インタビュー

オーストラリアで出会った訪問看護の魅力/海外訪問看護

オーストラリアでは訪問看護師特有の業務形態により、長年従事する看護師が多いため、求人の空きがなかなかないそうです。また、急性期、慢性期に分業されているため高いスキルが求められます。今回お話を伺った本田一馬さんは、オーストラリアで看護師資格を取得し、さまざまな経験を経て急性期の訪問看護師になりました。これまでの経緯や働き方、日本との違いについてご紹介します。

オーストラリアで訪問看護師になるまで

Q 訪問看護師を目指したきっかけとは

高校卒業後に語学留学のために中国へ渡りました。その後、オーストラリアに移動したので、看護師資格を取得したのは27歳のときです。当時、オーストラリアでボランティアをしていて、そのなかで「看護師になってみてはどう?」と声をかけていただいたことがきっかけとなり、看護の道に進みました。
学生最後の実習で訪問看護を経験し、今までのクリティカルな領域とは大きな違いを感じました。患者さんと関わる中で、医学的な治療よりも住み慣れた家や家具、愛するパートナーやペットたちに囲まれた環境で、話を聴いてもらうことが一番の特効薬になり、大きな力が生まれることに気が付いたんです。
卒後はすぐにでも訪問看護師として働きたいと懇願しましたが、スタッフは経験8年以上のベテランばかり。師長からは「経験を積んできなさい」と諭されてしまいました。その言葉通り、救急外来や集中治療部、研究や老人ホーム勤務などの経験を積みました。その後も訪問看護の魅力が忘れられず、採用枠が空くのを待ちました。そしてある時、奇跡的にも1つポジションに空きが出たことで、念願だった急性期訪問看護師チームの一員になることができました。急性期訪問看護チームはなかなか求人情報が出ないこともあり、私の働いている医療機関ではゴールデンジョブと呼ばれることがあります。

急性期の訪問看護師の仕事

Q 急性期に特化した訪問看護とは

オーストラリアの訪問看護は急性期と慢性期に分かれており、急性期では、1日3~4人の患者さんを訪問しています。1人当たり、約1~2時間かけて看護ケアを提供しています。また、日本でいうオンコールのような夜間対応はなく、必要があれば速やかに救急外来の受診をすすめています。
おもな仕事は、蜂窩織炎、骨髄炎、肺炎などを患った患者さんに在宅で抗生物質の投与を行うことがメインとなります。ほかには乳房摘出術後のドレーン管理などです。オーストラリアでは、ドレーンの抜去や抜糸なども看護師が行います。
急性期訪問看護チームの役割は、患者さんをできるだけ地域で看ることによって病院への入院を防ぐことです。そして容態が安定していても継続した点滴管理が必要な患者さんを、私たちのチームで受けることによって早期退院を目指し実現させることです。
患者さんの紹介は個人医院や病院からの紹介になりますが、入院されている患者さんが在宅でケアすることが可能かどうか退院前に確認し、難しそうであれば医師に対して意見することもあります。在宅では1人でケアすることになり、責任もありますからね。実際に働いてみて、やはり高い知識と技術、判断力が必要だなと感じます。経験や場数を踏んでいく必要があるという考えの方が多いですね。医療アシストを呼ぶことができない状況の中、とっさの判断を迫られたときに、いろいろな経験がとても役立ちます。

訪問看護ならではのかかわり

Q 訪問看護師としてのやりがいとは

乳房摘出後のケアは男性看護師が介入しにくい部分ではありますが、まずは、患者さんと患者さんを取り囲む家族の皆さんと信頼関係を築くことだと思います。在宅なので、旦那さんが同席するケースが多くあります。一般的に女性としてのシンボルとして認識されている体の一部を失ってしまった妻を、少し離れたところから心配そうに見つめる旦那さん、そして、その妻に対して「どのように接していけばいいのか。」と悩む旦那さんは少なくありません。そういった家族の気持ちも含めたケアを行います。男性だから話せることがあったり、言いづらいことを引き出したり、家族全体のケアをいかにホリスティックに見ていくのかが大切ですね。
ただ、コミュニケーションが英語なので、細かいニュアンスが伝わりにくいことはあります。オーストラリアは多文化なので、患者さんの文化背景によって話し方やアプローチのしかたを考慮し、その患者さんに合った看護ケアを提供するよう心掛けています。もし、言葉が通じなくても、「自分のことを気にかけてくれている。」という姿勢が患者さんに伝わると信頼関係の構築につながり、コミュニケーションや看護ケアの提供がスムーズになるという経験をたくさんしています。そこがやりがいにもつながっていますね。
急性期の訪問看護は、一人ひとりにケアをする時間が長く取れることが魅力の一つだと感じます。もちろん、医師とも意見の交換をしますし、患者さんのために常に疑問を持って問いかけるようにしています。医師の言ったことがすべてとは捉えずに、納得できなかったことはとことん話し合います。看護師主体で率先して動けるので、ここもやりがいの一つですね。

日本とオーストラリアの懸け橋に

Q 今後のビジョンについて

今は色々な意味で自分の視野や可能性を広げるために、大学院で修士課程(プライマリーヘルスケア看護)の勉強をしています。このまま学業に励み、博士課程まで勉強できればと思っています。博士課程取得後には、オーストラリアと日本のさらなる共同看護研究の発展や看護技術のエクスチェンジプログラムなどに加担する事で、お互いの科学的な看護実践の質を高め、より一層、患者のニーズに沿った安全で高度な看護ケアの提供につながればと考えています。日本からオーストラリアに留学や短期プログラムに参加する学生にも、グローバルな視点が身につくように色々な経験ができるような支援もしていきたいですね。お互いの文化を大切にしながら良いアイディアを取り込んでいくことで、良い変化が生まれ、最終的には患者さん、そしてコミュニティーの健康へつながると信じています。 また、知り合いの同僚が日本に行った時の感想を聞くと、とても親切であり、素晴らしい国だと言ってくれます。そんな自分の国を誇りに思います。日本の先輩や後輩の方々に、少しでも役に立つことができるよう精進していくことが最優先だと思っています。
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Registered Nurse
Nurse Immuniser
Central Coast Local Health District
Acute Post Acute Care Team (急性期訪問看護所属)
本田一馬
【略歴】
2010年 ニューカッスル大学 (オーストラリア) 医学部看護学科卒業
2011年 オーストラリア連邦内閣総理大臣賞を受賞し、山口大学へ客員研究員非常勤講師として赴任
2014年 主任看護師Aurrum Erina (高齢者介護施設)
2015年 正看護師 急性期内科 (Gosford Hospital, Australia)
2018年 急性期訪問看護師 Acute Post Acute Care Team, Gosford Hospital
2020年 シドニー大学 医学部保健学科修士課程 Master of Primary Health Care Nursing 入学
2021年 Nurse Immuniser として急性期訪問看護の傍、ワクチン接種業務に従事
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