/index.html2026/10/8閲覧 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「IASR 45(1), 2024【特集】マイコプラズマ肺炎 2023年現在」.https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol45/527/527t.html2026/10/8閲覧 日本呼吸器学会:「マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について」.https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/statement/20241022134500.html2026/10/8閲覧 日本呼吸器学会:「G-01 胸膜炎」.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/g/g-01.html2026/10/8閲覧

顔が見える関係って大事!…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
顔が見える関係って大事!…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
特集
2026年10月20日
2026年10月20日

顔が見える関係って大事!…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

地域の多職種と「顔の見える関係」に 病院から訪問看護に来て驚いたことのひとつが、ごあいさつや営業活動にゃ。でも顔の見える関係ができると、地域のみなさんと一緒に利用者さんを支えられるにゃ! 病院から訪問看護に転職して戸惑うことのひとつが、ケアマネジャーさんやクリニックへのごあいさつなどの営業活動。名刺を持ち歩くようになるのも、病棟時代にはなかった変化ですよね。訪問看護師さんからは、「地域のケアマネジャーさんやヘルパー事業所の方、先生方から『いつもありがとうね』『頼りにしています』と声をかけていただくことが多い」「顔の見える関係が深まるにつれて新しいご依頼が増え、多職種で支え合いながら利用者さんをケアする流れができていく」といった声が聞かれました。地域の一員として信頼していただけることは、訪問看護ならではのやりがいのひとつです。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

チアノーゼとは?観察のポイントと緊急性の判断
チアノーゼとは?観察のポイントと緊急性の判断
コラム
2026年10月13日
2026年10月13日

チアノーゼとは?観察のポイントと緊急性の判断

チアノーゼとは、皮膚や口唇、爪床などが青紫色に見える状態です。血液の酸素化が低下している場合や、末梢の血流が悪くなっている場合にみられることがあります。 訪問時に利用者さんの口唇や手指が「いつもより青い」と感じた場合は、チアノーゼがみられる部位に加えて、呼吸状態、SpO₂、脈拍、血圧、意識状態、普段との違いなどを総合的に確認することが重要です。 この記事では、チアノーゼの原因や中心性・末梢性の違いを整理したうえで、訪問時の観察ポイント、緊急性を判断する際の考え方、主治医へ報告する内容について解説します。 チアノーゼとは チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青色から青紫色、灰色がかった色に見える状態です。日本小児循環器学会雑誌の総説「チアノーゼについて」では、毛細血管内血液の還元ヘモグロビン濃度が5g/dL以上になると出現するとされています。血液の酸素化が低下している場合などにみられ、口唇、舌、爪床、手足などで気づかれます。まれに、メトヘモグロビン血症などの異常ヘモグロビン血症が原因となることもあります。 血液は、酸素を多く含んでいると鮮やかな赤色に近く見えます。一方、酸素が少なくなると暗い赤色に近くなり、皮膚や粘膜を通して青紫色に見えることがあります。 ただし、皮膚の色だけで酸素状態を正確に判断することはできません。一酸化炭素中毒や高度の貧血では、低酸素血症があってもチアノーゼがみられないことがあります。照明、皮膚の色、体温、末梢の血流、貧血の有無などによって見え方が変わるため、呼吸状態や意識状態、SpO₂などもあわせて確認することが大切です。 チアノーゼの主な所見とあわせてみられる症状 チアノーゼでは、皮膚や粘膜が青色から青紫色に見えます。特に、口唇、口腔粘膜、指先、爪床などは色調の変化に気づきやすい部位です。 訪問時には、次のような色調変化がないか確認します。 口唇が青紫色に見える 舌や口腔粘膜が青紫色に見える 指先や爪床が青紫色に見える 手足の末端が青白い、または青紫色に見える 呼吸器や循環器の状態が悪化している場合には、チアノーゼとともに呼吸困難や頻呼吸、頻脈、意識状態の変化などがみられることがあります。 そのため、訪問時にチアノーゼを認めた場合は、次のような変化もあわせて確認します。 息苦しさがある 呼吸が速い、または普段と呼吸のしかたが異なる 会話時に息切れがある 脈拍が普段より速い SpO₂が普段より低下している 意識レベルが低下している 胸痛などの症状を伴っている 特に、口唇や舌、口腔粘膜に急な色調変化がみられ、強い呼吸困難や意識状態の変化などを伴う場合は、緊急性が高い可能性があります。チアノーゼの有無だけで判断せず、SpO₂、呼吸数、脈拍、血圧、意識状態、普段との違いなどを総合的に確認し、利用者さんの状態に応じて主治医への連絡や救急要請を検討します。 中心性チアノーゼと末梢性チアノーゼ チアノーゼは、大きく「中心性チアノーゼ」と「末梢性チアノーゼ」に分けて考えることがあります。 中心性チアノーゼ 中心性チアノーゼは、動脈血の酸素化が低下することで生じ、口唇や舌、口腔粘膜などに青紫色の変化がみられます。 呼吸機能の低下や右左シャントを伴う心疾患などが原因となることがあり、肺炎、喘息発作、慢性閉塞性肺疾患の増悪、先天性心疾患などでみられる場合があります。 末梢性チアノーゼ 末梢性チアノーゼは、手足の先や爪床など、体の末端が青紫色に見える状態です。典型的な末梢性チアノーゼでは、動脈血酸素飽和度の低下を伴わず、寒さや末梢血管の収縮、心拍出量の低下による末梢循環血流量の減少、血液粘稠度(ねんちゅうど)の上昇などで、末梢の血流が滞ることによって起こります。 寒さが影響している場合は、温めることで改善することがあります。ただし、心不全やショックなど全身の循環が低下している場合にも末梢性チアノーゼはみられます。息苦しさが強い、意識状態が悪い、急に口唇や舌が青紫色になった場合などは、救急要請を含めて速やかな対応を検討します。 チアノーゼの原因 チアノーゼの原因は、肺で酸素を取り込む力の低下、心臓が血液を全身へ送る力の低下、末梢の血流低下など、さまざまです。 主な原因には、以下のようなものがあります。 呼吸器に関連するもの:重症肺炎、重症喘息、気道異物など 心・循環に関連するもの:心不全、右左シャントを伴う心疾患、ショックなど 末梢循環に関連するもの:寒冷曝露、レイノー現象、動脈閉塞など 血液に関連するもの:メトヘモグロビン血症など 在宅療養中の利用者さんでは、呼吸器疾患や心疾患などが背景にある場合があります。チアノーゼが急に出現した場合は、背景疾患の推測だけにとらわれず、気道・呼吸・循環に急変がないかを優先して確認します。 乳幼児や高齢者の注意点 乳幼児では、寒冷によって手足の末端が一時的に青紫色に見えることがあります。一方、口唇や舌、体幹まで青紫色に見える場合は中心性チアノーゼの可能性があるため、呼吸状態やSpO₂、全身状態を確認し、速やかに医師へ相談します。 高齢者では、基礎疾患や認知機能の影響などにより、呼吸困難などの典型的な症状が目立たないことがあります。特に肺炎などの感染症では、食欲低下や活動性の低下、意識・反応の変化など、非特異的な症状がみられることがあります。 訪問看護では、「いつもの色と違う」「いつもより呼吸が浅い」「会話中に息切れする」など、普段との違いを見逃さないことが大切です。 訪問看護での観察ポイント 訪問時にチアノーゼを疑う色調変化を認めた場合は、チアノーゼの有無だけでなく、全身状態をあわせて観察します。 ① 色調と出現部位 口唇・舌・口腔粘膜 手指・足趾・爪床 色調変化が始まった時期 普段との違い 持続しているか、変化しているか ② 呼吸 呼吸数 呼吸の深さ・パターン 息苦しさ 会話時の息切れ 咳・痰 SpO₂ ③ 循環 脈拍 血圧 手足の冷感 胸痛・動悸など 浮腫など ④ 全身状態 意識状態 体温 食事・水分摂取量 ADLや普段との違い ⑤ 治療状況 酸素療法の有無 酸素機器・チューブの状態 医師からの指示内容 SpO₂を測る場合は、手指の冷え、マニキュア、体動、末梢循環の低下などで正確に測れないことがあります。値だけで判断せず、呼吸状態や顔色、意識状態もあわせて確認しましょう。 記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。 「訪問時、口唇に軽度の青紫色あり。SpO₂ 90〜92%で推移。呼吸数24回/分。会話時に息切れあり。発熱なし。普段はSpO₂ 95%前後。」 「両手指にチアノーゼ様の色調あり。手指冷感あり。口唇色は普段と大きな変化なし。温罨法後、手指色は改善傾向。SpO₂ 96%。」 このように、色の変化とその部位、呼吸状態、SpO₂、普段との差をセットで記録することが大切です。 緊急性のアセスメントと対応 チアノーゼを認めたときは、色調だけではなく、気道・呼吸・循環・意識状態を確認し、緊急性をアセスメントします。 特に注意したいのは、次のような状態です。 急に口唇や舌が青紫色になった 息苦しさがある 呼吸が速い、または浅い 発熱がある SpO₂が普段より低い 意識状態が変化している 呼びかけへの反応が弱い 胸痛を伴っている 強い動悸がある 顔色が悪い 乳幼児で哺乳が悪い 酸素投与中でも状態が改善しない これらの所見がある場合は、利用者さんの状態に応じて主治医への連絡や救急要請など、速やかな対応を検討します。 一方、寒さで手足の先だけが青紫色になり、温めると改善する場合もあります。ただし、繰り返す場合や、痛み、しびれ、皮膚の変色が続く場合は、血流の問題が隠れていることもあるため、医師へ相談しましょう。 医師へ報告するときの内容 チアノーゼがある場合は、色の変化だけでなく、呼吸や循環の状態を整理して報告します。 報告時には、以下の内容をまとめます。 いつからチアノーゼがあるか どの部位が青紫色に見えるか 口唇や舌の色の変化 SpO₂の値と普段の値 呼吸数 脈拍 血圧 体温 意識状態 息苦しさの有無 胸痛の有無 咳や痰の状態 酸素療法の有無 体位変換や安静による改善の有無 既往歴 服薬状況 報告例としては、以下のように整理できます。 「本日10時ごろから口唇にチアノーゼを認めています。SpO₂は90〜92%で、普段は96〜98%です。呼吸数28回/分、脈拍110回/分、会話時の息切れと痰の増加があります。体温37.8℃です。現在安静を保ち観察しています。受診・酸素投与などについて指示をお願いします。」 このように、普段の値との差、呼吸状態、全身状態を具体的に伝えることで、医師が緊急性を判断しやすくなります。 日常管理で確認しておきたいこと チアノーゼは病名ではなく、呼吸・循環などの状態変化に伴ってみられる徴候です。 日常ケアでは、以下を確認しておきます。 普段のSpO₂ 普段の呼吸数 在宅酸素療法(HOT)の設定・医師の指示 急変時の連絡先 どの状態で主治医へ連絡するか どの状態で救急要請するか 呼吸器疾患や心疾患がある利用者さんでは、SpO₂だけでなく、呼吸状態、浮腫、体重変化、痰の量、発熱、活動性などの変化も継続して確認します。 「普段の状態」を把握しておくことで、訪問時の小さな変化にも気づきやすくなります。 まとめ 皮膚や口唇、爪床が青紫色に見えるときは、血液の酸素化低下や末梢の血流低下などが背景にあることがあります。 手足の先だけが青紫色で、温めると改善する場合もありますが、口唇や舌が青紫色になる、息苦しさがある、SpO₂が低い、意識がぼんやりしている場合は注意が必要です。 訪問看護では、チアノーゼの有無だけでなく、呼吸数、SpO₂、脈拍、血圧、意識状態、普段との差をあわせて観察します。利用者さんの状態に応じて、主治医への連絡や救急要請を含めた速やかな対応を検討しましょう。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 MSDマニュアル家庭版:「チアノーゼ」.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/07-%E8%82%BA%E3%81%A8%E6%B0%97%E9%81%93%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%BC,2026/10/5閲覧 MedlinePlus:「Blue discoloration of the skin」.https://medlineplus.gov/ency/article/003215.htm,2026/10/5閲覧 MedlinePlus:「Recognizing medical emergencies」.https://medlineplus.gov/ency/article/001927.htm,2026/10/5閲覧 MSDマニュアル家庭版:「肢端チアノーゼ」.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%82%A2%E7%AB%AF%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%BC,2026/10/5閲覧 日本小児循環器学会:「チアノーゼについて」(立野滋,日小循誌 2015;31(3):95-101).https://jpccs.jp/10.9794/jspccs.31.95/data/index.html2026/10/5閲覧 Pahal P, Goyal A:「Cyanosis」.StatPearls.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK559167/2026/10/5閲覧 MSDマニュアル プロフェッショナル版:「肺症状を有する患者の評価」.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/pulmonary-disorders/approach-to-the-pulmonary-patient/evaluation-of-the-patient-with-pulmonary-issues2026/10/5閲覧 U.S. Food and Drug Administration:「Pulse Oximeters」.https://www.fda.gov/medical-devices/products-and-medical-procedures/pulse-oximeters2026/10/5閲覧 Resuscitation Council UK:「The ABCDE Approach」.https://www.resus.org.uk/library/abcde-approach2026/10/5閲覧 MedlinePlus:「Hypoplastic left heart syndrome」.https://medlineplus.gov/ency/article/001106.htm2026/10/5閲覧 Johnson JC, Jayadevappa R, Baccash PD, Taylor L:「Nonspecific presentation of pneumonia in hospitalized older people: age effect or dementia?」.Journal of the American Geriatrics Society. 2000;48(10):1316-1320.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11037021/2026/10/5閲覧 Komiya K, et al.:「Bacterial Pneumonia in Elderly Japanese Populations」.Japanese Clinical Medicine. 2018.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5804998/2026/10/5閲覧

家庭だからこそできる発達支援がある~生活をアセスメントすることから始まる児童精神科訪問看護~
家庭だからこそできる発達支援がある~生活をアセスメントすることから始まる児童精神科訪問看護~
コラム
2026年10月6日
2026年10月6日

家庭だからこそできる発達支援がある~生活をアセスメントすることから始まる児童精神科訪問看護~

「発達支援」と聞くと、特別な教材や訓練の場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし子どもの困りごとは、生活の中で起きています。児童精神科訪問看護の現場から、家庭をアセスメントし、環境を少し整えることで進める発達支援の実践をお伝えします。 生活そのものが発達支援の場になる 「発達支援」と聞くと、机に向かって課題に取り組む姿や、専門的な教材を使ってトレーニングを行う場面を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 もちろん、そのような支援も子どもの発達を促す大切な方法の1つです。しかし、私たちショートケーキ訪問看護ステーションでは、「生活そのものが発達支援の場である」と考えています。 ショートケーキ訪問看護ステーションは、東京都豊島区、板橋区、北区を中心に、発達障害や不登校などにより、生きづらさを抱える子どもとその家族を対象とした児童精神科訪問看護を提供しています。 私たちは、子どもの生活の場である家庭を訪問し、医療だけでなく教育や福祉とも連携しながら支援を行っています。その中で強く感じるのは、子どもの困りごとは生活の中で起きており、その背景も生活の中にあるということです。 そのため、家庭でしか見えない情報を丁寧にアセスメントすることが、発達支援の第一歩だと考えています。 「切り替えができない」の正体を探る 保護者から「うちの子は切り替えができません」という相談を受けることがあります。 この言葉だけを聞くと、「切り替える練習をしましょう」と考えてしまいがちです。しかし、私たちはすぐに支援方法を考えるのではなく、まず「どんな場面で困っているのか」を一緒に整理することから始めます。 例えば、朝、学校へ行く準備が始められない、ゲームを終えられない、お風呂に入れない、お風呂から出られない、宿題を始められないなど、1日の生活を振り返りながら具体的な場面を確認していきます。 すると、「切り替えが苦手」という1つの困りごとの中にも、さまざまな状況があることが見えてきます。 さらに、「なぜその場面で切り替えられないのだろう」と考えていきます。 時間が分かりにくいのかもしれない。 次に何をするのか見通しが立っていないのかもしれない。 急に活動を終えることが苦手なのかもしれない。 時計が読みにくい環境なのかもしれない。 時間そのものの概念がまだ十分に育っていないのかもしれない。 このように生活を細かくアセスメントしていくことで、「切り替えができない」という困りごとは、子どもの努力不足ではなく、生活環境や発達特性が影響している可能性が見えてきます。 家庭だからこそできる環境調整 児童精神科訪問看護の強みは、生活の場を実際に見ることができる点にあります。 例えば、時間を意識して行動することが難しい子どもの場合、家庭環境を確認すると、子どもにとって時間を把握しにくい時計が設置されていたり、時計そのものが目に入りにくい場所にあったりすることがあります。 そのような場合には、子どもが時間を確認しやすい環境を整えることを保護者に提案します。デジタル時計を設置したり、タイマーを活用したりすることで、「あと何分」「今は何時」という時間の感覚を身につけやすくなります。 訪問時にはホワイトボードを使い、その日の予定や活動時間を書き出しています。 「今日は何をするのか」「あと何分で次の活動に移るのか」を一緒に確認しながら、「今は何時かな」と時計を見る習慣が身につくよう、繰り返し働きかけていきます 。 また、ホームプログラムとして毎日「起きた時間」と「寝た時間」を記録してもらうこともあります。 これは睡眠状況を把握するだけではなく、自分で時計を見て時間を意識する習慣を身につけることも目的の1つです。 このような支援は、特別な教材を使うわけではありません。 子どもの生活を丁寧に観察し、少しだけ環境を整えることで、「できた」という経験を生活の中で積み重ねていくことを大切にしています。 発達支援は生活の中にある 同じように、「忘れ物が多い」という相談に対しても、「もっと気を付けよう」と伝えるだけでは根本的な解決にはなりません。 持ち物を1か所にまとめる場所を作る。 持ち物リストを見える場所へ貼る。 翌日の準備を行う時間を決める。 このように環境を調整することで、子ども自身が準備しやすいしくみを作ることができます。 また、「体育が苦手」という子どもに対しても、単に「運動が嫌いなのだ」と捉えるのではなく、その背景に不器用さや模倣の難しさがある可能性も考えます。 そのような場合には、自宅で取り組める簡単な運動を一緒に行い、安心できる環境で成功体験を積み重ねることで、自信につなげていきます。 発達支援とは、子どもを変えることではありません。 子どもが力を発揮しやすい環境を整え、生活の中で成功体験を積み重ねていくことだと私たちは考えています。 家族も発達支援のパートナー 家庭で発達支援を行うことのもう1つの大きな特徴は、保護者も支援に参加できることです。 訪問の最後には、保護者とその日の様子を振り返り、家庭で困っていることや変化について話し合います。 「この声かけでうまくいきました」「タイマーを使ったら準備がスムーズでした」「ここは少し難しかったですね」 そんな小さな成功や課題を共有しながら、家庭でも無理なく続けられる方法を一緒に考えていきます。 子どもが訪問時の週に1時間だけ頑張るのではなく、生活の大半を過ごす家庭の環境が少しずつ変わることで、子どもの生活も変わっていきます。 だからこそ、保護者は支援を受ける存在であると同時に、子どもの成長を支える大切なパートナーでもあります。 おわりに 私たちが家庭で行っている発達支援は、特別なプログラムではありません。 生活を丁寧にアセスメントし、「なぜ困っているのだろう」と考えながら、その子どもに合った環境を一緒に整えていくことです。 家庭だからこそ見える困りごとがあり、家庭だからこそ実践できる支援があります。 発達支援とは、生活から切り離された特別な時間ではなく、毎日の暮らしの中で育まれていくものです。 これからも私たちは、子ども一人ひとりの生活に寄り添いながら、「その子らしく育つこと」を支える児童精神科訪問看護を実践していきたいと考えています。 ※本稿は日々の実践をもとに執筆していますが、事例は複数のケースをもとに再構成し、個人が特定されないよう十分に配慮しています。 執筆:齋藤 透ケアプロ株式会社ショートケーキ訪問看護ステーション リーダー日本赤十字看護大学大学院 地域看護学領域 専門看護師コース修了 児童精神・発達支援・不登校支援を中心に活動。「学校に行かせること」だけをゴールにせず、家庭という生活の場から、親子関係や安心感、人とのつながりを支えることを大切にしている。ゲームや好きな話題を通した関係形成、親子間の感情整理、学校連携などを得意としている。 編集:NsPace 編集部 【参考文献】〇こども家庭庁 「児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7692b729-5944-45ee-bbd8-f0283126b7db/863f5ecf/20241101_policies_shougaijishien_shisaku_guideline_tebiki_02.pdf2026/8/26閲覧 「発達支援」と聞くと、特別な教材や訓練の場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし子どもの困りごとは、生活の中で起きています。児童精神科訪問看護の現場から、家庭をアセスメントし、環境を少し整えることで進める発達支援の実践をお伝えします。 生活そのものが発達支援の場になる 「発達支援」と聞くと、机に向かって課題に取り組む姿や、専門的な教材を使ってトレーニングを行う場面を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 もちろん、そのような支援も子どもの発達を促す大切な方法の1つです。しかし、私たちショートケーキ訪問看護ステーションでは、「生活そのものが発達支援の場である」と考えています。 ショートケーキ訪問看護ステーションは、東京都豊島区、板橋区、北区を中心に、発達障害や不登校などにより、生きづらさを抱える子どもとその家族を対象とした児童精神科訪問看護を提供しています。 私たちは、子どもの生活の場である家庭を訪問し、医療だけでなく教育や福祉とも連携しながら支援を行っています。その中で強く感じるのは、子どもの困りごとは生活の中で起きており、その背景も生活の中にあるということです。 そのため、家庭でしか見えない情報を丁寧にアセスメントすることが、発達支援の第一歩だと考えています。 「切り替えができない」の正体を探る 保護者から「うちの子は切り替えができません」という相談を受けることがあります。 この言葉だけを聞くと、「切り替える練習をしましょう」と考えてしまいがちです。しかし、私たちはすぐに支援方法を考えるのではなく、まず「どんな場面で困っているのか」を一緒に整理することから始めます。 例えば、朝、学校へ行く準備が始められない、ゲームを終えられない、お風呂に入れない、お風呂から出られない、宿題を始められないなど、1日の生活を振り返りながら具体的な場面を確認していきます。 すると、「切り替えが苦手」という1つの困りごとの中にも、さまざまな状況があることが見えてきます。 さらに、「なぜその場面で切り替えられないのだろう」と考えていきます。 時間が分かりにくいのかもしれない。 次に何をするのか見通しが立っていないのかもしれない。 急に活動を終えることが苦手なのかもしれない。 時計が読みにくい環境なのかもしれない。 時間そのものの概念がまだ十分に育っていないのかもしれない。 このように生活を細かくアセスメントしていくことで、「切り替えができない」という困りごとは、子どもの努力不足ではなく、生活環境や発達特性が影響している可能性が見えてきます。 家庭だからこそできる環境調整 児童精神科訪問看護の強みは、生活の場を実際に見ることができる点にあります。 例えば、時間を意識して行動することが難しい子どもの場合、家庭環境を確認すると、子どもにとって時間を把握しにくい時計が設置されていたり、時計そのものが目に入りにくい場所にあったりすることがあります。 そのような場合には、子どもが時間を確認しやすい環境を整えることを保護者に提案します。デジタル時計を設置したり、タイマーを活用したりすることで、「あと何分」「今は何時」という時間の感覚を身につけやすくなります。 訪問時にはホワイトボードを使い、その日の予定や活動時間を書き出しています。 「今日は何をするのか」「あと何分で次の活動に移るのか」を一緒に確認しながら、「今は何時かな」と時計を見る習慣が身につくよう、繰り返し働きかけていきます 。 また、ホームプログラムとして毎日「起きた時間」と「寝た時間」を記録してもらうこともあります。 これは睡眠状況を把握するだけではなく、自分で時計を見て時間を意識する習慣を身につけることも目的の1つです。 このような支援は、特別な教材を使うわけではありません。 子どもの生活を丁寧に観察し、少しだけ環境を整えることで、「できた」という経験を生活の中で積み重ねていくことを大切にしています。 発達支援は生活の中にある 同じように、「忘れ物が多い」という相談に対しても、「もっと気を付けよう」と伝えるだけでは根本的な解決にはなりません。 持ち物を1か所にまとめる場所を作る。 持ち物リストを見える場所へ貼る。 翌日の準備を行う時間を決める。 このように環境を調整することで、子ども自身が準備しやすいしくみを作ることができます。 また、「体育が苦手」という子どもに対しても、単に「運動が嫌いなのだ」と捉えるのではなく、その背景に不器用さや模倣の難しさがある可能性も考えます。 そのような場合には、自宅で取り組める簡単な運動を一緒に行い、安心できる環境で成功体験を積み重ねることで、自信につなげていきます。 発達支援とは、子どもを変えることではありません。 子どもが力を発揮しやすい環境を整え、生活の中で成功体験を積み重ねていくことだと私たちは考えています。 家族も発達支援のパートナー 家庭で発達支援を行うことのもう1つの大きな特徴は、保護者も支援に参加できることです。 訪問の最後には、保護者とその日の様子を振り返り、家庭で困っていることや変化について話し合います。 「この声かけでうまくいきました」「タイマーを使ったら準備がスムーズでした」「ここは少し難しかったですね」 そんな小さな成功や課題を共有しながら、家庭でも無理なく続けられる方法を一緒に考えていきます。 子どもが訪問時の週に1時間だけ頑張るのではなく、生活の大半を過ごす家庭の環境が少しずつ変わることで、子どもの生活も変わっていきます。 だからこそ、保護者は支援を受ける存在であると同時に、子どもの成長を支える大切なパートナーでもあります。 おわりに 私たちが家庭で行っている発達支援は、特別なプログラムではありません。 生活を丁寧にアセスメントし、「なぜ困っているのだろう」と考えながら、その子どもに合った環境を一緒に整えていくことです。 家庭だからこそ見える困りごとがあり、家庭だからこそ実践できる支援があります。 発達支援とは、生活から切り離された特別な時間ではなく、毎日の暮らしの中で育まれていくものです。 これからも私たちは、子ども一人ひとりの生活に寄り添いながら、「その子らしく育つこと」を支える児童精神科訪問看護を実践していきたいと考えています。 ※本稿は日々の実践をもとに執筆していますが、事例は複数のケースをもとに再構成し、個人が特定されないよう十分に配慮しています。 執筆:齋藤 透ケアプロ株式会社ショートケーキ訪問看護ステーション リーダー日本赤十字看護大学大学院 地域看護学領域 専門看護師コース修了 児童精神・発達支援・不登校支援を中心に活動。「学校に行かせること」だけをゴールにせず、家庭という生活の場から、親子関係や安心感、人とのつながりを支えることを大切にしている。ゲームや好きな話題を通した関係形成、親子間の感情整理、学校連携などを得意としている。 編集:NsPace 編集部 【参考文献】〇こども家庭庁 「児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7692b729-5944-45ee-bbd8-f0283126b7db/863f5ecf/20241101_policies_shougaijishien_shisaku_guideline_tebiki_02.pdf2026/10/1閲覧

おむつかぶれとは?原因・ケアと成人・高齢者の注意点
おむつかぶれとは?原因・ケアと成人・高齢者の注意点
コラム
2026年10月6日
2026年10月6日

おむつかぶれとは?原因・ケアと成人・高齢者の注意点

おむつかぶれとは、乳幼児だけでなく、紙おむつや尿取りパッドを使用する成人・高齢者にもみられる皮膚障害です。発赤や疼痛、掻痒感などがみられ、進行するとびらんを伴うこともあります。 成人・高齢者では、尿失禁や便失禁に関連する失禁関連皮膚炎(IAD)としてみられる場合があり、褥瘡や感染症などとの鑑別も重要です。この記事では、おむつかぶれの症状や原因、IADの特徴、在宅で行うスキンケア、観察・報告のポイントについて解説します。 おむつかぶれとは おむつかぶれは、おむつが接触する部位に生じる皮膚炎・皮疹を広く指す言葉です。なかでも、尿や便への曝露、過剰な湿潤、摩擦などが関与する刺激性接触皮膚炎が一般的です。一方、おむつ接触部位には、皮膚カンジダ症などの感染症や、そのほかの皮膚疾患が生じることもあります。 乳幼児では、臀部、陰部周囲、鼠径部などにみられます。成人・高齢者では、尿や便への曝露によって生じる皮膚炎は、失禁関連皮膚炎(IAD:Incontinence-Associated Dermatitis)として評価することが重要です。 おむつかぶれの症状 おむつかぶれでは、おむつや尿取りパッドが接触する部位に発赤や皮疹がみられ、掻痒感や疼痛、ひりつきを伴うことがあります。 皮膚障害が進行すると、びらんや表皮剥離、滲出液がみられることもあります。成人のIADでは、重症度によって水疱・大疱、丘疹、膿疱などを伴うこともあります。 主な症状には、以下があります。 発赤・色調変化  皮疹  掻痒感  疼痛・灼熱感・ひりつき  びらん・表皮剥離  滲出液 水疱・膿疱 疼痛や掻痒感を十分に訴えられない利用者さんでは、表情の変化、体動時や清拭時の反応、ケアへの拒否などもあわせて観察することが重要です。 おむつかぶれの原因 おむつかぶれやIADでは、尿や便への曝露に、過剰な湿潤や摩擦などが加わることで皮膚のバリア機能が障害され、炎症が生じます。 皮膚が湿潤した状態が続くと角層が浸軟し、摩擦や排泄物による刺激を受けやすくなります。 発症・悪化につながりやすい要因には、以下があります。 尿や便が皮膚に接触する時間が長い 排泄後のケアやおむつ交換が遅れる 下痢や軟便が続いている 便失禁・尿失禁がある おむつや尿取りパッドのサイズ・吸収量が排泄状況に合っていない 発汗などにより皮膚の湿潤が持続している 清拭や洗浄時に強くこすっている 過度な洗浄や刺激性の高い洗浄剤を使用している 移動や体位変換などに伴う摩擦・ずれがある また、高齢、低栄養、皮膚の乾燥、活動性の低下、基礎疾患などは、皮膚の脆弱性やIADの発症リスクに関係する場合があります。 通常のケアを行っても改善しない場合や、特徴的な皮疹がみられる場合は、感染症やそのほかの皮膚疾患も考慮します。 成人・高齢者の失禁関連皮膚炎(IAD) 成人・高齢者では、尿や便への曝露によって生じる失禁関連皮膚炎(IAD)が問題となることがあります。乳幼児のおむつ皮膚炎と共通するケアもありますが、皮膚状態や使用する失禁ケア用品に応じた対応が必要です。皮膚が弱くなっている方では、軽い摩擦でも発赤やびらんにつながることがあります。 高齢者では、加齢に伴って皮膚が脆弱になっている場合があり、清拭や体位変換時の摩擦にも注意が必要です。 また、IADと褥瘡は病態が異なりますが、同一部位または近接した部位に併存することがあります。在宅療養中の利用者さんでは、排泄物への曝露状況だけでなく、骨突出部との位置関係、圧迫・ずれの有無、皮膚の色調、硬さ、熱感、疼痛、経時的変化なども確認します。 おむつかぶれ・IADのケア おむつかぶれやIADのケアでは、尿や便への曝露をできるだけ減らし、摩擦を抑えながら皮膚を洗浄・保護することが基本です。 ケアの流れは、以下のように整理できます。 排泄物をやさしく除去する 摩擦を避けて洗浄する 皮膚に残った水分をやさしく除去する 皮膚状態に応じて皮膚保護剤を使用する 排泄量や体型に合ったおむつ・尿取りパッドを使用する 清拭時は皮膚を強くこすらず、失禁ケア用の低刺激性洗浄剤などを用いてやさしく洗浄します。過度な洗浄や強くこするような清拭は皮膚バリアを障害する可能性があるため避けます。 洗浄後はタオルなどで押さえるように水分を除去します。 皮膚保護剤は、尿や便による刺激から皮膚を保護する目的で使用します。ワセリン系製剤や亜鉛華製剤などがありますが、製剤によって閉塞性、除去のしやすさ、皮膚観察への影響、失禁ケア用品との適合性が異なります。製品の用法や皮膚状態を確認し、適量を使用します。乾燥がみられる場合は、皮膚の状態を評価したうえで保湿を検討します。 主治医への報告・受診を検討する所見 おむつかぶれやIADは、排泄物への曝露を減らし、適切なスキンケアを行うことで改善する場合があります。一方、皮膚障害が悪化している場合や、感染症、褥瘡、そのほかの皮膚疾患が疑われる場合は、主治医への報告・相談が必要です。 以下のような所見がみられる場合は、報告・受診を検討します。 適切なケアを行っても改善傾向がみられない、または悪化している 発赤やびらんの範囲が拡大している 表皮剥離や滲出液が増加している 水疱・大疱や膿疱がみられる 膿性分泌物や出血がみられる 疼痛が強い、または増強している 発熱や食欲低下など全身状態の変化がみられる 骨突出部を中心に暗赤色・紫色などの変色がみられる 同じ部位の皮膚障害を繰り返している また、骨突出部に持続する暗赤色・紫色の変色や水疱などがみられる場合は、褥瘡や深部損傷褥瘡(DTI)との鑑別が必要になることがあります。排泄物への曝露状況だけでなく、発生部位、圧迫・ずれの有無、皮膚の色調や硬さ、熱感、疼痛、経時的変化などを確認します。IADと褥瘡の鑑別が難しい場合は、主治医へ報告・相談します。 在宅での観察ポイント 訪問看護では、皮膚所見だけでなく、排泄状況、圧迫・ずれ、スキンケア方法、使用している失禁ケア用品などをあわせて評価します。前回訪問時からの経時的変化も確認し、悪化の有無を把握することが重要です。 主な観察ポイントは、以下のとおりです。 皮膚所見 発生部位、範囲、左右差、境界 発赤・色調変化、びらん、表皮剥離、水疱、膿疱の有無  滲出液、膿性分泌物、出血の有無  熱感、腫脹、硬さ、疼痛、灼熱感、掻痒感 褥瘡との鑑別に関する所見 骨突出部との位置関係 圧迫・ずれが生じる状況 暗赤色・紫色などの変色や、その経時的変化 排泄・失禁の状況 排尿・排便回数、便性状、下痢の有無 尿失禁・便失禁の頻度 おむつ・尿取りパッドの種類、サイズ、交換頻度 ケア・全身状態 洗浄方法、使用している洗浄剤 皮膚保護剤の種類、使用量、使用頻度 発熱、食欲低下など全身状態の変化 記録では、「皮膚所見」「排泄状況」「ケア内容」「前回からの変化」をセットで残すと、主治医や多職種と情報共有しやすくなります。 記録例: 「臀裂周囲から両臀部にかけて境界不明瞭な発赤あり。びらん・滲出液なし。便失禁2回/日。清拭時に疼痛訴えあり。洗浄後、皮膚保護剤を使用。前回訪問時と比較し発赤範囲に著変なし。」 「仙骨部の骨突出部周囲に限局した暗赤色の変色あり。圧迫・ずれの関与も否定できず、IADと褥瘡の鑑別を要すると判断。皮膚所見および排泄状況を主治医へ報告。」 予防のポイント おむつかぶれやIADの予防では、尿や便への曝露時間をできるだけ短くし、過剰な湿潤や摩擦を減らしながら皮膚のバリア機能を保つことが重要です。 便失禁後はできるだけ速やかに排泄物を除去する 排泄量や吸収量に応じておむつ・尿取りパッドを交換する 清拭・洗浄時は皮膚を強くこすらない 過度な洗浄や刺激性の高い洗浄剤を避ける 洗浄後は摩擦を避けて水分を除去する 皮膚状態に応じて皮膚保護剤を使用する 体型や排泄量に合った失禁ケア用品を選択する 尿取りパッドの不必要な重ね使いを避ける 下痢や便失禁が増えた場合は皮膚観察の頻度を見直す 発赤やびらんなどの変化を早期に把握する 予防では「汚れをしっかり落とす」ことよりも、排泄物をやさしく除去し、皮膚への摩擦を最小限にすることを意識します。 まとめ おむつかぶれは、おむつが接触する部位に生じる皮膚炎・皮疹を広く指し、代表的な病型に刺激性接触皮膚炎があります。成人・高齢者では、尿や便への曝露によって生じる失禁関連皮膚炎(IAD)にも注意が必要です。 ケアでは、尿や便への曝露を減らし、摩擦を避けながら洗浄し、皮膚状態に応じて皮膚保護剤を使用します。 訪問看護では、皮膚所見だけでなく、排泄状況、使用している失禁ケア用品、圧迫・ずれの有無、前回からの経時的変化をあわせて評価することが重要です。皮膚障害が拡大・悪化している場合、感染症や褥瘡との鑑別が難しい場合などは、主治医への報告・相談を検討します。 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 【参考文献】 ● 日本大腸肛門病学会編:「便失禁診療ガイドライン2024年版(改訂第2版)」.南江堂,2024.https://www.coloproctology.gr.jp/uploads/files/journal/benshikkin_guideline2024.pdf2026/9/29閲覧 ● Graham T, Beeckman D, Kottner J, et al.:Skin cleansers and leave-on product interventions for preventing incontinence-associated dermatitis in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2025;7(7):CD011627. doi:10.1002/14651858.CD011627.pub3.https://www.cochrane.org/evidence/CD011627_what-are-best-methods-preventing-skin-irritation-caused-prolonged-contact-urine-or-stool-adults2026/9/29閲覧 ● 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会:「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」.日本皮膚科学会,2025.https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf2026/9/29閲覧 ● 一般社団法人日本褥瘡学会編:「改定DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント」.照林社,2020.https://jspu.org/medical/books/docs/design-r2020_doc.pdf2026/9/29閲覧 ● Fölster-Holst R.:Differential diagnoses of diaper dermatitis. Pediatr Dermatol. 2018;35 Suppl 1:S10-S18. doi:10.1111/pde.13484.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29596730/2026/9/29閲覧 ● Cohen B.:Differential Diagnosis of Diaper Dermatitis. Clin Pediatr (Phila). 2017;56(5 Suppl):16S-22S. doi:10.1177/0009922817706982.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28420251/2026/9/29閲覧

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