インタビュー

これからの病院のあり方

厚生労働省が実現を目指す「地域包括ケアシステム」ですが、その主体は自治体であることがほとんどです。
そんな中、地域包括センターの限界を感じ、全国的に見ても珍しい「病院が主体となったシステムの実現」を試みるのが、牧田総合病院の澤登さんです。地域を守るために、これからの病院の在り方を、澤登さんに伺いました。

地域包括支援センターの現状


―以前は、地域包括支援センターにお勤めだったと伺いました。当時はどのような課題を感じていましたか?
澤登:
私が以前働いていた地域包括支援センターでは、皆、日々の業務をこなすのが精一杯という状況でした。しかし私は、「これでは地域包括支援センターは本来のセンターの役割を果たせていないのでは?」と思っていました。
まずは、私が考えていたセンターの本来の役割についてご説明する前に、牧田総合病院が受託・運営する地域包括支援センターと大田区が抱える問題について、お話させてください。
大田区では地域包括支援センターが21か所ありますが、その21か所のセンターで月に約1万件の相談に対応しています。
一番多い相談は介護保険に関するものですが、家族問題、経済問題、高齢者の虐待、住まいの問題など、ここ数年で相談件数が急増してきているものもあります。こういった問題に共通する特徴は、全体から見た割合としては少ないけれど、さまざまな相談内容が絡みあっているということです。
さらにいうと、この相談に来た人たちは、ある意味では公的な相談窓口にたどり着くことができ、サービスにつながることができた人たちでもあります。
しかし、地域の中には本当は専門家や各サービスを必要としているけど、自分たちでは声をあげることができない人たちもたくさんいます。
また、私がいた地域包括支援センターのエリアでは、65歳以上の高齢者は9000人いましたが、この9000人を7人の職員で対応しています。少人数の職員体制では、相談に来ることができた高齢者に対して、サービスを提供するだけの対応に終始しがちです。
今後ますます高齢化が進んでいけば、今と同じようにサービスを提供していくのすら難しいでしょうそして、この現状は全国に5000近くある地域包括支援センターでも、同じかもしれないと思いました。
私は、本来の地域包括支援センターの役割は、対象者本人と組織をつなぐ、組織と組織をつなぐ、組織と機関をつなぐ、こうしたコーディネート機能だと考えています。
今までは、専門職が支援を必要とする人を「点」で支えていましたが、個別支援の限界を感じ、地域で暮らすすべての人たちを「面」で支えるしくみを作りたいと思いました。
このしくみを実現するために作ったのが、地域ささえあいセンターです。
『地域ささえあいセンター』
「地域包括ケアシステム」の具現化をはかる中核の部署として、病院の中に作られた組織。地域包括支援センターや退院調整をしている医療相談室、介護保険サービスのデイケア、居宅介護支援事業所など病院の中でも地域とつながりがある施設や部署が集められている
―澤登さんご自身がそのように考えるようになったのは、どうしてでしょうか。
澤登:
実は私は大学卒業後、親子向けの舞台芸術を提供している地域の団体職員をしていました。その後、デイサービス勤務を経て、牧田総合病院内の地域包括センターで働くことになりました。
元々、地域活動をしていたこともあり、病院は「怪我や病気を抱える人たちに来てもらう、受動的な場所」ではなく、「地域に暮らす人たちの、健康を支える拠点」になるべきだと思っていました。
病院は、さまざまな専門職種がいる人的資源の宝庫です。
その病院が治療をするだけの役割のままではもったいないと感じ、病院の中に地域とつながりがある部署を集めた地域ささえあいセンターを作りました。

牧田総合病院 地域ささえあいセンター センター長
澤登久雄
大学時代、児童演劇に夢中になり、舞台芸術を提供する地域の団体職員として8年勤務。結婚し、子供ができたことをきっかけにデイサービスに就職。介護福祉士・ケアマネージャー・社会福祉士の資格を取得後、牧田総合病院に入職。病院内に地域ささえあいセンターを立ち上げ、センター長として地域貢献に尽力している。
社会医療法人社団 仁医会 牧田総合病院
東京都大田区の大森地区にある、地域密着型の急性機病院。昭和17年創設、地域に根ざして90年になる。
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