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8 食事をとらず、大量に嘔吐した

高齢患者さんの症状や訴えから異常を見逃さないために必要な、フィジカルアセスメントの視点をお伝えする連載です。第8回は、イレウスの既往があり、大量嘔吐がみられた患者さんです。さて訪問看護師はどのようなアセスメントをしますか?

事例

イレウスの既往のある81歳女性。認知症が進み、自分からは訴えられないのですが、食事をとらず、先ほど大量に嘔吐してしまいました。排便は4日前に普通便が中等量ありました。

あなたはどう考えますか?

アセスメントの方向性

イレウスは、腸が狭窄する、または、運動しなくなることにより、腸の中に飲食物やガス、消化液などが貯留した状態です。絞扼性のイレウスでは、腸がねじれて壊死を起こし、重篤な腹膜炎になる可能性があります。また、嘔吐によって脱水を引き起こすことも、高齢者の場合には大きな問題になります。

腹部の手術を受けた方や高齢者ではイレウスを繰り返すことも多く、今回も最終排便からの日数が空いていることから、まずはイレウス状態でないかどうかを確認する必要があります。

イレウスが否定されれば、通常の便秘のアセスメントと排便を促すケアを行い、症状が軽減されるかどうかを見ます。認知症があって症状の訴えが難しい患者さんのようですので、客観的なデータをしっかりと整えて、報告・対処していく必要があります。

ここに注目!

●自らは訴えられないが、食事をとらないということから、消化器症状が存在する可能性がある。
●イレウスの既往があることから、再発の可能性がある。

まずは、イレウス状態でないかどうかを確認する必要があります。

イレウスではないかの確認①主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・イレウスの症状(嘔気、嘔吐、噴水様の嘔吐、吐物が緑色〈胆汁色〉で便臭がある、吐物の量、腹部の強い痛み、疝痛、腹部をかばう姿勢、腹部に触れるのを極端に嫌がる、腹部膨満感)
・イレウスの要因(最終排便、通常の排便頻度、便の硬さ、最終の食事摂取時間、飲水量、繊維質の多い食事、海藻などの多量摂取、など)

イレウスではないかの確認②客観的情報の収集

体温測定

腹膜炎に至っている場合は、発熱している可能性があります。

腹部の視診・打診

視診では腹部全体の膨満を認めます。打診では、ガスが貯留している場合は全体的な鼓音となり、音が高くよく響きます。

腸音の聴診

腸管が麻痺している麻痺性イレウスの場合は、蠕動がなくなるので無音となります。無音であるとはっきりと判定するためには、5分間の聴診が必要とされており、方法は下の図のとおりです。

がんや硬便の貯留による閉塞性イレウスや、腸がねじれてしまったことによる絞扼性イレウスの場合は、内容物を先に送ろうとして蠕動運動が亢進するので、キンキンという短い高音(金属音)や、波が押し寄せるような連続した強く高い音が聴取されます。

イレウスが否定されれば、通常の便秘のアセスメントを行います。(詳しくは「インフルエンザ後排便がない」を参照)

便秘のアセスメント①主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)

・便秘の経過(ふだんの排便の頻度と性状、最終排便からの日数、最終排便の量・性状、排便困難、ふだんの下剤や浣腸の使用、など)
・下剤や浣腸の使用状況、便秘の症状(腹部膨満感とこれに伴う苦痛、腹痛、腹部不快感、排ガス、便意、悪心、など)
・便秘の要因について(食事摂取量、食事内容〈繊維質の量、ヨーグルトなどの乳酸菌食品の摂取〉、水分摂取量、水分出納、など)

便秘のアセスメント②客観的情報の収集

便の性状と回数

記録を参照し、これまでの排便、最終排便の状況を確認して、現在は腸にどれくらい便があるのかを推測します。

腹部の視診・触診・打診

視診・触診・打診で、便やガスの貯留量や場所を推測することができます。触診では、腹部の触れかたで便の性状もわかります。

腸音

腸音の聴取で、蠕動の性状がわかります。

報告のポイント

・激しい腹痛、嘔吐、腹部膨満という、イレウスを疑わせる症状
・バイタルサイン、腹膜炎や脱水の可能性があるか
・腸音と腹部膨満の状態

執筆 
角濱春美(かどはま・はるみ)
 
青森県立保健大学
健康科学部看護学科
健康科学研究科対人ケアマネジメント領域
教授
 
記事編集:株式会社メディカ出版

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