インタビュー

研究を飛び越えて、魅せる強み

ビュートゾルフ柏では「住み慣れた地域での穏やかで彩りある人生に生涯を通じて伴走する」をモットーにしています。研究と臨床を両立しているからこそできる、制度の活用やステーションを運営することになった経緯について伺いました。

ビュートゾルフの4要素


―モットーには、どのような思いが込められていますか。

吉江:
イメージしているのはイギリスやオランダの家庭医みたいなものです。
同じ地域の中で「この人は支えるけど、この人は支えない」ということはなくて、子どもでも、高齢者でも、障害のある方でも、すべてみる。地域の住民全体と契約をするイメージです。
精神科や小児科など何かに特化するというやり方は性に合わなくて、特化するなら区域に、と考え立ち上げのときに作った絵がこちらです。今もこのコンセプトは変わっていません。

訪問看護ステーションという形で立ち上げたのですが、それだとどうしても基本自宅にいて、外出しないという方が対象になってしまい、元気に外を歩いている方とは仕事上でお会いする機会がないですよね。そこをなんとかしたいと思いました。
訪問看護ステーションを始めた時期に、行政の地域支援事業として住民による通いの場生活支援体制整備事業が推進され始めました。
タイミングも良かったので、私たちもやってみたら、たまたまうまくいきました。これは、ビュートゾルフの4要素に通じるものがあります。
―ビュートゾルフの4要素とは、どういうものでしょうか?
4要素とは「場」「住民」「看護師」「各種制度をうまく組み合わせる知恵」のことです。
「看護師」と「住民」が互酬的な関係を持ち、また住民同士が支え合う「場」を作る。その際に「各種制度をうまく組み合わせる」ことで、補助金や助成金などを上手く利用していくというのが、基本的な考えです。
―地域支援事業などを上手く利用していくにはどうしたら良いでしょうか。
制度を組み合わせる知恵というのは、地域包括ケアの分野で研究をしてきた私の強みでもあるかもしれません。
地域包括ケアのしくみは本当に細分化されていて、これをやらせてあげる代わりにこれが義務として発生するなど、一長一短があるなと思っています。
そこを熟知して役所とも渡り合いながら、本当の意味で住民をハッピーにできるような道具だけを使っていきたい、足枷を増やさないように努めています。

研究から実践へ


―なぜ吉江さんは、オランダのビュートゾルフを日本に導入して、ステーションを始めようと思ったのですか?
吉江:
当時は東京大学で研究職をやっていて、千葉県柏市の在宅医療のプロジェクトなどをやっていました。看護師として地域包括ケアに関わる中で、私自身も訪問看護ステーションの運営を経験してみたいなと漠然と思っていました。
その時期にちょうど、オレンジクロスという新設の財団法人でビュートゾルフの研究プロジェクトを1年間やるので、プロジェクトマネジャーみたいなことをやらないか誘われたことがきっかけです。
―ビュートゾルフのプロジェクトとはどのようなものだったんですか?
吉江:
正式名称は地域包括ケアステーション実証開発プロジェクトといいます。
日本でもビュートゾルフの考え方を広めるために、もし日本でやるとしたらどういう形がいいのか、みんなで勉強しながら進めていくプロジェクトでした。
黒船が来たみたいに拒否反応を示されるのは避けつつ、ビュートゾルフの名前を使う、使わないに関係なく、日本の実践者のみなさんにも参考になればいいなという思いで、研究を進めていました。
その中で、ビュートゾルフの名前を使って実践しているところも必要だよねという話が出て、私が訪問看護ステーションを立ち上げることになりました。

一般社団法人Neighborhood Care 代表理事 / 東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員 / ビュートゾルフ柏代表 / 看護師・保健師
吉江悟

東京大学に入学後、看護学コースに進学し、看護師の資格を取得。大学卒業後は、大学院の修士課程と博士課程に進学。並行して保健センターや虎の門病院に勤務。大学院卒業後は、東大の研究員や病院での非常勤講師と並行して、在宅医療のプロジェクトに関わるようになる。2015年に、研究として関わっていたビュートゾルフを日本でも展開するプロジェクトとして、ビュートゾルフ柏を立ち上げ、代表に就任。現在も、看護師として現場に関わりながら、研究員としてさまざまなプロジェクトに参加し、臨床と研究の両立を大切にしている。   

地域で活躍する訪問看護ステーションについてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。
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