特集 インタビュー コラム
コラム

COVID-19×訪問看護の最前線から~後編~

COVID-19が世界にとって未知の病気だった2000年初頭。社会全体が恐怖におびえ大きくうねり始めるなかで、いち早く訪問看護師という立場からCOVID-19と対峙し、現在もケアを続けている岩本大希さん。パンデミックのなかで岩本さんが行ったことや、第5波で看たCOVID-19感染者看護の実例、そして第6波に向けての心構えについて寄稿いただきました。後編では、COVID-19感染者看護の実例を中心にお届けします。

≪ 前編はこちらからご覧いただけます

COVID-19感染拡大の最中、命を守れないのではないかと感じることが増えていく

本文医療機関のひっ迫は一向に改善の様子がない。「入院待機者」という人々が在宅領域にもあふれ出し、2021年の8月にはピークを迎えた。1日10件全てコロナの入院待機者への訪問の日があるほどだった。

・[感染case3]認知症の親御さんと暮らしている50代の方
50代で認知症の親御さんと暮らしている方が動けなくなっていた。酸素、点滴を自宅で開始。なんとか酸素飽和度は上がる、でも呼吸回数は落ち着かず、苦しいだろうことが見てとれた。にもかかわらず、「母をなんとか助けてください。母をお願いします」自分より親御さんのことをとにかく心配されていた。ほぼ同時に親御さんも発熱し陽性となり、自宅にいることしかできない状況であった。誰がお世話するのか? 誰もいない。訪問看護師である自分ができることをやるしかない。親御さんは「私はいいから子どもを助けてくださいお願いします」と僕の手を握りしめる。お互いに想い合っていることがわかる。「はい、ちゃんと看ますので安心してください」と握り返す。親御さんも呼吸が悪くなり酸素を始めた。治療も大事だが、それよりも毎日の食べるものが用意できないので、併せて二人の食事を買い出す。重症化リスクも高いため毎日観察しに訪問し、食べやすいようおにぎりやアイス、うどんなどを買って行った。親御さんは顔もわからないような格好をした僕に驚かないどころか、手を合わせて「神様だわ」と言ってくれた。本当の神様だったらもっと色んな人を助けられるだろうが、僕はご飯を買って観察して励まして見守るだけしかできず、入院できるときを毎日待った。

・[感染case4]家族と暮らす壮健そうな40代の方
着いたときには酸素飽和度は80%代で、すぐに酸素開始するが7リットルでも酸素飽和度の上がりが悪い。オキシマイザーを使うとなんとか96%に。一度帰宅し、次の朝イチでまた訪問すると顔色の印象が悪い。呼吸数も多くマズイと冷や汗が出る。でも入院できないのだ。帰り際、小学校低学年くらいのお子さんが心配そうに犬を抱えて僕を見ていた。翌日以降のため、酸素濃縮器7リットル機をもう1台入れて2台連結し14リットルまで増やすため搬入予定とした。そうしているうちに入院が決まった。危機一髪で命を守れてよかったと安堵したことを覚えている。

・[感染case5]全員がCOVID-19陽性の外国人家族の方
40代の方。酸素飽和度が下がり、酸素が玄関先に届けられたと連絡をもらい導入のため向かう。しかし到着したら民間救急車がきていた。「入院が決まりました」とのこと。良かった。「パパどこいくのー??」窓から子ども3人が顔を覗かせていた。搬送される本人に付きそうパートナーを見ると明らかに顔色が悪かった。家族はみんな陽性と聞いていた。パートナーに「体調悪い?」と聞くと、「呼吸は平気だが吐いていて3日食べられていない」と言う。脱水症状だろう。すぐに依頼元から保健所に確認を頼んだが、パートナーは外国の方で日本語はあまり得意ではなさそうだ、聞き取りに工夫がいるため、きっと保健所の電話に的確に答えられておらず、見逃されたのかもしれなかった。この方も入院できるとよい。しかし両親ともに入院になれば、3人の子どもたちはどうするのだろう? どうすればよいかは保健所に任せるしかなく、次の現場に向かった。

・[感染case6]犬と暮らす50代男性の方
50代の男性でお一人暮らし。犬を飼っている。すでに酸素がなければ酸素飽和度は80%台と重症ラインにあった。点滴やステロイドを使って看護していると、保健所から入院の打診が入る。しかしこの男性は、飼い犬の世話があるため入院をお断りしていた。翌日改めて訪問すると、明らかに悪化している。保健所から僕は「どうにか犬の面倒を見られる人を確保してくれ」と言われた。ペットホテルを探したり、友人に頼んだりしたが、犬の面倒を見る人は見つからなかった。このままでは一晩持つかどうか、苦肉の策で「僕が面倒を見るから入院しませんか?」と提案し、無事入院の運びとなった。その日から一人ぼっちの濃厚接触犬へ、毎日トイレとエサ、水の交換のため訪問した。これでよかったのかわからなかったが、人懐こい犬は僕の来訪を毎日喜んでくれた。その様子を見るとやるべきことをやったかな、と思った。

第6波をいつでも迎えられるよう、連携と準備が必要だ

第5波のなかで、僕はこれら数十人と関わった。全員、ワクチンを打てていなかった人たちだった。予約をして待っていたり、1回目が終わっていたりする人たちばかりだった。日本のワクチン接種スピードの加速は諸外国に比べても脅異的で歴史に残るほどだと思う。しかし残念なことに、デルタ株の驚異的な速さに追いつかれてしまった。これから第6波がくることが予想されている。その日をいつでも迎えられるよう、多くの地域と連帯しながら準備を行い、沢山の人たちが予防行動を取れることを祈っている。

**

岩本大希
WyL株式会社 代表取締役 / ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長 / 看護師・保健師・在宅看護専門看護師

ドラマ『ナースマン』に影響を受け、「最も患者さんに近い存在」として医療に関わりたいと思い、看護師になることを決意。2016年4月にWyL株式会社を創立し、直営で2店舗、関連会社でフランチャイズ4店舗を運営。(2020年12月現在)「全ての人に“家に帰る”選択肢を」を理念に掲げ、小児、精神、神経難病、困難な社会的な背景があるなど、在宅療養のなかでも受け皿の少ない利用者を中心に訪問看護事業を展開している。

記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

この記事を閲覧した方におすすめ

× 会員登録する(無料) ログインはこちら