インタビュー

【精神科訪問看護】精神看護の技術の磨き方

訪問看護ステーションみのりは、利用者さんへの向き合い方で、他の精神科訪問看護ステーションとは一線を画す存在として知られています。みのりの進さんと小瀬古さんに、具体的な精神科訪問看護の実践についてお伺いしました。

精神科訪問看護における、看護師と他職種の役割

進:
ステーションには看護師と作業療法士がいて、大きく業務内容が違うということはありませんが、持っているスキルが異なるため、強みは変わってくると思います。
作業療法士は日常生活の活動を通して、利用者さんの精神症状や、何がやりにくくなっているのかなどをアセスメントします。看護師は、医療的なデータなどもふまえながら、さらに精神症状の細かなアセスメントをします。
理論でいえば、オレムの「セルフケア理論」や「メンタルステータスイグザミネーション」という精神機能をアセスメントするものを活用しています。
―精神科医との役割の違いはいかがですか?
進:
私個人の考えではありますが、簡単に言えば、医師は利用者さんとはコミュニケーションを取りながら、精神症状に合う薬を調整しています。一方、私たち訪問看護ステーションは、生活に直接的に関わるところで支援しています。どう生活を組み立てているのか、コミュニケーション技術を使いながら、行動までのつながりを意識して一緒に考えていきます。
―生活を組み立てるについて、詳しく教えていただけますか。
進:
人間関係から家のこと、子どもの世話、お金のやりくり、買い物などさまざまな問題を一緒に解決していきます。
例えば、お金の使い方が荒く、生活もままならない場合、「それなら封筒を小分けにして管理する」だけではなく、なぜお金の管理ができないのかを明らかにします。幻聴で「〇〇を買え」と命令されているのか、どう病状が生活と関係しているのかアセスメントすることによって関わり方が変わってきます。
小瀬古:
みのりでは、主体性を軸にした看護を大切にしています。ですから、看護計画も利用者さんと一緒に立てているんです。こちらが計画を立てて、紙を渡すだけでは意味がありません。
利用者さんが自分のことを知り、症状とつきあいながら生活を組みたてていく必要があります。看護計画をベースにケアをするわけですから、契約書と同じ意味をもつと考えています。
とはいうものの、本人と看護計画を立てるときには「言うは易し行うは難し」で、技術が必要です。
例えば、ゴミ屋敷に住んでいる利用者さんがいたとします。発達障害なのか、精神障害の影響なのかによって、ゴミ屋敷になったプロセスは変わってきます。
あるケースでは、「片付けましょう」と提案して一旦受け入れてもらい、片付けをしました。だけど、ゴミの量が膨大で処分するのに料金が発生してしまうとなったときに、「お前らが勝手に片付けをしたんだから払え!」と言われてしまったと聞いたことがあります。
なぜ、こういう結果になってしまったのかを推測すると、利用者さんの主体性を軸とした看護計画になっていない可能性があります。
訪問看護が誘導するようなアセスメントやアプローチが存在し、利用者さんとしては「勝手にやられた」という認識をもつことは理解できると思います。
対話を通して症状なのか、本人のこだわりなのか、ゴミ屋敷に至るまでどのようなプロセスがあったのかなど、きちんとキャッチしながら、本人と一緒に看護計画を立てることが大切です。
そして、そこに話す人の技術が必須になるとは感じます。

ショックからの立ち直り方


―ゴミの件のように利用者さんとのトラブルになることもあるようですが、拒否された時はショックではないですか?
小瀬古:
拒否が続いた時には訪問看護師として向いていないのではないかと、何度も思いましたよ。そういうときに、進さんから言われていたのは「小瀬古さん(肩をポンポン叩く)、今日もラッキーやったな。こんな経験もあと5年くらい経ったらできへんよ」と。
当時は「何がラッキーや」と思いましたけど(笑)。私の場合は、これを機会として捉えて、今しかできない経験から学ぶことも多いだろうなと、思考の転換ができるようになりました。利用者さんに「お前なんやねん」と怒鳴られても、「自分に対して何か言ってくるというのは、つまり“言える関係性”ではあるんだ」と捉えられるようになったんです。
看護師として、利用者さんの苦しみがそこにあるはずだから、どう転換していくか、その巻き返しをどうするかを考えられるようになりました。
進:
すべてを機会として活用することを、当ステーションでは働きかけています。だからといって、何をされてもいいということを言いたいわけではありません。不可抗力で女性スタッフが抱き付かれるなどのケースも実際ありますし、スタッフ自身が怖い思いや、悔しい思いをすることもあります。
その時に、看護師としての思いと、女性としての思いがあって苦しむこともあります。そこを一旦、自分の持っている役割のなかで、それぞれの立場の気持ちに分けて考えた上で、次の行動を決めてもらいます。
看護師として行くと決めるのか、怖さが勝るから行かないのか、いずれの選択であっても私は受け止めます。明らかに精神症状が悪化しているのであれば、複数名訪問もできますが、男性に変われば大丈夫という単純な話ではないですよね。

トキノ株式会社 訪問看護ステーションみのり 統括管理責任者 / 看護師・WRAPファシリテーター
進あすか
精神科の急性期閉鎖病棟に勤務していた頃、退院した患者がすぐ病院に戻ってくる現状を見て地域に興味を持つ。30歳の頃に精神科特化型の訪問看護ステーションに転職。より良い働き方とケアの実現のため、2012年にみのり訪問看護ステーションの立ち上げる。2020年11月現在、大阪、東京、横浜、奈良に4事業所・8つのサテライトを運営している。
トキノ株式会社 訪問看護ステーションみのり 統括所長 / 精神科認定看護師・WRAPファシリテーター
小瀬古伸幸
看護補助者として精神科病院に就職、勤めながら正看護師を取得。その後、精神科救急病棟に約8年勤務。進さんに出会い、病院の中からではなく地域から精神科看護を変えていきたい思いから、訪問看護ステーションみのりに入職。
精神訪問看護についてもっと知りたい方は、こちらの特集をご覧ください。
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