みんなの訪問看護アワードに関する記事

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年7月2日
2025年7月2日

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した大橋 奈美さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」をもとにした漫画をお届けします。  「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前回までのあらすじ在宅でのお看取りがまだあまり一般的ではなかったころ、どうすれば「その人らしく生きる」ことを支えられるか考えていた大橋さん。そんなときにふと頭に浮かんだのは、病棟看護師時代に受けた訪問看護ステーション所長からのフィードバックだった。病院に向けて、手紙のように温かみのあるフィードバックをしようと考えた大橋さんは……。>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】 「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 大橋 奈美(おおはし なみ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府)この度は、審査員特別賞をいただき、本当にありがとうございました。審査員の先生方やNsPaceの皆さまに感謝申し上げます。エピソード投稿をきっかけに、普段していることを言語化し、振り返るきっかけをいただいたと同時に、改めて看看連携の大事さを思い起こしました。これから先、どのような利用者さんとの出会いが待っているかわかりませんが、今後も一人ひとりの人生に寄り添いながら、その方のエピソードを大事にしながら、望みを最後まで伺い、最善を尽くす訪問看護・在宅医療を目指していきたいと思います。 [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年7月1日
2025年7月1日

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した大橋 奈美さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編 >>後編はこちら受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編【つたえたい訪問看護の話】   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 大橋 奈美(おおはし なみ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府) [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月25日
2025年6月25日

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した田端 支普さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「看護師にご褒美をくれたA氏」をもとにした漫画の後編をお届けします。※漫画タイトルは「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」です。※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。  「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」前回までのあらすじ利用者のあゆみさんは、腎臓がん末期で一人暮らし。入院していましたが、ご本人の「家に帰りたい」という要望が強いことから、訪問看護が入ることになりました。当時訪問看護師になったばかりだった田端さんは、「タバコを吸いたい」という希望に最初は少し戸惑いましたが、安全に配慮しながらご本人のしたい暮らしをサポートしていくことにしました。そして、訪問看護に入って数日経った頃、あゆみさんからオンコールが……?>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」前編【つたえたい訪問看護の話】 「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」後編 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 田端 支普(たばた しほ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府)受賞のお知らせをいただいたときは驚きました。ハートフリーやすらぎからは複数名受賞させていただき、みんなが普段頑張ってきたことが報われたようで、本当にうれしいです!表彰式でもさまざまな訪問看護師さんに出会い、全国に熱い思いを持つ訪問看護師さんがいるんだな、と刺激を受けました。 今回のエピソードは十数年前のもので、これを機に久しぶりにあゆみさん(仮名)にお会いして、プレゼントをいただいたような気持ちにもなりました。皆さんにもあゆみさんの人生の一部を知っていただくことができ、嬉しく思っています。 訪問看護は、制度も含めて変化が激しく、大変なこともあります。でも、「やっぱり訪問看護が好き」という想いを持つ訪問看護師さんは多いと思います。みんなでより良い訪問看護をつくり、楽しく看護をし、訪問看護に関わる人みんなが笑顔になればいいなと思っています。本当にありがとうございました。 [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月24日
2025年6月24日

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した田端 支普さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「看護師にご褒美をくれたA氏」をもとにした漫画をお届けします。※漫画タイトルは「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 ※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。 「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」前編 >>後編はこちら受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」後編【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 田端 支普(たばた しほ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府) [no_toc]

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月17日
2025年6月17日

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) 木戸 恵子さんの大賞エピソード「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」をもとにした漫画の第2話をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」前回までのあらすじ4人のお子さんがいるえみさんは、末期の肺がんを患っている。子どもたちと最後の思い出をつくるために、主治医の許可も得て宮崎から東京に飛行機で移動していたところ、容体が急変してしまい、緊急入院することになった。えみさんや夫は「子どもたちのいる宮崎に帰りたい」と言っており、J病院の医師・看護師たちはリスクが大きいため悩んだが、訪問看護師の木戸さんに相談することにした。<主な登場人物>>>第1話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第1話【つたえたい訪問看護の話】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話 続く。第3話(最終話)は約1ヵ月後に公開予定です。 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者: 木戸 恵子(きど けいこ)さん株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

第3回みんなの訪問看護アワード 投稿エピソードを深掘り【特別トークセッション 後編】
第3回みんなの訪問看護アワード 投稿エピソードを深掘り【特別トークセッション 後編】
インタビュー
2025年5月20日
2025年5月20日

第3回みんなの訪問看護アワード 投稿エピソードを深掘り【特別トークセッション 後編】

2025年3月8日(土)に、東京駅からすぐのイベントホール「My Shokudo Hall & Kitchen」にて開催した「第3回 みんなの訪問看護アワード」表彰式。ファシリテーターに特別審査員の長嶺由衣子さんを迎え、受賞者の皆さんとトークセッションを開催しました。後編では、エピソード投稿のきっかけや書ききれなかった想いを深掘りしていきます。 >>前編はこちら第3回みんなの訪問看護アワード 訪問看護師になった理由【特別トークセッション 前編】 【ファシリテーター】長嶺 由衣子(ながみね ゆいこ)さん東京科学大学 公衆衛生学分野 非常勤講師【登壇者】有川 美紀(ありかわ みき)さん八幡医師会訪問看護ステーション(福岡県)「みんなの訪問看護アワード2025」入賞投稿エピソード「訪問看護の『正解』とは」松橋 久恵(まつはし ひさえ)さん株式会社メディハート 訪問看護ステーションそら(東京都)「みんなの訪問看護アワード2025」入賞投稿エピソード「私たちの足跡は残さない」 服部 景子(はっとり けいこ)さん愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう(北海道)「みんなの訪問看護アワード2025」審査員特別賞投稿エピソード「意思疎通、出来ます。」 ※以下、本文中敬称略※本記事は、2025年3月時点の情報をもとに構成しています。 『正解』に悩みながらも、再び前を向く 長嶺: ここからは皆さんのエピソードを深掘ってディスカッションしていきたいと思います。まずは有川さんから、どうしてこのエピソードを投稿しようと思ったのですか? 有川: はい。エピソードを投稿するときは、ちょうど利用者のNさんが亡くなられて間もないタイミングで、「本当にこの関わりで良かったのだろうか」とモヤモヤを抱えていました。そんな時に投稿をすすめていただいたので、エピソードにまとめてみることにしたんです。 長嶺: ALS(筋萎縮性側索硬化症)は人によって経過が大きく異なりますし、関わり方に悩む訪問看護師さんも多いと思います。交流会に「絶対に行かない」と言われた時は、どのようなアプローチをされたのでしょうか。 有川: 交流会の話が出る前から、Nさんは「やりたいことは全部やったから」とおっしゃり、外出には消極的で、寝たきりの時間が増えていました。でも、私たちがサポートに入れば、近所へのお花見や奥様との外出も十分に可能な状態だったので、「まだまだ目標を持てるのに……」と思っていたんです。そこで私は「どうして行きたくないのか」を、利用者さんの気持ちに寄り添いながら丁寧に聞いていきました。すると、車椅子での移動やお手洗いのことなど、外出時の不安を教えてくださいました。 それからは、リハビリスタッフとともに利用者さんの不安を一つひとつ解消していきました。スタッフが会場の下見をし、Nさんと車椅子選定をして、当日のスケジュールも綿密に決めていきました。最終的には奥様の後押しもあって、ご参加いただけることになったんです。 長嶺: 専門職から見たら、「まだまだできることがある」と評価し、支援したくなる気持ちと、ご本人の意欲が乖離している場合、アプローチすることは医療者のエゴなのでは……と悩むこともありますよね。有川さんは、リハビリスタッフとともに信頼関係を築き上げ、丁寧に利用者さんの不安を解消していったのだろうと思います。交流会参加後は、利用者さんやご家族にどのような変化がありましたか? 有川: 参加直後はNさんもご家族もとても喜んでくださり、私たちも嬉しく感じていました。しかしその後、利用者さんが涙もろくなったり、「息が苦しい」と訴えたりすることが増え、体調を崩されてしまい……。私の中では悔いが残っています。エピソードタイトルにもあるように「訪問看護の『正解』とは」を改めて考えるきっかけになりました。でも、奥様のあたたかな声かけによって「よし!また頑張ろう」と前向きになることができ、今後より良い看護をしていくための原動力になっています。 長嶺: 私もALSの方と向き合う時は、常に「関わり方」を問われているように感じます。貴重なご経験を共有いただきありがとうございました。 家族を想い続けた利用者さんの気持ちを代筆 長嶺: 続いて松橋さんは、若年性のがんを患われた女性のエピソードを投稿してくださいました。投稿のきっかけを教えてください。 松橋: 私は、以前から亡くなった方についてノートにまとめて振り返りをしてきたのですが、ノートに書き留めていた彼女のことがまっさきに思い浮かんだんです。彼女は訪問に伺っても、つらいことや症状について話すのは始めの10分程度。残りの時間はずっとご家族の話をしてくださいました。そんな彼女の言葉が次々と頭に浮かんできたので、このエピソードを書くことにしました。 長嶺: いつもご家族の話を聞かせてくださっていたんですね。利用者さんのご家族が幼い場合、闘病の様子をあえて見せる場合と、見せない場合とがあると思うのですが、今回はどういう経緯で隠すことになったのでしょうか? 松橋: あえて「隠す」というよりも、彼女のお話やご自宅の様子から、自然と私たちの足跡は残さない結果になったんです。お部屋の中はお子さんたちの描かれた絵でいっぱいでしたし、彼女は「平然と生きていたい」とおっしゃっていました。ご家族の前では平然としていたい。けれども平然とできないこともあり、そうした部分を私たち訪問看護でサポートするために、自然と足跡を残さない看護をすることになりました。 長嶺: そうだったんですね。お薬をファイルにセットしてさらに本棚に入れるというアプローチも素晴らしいと思ったのですが、なぜそのアイデアに至ったのでしょうか? 松橋: 彼女はどんな薬か一つひとつ確認してから飲みたいとおっしゃっていましたが、お薬カレンダーに入れてしまうと、それが難しくなります。また、お子さんたちの素敵な絵がいっぱいのお部屋にお薬カレンダーを飾るのは相応しくないと感じました。ファイルなら、月曜の朝の薬はこれ、夜の薬はこれ、火曜日は……とページごとにファイリングして、彼女自身も薬の内容を確認しながら飲むことができますので、その方法を活用していました。 長嶺: 非常に勉強になりました。お手紙は松橋さんが代筆されたとのことですが、どんな風に書いていったのでしょうか? 松橋: 彼女はいつも、お子さんの名前の由来やご主人との馴れ初め、大切にしているご友人とのエピソードなどを楽しそうに話してくださったんです。だから、私の頭の中には、彼女の言葉がまるで録音テープから流れるようにすーっと出てきたので、その言葉をそのまま書いたという流れです。病状が進む中で、書きたい気持ちはあるものの「書く気になれない」とおっしゃったので、私が書いてよいか確認した上で、代筆しました。 長嶺: 訪問看護ならではの素敵なエピソードをありがとうございました。 「困難事例」といわれたケースへのアプローチ方法 長嶺: 続いて服部さん、エピソードを投稿しようと思ったきっかけを教えていただけますか? 服部: はい。トシ子さんは、当初「困難事例」と言われていましたが、次第に表情が柔らかくなり、できることが増えていきました。所長やケアマネジャーさんたちからも「トシ子さん、すごく変わったね!」と言われ、ぜひ皆さまにもこのエピソードをお伝えできればと思い、投稿しました。 長嶺: このエピソードを読んで、まさに看護のプロフェッショナリズムだと思いました。服部さんのような看護師さんとご一緒させていただくと、私たち医師もすごく助けられる場面が多いと思います。「意思疎通不可」「サービス利用をさせてもらえません」と言われる方は少なくないと思いますが、どうアプローチされていますか? 服部: 私自身も病院で勤めていた時には、サマリーの入力欄に『意思疎通「可」「不可」』のチェック項目しかなく、乱暴な共有をしていたと反省しています。だからこそ、実際に伺ってみて、利用者さんから何を求められているのか、何ができて何ができないのかという情報整理から始めています。 長嶺: 私も自分の目でご本人の状態を確認するところから始めますが、後からサマリーを見返すと「意思疎通不可」と書かれていて、自分のアセスメントとのギャップを感じることがあります。「困難事例」といわれているケースについて、どう思いますか? 服部: 利用者さん自身が困難なのではなく、それを受け取る「私たち」が困難なのかなと思っています。 長嶺: 確かに、「困難」と感じる側の課題であることは多分にありますね。体制の問題もありますが、私たちがどれだけ人を受け入れるキャパシティがあるかどうかというところにかかっているのではないかと思います。 今回のエピソードでは、スタートからどれくらいの期間で利用者さんのSOSに気付くことができたのでしょうか。 服部: これまでの経験上、お通じが整っていないとさまざまなトラブルが起こる印象があり、実は始めから「お腹が原因ではないか」とは思っていました。ただ、当初はバイタルサイン測定もお腹を触ることも難しい状態でした。 そうした中、4回目の訪問に伺うと、私がご自宅に入る前にトシ子さんが娘さんに大声をあげている声が聞こえてきたのです。「これは訪問看護やデイサービスが嫌だからではなく、娘さんに何かSOSを発しているのでは?」と感じました。そこで、娘さんに「これは感情失禁や認知症ではなく、何か意味があるはず」とお伝えすると、「実は私もそう思ってるんです!」と笑顔を見せてくださいました。娘さんの緊張が解れた様子をトシ子さんもしっかりと見ていて、その後から急にトシ子さんが私と目を合わせて「ううん!!」と声をあげてくださるようになり、エピソードに書いた流れでお腹のSOSに気付けました。娘さんの心のバリアを解す声かけができたことが、その後のスムーズなケアに繋がったのではないかと自分では考えています。 長嶺: 私も経験上、「困難事例」と言われている方の中には、「食事」「排泄」「睡眠」のどれかがうまくいっていないだけで、それを改善するとみるみる状態がよくなることが多いなという印象があります。 皆さん、本日は本当に学びになるお話をありがとうございました。 執筆: 高橋 佳代子取材・ 編集: NsPace編集部

第3回みんなの訪問看護アワード 訪問看護師になった理由【特別トークセッ
第3回みんなの訪問看護アワード 訪問看護師になった理由【特別トークセッ
インタビュー
2025年5月13日
2025年5月13日

第3回みんなの訪問看護アワード 訪問看護師になった理由【特別トークセッション 前編】

2025年3月8日(土)に、東京駅からすぐのイベントホール「My Shokudo Hall & Kitchen」にて開催した「第3回 みんなの訪問看護アワード」表彰式。表彰、特別トークセッション、懇親会などを行い、会場は大いに盛り上がりました。ここでは、特別トークセッションの内容をピックアップしてお届けします。 ファシリテーターに特別審査員の長嶺由衣子さんを迎え、訪問看護の道に進んだ理由ややりがい、エピソードを投稿したきっかけや背景などを3名の受賞者の皆さまにお話しいただきました。前編は、訪問看護の道に進んだきっかけややりがいについてのお話です。 【ファシリテーター】長嶺 由衣子(ながみね ゆいこ)さん東京科学大学 公衆衛生学分野 非常勤講師【登壇者】有川 美紀(ありかわ みき)さん八幡医師会訪問看護ステーション(福岡県)「みんなの訪問看護アワード2025」入賞投稿エピソード「訪問看護の『正解』とは」松橋 久恵(まつはし ひさえ)さん株式会社メディハート 訪問看護ステーションそら(東京都)「みんなの訪問看護アワード2025」入賞投稿エピソード「私たちの足跡は残さない」 服部 景子(はっとり けいこ)さん愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう(北海道)「みんなの訪問看護アワード2025」審査員特別賞投稿エピソード「意思疎通、出来ます。」 ※以下、本文中敬称略※本記事は、2025年3月時点の情報をもとに構成しています。 訪問看護師を志したきっかけややりがいは? 長嶺: 本日は、訪問看護師の皆さまが抱える心配事や葛藤にまつわるエピソードをピックアップし、それらのエピソードを投稿してくださった三名の受賞者の方々とお話ししていければと思っています。まずは自己紹介をお願いします。 有川: 福岡の北九州市から来ました「八幡医師会訪問看護ステーション」の有川美紀と申します。私の働く地域は高齢化率が35%を超えているのですが、山の麓にあって、とにかく階段がたくさんある地域です。家の前まで車で行けないようなお宅もたくさんあります。7年ほど大学病院で働いた後に訪問看護師を15年ほどやっています。よろしくお願いします。 松橋: 東京の「訪問看護ステーションそら」の松橋久恵と申します。私は20年病院で勤めていましたが、家庭の都合で退職して訪問看護師になりました。2024年まで感染管理認定看護師としても活動していました。どうぞよろしくお願いします。 服部: 北海道から参りました「訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう」の服部景子と申します。私は看護師歴25年で、うち訪問看護師歴は12年ほどになります。よろしくお願いいたします。 利用者さんと膝を突き合わせ、心を通わせる 長嶺: よろしくお願いします。では、皆さんが訪問看護の道に進んだ理由を教えてください。 有川: 私は、実は学生時代の実習のころから訪問看護の仕事にとても魅力を感じていたんです。病院実習に泣きながら通っていたということもありますが……。「訪問看護っていいな」「いつかやりたいな」と思っていたので、出産を機にこの道に進みました。さまざまな課題を抱えている地域ではありますが、日々前向きにお仕事をさせてもらっています。 長嶺: ありがとうございます。松橋さんは20年病院勤めをされてから訪問看護に移られたのですね。どうして訪問看護師になったのですか? 松橋: はい。家庭の都合で病院を退職することになり、次の仕事でも感染管理の経験を活かそうと思ったのですが、改めて「どんな仕事をすると楽しいかな」とじっくり考えた時に、訪問看護の世界が頭に浮かんだんです。 訪問看護の魅力は、利用者さんの暮らしの中に入り込み、「生活」と「看護」が並行し、互いに影響し合いながら進んでいく点にあると思います。これまで得られなかった体験が日々積み重なり、人としての経験値も深まっていくのを感じます。そうした環境で、その人らしく過ごせるよう支援しながら看護を届けられることに、大きなやりがいを感じています。 長嶺: ありがとうございます。服部さんは、今回三度目の受賞ですね。訪問看護を始めたきっかけを教えてください。 服部: はい。私は、急性期の病院で働いていた際、「今と違うステージで働いてみたいな」と思った時に、本屋さんで一冊の本に出会ったことが訪問看護を始めるきっかけになりました。聖路加病院の押川真喜子先生が書かれた『在宅で死ぬということ』という一冊なのですが、本当に感動して……。「家で死ぬってすごくいいな」「自分の家族も家で看取りたいな」と思ったんです。それで「訪問看護やってみよう!」と決意しました。 訪問看護は、利用者さんやご家族と膝を突き合わせて、じっくり対話を重ねながら信頼関係を築いていくことができると感じています。利用者さんとご家族と一緒に悩んだり、悲しんだり、喜んだりする日々にやりがいを感じています。 長嶺: 利用者さんやご家族とじっくり関係を築いていけるのも訪問看護ならではの魅力ですね。ありがとうございます。 * * * 次回は、エピソードを投稿したきっかけやその背景を深掘ります。エピソードには書ききれなかった想いやその後の利用者さんの様子などを語っていただきます。 >>後編はこちら第3回みんなの訪問看護アワード 投稿エピソードを深掘り【特別トークセッション 後編】 執筆:高橋 佳代子取材・編集:NsPace編集部 【参照】〇日本医師会.『JMAP地域医療情報システム』「福岡県 北九州市八幡東区」https://jmap.jp/cities/detail/city/401082025/5/9閲覧〇北九州市「各区の高齢者人口・高齢化率比較」(令和6年4月1日現在)https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/001111766.pdf2025/5/9閲覧

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年4月30日
2025年4月30日

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第1話【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。大賞を受賞したのは、株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都)の木戸 恵子さんの投稿エピソード、「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」です。 本エピソードを『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』著者の広田 奈都美先生に、漫画にしていただきました。ぜひご覧ください! >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第1話 >>第2話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話【つたえたい訪問看護の話】 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者: 木戸 恵子(きど けいこ)さん株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

【4月8日up】第3回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月8日開催】
【4月8日up】第3回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月8日開催】
特集
2025年4月8日
2025年4月8日

第3回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月8日開催】

2025年3月8日(土)、東京駅近くのイベントホール「My Shokudo Hall & Kitchen」(東京都千代田区)で「第3回 みんなの訪問看護アワード」の表彰式を開催しました。エピソードの審査は、応募者の所属や氏名を完全に伏せた状態で厳正に行われ、計26のエピソードが選出されました。表彰式では、受賞者の方々や特別審査員の先生方、協賛企業の皆さまとともに、表彰、特別トークセッション、懇親会などで盛り上がりました。本イベントの様子や参加者の皆さまの声を、写真とともにご紹介します。 入賞から大賞まで受賞者を表彰 贈呈されたトロフィー 審査員特別賞を受賞した田端 支普さん まずは受賞者の皆さまへの表彰が執り行われました。入賞16名、協賛企業賞5名、審査員特別賞3名、ホープ賞1名、大賞1名が選出され、審査員の先生方からトロフィーと記念品が授与されました。 ・全受賞エピソードつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 大賞に輝いたのは、木戸 恵子さん(東京都)の投稿エピソード「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」です。千葉で容体が悪化した患者さんを、東京で体調を整えた上、宮崎まで陸路で送り届けたエピソードを投稿してくださいました。 大賞を受賞した木戸さんのコメントを一部ご紹介します。 「もしエピソードが受賞して漫画になったら、えみさん(患者さん)のお子さんたちに『お母さんがどれだけの愛情を持って家に帰ろうとしたのか』『どれだけ子どもたちに会いたかったのか』を伝えられるのでは、と考えて応募しました。エピソードは私が書きましたが、関わってくださった仲間は大勢います。厳しい状況の中で、宮崎に帰ることが果たして正しいのか、不安と葛藤もありましたが、その時はそれが正しいと信じ、たくさんの仲間の力を借りて宮崎への帰宅が実現しました。決して一人で実現できたことではありません。だからこそ、襷をつないでくれた仲間に会いに行って、受賞をみんなで分かち合いたいですし、お子さんたちに素敵な漫画をお届けできればと思っています。この度は素晴らしい賞をありがとうございました。」 木戸さんのエピソードを大賞に選出した理由について、特別審査員の高砂 裕子さんは次のように語りました。 「1,200kmという長距離を移動する中で、木戸さんたちがどれだけ患者さんの容体の把握に努め、ケアしてきたのか。短い文章の中から想像できることはたくさんあります。多くの不安と葛藤がある中でも、仲間の力を借りながら帰宅を実現させたことが本当に素晴らしいと思い、大賞に選出させていただきました。仲間の力・連携の力の大きさに気づかされるエピソードだったと思います。ぜひ皆さんもたくさんの方の力を借りて、木戸さんのように色々なことを成し遂げていってほしいと思います。そして、皆さんの体験したことを、積極的に周囲に伝えていっていただけたら嬉しいです」 大賞を受賞した木戸 恵子さん(左)と特別審査員の高砂 裕子さん エピソードや訪問看護に関するトークセッション 表彰後は、特別審査員の長嶺 由衣子さんと、受賞者3名による特別トークセッションが行われました。訪問看護師になった理由ややりがいをはじめ、投稿のきっかけや文章の中で伝えきれなかったケアの経緯や葛藤などが語られました。登壇者の話に深くうなずき、真剣に耳を傾けている受賞者や関係者の皆さまの様子が印象的でした。 例えば、「私たちの足跡は残さない」を投稿した松橋 久恵さんは、利用者さんの「平然と生きていきたい」という本音や家族への想いを受け、自然と足跡を残さないように努めたことを紹介。どのエピソードにも、書ききれなかったドラマや想い・葛藤などがあり、訪問看護師さんが利用者さんとひたむきに向き合っている様子が伝わるトークセッションとなりました。 お祝いの声が飛び交い、笑顔が絶えなかった懇親会 式典の終了後は、看護師・漫画家の広田奈都美さんによる大賞エピソードの漫画下書きもお披露目されました。広田さんのコメントも一部ご紹介します。 「私は漫画家であり訪問看護の経験もありますが、今回の大賞エピソードのように多職種や他の地域の仲間と連携をしていくのは決して簡単なことではありません。日頃のコミュニケーションやお互いの信頼関係が土台にあるからこそ、成立するものだと思います。物事が動くときは、いつも『感動』が隣にあります。そしてその感動こそ、皆さんが綴ってくれたナラティブ(物語)そのものです。私はこれからも漫画家として皆さんのナラティブを伝える仕事をずっと続けていきたいと思っています」 懇親会では、受賞者、特別審査員、協賛企業の皆さまが、このイベントの意義についてや訪問看護の魅力を広く伝えるためにはどうすべきかを語り合っている様子が見受けられました。エピソードに書ききれなかった経緯を深堀りしたり、感動の声を改めて伝えたりなど、お話がいつまでも尽きず、あちこちで笑顔の花が咲く様子が印象的でした。 審査員の先生方&参加者コメント 最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や参加者の皆さまにうかがった感想をご紹介します。 高砂 裕子さん(一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長)訪問看護のエピソードを書いて発表することで、現場でのケア内容やそこにあった心の動きなどが明らかになります。皆さんの頑張りが形になること、そして表彰されて称えられることを、自分のことのように嬉しく思います。 こうした現場でのリアルを、看護職や他職種の方にも広く知ってほしいものです。全国で活躍されている訪問看護に携わる皆さんには、ぜひご自身のケアに自信を持ち、ご自身の経験や想いを色々な方に伝える機会を持っていただけたらと思います。 山辺 智子さん(公益財団法人日本訪問看護財団 事業部 研究員)※公益財団法人日本訪問看護財団 事業部部長 高橋 洋子さんの代理出席 どのエピソードをとっても、訪問看護師としての熱い思いだけでなく、技術や経験に裏付けられた冷静な判断があったことが垣間見え、素晴らしいと感じました。「その時、何を大事にしたのか」「その結果、どのような変化が生じたのか」といった一連の流れは、言葉として残してこそ広く世の中に広まり、同じ分野の仲間に継承されていくのだと思います。在宅ケアの拡充を図ることは当財団のミッションでもあります。ぜひ今後もこうしたイベントを開催していただければと思います。 山本 則子さん(東京大学大学院医学系研究科 教授)素晴らしいエピソードの数々に胸が熱くなり、とても悩みながらの選出でした。日々忙しく活躍される中で、ご自身の経験を振り返って文章にまとめる機会はなかなかないと思います。皆さん、素晴らしいスキルや想いを持っておられますので、これからもぜひ共有していただけたらと思います。私の周りでも「訪問看護をやって初めて看護に目覚めた」という方や、「人生で大事なことは全部訪問看護に習った」という方もいます。ぜひ、一人でも多くの方が訪問看護の魅力に気づいてくだされば嬉しく思います。 長嶺 由衣子さん(東京科学大学 公衆衛生学分野 非常勤講師)たくさんのエピソードを拝読する中で、すべての訪問看護師に通ずる「普遍的な価値観」がそこにあるのではないかと感じました。主語は「ケアをする自分たち」ではなく、「利用者さん」にあることが伝わり、短い文章の中でも医療従事者としてのプロフェッショナリズムや利用者さんのQOLを向上させるアプローチが垣間見えるエピソードが数多くありました。こうしたエピソードの蓄積は財産になっていきますし、今回のような取り組みをもっと広げていきたいと思います。 大石 佳能子さん(株式会社メディヴァ 代表取締役)日々、ひたむきに利用者さんと向き合っておられる訪問看護師の皆さんに、こちらからマイクを向ける企画は本当に素晴らしく、貴重だと思います。皆さんの想いを言葉にすることで、利用者さんやそのご家族にも「こういうしくみがあるんだ」「訪問看護を利用するとこんな可能性があるんだ」ということが伝わり、ご自身やご家族の終末期に対する考え方にも変化が起きるかもしれません。一人ひとりのドラマをもっと深掘りし、広く伝えていきたいと感じました。 西田 歩惟さん(入賞/福岡/香住ヶ丘リハビリ訪問看護ステーション) 今回、ずっと心に残っていた訪問看護入職1ヵ月目の経験を投稿しました。エピソードとして形に残せたことがとても嬉しいですし、受賞したことをIさんのご家族にも伝えたところ、たくさんの感謝の言葉をいただき、心があたたかくなりました。「みんなの訪問看護アワード」に投稿されたエピソードを読んで、少しでも訪問看護に興味を持ってくださった方は、新卒の方もブランクがある方も含めて、ぜひこの世界に来てほしいなと思います。 木内 亜紀さん(協賛企業賞/埼玉/株式会社ピコグラム 地域ケアステーションゆずり葉) 今回、素晴らしい賞を受賞できたことを光栄に思います。表彰式も本当に素敵なイベントでした。皆さんのエピソードを聞いて、同じ空の下で頑張っている人がこんなにたくさんいるということを改めて実感しました。皆さんの中には素晴らしい「宝物」があって、そこから力をもらいながら、利用者さんに向き合っているんだと思います。もちろん大変なこともありますが、私もそうした想いを力に変えて、今後も訪問看護の道を歩んでいきたいと思います。 「第3回 みんなの訪問看護アワード」表彰式にご参加いただいた皆さまの集合写真 表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。後日、表彰式のトークセッションのレポート記事や大賞・審査員特別賞・ホープ賞の漫画の公開も予定しています。どうぞお楽しみに! 執筆: 高橋 佳代子取材・編集: NsPace編集部

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】
つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】
特集
2025年3月11日
2025年3月11日

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。厳正な審査を経て、受賞作品が決定しました。本記事では、入賞エピソード16件をご紹介します! 大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞はこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】 「看護の灯」 投稿者: 饗庭 康太朗(あいば こうたろう) さん TSUKASA訪問看護ステーション(神奈川県) 玄関のチャイムは壊れている。引き戸を開けると目前に階段が現れ、埃が掃除しきれない階段を、スリッパの形についた足跡を辿り2階にあがる。そこらかしこに積み上げられた本がFさんの人生を物語る。ながらく編集者として活躍されたのち、様々な会社の社史を担当したFさん。決して人付き合いが上手い人ではなく、遠方に住む娘さんとの関係性も良好とは言い難かったが、ウィットにとんだ会話と、なんとも言えない浮世離れした雰囲気は地域の皆に好かれていた。肺がんが末期となり、Fさんの療養生活を少しでも快適にしようとN看護師は根気よく取り組んでいた。生活に寄り添うN看護師のナーシングは親子のわだかまりも少しずつ解いていった。Fさんが亡くなったあとの娘さんからの手紙にはこうかかれていた。「最後に父にあった日、アパートの門灯をつけておいてくださったのはNさんかと思います。あの暖かい灯を一生忘れません。」スイッチひとつの気遣いだ。そこには確かに看護の技がひかっていた。 2025年1月投稿 「訪問看護の『正解』とは」 投稿者: 有川 美紀(ありかわ みき) さん 八幡医師会訪問看護ステーション(福岡県) Nさんと奥様との出会いは今から1年前になります。その数か月前にALSと診断を受けられ、初めて会った時はすでに多くの介助が必要な状態でした。進行は早く、当初より「人工呼吸器は絶対につけない」と強い意志をお持ちでした。元々大きな会社の管理職をされていたこともあってか、弱音を吐くことなくいつも毅然としておられ、スタッフを笑わせてくれていました。しかし、リハビリに対しては前向きになれず、ベッド上での生活となっており、ALSという病気を受け入れることができていない様子がうかがえていました。そんな時訪問診療の先生より「ALS患者家族の交流会」のお知らせがありました。やはり「絶対に行かない」とのことでしたが、スタッフでどうしたら参加できるのか話し合いを重ねました。不安に対して一つ一つ解決策を考え、参加したいという奥様のお気持ちを伝え何とか説得することができました。当日会場で「妻に迷惑だけはかけたくない。これから恩返しをしようと思っていた時だったのに」と心の内を明かされ涙されました。先日Nさんは肺炎を起こし永眠されました。奥様から「あなた達に出会えて本当に良かった。主人はとっても幸せだったと思う」と言われました。訪問看護では、正解が分からず本当にこの関わりで良かったのかと考えることが多々あります。しかし奥様のこの言葉で「よし!また頑張ろう!」と元気と勇気をいただきました。 2025年1月投稿 「訪問看護の魅力を伝えてくださったお嫁さん」 投稿者: 五十嵐 いずみ(いがらし いずみ) さん リハビリこんぱす訪問看護ステーション(埼玉県) 先日、ある病院の地域懇談会に出席しました。終了後、ほかの事業所の訪問看護師に声をかけられました。見覚えがなく、「誰だったかしら」と思っていると、「おばあちゃんがお世話になっていました」と。なんと、私が訪問看護1年目(20年以上前)に担当していた方のお孫さんでした。「母が、『訪問看護はいい仕事よ。私は訪問看護さんに救われたの』と、私に訪問看護を勧めてくれたんです」と。その利用者は認知症があり、苦悩する介護者のお嫁さんに3年間伴走したのです。聞くと、お母様は昨年亡くなったとのこと。私が提供した訪問看護が、介護者の心に残って、娘に訪問看護の魅力を伝えてくれたことは、驚きでした。が、とてもうれしくて、温かい気持ちになりました。 2025年1月投稿 「とびきりの薬になった花見」 投稿者: 植村 優衣(うえむら ゆい) さん 訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府) 新卒から訪問看護師になり、夜間待機を始めた頃、明け方4時に電話がなった。Aさんから息苦しさの訴えで臨時訪問の依頼だった。その時の私はとにかく緊張と不安でいっぱいだった。というのも、Aさんは、契約はしていたが、初回訪問は緊急電話があった日の夕方だったため、何も情報がわからなかった。真っ暗の中、地図を頼りに家を探すところから始まった。なんとかたどり着くと、不安で申し訳なさそうなAさんの家族が迎えてくれた。肺炎を起こしていたため、連日の抗生剤治療が始まったが、軽快する様子がなかった。その時、家族から、Aさんは広島出身で原爆を経験し辛い経験が多かったから、「少しでも今を幸せな時間にしたい。桜を見せに行きたい」と相談があった。主治医からは、現状では外出は控えてと言われたが、何度も相談をし、外出許可をもらった。すぐに、ケアマネに、リクライニング車椅子を手配してもらい、「当日はカメラマンとして同行する」と協力してもらった。理学療法士に相談すると、「出発前に呼吸リハを行って呼吸状態を整えよう。移動は男手がいるから一緒に行くよ」と話してくれた。とんとん拍子で話がまとまり、無事に花見を迎えられた。その後、驚くことにAさんの肺炎は軽快し、花見がとびきりの薬になっていた。今でも家族と会うと、「桜を見に行けて良かった」と話してくれる。ドキドキから始まった出会いだったが、ホッと心温まる看護を行えた経験である。 2025年1月投稿 「五臓六腑に染み渡る」 投稿者: 大日向 麻子(おおひなた まこ) さん 訪問看護ステーションリカバリー 東村山事務所(東京都) 「食べられない。これがどんなに辛いことか、わかるか?」心臓を掴まれた気がした。初めて会った日に交わした最初の会話。咽頭癌末期、胃瘻造設し経口摂取禁止の指示で帰宅されたSさん。「悔しい」と歯を食い縛るSさんを、家族が宥める。私が関われるのはほんの少しの時間、ご家族はここから毎日どんな思いでこのやりとりをすることになるだろう。ある日の訪問、Sさんが「あんた、好きな物あるか」と呟いた。「うーん、悩みますね。でも、特別美味しいと思うのは愛がこもった料理ですよね」と伝えると「だよなぁ」とにやり。初めて笑った!と感動したと同時に、「愛のこもった料理」に対して笑顔を見せてくれたということは…。「もしかして、奥様の料理が一番の食べたいものですか?」しばらくの沈黙があり、「そうだな」と話すSさんに、ミキサー状にすれば奥様のお料理も注入できることをお伝えすると、すぐに実践。「おまえのご飯が、食べたかったんだ。これが本当の五臓六腑に染み渡るだな」プロポーズ以来の素直な言葉に奥様は笑い泣き。その後、奥様は手作りご飯をよく作るようになり、Sさんは来る人来る人に「これ愛妻ごはんなんだよ」と私たちにも笑顔をくれた。食べることは、生きること。その人にとっての「食べたいもの」は、もしかすると味や風味より、大事なものがあるのかもしれない。Sさんが教えてくれた、大切な学びです。 2025年1月投稿 「パティシエナースが未来を笑顔にする。」 投稿者: 佐藤 律子(さとう りつこ) さん 訪問看護・リハビリステーション 在宅看護センター北九州(福岡県) 「僕の誕生日にケーキ作りがしたい」とその子はそっと話してくれた。特別支援学校へ通うH君17歳の誕生日は来週だった。平日は学校併設の寮に入り週末だけ自宅に帰る生活を送る。多動性障害、知的障害があり社会との関わり方や人間関係、性教育等の支援を訪問看護で行っていた。父子家庭であり父親と祖母との生活の中、H君がケーキを作りたい理由は、今までの父親、祖母への「感謝」を形にしたいからだと教えてくれた。誕生日当日は、真っ白のスポンジケーキの土台に家族の大好きな苺とマスカットやチョコレート、生クリームのトッピングを準備しH君は一生懸命ケーキを作った。もともと工芸や絵の得意なH君は、とても綺麗にそして鮮やかに一つ一つを丁寧に仕上げて完成。完成したケーキを持ち「大好きなお父さん、おばあちゃん。いつもありがとう。」と感謝の言葉を伝えることが出来た。父親と祖母は大変驚き、感動し涙を流して喜ばれた。その後の3人で最高の笑顔でケーキを食べている姿は忘れる事が出来ない。私は、看護師になる前15年間パティシエとして働いた後に看護師へ転職。今回、看護師とパティシエをコラボさせて自立支援の一環とし支援する事で、利用者のみではなく利用者家族の幸せも感じることが出来た。また、私自身も今まで培った知識や技術が活かされただけではなく、これからはパティシエと看護師を組み合わせて多くの笑顔を引き出せるパティシエナースになると強く思う。 2025年1月投稿 「おとうさんの、宝物。」 投稿者: 篠原 真菜美(しのはら まなみ) さん 正峰会訪問看護ステーション(兵庫県) ALSを患った70代女性の利用者さん。ご主人と2人暮らしです。少しずつ病状が進み、身体を思うように動かすこと、話すことが難しくなり、吸引などの処置が増えていきました。ずっと側にいていつも支えてくれているご主人に、普段言えない感謝の気持ちを、Sさんの今できる力を使ってお手紙にしてみたらどうだろうか、と先輩看護師の言葉を受け、Sさんに提案してみました。上手く文字が書けるかどうか不安がありつつも、「書く」と言われたSさん。病状の進行に伴い、車椅子にしっかり座っていることや、マジックペンを持つことも大変ですが、ぎゅっと握りしめ、一生懸命に想いを文字に乗せ、画用紙いっぱいに書き綴られました。ご主人が定期的に歯科受診で外出される時間に書く機会を一緒に作り、密かに少しずつ書きすすめられました。そして遂に、ご主人・家族への想いがたくさん詰まったお手紙が完成しました。そこには沢山の感謝と、"おとうさん 大すきですよ"の言葉がありました。家族が集合し、お手紙を渡した次の日の朝、Sさんは、眠るように息を引き取られました。「大すきだなんて…初めて言われたわ!これは、わしの、たからもんや!!」と、ご主人は涙を流しながらも、笑顔でそう言われました。 2025年1月投稿 「司令塔が遺したもの」 投稿者: 立川 尚子(たちかわ なおこ) さん 共立女子大学 看護学部(東京都) Aさんが奥さんを看取った後の某日、グリーフケアへうかがった。山積みになったアルバムを広げ、結婚式からエピソードを語るAさんの笑顔からは、訪問看護が入った当初の憤慨や困惑を思い出せないくらいだった。「あいつが最期に俺に遺してくれたのはさ、生活する力だね」家族の指令塔だった奥さんの余命宣告は、昭和生まれの男の人生へ大きな混乱をもたらしたけれど看取りまでの在宅生活では、二人で喧嘩しながら料理や洗濯ができるようになった。整理整頓された居間の奥から、奥さんの声が聞こえてほしい。「良くやってるじゃん」って。 2024年12月投稿 「1ヶ月の奇跡」 投稿者: 西田 歩惟(にしだ あい) さん 香住ヶ丘リハビリ訪問看護ステーション(福岡県) 「家に帰りたいけど家族には迷惑かけられない」「連れて帰りたいけど病院にいる方が安心」病棟で働いていた時に、よく耳にした。その方とその家族の力になりたいと思い、私は訪問看護に進んだ。Iさんは終末期癌。独居、家族は遠方にお姉さんが一人。カニューレや点滴管理、清潔支援で1日3回の訪問。最期は家で過ごすと決めていたIさん。在宅生活が厳しくなり、医師が入院を勧めたが頑なに断り、看護師がお姉さんに来てもらうように声をかけた。Iさんは頷いたが「私達姉妹には確執がある」と表情を強張らせた。お姉さんも同じ言葉を口にされ、入院させるべきか、妹の意思を尊重するべきか、煮え切らない気持ちで過ごされていた。スタッフ皆が処置やケアの合間で時間を設け、寄り添いながら関わった。ある日私が訪問すると、お姉さんは涙ながらに「妹の意思を貫くって決めた」と言った。全力でサポートします!と伝えると、笑顔で頷かれた。その2日後、Iさんは穏やかな表情で永眠され、優しい眼差しで見送るお姉さんの姿があった。あれから3年。お姉さんより『皆様に勇気を戴いた』『在宅で過ごした時間は奇跡のよう』と、今も感謝の言葉が届く。Iさんが望んだ家で、お姉さんと共に生きたこと。訪問看護師の存在が、最期まで在宅で過ごす架け橋になったこと。私の初心を照らしてくれる大切な経験となった。 2025年1月投稿 「家族写真」 投稿者: 原田 三樹子(はらだ みきこ) さん 青山訪問看護ステーション(愛知県) 「看護師さんが来てくれると嬉しくて安心するよ」と毎回涙目で迎えてくれるAさん。ほとんど口から食べることもできなくなり、点滴が命綱の胃がん末期の70歳男性。とても笑顔が素敵だ。奥さんのことを○○ちゃんと呼ぶほど仲良し。ある訪問で「本当は家族写真を撮りに写真館に行きたいんだ。自分の目標にしたいんだ」と教えてくれた。「でも点滴があるからいけないよね」点滴スタンドにセットしバックに入れて持ち運べることを提案すると「わー行かれる。手伝ってくれる?」と。当日、奥さんはすでにきれいな着物を着ており、Aさんは素敵なスーツに着替える。点滴をスタンドにセットし目立たないような色の紙袋に入れ、送り出す。後日「記念に紙袋も撮ってもらったよ」と笑いながら言っていた。写真の中のAさんは家族に囲まれ、とびきりの笑顔だった。そこから芋ほり、孫の誕生日会、自分の誕生日と、どんどん目標を更新していった。ただ、最後の目標である自分の誕生日には二日届かず、亡くなってしまった。お参りに伺うと、あの時撮った写真が遺影になっていた。同じように笑顔で家族を見守っている。 2025年1月投稿 「桜の約束」 投稿者: 古川 莉沙(ふるかわ りさ) さん ヒーリングケア訪問看護ステーションみなと(大阪府) 90代男性Sさん。訪問介入当初は、声をかけても開眼する事なく無表情で寝たきり状態でした。半年前に桜を見に外に行ったのが最後だと息子さんがお話しされていて「来年も桜一緒に見に行きましょうね!」と言っても「行かん。もうやり残した事ない。死ぬだけ」と断固拒否でした。日々介入していく中で、少しずつではありましたが目を開けてくれるようになり、帰る時には「ありがとう」と言ってくれるようになりました。そのたった一言だけでも最初は嬉しくて感動していました。秋になり、紅葉が綺麗ですよとお話しすると、「紅葉を見に行きたい」と言ってくれて、大きすぎる進歩だと思いました。ケアマネージャーさんやヘルパーさんにも相談して、身体がしんどくない時に車椅子で紅葉を見に行けるよう調整していましたが…なかなか行けず。でもどうにかして秋を感じて欲しい…と考えに考えているうちに私はひらめきました。"紅葉を持っていけばいいんだ"と。綺麗に咲いていた紅葉を2枚持って行くと、涙を浮かべながら「ありがとう、姉ちゃん…」と言ってくれていつでも見えるところに飾ってくれました。そして、来年一緒に桜を見る約束が出来ました。看護師として体調管理はもちろんですが、それだけではなく、少しでも利用者さんの生きる活力になれるような、「まだ元気で過ごしたい」そう思ってもらえるような関わりをしていきたいです。 2025年1月投稿 「私たちの足跡は残さない」 投稿者: 松橋 久恵(まつはし ひさえ) さん 訪問看護ステーションそら(東京都) ある女性との出会いです。がんの症状が出現したため訪問看護が始まり、症状緩和、生活の工夫、家族支援を模索しながら訪問していました。女性は薬の管理が負担だったので、薬カレンダーを使おうと思いました。しかし部屋は子供の写真や絵が一杯で、薬カレンダーは相応しくありません。そこで薬をファイルにセットして本棚に入れました。女性は子供が学校にいる時間に訪問を希望しました。私は訪問の形跡を残さないよう努めました。女性はよく家族への思いを話し、「手紙を残したい」とも話していました。字を書くことが難しくなりそうなときに手紙について尋ねると「なんとなく書けない」とのことで、私が聞いてきた話を文章にする承諾をもらいました。それから数日後に家族に見守られながら息を引き取り、家族に文章を渡しました。病気が進行しても、いつもの暮らしを維持することを考え、希望を叶える手伝いをすることが大事だと教えてもらった出会いでした。 2025年1月投稿 「最後の約束」 投稿者: 松元 春華(まつもと はるか) さん 楽らくサポートセンター レスピケアナース(福岡県) 往診医の要請を受け、夜間の呼吸状態急変に対して緊急訪問した時のことです。終末期にある女性の利用者さんで、苦痛を緩和するため、鎮静剤の投与を検討されていた時期でした。到着した時は、既に朦朧とした意識の中で一生懸命呼吸する彼女を、大学を休んでお母さんに会いに来ていた息子さんとご主人が、心配そうに気遣っているところでした。往診医が到着し、ご家族と相談して鎮静剤の投与が決定したその時です。息子さんが「ちょっとだけ待ってください!」と、席を外されました。そして次に現れた時、息子さんはスクラブを着て、首から聴診器を下げた、“医者”の姿をしていたのです。県外の医大に通っていた息子さんは、彼女の前に立ち、「お母さん見て。僕が医者になった時の姿だよ!」と、鎮静を開始する前のお母さんに、彼女が見ることのできない、将来の自分の姿を見せてくれました。虚ろな目で息子を見る彼女の手を取り、息子さんは「立派な医者になって、お母さんみたいな人をたくさん救うからね」と、声を震わせながら何度も何度も約束したのです。とても尊いそんな時間を過ごした数日後、彼女は息を引き取りました。夢に向かう息子さんのこれからに、色んな想いを込めながらした、母との最後の約束が、力を与えてくれるよう願っています。 2025年1月投稿 「仲良し夫婦」 投稿者: 水島 真由美(みずしま まゆみ) さん 訪問看護ステーションひだまり(京都府) Aさん御夫婦。長年連れ添ってほぼ同じタイミングで、同じ胃癌。余命宣告。長年一緒に過ごした自宅に帰りたい。との気持ちを大切に大急ぎで在宅調整し退院してこられました。初めましての挨拶からすぐにケアが始まりました。御夫婦は日当たりのいい部屋にレンタルのベッドを並べほっと一息。二人で一緒に逝けたらな…と言うご主人の言葉でしたがその日のうちに奥様の容態が急変。帰らぬ人になりました。はじめはご主人も気持ちの整理がつかず点滴の合間に葬儀などが慌ただしく終わりました。すぐに奥様のところにと言う言葉もありましたが悲しみのまま残された時間を過ごしてほしくないと思いました。奥様との思い出、ご主人の好きなことなどたくさんお話をして少し先に逝った奥様へのお土産話をたくさん作りましょうと、声をかけ少しずつあれが食べたい、何をしたいと希望をおっしゃってくれるようになりました。奥様を見送ってひとつき。そろそろかな。今月が終わったら奥さんに会いに行くと笑顔で話され、もう少しお土産話作りましょうねと声をかけましたが、本当にその月の最終日に穏やかに息を引き取られました。その穏やかな顔をみて人生の最終段階、少しでも悲しみではなく穏やかな気持ちでその日を迎えられるよう身体も心も支えていける訪問看護師であろうと改めて誓った出会いでした。 2024年12月投稿 「思いに寄り添う訪問看護」 投稿者: 吉崎 由希子(よしざき ゆきこ) さん 医療法人社団成美会 訪問看護ステーションあさがお(茨城県) 定年を迎え、妻と旅行を楽しもうとしていた矢先、病院で末期の食道癌と診断されたAさん。転移があり医師から治療は困難と、セカンドオピニオンでも診断は変わらず。訪問診療と共に訪問看護も介入し、連日訪問。【また家族で出かけたい】との思いを叶える為、DRはIVHポート挿入、栄養状態が改善。輸液をバッグに入れ、家族とドライブ、ふきのとう狩り、山菜取り等に外出し思いが叶ったと。在宅では、愛する妻がそばにいて、子供たちに毎日会え、孫は保育園から帰るとジイジの頬にチュッとパワーを注入。愛犬も家族、常に一緒の生活が幸せと。ある日Aさんより「吉崎さん、お願いがあるんだ。絶対俺が痛んだり苦しんだりする事が無いようにしてくれな。吉崎さんの事は俺がちゃんと天国に連れてってやるからな」と死を受容しての言葉。疼痛にはPCAを使用。苦痛は最小限に在宅で大好きな家族と毎日Aさんらしく生活できるよう訪問しました。大好きな家族、妻、子供、孫、愛犬に見守られ、穏やかな最期でした。エンゼルケアは家族と泣き笑いながら、生前に決めていた素敵なスーツに着替えました。その後も残された家族に会いに行き、車ですれ違えば大きく手を振り合っています。私が亡くなったらAさんに会え、Aさんが私を天国に連れて行ってくれます。その時まで、私は訪問看護師をしながら、Aさんのように自分らしく精一杯生き抜こうと思います。 2025年1月投稿 「今日は〇点!」 投稿者: 渡邉 凪沙(わたなべ なぎさ) さん セコム大田訪問看護ステーション(東京都) これは私が新卒で訪問看護ステーションに就職し1ヶ月経った頃、初めて入浴介助を行ったFさんの話です。Fさんは80代の男性です。若いころからお風呂が大好きで、湯船に浸かった時には歌を歌い、「気持ちよかったぁ」と言いながら上がるのがお決まりでした。私が初めて入浴介助を行ったとき、部屋に戻るとFさんが突然「今日は80点!」と言いました。何についてかと聞くと介助に対しての点数でした。減点の理由は、頭をもっと強く洗ってほしい、ここが洗い足りない・流したりないなどでした。このとき私は、次は絶対に100点を取るぞ!と心に決め、教えていただいたところを特に気を付け介助しました。すぐに100点とはならず、今日はここが物足りなかったなど、毎回教えていただき、4回目の訪問でついに「今日は100点!」をもらうことが出来ました。私はこれを通して、自分の勉強や練習だけではなく、利用者さんにも成長させていただける訪問看護はとても魅力的だと感じました。未熟な私に、根気強く教えていただいたFさんに感謝しながら、これからも、一人前の訪問看護師になれるように頑張りたいと思います。 2025年1月投稿 * * * 皆さま、おめでとうございます!今後、「みんなの訪問看護アワード」表彰式の様子をご紹介する記事や、大賞・審査員特別賞・ホープ賞を受賞したエピソードの漫画記事も順次公開予定です。ぜひご覧ください。 編集: NsPace編集部 [no_toc]

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